2ちゃんねる スマホ用 ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50    

『読みました』報告・海外編Part.8

1 :名無しのオプ:2013/09/04(水) 17:04:07.05 ID:oFD80D8W.net
『読みました』報告の形式は自由です。
ただし当然ながら犯人、トリック、プロット等々の
メール欄以外でのネタバレは厳禁です。
【前スレ】
『読みました』報告・海外編
http://book.2ch.net/test/read.cgi/mystery/984541588/l50
『読みました』報告・海外編Part.2
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1072265453/l50
『読みました』報告・海外編Part.3
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1141910665/l50
『読みました』報告・海外編Part.4
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1222100201/l50
『読みました』報告・海外編Part.5
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1222100201/l50
『読みました』報告・海外編Part.5
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1272900112/l50
『読みました』報告・海外編(書斎厳禁)Part.5
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1275659798/l50
『読みました』報告・海外編(書斎厳禁)Part.6
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1284256057/
『読みました』報告・海外編(書斎厳禁)Part.7
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1353323940/l50

697 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/07/20(月) 14:52:45.19 ID:ONijttfh.net
ジョルジュ・シムノン「紺碧海岸」を読む。
おなじみメグレ警部シリーズの1作だが、久々の邦訳とのこと。
舞台はメグレのホームグラウンドのパリではなく、タイトルに冠された保養地
として名高いコートダジュール。このシリーズの雰囲気からはやや意外感が
ある華やかな場だが、初期作品らしく事件の背景にある陰鬱な男女関係が
抉られが如く明らかになってゆく・・
メグレが夫人同伴で珍しく保養地で巻き込まれた事件譚かと思いきや、
ガイシャ(どこかメグレ自身に似た男)が諜報活動(結局、この具体的内容は
最後まで明らかにされず、またこの点は作品の主題ではないと言い得る)に
関連していたため、特命により派遣される。
スパイスリラーのような発端であり、この辺の展開も異色。
短い作品だが、それなりに読める、読ませる出来とは言い得ようか。

698 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/07/25(土) 19:02:58.83 ID:prNSopas.net
「漂う提督」を読む。
1930年代初頭、本格ミステリ黄金時代における著名ミステリ作家連に
よるリレー小説である。
この手の作品群の中にあっては、良い出来栄えとされているが、
その評価は「リレー小説としては・・・」という但し書きが付く
程度のものである。
この点は、大乱歩や横溝御大も参加している本邦における一連のリレー小説
のヨレヨレぶりを思えば納得できようか。
才人アントニイが何とか最終章(混乱収拾篇)で
締めくくっている感があり、犯人(デニー)の意外性は薄いものの
そのラスト(犯人の唐突な死)はいかにも彼らしいシニカルな味わいに満ちたものとなっておる。
邦訳は著者アガサ他と銘打って刊行されているものの、
実は担当部分は非常に短い。
いかにもアガサ作品らしいお喋り婦人キャラが登場するものの、
作品全体からすれば軽い「転」に該当する部分で10頁程度のボリューム
に過ぎないのだ。
第七章(頁数にして50頁弱)を担当して物語を展開させたドロシー
(本作刊行当時は邦訳に恵まれず、巻末に付された作家紹介に取り上げられて
いるのが隔世の感あり、ちなみにプロローグ部分担当のG・K、アガサ、
フリーマン、アントニイは略されている。
20頁強程度(第九章)の担当ながらフリーマンはいつもの足の捜査、警察小説スタイルを貫いているのはいかにも彼らしく思えた)
先行する章を検討して39の疑問点(第八章のタイトルでもある)を洗い上げた
ロナルド大僧正、この2作家の労が思われるところだ。
いろいろ各人の事情もあったのであろうが、執筆の負担がとても均等とは言い得ないのは気にかかった点ではあった。

699 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/07/27(月) 00:00:27.76 ID:BRgB6xUj.net
A・クリスティ/F・W・クロフツ他「ザ・スクープ」を読む。
リレー小説2編(表題作と「屏風のかげに」)収録。
表題作の第七章と十章を担当しているクレメンス・デインを除いては、
ミスオタにはおなじみのマエストロばかりである。
期待度低だったせいか、意外に楽しめた感あり。
・「ザ・スクープ」
郊外で発生した女性殺し、その特ダネ(凶器)を発見したブンヤも殺され、
新聞社と警察の捜査が開始される。6人の作家が各2章担当した全12章
で構成された作。
第一章担当のドロシーの筆に勢いがあるロケットスタート、
(当時の新聞社の活気がビビッドに伝わって来る感あり)
第二章でこれを受けたアガサの巧さ(検死法廷の様をいかにもアガサ作品
キャラらしいお喋り婦人を投入してさらっと読ませる手際は見事)
が後に続く作家たち(E・C,アントニイ、フリーマンら錚々たるメンツ)
にも好影響を与えたせいか、快調なテンポで一気に読ませる。
小技ながらふたつのピン(凶器)の謎解き等いかにも本格らしくて良し。
前記した無名作家(少なくとも本邦では)のデーン担当章だけ、
本作のヒロイン的存在(ベリル、新聞社の総務課秘書)メインな
冒険譚的展開なのが違和感ありありではあるが。
・「屏風のかげに」
日本屏風(本筋に無関係とはいえ、細かい描写はされていないのは日本人読者としてちと残念)のかげに死体が・・・
名作短編「銀の仮面」を想起させるヒューのサスペンスフルな語り口
による第一章から、アガサ→ドロシー→アントニイ→E・C→ロナルド大僧正
とリレーされた纏まりある一編。
大僧正によるオチのつまみ食いネタはくすっとさせるものの、
皮肉屋アントニイが最終章担当であればどんなんなったかとか興味深く思うた。

