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『読みました』報告・海外編Part.8

1 :名無しのオプ:2013/09/04(水) 17:04:07.05 ID:oFD80D8W.net
『読みました』報告の形式は自由です。
ただし当然ながら犯人、トリック、プロット等々の
メール欄以外でのネタバレは厳禁です。
【前スレ】
『読みました』報告・海外編
http://book.2ch.net/test/read.cgi/mystery/984541588/l50
『読みました』報告・海外編Part.2
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1072265453/l50
『読みました』報告・海外編Part.3
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1141910665/l50
『読みました』報告・海外編Part.4
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1222100201/l50
『読みました』報告・海外編Part.5
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1222100201/l50
『読みました』報告・海外編Part.5
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1272900112/l50
『読みました』報告・海外編(書斎厳禁)Part.5
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1275659798/l50
『読みました』報告・海外編(書斎厳禁)Part.6
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1284256057/
『読みました』報告・海外編(書斎厳禁)Part.7
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1353323940/l50

2 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/04(水) 17:07:30.75 ID:oFD80D8W.net
 || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
 || ○荒らしは放置が一番キライ。荒らしは常に誰かの反応を待っています。
 || ○放置された荒らしは煽りや自作自演であなたのレスを誘います。
 ||  ノセられてレスしたらその時点であなたの負け。
 || ○反撃は荒らしの滋養にして栄養であり最も喜ぶことです。荒らしにエサを
 ||  与えないで下さい。                  ΛΛ
 || ○枯死するまで孤独に暴れさせておいて   \ (゚ー゚*) キホン。
 ||  ゴミが溜まったら削除が一番です。       ⊂⊂ |
 ||___ ∧ ∧__∧ ∧__ ∧ ∧_      | ̄ ̄ ̄ ̄|
      (  ∧ ∧__ (   ∧ ∧__(   ∧ ∧     ̄ ̄ ̄
    〜(_(  ∧ ∧_ (  ∧ ∧_ (  ∧ ∧  は〜い、先生。
      〜(_(   ,,)〜(_(   ,,)〜(_(   ,,)
        〜(___ノ  〜(___ノ   〜(___ノ

3 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/04(水) 17:14:04.38 ID:oFD80D8W.net
「ビューティー・キラー3 悪心」チェルシー・ケイン(ヴィレッジブックス)

美貌の殺人鬼グレッチェンが脱走した!
折しも簡易トイレで惨殺体が発見され、施設で療養中だったアーチーはまたもグレッチェンとの対決を強いられることに……。

これ読む前不機嫌でした。だって作者は当初3部作の予定だったのに止めたって言うんですもの。うわこりゃいかんですよと。
いくら魅力的な悪役だろうとズルズル引き摺られて延命されるんじゃ興醒めです。何事も退き際が肝心なんですから。
しかぁし、読み終えて反省しました。これなら認めます。流石キングをして「ハンニバルレクター通りは〜」と云わせただけのことはある作家でした。お薦めです。

4 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/04(水) 17:35:11.57 ID:oFD80D8W.net
「三本の緑の小壜」D・M・ディヴァイン(東京創元社)

ゴルフ場で少女の全裸死体が見つかった。容疑者とされた医師は崖から落ちて死亡。
しかし殺人は止まなかった。医師の弟の医師は兄の友達だった女性とも協力しつつ事件の謎に挑むのだが……。

いや傑作。ディヴァインは本当に上手いし巧い。ミステリーとしても一級品なのは勿論だが、登場人物たちの描写がまた秀逸!
この意地悪さ、無気力さ、偽善さ。こういうの書かせたら天下一品ラーメン屋だね、マジで。動機に纏わる部分なんて凄くリアルに感じられてしまった。
そして本作は少女がたくさん出てくるが彼女たちの心の動きも実に丁寧にさもありなんに描かれていてため息もの。シーリアとか、秀才の子とか。
更に謎解きに次ぐディヴァインの魅力であるロマンスもバッチリ。ラストに刑事が語りかけるセリフが印象的。だが歯医者(だっけ?)、テメーはダメだ。最後だけ良い役で終わろうとしやがって。

絶対にお薦めの作品。本格嫌いの傲爺にも読ませたい。

5 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/04(水) 17:52:12.10 ID:oFD80D8W.net
「希望の記憶」ウィリアム・K・クルーガー(講談社)

濡れ衣を着て逃亡中のコークは従姉妹に助けられる。そこで父が殺されその容疑者となっている少女と出会うコーク。
甥っ子と共に彼女を助けようとするのだが……。

このシリーズは完全にシリーズ読者のためのものになったと確信したね。書評家どもがさんざ騒いでいた前作のラストが実際はてんで大したことない稚拙なクリフハンガーだった
ことからも明らかだったが益々その意を強めた。クーガーがなんちゃらとかもあまりピンと来ないし。
本作最大のマイナスポイントは少女の描写。ディヴァインの次だから差が露骨に感じられて無惨だった。思春期でアイデンティティの確立に悩む少女の最大公約数がここにある。子供を馬鹿にしちゃいかん。
あと後半コークたちが彼女を一人で行かせるシーンがあるんだけど、命狙われてんのにアホかと思った。

おまけに解説が雑。よみうり読んでても思ったが、この人は人間は良いんだが書評の才能が不十分。

6 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/04(水) 18:01:22.75 ID:oFD80D8W.net
「十三時間前の未来」リチャード・ドイッチ(新潮社)

妻が殺される未来を変えるため過去へのタイムスリップを繰り返す男の話。

ま、面白かった。「時の地図」ぽいのかなと思ったがあれにはかなわない。

7 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/04(水) 18:26:18.76 ID:oFD80D8W.net
「地下室の殺人」アントニイ・バークリー(国書刊行会)

新婚夫婦の新居の地下室から女性の腐乱死体が発見される。
モーズビー警部の捜査とシェリンガム探偵の推理の果てに見えた真相とは――?

バークリー攻略作戦。やはり毒チョコスルーしたのは不味いかなあ。でも短編読んだからなあ。
本作は被害者探しや作中作がヒントになるという趣向の面白さが特徴。ラストの捻りのある展開も○。
しかしシェリンガムにロマンスは無いのかね?

8 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/04(水) 18:55:40.83 ID:oFD80D8W.net
「生、なお恐るべし」アーバン・ウェイト(新潮社)

麻薬の運び屋ハントはアクシデントから保安官に見つかり逃亡する。仕事に失敗したケジメをつけるため別の仕事を請け負うハントだが依頼した組織は既に彼を始末すべく殺し屋を差し向けていた。

読み甲斐のない小説。暗くて地味な描写と展開が延々続くだけ。これに比べれば「夜を希う」はスカスカでありがちとは言えちゃんとストーリーがあった。
コリータと同じでなまじ書く力はあるから読ませてしまうのがね……。それで何冊か書いちゃうんでしょうが、もう読みたくはないな。

9 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/04(水) 20:29:17.06 ID:oFD80D8W.net
「ハニートラップ探偵社」ラナ・シフロン(作品社)

探偵社でおとり捜査をしているイシーの息子マックスが庭で指を見つけた。しかし警察に届ける前になくしてしまうイシー。
彼女は公私共にトラブルを抱えながら恋に仕事に奮闘するのだった。

こんなもんを、それも単行本で出すなんて作品社の見識を疑う。読む価値ゼロ。
その理由は2つ。
1、ヒロインがクズ。
タイトル通り妻帯者を陥れて離婚を依頼人たる妻の有利にする所謂「別れさせ屋」をやっている糞ビッチ。そんなんで息子食わせて恥ずかしくねーのかと。
つか息子も想定外だったとか言ってたぽいし。それでいて他人には常識ないとか怒って見せるんだからどうしようもない。
2、ストーリーが古い。
独身女が仕事やら日常生活やらを愚痴りながら分かりやすいイケメンによろめいて……って10年遅れのブリジット・ジョーンズなんか今更誰が読むんだよ。
マーケティングもろくにしてなさそう。

百歩譲って文庫でコージーレーベルで出すべきだった。

10 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/06(金) 17:42:17.85 ID:swxkAa5s.net
「死の航海 上・下」ポール・ギャリスン(扶桑社)

スポーツトレーナーのジムは、富豪のウィルに雇われ、彼のヨットで大西洋に漕ぎ出した。
直前に足の不自由な恋人シャノンからプロポーズを断られ失意のジムは彼女の進めもあってこの旅を決意したのだった。
滑り出しは順調に見えた。しかし、不審船がヨットの前に現れる。どうやらウィルには心当たりがあるようなのだが……。

面白かったよ。コーンウェル=海のフランシスとは違う味だけど。どこがって? 忘れちゃった(笑)。とりあえずそこは期待しないでってことで。
ジムが前半はウィルと、後半はシャノンと組んで闘うという構造。つまりまず師匠と、次に独り立ちして弟子とというパターンでこの二段構えは読み応えがあっていい。
相思相愛にも関わらず一筋縄ではいかないジムとシャノンとの恋模様も重要なストーリーの構成要素たりえている。本来の格差が障害によって減るのを良しとしないという思い。

海や船の専門的な部分はまだ知らないし興味もないので評価は差し控える。

11 :名無しのオプ:2013/09/07(土) 18:54:41.75 ID:TeAu9SsR.net
>>1乙。次回から下もテンプレに入れましょう。
自分を中傷する書斎魔神(少なくともその支持者と称する人物)に優しい読後感さんは
個人的にはいい人だと思うけど。

NGワード・あぼーんのススメ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■書斎魔神 ◆AhysOwpt/w とは?
かつて発狂コテにも認定された、読みましたスレに住みつく
NGワードの指定対象人物。
ネタバレを含めた持論を主張し続け、また、
議論においても他者の意見を受け入れようとしない傲慢な態度から、
他の住人からは忌み嫌われることに。
前スレでのアホアホ発言を一部抜粋。
『 乱歩賞受賞作「暗黒予知」を読み返していた。 』(そんな作品はない)

誹謗中傷当たり前、間違いを認めない、自作自演当たり前と、
三拍子揃った厄介物。
彼の発言に反応してしまうとスレが荒れる一方だが、
反応さえしなければ独り言を言い続けるだけなので、
余程のことがなければ、NGワードに指定してのスルーが推奨される。

■NGワード・あぼーんについて
2ちゃんねる専用ブラウザのオプションのひとつ。
設定することで、任意のレスを消すことができる。

2ちゃんねる専用ブラウザに関するサイトはこちら。

http://www.monazilla.org/

12 :名無しのオプ:2013/09/07(土) 18:57:59.14 ID:TeAu9SsR.net
書斎魔神(=でつまつマン)にどうしても我慢できない・反論したい場合は、下記スレにて

書斎魔神・アホアホ語録指導部屋 21
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/8993/1374298533/
書斎魔神・アホアホ語録格納庫 その33
http://anago.2ch.net/test/read.cgi/tubo/1325054903/
【俺は】書斎魔神ファンクラブ16【化物じゃい】
http://ikura.2ch.net/test/read.cgi/bobby/1371130456/

13 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/12(木) 18:34:37.53 ID:krDqswIn.net
「死神の追跡者 (トム・マーロウの奇妙な事件簿)」クリス・プリーストリー(ポプラ社)

18世紀ロンドンを舞台に奇怪な殺人事件に巻き込まれた少年トムの冒険。

「モンタギューおじさんの怖い話」などとは違い、長編でシリーズ第一作。そしてエドガー賞受賞作。
さすがにシリーズものでバッドエンドには出来ないようで、こちらは子供向けに良い冒険ミステリーに仕上がっています。
大人が読むとホラー的にもミステリー的にも物足りなさを感じますがそれは仕方ないですね。

14 :書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/09/14(土) 19:44:59.51 ID:K+r49unO.net
>>1
スレ立てサンクス、乙!
>>11-12
すぐ逝け!(w

二階堂黎人・森英俊共編「密室殺人コレクション」を読む。
まあ、今は昔(と言うても21世紀初頭の夏だが)、こんなアンソロジーも
出ていたわけである。
早速だが、
久々に大好評な収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ「つなわたりの密室」
本書の半分を占めるボリュームの中編。
あの怪作(と言うてよかろう)「赤い右手」の作者の手になる密室もの、
さて、どうなることかと思いきや、真相は意外にシンプルなものであった。
邦題「つなわたり・・・」の意味をいかに解するかによるんだよね。
とにかく叙述がキーとなる作(例えば「犯人と出くわした可能性のある人物が
一人だけいる」といったもの)なので、巻末の編者対談で二階堂君が
「とにかく読み終わったらもう1度はじめから読んで欲しい作品」と言うて
いるのはわからぬではない。
持って回ったような表現による読みにくい文体が難、
(ゆえに、ウールリッチに似ているという二階堂評には納得なわけだが)
ただし、「赤い・・」も同様な嫌いがあったから、これは原文を忠実に反映したことによるものであろうか。
余談ながら、その昔には、NY市警にタキシード警官なんて制度が
あったんだ・・・

15 :書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/09/14(土) 19:46:25.77 ID:K+r49unO.net
・マックス・アフォード「消失の密室」
扉の影に誰かいる、でなくして、正に「扉に隠れる」とか。
密室ネタだけで軽く仕上げた方がベストだったかと思う。
クライムノヴェル風な展開は、設定も無理やりで蛇足という感あり。
・ジョゼフ・カミングス「カスタネット、カナリア、それと殺人」
ジョン作品を想起させるフィルムねた。
だが、まあ、それだけの作とも言い得る。
探偵役が上院議員という社会的なステータス溢れる設定ながら、
いかにも(悪い方の意味で)アメリカン・ミステリな軽薄、饒舌なタッチは
好みではない感あり。
・ロバート・アーサー「ガラスの橋」
本作はある意味でジョンもビクーリなトンデモトリック(正に「飛んでも」な
要素あり)。「そんなん上手くゆくはずないやろ」と突っ込んだ時点で
野暮天なんでしょうな。狭義の密室ネタではなく人間消失ネタ。
・アーサー・ポージズ「インドダイヤの謎」
探偵エルパロディだが、茶化しているわけではなく、名探偵ぶりは健在。
これもおふざけなトンデモ、「あのカバを撃て!」でした(w
・サミュエル・ホプキンズ・アダムズ「飛んできた死」
思い切って「プテラノドン殺人事件」(誤解を招かないためには「プテラノドンの殺人」の方がモアベターかも(w )としてしまった方が、
本作の「売り」部分を端的に表しているかと思う。
フェアなフーダニットという面からは駄目駄目ながら、逆立ちにはマジ笑える。
プロファイルを読む限りでは、
非ミステリ作家(というかジャーナリスト)だし、まあ、こんなものでしょ。

16 :名無しのオプ:2013/09/15(日) 11:47:37.61 ID:CVY6x+ZD.net
いつものパクリ論考wは自分専用の隔離スレでやれバカ書斎w

読後感氏、スレ立て乙です。

17 :書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/09/15(日) 22:04:05.87 ID:fW4seqo8.net
>>16
即刻逝け!(w

ロス・マクドナルド「兇悪の浜」を読む。
リュウ・アーチャー・シリーズ初期作品中(本作は第6作)
ポール・ニューマン主演で映画化された「動く標的」「魔のプール」等と
比較してマイナーな作だが、初期のアクティヴなアーチャーの探偵譚としては、
見劣りするものではない。
しかし、アーチャーの探偵行につき合うのは、なぜか疲れる。
語りにハメットやチャンドラーほどのメリハリが無いせいか。

18 :名無しのオプ:2013/09/15(日) 22:06:06.16 ID:1x8CAPLe.net
逝くのはお前だろバカ書斎w

19 :名無しのオプ:2013/09/16(月) 09:18:07.05 ID:VmYKc3tG.net
読後感の感想の方が読みやすくていいね

20 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/16(月) 20:32:08.08 ID:RMP8j9mQ.net
>>13
候補作でした。訂正。

「殺す風」マーガレット・ミラー(東京創元社)

仲間とのパーティーに向かう途中で消息を絶ったロン。彼の行方を巡り仲間たちに隙間風が生じていく。
仲間の一人ハリーの妻セルマがロンと不倫をしており、妊娠までしてしまったというのだった。
やがてロンが生きているらしいと解りセルマは夫の元を去ろうとするのだが……。

初ミラーですが、いやーこんな小説書くんですね。ミラーててっきりハイスミスみたいな心理サスペンス書いてる人かと思ってスルーしてたけど、我が身の不明を恥じますれば。
こういう作家ならもっと読めますよ。やっぱりロスマクの奥さんは違うね。とこちらも2作しか読んでない奴が言っちゃいました。

あと邦題がセンスあるよね。名付け親誰かな。詩人ぽい。

21 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/16(月) 21:04:39.13 ID:RMP8j9mQ.net
「魔性の殺意」ジョン・ソール(扶桑社)

殺人鬼クレイヴンの死刑執行に立ち会った新聞記者アン。クレイヴンの事件は彼女が追い続けたネタだった。彼は死ぬ間際に不気味な言葉を遺す。
同じ頃遠く離れたシアトルではアンの夫グレンが命の危機に見舞われていた。

初ソールかな。まあネタはすぐ判るんだけどそこからジワジワ追い詰められていく過程を楽しむ感じかしら。
このネタと親和性が高いのはエロだと勝手に思うんだけど、そこは今一つだった気も。
あとインディアンの無駄遣い。

22 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/16(月) 22:54:50.13 ID:RMP8j9mQ.net
「非情の日」ジャック・ヒギンズ(早川書房)

イギリス情報部に所属していたサイモン・ヴォーンは密輸がバレてギリシャで投獄され、解放を条件にイギリス軍からの依頼を受けることに。
その内容はIRAに奪われた金塊を取り戻すことだった!

マシューの妻はアリス?
まあいつものヒギンズじゃない? 特に印象に残らずすまんこって。

23 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/16(月) 23:53:04.82 ID:RMP8j9mQ.net
「国会議事堂の死体」スタンリー・ハイランド(国書刊行会)

工事中のビッグ・ベンの壁の中から白骨が見つかった!
着衣から100年前の人物と推定され、若手議員ブライの呼びかけで議員たちが白骨のことを調べ始める。やがてその背景が明らかになっていく かに思われたが……。

これ一度200ページくらい読んで挫折したんだよね。つまんなくて。物語がないんだもの。調査レポート読んでるみたいで。
でもバークリーが真の傑作言うたらしいし評判はいいので再チャレンジした訳。

閑話休題。なるほど、こういう筋書きだったのね。これは確かにいい。評価する。プロットとしては見事。コペルニクス的転回と言ってもいい。いかにもバークリー好きそう。
しかしやっぱりストーリーなんだよ。そこがぽっかり抜けている。論理テキストみたいで傑作とは言えないわ。
解説のべた褒めもちょっと無理してない? この叢書の読者って黄金時代周辺の雰囲気も重視してるでそ。

24 :書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/09/17(火) 00:12:46.92 ID:s8C6uui3.net
コーネル・ウールリッチ「ホテル探偵ストライカー」を読む。
集英社文庫世界名探偵コレクションの1冊。
名だたる名探偵と並んで「何でやねん?」の声があがろうが、
まあ、シリーズキャラは無いウールリッチだが、どうしても入れたかったん
であろう。企画趣旨から出る疑問はともかくとして、収録作品はバラエティに
富んだ面白いものがチョイスされているかと思う。
それでは、絶賛好評中、収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「913号室の謎 自殺室」「913号室の謎 殺人室」
別な短編ではなく、第一部、第二部とすべき作。
初読はジュブナイル版だったが、そのスリリングな面白さに魅了された
のも懐かしい。都会派作家ウールリッチ、舞台は十八番といえるNYのホテルだが、
彼の作としては異例な怪奇探偵小説。トリックもジョン張りのトンデモぶり(釣竿、方向錯覚ネタ)である。
おなじみのセンチなウールリッチ節は抑制気味で、
前半は自殺が相次ぐ913号室の謎を強調してスリルを盛り上げ、
後半は一転、その謎解き物語へ。この語りの転換が実に見事や。
その容貌に関する描写は殆どないものの、
ホテルの最上階の部屋にひとり暮らし、小型ラジオ1台とSF&ホラーの
パルプマガジンを人生の唯一のよりどころとする主人公、
ホテル探偵ストライカーのキャラも、アキちゃんじゃないが、
「マジ、かっけー!」のだ。
もっと彼氏を主人公にした作を読んでみたかった気がする。

25 :書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/09/17(火) 00:13:20.67 ID:s8C6uui3.net
・「裏窓」
あのヒッチコック作品の原作である。
ただし、ヒロインは登場せず。
ミステリとしては、遅延反応からの推理、ここから明らかになる
死体処理法が読ませどころであり、面白くはあるのだが、
プロに疑問を抱かせないほどの仕上げってのは果たして可能だろうか?
とかは思うてしまう。
・「ガラスの目玉」
偶然、手に入れたガラスの目玉=義眼をめぐるた少年(刑事の息子)の
冒険物語。
終盤のアクション展開はまずまず読ませるものあり。
判明する真相は個人情報たれ流し時代には有り得たであろう凄惨なものだが、
親孝行物語の印象の方が強く、暗い感はない。
・「シンデレラとギャング」
こちらはギャングの追跡戦に巻き込まれた少女の一夜の冒険物語。
結果は悲惨だが、ラストのシンデレラねた(靴)の粋なオチもあって、
やはり暗い印象はない。

26 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/17(火) 20:33:35.99 ID:rG1Q/IGf.net
「救いの死」ミルワード・ケネディ(国書刊行会)

地方に住む裕福な独身貴族エイマーは探偵ごっこに興じて映画俳優の突然の引退の謎に迫るのだがそこには謎の殺人事件が絡んでいて……。

不快な気分を味わいたいならと薦められ確かに不快な気分になりました。
オカされた探偵役と言いますかね……。
その辺の味わいがメインであってミステリーとしては水準作? かな(淳の嫁)。

ただ構成が甘いなと思った。例えば迫られてたなら残って茶しないだろうとかね。
とまれスリープ村もいつか読もう。

27 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/17(火) 20:57:26.85 ID:rG1Q/IGf.net
「パーフェクト・ライフ 上・下」マイク・スチュアート(東京創元社)

何者かに追い詰められていく見習い精神科医スコット。殺人の濡れ衣まで着せられ決死の逃亡、そして真実を暴こうともがく!

巻き込まれ型好きなんで期待して読んだんですが、裏切りや濡れ衣も大好きなんで楽しめましたわ。
早々にオナニー好きの巨乳看護婦も出てくるし。

28 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/17(火) 21:39:53.78 ID:rG1Q/IGf.net
「サイロの死体」ロナルド・ノックス(国書刊行会)

田舎のお屋敷で深夜に行われた自動車レース。招待客たちが嬉々としてゲームに興じる陰でその一人が死体となって発見される。
見つかった場所はサイロの中。果たして何が起こったのか?

ノックスの長編は4冊目。この人論理遊戯に走りすぎるきらいがあってちょい苦手なイメージがあったんだけど、
本作はさほどでもなく、古典本格として楽しめますた。
深夜の自動車遊びとかいかにもぽいじゃあ〜りませんか。ちょっと聖職者の風刺も入ってんじゃねか。

でもピーを片付けたのならピピーに気付かない訳ない。

29 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/17(火) 21:52:23.79 ID:rG1Q/IGf.net
「チベットから来た男」クライド・B・クレイスン(国書刊行会)

チベットの秘伝書を持っていた男が殺された。男は秘伝書を売り渡したばかりだった。犯人と目された人物はかき消すようにいなくなる。
一方秘伝書を追うラマ僧が現れ、それを買い取った富豪メリウェザーの元では奇妙な出来事が多発していた。
そして稲妻が走る夜、施錠された部屋で殺人が!?

この叢書中の異色作らしく期待して読んだが、思ったほどではなかった。「死の相続」レベルのものにはなかなか巡り会えないね。

あとロマンスに失望。
しかし巨乳ジャニスに萌え。

30 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/17(火) 22:52:44.28 ID:rG1Q/IGf.net
「扉は今も閉ざされて」シェヴィー・スティーヴンス(早川書房)

不動産業者アニーは客を装った男に拉致され山奥の小屋に監禁され凌辱され続ける日々を送っていた。
ある日やっとの思いで脱出を果たしたかに見えたのだが、悪夢はまだ終わっていなかった……。

「隣の家の少女」(未読。多分ずっと)にエロがあればまだ良かったという意見を聞いたことがあるが、俺が本作に期待したのも正にこれ。
拉致られた当初はおはなし的ギリセーフだが、長期監禁される訳なので時間の問題なのは読者も悟っている。しかし何か描写がイマイチ温めで。寿行を見習わんかい!

監禁生活が前半で、後半新たな展開があるんだけど、ここがどうしても気抜けた感じになっちゃう。親友や恋人、家族との関係などもあまり興味を引かない。
そうやってきて最後に待ち受けるどんでん返しも今更感がして反応に困る。

まあデビュー作としてはまあ合格と言ってもいいけど、次読もうとは思わんね。

追伸
332の謎。
パンティ紐無関係。

31 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/17(火) 23:33:42.07 ID:rG1Q/IGf.net
「マンハッタン特急を探せ」クライブ・カッスラ・(新潮社)

第一次大戦中、列車事故により水中に眠る機密文書。それはかつてイギリスがアメリカにカナダの売り渡しを約したものであった。
そして現代。独立運動が激化しつつあるケベック州の沖合に巨大な油田が見つかる。アメリカは何とか手に入れようと陰謀を巡らせる。
アメリカ、イギリス、ケベック解放戦線などの思惑が絡み合う中、依頼を受け文書を探すNUMAのダーク・ピット。
そんな彼の前に幽霊列車の謎が立ちはだかる。

このシリーズ読むのは2冊目だが、凄いねこの盛り沢山の内容。
海洋冒険ものかと思いきや、各国のスパイやテロリストたちが入り乱れて挙げ句は本格地味た列車消失トリックまで炸裂するんだから。

ヒロイン、ハイジの尻軽ぶりも良いね。ピットと会ってサクッと寝る。イギリスの老スパイとも寝て2ページでイッて情報もバラしちゃうし。良い人材だよ。
でも肝心のピットが何事にも動じない聖人みたいな描写されちゃってるもんだから拍子抜け。折角の寝取られ展開なのにこれじゃ張り合いがないよ。

当分読むことはないと思うが他にもこういう異色作があるなら摘み食いしたいな。ソフバンのも含めて。

32 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/17(火) 23:56:33.43 ID:rG1Q/IGf.net
「暁に走れ 死への42.195キロ」ジョン・ストック(小学館)

上級職員であった父が自殺し、停職中のMI6職員ダニエルは恋人レイラに誘われてマラソン大会に参加する。
だがランナーの中に自爆テロを企む者が混じっていることを知り、ダニエルは命懸けで阻止しようとするのだが……。

これは久々の傑作エスピオナージュじゃおまへんやろか。堪能したわあ。こういうの書かせたら巧いのはやっぱりイギリス人なんやなあ。
あらすじは冒頭部分でこの後舞台はあっちこっちに飛びます飛ます。もうね、誰も信用出来ない疑わざるを得ない状況で展開していく。
その中から真実を丹念に佐賀市ながら読み進んでいかなならんとたい。伏線も叙述も丁寧で油断ならない。

話題にならなかったのは出版社のせいだと思う。「ケンブリッジ・シックス」よりこっちの方が緊迫感もプロフェッショナル感もあってのめり込めること請け合いよ。お薦め。
ただし扉右上に陰毛が貼り付いているので注意。

33 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/18(水) 01:49:23.06 ID:pGmHiMFD.net
「虜囚の都 巴里一九四二」J・ロバート・ジェインズ(文藝春秋)

ドイツ占領下のフランス。
国家治安警察のサンシール警部とゲシュタポのコーラー警部のコンビは
パリ郊外の森で発見された男の撲殺死体を捜査することになる。
やがて捜査線上に謎めいた美女が浮かび上がるが、何故かナチ上層部の圧力がかけられ捜査は難航する……。

以前から興味があったシリーズ。ゲシュタポ捜査官が主人公てだけでわくわく。
欧米人ことにアメリカ人にそんなバランス感覚あるのかと訝り半分だったけど、結果面白かった。

ただし最初は読みにくかった。文章が所々飛んでるみたいで状況が掴み辛くて。
それから主人公たちの推理は当てずっぽう臭く、サンシールの尋問が妙に温いのも気になった。
もう勾留してるならともかく外でありゃねーわ。次なかったらどうするよ。

それらを除けば、主人公たちのキャラクターもよく(共に知命のおっさんなのはあれだが)、プロットも練られており、
サイドストーリー(妻不倫他)も読み応えがあった。エロいしw
そうそう特に心に残ったのは次のやりとり。

「ルイ、おれにはもう我慢できない。あの葡萄園にいた連中の半分は兵役の年齢で、そのほとんどは二十代だった」
「なぜフランスが戦争に負けたと思う? フランス人の頭には女の胸か、祈るかしかないんだ。
ここは腐りきった国なんだ、ヘルマン。おまえと同じくらい、おれもこの国が嫌いなんだ」

「ベルリン・レクイエム」に続き占領下の街を舞台にしたミステリーの面白さを堪能させてくれた一冊だった。次も読む。

34 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/18(水) 01:58:51.06 ID:pGmHiMFD.net
「或る豪邸主の死」J・J・コニントン(長崎出版)

田舎の村で嫌われ者の資産家が殺された。被害者はどうやら恐喝に手を染めていたらしい。
治安判事のサンダーステッド大佐は訳あって真相を突き止めようと試みるのだが……。

黄金時代のガチ本格として評判らしいので読んでみた。
これは確かにガチだ。
ドラマ性も鬼面人を驚かすような仕掛けもなく直球を放ってくる感じだ。
飾り気のない邦題も本質をよく掴んでいると思う。

とはいえ、作中には殺人光線だの透明人間だの星幽体(て何?)だのとSFオカルト的な要素も散りばめられている。
とはいえ、作者はこれらをあまりおどろおどろしくは打ち出さず、抑えて書いている印象を受ける。
結局すべては読者との勝負を貫徹するための道具でしかないのだ。潔い。

真相もいい。簡単過ぎず混み入り過ぎずいい塩梅。理想的なフェアプレイ本格かもねむ。

しかし訳者女史、喧々は囂々だぞい。

35 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/18(水) 02:05:05.35 ID:pGmHiMFD.net
「蝋人形館の殺人」ジョン・ディクスン・カー(東京創元社)

セーヌ川に若い女性の死体が上がり、バンコランたちは彼女が最後に目撃されたという蝋人形館へ向かう。
しかし、彼らが不気味な館内で見たものは、サキュロスに抱かれた新たな女性の死体だった……。

読もうと思えば読めたのに完訳まで待つ俺カコヨス。
しかしダサい表紙だなあ、ジョーカーゲームかよ。媚びんなや。前の感じでいいのに。

さて本作は不可能犯罪という訳ではなく、密室も出てこない。もっと言うとトリックらしいトリックもない。
フーダニット一本に絞ったような作品と言える。そのための(本当に)フェアな伏線の張り方は面白い。
ただし動く蝋人形の謎やマスク着用の秘密クラブでの冒険など魅力的な要素はしっかりと盛り込まれており決して無機質な本格ではない。
またロマンス要素も乏しくそっち方面から見当を付けることも不可能。
故に読み応えのある本格になっているとも。

プラス動く蝋人形の謎やマスク着用の秘密クラブでの冒険など魅力的な、
そして特筆すべきはラスト。
最初は「これいるか?だって……」と思いつつページを繰るとギョギョギョ!?
しかしこれ矛盾してねーか?

36 :読後感(簡略版) ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/18(水) 18:21:20.06 ID:pGmHiMFD.net
「プラハの深い夜」パヴェル・コホウト(早川書房)

第二次世界大戦末期のチェコ、プラハで未亡人を狙った連続殺人事件が発生。
チェコ警察の刑事モラヴァとドイツ人検事プーバックは共同で捜査に当たるのだが……。

占領下のミステリー第三弾だがこれはちょっと失敗だったかも。
作者は純文で大家らしいが本作もミステリーの意匠を借りた戦争文学な希ガス。それで二段熟カレーの450はきついって。
犯人パートもあってサイコティックな雰囲気を醸すも尻切れトンボだし。
プーバックと恋人とのやりとりは感動的だったけど、それ読みたい訳じゃねーしな。

37 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/18(水) 18:56:22.29 ID:pGmHiMFD.net
「荒涼館(全4巻)」チャールズ・ディケンズ(筑摩書房)

親を知らず自分が何者かも判らぬまま生きてきた少女エスタ。
ある日彼女は裕福な紳士ジャーンディス氏の被後見人となる。同じ立場のエイダ、チャールズと親交を深める一方、
出会った人々に分け隔てなく接するエスタの人生は明るく開かれたかに思われたが、やがて彼女の出生に纏わる謎が大きく動き出してゆく。


何年も前からとにかく面白いと聞いていたので全4巻1800ページに少々怯みながらも思い切って読んだですよ。
面白かったですよ!
最初こそ前々世紀の小説のゆっくり具合、あいまい具合に焦れたり、飛躍した展開にギョッとしたりもしましたが、
程なく馴れてくるとそれも込みで楽しめる境地に到達……した気がします。
謎があり伏線があり殺人事件があり名探偵がありフーダニットがあり、単なるエンタメのみならず
ミステリーとしても結構楽しめますですよ。私はやられました。判ってたはずなのに解っていなかったのです。

それから興味深い登場人物がヤマト出てきます。家族そっちのけでボランティアに狂奔するおばちゃん、自称子供のニートおじさん、
裁判に取り憑かれたばあさん、キョドり過ぎる弁護士、神出鬼没で冷酷な警部、可愛いメイド、可愛くないメイド、
薄幸の乞食小僧、イケメン医師などなど。中でも無口な退役軍人とその奥さんとの夫婦が微笑ましくて良い。

ヒロインエスタの慎ましやかで時にストレートな語り口にも引き込まれ、
終章は少し悲しくなるほどでした。彼女とジャーンディス氏の関係が良いんですよねぇ。

あと終盤とある人物の指摘には「やっぱり!」と思わず声に出してしまいました。この辺も流石のディケンズ。巧みです。
セリフ回しが絶妙なんですよ。煙に巻く名人だったのではと勘ぐりたくなるほどです。

長いので気苦にお薦めします。
しかし、そんなことなら彼女は何故彼に頼んだのか……。

38 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/18(水) 19:11:39.24 ID:pGmHiMFD.net
「ストーカーズ」ケネス・J・ハーヴェイ(扶桑社)

ニューヨークで働くバリバリのキャリアウーマンアレクシス。
しかしプライベートはヒモのダリーにATM&便器として利用される日々。
そんなアレクシスの前にミステリアスな男スカイホースが現れた。彼に魅せられるアレクシスだったがその正体は恐るべき殺し屋であった。

つまんねー。くそつまんねー。
何が酷いってあからさまにエロティックミステリーなのにエロが少ないんだよ。
特にヒロインと殺し屋との初夜がバッサリカット! キモだろそこ。何で3回目から再開なんだよ。
じゃあショッカーとしてサプライズがあるかと言うと何もない。無意味にクロスカッティングした挙げ句
ただページが尽きましたって感じで終わる。

短くて読みやすいのだけが取り柄の駄作也。

39 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/18(水) 19:15:05.41 ID:pGmHiMFD.net
「死体をどうぞ」シャルル・エクスブライヤ(早川書房)

大戦下のイタリアにありながら砲火から逃れていた田舎の村で残酷な殺人事件が発生する。
折しも村人たちは敵味方に分かれていがみ合っており、被害者は一方を警察に告発したばかりのファシストであった。
程なくしてやって来た警部たちは殺人があったと聞き被害者宅へ駆けつけるが、死体は跡形もなく消え失せていた。

とはいえ、本書はユーモア・ミステリーである。
読者にとって死体消失は別に謎ではなく、あちこちに現れては消える死体の行方を巡るドタバタと、
二転三転する村人間の対立そしてそれに翻弄される若者の色恋沙汰等を愉しむのが本領。
ただしもちろん犯人は伏せられている。これは解らないかな。本格ではないので演繹的推理も出来ないし。近くまではいけるけども。

あとユーモアの陰に閉鎖的な田舎の持つ同調圧力というか、排除の恐怖みたいなものも感じられた。表紙の不気味さと通底しているのやも。

さて、エクスブラ(イ)ヤの邦訳読み落としはあとイモ1、2冊ほどとなった。早川の文庫化乃至復刊あるいは論創の初訳が待たれる。

追伸
クラシック映画にもこういう舞台のいくつか作品あるよね。コメディタッチの。

40 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/18(水) 19:23:43.51 ID:pGmHiMFD.net
「マザーズ・デイ」パトリシア・マクドナルド(ベネッセコーポレーション)

流産、そして思春期の養女ジェニーとのギクシャクした関係に悩むカレン・ニューホールのもとへ舞い込んだ更なる苦難。
それはジェニーの実母リンダの突然の訪問だった。喜ぶ娘とは対照的に不安を隠せないカレンと夫グレッグ。
そして事件は起こった。リンダが何者かに殺されたのだ。警察の手はニューホール家へ伸び、一家は崩壊の危機に瀕するのだが……。

いや、面白かった。400後半と長いが一気読みの徹夜本だった。
まずこの産みの親の登場と育ての親と子の亀裂というアウトラインの時点でゾクゾクするジャマイカ。
折しも母の日でたまらんイベントの連続で俺なんかMっ気ビンビンよ。ザッヘルザッヘル。

そして多彩なキャラクター。
メイン以外にも、リンダの老母とひねくれた兄、子供を殺して壊れた人妻、モーテルのバッド・ロナルド、野心的な女性記者等々。
彼らのストーリーも確かに書き込まれていて読ませる。
個人的には颯爽としたスケ番美人に萌えた。こういうのが女流作家ならではって感じよね。カメオ出演なのが惜しまれる。

それからミステリーとして、というかサイコサスペンスとしての出来映え。
犯人にはやられた。俺はてっきりあの男か意表を衝いてあの女かとか思っていたのに。しかもそれを明かす場面も凄いよ。
さあ来るぞってんじゃなく普通の文脈の中でサラリとバラすんだから。「あれ、今の?」みたいな。逆に優雅。
ただ、そこからも解るように伏線は不足がち。暴かれた残酷な過去含め無理がある展開もチラホラするが、冒頭の通り面白さを損なうほどではないのでお薦め。

41 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/18(水) 19:29:36.90 ID:pGmHiMFD.net
「死者の指」ジョン・トレンヘイル(二見書房)

セラピストのセルマは厄介な患者に悩まされていた。その少年リコは彼女を性の対象と見ているようなのだ。
しかも母親は怪文書を送りつけてくる始末。
一方、地元では女性ばかりを狙った連続殺人事件が発生。被害者は両手の親指と腎臓、子宮まで切り取られていた。
担当のFBI分析官ダニエルに思いを寄せるセルマは厄介事を抱えつつ事件の捜査にも首を突っ込んでゆく。

サイコスリラーとしてはあまり評価高くない。
まずヒロインの造形がまずく入り込めない(ちっパイだしw)。パートナーとのストレートならぬ関係も話をもたつかせただけに感じた。

次に並行して進む2つのパートについて。
患者の方は展開が不自然というか珍妙で違和感が拭えず殺人の方はどうも描写不足でメインにしてはおざなりな印象を受けた。
フーダニットもさして優れておらず、後半アクション小説になってしまうし。
それ以前がちゃんとしていればアクションは加点になり得たんだけど。

終盤で驚愕の展開が待ち受けるものの、盛り上げが足らず仕掛けにも無理があると思ってしまった。あと長い。
ま、今度は本貫たるエスピオナージュを読んでみるわ。

42 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/18(水) 19:32:25.30 ID:pGmHiMFD.net
「真夜中に捨てられる靴」デイヴィッド・マレル(ランダムハウス講談社)

短編集。某ババア書評家がべた褒めしていたので読んだのだが、うーん、ぶっちゃけレベルの高い短編集ではない。
光るアイディアがある訳でもなく、オチが決まっている訳でもなく、サプライズがある訳でもない。
ただ筆力はあるもんだから読まされてしまう。

一番は表題作かな?
真夜中の路上に捨てられる靴の謎に取り憑かれた警官が心身ともに傷だらけになりながら犯人を追う話。
作者の体験談を元にしたらしいが、なかなか綺麗な謎解き。
次点は「復活の日」。
SFでは使い古されたテーマだろうけれど、弱いんだよねえ。蓄積や経験に対する敬意や共感は観ていて気持ちが良いということか。

43 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/18(水) 20:13:27.28 ID:pGmHiMFD.net
「報復の海」ハモンド・イネス(パシフィカ)

画家である私ドナルドは死んだはずの兄イアインが生きていると知らされスコットランドのヘブリジーズ諸島へと向かう。
現地ではレールグ島から部隊を引き上げさせる作戦が進行中であり、それを補佐する役割を担うブラドック少佐こそ兄だというのだ。
レールグ島への船に同乗することになるドナルドだったが、海は未曽有の嵐となりかくて惨劇の幕は上がったのであった――。

あのね、これは掴みがダメ。冒険小説としての核みたいなものがないので入り込みにくい。
兄捜しは冒険小説(タイトル&表紙の圧力)のテーマとして弱いと思う。海に出るのも戦争とか特殊任務っていう類のものじゃなく
引き上げという“雑務”だし。結果的にそれが大冒険になったとしてもこなして元々なのでカタルシスも待っていないし。
ちょうど「バーティカル・リミット」観た後みたいな疲労感が。

それでも我慢して読んでいくと中盤は流石に読ませる。海から裁判から島から舞台がそれぞれ盛り上げつつ変わっていき
(かなり安いが)ロマンスも絡み。でも結局座りの悪い過程冒険小説で終わってしまった。ザーメン。

44 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/18(水) 20:42:34.74 ID:pGmHiMFD.net
「クメールからの帰還」ウィルバー・ライト(角川書店)

元パイロットの酔いどれ中年カーターは香港にいる息子の所へ向かう途中飛行機事故に遭う。
何とか生き延びたものの東南アジアの密林に放り出されることに。他の生存者は少年少女とスチュワーデスのみ。
果たしてカーターたちは無事密林から脱出することができるのか?

本書は航空パニックに始まり密林探険、サバイバル、宝探し、飛行機修理、アクション、そしてロマンスと
冒険小説の様々な要素が詰まっていて中々に濃密なストーリーとなっている。
とりわけオアシスを見つけてしまったカーターが腰を落ち着けそうになる場面などは妙にリアルに迫ってくる。
まして美女がいるとくりゃね。

そう、本作の真の正体それはおっさんミーツ完璧美女という中年願望充足小説なのだ!
これは冒頭著者自ら認めている。珍しいカンボジア人ヒロインにして美人でナイスバディで性格も良いという
いっそ清々しいほどの夢の女。彼女の存在だけでも一読の価値はある!かもしれない〜♪(何せ×ェ×で起こしてくれんだから)

最後に真面目な話をすると、実は前半の割と早い段階で中断したことがあったんだ。
理由は読めば判ると思うので言わないが、それ自体というよりも特に葛藤もなく粛々とやっちゃうことに違和感少女。
そこは偶然の奇跡で良かったと思う。アメリカイズムかねえ。

45 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/18(水) 20:58:18.41 ID:pGmHiMFD.net
「ベルリン 二つの貌」ジョン・ガードナー(東京創元社)

東ベルリンからイギリスへ亡命してきたKGB将校は自らが付けられたコードネームを知っていた。
そして彼の上司は先頃首無し死体で発見されている。
尋問を担当した情報部のハービー・クルーガーは驚くべき告白を受けた。
かつて彼がベルリンで作り上げた諜報網の片方の崩壊は裏切り者のせいであり、もう片方も裏切り者のせいで崩壊の危機にあるというのだ。
愕然としたクルーガーは新たなチームと共にベルリンへ向かうが……。

前作はやたら長くて途中で迷子になったのが本作は更に長い! うへえなりと開いたものの、迷子になることなく読み通せた!
こりゃ俺もレベルアップしたか?
でも図に乗って「スクールボーイ閣下」を読むのは今暫く……。

裏切り者が誰かはすぐ見当がつくがそれは作者も承知の上だろう。一応ミスディレクションはいくつかあるが、それでもそう思う。
主人公がいつ気付くかハラハラしながら過程のサスペンスを楽しむのが読みどころであろう。
と、高を括っていると終盤思いもよらぬサプライズの絨毯爆撃を食らって仰け反った。これはヤラれたわ。書いとこ。

しかしこれすぐ続きが読みたい! 長大な前降りなんだ! そうに決まってる!

46 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/19(木) 01:03:14.82 ID:uLcgx+kd.net
「解錠師」スティーヴ・ハミルトン(早川書房)

口は利けないが鍵を開けることに天賦の才を持つ青年マイクルは、その異能ゆえに終わりの見えない柵の中へ巻き取られてゆく。
愛する者を守るため彼がついに下した選択とは。

主人公のキャラクターはいいんだけど、話に面白味がないんだよねぇ。つまらなくはないが読まずに余裕で死ねるレベル。しかも長い。
あとヒロインが何か評判悪かったんで期待したのに普通だったのも残念。十代であれなら上等だろうて。

47 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/19(木) 01:05:06.45 ID:uLcgx+kd.net
「最後の銃弾」サンドラ・ブラウン(集英社)

追っていた大物が判事のせいで無罪放免となり荒れる刑事ダンカン。
それから数日経った夜、発砲事件が起こり駆けつけた邸宅はその判事の家で撃ったのは彼の妻だった。
彼女は侵入者に撃たれそうになりやむなくやったと主張する。ダンカンは彼女が何か隠していると直感するもその魅力に絡め捕られていく。

ロマサスかと思いきや案外ちゃんとしたサスペンスになっていました。ヒロインの内面描写を抑えることで謎を持続させ最後まで飽きさせない作りにしていることが好印象でした。
ただ、地の文で嘘があったのはいただけません。
ま、でもロマサスでこんだけやれたら御の字じゃないでしょうか。ヒドいのは本当にヒドいですからね。

48 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/19(木) 01:10:53.20 ID:uLcgx+kd.net
「トム・マーロウの奇妙な事件簿U 悪夢の目撃者」クリス・プリーストリー(ポプラ社)

この所トムはハーカー博士に信頼されていないと感じていた。ジャコバイトの処刑を見に行った時に出会った男のことも、
博士の家ですれ違いになった男のことも教えてくれない。盗み聞きした限りではニューゲート監獄の囚人に関することらしいのだが……。
そんな中トムの元へ意外な人物が現れ、彼の日常は大きく変わっていく。
一方、巷では指差しただけで人を殺すという《白い騎士》の噂が飛び交っていた。
髑髏の顔を持ち金品を奪っていく怪人の正体にトムと博士は迫ることができるのか?

腐した癖にちゃっかり読むんかいと言われそうですが、未練がましいのは本読みにとって美徳と思うとります。児童書ですし。
しかし今回は割と本格ぽかったです。伏線もありまして。トムの最後の決断にもそれが表れていました。

今回の見所は髑髏騎士よりもトムと博士両方の過去に纏わる物語です。2人の悲劇とこれからに注目です。
しかしこのシリーズ、女っ気がないのが残念ですねえ。ミーツしないと。次作で用意されていると良いのですが。

49 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/19(木) 01:16:15.81 ID:uLcgx+kd.net
「ナポレオン・ソロA/最終作戦」H・ホイッティングトン(早川書房)

スラッシュのスパイからの足抜けを願う踊り子ウルスラに会うためホノルルに飛んだソロとイリヤ。
しかし彼女はソロの目の前で非業の死を遂げた。裏で手を下したのはスラッシュの幹部サムで更にその背後には大物ティックスの影があった。
イリヤはサムを追って、ソロはウルスラの元パートナーに会うためアカプルコへ向かう。

ナポソロのノベライズはエロいと聞いていたが本作はちっともそんなことなく学刈。
つか、ソロもイリヤも捕まり過ぎ殴られ暗転し過ぎ。その繰り返しだから安直に感じるしフーダニットも何か活きないし
ラス前まで敵の掌の上みたいで何だかなあ。あと折角敵にエロ美女がいるのにろくに絡みもなく終わっちゃうのもマイナス!

DVD出せよう。

50 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/09/19(木) 01:25:37.42 ID:uLcgx+kd.net
「殺人よ さらば」ジョン・ラックレス(集英社)

CIAのスーパーコンピューターが弾き出した結論――それは特殊殺人手段考案の天才エディが退職を決意しているということだった。
しかしそれが許されるはずもく、彼の所属する〈植民地分隊〉はエディ抹殺に動き出す。
一方KGBでもスーパーコンピューターがエディと同じ才能を持つワシーリイの退職の決心を突き止めていた。
早速ワシーリイと唯一接触していた〈別荘族〉の刺客が放たれる。
やがて同じ境遇の2人はセックス・フレンドを通じて知り合い共闘することになるのだが……。

面白い! これは掘り出し物だったわ。江湖は広いね。
抜け忍小説であり「なめくじに聞いてみろ」的側面もあるという。
主人公2人が様々な武器を使って敵を殺していく。その一つ一つが奇抜だし、そもそもその前提のアイディアも巧いと思った。

主要なキャラクターも片やプロで片や童貞くさく(笑)、そして2人の間をたゆたう謎めく女と中々良い配置。童貞ムキーみたいな(笑)。
この女が色情狂ですぐオナニー始めたりするんだが、そのキチガイぶりも重要!

ところでこういう敵の数を明確に区切って順繰りに倒していくっていう筋わが国じゃお馴染みだが欧米じゃ珍しいよね。
予定調和ぽくて嫌われるのかしら。しかし本作は予定調和とは行かない。後半wktkな展開が待ち受けているのでお楽しみに。
〆も見事!

51 :名無しのオプ:2013/09/19(木) 15:59:26.94 ID:NJGMF2kb.net
参考になりました

52 :書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/09/20(金) 21:22:55.51 ID:x5foM1Ou.net
読後感氏の疾走ぶり良し(w
いろんな意味で溜まっていたんやろうね。
情報的には、現在はコニントンの邦訳が存在することがわかったのが良かった。
マエストロ鮎の短編に主人公がJ・J・コニントンの翻訳長編
を読むシーンがあるが、解説によれば、執筆当時はこのエピ自体が
作者鮎の願望に近いものだったようだ。
「F・W・クロフツ流の堅実な捜査過程を得意とする作家」
「1920年代から30年代にかけての英米本格推理長編『黄金時代』の一人」等の紹介があり、
「一般読者が彼=コニントンの作品を読むことは不可能に近い」とされている。
ただし、紹介されている作品(これが唯一の邦訳長編らしい)は、
読後感氏の評やネット検索情報によれば、クロフツって感じではないような。
いずれ手に取ってみたく思うが、チャンス到来あるか否か・・・

53 :名無しのオプ:2013/09/20(金) 23:07:45.23 ID:Su7Aca+I.net
本とか普段読まないんですけど
二流小説家って本を読みました
ラストの意味がわかりません><
解説してください><

54 :書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/09/28(土) 16:30:50.66 ID:K1KcFg/3.net
ハロルド・ロビンス「冒険者たち」を読む。
2ちゃん草創期のワードで評すれば、正に「マジオモ」(まじで面白い)。
文庫上巻621頁、下巻724頁(本文のみ)というボリューム感溢れる作
だが、会話文も多く、スピード感ある場面転換等の語り上手で、
ビールラッパ飲み状態の如くグイグイ読める。
冒頭、主人公ダックスの埋葬シーン、この後、そこに至るまでの大ビルドゥングス・ロマンが語られてゆく・・・
大衆小説にはありがちなパターンとはいえ、主人公の最終的行く末ネタばれは、
ちょい残念かもなー。
ハードな肉食系ちゅーか、エロとバイオレンスは満載、しかもくどくなり過ぎないような適度な省略良しや。
2次大戦時の国際情勢ネタ、海運を主とした経済ネタ等も、ねらーにはきついかと思われるほどの凝った書き込みぶりで読ませるものあり。
甘口の小説が好まれる昨今、60年代らしい正に濃い口のオトナのエンタメ、
男が読むロマンス本(?)という感あり。
主人公の母国である南米コルテグアイ(架空の国)における残酷な内戦や
ドロドロした権力闘争等は、現代でも世界のどこかでは現在進行形なん
だろうな。
まあ、ミステリファンとしては、終盤、海運王となったマルセル
(コルテグアイ仏領事館の元秘書兼通訳、つまり主人公の使用人であった)
の密室殺人が放置されたままエンディングなのは残念な感はあるが。
各人、心して読め!

55 :名無しのオプ:2013/09/28(土) 17:31:52.04 ID:QLovjvVV.net
ほんとに読んでいるとしたら、こんなことしか書けないってある意味すごいな

56 :名無しのオプ:2013/09/30(月) 10:27:30.13 ID:po/7LLmQ.net
>>52
>いろんな意味で溜まっていたんやろうね。

ワロタ!
たしかにあんまり溜めると体によくないですね…

57 :名無しのオプ:2013/09/30(月) 14:16:54.71 ID:H8FVASNX.net
その点書斎は脳細胞になに一つとしてたまっていないものなw

58 :書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/10/13(日) 22:12:43.51 ID:MbL89nRY.net
J・J・コニントン「或る豪邸主の死」
とうとう読むことが出来た。この作者の入手可能な唯一の作かと思う。
豪邸に引っ越して来た素行芳しからざる村の新参者殺し。
冒頭に「読者への挑戦」(あえてこれを挿入するほどの作なのかは疑問)
理科系作家(化学専攻)らしい殺人光線ネタ、
伝説のグリーン・デヴィル(この正体には思わずガクーリだが)や
死者からの電話の怪奇ネタ等々、わりと盛りだくさんな要素がありながら、
これといった探偵役が不在なまま進行、犯人側の自白(?)により
真相判明(事件処理は別)という展開そのものが一番面白い作だ。
ただし、真相そのものはがっかり感大だが。
舞台となるフェーンハースト・パーヴァ村LOVEな
治安判事サンダーステッド大佐(探偵役かと思いきや、
探偵活動では殆ど機能せず。しかし、親切心溢れる愛すべき爺キャラである)、
噂話好きな牧師フリタウイック(牧師という存在は肯定的・好意的に
描かれることが多いので、このしょうもないキャラは珍しい)、
大佐にもため口のバンガローの主ジミー青年等、印象的なキャラは多し、
田園小説の趣もある作ゆえ、もっと情景描写も書き込んであれば、
雰囲気の盛り上げにはいかったと思われなのだが。

59 :名無しのオプ:2013/10/14(月) 16:01:43.84 ID:bl3/b+Ru.net
スティーブンキングどうかな?

60 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/15(火) 21:23:47.12 ID:qenE+LrE.net
「脱獄と誘拐と」トマス・ウォルシュ(東京創元社)

エディーは定職を持たない前科者。折角出来た恋人にも正直になれず、空軍に勤める弟ロバートのアドバイスにも耳を貸さない。
ロバートと喧嘩別れした夜、恋人ケティーの父親に濡れ衣を着せられ投獄される羽目に。落ち込むエディーの下へ
追い討ちをかける知らせが届く。ロバートが東側の某国で捕まり20年の強制労働の刑に処されたのだ!
何としても助けなければ!奮起したエディーが考え出した奇策。それは近く訪米する某国の支配者“太っちょ”を誘拐し
ロバートと交換するというものであった!! しかし何よりもまずエディー自身が脱獄しなければならないが……。

登場人物一覧でソ連て言うてもうてるやん!でもどうです、あらすじでもうおもろいやろ?え、トンデモ?ええがな。
やることたくさんあるのに250ページ足らずだからサクサク進んでいくで。とは言え万事順調やない。
読者は脱獄や誘拐のハウダニットを楽しみつつもアクシデントにハラハラするちゅうわけや。お得や思うで。

ただなあ、やっぱり短いせいか全体的に雑やし、都合の良い印象はあるな。特にクライマックス、
これどう考えても大団円にはならんでしかし。後ヒロインな。こんな(都合の)ええ女おるかいや。妄想も大概にしとき。

ついでにノートの褒め方もかなり無理くりやったわ。厚木さんご苦労さんどす。

61 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/15(火) 21:24:46.45 ID:qenE+LrE.net
「治療島」セバスチャン・フィツェック(柏書房)

謎の病気に苦しんでいた一人娘のヨーズィが病院から失踪してしまったということが私、精神科医ヴィクトルを蝕んでいた。
それから4年後、孤島の別荘に引きこもっていた私の元へアンナと名乗る女が現れた。カウンセリングを求める彼女の話を聞く内に
私は心を動かされていった。何故ならヨーズィが失踪した前後の状況とあまりに似通っていたからだ。一体娘はどこにいるのか――?

4冊目にして処女作に手をつけた訳だが、「ラジオ・キラー」が有名になったのもむべなるかなといった感じの出来。
もうね、前半は延々朧気な印象の展開が続く。これどう片付けるんだろとページを繰らせる。大まかな不思議のみならず
細かな謎がいくつも付随していてこれらがちゃんと処理されるかが心配でたまらなかった。されなかった。
この真相は雑やわ。こんなんやったら何でもありになっちゃう。村長なんてどうなってんだよと。
それがあるから最後まで読んでも素直に称賛できない。もっとも自分には7度も再読する気はないから
見落としがあるかも知れないが、疑問点全てに関してあるとは到底思えない。

もっと言うと、このからくり自体実行不可能だと思うし、仮に出来たとして時系列順に行動を追ったら矛盾や欠落がある。
更にいうと、設定域狭いねこの人。
ま、2作目以降からで良いんじゃないかな。

62 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/15(火) 21:26:25.51 ID:qenE+LrE.net
「犬橇」ジョゼ・ジョバンニ(早川書房)

白熊を守るため殺人を犯し服役していたダンはアラスカへと帰ってきた。彼を出迎えたのは人々のあからさまな侮蔑と憎悪。
何もかも失ったダンは男の誇りを取り戻すため過酷な犬橇レースへ挑む。

初ジョバンニは異色の作品らしく。面白かった。とことんディスられた主人公の孤軍奮闘てまるでフランシスみたいで
血湧き肉躍るし、250そこそこと短いのもスピード感があっていい。こういうのはダラダラ長いと白けるからね。
ただフランシスと違うのは主人公がエコテロリストな件。はっきり言って感情移入はできないし、
そのせいでクライマックスの出来事とその後の判断に感動し切れなかったのは残念。ちょっとキタけどね。

63 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/15(火) 21:27:12.64 ID:qenE+LrE.net
「闇の絆」グロリア・マーフィー(二見書房)

夫を交通事故で亡くして以来女手一つで双子を育てているジェニファーに起きた悪夢。
双子が誘拐され、自身もまた犯人の男の虜となってしまったのだ。その男セスはジェニファーにとって
忘れようにも忘れられない相手であった。そしてジェニファーに惹かれ事件を追う警部補ソーン。果たして母子の運命は――。

ありがちな筋書きにありがちな結末。頼みはエロながらこれもイマイチとあっては救いようがない。
当時はこれで通用したのかねえ。いや、やっぱダメなサイコミステリーの典型であろう。

64 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/15(火) 21:29:57.23 ID:qenE+LrE.net
「技師は数字を愛しすぎた」ボワロ&ナルスジャック(東京創元社)

原子力関連施設の技師長が射殺され、核燃料チューブが持ち去られた。当時現場は密室状態であり、
犯人はほんの数秒で姿を消したと思われた。
司法警察(PJ)のマルイユ警部は友人の技師ベリアールの協力の下捜査を進めるが、似たような状況の事件が次々と発生してしまう。

初ボワナル。ルパンの贋作はポプラ社の注釈のお陰で回避していたので。密室もの本格と呼んで差し支えないよう。
合わせて4つの密室殺人あるいは人間消失が披露される。真相の内いくつかはすぐ見当がつくと思うが、
全て見破るのは不可能だと思う。つかこんな合わせ技卑怯やで。

しかしこれを機にぼちぼち手を出してみたいとは思う出来であった。

65 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/17(木) 23:14:55.34 ID:IokSUgSD.net
「ハロウハウス11番地」ジェラルド・A・ブラウン(早川書房)

世界のダイヤモンド流通を一手に引き受ける〈組織〉からダイヤモンドを根こそぎ盗め!
〈組織〉の下請けとして働くチェッサーは大富豪のダイヤを何者かに奪われたことから
恋人マレンと共に前代未聞の大泥棒をやる羽目になるのだが……。

映画版は以前観たが印象に残ってない。ついでに言えば表紙の2人はそのキャストには見えない。
キャサリン・ロスとロバート・レッドフォード?

閑話休題。まとまりがない小説。犯罪より主人公カップルの会話や何かにページを割いていてそれはとても興味深いのだが、
それ以外の部分がどこかおざなりでスリルショックサスペンスが上滑りしてしまい読んでも今一つ伝わってこない。
事件の絡繰りを早々に読者にだけバラしたのも不可解。ちっとも効果的じゃなく逆に終盤主人公が知った時の衝撃が薄れただけ。
主人公カップルが強烈過ぎるのか脇役も悪役もちっともキャラ立ってないし。500ページ近いのにこれでは……。
しかもラストがまた酷い。意外と言えば意外だがただただ唐突なだけ。こういう終わり方をする作者は次読む気しない。

ただ前述したが主人公カップルのシーンはいい。特に恋人マレンの造型は出色で、彼女に関するサプライズは巧く機能している。
例えるならマシなスーザンて感じかな。

66 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/17(木) 23:15:46.22 ID:IokSUgSD.net
「金融街にもぐら一匹」マイケル・ギルバート(文藝春秋)

会計事務所に勤めるデイヴィッドは不真面目な態度を繰り返し到頭解雇されてしまう。転職先の旅行会社でも
違法行為に手を染めたせいでドツボにはまっていく。
一方恋人のスーザンはそんな彼を尻目にトントン拍子に出世を重ねていき、と同時にデイヴィッドとの溝も深まっていくようで……。
そんな2人の背後に大立者の影が蠢く!?