700 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/08/01(土) 20:00:29.96 ID:tgqN7D60.net
ジョン・ディクスン・カー他「殺意の海辺」を読む。
これもまたリレー小説。2作収録。
表題作よりも併録の「弔花はご辞退」の方が出来は良いのだが、
ある意味でビッグネームなジョンの名を冠したいための判断で
あろうか?
・「殺意の海辺」
トップバッター(第一章担当)にジョンを持って来たわりには、
後続の作家連の力不足により安手な冒険風味の恋愛ドラマに終わった
という感あり。まあ、ロマンスはジョン作品の主たるエレメントのひとつ
ではあるが。単独で書いていれば駄作なりに一応読めるものになったかもなー。
・「弔花はご辞退」
女性作家オンリーによる珍しいリレー。
ただし、なぜかアガサは参加していない。
(もし彼女が参加していれば、一般的なネームバリュー
(アガサ>越えられない壁>ジョン)的にもこちらが表題作になった
やもしれぬ)
本書翻訳当時は、ドロシーは邦訳出版に恵まれず、グラディスや
アントニーが本格的に紹介されるのは、ずっと後の90年代のクラシック・
ミステリ刊行ラッシュまで待たなければならなかった。
最終章を含む三章を担当(他の作家は各二章担当)したクリスチアナ
は当時からわりと本邦でも知られていたが、(ミスオタにはの限定付きではあるが(w )地味と判断されたか。
「小説」として見た場合、
ヒロインであるマートン夫人のキャラが作家により異なって感じられる
のは残念な点か。子供に頼らない自立したしっかり者キャリアウーマン婆という第一章(ドロシー担当)の設定が、後の章の担当、
書き手により変わってしまうきらいがあるのが残念な感はある。
最後はクリスチアナらしい意地悪な締め(w

701 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/08/02(日) 18:27:37.86 ID:ZWiJEB3Z.net
F・D・ルーズヴェルト他「大統領のミステリ」を読む。
このリレー小説は駄目駄目。著者の一人として当時の現職大統領の名を
冠したのが御愛敬なだけの無理筋(声帯模写、整形等による成り済ましという
のは強引過ぎでしょ)。
デラノは実際に執筆分担を担当したわけでもなく、
基本アイデア(いわば人間蒸発)とストーリーのアウトライン的ものを提供した
のみだが、プロの作家連の手でミスター・プレジデントのネタやストーリーに
応じた十分な解決や展開もなされているとも言い得ないのは、
S・Sとアール以外は本邦では無名作家、非ミステリ作家さえ参加している
せいか。
御都合主義な犯罪メロドラマ、お約束なハッピーエンディングである。
S・S作品でおなじみなレギュラーキャラ(ファイロこそ出ない)や
アール作品のペリーとポールが名前のみ登場しているお遊びがチョイ
楽しめる程度や。

702 :名無しのオプ:2015/08/02(日) 21:08:55.69 ID:CoFyVs13.net
書斎の海外作品紹介はやはり骨太な論考になるね。
普段、国内作家のチンケな作品ばかり読んでいるなら、ぜひ挑戦してみてほしい。
書斎はその手引きをしてくれているのだから。

703 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/08/08(土) 21:29:46.46 ID:4wLPNhlt.net
アレックス・ヘイリー「ルーツ」を読む。
テレビドラマも大ヒットしたノンフィクション仕立ての大河小説的作だが、
この板的には冒険小説的に読んでみれ。
奴隷としてアフリカから拉致されたクンタ・キンテ青年、
新大陸における彼の祖先たちの苦難と激動の人生を描く。
全体の7割程度がクンタ・キンテ編(彼の行く末は原作では言及されて
いない。ちなみにドラマでは印象的なキャラである奴隷仲間のフィドラーも
同様)、クンタの娘二代目キッジーの死が直接に描かれないのはドラマ版と同様だが、
(闘鶏師としての役目を終え英国から帰国したキッジーの
息子チキン・ジョージが主人=実父を訪ね奴隷解放に関する書面を手に入れる
シーンがある)
ドラマのキンテ家四代目トムに関する物語(KKK登場のエピ等)は、
テレビドラマにおけるオリジナルである。(つまり完全なるフィクション)、
後に「ルーツ2」で描かれるトムの娘たちの結婚をめぐるエピ、
チキン・ジョージとその妻マチルダの死等は、再び原作準拠。
原作にはドラマには登場しないキャラも多いし、
展開もドラマほどにドラマチックではない(何だか妙な表現やもしれぬが)、
前半にある不衛生と残酷さの極みとでもいえる奴隷船内の描写は強烈なものがあるが、全体として淡々と時間=歴史が叙述されてゆく感あり。
黒人サイド視点の独立戦争、南北戦争、ネイティヴ・アメリカンとの関わり方等の描き方、この辺が従来の徹底白人視点のものとは異なり非常に面白い。

704 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/08/09(日) 21:39:53.37 ID:A1xmPZ4W.net
ジャック・ヒット編「完璧な殺人」を読む。
これはリレー小説ではなく競作という呼称がふさわしい作だが、
参加した作家たちによるガチンコ勝負というわけではない。
現代のディレッタントが浮気してる女房とその愛人を芸術的殺人により
始末する手を知り合いの5人の作家連に手紙で相談、
ここに恐怖(?)の往復書簡が展開されるという設定からして「お遊び」
を楽しむものとわかろう。
フィクションらしい偶然性が介入せずしてミステリ小説にあるような殺人など成立せずと読めるアンチ・ミステリ的視点さえ覗えるが、
批判というかそういうものなのだという趣旨が強く思える。
最後の一文、「千年王国の実現は近い」の意とは?