「スモールボーン氏は不在」が凄く詰まらなかったので不安だった2冊目。でも本格でないせいかスラリと読めた。
しかしまずは裏表紙よ。ここまで書いていいのか?後半5行は読まない方がいいと思う。
で内容だがそこまで濃くはない。しかし前述の通りスラスラ読めてまあまあ面白いので駅や病院の待合室に置いてあったら手に取るといいだろう。

67 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/17(木) 23:19:00.99 ID:IokSUgSD.net
「横溝正史翻訳コレクション 鍾乳洞殺人事件/二輪馬車の秘密」ウィップル○ヒューム(扶桑社)

「鍾乳洞殺人事件」はその名の通り鍾乳洞付近で起こる連続殺人のお話。200ちょいで連続殺人を扱い、
更に終盤のスリルの盛り上げ等読み物としての密度は高いがいかんせんキャラクターや筋立てが類型的で古臭すぎる。これ本当に黄金時代か?
おまけに推理も物足りないわ、放置された謎もあるわで、本格としては低評価にならざるを得ない。
大体凶器にしてからが……。

「二輪馬車の秘密」は夜中に二輪馬車に乗った客が死体になっていたという話。300強もあるのにかなり単調なストーリーで
読むのが苦痛だった。こんなもんがベストセラーとか嘘だろ。事件そのものにもサイドストーリーにも見るべきものがない。

最後に、「鍾乳洞殺人事件」だけど、34年刊なのに昭和七年訳載て、これ笙子お姉さんに知らせた方が良いのでは……。

68 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/17(木) 23:20:40.37 ID:IokSUgSD.net
「フランクを始末するには」アントニー・マン(東京創元社)

奇妙な味の短編集。オチを狙ったものが意外と少ないのが特徴かな。良くも悪くも。
ベストは表題作か。往年の大スターの暗殺を依頼された殺し屋がターゲットの邸宅へ向かうが……
どんでん返ったようでどんでん返ってないような不思議な読後感を残す傑作。
次点は僅差で「エディプス・コンプレックスの変種」。チェスが強くなりたくてたまらない主人公が
コーチから伝授された方法は……この結末は予測不可能。どんでん返しをスルーして着地するみたいな。

この他にも「マイロと俺」のカワユスや「買い物」の推測、「契約」の哀愁などが印象に残った。
あと「契約」や「凶弾に倒れて」を読むとこの人はデイヴィッド・アリグザンダーにも似ているような希ガス。

69 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/17(木) 23:22:16.54 ID:IokSUgSD.net
「不死鳥を倒せ」アダム・ホール(早川書房)

海千山千のスパイクィラーはベルリンを去る間際、新たな任務を与えられる。
それは、ベルリンで目撃されたナチの大物ツォッセンを捕らえるというものだった。
クィラーはネオ・ナチ組織〈フェニックス〉を抜けたという美女から情報を得て内部へ潜入しようと企む。

シリーズもののスパイものて荒唐無稽なものが多い印象だが、本作はリアル志向で主人公はあれこれと頭で演算しながら
行動する。それ自体はスパイとして当然だろうが、脳内をダダーッと羅列されるパズラーぽさは珍しい点だ。
やり過ぎて脳内迷子になりかけているような気もするのだが、その思索が正しいと仮定すると、とある登場人物の描写は目から鱗だった。

ちなみに石川喬司曰く〈あたまスパイ〉は上手いね。〈いやいやスパイ〉もいつか読みたい。

70 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/18(金) 23:59:10.77 ID:zuGU/DVo.net
「眠りについた骨」デヴィッド・ウィルツ(扶桑社)

獲物を目眩くセックスの快楽に溺れさせた後で仕留める連続殺人鬼「キャプテン・ラブ」。
FBI捜査官ベッカーは親友の警察署長ティーと共に事件を追うが、殺人鬼が次なるターゲットに選んだのは……。

基本順に読みたい派なのに何故5作目から読んだのかと言えばエロそうだったからです!
で、エロに関して言えば濡れ場の描写が数度あるので物量的にはOKですが個人的にメインと捉えていた要素は少なかったですorz。

閑話休題。
サイコものとしては長い割にそれに釣り合う謎が無くてイマイチでした。主人公がパーカーヒーローぽいのも気に食わないです。
ま、サイドストーリーは結構読み応えあったんですがね。どんどん読みたいかと言うとノーですねえ。

71 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/19(土) 19:53:16.76 ID:XbC0KiJy.net
「沈黙の犬たち」ジョン・ガードナー(東京創元社)

大失態のせいで冷や飯を食わされているクルーガーに凶報が届いた。
彼のせいで半世紀以上も前からKGBの中枢部に潜んでいるスパイが危機に陥っているというのだ。
急遽スパイ脱出の指揮を取ることになったクルーガーは作戦の内容に疑問を感じながらも計画を練っていく。
一方ソ連では復讐に燃えるヴァスコフスキー少将がスパイを着実に追い詰めていた。

三部作完結?!
相変わらず読みやすくて面白い。文章は易くプロットは難く。理想のスパイ作家ではあるまいか。007任されたのも解るよ。
ただし本作は前作ほどトリッキーではなく、全体のストーリーや構成に重きを置いている印象。
もぐら探しも中盤には明らかになり、クルーガーとヴァスコフスキーとの読み合いが主眼となる。
やや予定調和かと思うが、ラストの盛り上がりはなかなか。

しかし、作戦における配役の必然性が弱く、同僚で友人だったはずのタビーのクルーガーに対する態度も不可解。

さて……。

72 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/19(土) 19:54:29.57 ID:XbC0KiJy.net
「悪魔なんかこわくない」マンリー・ウェイド・ウェルマン(国書刊行会)

近代化を拒み古色蒼然たる伝統文化が息づくアパラチアの山々。さすらいのバラッド歌手ジョンは各地を渡り歩きながら跳梁する怪異と出逢い、退けていく。
オカルトハンター“銀ギターのジョン”登場!

本読みにとって至上の喜びとは、「期待通りの面白さ」を実感する時ではないかと思う。本書はまさにそれであった。
余談になるが筆者は小学生の頃、ジョンに似たキャラクターを創作したことがある。と言ってもすぐ止めてしまったのだが、
あの時思い描いていたものはこれだったんだなとしみじみ感じた。

閑話休題。ジョンは魔除けのギターを持っているとは言え、超常的な力で化け物退治する訳ではないので、
筆者が理想とするオカルトハンターに近く、のめり込んで読めた。収録短編はバラエティに富みどれも楽しめたが、
怖さでは「ヤンドロー山の頂」、ストーリーでは「ヴァンディー、ヴァンディー」、爽やかさでは「山のごとく歩む」かな。

更に各短編の冒頭に載っている掌編がまた素晴らしい出来!
たった1、2ページで見事に捻りや余韻を効かせていて、本書の最大の魅力は実はこれなんじゃないかと思うくらい。
殊に「青い猿」なんかは星新一の最良の短編群に混じっていても遜色ないと言ったら言い過ぎかな?
「ほかのだれをあてにできるか」の切れ味もGOOD!

アメリカの昔話の世界に浸れる幸せな一時でござった。また読みたい。他作品も訳してくれ。あとカーに似てる。

73 :名無しのオプ:2013/10/21(月) 02:26:55.90 ID:ZDueqtON.net
『エンジェル家の殺人』ロジャー・スカーレット

江戸川乱歩が絶賛しパクっ…ではなくて翻案小説として『三角館の恐怖』を書いた事で有名な作品。
乱歩の言うとおりサスペンスが地味ではあるがスリリングで面白い。
双子の兄弟の父の残した遺言のせいでエンジェル家に事件が起こる。作中の人物の言うとおり、そりゃ後で問題起こるわ。
しかし、この遺言のせいで複雑でスリリングな状況を生んででちょっと人工的ではあるけど上手いなと思う。
密室ものとしても有名な作品だけど、トリックはあっさり解かれてしまう。もう少し最後まで引っ張った方が良かったと思うのだが…。
犯人はまぁまぁの意外性。それよりもこの作品のキモは動機の意外性だと思う。

74 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/22(火) 00:04:59.77 ID:z5EVE/yq.net
「スコーピオン暗礁」チャールズ・ウィリアムズ(東京創元社)

元作家の潜水夫マニングは美貌の人妻からのちょっとした依頼を受けたことから、大掛かりな犯罪と殺し合いに巻き込まれてゆく。

海洋冒険小説にしては珍しく長くない。プロットも割合単純でスラスラ読める。キャラクターが類型的なのは56年仕方ない。
ラストに捻りがあって少し驚く。そんな印象。

75 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/22(火) 00:07:52.09 ID:z5EVE/yq.net
「サイゴン・カフェの爆風」リチャード・ハイヤー(二見書房)

警備会社を経営するデインは元恋人シェリルから連絡を受けディナーの約束をする。しかし、彼がレストランへ入ろうとした瞬間爆発が!
間一髪助かったものの、シェリルとその婚約者がデインに不利な証言をしたことから爆破犯と疑われる羽目になる。
デインは自ら真犯人を突き止めるべく行動を開始するのだが……。

処女作とは思えない面白さ。この密度は半端じゃない。これぞミステリー。これぞハードボイルドではなかろうか。

様々なキャラクターが一癖も二癖もあり容易に全体像を掴ませずに次から次に局面を変えていく話運びの達者さは完全に玄人はだしで、最後まで気を抜かせない構成も見事。

邦訳はこれきりだがシリーズ化してるなら次も読みたいなあ。

76 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/22(火) 00:10:20.97 ID:z5EVE/yq.net
「ストライク・スリーで殺される」リチャード・ローゼン(早川書房)

ドラフトにかけられ名門チームから新設チームへ移ることになった大リーガーのハーヴェイ。
成績も上向き、キャスターの恋人も出来てさあこれからという時、ピッチャーのルディがクラブハウスのジャグジーで殺される。
彼とルームメイトであり親しかったハーヴェイは何かに突き動かされるかのように事件を調べ始める。

現役の大リーガーが探偵役って初めて読むかも。合間合間に弱小チームの惨憺たる試合状況が展開していき、しかもそれが伏線になっているという趣向は面白い。
真相はそこまで意外ではないが、その動機はなかなかユニーク。
ただ作中でも突っ込まれている通りこれには穴がある……けどそこは処女ゆえのご愛嬌と。

77 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/22(火) 00:11:52.81 ID:z5EVE/yq.net
「瓦礫の都市」ジョン・フラートン(早川書房)

内戦の続くサラエボのアパートで女性の死体が発見される。垂れ込みを受けたロッソ警視は崩壊しかかっている市警をまとめ何とか捜査に着手するのだが、
そこへ民兵のリーダーからの横槍が入る。
砲弾飛び交う荒廃した街でロッソは正義を貫けるのか。

以前占領下の街を舞台にしたミステリーは面白いと書きましたが、本作はそれどころか内戦下の街を舞台にしています。
毎日ばたばた死人が出る中でたった一人の死を追うという構図からして面白そうだと期待して読んだのですが……。
う〜ん、デビュー作だからなのかあまりミステリーを意識してないのか、どうも完成度が疑問符なんですよねえ。
(準)戦場での殺人と家庭内の葛藤+民兵リーダーとの対決とを平行し乃至絡めて描くという大枠は良いんですが、
その内容は味気なくて呆気ないんですよ。プロットを詰めきれてなかったのかしら。ネタは良いのに残念でした。

78 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/22(火) 00:13:44.79 ID:z5EVE/yq.net
「海峡トンネル爆破」ロバート・バーン(集英社)

英仏を結ぶドーバー海峡トンネル建設が動き出し、土木技師フランクは責任者を任された。
胸を踊らせるフランクだがその前に環境保護団体の闘士で女性カメラマンのアンが立ちはだかる。
一方、IRAの異端児クインは仲間を集めてトンネル爆破を目論んでいた……。

トンネル建設、反対派のヒロインとのロマンス、爆破テロと魅力的な要素は揃っているのだがこれも前回同様まとまりが悪い。
特に2番目の要素はかなりおざなりでこれなら要らないくらいなもの。爆破計画も何かグダグダで消化試合じみており手に汗握れない。
クインは裏主人公というポジションで最初の方は興味深いキャラだったのになぁ。
トンネル建設のとこだけは流石に本職だけあって詳細に描いている。あんまり興味湧かなかったけれど(笑)

79 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/25(金) 19:08:31.67 ID:DJjV32oP.net
「北海の星」ハモンド・イネス(早川書房)

元共産党シンパの船乗りマイクは安定した生活を捨てかつて父がいたスコットランドの北シェットランド諸島に行く。
そこで海底油田掘削装置〈ノース・スター〉を監視する船に仕事を得るが、放火事件を目撃していたためテロリストに付け狙われ遂には濡れ衣を着せられてしまう。
更には〈ノース・スター〉にも魔の手が……。

イネスは3冊目かな?
今まで読んだのは古典的な正調冒険小説って感じだったが、本作は主人公のうらぶれ具合と言い、ドツボ具合と言い、元妻との愛憎と言い時代が下った感じで新鮮な思いで読めた。
ただし、もう少し事件に絡んで行って欲しかったな、冒険小説なら。若干傍観者ちっくなので。
あとロマンスがメインプロットと乖離気味なのは未だ古臭さが抜け切れぬ点か。

80 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/25(金) 19:09:33.27 ID:DJjV32oP.net
「死の館の謎」ディクスン・カー(東京創元社)

謎めいた指示により10数年ぶりに帰郷することになった作家ジェフ。彼はその途中の船上で旧友デイヴとその妹、更にはかつての恋人と出くわす。
それぞれが何か隠しているらしいことを不審に思いつつも故郷に着いたジェフはデイヴの館に逗留するが、
そこは財宝の言い伝えがあったり怪死事件が遭ったりする奇妙な場所だった。
果たしてその館で再び関係者が謎の死を遂げ……。

印象薄いカー。
それなりに長いし、もったいつけや煽り立てを熱心にやってる割にはそこまで凄いネタではないし、犯人の意外さも想定の範囲内。
ただし、船上のパートの長さは故無き物ではないので要注意。中々死の館に辿り着かないけど、ここはしっかり読むべき。

あとロマンスは掴みが上手くニヤニヤするものの中盤以降は惰性なのがまたいつものカーだった。

81 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/25(金) 19:13:23.11 ID:DJjV32oP.net
「赤ちゃんはプロフェッショナル!」レニー・エアース(早川書房)

偽造パスポートで生計を立てているハリーは腐れ縁の悪党モーランドにある犯罪計画を持ちかけられた。
それはギャングのボスの赤ん坊を誘拐して大金をせしめようというもの。
逡巡するハリーだがモーランドやその仲間に脅かされ嫌々参加することに。
かくして計画は実行され、ハリーは謎の美女ポーラと夫婦を演じモーランドの奥の手である人物と対面するのだが……。

世の中には読み甲斐のない小説というものがたまにあってですね。もう設定倒れもよかところですわいな。
コン・ゲームもので成功させるには、
@読者を驚かせつつ成功させるかA外的要因によって妨害・破綻させ更なるサスペンスを展開していくかしかないと思うんです。
然るに、本作は勝手に転んでる印象でグダグダです。これじゃ魅力的な設定が可愛そうです。
ロマンス面も同じでツンとデレの配分がおかしくてウザイだけです。ケンリック見習ってくだしあ。

82 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/25(金) 19:14:18.80 ID:DJjV32oP.net
「お菓子の髑髏――ブラッドベリ初期ミステリ短編集」レイ・ブラッドベリ(筑摩書房)

有名SF作家のミステリ短編集という試みにまず乾杯。みんな売れない頃は色々書き散らしてるんだよね。
そういうの読みたいもんなんだよな。

閑話休題。本格風味のものは殆どなく、奇妙な味かスリラーかクライムノベルぽいの。
ベストは「用心深い男の死」。最初はどってこない印象だったけど妙に頭に残るんだよなあ。
次点は「はるかな家路」か。小市民の男が咄嗟に吐いた嘘が思いも寄らぬ事態に行き着く。
あと、新たな生命に脅える若妻を描いた「幼い刺客」(これはドラマで観た)や、単純だが淡々とした展開が怖い「生ける葬儀」など。
その他の短編もそこそこ面白いのだが、シリーズものなど会話主体のものは正直失敗作ぽい。

83 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/25(金) 19:20:12.64 ID:DJjV32oP.net
「迷走パズル」パトリック・クェンティン(東京創元社)

妻を亡くしアルコール依存症になり施設療養中の演劇プロデューサーピーターは、ある晩不気味な予言をする自分の声を聞く。
それを看護師に漏らしたピーターは所長のレンツ博士から所内で変事が続いていると伝えられ調査を頼まれてしまう。
しかし殺人予告は止むことがなく、ある朝とうとう現実に!
ピーターは一目惚れした患者アイリスのため、事件解決を目指すのだが……。

素人はすぐがっつくんですよ。「悪女パズル」が出ては飛びつき「悪魔パズル」が出ては食いつき、
大枚を叩いて「俳優パズル」を買ったり国会図書館行ったり抄訳読んだり。
しかし私は違います。慌てず騒がず1作目から完訳で読める日を待ち続けて来ました。だからこそこの日を迎えられたのであります。

閑話休題。
思ってたよりジミー大西でした。これっていうダニットがあるわけでもなく。チートババアも気になりますし推理も大雑把ですし。

視点を転じて夫婦探偵の馴れ初めを観てみると、2人の関係性の歪さに気が付きます。
一目惚れしたピーターはともかくアイリスの心の動きがよく解りません。
そもそも彼女メンヘル気味でまともな関係を築ける状態だと思えないんです。特殊な場所で特殊な事象の下で一夜城よろしく構築した男女関係と感じました。
この突貫工事の危うさが後々響いてくるということなのかも知れません。

次は「俳優パズル」です。もちろん新訳で。

84 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/26(土) 21:47:10.67 ID:Hnxou2Tz.net
「悪の変奏曲」トマス・マクスウェル(早川書房)

作家チャーリーは大学の同窓生である弁護士ヴィクターから連絡を受ける。彼ら夫婦はストーカーに悩まされているという。
その相手とはかつてヴィクターの妻キャロの妹を殺した廉で投獄されていたヴァーラーダだった。
助けを乞われヴィクターの家に滞在するチャーリーだが、ヴァーラーダの脅威は増してゆき遂には犠牲者が……。

これ配分がおかしくないかね。表紙、書評他で得た印象と実際読んだ印象が乖離している。
この“売り”で行くには某キャラの存在感が強すぎる。背景があるとしてもここまでチート化させる必要はないだろう。
ただ、単純にサスペンスとしては佳作の部類に入るかな。あとラストははっきりしてるでしょ。つまり判ってたんだよ。

P.S 結局3度目のキスはどうなったの?

85 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/26(土) 21:49:21.65 ID:Hnxou2Tz.net
「The 500」(早川書房)

苦学生マイクは講師として大学に来たロビイストデイヴィスに誘われ彼の会社に就職する。
高給を貰い美しい恋人も得て新生活は順調にスタートしたかに見えた。しかし、過酷な任務を経てマイクはデイヴィス・グループに疑問を持ち始める……。

プロットが剥き出しになっている小説だと思った。
プロット自体にオリジナリティは無いので面白さを感じてもそれらが時々通る道の景色であることは否めない。
デビュー作の悲しさかねえ。

ただ、キャラクター作りは巧いのよね。それぞれ良く出来てる。……だから尚更鉄骨ぶりが目立ってしまっている訳だが。
このキャラだったらまだ裏があるだろうとかね。考えちゃう。特にイリンに関しては違和感あった。

あとせめてロビイストの実態をもう少しry。

86 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/26(土) 21:51:02.74 ID:Hnxou2Tz.net
「記憶の闇の底から」ジャック・ネヴィン(扶桑社)

成功した児童文学作家マットは美しい妻と子供たちに囲まれ幸せな家庭を築いていた。あの夜までは……。
娘が変わり果てた姿で帰宅し家族を拒絶した。悩んだ末セラピストに任せることなったが、
転地療養中の娘は突然マットを性的虐待で訴えたのだ!
名声は地に落ち家族は崩壊していく中必死にもがくマットの運命は――。

あらすじ読むとニュースでお馴染みのテーマかと思うがこれが中々一筋縄では行かない。
様々な証拠が持ち上がって果たして真実はどこにあるのか悩ませられる。どんでん返しは見当つくけど、
そこに至るが過程読ませる。巻き込まれ型とは言え躍動感は無いから暗さややり切れなさが際立つが結局引っ張られて600の長さも一気読み。

ラストの大団円は好みじゃないしご都合主義に感じたが、法廷劇もあるしまあお薦め。

87 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/26(土) 21:52:17.82 ID:Hnxou2Tz.net
「血と影」マイクル・ディブディン(早川書房)

大富豪夫婦が別荘で友人たちと共に惨殺された。犯人は最新式のセキュリティーシステムを如何にして打ち破ったのか?
捜査を担当するゼン警視の前には上層部からの圧力や同僚の妨害更には脅迫者の影が立ちはだかる。

マイルールを破って2作目から読み始めたのは密室ものっぽかったから。しかし読み出すと裏切られたかもと思った。
前半はゼンの身の回りのことばかりでちっとも当該事件の捜査が進まないんだもの。密室がフィーチャーされることもないし。
諸々の脇筋も良いんだけど、半ば事件不在で進行していくと違和感が芽生えちゃうのよねぇ。

と後半に入ってやっと現場に赴くんだけど、ここでも捜査や推理は主眼に据えられずゼンのストーリーは続く。
結局こういうシリーズってことなのかねえ。真相は割と面白かったんで、作者は誤魔化しではなく敢えてそうしているんだろうな。
本格を期待すると透かされるので注意。

88 :名無しのオプ:2013/10/29(火) 21:35:22.47 ID:rh8focig.net
黄色い部屋の謎 ルルー

古典的名作ということで、期待して読みました。
これは、かなり無理がある話ですね。ミステリーなんかは、多少は話に
無理があっても、面白ければ納得できるんですが。

読んでも時間の無駄でした。

89 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/30(水) 22:10:18.19 ID:129CDmu+.net
「ココ 上・下」ピーター・ストラウブ(角川書店)

ベトナム帰還兵の集まりに参加した小児科医マイケルは再開した戦友たちからシリアルキラー〈ココ〉の話を聞く。
この殺人鬼の存在がかつてベトナムで彼らが体験したある忌まわしい出来事にあると確信した4人は東南アジアへ旅立つ……。

「ミステリー」から間が空いてしまいましたが、しかし何コレ?
ホラーでないのは確かだし、ミステリーとしても緩〜い。物語としてはアリだと思うけど、この叢書でこの装丁でこのあらすじで読ますのは反則やわ。
合わせて1000ページもあるならもっとマギーのエロシーンを増やして欲しかった。

90 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/10/30(水) 22:11:50.97 ID:129CDmu+.net
「ナーシサス号を奪還せよ」アダム・ハーディ(三崎書房)

18世紀末。立身出世に燃えるイギリス海軍士官フォックスは今日も命懸けの任務に励んでいた。
しかし出自の低さから様々な妨害に遭い、果ては乞食に間違われて違う軍船に乗せられる羽目に。
そのままフランスに奪われた自国の船と戦うことになるのだったが……。

歴史海洋冒険小説は初めてかな? シリーズ第1作。ストーリーは本作のみでまとまっているというよりは戦歴を切り取った感じか。
読み捨て小説といった印象で単独では評価しにくい。もっと陸上の描写もあれば良いのだが。
しかし、強制徴募隊テラコワス。まるっきり気違い沙汰じゃん。こんなのマジでやってたとは……。

91 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/11/10(日) 23:30:22.94 ID:V6SNpIAg.net
「マエストロ」ジョン・ガードナー(東京創元社)

世界的な大指揮者ルイス・パッサウにスパイ疑惑がかかり、CIAとSISは真相を知るべくパッサウを訊問することになる。
その担当者として選ばれたのは既に引退していたビッグ・ハービー・クルーガーであった。
外界から遮断された隠れ家でパッサウの波乱に満ちた生涯が語られていく。
その果てに現れる驚くべき陰謀の構図。そして運命の女。
クルーガー最後の闘い。

シリーズ最終作。上下合わせて1200ページを超えるという大作。しかし読み終わるのが惜しかった。わざと読まない日を作ったりした。
内容はパッサウの一代記と1991年現在の話が8:2くらいで語られていく。
前者は中々のものでこれだけ切り取ってドン・ウィンズロウが書いたことにすればベストスリーも夢じゃない。
しかし、私が陶酔したのは現在パートのクルーガーたちの遣り取り、その世界観だ。シリーズ通してそうなのだが、改めて痺れた。
このシリーズには依存性があると思う。作品自体の出来はそう求めないからずっと読み続けたいと思わせられる。

しかし敢えて言うがラストは酷い。1200ページ語ってきてこの駆け足ぶりはどうしたことだ。全く不細工ではないか。
流れはこれでいいからせめてこの倍はページを費やして欲しかった。ここまで来たんだからそのくらい出来ただろうに。
これでは消化不良だ。余韻を楽しむ、想像するなんて余裕も無いくらいだ。せめてせめて下巻630ページにはあと一行欲しかった。

追伸
・○○○可哀想
・上巻536ページのセックスと愛は逆では
・××××が死んだなんて誤解は無いはずだが

92 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/11/17(日) 19:51:47.03 ID:HRb8S9zY.net
「濡れた魚 上・下」フォルカー・クッチャー(東京創元社)

マスコミからバッシングを受けたせいでケルンからベルリンへ転勤してきたラート警部。
慣れない風紀課での職務が続く中、ラートの下宿を1人のロシア人が訪ねてきた。どうやら前の住人の知り合いらしかった。
程なくしてロシア人が惨たらしい死体で発見されたとき、ラートは真相を探り殺人課へ移る足掛かりを得ようとするのだが……。

戦前のドイツを舞台にした警察小説シリーズ第一作。「深い疵」はまだ読む気が起きないがこっちは期待して読んだ。
簡単に言うと模範的な警察小説。組織の物語、事件の物語、主人公の物語が程良くブレンドされて訳文も読みやすかった。
特に主人公の物語は過去との対決など見せ場を予感させてこれからワクワクである。
ただミステリーとして見た場合、伏線が正直で意外性はあんまりないかな。
ま、背景にある共産党やナチの台頭など宵闇迫るドイツの雰囲気と合わせ技ってとこか。

警部にしては隙があり恋に悩みドツボにはまるラートのキャラクターも良い。
そして色気ムンムンの未亡人大家や頼れる“叔父貴”、腕利きの上司“仏陀”、男に厳しい美脚タイピストなど脇役たちも悪くない。

英米圏と比較するのはもう少し留保して続きを読もうと思う。

93 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/11/17(日) 19:54:21.60 ID:HRb8S9zY.net
「天使のゲーム 上・下」カルロス・ルイス・サフォン(集英社)

作家を夢見る青年ダビッドは師匠と慕う御曹司ビダルの伝手でデビューし売れっ子になる。
しかし、新居と選んだ“塔の館”で書き上げた渾身の一作は酷評され、更に思いを寄せていたビダルの秘書クリスティーナはビダルと結婚してしまう。
絶望に沈むダビッドの前に謎の編集者コレッリから依頼が舞い込んだ。
依頼を受ける一方で、“塔の館”の謎を探るダビッド。その前には恐ろしい闇が口を開けていた……。

「風の影」からもう6年も経っていたんだね。道理で忘れている訳だ。でも前日譚だから無問題。むしろ物語を新鮮に楽しめた。
さて、内容はミステリーでありロマンスでありファンタジーでありホラーであり……ともかく面白い。
どんどん幻想的に拡散していくかと思えばサスペンス的に収束したりしてダレずに読める。
主人公を巡る虚実2人のヒロインの対置が良く、ラストには若干不満が残る(彼女の処理が唐突なため)が、まあ綺麗ではあるだろう。

そして「忘れられた本の墓場」!ここに行きたい!そして死にたい!
あと名言が多いね。202ページとか。

「風の影」を読み返したくなってきたなあ。多分読み返さないけど(笑)

94 :書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/11/23(土) 21:13:37.20 ID:mY6oO1pF.net
マックス・アフォード「百年祭の殺人」を読む。
うーん、同じ作者の国書から刊行された「魔法人形」もイマイチ感があったが、
本作は、本格オタにはご機嫌な密室殺人ものでありながら、
話のテンポが悪過ぎるという感大だ。
全体的に描写が細か過ぎるんである。夜汽車のシーンに始まる序章に
関しては緊迫感を盛り上げる点でOKかと思うが、事件が始まるその後は
ジョンほどのストーリーテリングが無いのであるから、
もっと必要最低限にして簡略に書いていかないと駄目でしょ。
まあ、DNA鑑定が可能な現代から見れば成立しようもないネタだが、
執筆年代を考慮しても、手がかり後出し、偶然性の連発、
序盤から登場する何かありそうな個性的なブサキャラ(実際にモデルでもいたのかと思われるほどビビッド)が、結局、にぎやかしの役割だけで終わって
しまう残念さ(例の人物の実妹かと思うていたが)等々、
読後の不満が多い作ではあった。
それにミステリとしての本筋には影響しないとはいえ、
百年祭殆ど関係無いやん(w
論創社は、いまだに、いわゆるクラシックな未訳ミステリ刊行を続けては
いるものの、そろそろ良いタマも尽きて来たかなという感を強く抱いた。

95 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/11/23(土) 21:25:48.63 ID:7IQgdiMS.net
「笑うカモには」レン・デイトン(早川書房)

退役軍人サイラスとその愛人リズ、そしてサイラスに拾われたチンピラボブの3人はあてどなく詐欺を繰り返していた。
ある時リズはアフリカの某国の閣僚と知り合う。相手が武器を必要としていることを知ったサイラスは彼から大金を騙し取ろうと企む。

デイトンがコンゲーム書いてたのかと物珍しさで読んでみた。スパイものと違い打って変わって読みやすくて驚く。
ただ内容はコンゲームというよりも主要3人の関係性を主軸に据えており、ミステリーとしての3Sは今一つ盛り上がらない。
そして3人の行く末はまあ想定内であった。特に読まなくて良し。

96 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/11/23(土) 22:06:36.96 ID:7IQgdiMS.net
「ディフェンスをすり抜けろ」リチャード・ローゼン(早川書房)

メジャーリーグを引退したハーヴェイは恋人ミッキーの転職に従いボストンへ移り私立探偵として食い扶持を稼ぐことになった。
折しも地元のプロバスケットチームのエースが空港から失踪する事件が発生しハーヴェイは調査依頼を受ける。
やがて他チームの選手も同じ空港から姿を消し、ハーヴェイは2つの事件の繋がりを探り出すべく必死に動き回るが……。

1作目は大リーガーが主人公という珍しいミステリーだったのですが、2作目にして本職の探偵になっちゃいました。
恋人は相変わらずTVキャスターなので、格差カップルの誕生です。
余談ながら、ハードボイルドでこの組み合わせ結構あるんですよね。「ボディ・ブロー」然り、「夢なき街の狩人」然り。
で、これが案外上手く行ってるんです。思うにマスコミと私立探偵ってWIN―WINの関係に成り得るからじゃないかなと。
これが警察官となると競合してしまうから話が変わってくるのかなと。

閑話休題。
面白かったです。450余ページと決して短くは無いですが読み飽きたりすることもなく終えられました。
2つの失踪との結び付きを解き明かしていく経路や、過去の事件の動機が暴かれた瞬間などハマって読めましたし。
ラストも見え見えではありますが〆としては悪くないです。
ただ、後半の流れは全体としては平凡な方に行ってしまったかなと思います。
最早お約束と化した「無意味な暴力」もあったりして苦笑しました。

好きなシリーズと言ってもいい感触を得ているのですが、邦訳はあと1作しかないようで残念至極……。

97 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/11/23(土) 22:20:18.85 ID:7IQgdiMS.net
「俳優パズル」パトリック・クェンティン(東京創元社)

アル中の治療を終えたピーターは演劇界に復帰すべく準備を整えていた。
上質の脚本を手に入れ、当世一流の俳優たちに恋人アイリスを加えたキャストも揃い上々のスタートを切ったかに見えたのだが、突然場所が変更になり、曰く付きのダゴネット劇場でリハーサルを行うことに。
初日から鏡に女の顔が浮かび上がるという怪奇現象が起こり更には老俳優が鏡から女に襲いかかられたと言い残して死んでしまう。
殺人事件となれば上演は危うくなる。ピーターは周囲と協力して自然死に見せかけるが、メンバー間の不和などトラブルは後を絶たない。
不安で酒に手が伸びそうになる気持ちを押し殺しリハーサルに励むピーターだが惨劇の幕はまだ下りてはいなかった……。

半年以内に2冊目の新訳とは創元の癖に仕事が早い。褒めてとらす。
シリーズものに加え幽霊や警視と並んで待望の復活ということで期待して読んだ。うん、面白い。
劇場での死についての本格+開演を目指す過程のサスペンスで二度美味しいという。

前者においては「罠にかかったネズミが残らず逃がされていた謎」や「必死に助けを呼んだ女優がけろりとしていた謎」など興味を引くし、
胡散臭さ抜群のミス・ディレクションもあったりして密度の濃い仕上がりになっている。犯人も意外だった。まあこれはちょっとズルい気もするけど。
ちなみに探偵役はレンツ博士で、ピーターとアイリスは考えてみたりはするけれどまだ引き立て役レベル。
後者に関しては殺人を隠しつつ俳優たちの入り組んだ対立関係の解消に挑むピーターが読みどころかな。
酒のせいでアイリスとの結婚に踏み切れないピーター自身の問題とも繋がってくる。

98 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/11/23(土) 22:22:16.08 ID:7IQgdiMS.net
そしてもう一つ重要な要素だと思うのはヒロインアイリスの存在。前作では療養中とは言えまるっきりメルヘンなメンヘルといった感じで
現状もろくに把握してないんじゃないかって心配だったけれど、本作は別人の如く頭もスッキリして活動的!
ピーターへの結婚アピールが凄くて、チラリと他の候補者を匂わせたりと強かさも見せる。騒動が起きてからもピーターの牽引役を果たしていて、殊に終盤の活躍は手際が良くて惚れるね。
本作だけだと本当良い伴侶だなと思うんだけれど、他方で酒に関するピーターの取り決めと言い結婚の顛末と言い将来に利用可能な兵器を遺したとも言えるのである……。

99 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/12/01(日) 20:31:00.72 ID:3QAfRbNd.net
「ディミター」ウィリアム・ピーター・ブラッティ(東京創元社)

圧政が布かれていたアルバニアで捕まった謎の男〈虜囚〉。彼は壮絶な拷問にも耐え抜き周囲を皆殺しにして脱走を果たす。
一年後、エルサレムでは病院で不治の病の患者が完治する奇跡や逆に病態が急変して死ぬ変事が起こり、街でも殺人事件や人間消失等が相次いでいた。
医師メイヨーや警部補メラルはそれぞれが謎を追っていくのだが……。

ツイッターでやたら凄い凄いと煽られてたから読んじゃった。
三部構成になっており、二部で真相の一部が御目見得し三部で全て明らかになるという次第。
最初は読みにくくて小休止を挟みつつ進んだ。つまらなくはないが一気にかき込めない文章で……。
中盤段々真実が明かされていくものの、これではまだ扉の惹句「人知を超え」るほどではなくこんなもんかと思っていた。
しかし少しずつ断片的な謎が現れクライマックスで真実が明かされるに至るやその反転ぶりに結構唸った。ウウッみたいな。

ただ、変装がチート化している点が引っかかるね。凄腕だからで片付けちゃうのはメルヘンが過ぎるかと。
これジレンマなんだよね。さらっとしれっとやると案外気にならないもんなんだけど。
いずれにしても80超えてこんな怪作を書ける底力には脱帽。

100 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/12/01(日) 20:33:51.07 ID:3QAfRbNd.net
「プレイボーイ・スパイ1」ハドリー・チェイス(東京創元社)

CIAの孫請けスパイ、マーク・ガーランドは依頼を受けてCIAに何かを売りつけようとしている女に会いに行く。
女が持っていたのはかつてアメリカを裏切ったスパイケアリーの居所だった。
謎の富豪ラドニッツの手先に雇い主を殺され、脅されたのと大金欲しさで寝返ったガーランドはダカールへ飛ぶが、現地ではケアリーを狙うロシアの殺し屋たちが待ち構えていた!

初チェイス。007の亜流ですね。映画で観たレプスキーとは別のようです。
ボンドと違う点を挙げればそのスタンスでしょうか。完全にノンポリではないものの、国家や組織への忠誠心は薄いようです。
老スパイを巡る米ソそれから闇商人の三つ巴の殺し合いに巻き込まれた主人公が美女といちゃつきつつ頑張るというストーリーですが、
特に意外性とかはなく映画で観たいタイプのものでした。本邦に入ってきているのでしょうか?

個人的にはもっとエロが欲しかったです。案外少なかったので(笑)。

101 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/12/08(日) 13:42:16.43 ID:6jqU7aUP.net
「殺意のインク」M・S・カール(角川書店)

ピュリッツァー賞と引き換えに友を喪った新聞記者ブレイディは田舎町トロイに引っ越し、現地の地方紙を買い取った。
しかし会社は火の車でしかも経営に乗り出した直後、長年連載していたコラムニストがパーティーの最中に殺されてしまう。
ブレイディは記者志願の美女ケリーと競い合って事件の真相に迫るべく取材を開始することに。
すると長閑に見えたトロイにも悪意や中傷が渦巻いていたことが明らかになっていく。どうやら鍵は過去の記事にあるらしいのだが……。

記者ものは矢張り面白いと再認識させられた一冊でした。
ピュリッツァー賞記者が落ちぶれて地方紙にという流れはかの大傑作「湖は飢えて煙る」と同じ流れですね。
扱う事件は中々に込み入っており、過去の事件や謎のピュリッツァー賞作家を背景に何人もの思惑が絡み合って読み応えのある内容を形成しています。

仮説を立てては崩れたりする過程やフーダニットの凝り具合など“準本格”と言っても良い出来映えではないでしょうか。お薦めです。
続きも訳されているのかしら……。

102 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/12/08(日) 13:44:28.53 ID:6jqU7aUP.net
「シャドウボクサー」ノエル・ベーン(早川書房)

戦時下のドイツの収容所から囚人の脱走が相次ぎ、当局は対策を迫られることになる。
どうやらシュパングラーと呼ばれるスパイが地下組織と結託して手引きしているらいのだ。
ドイツは大掛かりな捕獲作戦を計画し、更に共産党員の囚人を横取りされたソ連もシュパングラーに関心を示す。
果たして凄腕のスパイの背後にはどんな秘密が隠されているのか――?

まず裏表紙は読まない方が良いです。最初から嘘だし、中盤明らかになることを書いてるのもマイナス。
さて、「クレムリンの密書」はプロットはともかくストーリーがあってないようなものだったのでイマイチな印象だったのですが(映画はどうなってるのか気になります)、
本作はどうかと言うと、最初からストーリーを構えていないんですな。
あくまで大戦中のスパイや軍人たちの暗闘、駆け引き、工作、アクションが描かれており、ストーリーはキャラクターの背景に匂わす程度です。
それが逆に意味深で作品に質感を与えていると思います。

肝心のプロットはと言うと、これがもう複雑怪奇でしかし韜晦が過ぎる訳でもなく良い塩梅なのです。
ちらほらと明らかになる意外な正体!終盤で二転三転する展開!そしてそれらを内包する大どんでん返しと読みどころはたっぷりです。
スパイ小説の2つの潮流を合わせた面白さがあると思います。

103 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/12/14(土) 20:17:30.82 ID:Kr8ZMkrg.net
「幻の終わり」キース・ピータースン(東京創元社)

同僚と飲んでいたベテラン新聞記者ウェルズは戦場帰りの記者コルトと知り合う。
しかしコルトはカウンターに一人で座っていた男を見るや血相を変えて詰め寄る。二人に一体何が?
その夜コルトの部屋に泊まったウェルズは翌朝コルトが殺される瞬間を目撃し、自らも襲われる。
コルトが言い残した「エレノア」とは誰なのか? 事件を追うウェルズだったが……。

シリーズ2作目。創元のガイド本ではシリーズ4作とも高評価なんですが、1作目ははまらなかったんですよね〜。
記者ものは相性良いはずなのに。何か地味で印象に薄いんですよ。今回理由を2つほど考えてみました。
まず都会が舞台ということ。次にアクションが多いということ。
これって本来派手になる要素なんですが、どうも記者が主人公だと必ずしもそうではないみたいなんですよね。刑事や探偵とはバトルフィールドが異なるせいなのか……。

それと解説子はツイストは要らなかったと言っていますが、私はまだ足りないと感じました。
もっと複数の要素を重層的に絡ませていく展開が欲しかったところです。

キャラクターとしては俗物な上司ケンブリッジや絵に描いたような悪徳刑事などがいますが何と言っても同僚ランシングでしょう!
若くて有能な美女というのみならずウェルズに露骨な秋波を送ってくるという赤川次郎的女性キャラなのです!
でも何故か据え膳……。

104 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/12/14(土) 20:19:43.51 ID:Kr8ZMkrg.net
「サタデーナイト・デッド」リチャード・(早川書房)

コメディ番組に出演する知り合いの大リーガーカジックの付き添いでニューヨークのTV局を訪ねた私立探偵ハーヴェイは、
番組プロデューサーのギャンツに頼まれ影終了まで同行することになる。ギャンツを初め一癖も二癖もあるスタッフたちの間には何やら不穏な空気が。
そしてそれはギャンツの転落死という形となって現れる。局の副社長に真相解明を託されたハーヴェイは有象無象のTV業界に踏み込んで行く。

シリーズ3作目。これ好きなシリーズですね。巧い作者だと思います。
本作も長めなのにどんどん読ませるし前作同様“繋がり”が発覚する瞬間はウホッとなりました。
ただ訳者解説にもある通りプロットが大人しめなのがややマイナスでしょうか。フーダニットが弱いです。
あと個人的にはTVキャスターの恋人ミッキーとの関係が順調過ぎるのが気に食わないです(笑)。ぞわぞわさせて下さい!あくまでも適度にですが。
邦訳はこれきりのようで学刈。

105 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/12/14(土) 20:22:18.54 ID:Kr8ZMkrg.net
「心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿」アルジャナン・ブラックウッド(東京創元社)

オカルトハンターサイレンス博士を主人公にした連作集。
この分野の代表作の一つということで期待したが、イマイチ入り込めず。
冒頭で修行して超人になっちゃったとかあってズッコケた。それはダメでしょう。そうなるとおいてけ堀の念力珍作戦だもの。
あと一編が長い。ホラーは短い方が怖いと思っている。飽きや慣れが生まれると恐怖が減るから。

とまれ、ベストは「秘密の崇拝」。ふと郷愁に誘われて母校を訪ねた男……怖いと聞いていたが確かにムード満点でジットリとさせてくれた。
今はありがちな設定だが怪談としての一つの理想だろうね。短めなのも○。

次点は「炎魔」に。博士と助手が向かった屋敷の周りでは謎の発光体と火事が頻発し……これはミステリーぽさがあって後半は3Sで楽しめた。
他「古えの妖術」はベストと同じく好きな設定だけど長くてダレた。後もう少し分かり易い構図で良いと思う。

106 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/12/22(日) 19:03:55.34 ID:raohsMJ0.net
「鷹の城の亡霊」ジョン・ウィルソン(東京創元社)

エンジニアのデーヴィッドは会社からヨーロッパ勤務を命じられ仕方なく引き受けるが、その直後から謎の悪夢にうなされ、人格にも変化が現れる。
妻の進めで精神科に通ったデーヴィッドの脳裏に過ぎった何処かの部屋の風景。
そこにはヒトラーの肖像画が! デーヴィッドは自らの内に潜む謎を探るべくドイツへ飛ぶ。

所謂ナチもの。序盤主人公が中年まで童貞で、初めての女である妻は20も年下のモデルというメルヘンな設定には身を乗り出した。
主人公がヨーロッパで自分探しに熱中していき、おいてけ堀の妻は精神科医と……とプロットも割と好み。
しかし次第にキツくなった。500ページと長い上に不自然な部分が目についてのめり読めなかった。

普通のおっさん(しかもこないだまで童貞)たる主人公が何故そこまでやるのか理解できないし、妻がよろめいていく過程もその結果も簡素で物足りない。
しかも終盤の畳み方が機械仕掛け(ダブルミーニング!)過ぎて脱力した。確かに敵は巨大だけどありゃねーわ。ナンダッタン。
要するに説得力が無いんだな。これはプロット残しでもっと文章構成力のある作家にリライトさせるべき。マックス・アラン・コリンズ辺りに。

107 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/12/22(日) 19:10:47.84 ID:raohsMJ0.net
「亡霊たちの真昼」ディクスン・カー(東京創元社)

ベストセラー作家ジムは大新聞の依頼で新進の政治家のスキャンダルを取材するためニュー・オーリンズへ向かうことになった。
道中謎の美女や尾行者に遭遇しつつ目的地を目指すジム。行きの列車では旧友レオと再会し彼が取材の鍵を握っているらしいと睨むが相手の口は堅かった。
ニュー・オーリンズに到着し聞き込みを重ねる中で浮かび上がるユニークな人間模様。そして遂にジムの目の前で関係者が命を落としてしまう。
状況から自殺かと思われたが……。

一応歴史ミステリーらしいですが、1912年なのでカー的にはそこまで昔ではないです。今回は密室ではなく自殺に纏わるトリックでした。
これを実行するのはかなり難しい気がしますが……。もう一つトリックが出て来ますがこれはピンと来る人が結構いるかも知れませんね。

しかし本作はむしろスリラーの良作だと思います。神出鬼没のヒロイン、謎の尾行者、そして不思議な存在感を醸し出す高級娼婦。
多彩なキャラクターたちが入れ代わり立ち代わり登場してジワジワと話を盛り上げてくれます(ちょっとしたホワイダニットもあり)。
事件そのものは中々起きないのですが、焦れることもなくこのままでいんじゃねとすら思ってしまいそうになりました(笑)。

108 :書斎魔神:2013/12/22(日) 22:07:29.11 ID:64bhVxAL.net
久々にアリステア・マクリーン「ナヴァロンの要塞」を読む。
(ノヴェルスでの刊行以来、内容は同一ながら文庫版は初読みである)
正直言うて、現在では原作以上に著名な映画の方がわかり易いエンタメとしては上という感を抱いた。
原作は初期マクリーンらしく女っ気は皆無、徹底したマン・オブ・ザ・ワールド
である。
ボロ船で嵐のエーゲ海から島へ決死の潜入、行く手を阻む絶壁、
1度は捉えられるものの逃れ、山中の逃避行、スパイ騒動等々の文字どおりの
艱難辛苦を経ながら遂に巨砲の爆破に成功・・・メーンストーリーの大筋は
同様ながら、映画版の美しき女スパイに相当するのが、何とも程遠いむくつけき大男とは(w
殉職者もスパイを除いては、原作のみ登場の英人若手登山家スチーブンス(映画版のフランクリン大佐に相当、つまり原作ではマロリーは当初から隊長の
ポジションであり、アンドレアとは過去の確執などはなく、共に生死の境を潜り抜けて来た無二の戦友である)のみ。
キャラ設定に関して.は、アンドレア(これはアンソニー・クインのイメージ
そのものかと)以外は、かなり映画は脚色されている。
主人公の登山家マロリーは,髭もじゃなタフガイというイメージで
グレゴリー・ペックでは、端整なイケメン過ぎるかな。
それ以上に驚いたのは、飄々としたデビッド・ニーヴンのイメージが強い
爆薬担当のミラー伍長がおフケツと称される陽性のヤンキーであること。
このキャスティングには、原作ファンはビクーリだったでしょ。

109 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/12/23(月) 14:22:36.25 ID:oFf0t7v6.net
「トータル・エクリプス〜皆既日蝕 上・下」リズ・リグビー(扶桑社)

天文台で研究に勤しんでいるロウマックスは新任の秘書ジュリアに魅せられる。やがて恋人関係になる2人。
しかし、程なくしてジュリアは逮捕されてしまう。夫と義理の娘を射殺したというのがその容疑だ。
彼女を信じるロウマックスは弁護士たちに混じり慣れない調査を行う。

虫は出てこないがダメな扶桑社。あらすじはリーガルぽいけれど、タイトルも表紙も思わせぶりで一体どういう話なのか気にさせるのよ。
読んでも読んでもカテゴライズできないのよ。天文台で謎の工作が起きたりしてどう収斂させるんだろうとか思いながら繰っていったんだけど結局……。
下手な作者の典型的なパターン、端々で思わせぶりな書き方して鼠一匹出てこないってアレだよ。

畑違いの主人公が事件を調べるというミスマッチの妙が無いし、別れた妻や子供たちとのエピソードも脇筋と言うにはでしゃばり過ぎだし、
全体的に水膨れが目立つ。
後半漸く裁判が始まるけどこれもイマイチ盛り上がらない。
ラストに待ち受けている落ちの衝撃度はなかなかのものだが、それまで読まされる分量を考えると評価しにくい。
まあ読まなくて良いよね。

110 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/12/23(月) 14:25:21.96 ID:oFf0t7v6.net
「トワイライト・アイズ 上・下」ディーン・R・クーンツ(角川書店)

人間に化けたゴブリンを見破る力を持つ少年スリムはゴブリンの伯父を殺したった一人で逃避行を続けていた。
とあるカーニバルの一座に潜り込もうと考えたスリムは首尾良く仕事を得、三つ目の巨漢ジョエルや美少女ライアたちと知り合う。
しかし、そこにもゴブリンたちの影が迫り来るに及んでスリムは命懸けの決断を強いられることになる――。

最近上下巻で面白いものがないなあ。これもね、もっと面白くなり得るはずなんだが妙にこう抽象的というか純文寄りというか……。
そもそもゴブリンは本当にいるのか?悪人の比喩ではないのか? そういう感じで進んで行くので何か入り込めない。ホラー文庫ならがっつりホラー読ませろと。
ゴブリンについては後に説明が入るけれども、それでも“今”の状況に納得出来ないしなぁ。
あとカーニバルを舞台にすることで物語自体が現実逃避しているような気もする。スリムは殺人犯として警察に逐われている身だし、
ゴブリンを殺せば殺すほどそのリスクは高まっている筈なのに、その辺がスキップされてカーニバルにいれば安心安全みたいな都合の良さがあって。

更に言うと背景や動機の部分を端折ってるのも残念な点。下巻に入ってすぐ驚きが2つあり、
1つ目は出来過ぎだと思ったが2つ目は面白くなるポイントだと信じて身を乗り出したのに簡単に処理されて拍子抜けした。
あそこは今後の展開を左右する重要な部分だから顛末をじっくり描いて欲しかったのに。

ただ、下巻からは解り易いアクション小説になったのは読み易さという点で評価するに吝かでないよ。
あと下巻70ページのライアのセリフの後半は同意。

111 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/12/29(日) 20:53:21.81 ID:nkMZRQxo.net
「モーテルの女」フレドリック・ブラウン(東京創元社)

田舎町メイヴィルの新聞記者ロバートは地元のモーテルで女が全裸死体となって発見された事件を追うことになった。
契約に縛られ薄給に泣くロバートは好機と張り切るのだったが……。

久々ブラウンの長編ですが、これはオーソドックスなミステリーでした。詰まらなくはなかったけれど、期待していたのとは違ったかな。
創元はエド・ハンターシリーズを復刊するべきだと思うのです。
所謂記者ものとしての特性もさほど感じず。

112 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/12/29(日) 20:54:33.52 ID:nkMZRQxo.net
「ファイアウォール」アンディ・マクナブ(角川書店)

SAS上がりのニック・ストーン3作目。
相変わらず圧倒的なディテールに圧倒された。それも兵器の蘊蓄とかではなく猛吹雪の中で生き延びるサバイバル術とか電車のトイレでの殺し合いとか、そういう専門道具に頼らないシーンのディテールね。
こういうのは経験者ならではって感じがして興奮するよなぁ。

今更ケリーがPTSDてのは無理があるような気がするし、ヒロインの描写ももう一つサムシングが足りない気がするけれども、読みたかったマクナブさは得られたので満足。
あと432ページのニックの意見に同意。自分だけじゃなかったんだなw

113 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/12/29(日) 20:56:33.75 ID:nkMZRQxo.net
「殺人症候群」リチャード・リーニィ(角川書店)

初リーニィ。問題作というものはしばしば時代と共に色褪せてしまうものが少なくないが、残念ながら本作もそれ。
現代の読者なら序盤で解ってしまうネタだ。いや文章がおかしいから当時の読者だってあれっと思ったはずだ。
しかし耐性が無いからその違和感を消化できないまま読み進んで終盤に驚いたということなのではないか。

リーニィの評価は「心引き裂かれて」に持ち越し。

114 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2013/12/29(日) 20:57:22.02 ID:nkMZRQxo.net
「ルウィンターの亡命」ロバート・リテル(早川書房)

これは傑作どころか、作品なのか?単なる取り留めのない思いつきにしか読めない。
「こうなってこうなればこうなっちゃうかもね〜」てな感じの妄想をそのまま本にしちゃった感じで、山無し落ち無し意味無し。
短めだったから無駄にした時間が少なくともまだしもだ。

115 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/01/02(木) 23:46:38.06 ID:n5J+/f5M.net
「無罪」スコット・トゥロー(文藝春秋)

かつて殺人罪で起訴され無罪を勝ち得た判事サビッチは順調に出世を続け最高裁判事の席を目前にしていた。息子ナットも弁護士として歩み始め、一家の未来は明るいはずだった。
しかし、魅力的な調査官アンナとの出逢いがサビッチに危うい変化を齎す。そんな中妻バーバラが死に、再び殺人罪で起訴されてしまうのだった……。

「推定無罪」20年目の続編。前作未読でグレタ・スカッキのエロシーン目当てで映画版を観ただけですが何か?

つーことで初トゥロー。各書評では前作の真相に触れていないことが評価ポイントのような扱いをされていましたが、俺に言わせりゃハァ?てなもんや三度笠。
だったら別でいんじゃね?と。読み始めてもそう思っていたよ。そこはもう割り切っていいだろう。売上気にしないくらい貯えアンデショーン。
あと多視点なのも法廷劇の躍動感を奪っていてマイナス。
更に、敵役は前作と同じなんだがこいつが変に良い奴ぽいのも?だなー。もっと解りやすいリベンジ野郎の方がエンタメとしては主人公に感情移入しやすいのにから。
そして妻がアンチエイジングな美女で今でも週3とかいう設定も要らんと思うわ〜。ただのヤリチンオヤジやんか。
でトドメが○○○。もう気色悪うて暫く中断しちゃったよ。

などのブレーキはあるものの、真相は予想の上を行ったわ。こりゃ読めんかった。だからまあBくらいかな。

116 :書斎魔神:2014/01/11(土) 14:04:06.85 ID:x+raZQZq.net
T・N・スコーシア&F・M・ロビンスン「タワーリング・インフェルノ」
を読む。
大ヒットした高層ビル火災を描いたパニック映画の原作のひとつである。
(他にも邦題「そびえたつ地獄」という作がある)
登場キャラの性格付け等細部は相当に異なるとはいえ、
映画の大筋は本作に有りかな。
災害の主因は建築費節減のための手抜き施工(原作では直接の出火原因は
怠け者アル中警備員の不始末)、小説では単に電気系統のヒューズが安物とか
の単純なものでなく、建物全体に及ぶ欠陥が詳細に綴られている。
活字ポイントが小さい頃の文庫本で約600頁というボリュームだが、
映画には登場しないキャラ(特にメーンキャラのひとりである
ニュースキャスターのカントレルが興味深い。
物語上は敵役なのだが、決して類型的、ありがちなマスごみ人に描いていない
のは良し、彼には彼の仕事に対する姿勢があるんである)も含めて、
彼ら、彼女らの個人的背景等も丁寧に書き込まれた人間ドラマで、終盤までは
グイグイ読ませるものはある。
ただし、最後はハッピーエンディングの連発。
(映画版でジェニファー・ジョーンズが演じた初老婦人の元ネタと思われる
キャラも階段の脱出シーンや飼い猫のエピはありながら、無事救出され、
フレッド・アステア演じた老詐欺師の元ネタキャラと再会)
これは、前半から中盤にかけての迫真性との対比もあって白けまくり。
大災害後の無常観なども映画の方が伝わって来る感がある。
結局、原作が読み継がれなかったのは、ハリウッド映画以上にお約束な展開に
拘泥した作者たちの力量不足ゆえか。
2人共、SF畑の作家らしいが、本邦では本作以外は全く聞かない名ではある。

117 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/01/13(月) 16:56:16.30 ID:3ojaqAyx.net
「夢の女・恐怖のベッド 他6編」ウィルキー・コリンズ(岩波書店)

まず文句を言いたいのは本書の構成である。訳者解説によると2つの短編集から抽出したものだという。
それだけならばまだしも、それぞれの短編集には枠――統一されたストーリーがあり、短編は作中作の扱いになっているというのだ。それを解体する奴があるか!
2冊出せば良いではないか。岩波なんだから部数命でもないだろうに。機会を考えろよ。それぞれ面白そうな枠であるだけに残念でならない。

とまあ準強姦行為に対する憤りを露わにした後で内容へ。ディケンズと言いスティーヴンスンと言いヴィクトリア期の作家は魔法のペンを持っているね。
プロットは大したことないはずなのに魅力的なストーリーに仕上がる不思議。「黒い小屋」なんてあらすじだけならてんで大したことないんだけど、ああも面白く豊かな物語になるんだから凄いねえ。

ベストは表題作「夢の女」か。これとあるパターンの元祖なんじゃないかと。かつて量産作家が短編のネタにし、SF作家が賞賛してSF作家に教え、
その作家がアンソロジーに加えて、それを万能作家が評論で先例を示して見せたというパターン。しかし更に先例があったんだねえ。全員出し抜かれてるようで愉快。
元祖という点ではもう一つの表題作「恐怖のベッド」も、あるネタの嚆矢かも知れない。ギャンブルでバカ勝ちした男を待ち受けるものとは……。
「盗まれた手紙」はポオに挑戦?した手紙捜しだが、まあ本来黎明期ならこんなとこでしょ。ポオが凄すぎるだけ。

臨川の全集にも手を出してみようかしら。その前に「白衣の女」だな。

118 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/01/13(月) 17:17:17.12 ID:3ojaqAyx.net
「鷲たちの盟約 上・下」アラン・グレン(新潮社)

大統領就任直前のフランクリン・ローズヴェルトが暗殺されたパラレルワールドのアメリカ。
数年後、ポピュリストヒューイ・ロングが大統領となり、アメリカはファシズムの道をひた走っていく。
そんなある日、ポーツマス市警刑事サムは線路の側に死体があるとの通報を受ける。事件解決に意欲を見せるサムだったが上層部からの横槍が入り捜査は中止に。
諦めきれないサムは独自に捜査を進めていくがその先に待ち受けていたのは余りにも巨大なこの国の暗部だった……。

「チャイルド44」「ユダヤ警官同盟」の
路線かな?何と括れば良いか知りませんが。それにしても「モスクワ、2015年」「極限捜査」「虜囚の都」等
独裁国家や共産国家が舞台の警察小説は緊迫感が半端じゃなくて実にwktkして読めますね。悪くない時間でした。

主人公の刑事は体制側であり勝ち組の端くれではありますが、体制・組織・家族それぞれの有り様にいつも悩まされています。
(民主)党の集会はサボりがち、上司には睨まれ同僚や部下からも嘲りを受ける。父には疎まれ兄は反体制派の囚人、美貌の妻はレジスタンスの一員で義父は下卑た俗物ではないかという風に。
その上で厄介な殺人事件に取り憑かれてしまう訳です。
前述のwktk感溢れる捜査と家族との葛藤から終盤のスリリングなアクション劇を経てラストの決断へと至る流れは見事に読者を引き込んで行きます。
殺人事件の真相もその過程で浮かび上がる事実も迫力があります。

(続く)

119 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/01/13(月) 17:19:04.46 ID:3ojaqAyx.net
(承前)

ただし当然ながら欠点もあってそれは主人公の短慮さ。反体制派を斜に構えて眺めている癖に、
自分は感情に任せて己の身を危うくしたり行き当たりばったりで死地に飛び込んだり刑事の資質が疑われるミスが目立ちます。
もっともそれには作劇上の理由があったことが終盤判るのですが、違和感は拭えません。

あとラストの決断について、公の部分はともかく私の部分は感情移入できませんでしたねえ。もういいでしょう(笑)。あの場面で答えは出たと思ったんですが……。
主人公と違いあの人は正にとある女性の言う×××××だと感じました。

最後に訳者あとがきで橋下徹をヒューイ・ロングになぞらえているのは頂けません。支持者が読む可能性も結構あるんじゃないかと思うし、そもそもスケールが違い過ぎるでしょう。
自著じゃないんだから自重すべきでした。

120 :書斎魔神:2014/01/19(日) 21:22:09.41 ID:6rFwlddX.net
「ギャスケル短篇集」を読む。
キリスト教にこの表現はどうかと思うが、抹香臭くてつまらんというのが
正直な感。
ディケンズが評価した閨秀作家だが、俺はこの文豪の作もあまり面白いと思うたことはないので、(起承転結が決まっている感がある怪談「信号手」は評価するが)、嗜好に合わぬという面もあるのやもしれぬ。
8篇収録だが、多少でもこの板の連中の興を惹きそうなのは、
ゴーストストーリーな「婆やの話」、一応ミステリ仕立てな「終わりよければ」
ぐらいであろうか。

121 :名無しのオプ:2014/01/20(月) 18:28:27.06 ID:mr464Kvy.net
書斎のチョイスは素晴らしいね。

122 :書斎魔神:2014/01/25(土) 19:25:45.80 ID:abzh3d4B.net
ダン・ローズ「コンスエラ 七つの愛の狂気」を読む。
現代英国文学という紹介のされ方であったので、本作を手にしたミスオタは
いないと思われだ(w
7作品収録だが、スリラーとして読んでも面白いものあり。
特に極端な女性心理を描いて強烈(しかも笑える)な表題作は絶対な推し。
久々に収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「カロリング朝時代」
これは美人JDに萌える老教授というわりとありきたりな短いお話。
音符ネタがわからないとつまらんでしょ。
・「ヴィオロンチェロ」
チェロになった美少年。愛する美少女の愛器となることを熱望するのだが・・・
どこか大乱歩の「人間椅子」を想起させるが、こちらは文字どおりのチェロ化。
ラストは過去に拘泥しない「女性」の一面を活写した感があって印象的だ。
・「ガラスの眼」
これは完全にホラーでしょ。
義眼の年上女に惚れ、惚れられた青年の悲劇(どころか惨劇)
片目で見たら婆というオチが何とも・・・

123 :書斎魔神:2014/01/25(土) 19:26:23.35 ID:abzh3d4B.net
・「マドモアゼル・アルカンシエル」
3人の男女のある種三角関係を描いた小話としか。
ラストは惨劇になるかと思えば、哀感漂うウォーキングでエンド。
・「ごみ埋立地」
廃棄物担当の妖精のごとき美人課長補佐(最終的にだが)とか、
リアルならマスコミがとびつくようなネタ(w
彼女に片想いに終わる男の悲劇で、本作も過去に拘泥しない女性の残酷さを
描いて面白い。
ごみ処理ネタが意外にリアルに書き込んであるのも興味深く、
作者の個人的関心が強い分野なのであろうか。
・「一枚の絵」
収録作品中では一番短い作でこれもホラー。
カンヴァスに描かれた美女に魅せられた男たちが辿るのはことごとく死・・・
「押絵と旅する男」ちゅーか、2次元萌えの極致というか(w
さて女たちの反応は・・・というのがオチ。
・「コンスエラ」
真打登場という感ありな表題作。
逝っちゃてる美少女(貧農の娘)に魅せられたイケメン資産家跡取り息子の
壮絶(正に文字どおりな)愛の物語としか・・・
とにかく終盤に向かうほどに凄い展開、
ヒロイン=コンスエラの変貌ぶりは戦慄ものだ。
表面の美醜に拘泥しないのが真実の愛というのは正論ちゃー正論なのだが、
ここまで逝くとね・・・下痢便状態までは勘弁でしょ(w

124 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/01/26(日) 17:08:58.52 ID:ohvieoBr.net
「スリーパー・エージェント」イヴ・メルキオー(角川書店)

1945年4月。
崩壊寸前のナチス・ドイツにあって幹部ボルマンは極秘の計画を発動させる。それはアメリカへスパイを潜入させ来るべき第四帝国の誕生に備えさせるというものだった。
一方米国陸軍防諜部のイェーガーは捕らえたナチのスパイから〈ココン〉なる暗号の存在を知る。その謎に迫るべくイェーガーは戦火のドイツそしてデンマークへ飛ぶ!