705 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/08/15(土) 08:22:28.93 ID:rUe7Jmrq.net
ジョン・スタインベック「キャナリ―ロウ」を読む。
本国=米では人気があった作のようだが、名作中の名作葡萄の重量感、
佳作中の佳作二十日鼠のようなシャープさも欠く作。
とは言うても、米版山本周五郎(舞台ゆえか「青べか物語」を想起)みたいな
作をこのノーベル賞作家が書いていたとは。
一応、主人公(基本、群像劇ゆえ)なドック、孤独癖がある変人気味キャラとはいえ、善い人過ぎやろ・・・

706 :名無しのオプ:2015/08/15(土) 17:52:02.87 ID:iNcFRQ50.net
この論考、様々な背景や知識がなければ書けないね。
当然、読む側にもそれだけの知性が問われるわけだが。
書斎が嫌われるのは、飛び抜けているが故なんだろうな。

707 :名無しのオプ:2015/08/15(土) 18:46:43.34 ID:aOxUilE4.net
嫌われるのがわかっただけでも小さな進歩

708 :名無しのオプ:2015/08/15(土) 18:56:19.67 ID:XgqvZmPr.net
ワロタww

709 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/08/16(日) 06:34:11.86 ID:ZbZhZt39.net
L・A・モース「オールド・ディック」を読む。
齢78、史上最高齢のプライヴェートアイことジェイク・スパナ―登場。
かなり面白いキャラだが、残念ながらシリーズ化はされず「初登場」とは
書けず。この点はラスト、裏切った依頼者=昔の知人(とは言うてもギャング、
スパナ―が長期ムショに送りにしたという経緯もある)
と共にホットマネーを持ってトンズラにも関係する。
アメフトフィールド(終盤の舞台)に血の雨が降るかと思うたのだが、
見事に外されました(w、まあ、この点はともかくとして、
全体的に登場するキャラは立ちまくりとはいえ、ストーリーは御都合主義多しかな。展開も読者にも見え過ぎる(スパナ―の盟友元警官パットの行く末等々)。
高齢メイド探偵という企画の面白さに惹かれて読めはするものの、
さすがに昔の愛人の娘(20代のJD)と事に至る(マジやってまう)
というんは、読者サービス(?)過剰ちゅーか、ストーリー的にも「やり過ぎ」でしょ(w

710 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/18(火) 18:37:06.82 ID:g8dbCyvQ.net
「スパイたちの聖餐」ビル・グレンジャー(文藝春秋)

バンコクのアメリカ大使館に粗末な服装の老人がやって来た。彼の名はレオ・タニー。ラオスに入ったきり二十年以上行方不明になっていた神父であった。
突然の出現に各陣営は素早く反応し、CIA、KGB、教皇庁、マスコミなどがそこに隠れているものを暴き出そうと動き出す。
Rセクションの工作員デヴェローもまた密命を帯びてレオ・タニーのいるクリアウォーターへ向かった。

CIAのカウンターパートとして設立されたスパイをスパイする機関Rセクションのスパイ、デヴェローを主人公に据えたシリーズ第2作。
引き締まった文章で真っ向からスパイを描いた前作が地味ながら好みだったので期待して読んだのだが、ちと当てが外れた。
前半はゆったりとした聖職者同士の会話がだらだら続いて欠伸が出て来る。動きが少ないのだ。
後半やっと人が死に始めてスパイたちの闘いがスタートするのだけど、今度はレオ・タニーに錚々たる組織がそこまでこだわる何があるのか首を傾げることになる。
レオ・タニーが何を握っているのかだけでなく、彼らが何故それに注目するのかということまでも伏せて話が進められるため、読んでいて何ともあやふやな心持ちでいなければならない。
二つの内どちらか―――個人的には前者――は早めに明かした方がアウトラインがくっきり浮かび上がってストーリーが引き締まったと思う。

それとデヴェローに主人公補正がかかってるのもマイナス。
ある人物をはめるとことか手際が良すぎてそれまで築いてきたバランスを欠いているし、終盤私怨めいたことをやるのもプロらしくないし流れを無視して勧善懲悪に奉仕しただけのようで不快。
そんな奴が愛だの恋だの言われてもはあ? だよ。もっと傷つけ!
デヴェローの存在こそ前作の美点だっただけに残念。

711 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/18(火) 18:43:35.89 ID:g8dbCyvQ.net
「天国の囚人」カルロス・ルイス・サフォン(集英社)

父の本屋で店番をしていた青年ダニエルのところへ一人の老人が訪ねてくる。彼は店員フェルミンへ宛てたメッセージを残して去った。
ダニエルにこのことを告げられ青ざめていくフェルミン。やがて今まで黙して語らなかった己の過去を話し始める……。

てっきり三部作かと思いきや四部作だった。これまでは上下巻だったのに本作は一冊で内容も完結編への導入部といった印象で物足りなかった。
「風の影」と「天使のゲーム」とを上手く結びつけましたよという整理過程みたいな。そこそこに読ませるがあらすじを追う感じで深みが無かった。

あと妻の元婚約者との浮気疑惑騒動はストーリーから浮いている上に中途半端で期待しただけがっかりさせられた。この辺のことも次作に持ち越されるのだろうか?

712 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/18(火) 18:46:31.17 ID:g8dbCyvQ.net
「大密室 幻の探偵小説コレクション」ピエール・ボアロー トーマ・ナルスジャック(晶文社)

それぞれの単独作品を2編収録。

まずボアロー『三つの消失』。
美術館として開放されているモンセル伯爵のシャトーを訪ねてきた男はガイドを撲殺し逃亡を図った。程なく取り押さえられるものの、ダヴィンチの名画が跡形もなく消え失せていた。
更にその数日後シャトーに侵入した別の男は塀をすり抜けるようにして逃げ去る。
極めつけは最初に捕まった殺人犯が護送車ごと刑務所の直前でラッパの音を残して消えるという怪事件だった。
絵の行方は知れず絶望の淵にある伯爵の元へ謎の人物から身代金の要求が。誘惑に負けそうになりながらも名探偵ブリュネルに最後の望みをかけるが、彼は到着早々凶弾に倒れる!