作者はデンマーク人でB級SF映画の脚本や監督を担当していたこともあるようです。
第二次世界大戦の終幕の数日間を舞台にしたマンハントです。戦場の話ということでドラマ性が薄そうだとあまり期待していませんでしたが、リーダビリティはなかなかのものでした。
冒頭の場面がまず24的な瞬間瞬間のサスペンスで読ませます。そして本筋たるイェーガーの追跡行は巡り合わせが良すぎる嫌いはあるもののダレることなく読み通せました。卑劣なアメ公が出てくるのも○。
ただ、全体像を観ると別に読まずに死ねるかというほどではありません。計画の凄さもあまり伝わって来ないですし。

ついでに、主人公の奥さんが銃後で浮気してるという設定なのですが、村八分とかにはならないのでしょうか?
当人の士気に影響するしポストによっちゃ国益を損なう可能性すらある訳で非愛国的行為じゃないのかと。しかも相手は怪我で本国勤務の軍人てこっちはもっとでしょう。

125 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/01/26(日) 17:14:24.77 ID:ohvieoBr.net
「恐怖の関門」アリステア・マクリーン(早川書房)

不法入国の廉で被告人とされたタルボは傍聴席の女性メアリーを人質に逃亡した。しかしモーテルで元刑事ジャブロンスキーに捕まりメアリーの実家へ連行される。
メアリーの父はアメリカ屈指の大富豪であり、タルボはそこで待ち受けていた怪しげな男たちから自由の身と引き換えにある任務を果たすことを要求される。
その任務とは、彼らの“宝探し”を手伝えというものであった……。

初マクリーン。映画化作品は観たことある。
まずカバー裏見返しのあらすじはネタバレなので見るべからず。面白さ半減すること請け合い。早川の編集としたことが。あと邦題もおかしい。これじゃ関門が恐怖みたい。

さて内容。実は的なプロットが鼻につくしキャラクター設定もロマンスも類型的であるが、つまらないという程ではない。
あと自分は海洋ネタがちょっと苦手なんで(船舶関係の専門用語とか技術とか)相性の問題もあったかも。その辺の描写が続くと斜視になる。

おまけの名言「プロの殺し屋にあってはならぬものが、まず想像力という奴だ。彼はたったひとりぼっちで、彼のぎせい者の亡霊と共に暮らしていかなくてはならぬからだ」

126 :名無しのオプ:2014/01/26(日) 19:50:29.97 ID:cpKA3waH.net
本のチョイスが並のミスヲタとは違うわな。

127 :書斎魔神:2014/02/01(土) 22:06:24.69 ID:rAIklT2N.net
エドワード・D・ホック「サイモン・アークの事件簿X」を読む。
遂にわがサイモンともお別れ、最終巻とのことである。
サム・ホーソーン・シリーズ(こちらは全作翻訳)終了後の
寂しさ(それこそいわゆる「サムロス」状態)を十分に埋めてくれた
異色オカルト探偵シリーズであったなあ・・・
次は作品数的にはレオポルド警部シリーズだろうか?
大昔、講談社文庫から作品集が出てから集成されていないし。
それでは、創元サイモン・シリーズ最後の収録作品全話講評
逝ってみようか!!!
・「闇の塔からの叫び」
NYど真ん中を舞台に展開される摩天楼の恐怖とでも称すべきエピ。
ストーリーもオカルト色は無く、ハードボイルド・ミステリでも
書けそうなお色気も有りな人間(家族)ドラマである。
シリーズ異色作と言い得、
サイモンが魔力めいた腕力(この表現がぴったりかと)を見せたりする。
だが、
大手出版社の社長にまでなる人物って、もっとクールなキャラなのでは?
すると展開も、もっと異なるものとなったような。
・「呪われた裸女」
これはNY近郊、コネティカットでの事件。
脱ぎたがり女に関する謎解きだが、真相は過去のトラウマが絡んだ
極めてシリアスなもの。あまり面白い話ではない。
・「炙り殺された男の復讐」
タイトルからは想像し難いが、
グランド・セントラル駅での捕物がクライマックスとなるNYストーリー。
オカルト色はありそうでなく、謎解きもたいしたことはない。
・「シェイクスピアの直筆原稿」
ショットガンねたが意表を突くものの、それだけの作。

128 :書斎魔神:2014/02/01(土) 22:08:32.69 ID:rAIklT2N.net
・「海から戻ってきたミイラ」
海岸に漂着したミイラ化した死体の謎。
ブラジル(リオ)を舞台にした収録作品中では一番オカルティックな作だが、
ミイラの謎をめぐる謎解きに御都合主義な面があり、
雰囲気だけという感の作。
・「パーク・アヴェニューに住む魔女」
殺人トリックの小道具は面白いのだが、
展開に強い偶然性が絡み過ぎるのが難。
(この展開にしないとバレバレになるため)
・「砂漠で洪水を待つ箱船」
これもオカルトねたに非ずだが、スティールならぬステルスねたの
スケールが大きいトリックは面白くはあった。
・「怖がらせの鈴」
最後の最後にこのシリーズらしいオカルトねたキター!と思うたところ、
叙述トリックがアンフェア気味だし、ホックともあろう人が堂々抜け穴ねた
とは・・・思わずガクーリ、
これが邦訳で読める最終作となるやもしれぬのに、
この出来ではなあ・・・
・総評
作品により時代の違いはあれど、大都会NYを舞台にしたものが多い
ためか、本シリーズの最大の特色であり、魅力でもあるオカルトねたが
少ないのが残念、サイモン・アークという個性的な探偵キャラが
十分に活かされていないものが多いという感を受けた。
作品の出来栄えを優先したのであれば、既にこの程度の作品群しか残され
いないのなら、邦訳終了も仕方あるまいと思われる。

129 :名無しのオプ:2014/02/02(日) 08:58:21.27 ID:/XaOVPbG.net
読後感の自己満足作文ばかりが続くと、書斎の論考を読める喜びを噛み締めることができるね。

130 :名無しのオプ:2014/02/02(日) 13:52:52.83 ID:f2Yz/5YS.net
毎度毎度つまらないと連呼してるだけじゃん
短編集は「あらすじ+難癖」

全ての作品をくさすことで他者が読まないようにしているんだろうけど、
嫌がらせとしてもレベルのひくいことで・・・くだらなすぎ

131 :名無しのオプ:2014/02/02(日) 20:02:25.11 ID:/XaOVPbG.net
読後感のことか。よくわかるよ。

132 :名無しのオプ:2014/02/02(日) 21:21:16.12 ID:kOmTfpaW.net
文脈を読めない ID:/XaOVPbG

133 :書斎魔神:2014/02/03(月) 00:11:13.33 ID:GFszbGzP.net
リチャード・M・スターン「そびえたつ地獄」を読む。
本作が映画「タワーリングインフェルノ」のもうひとつの原作である。
125階の超高層ビルが舞台、映画では中盤に描かれるゴンドラ脱出(本作では
これがクライマックスであり、映画以上の悲惨な結末=メーンキャラ全てを
含む男性陣の大半惨死)は本作の方が元ネタであろう。
大火災の原因は手抜き工事だけでなく、個人的なテロが端緒となる
のが、映画とは大きく異なる。ビルのセキュリティが格段に向上しているとは
いえ、これは現代的か。
しかしながら、総評としては、今読んで面白い作ではない。
主人公の建築士をめぐるメロドラマ展開は退屈過ぎだし、
もうひとりの主人公とも言い得る州知事、市長、上院議員等のお偉方がみんな
パニくらない良く出来た立派な人物ってのが、何だかなあ、なんだな(w
(例外的駄目キャラとして若い下院議員や企業家も登場はするが、
対照のためのお約束に過ぎない感あり)、
映画版のもうひとつの原作「タワーリング・・・」に登場したテレビキャスターのようなビビッドで面白いキャラが皆無なのが、小説としての魅力が
薄い因のひとつと思われ。
火災がメーンなストーリーにもかかわらず、消防総監は名無し、副総監も後半は空気状態ってのも、やはり不可解。
ミステリ作家の手になるものとのことで、本作の他にも邦訳(エドガー賞受賞作)
もあるとのことだが、この出来ではねぇ、本作も読み継がれなかったのは
仕方あるまいと思われる。

134 :名無しのオプ:2014/02/03(月) 00:15:35.28 ID:2qdIMUb3.net
またあらすじとつまらないっていうだけの駄文

でもまあ、すぐれた論考で読ませるねえ、って言っておくから
ID切り替えてななしで来なくてもいいからね

すごいすごい
書斎すごい
よませるねえ
歴史に残るねえ

135 :名無しのオプ:2014/02/03(月) 07:44:17.06 ID:MyxManXp.net
実際優れた論考だからしょうがない。

136 :記憶喪失した男 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:5) :2014/02/06(木) 13:42:31.20 ID:eCarZ2yJ.net ?2BP(1000)
「テキスト9」  小野寺整
今までのSF小説って何だったの? といいたくなるほどの完成度を誇る言語学SF。
惑星タヴへの転送によって、翻訳ソフトが言語を類推して現地語を翻訳していくが、
「私」に当たる言語が訳せない。ヨヒとはなんなのか。ヨヒは「私」なのか。
それとも、神を現す単語なのか。
独創的なアイデアを内包しつつ、聖書に匹敵する新たな創世神話を日本人が描き出した。
SFファン必読の傑作。この新人はいったいどれだけの知識をもっているのか!!!

137 :名無しのオプ:2014/02/06(木) 16:04:05.99 ID:HimUub03.net
ここが何の板かもわからないバカが来た

138 :名無しのオプ:2014/02/06(木) 22:19:14.10 ID:uSgMVqAT.net
ヒトを馬鹿扱いするならおまいの知能の高さを示すことだな。

139 :名無しのオプ:2014/02/06(木) 22:46:50.62 ID:Vwn5Dkvk.net
128 名無しのオプ 2014/02/06(木) 22:12:21.41 ID:uSgMVqAT
書斎の論考のリーダビリティは群を抜くね。

140 :名無しのオプ:2014/02/06(木) 23:58:40.55 ID:puukG3Kc.net
不錯

141 :名無しのオプ:2014/02/07(金) 07:58:10.01 ID:0cUx1Fya.net
同意

142 :記憶喪失した男 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:5) :2014/02/08(土) 17:36:37.46 ID:nnEuzZhn.net ?2BP(1000)
ミステリとして読む中村文則「掏摸(スリ)」

犯罪者が一度は考えるのではないか、いや、万民が一度は考えるのではないか、
という極限状況を描き出した傑作。必読なり。

143 :名無しのオプ:2014/02/08(土) 18:12:27.44 ID:v+q+RZ2Y.net
この掌編書評もまた悪くないね。

144 :名無しのオプ:2014/02/08(土) 18:14:03.06 ID:1z9Pn4qx.net
悪いのは書斎の頭だな

145 :名無しのオプ:2014/02/08(土) 18:14:29.46 ID:MvdyExtZ.net
616 名無しのオプ 2014/02/08(土) 16:16:44.52 ID:v+q+RZ2Y
コテハン歴の長さ、その活動の多彩さ、何よりも書いてきた内容だろうと思うよ。
それを考えれば、書斎は褒め称えられるべきコテハンだ。

146 :名無しのオプ:2014/02/08(土) 19:23:24.85 ID:v+q+RZ2Y.net
記憶さんの書評を認めるんだね。
実際、優れているのは間違いないからな。

147 :名無しのオプ:2014/02/08(土) 19:35:17.72 ID:MvdyExtZ.net
ついに妄想でありもしないレスが見てるようになったか
アンチにコテンパンにやられたからって妄想に逃避とは情けないな

148 :書斎魔神:2014/02/08(土) 21:39:08.25 ID:RG9QW6Ms.net
ルーパート・ペニー「警官の騎士道」を読む。
直訳ではないが、ストーリーの趣旨に沿った邦題良し、
本格ミステリとしても専門スキルを利用した
(最近は歯医者通いが多かったので尚更、ビビッドに感じた)
早業殺人も、なかなかに面白いものあり。
ただし、手がかり(事件関係者のひとりの医学知識に関して)が、
後出し気味、この手のミステリにありがちな偶然(ガイシャの看護人が
たまたま交代し別人であった)等が難か。
登場キャラの過去の経緯を思うに、この点は結構肝要なんである。
解説では、人間ドラマ部分の魅力に言及されているが、
この点は月並みな出来、特にアガサあたりの簡潔かつそれなりに
ドラマティックなものを知る者はこの点を首肯しようかと思う。
主人公の主任警部たち探偵側(新聞記者等)におけるまるでアメちゃん
かと見まがうようなジョークまじりの軽快な会話には、ややビクーリ、
コンテンポラリーなエルあたりを意識したのであろうか
(邦訳を見る限りでは、もっとくだけた感じだ)。

149 :名無しのオプ:2014/02/09(日) 20:39:37.23 ID:TVHv9LsJ.net
ロハで読めるのがもったいないほどの論考だなあ。
感謝しないと。

150 :名無しのオプ:2014/02/09(日) 20:52:58.41 ID:lmLLQ1ZS.net
金やるから書斎はもうここに来るな

151 :名無しのオプ:2014/02/09(日) 21:04:29.35 ID:NU6PVsSG.net
送金方法は?

152 :名無しのオプ:2014/02/09(日) 21:10:51.38 ID:6mVncwII.net
言ってほしいことを自演で書いちゃうところが書斎の浅ましいところだな

153 :書斎魔神:2014/02/09(日) 22:31:08.61 ID:CnpcmWd+.net
アイラ・レヴィン「ステップフォードの妻たち」を読む。
ハヤカワノヴェルズにおける刊行当時は、ミスマガのコラムでは不評。
今読んでも、何で本作がこんなにも長期に渡って読み継がれているのかは、
やはり不可解と言わざるを得ないものあり。
(しかも、2度も映画化)
ステップフォードに住む妻たちは、誰しも従順な専業主婦化してゆくのだ・・・
ミステリとしての謎解きがあるわけでもなく、ホラーやSFに走るわけでも
ない(作中でこれらの可能性は示唆されるものの)、
本作を高評価しているらしいストラウブの解説も、
よーわからん類のものだし、
やっぱり「エンタメ」として、これではNGでしょ。

154 :名無しのオプ:2014/02/10(月) 12:32:43.86 ID:05eOxjwD.net
>>153
レヴィンは当たり外れのある作家と言える。
世評の高いローズマリーの赤ちゃんも、妖術だかなんだかで、
面白くはなかった。

155 :名無しのオプ:2014/02/10(月) 17:23:01.05 ID:QLMZvbp2.net
やり取りが成立しているね。
書斎はちゃんとした論考を書いているから、アンチが絶滅すれば普通に平和なスレになる。

156 :名無しのオプ:2014/02/10(月) 23:09:26.38 ID:GLr1p5Y/.net
あまりにもわざとらしい自演しかできない書斎w

157 :名無しのオプ:2014/02/11(火) 07:32:42.35 ID:SEmhWdwF.net
自演は一切ないよ。

158 :名無しのオプ:2014/02/11(火) 08:59:56.14 ID:SRxdslLG.net
となぜか言い切る自称別人w

159 :名無しのオプ:2014/02/11(火) 19:26:55.86 ID:UZLmDw1Y.net
フェルディナント・フォン・シーラッハ「犯罪」やっと読む
実話もとにした淡々とした犯罪短編集だけど
爺様にくらべてお孫さんはヒューマニストだね
ラストのエチオピアの男 よく考えればロード・ジムなんだけど
ほろりときた

160 :名無しのオプ:2014/02/11(火) 19:33:06.94 ID:SEmhWdwF.net
メモ程度ならツイッターにでも書いておけ。
ここは本格論考を戦わせる場だ。
読後感というはた迷惑なコテハンの邪魔が困りものだがな。

161 :名無しのオプ:2014/02/11(火) 19:36:28.79 ID:9JwYIaEt.net
書斎氏のひとりよがりの感想文より、はるかにマシ。

162 :名無しのオプ:2014/02/11(火) 19:49:17.43 ID:KZCjvm/d.net
コテハン叩きはやめろや

163 :名無しのオプ:2014/02/11(火) 19:51:45.30 ID:SEmhWdwF.net
書斎の論考がここでの基準だ。
これは動かない事実だよ。アンチがいくらギャアギャア喚こうがな。

164 :名無しのオプ:2014/02/11(火) 19:56:16.67 ID:ZAqnAN4U.net
そりゃまた随分とレベルの低い基準だなw
幼稚園児の感想文でも楽々クリアできるね。

165 :名無しのオプ:2014/02/11(火) 20:00:24.96 ID:KZCjvm/d.net
いいからコテハン叩きはやめろや

166 :名無しのオプ:2014/02/11(火) 20:05:47.51 ID:SEmhWdwF.net
同意。
書斎叩きはやめろ。

167 :名無しのオプ:2014/02/11(火) 20:06:04.23 ID:KZCjvm/d.net
読後感叩きはやめろや

168 :名無しのオプ:2014/02/11(火) 20:22:43.68 ID:L0gSdFd1.net
はた迷惑なコテハンならば叩いてもいいんだ!!

じゃあ書斎魔神を叩いてもコテハン叩きには該当しないな
嘘ばかり書いてはた迷惑な奴だから

169 :名無しのオプ:2014/02/11(火) 20:38:37.73 ID:SEmhWdwF.net
ここを自分の日記がわりに排他的に使っている読後感は叩かれて当然。
書斎は常にオープンだからな。その副作用でアンチの存在も許すことになるわけだが。

170 :名無しのオプ:2014/02/11(火) 20:43:29.06 ID:KZCjvm/d.net
理由に関わらずコテハン叩きは禁止なので、読後感叩きは駄目

171 :名無しのオプ:2014/02/11(火) 20:44:01.00 ID:9JwYIaEt.net
「書斎のことは支持者もはっきりとは知らない」
この前こう書いてたのに、お詳しいことw

172 :名無しのオプ:2014/02/11(火) 20:49:37.53 ID:Tt7gPphm.net
160 名無しのオプ 2014/02/11(火) 19:33:06.94 ID:SEmhWdwF
メモ程度ならツイッターにでも書いておけ。
ここは本格論考を戦わせる場だ。
読後感というはた迷惑なコテハンの邪魔が困りものだがな。


排他的に使っているのは書斎魔神とその支持者なのは明らかだね
つまり書斎を避難しても叩きにはならないと、図らずも支持者が証明してくれたねw

173 :書斎魔神:2014/02/15(土) 13:25:11.30 ID:hXK3cAfV.net
森英俊・野村康平編著「少年少女昭和ミステリ美術館」を読む。
2011年と少し前に出た本だが、古書に出て来たので即座にゲット!
年代によって読者を選ぶ企画ものと言い得るが、
まあ、俺には見て懐かしくも、楽しい本ではあった。
さすがに古過ぎて昭和20〜30年代に出版されたものは、
全く記憶に無いものが多く、50年代に入ると既に成人向き作品を読んでいた頃なので、馴染みが薄いが、下記のシリーズは、マジ懐かし過ぎであった。
・少年探偵 江戸川乱歩全集(全46巻) ポプラ社
このロングセラーは当然でしょ。
個人的には「青銅の魔人」のカバー写真を掲載して欲しかったものである。
(俺の大乱歩作品初体験作品なのだ)
・少年版江戸川乱歩選集(全6巻) 講談社
生頼氏の恐怖感溢れる表紙に慄然。
当時在住していたビッグシティ図書館児童書コーナーでは、わりと暗がりに
あったので、JSをビクーリさせて遊んだ記憶も懐かしくある。
・名探偵ホームズ全集(全20巻)ポプラ社
・名探偵ホームズ  (全22巻)偕成社
前者が有名な山中トンデモホームズ(w、
しかし、俺は後者を主に読んでいた。価格もこちらの方が廉価だったのだ。
・ドイル冒険・探偵名作全集(全22巻) 岩崎書店
学校図書館に在庫、不思議に書店で見た記憶無し。
この全集で読んだホームズもの(「恐怖の谷」等)もあるが、
ホームズもの以外の作品を主に読んでいた。
ジェラールとか怪奇小説とか。

174 :書斎魔神:2014/02/15(土) 13:25:57.56 ID:hXK3cAfV.net
・怪盗ルパン全集(全30巻) ポプラ社
・「アルセーヌ・ルパン全集」(全20巻) ポプラ社
主に前者を愛読。後者で読んだものもある。
バーネット探偵社とか。
ホームズ派(とういか活劇よりも謎解きが好み)だった俺は、
ルパンが探偵役を務める作(「七つの秘密」等)を
中心に読んでいた記憶あり。
・「世界科学・探偵小説全集」(全24巻) 偕成社
ミステリプロパーの全集ではないが、
ミステリに関してはホームズ、ルパン以外の
作品を読んでいた。
「クロイドン発12時30分」「赤い館の秘密」
「踊る人形の謎」(原作「曲った蝶番」)「闇からの声」等々、
後には全てオリジナルも読んだが、原作のエッセンスを巧く
纏め得た良ジュブナイルという感あり。
ウールリッチ「黒衣の花嫁」が入手出来ず残念な思いをした記憶あり、
SSの「呪われた家の秘密」(原作「グリーン家殺人事件」)、
「黄色い部屋の謎」は、何でか、この全集ではなく後の集英社の全集で
読んでいる。
・「少年少女世界推理文学全集」(20巻) あかね書房
図書館御用達な全集(市立図書館、学校図書室に両方に在庫していた)。
「エジプト十字架の秘密」「魔女のかくれ家」「ふしぎな足音」等が
懐かしい。
これもオリジナルの内容を良く伝えた良ジュブナイルであり、
ジョン>エル、G・Kは退屈という俺の嗜好は、その後オリジナルを
読んでも変化無しだった。
・ミステリベストセラーズ(全10巻) 鶴書房盛光社
ペーパーバックサイズの巻数少なめの全集で、わりと愛読していた。
なぜか、第10巻はSF(宇宙人捜し=犯人捜しと見たか、あの物体X)。
カー、ウールリッチに嵌り、ブレット・ハリディやフランク・グル―バーを
一流のハードボイルドミステリ作家と誤解させる(作品はそれなりに楽しめたし)因となったシリーズ。

175 :書斎魔神:2014/02/15(土) 13:26:44.48 ID:hXK3cAfV.net
・ジュニア探偵小説(全26巻) 偕成社
興は惹かれながらも、翻訳ミステリに嵌っていたせいもあって、1冊も手にする
ことはなかった。
「出版当時はさほど評判にならず、爆発的な売行きも見せなかったようだ」
と記されているが、俺の実感にも合うものあり。
在庫していない書店もあった。
今思うと、本邦マエストロの手になる怪奇探偵小説ジュブナイルが多く収録
されているようなので、残念な感はある。
・世界探偵名作シリーズ(全12巻) 偕成社
相当数を読破したお気に入りのシリーズだった。
特にウールリッチ「自殺ホテルの怪」は、その後、ポケミス、集英社文庫で
再読したが、あらためてこのジュブナイルの出来栄えに感心。
とにかく面白かった。
同じ作者の「魔ひょうの恐怖」(原作「黒いアリバイ」)も面白く読んだが、
後に創元で読んだオリジナルはさほどのものとは思えず。
「まぼろしの証人」(オリジナルはアイリッシュ名義「幻の女」)も、
泣きのウールリッチ節無しでは、今ひとつな感あり。
他では「夕日が丘の怪事件」(原作「ポワロ登場」から3作)、
ブレット・ハリディ「呪われた美少女」(原作「死の配当」)、
J・ブリュース「OSS117の秘密」(原作「OSS117 最後の15分間」)
も良かったが、他社のジュブナイルでもおなじみのこの2人の作家を
かなりメジャーな存在と思ってしまった(w

176 :書斎魔神:2014/02/15(土) 13:27:23.58 ID:hXK3cAfV.net
・ジュニア版・世界の推理(全24巻) 集英社
私的には海外ミステリジュブナイルの決定版だったかと。
カー(「どくろ城」「ろう人形館の恐怖」)、
バンダイン(「姿なき殺人鬼」=原作「グリーン家殺人事件」)、
ルルー(「黄色いへやの秘密」)等の本格ミステリだけでなく、
ナポレオン・ソロ(「恐怖の大作戦」=原作「ハイ・ティーンを狙え!」、
007(「007は殺しの番号」=原作「ドクターノオ」)
ハメット「マルタの鷹」の正統派ハードボイルド、
ガードナーのぺリイ・メイスンもの「ペルシアネコの秘密」
(原作「管理人の飼猫」)、シムノンのメグレ警部もの「黄色い犬」等々、
多彩なミステリの面白さを知らしめてくれたシリーズである
おなじみブレット・ハリディ、J・ブリュースもあり(w
うーん、成人向き作品を読むようになってからは、
すっかり馴染みが無くなってしまったこの2作家。
・世界名作推理全集(全16巻) 秋田書店
俺が本格的に読んだ最後のジュブナイル全集かと思う。
既刊の他社の全集で読んだ作が多く、
J・ラティマー「死刑六日前」、ガードナー「義眼殺人事件」、
クロフツ「ド―バー海峡の怪奇」(原作「英仏海峡の謎」)等、
このシリーズのみでしか読めないものをチョイスして読んだ。
・ヒチコックと少年探偵トリオ・ミステリーシリーズ
ビニールカヴァーがかかったわりと大判のシリーズだったが、
面白くは思えず。

177 :書斎魔神:2014/02/15(土) 13:28:23.32 ID:hXK3cAfV.net
・付録・ガイド本
雑誌等の付録ジュブナイルには、殆ど馴染みはないです。
唯一、学習雑誌(何かは忘れた)付録でB・ストーカー
「吸血鬼ドラキュラ」を読んだ記憶あり。
超短縮バージョンだが、後に平井先生の大部な翻訳を読み、
原作のエッセンスを良く伝えたものだったのがわかった。
ガイド本では、何と言うても、
本書でも1頁使って掲載されている中島河太郎先生の
「推理小説の読み方」。
俺が執筆活動を決意するきっかけとなった名著と言い得る。

178 :名無しのオプ:2014/02/15(土) 13:28:57.49 ID:rrbGAzJK.net
以下、名無しの別人が来ます

179 :名無しのオプ:2014/02/15(土) 14:20:28.61 ID:51tBSKoh.net
これから来る名無しの人が言うには、優れた論考なのだそうですよ、これ
でも間違いだらけなので校正をしないといけないんですって。命令ですよ、命令。

めんどくさいですわね

180 :名無しのオプ:2014/02/15(土) 15:04:39.27 ID:9UsuES8M.net
有り得ない程の誤字脱字の全てと2ちゃん用語と幼稚な言い回しと
論でもなく考えてもいないカンソー文をまともな人の感想に差し替えという
校 正 をすれば、優れた論考だよ

181 :名無しのオプ:2014/02/16(日) 23:00:36.15 ID:4NcwLf/r.net
書斎の論考は熟読玩味しておけよ。

182 :名無しのオプ:2014/02/17(月) 04:34:14.12 ID:xHsm5YKV.net
有り得ない程の誤字脱字の全てと2ちゃん用語と幼稚な言い回しと
論でもなく考えてもいないカンソー文をまともな人の感想に差し替えという
校 正 をすれば、優れた論考だよ

183 :名無しのオプ:2014/02/17(月) 18:57:14.50 ID:RwafXLSe.net
間違い探しじやなし、正しければ絶讃したらいいんじゃないかな。

184 :名無しのオプ:2014/02/17(月) 19:05:16.28 ID:ohJJmIYi.net
正しくない場合は馬鹿にすればいいんだねw

185 :名無しのオプ:2014/02/17(月) 20:03:34.83 ID:h4PbgVN2.net
「正しい」というのは、最低限、当たり前のこと。
そのうえで、表現の巧拙が問われ、感想の中味が面白いか、普遍性があるかが問題になる。
意味が分かればいいっしょ、程度の甘えた考えで、独断・偏見・無知・思い違いのストリップを10年以上、
演じ続けてきた人間は、ネット上の観察対象でしかない。
哀れだとは思うが、自業自得。

186 :名無しのオプ:2014/02/17(月) 20:49:56.73 ID:IQSuOjQN.net
「わざと間違えている」んだから「正しくない」

つまり書斎魔神は最低限のラインもクリアできていない

表現が面白いとか内容を評価する以前の段階

187 :名無しのオプ:2014/02/18(火) 01:48:06.67 ID:iFlyS7b0.net
また相手するバカが現れたな

188 :名無しのオプ:2014/02/18(火) 04:34:33.96 ID:ylJSiE4A.net
187みたいな?

189 :名無しのオプ:2014/02/18(火) 07:01:46.68 ID:KYIcCqYe.net
黙って誘導かけておけばよろしい。

>>12
ただし指導部屋22http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/8993/1384433210/

190 :記憶喪失した男!ninja:2014/02/22(土) 15:42:35.16 ID:QsEu2Kha.net ?2BP(1000)
「六枚のとんかつ」を読んでいるところだが、かなり面白いね。

次はいよいよ「オナニー連盟」だよ。

「桂男爵の舞踏会」は未曽有の傑作だった。禅問答にも似た奥深さがある。

191 :名無しのオプ:2014/02/22(土) 15:45:21.69 ID:nehbNIny.net
スレタイも読めない人がいますね

192 :名無しのオプ:2014/02/22(土) 16:24:05.69 ID:FMxch1Ny.net
頭がおかしいんだよ
許してやれ

193 :記憶喪失した男!ninja:2014/02/22(土) 17:24:04.38 ID:QsEu2Kha.net ?2BP(1000)
「六枚のとんかつ」 蘇部健一
81位/449作品。日本語小説。
短編ミステリ集。前半はかなり面白い。ミステリ読みでは、このネタは王道なのだろうか?
極めて名作な推理が「桂男爵の舞踏会」や「黄金」では見られたものだが。
笑えるし、かなりのおすすめである。列車ミステリにはあまり興味がないのだが、
「しおかぜP号四十九分の謎」の話は友だちとの雑談で聞いたことがあるくらいに、
この作品は有名なはずである。ようやく読んだというべきか。推薦者の北川鏡花さんに感謝したい。
まあ、前半はとにかく笑える。

194 :名無しのオプ:2014/02/22(土) 17:43:19.31 ID:FMxch1Ny.net
やっぱり頭がおかしいな

195 :名無しのオプ:2014/02/22(土) 20:19:46.12 ID:Xp5c5A+d.net
記憶さんは天才だし、きわめてまともだよ。

196 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/02/22(土) 21:21:13.45 ID:wh4vFYto.net
「震えない男」ディクスン・カー(早川書房)

バーで幽霊屋敷の噂を聞いた実業家クラークはその屋敷ロングウッド荘を買い取り、幽霊が出るか確かめるようと知り合いを招待することにした。
ロングウッド荘には家主が謎の死を遂げ、その後も召使頭がシャンデリアの下敷きになって死んだという曰くがあるのだ。
作家のボブも婚約者テスと共に屋敷へ赴くがその翌朝、招待客の一人が書斎で射殺されてしまう。現場に居合わせた被害者の妻によれば
マントルピースに飾ってあったピストルが独りでに発射して撃ち殺したという。
これは幽霊による殺人なのか?

久々にカーの傑作を読んだ。これ何で文庫落ちしてないんだろう。ポケミスも40年近く再版されてないし、勿体無い。
1940年発表だがカーの全盛期らしい捻りに捻ったプロットにインパクトのあるトリックと実に見事な出来。
カーは8割方読んだと思うがここまでの作品は他に無いのでは?
敢えて難癖を付ければクラークの言動が一貫性を欠いた箇所があるのとロマンスが物足りないけど、ミステリーとしては広くお薦め出来るのではないかと。

なお余談であるが法月綸太郎の短編「世界の奇蹟を解く男」は本作の影響下に書かれた作品だと思われるので読み比べてみるのも一興かと。

197 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/02/22(土) 21:27:58.24 ID:wh4vFYto.net
「アフリカの百万長者」グラント・アレン(論創社)

傲慢な南アフリカの金融資産家サー・チャールズに神出鬼没変幻自在の詐欺師クレイ大佐が狙いを定めた!
2人の飽くなき闘いを描く連作長編。

と言ってもチャールズが一方的にカモられる訳だけどね。つまり読者の読みどころは「大佐の手口=ハウダニット」にある。
当然ながら後になればなるほどチャールズも秘書の私ことシーモアも用心深くなる訳で、そのどんどん高くなるハードルを超えて騙していかねばならない。
これは読者にしても同じことで固定化された人間関係の中でマンネリに陥らないように読ませていくのは難しい。
そんな中アレンは健闘していると思う。もっとも連作長編というスタイルもあって短編レベルの評価には適さない。前の話に後の話の伏線が張られていたりもするし。

敢えてベストを挙げれば「チロルの城」かな。大胆不敵なトリックに脱帽!
そして連作らしくラストは明確な幕引きがなされ、そのための伏線もかなり前から蒔かれていたりする。ハウダニットだけかと思っていたら……何てことも。

倫理的にみて、いくらサー・チャールズが嫌な奴とは言え合法的に金儲けしている以上、私は安直に「クレイ屋!」と快哉を叫んだりすることはできないので。
「ねずみ小僧は最低の偽善者」という山本周五郎の精神を私は信奉する。

198 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/02/22(土) 21:33:37.27 ID:wh4vFYto.net
「マーカイム・壜の小鬼」ロバート・ルイス・スティーヴンソン(岩波書店)

「新アラビヤ夜話」「バラントレーの若殿」等で知られる作家の短編集。色々なジャンルのお話が収められている。

前半3編もそれなりに読ませるが、後半4編がホラーやファンタジーなどで、濃い味わいで面白い。
ベストは「声たちの島」。ハワイの魔術奇譚であるがクライマックスの情景描写に不思議の一触れを感じて世界の広がり繋がりを思った。
「白人は子供と同じで自分たちの話しか信じない」にニヤリ。
次点は「壜の小鬼」。同じくハワイ奇譚。「猿の手」より古く新しい逸品。世にもでやるべき。
ホラーの傑作と名高い「ねじれ首のジャネット」は終盤の展開を長尺で読ませて欲しかった。

いい加減「箱ちがい」に手を出さなきゃなあ。。。

199 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/02/22(土) 21:38:02.30 ID:wh4vFYto.net
「スカル・セッション――殺戮の脳 上・下」ダニエル・ヘクト(徳間書店)

優秀でありながら神経障害に悩まされ失業中の大工ポールは叔母ヴィヴィアンからハイウッド屋敷の修復を依頼される。めちゃくちゃに破壊された屋敷を見て唖然とするポール。
一方未成年の連続失踪事件を追う刑事モーガンは真相を解く鍵がハイウッドにあるのではないかと睨む。

元有名ギタリストのデビュー作。お祖父さんは高名な脚本家ではないらしい。モダン・ホラー+医療スリラーという感じかな。
読み終わってまず言いたいのは怪異をもったいぶらかしすぎ! 過去のシーンを除けば終盤まで出て来ないんだから。上下巻でそれはないわ。
怪異の所在は冒頭で明かされるし、主人公がそこへ辿り着く経路も早くに明かされるんだけど、なかなか行き着かないのは参った。「二流小説家」のドイヒー版。

ストーリーの方もイマイチ引きが弱いんだよなぁ。交互に進んでいた刑事の話と交わった後は多少引いたけど。
あと元妻絡みが尻切れトンボなのは頂けない。あれもう詰んだでしょ。
ただ謎解き興味があるのは良いかもねむ。

200 :名無しのオプ:2014/02/23(日) 06:37:37.79 ID:ijgB/u6q.net
読後感の暴力的な荒らしはどうにかならないものか。
書き込み禁止を言い渡す段階に来ていると思うのだが。

201 :名無しのオプ:2014/02/23(日) 06:47:47.13 ID:ns44/4DT.net
>>200
どこが荒らしなのかわからない。気に入らなければ読まなければいいだけ。具体的に指摘して下さい。
すべてではないにしろ、「おお、こんな本があったなあ」と目が留まります。

そのIDで「コテハン叩きはやめろや」とか書き込まないでね。

202 :名無しのオプ:2014/02/23(日) 14:06:03.02 ID:qVmTIqgo.net
テスト

203 :名無しのオプ:2014/02/23(日) 20:47:47.89 ID:ijgB/u6q.net
読後感が悪いのはスレを我が物にしているからだよ。
本当はブログにでも書くべき内容だ。

204 :名無しのオプ:2014/02/23(日) 20:52:03.04 ID:5FGao+TH.net
>>203
どの点が「我が物」wなの?
具体的に。

205 :名無しのオプ:2014/02/23(日) 21:08:38.81 ID:3xHyRrZB.net
書斎の自演はほっときましょうw

224 名無しのオプ 2014/02/23(日) 19:26:59.52 ID:ijgB/u6q
書斎の的確な批評がヲタのレベルの低い雑談に差をつけているね。

206 :名無しのオプ:2014/02/24(月) 13:48:36.97 ID:/8DaxCk7.net
コテハン叩きは黙って削除依頼(構うと削除されにくくなる)
http://qb5.2ch.net/test/read.cgi/saku/1322099508/l50

207 :名無しのオプ:2014/02/24(月) 15:16:09.31 ID:Gg+s0CDq.net
レスのほとんどが読後感の感想文。
スレを私物化しているよ。

208 :名無しのオプ:2014/02/24(月) 16:12:34.62 ID:gHmSgth9.net
排他的も何も読後感氏は他の人に感想を書くなとか出て行けとは言っていない
感想を書きたい人がいれば自由に書くことができる

スレの趣旨に沿って書き込みをしている人に対して出て行けとかブログでやれと
難癖をつける方が荒らし

209 :名無しのオプ:2014/02/24(月) 17:08:12.28 ID:/8DaxCk7.net
(構うと削除されにくくなる)

210 :名無しのオプ:2014/02/24(月) 17:25:06.69 ID:Gg+s0CDq.net
いや、読後感は書斎排除を宣言しているよ。
読後感が立てた読みましたスレでアンチが嬉々として貼り付けるようなテンプレを同じように貼っているからね。

211 :名無しのオプ:2014/02/24(月) 17:59:30.73 ID:k+e87PjK.net
名無しの書斎がいくら因縁つけても、全く動じない読後感ってすげえな
尊敬するわ

212 :名無しのオプ:2014/02/24(月) 20:44:20.06 ID:Gg+s0CDq.net
単なる鈍感馬鹿なんでしょ。

213 :名無しのオプ:2014/02/24(月) 20:48:12.11 ID:/GeaplHe.net
そこまで卑屈にならなくてもw
書斎を評するのにぴったりの言葉だが。

214 :名無しのオプ:2014/02/24(月) 21:21:59.65 ID:9OF2CsXJ.net
書斎は鈍感じゃないよ
今自分の才能と人気の無さに泣きながら、他のコテハンに八つ当たりしてるところだから

215 :名無しのオプ:2014/02/27(木) 11:18:59.10 ID:aHIBakGb.net
ざっと見たけど基地外しかいないじゃんかここ

216 :名無しのオプ:2014/02/27(木) 15:43:01.35 ID:hq43Bw7z.net
コテハンのアンチを長く続けているとそうなるみたいだよ。

217 :名無しのオプ:2014/02/27(木) 16:11:15.34 ID:SoLx8POb.net
キチガイの中に書斎とその名無しの自演が含まれていることを無視するバカw

218 :名無しのオプ:2014/03/02(日) 12:00:14.24 ID:jpzlHc/y.net
それでいくとアフォはキチガイどもが大好きなのかwww

219 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/03/02(日) 12:51:55.91 ID:8lSwu0o6.net
「ラスト・ライト」アンディ・マクナブ(角川書店)

引き取った娘ケリーの治療費の工面に追われるニックは情報部から暗殺の密命を受ける。しかしターゲットが少年だと知り無断で中止してしまう。
上司から暗殺の完遂を命じられたニックはパナマへと向かうことになるのだが……。

シリーズ第4作。相変わらず読ませる。
その理由はサバイバル術などその場その場を切り抜けるディテールに躍動感があることと、主人公の造型。
勝ちまくる無敵サイボーグでも先々でベッドインする色男でもないという。それがリアルさ地味さを残しつつもエンタメ路線であるところのストーリーにマッチして独特の面白さを醸してるんだと思う。
決して意外性に満ちた緻密なプロットという訳ではないんだけど、主人公のキャラと細部とで惹くのよ。

あと自国及び西側の正義を押し付けてこないのも気に入った。本作に出てくる英米の偉いさんはどちらも嫌な奴かつ悪人だし。
アメリカのパナマ戦略に関しての主張は事実に即していると思うので蕁麻疹は出なかった。

追伸 “ちょっと待て植物”は秀逸。

220 :名無しのオプ:2014/03/02(日) 18:09:47.24 ID:rJ8uNOKI.net
また荒らしが長文レスを投下した。
やめてもらいたいんだけどねえ。

221 :名無しのオプ:2014/03/05(水) 18:03:45.49 ID:D3zfWUk2.net
感想書くスレかと思って覗いたら、感想書くと荒らし扱いになるスレだったか

222 :名無しのオプ:2014/03/05(水) 19:19:36.70 ID:WCE5haOD.net
読後感の感想文は排他的利用に該当するからダメだけど、ほかの人はいいよ。

223 :書斎魔神 ◆oZ4sVpFI5g :2014/03/08(土) 20:15:07.08 ID:eBgi4gr9.net
ウイリアム・H・マクニール「世界史」(上・下)を読む。
帯には、東大・慶応・早稲田の生協でベストセラーとあるが、
まあ、読んでみれば普通の教科書だな。
(だから大学生協のベストセラーなのかも(w )
山川の世界史をかなり詳しくし、これに著者なりのコメントを付加した
感じ。部分的に「へえー」と思わせる面はあるが、
(一例をあげれば、タラス河畔の戦い、唐とイスラム(アッバース朝)、
当時の2大帝国の大激突と記憶していたが、著者によれば局地戦扱い、
中華圏とイスラム圏のガチンコ直接対決というのは存しなかったとか。
製紙法の蔡倫の記述も無し、
個人の業績をあげるのは極力避け、ひたすら大きな事象の流れで叙述してゆくのが、本書のスタイル)、
高校世界史をきちんと履修したものでないと、通読は厳しいかもなー。
世界史らしい縦横の歴史の流れによる錯綜感は半端でない、
特に本書は、西洋人の手になるものにしては、小アジア、インド、極東等
にまでかなり筆を割いているため、尚更、この感が強いものあり。

224 :名無しのオプ:2014/03/08(土) 20:25:11.24 ID:csoaerEp.net
板違いの感想で荒らすなや

225 :名無しのオプ:2014/03/08(土) 22:36:19.94 ID:m0EHnWcl.net
ミステリ読みが読み解く醍醐味を邪魔するな。

226 :名無しのオプ:2014/03/09(日) 00:29:58.96 ID:LSl9hxoZ.net
一度くらいルールまもって書き込みしたらいいのに

227 :名無しのオプ:2014/03/09(日) 03:33:56.14 ID:Uk95yyMX.net
まさに教科書なのに、大きな事象の流れで説明してるのに
「錯綜感が半端ない」www
なるほど、ただ「書斎は正しい書斎はスゴい」しかいえないわけだ
論理も読解力も何ももたない『ミステリ読み』が読み解いたらこうなるのか

228 :名無しのオプ:2014/03/09(日) 06:37:52.81 ID:GEL3SUph.net
レスが長くならないように調整しているからね。
体裁を整えた論考ならきちんとした表現になるはずだよ。

229 :名無しのオプ:2014/03/09(日) 07:22:34.19 ID:Uk95yyMX.net
ホントはスゴいんだ!か
「コピペと変わらない同じことの繰り返し」だねえwww

230 :名無しのオプ:2014/03/09(日) 07:34:15.32 ID:GEL3SUph.net
その片鱗は見て取れるでしょ。
読書家であるのならね。

231 :名無しのオプ:2014/03/09(日) 07:44:55.41 ID:+tilr+yZ.net
体制も整えられてない論考なんて評価に値しないね

232 :名無しのオプ:2014/03/09(日) 10:17:35.02 ID:TYRb/ozP.net
短くまとめることができない書斎
短くまとめることができないのにそれをして破綻した書斎

どっちが正しいんだ、名無しの自称支持者の中ではw

233 :名無しのオプ:2014/03/09(日) 13:07:26.81 ID:hzi0BXrt.net
短くまとめたから若干の破綻は見られるが長く書けば賞賛に値する論考が書けるし
この短い方の文章でも卓越した実力の片鱗は充分にうかがえるはず

書斎の脳内のお花畑では、こういう評価を期待しているっぽいね

破綻しまくりの短い書き込みからでも、まったく能力がないことが見て取れる
短い文もまとめられないものに、そもそも長い文章など書けはしない

残念ながら世間一般の冷徹な評価はこうなるわけだが

234 :記憶喪失した男 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:5) :2014/03/11(火) 19:13:59.49 ID:he1ShL9E.net ?2BP(1000)
また一級の論考が出たね。

235 :記憶喪失した男 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(2+0:5) :2014/03/11(火) 19:14:41.22 ID:he1ShL9E.net ?2BP(1000)
天才だね。

236 :記憶喪失した男 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(3+0:5) :2014/03/11(火) 19:15:36.03 ID:he1ShL9E.net ?2BP(1000)
アンチどもでは真似できないよ。

237 :名無しのオプ:2014/03/11(火) 19:42:18.44 ID:9eo0NOH8.net
ここが何の板がもわからないバカがもうひとり

238 :名無しのオプ:2014/03/11(火) 23:39:23.96 ID:c1VxPDvt.net
>>237
鏡でも見ているのか。

239 :名無しのオプ:2014/03/12(水) 07:11:19.70 ID:0CXCY1u0.net
237って書斎魔神なのか

240 :名無しのオプ:2014/03/12(水) 18:57:58.89 ID:/kekp4pk.net
コテハンアンチでしょ。

241 :書斎魔神 ◆oZ4sVpFI5g :2014/03/15(土) 18:51:43.00 ID:2moxtrm3.net
幡大介「股旅探偵 上州呪い村」を読む。
この作者の初の時代ミステリ長編「猫間地獄のわらべ歌」は、
正にマジおも。期待大な第二弾である。
笹沢スレがある頃から指摘しているとおり、
ドラマも大ヒットした木枯らし紋次郎シリーズは時代ミステリである。
21世紀になって久しく、この点を再認識させる本作のようなミステリが
書き下ろされたのは、何とも嬉しい感あり。
ただし、作者のプロファイルを見る限りでは、年齢的の紋次郎をリアルタイムで
読み、見たとは思えぬので、再販された文庫や後の再放送、DVD、BS,CS等で親しんだものと思われだが。
股旅探偵と題されているので、旅の過程における連作推理形式
かと思うたが、独立した短編としても読めるのは「密室は掘割を流れた」のみ。
開かれた密室トリック、これをひっくり返す展開等、まずまず楽しめる。
物語は「上州吾妻郡火嘗村」(第二章のタイトル)
(これは紋次郎シリーズ「上州新田郡三日月村」を意識したネーミング)
に主人公三次郎(渡世人にして名探偵役?)が到着した時点で、股旅は終了。
以後は、この村を舞台にした明らかに獄門島ネタを意識したメタ要素を
散りばめた怪奇探偵小説と化す。
(仮面や滝の殺しは犬神、洞窟ネタは八つ墓)
「村人に災厄」「骸のない死体を探す」等の不気味な今際の不気味なワードが、
成程、それなりにはまった解決が呈示されるのは良しだ。
(隠し銅山、隠れキリシタン、黒船等のネタ動員で)
前作もそうだが、名探偵ネタ等で遊びながらも、きちんと「ミステリ」
しているんである。

242 :名無しのオプ:2014/03/15(土) 18:55:17.36 ID:5uEkvyz8.net
普通の感想文ですが、
抽象的表現のベタ誉めが書き込まれます。

243 :名無しのオプ:2014/03/15(土) 18:57:04.55 ID:Ex4f/Kve.net
書斎さん、これはジョークですか? ミス板で校正しないといけない奴ですか?

244 :名無しのオプ:2014/03/15(土) 19:06:18.70 ID:WdUmTsPO.net
また新しい鉱脈を広げてくれたね。
ヲタは感謝の意を述べておくこと。
もちろんレス作成時には丁寧語を使用すること。

245 :名無しのオプ:2014/03/15(土) 21:56:11.84 ID:Dv8nOyZ0.net
座敷牢の家畜として飼われている林さん(60)にとって
自分以外の他人はすべて「アンチ」か「ヲタ」なんだな



正確には「指導者」「先達」なのにな
おっと「飼い主」である伯父さんを忘れちゃいけない

246 :名無しのオプ:2014/03/16(日) 11:19:02.17 ID:karWxwRY.net
>>244
あなたは敬語使わない無礼な人ですか?

247 :名無しのオプ:2014/03/16(日) 11:46:29.07 ID:PAOYYeD+.net
指導する立場だから当たり前の話し。
上下関係は歴然としてあることを忘れるな。

248 :名無しのオプ:2014/03/16(日) 11:47:08.91 ID:karWxwRY.net
>>247
あなたは書斎を指導する立場なのですか?

249 :名無しのオプ:2014/03/16(日) 11:50:20.78 ID:M2iOJbvD.net
厳しい指導を受ける立場の書斎魔神が最底辺であることは間違いないな

250 :名無しのオプ:2014/03/16(日) 11:54:42.24 ID:p9OyzD6I.net
はて?オニイタンは普段から書斎の論考() に対して丁寧語で感謝を述べていたっけwww

251 :名無しのオプ:2014/03/16(日) 12:27:31.08 ID:dzMRjGk/.net
>>247
そうか、お前は書斎を指導する立場なのかw

252 :名無しのオプ:2014/03/16(日) 13:45:09.28 ID:9azJjH9G.net
だから相手するなってば
だらだらスレを浪費させるな
我慢しろ

253 :名無しのオプ:2014/03/16(日) 16:32:40.56 ID:PAOYYeD+.net
アンチが荒らしに来ているんだよ。
例によって例の如くね。

254 :名無しのオプ:2014/03/16(日) 16:53:19.19 ID:qzjCVBF9.net
書斎を指導する立場については答えないのですか?

255 :名無しのオプ:2014/03/16(日) 17:14:25.57 ID:SRGvwehJ.net
お前「それどころじゃない」んだろwww
何でこんなとこで書き込みしてるんだよwww


ディクスン・カー(カーター・ディクスン)Part16
452 :名無しのオプ[]:2014/03/16(日) 11:19:30.67 ID:PAOYYeD+
しつこいのは狂人化したアンチに共通して見られる特長だね。

都筑道夫・3
735 :名無しのオプ[]:2014/03/16(日) 11:48:52.96 ID:PAOYYeD+
あの当時と今では相当数の住人が入れ替わっていると思うがね。
初代の地道な啓蒙活動結果ようやくヲタが増えてきた。
アンチは乱歩など他のスレに行ったということだろ。

都筑道夫・3
743 :名無しのオプ[]:2014/03/16(日) 12:25:03.48 ID:PAOYYeD+
またゴロか。
もうばれているんだから、潔くしてみろや。

都筑道夫・3
753 :名無しのオプ[]:2014/03/16(日) 16:31:41.63 ID:PAOYYeD+
ブログでやって。
それどころじゃないんだから。

『読みました』報告・海外編Part.8
253 :名無しのオプ[]:2014/03/16(日) 16:32:40.56 ID:PAOYYeD+
アンチが荒らしに来ているんだよ。

256 :書斎魔神 ◆oZ4sVpFI5g :2014/03/16(日) 21:22:42.64 ID:CuMGUxjJ.net
デイヴィッド・ハルバースタム「ベスト&ブライテスト」を読む。
主にヴェトナム戦争期の米政権内部の実態を抉った作。
ノンフィクション好きなら必読、
ニュー・ジャーナリズムというワードを広く知らしめた名著である。
ミスオタはこの手の硬い読み物は苦手中の苦手という輩が殆どだが、
本来、「読書」というものは、「勉強」と同義な意味合いを持つもので
あったことを思えば、1度ぐらいはこの手の著作にチャレンジしてみるが
よかろう。各人、心して読め!!!
まずは、上巻(栄光と興奮に憑かれて)から。
ケネディ時代、米国による本格的なヴェトナム・コミットメント
(これはヴェトナム戦争を意味すると考えてよい)前夜の状況を描いている。
ジョン・F・ケネディ大統領は勿論のこと、
ラスク国務長官、マクナマラ国防長官等々、日本でもおなじみのメンツ
(キャラが立った実力者ながら、日本では知られていない者も多し)
議会側ではマンスフィールド(後の駐日大使)、フルブライト(奨学金で有名)等まで絡んだ、
政権をめぐるドラマは日本人読者にはわかり難い面も多いが、
迫力に富むものあり。
ホワイトハウスを筆頭に行政部には、いわゆる東部エスタブリッシュメント
が勢揃いしたオールスターキャストながら、ヴェトナム政策をめぐって、
早くも「船頭多くして、船、山に登る」状態を呈しだす。
それなりに才あるリーダーのジャック・ケネディが何とか舵取りして
ゆくものの・・・
幼少時代の現駐日大使キャロラインがちらっと姿を見せるのが御愛嬌。

257 :名無しのオプ:2014/03/16(日) 21:27:17.84 ID:ll+P5aOJ.net
興をそそる批評だね。
ミスヲタも食わず嫌いは止めた方がいいと心から忠告しておく。

258 :名無しのオプ:2014/03/16(日) 21:30:22.23 ID:0HDASSTb.net
時間からしてほとんど読んでないじゃん。
言い訳も決まり文句が.(w

259 :名無しのオプ:2014/03/16(日) 22:02:46.28 ID:xoZShtSN.net
書斎さん、これはジョークですか? ミス板で校正しないといけない奴ですか?

260 :名無しのオプ:2014/03/16(日) 22:10:45.28 ID:p9OyzD6I.net
心してよめ!!!!

感想
・はくりょくにとむとおもいました。

以上www

261 :名無しのオプ:2014/03/16(日) 22:30:24.74 ID:3U/UoCXX.net
一日中こんなバカ丸出しやってる暇があったら、一冊でも本物の
本を読めばいいと十年間言われ続けてるんだぜ、まったくwww
もう本も置いてもらえないのか?伯父さんの家の座敷牢には?



『読みました』報告・海外編Part.8
257 :名無しのオプ[]:2014/03/16(日) 21:27:17.84 ID:ll+P5aOJ
興をそそる批評だね。
ミスヲタも食わず嫌いは止めた方がいいと心から忠告しておく。

都筑道夫・3
771 :名無しのオプ[]:2014/03/16(日) 21:30:01.87 ID:ll+P5aOJ
大いに感じるべきだよ。
フワフワして論点の乏しい長いだけが取り柄の感想文にはウンザリ。
諸手を挙げて作家を賞賛するみっともない連中はちょっとは批評精神を持てよ。

ディクスン・カー(カーター・ディクスン)Part16
456 :名無しのオプ[]:2014/03/16(日) 21:45:29.91 ID:ll+P5aOJ
バランスのとれた良い論考だね。

262 :名無しのオプ:2014/03/21(金) 11:45:46.48 ID:KpE0OUyu.net
B&Bはさすが門外漢ゆえ
知っている限りの知識(キャロライン=駐日大使)と
拾った文言で適当に文言を連ねただけの
空虚な・・・

263 :書斎魔神 ◆oZ4sVpFI5g :2014/03/21(金) 22:11:36.69 ID:QV/241vj.net
デイヴィッド・ハルバースタム「ベスト&ブライテスト ベトナムに沈む星条旗」
中巻は、ケネディ時代からジョンソン時代へ、
終盤ではトンキン湾事件をきっかけに、いよいよアメリカはヴェトナムの泥沼にのめり込んでゆく・・・
今読むと、ケネディ亡き後の大統領が、テキサス男カウボーイ・ジョンソン、
根暗ニクソンでなければなあ・・・という「歴史」を語る場合には禁じ手な
「IF」を思わずにはいられぬ。
日米基地問題、大震災等の国家的課題、危難等を鳩山→管という民主党政権
で迎えざるを得なかった現在、この感尚更である。
ただし、当時の米も現代日本も有権者の選択(自己責任)は免れぬのであるが。
サブタイトルは、本巻の内容に照らすと、やや先走りな感もあるが、
不気味な予言となるわけである。
政治学やジャーナリズム専攻者には、特に興味深い本作かと思うが、
わりとマネジメントの担当者にも熱心に読まれていたのは、
ヴェトナムの例で、政策の意思決定権者まで、
現場から正確な現状報告が届かない(あがって来ないではない。
中間段階で思惑によりブロック、インターセプトされてしまのである)
ことにる判断ミスの恐ろしさをビビッドに描き出しているゆえであろう。
これは国家政策のみならず、企業経営にも十分に通じるものであろう。

264 :名無しのオプ:2014/03/21(金) 22:24:56.89 ID:4Uu+JOef.net
書斎さん、これはジョークですか? ミス板で校正しないといけない奴ですか?

265 :名無しのオプ:2014/03/21(金) 23:04:07.07 ID:tNrmSmwH.net
相手するのは止めろ
書き込むならせめて感想を投稿してくれ

266 :名無しのオプ:2014/03/22(土) 05:35:08.58 ID:rLYZcPy+.net
経営的視点は書斎ならではだと思うよ。

267 :名無しのオプ:2014/03/22(土) 18:42:13.60 ID:N6YXLcZU.net
書斎さんの論考は素晴らしいね
すぐに自分も読んでみたくなるよ

268 :名無しのオプ:2014/03/22(土) 22:17:14.31 ID:huJgCX1q.net
俺もだ。
こんな素晴らしい論考を無料で読める幸せをかみしめる。

269 :書斎魔神 ◆oZ4sVpFI5g :2014/03/23(日) 00:16:57.65 ID:BOe4DEt1.net
デイヴィッド・ハルバースタム「ベスト&ブライテスト アメリカが目覚めた日」
下巻序盤は、正に「リンドン・ジョンソン物語」な感あり。
決して悪人とは思わぬし、東部エスタブリッシュメントマンセー!とも
思わぬが、この手の出自、学歴コンプ大な調整型リーダーを国家危難の際に
立てざるを得なかった当時の米の悲劇を改めて感じた。
この巻を通読して思うのは、下巻のサブタイこそ中巻の「ベトナムに沈む・・・」こそふさわしかったのではないかということ。
主要閣僚が離脱、非難集中で、遂にジョンソン政権は空中分解状態、
ジョンソンは再選立候補さえ断念するに至る。
そして政権は共和党へ移り、あのニクソン時代へ、だが、
策無きため、しばらくは、まだまだ続く泥沼ぞ状態。
ここでエンドなのである。

270 :名無しのオプ:2014/03/23(日) 00:22:04.53 ID:lBEz6lG7.net
書斎さん、これはジョークですか? ミス板で校正しないといけない奴ですか?