トリックと言いプロットと言いこれでもかと畳み掛けてくる展開に圧倒されそうになりながら読んだ。
最初のトリックはだいぶ思い切ったものでホックの某短編を思い浮かべた。まあ盲点を衝かれた。次のは脱力。これは無理でしょう。最後のは島荘風。可能不可能の問題ではない。
トリックだけ抜き出せば拍子抜けしたかも知れないところへ探偵の危機を盛り込んでストーリーを引き締め現代性を持たせている。まあ古典としちゃ水準作かな。

続く

713 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/18(火) 18:47:43.34 ID:g8dbCyvQ.net
承前

そしてナルスジャック『死者は旅行中』。
アクシデントでアレキサンドリアからカサブランカへ向かう貨物船に乗り込むことになった新聞記者の私。
船へ招待してくれた美女グラディスと急速に親密になるも乗客たちが次々と殺され行方不明になっていく。

密室を盛り込んだCCという趣。解説で天城一もご存知ないと見栄を切っている密室トリックは確かに他の例を知らないかも(忘れてるだけかも)。
CCの方も斬新なアイディアで驚愕! ……と言いたいところなのだが誠に残念ながら現代の日本の読者ならばあれやこれや読んでいるので真新しさは感じない。
ま、それはこっちの都合だから仕方ないんで、これも古典としちゃ水準以上でしょう。

ただし全体的に文章が甘く描写不足。導入部から唐突というか強引というか、雑! さっさと本題に入りたかったんだろうがこれはプロ意識が薄いのでは。
折角位相の違うトリックを組み合わせているのに肉付けが不十分なせいで損している。
それから主人公が端々であれこれ推理というか推測を重ねるんだけど、地に足がついてないので分散発想って感じでピンと来なかった。探偵じゃないからしょうがないと言えばそうなんだが。

……どちらも少しずつ足りてない印象。やはり二人三脚の方が良いのかもねむ。

714 :名無しのオプ:2015/08/18(火) 19:51:43.42 ID:/f1jG7y3.net
何このスレ
自分の日記帳に書けばいいのに

715 :名無しのオプ:2015/08/18(火) 20:46:12.07 ID:8/9kOHZB.net
まtっくだ。書斎の論考を千回熟読してから出直せって感じ。

716 :名無しのオプ:2015/08/18(火) 20:48:59.81 ID:aHeQ6upb.net
書斎ってローマ字使えるのか………

717 :名無しのオプ:2015/08/18(火) 20:53:53.90 ID:8/9kOHZB.net
使えるさ、使えるとも!!!!!

718 :名無しのオプ:2015/08/19(水) 05:51:14.50 ID:hg78NFbl.net
読後感という気の弱い糞コテに言ってくれや。

719 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/19(水) 20:38:02.71 ID:19CYB/+X.net
「ピカデリーの殺人」アントニイ・バークリー(東京創元社)

裕福な伯母と暮らしている遊民の独身中年男チタウィック氏はたまたま寄ったホテルのラウンジである老婦人と若い男のペアに目を留めた。
そして男の手が相手のコーヒーカップの上へと動いたのを目撃する。その後老婦人は毒殺され、容疑者が捕まり一件落着に思われた。
しかし、容疑者の妻や知人たちに懇願されたチタウィック氏は何故か彼の無実を証明するための調査を始める羽目になってしまう。

10年くらい前に一度読みかけて中断したのを再チャレンジ。どうってことない事件と思われたものが探偵役の強引な介入によってねじ曲がってゆく、そんな話かと思いきや……意外な展開に?!
てな話運びで地味ながら楽しめた。しかし以降翻訳が途絶えたことからするとこのヒネたプロット(シェリンガムもののあれとかこれとかを連想した。)は当時あまり受けなかったのかな?
ドラマが無いからねえ。意識してそうしてるんだろうけど。

720 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/19(水) 20:40:48.96 ID:19CYB/+X.net
「ハロウィーン・パーティー」アガサ・クリスティー(早川書房)

近所の子供たちを集めたハロウィンのパーティーのさなか、一人の少女がバケツの中に顔を押し付けられて溺死しているのが見つかった。
その少女ジョイスはパーティーの前に「かつて殺人を目撃した」と話していた。
パーティーに参加していたミステリー作家アリアドニ・オリヴァは旧友である探偵ポアロに助けを求める。

タイムリーに読書。
アガサ79歳の作品だって凄い創作意欲だね。流石にミステリーとしてのプロットはわりとシンプルだけど、不思議な少女や幻想的な隠し庭の描写など小説としての豊かさは感じた。
緻密な推理とかハロウィンならではの伏線やトリックとかは無く、クライマックスの見せ場はだいぶ都合良く進む。なので決して傑作ミステリではないが、前述したように小説としての読みどころはある。

721 :名無しのオプ:2015/08/19(水) 21:53:56.89 ID:hg78NFbl.net
死ね。

722 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/22(土) 01:45:41.55 ID:wDXPfMZW.net
「百万長者の死」G・D・H&M・I・コール(東京創元社)

ロンドンのホテルに宿泊していたアメリカの大富豪ラドレットが姿を消した。部屋は荒らされており血痕が遺されていた。従業員によると同伴していたはずの秘書ローゼンバウムは慌ただしく発ったという。
ヤードのウィルソン警視は殺人事件として捜査を開始、一方ラドレットの取引相手イーリング卿は犯人によってある秘密が漏れることを恐れていた……。

経済学者と妻との合作で乱歩のベストテンにも入った作品ということで期待したが、凡作だった。乱歩は「門外漢が書いてみたのは面白い」という持論に引っ張られたんじゃないか。

本作はウィルソン警視が自身と部下のブレーキ警部とで足を使って捜査していくという典型的凡人型探偵のミステリーなのだが、クロフツと比べると捜査の描写の密度が薄くダラダラと続いて退屈する。
しかも並行して進むイーリング卿とその甥アーサーとのパートがまた負けず劣らず冗長でうんざり。
作中で語られるシベリアでの脱出行ややがて明らかになる真相など如何にも19世紀的で黄金時代のど真ん中とはとても思えないし、スリルもない。
これは読まなくて良かった。

723 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/22(土) 01:47:07.49 ID:wDXPfMZW.net
「不思議の国の悪意」ルーファス・キング(東京創元社)