271 :名無しのオプ:2014/03/23(日) 13:00:37.32 ID:j6O33yiJ.net
立派な書評だよ。

272 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/03/29(土) 18:48:20.19 ID:kVAsShQu.net
「潜水艦いまだ帰投せず」アレグザンダー・フラートン(早川書房)

第二次世界大戦前夜のイギリス。若き海軍将校ルーファスは弟ガイの紹介でグレンダラのキャメロン‐グリーン家を訪ね美しい姉妹と出会う。
ある週末、ルーファスは僚友ディモックをキャメロン‐グリーン家のパーティーへと誘った。それが彼らの運命を大きく変えてしまうことを知らずに……。

タイトル、表紙、裏表紙の梗概から海洋冒険小説を連想されるかも知れませんが、結構違います。
本作はルーファスとその周りの人々との人間ドラマであり、梗概にある事故は物語の中の一つのイベントに過ぎません。もちろん重大なイベントではありますが。
なので、専門用語が飛び交う艦内描写が長々続いたりはしないので海洋ものに馴れない方も安心して手に取って下さい。
むしろ人間ドラマ、ロマンスに興味のある向きに薦めてもいいかも?とすら思います。

戦争から50数年後にルーファスがインタビューを受けるという体裁なのですが、視点が移ったりして厳密ではなくこれは要らなかったかも知れません。
あと、主人公の心の動きが唐突な印象を受けました。これは最終的な妻が誰かという謎を担保するための処置でしょうが、不自然なのはイナメナイです。

SBS三部作も手を出してみようかなと思いました。

273 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/03/29(土) 18:55:56.13 ID:kVAsShQu.net
「落ちる男」マーク・サドラー(早川書房)

仕事を追え事務所に戻ってきた私立探偵ポールは暗闇で覆面の泥棒と鉢合わせする。揉み合う内に賊は窓から身を躍らせた。
どうやら目当ては調査案件のファイルだったようだが……。ポールは自分が巻き込まれたものが何なのか突き止めるため夜の街へ飛び出す。

シリーズ第一作。昔二作目の「ここにて死す」を読み傑作だとの印象が残っていたので楽しみに読んだが、まあまあ。
あれほどの驚きは無かったが、ただのリサーチが殺人沙汰になる理由とか、二段構えのフーダニットなどしっかり書き抜かれている。ただちと冗長かつヒロインの影が京風(今日風?)。

ところでネオ・ハードボイルドの定義や歴史は詳しく知らないが、本作はそれ以前のハードボイルドぽい。
1970年発表で主人公はベトナム帰りらしく作中にはヒッピーのキャンプも出てくるのだが、主人公が背負う悲哀や心の傷といったものは読み取れないし、
売れっ子女優の妻との関係にも―主人公の振る舞いによる心痛はかなりありそうだが―不穏な兆しは見えない。

その辺絡みで別名義も読んでみるかな。

274 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/03/29(土) 18:59:30.25 ID:kVAsShQu.net
「ゴーストなんかこわくない」ロン・グーラート(扶桑社)

広告代理店で働きながら趣味でオカルト探偵をやっている青年マックスを主人公にした連作短編集。

象男・テレビ幽霊・魔法会社・タンノなど、他のオカルトハンターものに比べかなりユニークな事件ばかりでユーモラスなのだが、
退治する方法は呪文任せで面白味に欠ける。ミステリー的な要素も殆どないし。

ベストは「人魚と浮気」かな。オリジナリティは無いが好きになったキャラがいたので。まあ電車用。

275 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/03/29(土) 19:00:06.89 ID:kVAsShQu.net
「ホラーSF傑作選 影が行く」P・K・ディック、D・R・クーンツ他(東京創元社)

〈評価〉
○△○○○◎◎○◎○○○◎

〈感想〉
ストレートに恐怖を覚えたものはあまり無かったが、特に後半は面白かった。
ベストは「探検隊帰る」(フィリップ・K・ディック)。このアイディアは嚆矢なら秀逸だし、相手にとっては紛れもなく恐怖と言えるだろう。
アイディアという点では「吸血機伝説」(ロジャー・ゼラズニイ)も良く出来ていた。
他、表題作(ジョン・W・キャンベル・ジュニア)と「唾の樹」(ブライアン・W・オールディス)はどちらも中編レベルの分量ながら飽きることなく読まされた力編であった。

276 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/03/29(土) 19:26:05.59 ID:kVAsShQu.net
「解放の日」アンディ・マクナブ(角川書店)

SAS上がりのニック・ストーンはアメリカ国防情報局の大物ジョージの依頼でアルジェリアへ赴く。内容はある男の暗殺。
首尾良く終えたと思ったニックだったが、ジョージは休む間もなく次の任務を指示してくる。イスラム裏社会における送金システム“ハワラ”を通じてアルカイダに大金が渡るのを阻止せよというのだ。
送金に携わるハワッラダーを捕らえるべくニックは麾下のエジプト人兄弟と共に南仏へ向かう。

シリーズ5作目にして邦訳途絶作。読む前はカタカナタイトルじゃ無くなったせいかと思いましたが
読んでその(以前と比べ売れ行きが伸びなかったであろう)理由が少し解ったような気がしました。
本作はそれまでと違い最初から最後までほぼ任務中なんですよ。ごくわずかにニックが恋人と過ごす場面が出てきますが、それ以外はずっと任務で愛娘ケリーすら出てきません。
このシリーズの魅力は以前挙げた圧巻のディテールや主人公のキャラクターの他に、任務から逸脱していく面白さ乃至日常と非日常とがぼやけてくる面白さにもあると思うところ、
そういう要素が皆無な本作はアクションとしては佳品であるもののこれまでと比べると地味な印象を拭えませんでした。
魅力と言っといてなんですが、ディテールは読み飛ばそうと思えば読み飛ばせるので、それに加えてストーリーでも魅せてくれないとと思う訳です。

ただニックに協力して任務に当たるロトフィ、ハバハバの兄弟は好感が持てる良いキャラでした。

277 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/03/29(土) 19:27:28.82 ID:kVAsShQu.net
「ケンブリッジ・シックス」チャールズ・カミング(早川書房)

金に困った大学教授ギャディスは親友シャーロットが取り組んでいるテーマを共同執筆させて貰うことで糊口を凌ごうとするが、彼女は急死してしまう。
親友のため金のために一人で執筆することを決意するギャディス。そのテーマとは30年代ソ連に引き抜かれたスパイ集団“ケンブリッジ・ファイブ”に六人目の人物がいるというものであった。
その男クレインの正体を探るギャディスにイギリス、ロシア双方の魔の手が迫る。

ここ最近の英国スパイ小説の収穫と言えば間違いなく「暁に走れ」(ジョン・ストック/傑作!)であるが、本作も評判は上々のようでそれなりには期待していた。
しかし、まだ甘いわな。つまらなくはないが、味気ない。これだけの分量(500以上)使っているならもっと感じ入らせて欲しい。ひねくれて無さ過ぎ。
謎を追う英国スパイものならば韜晦とは言わずまでももっと思わせぶりな描写が欲しい。男女の会話等でも含みを持たせて欲しいし、ダブル・ミーニングを持つ場面も欲しい。

具体的に言うと、メインの謎は威力があって良いのだが、そこに至る過程が真っ当過ぎる。多視点で相手側の手の内を明かし過ぎていてワクワク感が減っている。
あと男女関係に象徴されるキャラクター描写が弱い。特に主人公を巡る女性2人は記号的と言ってもいい程。
デイトンやガードナーならもっと妖しく美しく描いたろうに……。

最後に細かい疑問を。
シャーロットは何故SISに目を付けられなかったのか?

278 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/03/29(土) 19:35:02.57 ID:kVAsShQu.net
「大鴉の啼く冬」アン・クリーヴス(東京創元社)

スコットランドの北方に浮かぶシェトランド諸島で起きた凄惨な殺人事件。
ある朝、雪の上で鴉に目玉をつつかれている美少女の死体が発見される。
地元警察のペレス警部は本土からやってきたテイラー警部と共に捜査に当たるのだが、地元民は8年前の幼女失踪事件と結びつけ知的障害のある老人を疑っていた……。

〈シェトランド四重奏〉(←この言葉も最近知った)は読むつもりが無かった。大体“現代英国本格”とやらに偏見がある。地味な警察小説をそう呼んで売ってるだけちゃうかと。
だからジェイムズもヒルもレンデルもウォルターズも読んでない。警察ではないが本格の傑作と言われた「水時計」も地味で暗かったし。
こいつら好きな作家にセイヤーズだのアリンガムだの挙げる癖にちっとも倣ってないしね。

閑話休題。それでも読んだのはシリーズが完結ししかも終わり方がトンデモナイと散々煽られた故であつた。
結論から言うとまあまあ。途中までやっぱり地味やなあと首を傾げながら読んでいた。つまらなくはないし、フーダニットとしても嫌疑を散らしてそこそこ無難にやっているという印象であったが、
ページターナーではない。一気には読めなかった。
しかし、クライマックスの盛り上げ方は良かった。ブランド的で。だがそれだけで全体を評価する訳には行かないからまあまあ。

あと四部作というミニ・シリーズでまとめるなら主人公の物語として確固たるものが欲しかったと思う。この設定では弱い。

作中のいじめの捉え方は割と気に入ったので文科省のいじめ選書に加えれば良いと思う。あるか知らんが。

279 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/03/29(土) 19:36:49.03 ID:kVAsShQu.net
「真夜中の青い彼方」ジョナサン・キング(文藝春秋)

子供を射殺したことが原因でフィラデルフィア市警を離れフロリダに隠棲していたマックスは月夜の川で子供の死体を発見する。
折しも子供を狙った誘拐殺人が相次いでおり、通報を受けた当局はその新たな犠牲者と見て、マックスに疑いの目を向けた。
昔の血が騒ぎ出したマックスは容疑を晴らすためにも当局に協力しようとするのだが、彼を陥れようと犯人の魔の手が伸びる。

タイトルも作者名もファンタジーぽいのですが、れっきとしたハードボイルドであります。
ただし、主人公は湿地帯の小屋に住んでカヌーを乗り回しているし、殺人鬼が犯行後に死体現場のGPSアドレスを通知してくるという劇場型犯罪を扱ってもいるので“正統”とは言い難いと思います。

閑話休題。主人公の設定は良いし、他のキャラクターもデビュー作としては悪くありません。特にヒロイン候補の女刑事の抑えた描写などは玄人筋の受けは良いでしょうね。
それから元妻とのエピソードも効果的に挿入されていると思います。前の女刑事と共にこの先どうなるのか気になるかも知れません(笑)。

ただ、フーダニットという点で言えば容疑者たちの描き分けがイマイチで殊に出だしがまずかったと思います。遅かったですし。

280 :名無しのオプ:2014/03/29(土) 19:42:48.19 ID:IQH8bnMF.net
読後感の荒らし何とかならないものか??

281 :書斎魔神:2014/03/30(日) 07:03:12.17 ID:CMGFLut/.net
ボブ・ウッドワード&カール・バーンスタイン「大統領の陰謀」を読む。
まじで久々の再読。
この手の著作は、
やはりこの板では苦手な椰子大半というのが現実でしょうな(w
内容的にはノンフィクション・ミステリーと言い得る内容、
タイトルに冠された大統領の陰謀=民主党に対する大掛かりな謀略工作、
ウォーターゲート事件はそのひとつに過ぎないのだ。
前に紹介した「ベスト&ブライテスト」とは異なり、
ニュー・ジャーナリズム手法ではない、極力主観をまじえないという旧来の
ノンフィクションの記述で書かれているので、両作を読み比べてみるのも
面白いかもしれぬ。
映画版では明確ではないが、著者でもある若手記者(当時)2人が、
水と油ちゅーか、さほどウマが合わない、
ホワイトハウスのニクソン大統領一味(?)の謀略活動を暴くという
大仕事=大スクープのため、プロ意識に徹し、割り切って組んでゆくというのが
リアルで良し。
2人をバックアップしてゆく、タフな伊達男ブラッドリー編集主幹、
腹が据わった女丈夫グレアム社主等々、歴史と世論調査大好き、記憶力抜群な
サスマン市報部長、実績十分な科学記者あがりのサイモンズ編集局長等、
個性派揃いのワシントンポスト紙陣営、対する政府=ホワイトハウス側も濃いキャラ多数ながら、
いかんせん当時を知る米人と異なり、名前だけではピンと来ない者多数なのは
日本人読者には難か(前記したべスブラも同様だった)。

282 :名無しのオプ:2014/03/30(日) 20:09:09.68 ID:6Snn7VaW.net
また誰も読まない読後感のつまらん投稿が。
ブログでやれ。自分の思い通りにな。

283 :名無しのオプ:2014/03/31(月) 23:47:18.11 ID:4uyjF5WD.net
ヴァランダーシリーズ全部読み終わったんだけど、ヴァランダーが部下のことを「あんた」と呼ぶのが最初から最後まで気になって仕方なかった。お前じゃいかんのかとw

284 :記憶喪失した男 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:5) :2014/04/01(火) 23:50:58.01 ID:1I5fL/99.net ?2BP(1000)
一級の論考がまた出たね。
アンチどもでは真似できないよ。
天才の論考が読めるなんて素晴らしいね。

285 :名無しのオプ:2014/04/02(水) 02:14:27.97 ID:mHqfmJeE.net
面白かった 飽きることなく 思いましたが 気がしました 思うところ 魅せてくれないと ワクワク感 好感が持てる 甘いわな 味気ない 暗かったし 割と気に入った 思います

論考?

286 :名無しのオプ:2014/04/02(水) 07:08:49.59 ID:KHeKrqpu.net
極上の論考でしょうね。

287 :名無しのオプ:2014/04/02(水) 07:28:06.67 ID:VjRvr7Ul.net
といってるのはオニイタンでつまつ記憶の三人だけw

288 :名無しのオプ:2014/04/02(水) 11:13:11.82 ID:xOSWcmHM.net
つまり現実には汲み取り便所老人林がひとりで自讚しているだけ
虚しいなあw

しかし中退で学歴がない肥溜め書斎は、本気で論文の書き方やルールを
まったく知らないんだな

ふつう高校生にもなれば論文に使う語彙や論の立て方証拠となるデータの
挿入の仕方なんかを方法論として教わるのに
書斎の自称ロンコーには、受験論文程度の基礎技術さえまったく見られない
まさに小学生が書きなぐった感想文

書斎は自分のどこがダメなのか、10年バカにされててもまだ気付かない
目の前の箱を使えば小論文の基礎技術くらい学べるはずなのにw

289 :名無しのオプ:2014/04/02(水) 12:53:57.06 ID:KHeKrqpu.net
だから2ちゃんに向けた娯楽要素満載の論考なんだよ。
本気で執筆するときは別の仕様になる。

290 :名無しのオプ:2014/04/02(水) 13:26:46.22 ID:WUuHZdds.net
バカ丸出しの言い訳を書き込んだり、
悔し泣きしながら荒らしコピペを貼ったりしてるヒマがあったら
目の前の箱で勉強しろ、怠け者 

291 :名無しのオプ:2014/04/02(水) 15:59:45.26 ID:6/jNiWbe.net
相手してる奴らの家族が惨たらしく死にますように

292 :名無しのオプ:2014/04/02(水) 23:16:40.64 ID:R/v4fPRs.net
ID:6/jNiWbe 自身も立派に相手してるんだよなw

293 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/04/11(金) 02:01:07.23 ID:z8wYA4aA.net
「骨の刻印」サイモン・ベケット(ヴィレッジ・ブックス)

仕事を終え帰宅途中の法人類学者デイヴィッドは警察から新たな依頼を受けて息つく間もなくアウターヘブリディーズ諸島へ向かうことに。
ルナという小さな島で奇妙な焼死体が発見されたのだ。検屍を行ったデイヴィッドは殺人と判断するが列車事故と嵐のせいで本土からの救援は大幅に遅れ、
その隙を狙うように惨劇が繰り返されるのだった……。

私のポリシーとしてシリーズはなるべく1作目から読みたいというのがあるのだが、本作は2作目である。何故か。
そもそも本作で本シリーズを知り本作が傑作との評判を知り1作目を捜すも周りに無く本作は手に入ったので元々こちらが読みたかったのもあって踏み切ってしまった次第。

閑話休題。傑作。世評通りに面白かった。各種ベストに入ってたっけ?節穴やな。フーダニットは弱いなと中盤で思っていたらいやはやまさか高句麗とは。
これは新本格的捻りだから本格好きも読め。いいから読め。

そしてあのラスト!この衝撃に比べれば一昨年のウィリアム・K・クルーガーなんて屁みたいなもんだ。しかもなかなかエグい展開すんだわ。感情移入させといてだからね。

294 :名無しのオプ:2014/04/11(金) 06:59:46.34 ID:hkErY+py.net
おまいごときに命令されるいわれはない。
自己評価が高すぎるぞ。ブログを開設しても閑古鳥程度の身の丈を弁えよ。

295 :名無しのオプ:2014/04/11(金) 15:44:58.34 ID:gdCPJf4O.net
ネタをネタと…

296 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/04/12(土) 19:59:46.13 ID:UcyFp5VF.net
マイケル・サンデル「これからの『正義』の話をしよう」を今更ながら読む(w
またしても、この板住人には苦手な類の書である(w
サンデル教授の著作が売れまくったのは2010年(あの猛暑の年である)
本書中で言及されているジョン・ロールズなる日本では一般的知名度皆無と
いうてよい哲学者が著した翻訳書まで書店店頭をにぎわしたものである。
あえてこのくらいの時を経て読んでみると、
ブーム時(この形容がジャストフィット)には気づき難い、あるいは注視せずに
見逃してしまった点がわかり、非常に興味深い。
やはり日本人としてがっかりさせられるのは、第9章冒頭の章(「謝罪と補償」)
におけるサンデル教授の慰安婦問題に関する理解度、これでは韓・中の
プロパガンダと変わらないレベルや。
(本章のテーマである「歴史的不正に対する先祖の罪を償うべきか」という
一般論をこの点のみで左右するものではないが)
全体としてみれば、
既存の法制度や経済学説を前提とせず(ゆえに左右されず)、
自己のロジックにより邦題に冠された「正義」のあり方を追求してゆく姿勢には
独自性を感じさせておもろくはあるのだが、教授が提唱する良き政治、
これにより実現されるところの良き社会の前提となる「共通善」なるものが、
果たして在りや無しや、しかも実現可能なのか?
ほぼ単一民族国家な日本では、教授が多くの頁を割いているアファーマティブ・アクションに関する論は頭では理解できても、実感として、いまいちピンと来ぬ
ものあり。

297 :名無しのオプ:2014/04/12(土) 21:10:47.88 ID:G+II7c5R.net
今の日本のどこが単一民族国家なんだよ?
政治家なら辞職ものだぞw

298 :名無しのオプ:2014/04/12(土) 22:49:34.48 ID:pQvd7N0b.net
適切な書評だね。

299 :名無しのオプ:2014/04/12(土) 23:42:28.73 ID:rDYtyY8y.net
ミステリの書評しろよゴミクズが

300 :名無しのオプ:2014/04/13(日) 02:15:55.74 ID:UtD++ZGn.net
こないだミレニアム全部と、自分の体を機械に変えてっちゃう男の話読んだよ
タイトルは忘れちった

301 :名無しのオプ:2014/04/13(日) 06:05:55.50 ID:9CYXrG0a.net
>>299
都筑スレで二代目一派に言ってこいや。
さもなくば党派的発言と判断されることを承知したと認識する。

302 :名無しのオプ:2014/04/13(日) 07:22:15.59 ID:2F6zTqKF.net
↑なに言ってんのこの人?

303 :名無しのオプ:2014/04/13(日) 07:27:41.82 ID:9CYXrG0a.net
ミス板を荒らしている犯人が遂に馬脚を表したんだよ。
それが都筑スレ。見てきてみるといいよ。

304 :名無しのオプ:2014/04/13(日) 09:34:02.96 ID:EYNL81a0.net
見てきたぞ

例によって自分を否定する奴は同じ一人の人間だと思い込んでるキチガイぶりだなwww
マルクス氏は女性だったと言い出しそうだなこの分じゃ


しかしメスメスと女性と見ればそれしか頭になくなるのは毎度のことだな
いい年した老人がwww

305 :名無しのオプ:2014/04/13(日) 20:05:24.64 ID:9CYXrG0a.net
野球の話しを持ち出して荒らしているのがクソメスコテなんだが。
最早何が荒らし行為なのかもわからなくなったようだな。

306 :名無しのオプ:2014/04/13(日) 20:28:57.85 ID:RY3+/9UN.net
やっぱり女ということに異常に執着してるwww
さすが性犯罪者w

しかし「ダブルアウト」ネタは元々でつまつがボクシングネタで恥をさらし
「野球なら詳しい」と自分から持ち出した話だろう
自分で長文をあちこちに書いてたから野球ネタは乱歩スレにもクイーンスレにも
ゴロゴロしてる
自分で書いたのも忘れてるのか?

307 :名無しのオプ:2014/04/13(日) 22:38:10.72 ID:9CYXrG0a.net
乱歩スレやエルスレはアンチによって壊滅状態。
その中で出てきたのが野球の話し。
全く無関係だった都筑スレにその話題を持ち込もうとしたブス荒らしは本物の掲示板荒らしだよ。
名無しの頃からやっていたと自白しているしね。

そういうのが多いんだろうね、アンチは。

308 :名無しのオプ:2014/04/13(日) 22:58:19.27 ID:lM1vG8fX.net
お前いろんなスレで繰り返しそればっか書いてるのな

お前が一番荒してるってことに気づいてやめたらいいのに、まあわざと荒してるんだろうし、無理か

309 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/04/13(日) 23:38:12.46 ID:ZaWQayDJ.net
「マジシャン殺人事件」ピーター・G・エンゲルマン(扶桑社)

稀代のマジシャン“グレイト・ザカリニーニ”が脱出マジックの最中に無惨な最期を遂げた。
落とし戸のボルトがハンダ付けされており逃げられなくなって鉄球に潰されたのだ。
警察は三角関係のもつれに注目しライバルのマジシャンを調べ始めるが……。

担当編集クビにしろよ。こんなもんに金と時間と枠とを使いやがって。まず量。172ページで字もデカメロンで完全に中編で一冊に足りない。
質が良ければまだしも、悪い。短編でもこれじゃダメだよ。駄作。つーかマジックの必要性ないし。状況設定が全く活かせてない。
精神鑑定や法廷のシーンもちっとも盛り上がらないし。ラストで明かされる真相も、「それで上手く行くかよ!」ってレベル。
こんなもんで商業出版に漕ぎ着けるなんて相当コネがあったんだな。仕事柄何か握ってたんじゃねーのか。

フラグはきっちり立ててるけど。

310 :名無しのオプ:2014/04/13(日) 23:39:11.33 ID:wFcntzgq.net
都筑スレの野球の話(「話し」じゃないぞ、低学歴w)なんか
先週からずっと話題になってるじゃないか、目あるのか?
自分から「野球を知らないなら首を突っ込まないほうがいい」とか
上から目線で大恥かいてやんのwww
おいバカ、どうやれば内野安打でフォースアウトがとれるのか
具体的に説明してみろやwww

311 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/04/13(日) 23:44:42.00 ID:ZaWQayDJ.net
「マシューズ家の毒」ジョージェット・ヘイヤー(東京創元社)

業突張りの実業家グレゴリー・マシューズがある朝死去した。驚き集まった親族たちの中、故人の姉ガートルードは検死を要求しその結果ニコチンによる毒殺と判明。
ハナサイド警視の捜査が始まるが現場保存がなされなかったせいで行く末には暗雲が立ち込める……。

「紳士と月夜の晒し台」はあまり感心しなかったのであまり期待せず読んだが、まあそこそこ。
本作の肝は汚染(清掃)されまくった現場というハードルであろうが、それは演繹的推理を不可能にするという簡略化とも取れてマイナス。
犯人は意外だったしそれを巡る工作も評価するに吝かでないが、「○○が××に似ている」という情報が事前に提示されてないような気が……。
ロマンスが本業とのことであまり推理やフェアプレイに重きを置いてないのかも。

而してそのロマンスに関しても大して面白くないんだな、これが。まず男女ともに好感が持てない。特に男の方。ちと仮面被らせ過ぎだと思う。
そしてロマンス面の肝である“ある変化”の描写がほぼカットされているのが致命的。お陰で説得力が不足している。

そもそも主要キャラがみんな嫌な奴というのがダメだと思う。何人か純粋まっすぐ君(ちゃん)がおればこその皮肉屋や毒舌家、偽善者であろうが。

312 :名無しのオプ:2014/04/19(土) 14:23:42.94 ID:pO+oP2Cc.net
書斎が新たな嫌がらせを始めたのか?

313 :名無しのオプ:2014/04/19(土) 23:30:35.84 ID:L3oeMDEf.net
板のルールすらまともに読まないような荒らしにまともに答える奴はいない。
書斎なんとかいう無知無能な荒らしが擦り寄るかもしれんがねw

314 :名無しのオプ:2014/04/20(日) 19:25:23.89 ID:iTjB3mwz.net
メ欄じゃなきゃどうしても駄目ですかね

書斎についてはjim氏に直接言ったらどうしょうかね
ミステリー板でネタバレしまくり、本の購読意欲を削ぎ売上を鈍らせ、板の過疎化を促進している荒らしがいますが
対応してくれないでしょうか?とか
アイドル板でスレッドを70保持していた荒らしのスレがjim氏に直訴したおかげでかなり減らされた模様ですよ

315 :名無しのオプ:2014/04/21(月) 02:49:33.13 ID:YordqMvk.net
じゃあロス・マクドナルドの「さむけ」の質問をメ欄で書きます

316 :名無しのオプ:2014/04/21(月) 08:32:12.49 ID:G3SobpMp.net
現行ルールの不備が原因か。
こういうケースは実は多いと思われる。

今回のような丁寧かつ誠実なやり方でもダメというのは最早意味不明。
書籍の板で評論が書けないことになる。

317 :名無しのオプ:2014/04/21(月) 09:14:47.90 ID:y5MzY21j.net
2ちゃんで評論とかアホか

318 :名無しのオプ:2014/04/21(月) 10:46:47.29 ID:G3SobpMp.net
それを言うと都筑スレの一部のアホが荒らしに流れ込んでくるぞ(w

319 :名無しのオプ:2014/04/21(月) 11:34:38.60 ID:j5mzrXEF.net
流れ込んできた都筑スレの一部のアホ
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1395228439/775-776
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1395228439/781
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1395228439/783
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1395228439/787-788

320 :名無しのオプ:2014/04/21(月) 13:39:34.25 ID:xFHLRrMc.net
>>319
そいつは確かに荒らしのアホだな

321 :名無しのオプ:2014/04/21(月) 14:36:20.31 ID:PFlCLCpw.net
だからここでやるなってば
普段海外ミステリなんか読んでない癖に書斎の相手したいがためだけに書き込んでくるなよ
本当にうざい

都筑スレでやれ

322 :名無しのオプ:2014/04/22(火) 06:40:44.79 ID:BTa0QRuN.net
な、書斎アンチの荒らしが来ただろ。

323 :名無しのオプ:2014/04/22(火) 07:33:14.02 ID:sCWxQ2+X.net
書斎魔神ってすごく嫌われてるんだね

324 :名無しのオプ:2014/04/22(火) 13:34:03.32 ID:f1t7JT3z.net
架空の人物が仮託されているせいだね。
書斎その人は悪くない。
アンチが悪い。そもそもコテハン叩きはルール違反なんだから。

325 :名無しのオプ:2014/04/22(火) 16:21:00.19 ID:AC6Ev8s1.net
書斎は架空の人物だそうだ。
ならいくらバカにしても問題ないな。

326 :名無しのオプ:2014/04/22(火) 19:22:56.77 ID:dKJSUrPv.net
知識人で出版界の大物という設定の書斎魔神は、確かに架空の存在だね
現実は無知で無職の書斎魔神だから

327 :名無しのオプ:2014/04/22(火) 23:06:19.29 ID:pxu5kzAg.net
感想を書け感想を

328 :名無しのオプ:2014/04/23(水) 15:46:59.12 ID:0L6XRlAG.net
書斎アンチが暴れだしたら難しくなるよ。
荒らしの専門家だからね。もう10年以上もストーカーしている狂気の集団だ。

329 :名無しのオプ:2014/04/23(水) 15:50:14.78 ID:LElWcT0T.net
むしろ支持者のほうがストーカーだろw

330 :名無しのオプ:2014/04/23(水) 16:08:32.49 ID:h3wMbmIp.net
アンチの集団がいるなんて、書斎魔神はものすごく住人に嫌われてるんだね

331 :名無しのオプ:2014/04/23(水) 18:02:06.40 ID:XetNq31B.net
安倍首相が韓国人たちから嫌われてるのと同じだよね

332 :名無しのオプ:2014/04/23(水) 18:28:10.10 ID:5uR900cj.net
アンチはまともじゃないよ。
ありもしない自演を決めつけ、複数の人からなるレスを繋ぎ合わせて架空の人物を造形して叩く。
狂気以外の何者でもないよ。

333 :名無しのオプ:2014/04/23(水) 18:47:11.47 ID:NvuaxTvE.net
「ありもしない自演」wwwwwwwwwwwwww

語るに落ちるとはまさにこのこと

334 :名無しのオプ:2014/04/24(木) 21:01:27.99 ID:BTmqcLqQ.net
>>278
俺も読んだ。ミステリとしては至って普通。
雰囲気小説。

335 :名無しのオプ:2014/04/25(金) 07:25:42.63 ID:lUjV1/UM.net
>>334が正しいね。
読後感はとにかく無駄な言葉が多すぎる。
それで何かを表現した気でいるとすれば大間違いだ。

336 :名無しのオプ:2014/04/25(金) 23:00:51.68 ID:ziuOD6ay.net
書斎とその支持者は存在そのものが無駄だけどなw

337 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/04/26(土) 19:04:46.85 ID:9NGbSYT+.net
パール・バック「大地」を完読。
学生時代以来の再読であった。
この板的には、ある中国人一族三代にわたる大河ドラマ、
冒険小説的作と把握しておけばOKかと思う。
(息子たちの時代、軍閥に身を投じた三男王三こと王虎が主人公となる第二部は正に清朝末期の波瀾の時代であって、「冒険世界」そのものである)
とにかく、現代でもグイグイ読ませるストーリーテリングに優れた大作かとは思うのだが、ミステリ以外の長い本は苦手中の苦手というミスオタ諸兄(w
は、第一部(本来、「大地」と冠されたのはこの部分のみ)だけでも読んで
欲しいものである。
初代王龍が艱難辛苦の末に大地主となるサクセスストーリー、
不細工な妻阿蘭の献身ぶりが印象的だが、大邸宅に居住し、
美しい第二夫人(蓮華。彼女と侍女として王家に乗り込んで来るトーチュエン
(元の大地主黄家主人の妾)、王龍の死後も長く物語に登場し続けるこの
2人の女性キャラのあくどい存在感も出色と言い得る)まで持つ身分となった王龍が感謝の念は持ちながらも、最後までこの醜い妻を愛おしく思えぬという
展開など、閨秀作家の手になるものながら、これぞ「男心」というたものを活写
しており、見事な感あり。
米人女子の手によるものながら、語りが古代の中国奇談集みたいな飄々とした
感があるのが、何とも良し、
内容そのものはハードなんだけんどね。

338 :名無しのオプ:2014/04/26(土) 19:35:56.87 ID:JBJN/EN/.net
書斎さん、これはジョークですか? ミス板で校正しないといけない奴ですか?