『クイーンの定員』に選ばれた短編集。シリーズ探偵はいないが同じ町を舞台にしており登場人物も一部重複する。
しかし期待外れ。つまらなくはないが軽い小品ばかりという印象。
冒頭に置かれた表題作なんか数ページ読んで「これだ!」と思ったものの以降あらあら、アラが目立ってくる。都合良すぎだろとか電話は要らんやろとか。
他如何にもクラシックなロマサスとかディーヴァー風どんでん返しとかが並んでおり、アイディアやシチュエーションは良いものの完成度が今ひとつといったところ。

724 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/22(土) 01:48:06.13 ID:wDXPfMZW.net
「服用禁止」アントニイ・バークリー(原書房)

引退して悠々自適の生活を送っていた男ジョンが死んだ。少し前から下痢を患っていたようだったのだが、弟シリルは検屍を要求しその結果砒素が検出される。
警察の捜査が始まりジョンと親しく付き合っていた面々は否応なく巻き込まれていく。

挑戦状付きノンシリーズ。割と短めでサラサラ読めるし、いつものバークリー節で面白かった。
読みながら「ははん、こいつだな」「いやまさかこのパターン?」「やはり……」と事件は想定の範囲内で推移するかに見えたが、終盤になっても挑戦状が御目見得しないので焦る。
「え!?ここまでバラしてるのに?」と。しかししかし、遂に挑戦状が突きつけられた後は思いも寄らぬ推理が開陳され「まさかのこのパターンかよ!」と色めき立つもそれは多重の一重という展開に身悶え。

読み終わると確かに伏線はあったなぁと感心。ただ推理の論理性には割と疑問が残る。挑戦状は付けてもクイーンほどフェアプレイに徹してはいないかな。

725 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/08/22(土) 14:40:40.44 ID:WIYkPHsH.net
L・A・モース「ビッグ・ボスは俺が殺る」を読む。
前記した「オールド・ディック」がちょい興味深かったので(面白いと
までは言えぬが)手にしてみた。
これは正調(?)通俗ハードボイルド。
スピレイン好き、あるいはカーター。ブラウンとかも好きな向きには
たまらんものがあろうか。時代性もあってバイオレンスもセックスシーンも
パワーアップ(ちゅーか、またしてもサービス過剰気味、この作者の特性なのか)
ヴェトナム帰りのプライヴェートアイ、サム・ハンターは理由不明なまま
凶悪な大男から「ドミンゴには手を出すな」という強迫(もち、手痛い暴力付きで)を受ける。
どうやら調査中の3件の依頼に関連したものらしい。
タフガイなハンターの探索が開始される。
そして愛すべき女秘書、旧知の警官や私立探偵等、彼の周囲では殺人が連続、
ハンターの怒りが爆発する・・・
まあ、最後のヘロインとセックス産業を牛耳るラスボス(往年のテレビスター)との対決まで一気に読ませはする。
高評価云々とかではなく、暇潰しにはジャストフィットな作という感あり。
冒頭に登場する通称「山竜巻」という凶悪な大男=人間山の訳が面白い、
原文はどんなんなんだろう?

726 :名無しのオプ:2015/08/23(日) 19:36:59.70 ID:aTfJfUQj.net
初めてきたけどこのスレなんかすごいね…

古い作品だけどローレンスブロックの「緑のハートをもつ女」再読
内容を100%忘れてたけど面白くて一気読みしてしまった。
構成といいテンポといいさすが良作と思ったのでレビューを書こうとしたら
アマゾンみたら絶版になってて検索できなくなってた。
こんな有名な名作を再版してないなんて、なんということ

727 :名無しのオプ:2015/08/25(火) 00:56:28.18 ID:FS9oOJKU.net
ローレンスブロックは昔嵌ったなあ
スカダーやバーニイもいいけどシリーズ外の長編もどれも面白いよね
自分は盲目の預言者が好きだけどこれも絶版ぽい

少しずつ本の整理してるけどブロックは絶対処分できないわ

728 :名無しのオプ:2015/08/26(水) 15:05:53.45 ID:gmBYTF08.net
ブロックはタナーも好きなんだけど
あれは三冊目以降は訳されないんだろうか

729 :名無しのオプ:2015/08/26(水) 17:35:59.17 ID:QiGQkZNH.net
緑のハート〜
書名でググると出てくるよ

730 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/08/29(土) 14:41:39.67 ID:6iN636D+.net
L・A・モース「トリプルX」を読む。
L・Aのタフガイなプライベートアイ、サム・ハンターもの第二弾。
ポルノ産業にカルト宗教団体絡みの事件にサムの腕っ節と精力が
炸裂(この表現がジャストフィット)する。
詳細に書き込まれたL・Aの街の風景、米版B級グルメ(エスニック料理続出)、
そしてセックスシーン(フェラ等もあるでよ(w )・・・
色々あって、ひとまず楽しめはするが、前作(「ビッグボス・・・」)と比較して、
普通に読んでると早々とネタが割れる感あり。
スピレインの「裁くのは俺だ」(愛する女に裏切られる)パターンですわ。
原題は「スリーズ」=「劣情」、内容を沿ったタイトルではあるが、
これでは日本の読者にはわかり難いとの判断か?
邦題はカッコ良いが意を捉え難いものとなっている感あり。
三重のX(未知数→謎)か?
多数のキャラ登場による事件の錯綜ぶりを顕すということか。
この辺は訳者あとがきで言及しておいて欲しかったものである。

731 :名無しのオプ:2015/08/29(土) 16:59:27.98 ID:JDvI9434.net
>>729

これ、書名でググるとAmazonの該当ページが見つかるよって意味です。
説明が足りなかった。

732 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/09/05(土) 20:40:51.60 ID:AVyMTNt2.net
「さよなら、ブラックハウス」ピーター・メイ(早川書房)

事故で息子を亡くし休職中のエディンバラ市警幹部警官フィンは故郷ルイス島へ帰る。
そこは悲しい思い出が残る場所。親友はかつて好きだった女性と結婚していた。そして今年も伝統のグーガ狩りが始まる……。

いかにもありがちな筋立てながら、辺境の島の伝統文化に主人公の過去の因縁を上手く結び付けてオリジナリティを出せている。
ただしキャラクターまでが荒涼とした島の雰囲気に絡め取られて地味という薄いというか悲惨というか、あまり魅力的に映らなかった。
ヒロインマーシャリとの教会でのエピソードは胸が苦しくなる。

真相も筋立てと同じく定番ぽく、駄作ではないが必読とは言い難い。
なお本書は三部作の一作目。好きだね早川。

733 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/09/12(土) 22:01:50.85 ID:p5NMEq4y.net
シェイマス・スミス「Mr.クイン」を読む。
刊行当時(邦訳は2000年)は各種ランキングで高評価ながら、
時の経過により完全に忘れ去られた感がある。
北アイルランドを舞台に徹底した悪を描いた英国スリラー、
ちゅーか、超異色ノワール。
Mr.クインと題されているが、この主人公、正に冷酷非情な犯罪プランナー
(例外はあるが基本みずからは手をくださない、ある意味で究極の鬼畜や)、
しかも女好きでストイックでクールな犯罪者像とも程遠い、
不適なユーモアの持ち主。
この手の作は最終的には勧善懲悪に落ち着くのがお約束という感があるが、
本作は90パーセント救いがないままエンド、
(謀殺された資産家一家の生き残りの次女と義兄(長女の夫)が結ばれたことは示唆)、プランナーである主人公も実行犯も、彼らの背後にいる黒幕も一切
平安無事モード、倫理観と正義感に富む女性新聞記者(主人公の義姉=妻の姉)も
見事にはめられ挫折してまう・・・
まあ、「シンプルプラン」が売れ、トンプスン、ウェストレイクあたりの
ノワールも人気があった世紀末らしい作ではある。

734 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/10/10(土) 14:45:29.55 ID:iwdJIT5W.net
「プリムローズレーンの男 上・下」ジェイムズ・レナー(早川書房)

竜頭蛇尾の見本というか。期待させるだけさせてこのオチは酷いよ。例えるならトランクスのマッチョ化のようなもの。
やろうと思えば誰でも出来る。しかし敢えてやらない、やるべきでないものだ。それを……。こんなの評価すんなよ。勘違いしたバカが真似するだろうが。

735 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/10/10(土) 14:49:53.94 ID:iwdJIT5W.net
「真実の行方」ウィリアム・ディール(ベネッセコーポレーション)

凄腕の弁護士ヴェイルはあまりに勝ちすぎることを憎まれ、大物判事ショーネシーにより敗北必至の刑事裁判の弁護を押し付けられてしまう。
それは人望篤い大司教が見るも無惨に殺されたという事件だった。容疑者は凶器を持ち返り血を浴びて現場近くにいた青年エアロン。死刑は確実と思われた。
担当判事は保守派のショート。そして検察官はかつて負かしたことのある宿敵ヴェナブルだった。
準備期間も足りず裁判地変更も認められない圧倒的不利な状況の中でヴェイルは優秀な助手たちを使い敢然と闘いに打って出る。

以前午後ローで映画を途中から観て結末は知っていた&600後半という分厚い本を何故読んだかと言うと理由はただ一つ!
北上次郎が「極私的ミステリー年代記」の中で検察官ジェーン・ヴェナブルを豊満な美女とか何とか表現していたからである!
しかも続編も××とか……それだけで読む気になったのだった。

しかし、読んでみるとまともに面白い。何せヴェイルは常勝不敗の罰として敗北のための勝負を挑まされているという設定なのだ。
言うなればかの傑作ポーカー小説「ビッグ・ゲーム」のラストマッチに匹敵する闘いが全編に渡って展開するようなものだ。興奮しない方がおかしい。
最初は不純な動機で手に取ってもこういうことがあるから読書は愉しいのだ。これからも不純な動機でどしどし読もうっと。

キャラクターもライフスタイルはダサいが仕事ぶりは極めてストイックなヴェイルや絵に描いたような純粋無垢さが妖しい怪しさを醸し出すエアロンの他、
ボクサー崩れで弁護士志望の調査員トミー、助手の黒人美熟女ネオミ、有能でチャーミングな精神科医モリー、くだ巻き(元)判事スポルディングなどそれなりに多彩。
ライバルのヴェナブルも赤毛ですらりと伸びた肢体に高い鼻、そして証人と恋に落ちる情熱を持つ美女というなかなかのタマ。

終盤に至ると結末を知っているせいかやや失速した印象を受けた。ヴェナブルの反応は予定調和ではないかとか、そのトリックは成立不可能ではないかとか。
ただここまで引っ張ってくれたのだから水準以上であるのは間違いないと思った。
続編もすぐ読む。

736 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/10/10(土) 14:54:13.24 ID:iwdJIT5W.net
「邪悪の貌 上・下」ウィリアム・ディール(徳間書店)

田舎町で平凡な主婦が惨殺される事件が発生。弁護士から地方検事補へと転身していたヴェイルは死体の状況に驚愕する。
10年前自身が手掛けた殺人事件と酷似していたのだ。しかしあの時被告人として裁かれた人物は今も施設に収容されている。ならば一体誰が……。

「真実の行方」続編。3部作の2作目らしいが最終作は未訳ぽい。残念……と読む前は思っていた。

まずまずいのは構成。次々に死体が見つかるもんだからてっきり連続殺人なのかと思いきや、別々の事件に過ぎない。モジュラー型? なかなかヴェイルがメインの事件に向き合わず読んでて焦れる。
これが一作目ならそれでも良いが、あからさまな続編なのだからこれでは興を削ぐ。上巻は脇ででほぼ潰れたので、下巻だけでいいくらい。

次にまずいのは犯人の狙い。タイミングや動機はまあ納得してやってもいいが、リスクを考えていなさすぎる。作者がキャラクターを怪物化するあまり辻褄合わせを疎かにしてしまったのではないか。

こうなるとヴェイルとヒロインとのベッドに至る距離の短さにまでケチをつけたくなってくる。実は最初から惹かれていた、なんてそれはないだろう。

ラストの引きも陳腐の一言。続編未訳もむべなるかな。これでお別れ可能。

737 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/10/10(土) 14:55:45.39 ID:iwdJIT5W.net
「ダイヤに最後の挨拶を」デレック・ランバート(文藝春秋)

引退していたダイヤ泥棒ジョニー・ローズは退屈な日常に耐えきれず再びダイヤを盗もうと企む。
今度の獲物は4000万ドル相当! 史上最大のダイヤ奪取を成功させるべく同じく一線を退いていた古強者二人を誘い大作戦を実行に移すローズ。
しかし、取締側に転向した元泥棒と敏腕警部がその前に立ちふさがる!

読み出し当初は6〜70年代のおしゃれな犯罪映画の趣がありそうだなあと思ったものの、だらだら仲間と打ち合わせるばかりで全然本番が始まらず失望。
元ナチの撃墜王でサド趣味の老人をスカウトしたりして面白さの種はあるんだけど、作品として昇華してないのね。

5分の4くらいまで来てやっと作戦スタートになるんだけど、あっという間に終わっちゃう。一応スリルも意外性もありはするけど、短いのは物足りない。
尼レビューにあった“恋の鞘当て”なんてのもないし……。

738 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/10/11(日) 20:39:05.48 ID:5W9cnhrT.net
リチャード・マシスン「深夜の逃亡者」を読む。
ストーカー体質なキティ(イケメンな元ピアニスト)が病院を脱走、
片想いの女性の夫(広告マン)殺害へと向かう。
53年とオールドな作ゆえ、当時としては珍しいサイコ・ミステリちゅーか、
サイコ・サスペンスであろう。
直接描写は避けているものの、アッー!な看護人とのセックスシーンやその
殺害シーンも、現代視点ならおとなしめとはいえ、当時は強烈なものがあった
であろうな。
さて、作品の出来そのものは、稀代のストーリーテラーの手になるものだけあって、最後まで一気に読ませはするものの、まあそれだけとも言い得る。
殺人者であるキティは自爆(墜落死)、脇キャラの悪女とまでは言い得ぬが
ビッチなマネの妻は刺殺されてまう。
ラストを事件現場に駆け付けた警官たちのあっさりとした会話で締めているのは初期の87分署シリーズみたいで雰囲気良しという程度かな。

739 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/10/25(日) 13:33:59.73 ID:1VMj/qtD.net
サマセット・モーム「ジゴロとジゴレット モーム傑作選」を読む。
厨房時代にこの作者の短編「雨」を読んだ時のインパクトはいまだ忘れ難い
ものあり、しかし、その後スパイ・スリラー小説の古典、
短編連作「アシェンデン」、
代表作と称される「月と六ペンス」等の長編も読むが、
正直、つまらなくはないがイマイチという感があった。
本書はひとみパパこと金原端人氏による読み易い新訳で、
多彩な作品がセレクトされており一応面白く読める。
しかし、やはり前記「雨」に匹敵するものは見当たらずであった。
収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「アンティーブの三人の太った女」
リゾート地でダイエット中のブリッジ大好きな中年ピザ3人女、
そこに同年代のスマートな中年女が加わったことによる大混乱(?)、
最後のダイエット放棄、食いまくりシーンまで軽くうまく(文字どおり(w )
読ませはする作。まあ、それだけとも言い得るが。
・「征服されざる者」
前収録作品とは180度異なる。第二次大戦中、独占領下における仏の田園
を舞台にしたシリアスな作。
レイプされ妊娠した農家の娘(元教師)とその父母、そして主人公
となるのは何とレイプ犯たる独兵(鬼畜とかでなく農家出身の好青年、イケメン
なんである)、彼らの交流の果ては子殺しという悲惨の結末に・・
訳者あとがきに記されたとおり、サマセット作品にしては異色の構成・内容
であるが、とにかく後味が悪過ぎるのが難。

740 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/10/25(日) 13:34:36.11 ID:1VMj/qtD.net
・「キジバトのような声」
贅沢でわがまま、無教養な主人公のオペラ歌手を決して否定しない
語り手=作家の姿勢が徹底しているのが面白い小品。
・「マウントドラーゴ卿」
これは夢の中の殺人ネタというホラーとして読める作。
主人公の精神分析医も特殊能力の持ち主の如く描かれる。
エンタメ度は高いが、地に足が着き、かつ、面白いものが多い
サマセット作品にしては狙い過ぎてありきたりという感あり。
・「良心の問題」
凶悪犯罪者は果たして服役により反省や後悔を感じるものなのか?
この現代にも通じる問題を、流刑地を舞台にズバリ取り上げたのが本作。
答えは、そうでない場合ありなんである。
さすがサマセットという感を抱くリーダビリティ大で読み応えもある作。
・「サナトリウム」
主人公の名はアシェンデン、しかし、スパイ・スリラーには非ずだ(w
短い作ながら、丁寧な筆遣いでサナトリウムの人間模様が興味深く
描かれている。ラストは一応のハッピーエンディング(と言うてよいかと)
・「ジェイン」
登場時はぱっとしないヒロイン=ジェインのキャラが立ってくる展開
が面白し。彼女の義姉に対する最後の台詞「それは、お姉様が、ほんとの
ことをいわれても、ほんとだってわからないからじゃない?」
これは強烈ですわ。
・「ジゴロとジゴレット」
若いアクロバティック芸人夫妻の悲話ではないが哀話と言い得る作。
単純とも言い得るストーリーなのだが、表題作に冠されただけあって
妙に心に残るものがある一編。

741 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/10/31(土) 03:16:14.99 ID:VJUlxY16.net
「小説アーサー王 エクスカリバーの宝剣 上・下」バーナード・コーンウェル(原書房)

時は中世。大陸の北方に位置する島ブリタニアはローマ人の支配から脱した後の戦乱が未だ収まることなく続いていた。
東からサクソン人が、西からはアイルランド人が侵入しそれぞれ王国を樹立。先住民たるブリトン人の国々も終わりのない戦いに明け暮れていた。
ペンドラゴンの称号を持つ大王ユーサーには後継ぎとなるモードレットが誕生するが、幼い王子に不安を抱く大王は諸侯が居並ぶ会議の場で後見人を指名する。
その一人に挙げられたのが王子の異母兄アーサーだった。雄々しく心優しき戦士アーサーは多くの支持を集めブリタニアについに平和が訪れるかに見えたが、一人の女との出会いがすべてを変えてしまうことになる……。

ミスマガのバックナンバーを読んでいて目に留まった作品。
アーサー王物語というNTRかつBADということで読む気がしなかったのだが、紹介文によるとこれは少し違うようなのだ。
アーサーの出自についてもオリジナル設定のようだが、読んで一番驚いたのはアーサーに次ぐ重要人物たちの解釈。これは斬新。

物語自体も血と汗と泥にまみれた戦国小説といった趣で読み応え充分。特に「氷と炎の歌」ファンにお薦めしたい。

本書は三部作の一ということで、まだまだ楽しめそうだ。結末も変えてあるようだし期待期待。

追伸 この邦題はいただけないな。本作は超常的な要素はほぼなく、エクスカリバーもあくまでアーサーの愛剣以上のものではないし。
とは言え魔術師マーリンは登場するしトリックスターの役割を担っているけれども。

742 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/10/31(土) 03:20:48.85 ID:VJUlxY16.net
「小説アーサー王 神の敵アーサー 上・下」バーナード・コーンウェル(原書房)

奇跡的な勝利を遂げ、ブリタニア平定に大きく近づいたアーサー。グィネヴィアも懐妊し、流浪の王子ランスロットの縁組みも決まりすべては順風満帆に進んでいくかに見えた。
しかし、モードレッドの即位を目前にして悲劇は繰り返されブリタニアは再び火種を抱えることになる。そんな中ダーヴェルはマーリンに従い魔法の大釜を探すため征服された国フリーンへ向かうのだった。

三部作之二。あ、ダーヴェルはアーサーの腹心で本作の語り手です。
閑話休題。いよいよ有名なあの大型爆弾が引火する訳で、ワクワク半分不安半分で読み進んで行きました。不安半分というのは、本作がダーヴェルを中心とした話運びになっていて
アーサーもグィネヴィアもランスロットも主要キャラクターであるとは言え、物語に占める割合はさほど大きくないことによります。
要するにあまり感情移入できないだろうなってことです。

ところがどうしてどうして意気込んで読めました。期待とは少し違いますが。というのはダーヴェルの物語としても十分に手に汗握れる仕上がりになっていたからです。
それがアーサーの物語に流れていって最大の盛り上がりを(現時点で)見せるという次第です。
これまで清廉な純粋真っ直ぐ君であったアーサーが否応なしに大きく変わらざるを得なくなります。それは成長でもあり……喪失でもあります。

ああ、次が楽しみです。さあ読もうっと。

743 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/10/31(土) 03:45:30.06 ID:VJUlxY16.net
「小説アーサー王物語 エクスカリバー最後の閃光 上・下」バーナード・コーンウェル(原書房)

悲しみに見舞われながらも陰謀による危機を脱したダーヴェルとアーサー。しかしアーサーは残酷な裏切りのため深い懊悩に囚われる。
そんな中ブリタニア併呑を狙うサクソン人の王エレとサーディックはドゥムノニアを窺い、対してマーリンとニムエはブリタニアを取り戻そうと恐るべき儀式に手を染めていた……。

完結編。いやそれに相応しい力作でした。
果たしてブリタニアはブリトン人の手に帰すのかサクソン人の手に渡るのか。モードレットの思惑は? アーサーとグィネヴィアとの関係は? ランスロットの運命は?
よく知られた様々なポイントに上手にチェックを入れていきます。
視点がアーサーに寄り添わないため程よい客観性を保ちつつそれらの帰趨を眺めることができ、ダーヴェルが中心に据えられていることの利点を改めて実感しました。
というかこれやっぱりダーヴェルの物語なんですよ。サクソンの大軍に包囲されて孤軍奮闘したり強大な呪いを解くべく単身魔境へ乗り込んだり、そしてラストも。ダーヴェルとマーリン、ダーヴェルとニムエ、そしてダーヴェルとあの人……うん、満足です。

そしてやっぱりコーンウェルは巧い!
書き方によっては「何で赦すねん!」「斬れよ、斬れ!」と叫びそうなところを流石の説得力で描ききっています。そりゃあの終幕も納得ですよ。
小悪党に描かれている奴にも不思議と愛着が沸いたりしてね。あれだって○を○○○ためでしょ? ね?

ちなみに本書で最も印象に残ったキャラクターはエレでした。粗野ですが豪放磊落で気っ風が良く茶目っ気もある硬骨漢です。そう言えばアイルランド人の王エンガスも貪婪ですが頼りになる良いキャラでしたっけ。
非ブリトン人のが魅力的ってどうなのかしら(笑)。

改めて書きますが「氷と炎の歌」ファンも必読ですよ。あの熱気と臭気が、ここにはあります。

744 :名無しのオプ:2016/01/01(金) 17:21:28.65 ID:kkxPSdzcF
早川ポケットミステリブック「六人目の少女」ドナード・カッリージ\清水由貴子訳

すごく面白いと思うが、ここまで行くとファンタジーだろうと読後思ってしまった。ミステリーファンタジー。

745 :名無しのオプ:2016/01/01(金) 23:43:43.62 ID:aDmvDvqpE
文春文庫「その女アレックス」P・ルメートル\橘明美訳
ただただ、悲しくて悲しくて。

746 :名無しのオプ:2016/02/02(火) 23:48:18.48 ID:/NyIq8cet
最初は私も怪しいと思いましたが、
結構有名な所みたいで、何にも心配いりませんでした。
是非お役に立ててください。
http://goo.gl/eNRrYJ

489 KB
新着レスの表示

掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50
名前: E-mail (省略可) :

read.cgi ver 2014.07.20.01.SC 2014/07/20 D ★