339 :名無しのオプ:2014/04/26(土) 19:48:00.17 ID:ZcWT8DdM.net
見事な論考という他ない。

340 :名無しのオプ:2014/04/26(土) 23:16:01.01 ID:8ibczLi+.net
まさに圧倒的だね

341 :名無しのオプ:2014/04/26(土) 23:32:36.25 ID:Bd4n854U.net
見事な。圧倒的な。
書斎氏の限界を見事に表してるねw
誉めようがないんだもの。
抽象的な表現に頼らざるをえない。

342 :名無しのオプ:2014/04/28(月) 15:05:41.78 ID:ZJfRlXwN.net
トリフィドの日ってページにある島田流殺人事件のレビュー読んだけど
その図9?の建物の図解が
芦辺拓の失駈するジョーカーをちょい変えただけみたいな感じでワロタ
島田流じゃなくて芦辺流だったのか

343 :名無しのオプ:2014/04/28(月) 17:51:10.76 ID:NELJYeHz.net
まあ凡人が感想を書くとこの程度だわな。
読後感もこれくらいコンパクトにまとめるべき才能しかないんだから背伸びはするなよ。

344 :名無しのオプ:2014/04/28(月) 19:37:36.19 ID:xAtRerdT.net
凡人以下のごみくずが威張り散らすの図w

345 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/05/23(金) 17:51:55.39 ID:Kxky71Ox.net
(「骨の刻印」写し漏れ)

ちなみに法人類学者というのは法医学者が匙を投げるような死体を調べるお仕事だそう。お決まりの科学捜査ものかと思いきやあまりそういう分析に走り過ぎることなく
昔ながらのプロットを採用してデイヴィッドは何度も命の危険に晒されながら閉鎖的な住人たちの間に漂う不穏な空気を暴いていく。
ところでアウターヘブリディーズ諸島てのはシェトランド諸島の別名か?あの辺に2つもないよね? (注 反対側でした)
シェトランド四重奏との違いは前述したように住人の閉鎖性が強調されているところ。
デイヴィッドは部外者なので描き方としては当然だが、以前にも狭いコミュニティで嫌な思い出があるらしくシリーズ通してのテーマなのかも?一作目もなるべく読みたいが……。

最後に本作には見逃せない特徴がある。先日物故した長老ならば欠陥として厳しく批判したであろう特徴が。
主人公の一人称であるにも関わらず唐突に主人公不在の場面の描写が三人称一視点でなされてしまうのである。章立てや字体を変えたりもせず、伝聞でもない。
「わたしが〜していたころ」で書き出し確信犯的に混ぜちゃうのだ。視点にこだわりのない私も流石にこれはずぼらだと思う。

346 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/05/23(金) 17:56:48.61 ID:Kxky71Ox.net
「ソフィー」ガイ・バート(東京創元社)

囚われた女と過去を語る男。幼いマシューは二歳年上の姉ソフィーといつも一緒だった。ソフィーは常にマシューも姉を慕っていた。幸せな日々。
しかし、時は移ろい2人の世界にも少しずつ変化の兆しが現れ始める。やがて別れの日が……。

ミステリーとも言えない心理小説だったら糞味噌に叩いてやろうと悪意剥き出しで読み出したのだが、なかなか楽しめたのは嬉しい裏切りだった。
現代と過去との頻繁なクロスカッティングで進んでいくがバリンジャーのようにただこの形式に寄りかかるのではなく、更なる謎やトリックのための仕掛けとして機能していることを評価したい。
作品の世界観―狭い狭い〈キミとボク〉的世界だが―も甘美かつ虚郷愁を誘って心地良い。いよいよ崩壊の足音が聞こえ初めてから高まるマシューの不安。その果てにソフィーが漏らした一言。そして終章の静かなる衝撃。

未だ完全に理解しているとは言い難いが、印象的な一冊であつた。

347 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/05/23(金) 18:00:42.18 ID:Kxky71Ox.net
「スタークの真実」ピーター・フリーボーン(早川書房)

弁護士トミイはあるパーティーで美貌の未亡人キティと出逢い彼女の虜となった。二人は結ばれ、キティの齎す情報によってトミイの評判と資産は鰻登りとなっていった。
しかし、やがて秘密が嗅ぎつけられそうになり、キティはトミイに殺人を持ちかける。その時トミイはもはや引き返せないところまで来ていた……。

悪女ものには3パターンあって、最初から悪女と判っているもの、最後まで判然とせぬもの、そして後天的結果的に悪女となるものがあるが本作は最初のパターンに属する。
キティは最初から悪女であることを主人公にも読者にも隠さない。かくして獲物が悪女に引きずり回されるお馴染みのストーリーが展開していくのだが、
終盤にある事実が明かされそれが過去の事件に結びついていた辺りはオリジナリティを感じた。エピローグのどんでん返しも―無粋と紙一重かも知れないが―私は好きである。
それと作中でキティが「荒涼館」に言及する行があるけれども、トミイの一族が運営しているファンドはその巨大さや当事者でさえ把握し切れない複雑さにおいてジャーンディス訴訟を連想させるなと思った。

ただ、物語のターニングポイントをあれにした点は不満だ。

348 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/05/23(金) 18:02:05.48 ID:Kxky71Ox.net
「イスカンダルの秘宝」リチャード・バトラー(徳間書店)

イギリス空軍を除隊しクアラルンプールの酒場で働いていたニック・スレードは旧友ファーガスンと再会し、マラヤでのパイロットの職を紹介される。
喜んで受けたニックだったが、現地に着いた早々謎の美女の妨害に遭う。何やら誤解があるようなのだが……。

国際謀略冒険小説と見せた宝探し小説。短めで定番の話運びなので息抜きに良いかも。内戦中の東南アジアの市街地の雰囲気がほぼ伝わって来なかったのはご愛嬌。

349 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/05/23(金) 18:07:17.76 ID:Kxky71Ox.net
「跡形なく沈む」D・M・ディヴァイン(東京創元社)

離島からスコットランドの田舎町へやってきた謎の美女ルース。彼女は役所に仕事を得ると協議会議員たちに付きまとい平穏な町を掻き乱す。
どうやら自らの出自と過去の選挙について調べているようなのだが……。
一方人生を見失い役所で窓際勤務を余儀なくされていたケンは元婚約者ジュディの忠告をよそにルースに興味を持つが彼女の登場は殺人事件へと発展してしまう――。

相変わらず読ませるディヴァイン。文字を追わせること経典の如し。ここまでストーリーに奥行きがあって面白い本格て他に無くね?大錯誤もとい逢坂剛に読ませたい。
フーダニットに関して言うと、まず彼女を疑い次いで彼を疑ったら外れちゃったてへぺろ。でも負け惜しみを言う訳じゃないが使い回しぽいなと思ふ。
動機がおざなりに感じられるのもそのせいじゃないかと勘ぐってみたり。
とは言え、一般的なは十分佳作の部類でありんす。

あとケンのマゾヒズムはすげえよく解るわ。俺もよくやる(笑)。

350 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/05/24(土) 19:06:43.30 ID:GDIiCzuM.net
獅子文六「てんやわんや」を読む。
小説好きならこの著者、本作と「自由学校」(共に刊行当時ベストセラー)
ぐらいは聞いたことがあろう。
しかし、その著作を手にしたどころか、目にした記憶もないという者も
多数なはず。
まさか、「昭和時代に活躍した漫才師が書いた本なの?」とかいうアホは
おらんよな(w
今回、久々に復刊である。
主人公曰く、ある種の(人生)漂流奇談であり、作者はあの「新青年」出身という
こともあり、明朗なタッチながら順吉がオヤブンである政治家(鬼塚玄三)から託された秘密書類の謎、檜扇村の奇習等、ミステリ的興趣も無いこともないので、
あえてこの板で紹介してみた
主人公は、無産無職なアラサ―、
当時では青年というには少し歳がいった犬丸順吉君その人。
戦前から強面な保守政治家の付き人的存在として糊口をしのいでいたが、
戦後、戦犯追及を恐れ(過ぎなんだが(w )、政治家の故郷に近い四国の
片田舎に逼塞する。
そこは風光明媚、人柄良し、幻想的な色事まであって、
桃源郷かと思われたのだが、
結局、この世に桃源郷無しというビターな結末と相成る。
四国独立計画というネタは、後の井上ひさし「吉里吉里人」の先駆をなすもの
だが、文字どおり「ネタ」扱いで、さほど踏込むことなく終わるのは、
少し残念な感あり。
(そもそも主人公自身が全く乗り気でないのだが)
まあ、今読むと、凄く面白くわけではないが、パスタイムとしては悪く
ないというたところか。
出来得れば「自由学校」も文庫復刊されぬものであろうか。

351 :名無しのオプ:2014/05/24(土) 19:52:47.37 ID:zeJkPe0I.net
読後感の誰も読まない、現に誰もレスをつけない駄文と違い、書斎の本のチョイス、批評分としてのレベルの高さ、たくまざるユーモア。
どれをとっても素晴らしい。

352 :名無しのオプ:2014/05/29(木) 20:28:09.54 ID:QiLR3603.net
チェスタトン「木曜日の男」を読む。
確かにおもしろいというか、この時代にこんなメタミステリみたいな作品がでて
いるのがすごい。

353 :名無しのオプ:2014/05/29(木) 20:36:08.09 ID:4Vq5NP5p.net
ツイッターででもやってくれ。ここはそういう書き込みをする場所じゃない。

354 :名無しのオプ:2014/05/29(木) 20:39:47.91 ID:mnKYBpE6.net
じゃあ、どういう書き込みをすればいのかな?
手本を見せてよ

355 :名無しのオプ:2014/05/29(木) 21:32:47.06 ID:4Vq5NP5p.net
直前の>>350など素晴らしいから参考にするといい。
プロになれるよ。

356 :名無しのオプ:2014/05/29(木) 22:06:38.14 ID:Z1CjN2Pd.net
うん詳しく書いてあるから実際に読む必要がないよな ミステリでもないし
「木曜日の男」は読んでみたいが

357 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/06/02(月) 17:38:06.05 ID:iyTR0jEd.net
「SBS出動指令」アレグザンダー・フラートン(早川書房)

アルゼンチン育ちのイギリス人アンディはフォークランド紛争に際して敵方の高性能ミサイルを無効化するための工作に関わる羽目になる。
SBS隊員達と共に懐かしきパタゴニアの大地へ降り立ったアンディは老雄トムと再会を果たすが、彼の脳裏には故郷に住むかつての恋人の姿があった。

SBS三部作スタートだが、海洋モノ書く作家は地力があると思う。コーンウェル然り、ウィルバー・スミス然り。ジョージ・フォイて人もいたよね。
フラートンも同様で海や船に関しない部分が読ませるんだよなあ。本作はアンディのパート、SBS隊員達のパート、駆逐艦のパートと3つに分かれているが
後ろ2つは斜め読みしてたくらいで(笑)。

アンディに協力する老牧場主がまたカッコいいんだわ。世代を越えた友情に萌える。そして勿論女っ気もあるよ。アンディとアルゼンチン軍にいる兄との相剋に絡む美女フランシスカ。
ただこの辺は本筋じゃないのか消化不良気味なのが残念。2作目には人間ドラマもしっかり描き込まれていて欲しいところ。

358 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/06/02(月) 17:39:42.47 ID:iyTR0jEd.net
「氷雪の特命隊」アレグザンダー・フラートン(早川書房)

ソ連の特殊部隊スペツナズがラップランド侵略を目論みフィンランドへ潜入した!
アメリカの大学教授の護衛としてノルウェーへ向かった元SBS大尉ライルは酷寒の大地で死闘を演じることになる。

三部作之二作目。しかし今回は完全に陸のお話で海は出てきません。そして舞台もずっと雪中でサバイバルですので、ストーリーの妙というものはあまり無いです。
純粋に雪合戦を楽しむべき一作というところでしょうか。ただ、冒険小説として読むとイマイチ面白味に欠けるかなと。意外性も無いし。でも今回も女っ気はありますので(笑)。

359 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/06/02(月) 17:46:29.47 ID:iyTR0jEd.net
「新型核弾頭スカイダンサー」G・アーチャー(新潮社)

イギリスがソ連のミサイルシステムに対抗するために進めてきたスカイダンサー計画が漏洩した!?
ロンドンのゴミ捨て場で見つかった文書が引き金となって始まった英ソの謀略戦に核開発に携わる科学者ピーターも巻き込まれる。
反核運動にのめり込む妻との軋轢に苦しみ秘書と不倫に走った過去に苛まれるピーターだが……。

核兵器を巡るドライな謀略戦に反核運動というウェットな要素が絡むことでどのようなコクが出て来るのかと思ったが、中途半端に終わった印象。
盛り上がりそうなポイントはいくつかあるのだがそれを膨らまし切れていない。例えば科学者夫婦の設定。類似した設定の「鷲たちの盟約」「モスクワ、2015年」、
その続編等と比べると大人し過ぎやしないか。フェミでもあって、レズの同僚に粉かけられられるというフリは何だったのかと問いたい。

メインのはずの化かし合いに関しても焦点がぼけていてそれらしさがまるで感じられない。ラストの落ちも収拾がつかないための苦し紛れに思えてしまった。

360 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/06/02(月) 17:47:35.53 ID:iyTR0jEd.net
「偽の特殊部隊」アレグザンダー・フラートン(早川書房)

酒に溺れて職を失い浮気して妻にも去られた元SAS少尉チャーリイはノックスという男の誘いに乗り中東へ向かう。
任務は人質奪還と聞かされていたがその裏には恐るべき陰謀が隠されていた!

3部作完結。フラートンはエンタメとしての骨格を意識して書く時とそうでない時とがあるようで本作は後者。
中東における謀略戦闘に関しては楽しめるだろうが、主人公(?)のチャーリイに関するストーリーはほぼ無いに等しい。
読ませる力はある作家なので、もう少し全体のまとまりというかエンタメとしてのあざとさを常に意識して欲しい。

361 :名無しのオプ:2014/06/02(月) 19:25:26.84 ID:pAjnu3rQ.net
誰も読んでいないし、期待もされていないからもうやめておけ。

362 :名無しのオプ:2014/06/02(月) 20:41:45.39 ID:S/WJlXYY.net
うむ

363 :名無しのオプ:2014/06/04(水) 02:18:13.88 ID:ZUTqL5xr.net
ウイリアム・H・マクニール「世界史」(上・下)を読む。
帯には、東大・慶応・早稲田の生協でベストセラーとあるが、
まあ、読んでみれば普通の教科書だな。
(だから大学生協のベストセラーなのかも(w )
山川の世界史をかなり詳しくし、これに著者なりのコメントを付加した
感じ。部分的に「へえー」と思わせる面はあるが、
(一例をあげれば、タラス河畔の戦い、唐とイスラム(アッバース朝)、
当時の2大帝国の大激突と記憶していたが、著者によれば局地戦扱い、
中華圏とイスラム圏のガチンコ直接対決というのは存しなかったとか。
製紙法の蔡倫の記述も無し、
個人の業績をあげるのは極力避け、ひたすら大きな事象の流れで叙述してゆくのが、本書のスタイル)、
高校世界史をきちんと履修したものでないと、通読は厳しいかもなー。
世界史らしい縦横の歴史の流れによる錯綜感は半端でない、
特に本書は、西洋人の手になるものにしては、小アジア、インド、極東等
にまでかなり筆を割いているため、尚更、この感が強いものあり。

364 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/06/05(木) 01:54:25.93 ID:XQAaSQd3.net
「ウェザースパイ追跡」(早川書房)

父が遺したボロ船を操り何とか遣り繰りしているポールはある時兄チャーリーを捜してくれと頼まれた。
コンピューターエンジニアをしていたチャーリーは新開発したプログラムを持ち出して失踪したという。
かつて恋人を奪われた経緯から兄夫婦と絶縁状態だったものの、船の修理費を捻出するためポールはやむなく依頼を引き受けるのだが、チャーリーの失踪の背後には世界を変えてしまうほどの秘密が隠されていた。

プロローグに象徴される大災害を背景にチマチマした三角関係を引きずりながら展開していくアクション小説。
恋人と兄に裏切られた過去が中々語られないので主人公の鬱屈した思いを理解出来ず読んでいてもどかしいのだが、結果的に言えばこれも仕方なかったと言える。
ネタバレになるので詳述しないが、作者はそこに感情移入して貰おうとは思っていないのだろう。

ただ主人公のストーリーとアクションシーンばかりが目立って折角のスケールのでかい設定を活かしきれていないのは残念。
それとコンピューターがチートな思考停止ツールになっているのも少し気になるがこれは本作だけでなくエンタメ全体の問題だあね。

365 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/06/05(木) 02:01:05.04 ID:XQAaSQd3.net
「スリーパーにシグナルを送れ」ロバート・リテル(新潮社)

CIAの古株コンビが企んだ完全犯罪。
それにはソ連のスパイ養成所の元ベテラン教官を引き込む必要があった。教え子が次々と摘発され冷や飯を食わされていたその男“陶工”はCIAの誘いに乗って亡命を決意する。
アメリカに潜伏している愛弟子について教えるのが亡命受け入れの交換条件だったのだが、渡米後何やら違和感を覚えた陶工は思わぬ行動に出る。

面白かった。エスピオナージュとしてだけでなく小説としても面白かった。
CIAコンビの策動。陶工の逃避行。そしてスリーパーのミッション。それぞれに謎を孕んで読ませていくのだが、読後一番印象に残るのはロードノベル(こんな言葉ある?)としての部分。
亡命を決意したものの共産主義を捨てた訳ではない陶工のキャラクターと相手のそれとが相俟って引き込まれた。

キャラクターと言えば、この本作は登場人物たちが実にイキイキとしている。既出の連中以外にもセクシービッチな陶工の妻スヴェトチカ(自分を名前で呼ぶのが可愛い)や、
うらぶれたスリーパーの父親(陶工との哀愁漂う邂逅)など「ルウィンターの亡命」の作家とは思えない充実ぶりであった。
でもラストはイマイチ。それまでの空気感を引き受けていないとオモワレ。

366 :名無しのオプ:2014/06/06(金) 02:33:49.07 ID:erXmgeyO.net
おまえ「木曜日だった男」の感想書いてくれよ。

367 :名無しのオプ:2014/06/06(金) 17:51:22.53 ID:COO6bujv.net
孤独で他人とコミュニケーションができない男だからリクエストは無理だよ。

368 :名無しのオプ:2014/06/06(金) 18:13:43.15 ID:rCEBch3k.net
書斎さんの悪口はやめろ!

369 :名無しのオプ:2014/06/18(水) 00:00:01.71 ID:fk1fhZUa.net
荊の城、オモロかった。もろ百合小説やったな。9点。

370 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/06/21(土) 20:00:16.26 ID:IWoo7Zny.net
織田作之助「夫婦善哉 正 続他十二篇」を読む。
2007年に発見された夫婦善哉の続篇を読みたく思い手にした。
舞台は別府に移るが、相変わらずの2人(柳吉は遊び人気質が抜けず、
蝶子はしっかり者で働き者)で、柳吉の先妻との間にできた娘の結婚式に
招待されるラストでめでたくエンド。
面白いが、何となく尻切れトンボのような感もあった正編だが、
これでやっとあるべきものがあったという気もする。
「放浪」「雨」「俗臭」「黒い顔」「蛍」等、
それぞれ正に流転の人生行路を描いており感慨深いものあり。
坂田三吉ネタの将棋もの「聴雨」「勝負師」は俺が将棋に対し興が薄いせいか
今ひとつな感があったけど。

371 :名無しのオプ:2014/06/21(土) 20:09:21.57 ID:Na6wgB6L.net
夫婦善哉は翻訳物であったか。

372 :名無しのオプ:2014/06/21(土) 21:38:04.84 ID:mADOCRzx.net
ロアルド・ダールの「キス・キス」文庫版読んだ。

「あなたに似た人」に比べるとだいぶ質は落ちるが、まあまあ面白かった。
ハイスミス的なイヤミスの比率高し。
せっかくのストーリーの盛り上がりを身も蓋もないオチでぶち切ってしまう
「勝者エドワード」「豚」の2編は、この作者でしか書けないね。
7点。

373 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/06/21(土) 22:21:09.79 ID:zvgLYHXo.net
「もうひとつの死」ジョン・クロウ(早川書房)

ベトナム帰りの若者がモーテルから消え、代わりに別人の首吊り死体が残っていた。
容疑者は地元の有力者スコットの息子だったため保安官は関わりたがらず、捜査は元ニューヨーク市警警部ベケットの手に委ねられる。
消えた若者を追うベケットを銃弾が襲い新たなる殺人が!?

タイトルの上に〈ブエナ・コスタ・ミステリ〉と銘打ってある。本作はカリフォルニアの架空の群ブエナ・コスタを舞台にしたシリーズの一作目らしい。地図も付いている。
ライツビルやアイソラなど架空の街にするやりやすさはあるんだろうなという印象。

読んでいて違和感を覚える。私立探偵ものだからてっきり一人称乃至三人称一視点かと思いきやひょいひょいと視点が切り替わるのだ。
最初は座りが悪いなと思ったが、読み終える頃には思い直した。本作は家族を描くミステリーなのだ。ベケットの物語ではなくスコット家の物語なのである。
更に言えば〈ブエナ・コスタ・ミステリ〉であるならば土地を描く断片として家が描かれている、ということなのかも知れない。
フーダニットも捻られているし、容疑者と被害者を隠して引っ張るやり方もまあまあ成功していると思う。
サドラー名義とはまた違った味わい。さて、コリンズ名義はどうであろうか。

374 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/06/21(土) 22:23:43.08 ID:zvgLYHXo.net
「謀略の機影」リドリー・ピアスン(新潮社)

復讐に燃えるFBI捜査官ダギットと怒れるテロリストコルトとの執念の闘い!
敵の目的が飛行機爆破にあると見抜くダギットだったが、コルトがダギットの持つファイルを狙って恋人キャロラインに近づいていることを知る由もなかった。

ピアスンは「螺旋上の殺意」以来か。ヒロインの一人アビーが魅力的だった。子持ちなのにヌードが綺麗で。
閑話休題。今回は追いつ追われつの捜査ものとしてディテールをしっかりと書けていると思うのだが、主人公と敵役とのストーリーを見た場合、余計なキャラがいる。
三角関係のために四角関係にする矛盾というかね。作者にしてみれば説得力を持たせるためと読者を慮ったためにこうなったのかも知れないが、要らなかったと思う。
そのせいで折角作者が力を入れて描いているあのシーンもしっかり愉しめない。NTR意識してるのは明らかなのに勿体無いわあー。

375 :名無しのオプ:2014/06/22(日) 05:27:24.43 ID:ho9DUq+x.net
時流に流された読書しかしない読後感。
永遠に読み継がれる名作を独自の視線で語る書斎。

高尚なのはどちらか明らかだね。

376 :名無しのオプ:2014/06/22(日) 12:30:01.65 ID:qhkVvB96.net
織田作之助「夫婦善哉 正 続他十二篇」が海外作品だとさw
独自すぎるだろw

377 :名無しのオプ:2014/06/22(日) 14:32:13.13 ID:JQ7cxJBg.net
細かいことはいいんだよ。
本質が伴っているならね。
読後感などそれが全くないからいつも誰にも相手にされない。

378 :名無しのオプ:2014/06/22(日) 14:38:29.88 ID:3hG1fvIc.net
こういう突飛なことでもしないと、かまってもらえなくなってきてるからな。

379 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/06/22(日) 17:11:04.57 ID:Y9rVURwW.net
イアン・ランキン「黒と青」を読む。
英国警察小説(というか実態は警官小説)。
警察小説も好きな俺だが、何か手を出しかねていたシリーズの初読み。
ボリューム感あるゴールド・ダガー賞受賞のシリーズ代表作である。
謎解きミステリとしての面白さは薄く、主人公ジョン・リーバス警部は
ハードボイルド風(というか70年代以降の屈折したネオ・ハードボイルドか)
一匹狼タイプの男なので、協力者ぐらいはいても、集団捜査の面白さもない。
英国北部スコットランドを舞台した作だけに、とにかく暗く、重いムード、
これが本シリーズの特色とのことだ。
シリーズ作品の大半はリーバスの地元エディンバラを舞台にしたものだが、
本作は造船業で有名なグラスゴー(アダム・スミスの生地でもある)、
北海油田の拠点地シェトランド諸島(犬=シープドックでも有名)等まで
広がっている。
伝説化(?)した連続殺人犯バイブル・ジョン(正体は石油会社の販売主任)は
模倣犯を始末、姿を消す。
ラストでリーバスにかかって来た無言電話って、やはり「彼氏」という示唆
でしょ。
既に完結したシリーズでもあるが、彼氏はこの後の作で再登場してるん
だろうか?

380 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/06/28(土) 19:34:52.21 ID:wuMva39z.net
ヘンリー・ウエイド「警察官よ汝を守れ」を読む。
クラシックなミステリを読みたくなり国書の世界探偵小説全集中で未読
であった本作を手にしてみた。
地方の警察署内における謎の射殺事件(しかも被害者は本部長)に
ロンドン警視庁から派遣されたプール警部が挑む。
古い作だが、本格というよりは警察小説のテーストが濃い作で、
署内、地方警察官僚組織内、中央と地方等におけるそれぞれの人間関係
による確執もわりとリアルに書き込まれている。
(現代日本の警察制度とは時代も国も異なるため、わかり難い面も多いが)
本部長射殺のトリック(当時はそれなりに珍しかったのであろう
サイレンサー使用、更に偽の銃声で犯行時刻を錯覚させる)はそれなりに面白い
ので、この部分だけ取り出して短編に仕上げた方が良かったと思われだ。
犯行が御都合主義的に上手く行き過ぎに見える点はともかくとして、
犯人(タラール=ジョン・ハインド)の警察への就職のくだりが
あまりに偶然絡み過ぎて不自然さを感じてしまうのだ。
この点は長編ゆえの粗であろう。
貫井徳郎氏の解説でも指摘されているが、
本作は、エルのチャイナ、エルの冒険、カーターのプレーグコート、修道院、
アガサのオリエント、三幕、ドロシーのナイン、R・ハルの伯母殺、
キングの鉄オべ等と同年(1934年)発表とのこと、
貫井氏は、
「邦訳は遅れたとはいえ、タイトルだけは遠い東方の島国にまで伝わっていた
作品です。これらの傑作に比べて著しく劣っている、
あるいは個性の点で負けているのであれば、存在自体忘れられていたこと
でしょう。こうして訳されたことが、
イコール、本書の存在意義を物語っているとも言えます」
と、読み方によっては微妙な評をしている。
鉄オべはともかくとして、他の上記の作品群と並べて語るには非常に苦しい
作なのは間違いないです。
ゆえに本邦紹介も大幅に遅れたのであろう。

381 :名無しのオプ:2014/06/28(土) 20:55:33.84 ID:MN46NxSH.net
この書評がロハで読める幸せを住人は噛み締めるべき。
本物とはこうしたものを言うんだから。

382 :名無しのオプ:2014/06/28(土) 21:24:14.76 ID:sdWPUQY+.net
いや、全くもってそのとおり。
感服しまつた。

383 :名無しのオプ:2014/06/28(土) 21:41:56.46 ID:Ginr3zgN.net
ああ、これは完全な脅迫だね。
立派な警察沙汰だ。
早く通報しないといけないね。


2014年06月28日 > sdWPUQY+

書き込みレス一覧

エラリー・クイーン〜PART15
353 :名無しのオプ[]:2014/06/28(土) 20:27:14.62 ID:sdWPUQY+
セクハラ議員、身辺に気をつけろ!!!
http://peace.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1397913122/353


『読みました』報告・海外編Part.8
383 :名無しのオプ[]:2014/06/28(土) 21:24:14.76 ID:sdWPUQY+
いや、全くもってそのとおり。
感服しまつた。

384 :名無しのオプ:2014/06/29(日) 08:29:07.49 ID:1HSn3rV0.net
すげえな、ミステリでまで平気でネタバレしてる。

385 :名無しのオプ:2014/06/29(日) 14:28:51.20 ID:pbE9Xb+z.net
もう運営が機能してないからやりたい放題さ・・・年単位で何ひとつ削除されていない(というか
削除依頼を読んでいる気配すらない)

386 :名無しのオプ:2014/06/29(日) 14:32:14.67 ID:BspJgG10.net
>>12のうちファンクラブが新スレに
【コビベ】書斎魔神ファンクラブ17【フンコロガシ】
http://hello.2ch.net/test/read.cgi/bobby/1403878915/
後はそれらのスレで構って下さい。

387 :名無しのオプ:2014/06/29(日) 16:15:29.90 ID:0iexoSOx.net
機能しないルールはないのと同然。
ネタばれ前提で楽しくやろう。

388 :名無しのオプ:2014/06/29(日) 16:22:37.80 ID:pbE9Xb+z.net
機能していないのは運営でルールじゃない。

まあルールがあろうがなかろうがネタバレして荒す以外しないんだから貴様にとっては同じだろw

389 :名無しのオプ:2014/06/29(日) 16:55:50.62 ID:0iexoSOx.net
法概念についてあまりわかっていないんだな。
法学部出たくらいでは、多分教えてくれないからな。

390 :名無しのオプ:2014/06/29(日) 17:40:38.50 ID:lTzbfIGi.net
法概念がわかっていないから
ねたばれをするんだろうw

391 :名無しのオプ:2014/06/29(日) 20:30:19.35 ID:KNbA6tN2.net
◆都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口等一覧
http://www.npa.go.jp/cyber/soudan.htm

サイバー犯罪の被害にあったり、あいそうになったときのご相談を受け付けています。

また、サイバー犯罪の情報をつかんだときの通報もお待ちしております。

◆警視庁  
 03-3431-8109(専)
 http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/haiteku/haiteku/haiteku1.htm
 http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/(全)


血の付いた遺留品を残して子供が失踪したという狂言をネットで広めたり、
無根拠な被災者の誹謗中傷をしたり、殺人や暴行の予告と取れるような
書き込みがあったら通報しましょう

392 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/06/29(日) 23:26:26.99 ID:AB8zbcuW.net
スタンリイ・エリン「最後の一壜」を読む。
「小説」としては悪くはないんだが・・この作家の作は「ミステリ」として
面白いかというと疑問符大なんだわな。
収録作品の内容はともかく、翻訳者は一流どころかずらっと並ぶ、
翻訳面からの読み比べをしてみても面白いかもなー。
皆さんお待ちかねな収録作品全話講評逝ってみようか!!!
「エゼキエル・コーエンの犯罪」
これは中編。密告者とされる父を持つイタリア娘、
これもワケありな米人刑事、この2人交流模様は良しなのだが、
真相の死人に金を返しにゆく展開は、あまりに突飛過ぎて萎えた。
「拳銃よりも強い武器」
クリベリッジというトランプゲームを知らないと少し興が落ちるという感
がある作。ストーリーそのものもさほど面白いものではない。
「古風な女の死」
その昔、「オーソン・ウェルズ劇場」で「先妻の亡霊」という映像化作品を見た。
原作はエリンたんだったのか・・・
古風な女(表装だけだが)=エリザべスの自死。
メゾナイト版キャンヴァスってそんなにカチカチなんや。
「12番目の彫像」
中編。死体を彫像に隠せ、しかし、映画フィルムは見ていた(彫像の数)。
まあ、まあな面白い作ではある。
「最後の一壜」
ワインねた、ロアルド作品を意識かな。
格別な奇を衒わず、作品前半で見え見えな心臓麻痺ネタで処理。
エリンたんらしい。

393 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/06/29(日) 23:27:01.21 ID:AB8zbcuW.net
「贋金づくり」
アンドレかおな邦題(w
旦那さんは殺しのプロ。これだけの作。
「画商の女」
精神的にタフなはずのマダム・ラグリエのうろたえぶりがオーバー過ぎて
不自然極まりないものあり。NGれす。
「清算」
ジム・ビームって当時からスタンダードなバーボンだったんだなと
まあ、それだけです.
「壁のむこう側」
サイコ・ミステリ。
オチ(シュヴィンマー博士の心の声であったか)も元祖ロバート作品の
影響そのもの。
「警官アヴァカディアンの不正」
ハードボイルド十八番な小鷹先生訳がジャストフィットしたビターな警官小説。
「天国の片隅で」
他の作家なら殺人完了エンドは無いかと。
ビッチ気味ながら女の子惨殺。
エリンには「小説」としての「締め」はあっても「オチ」は無し。
「世代の断絶」
オチはインポテンツちゅーか、エレクトせず。
だけんど、ヒッチハイクってマジで怖くないんかね?
「内輪」
「ミステリ」として読まなければ面白いという微妙な評価が妥当。
気弱で優しい主人公(弟)、母の遺産狙いな既婚美形姉妹、
独裁者タイプ、唯我独尊モードな母親、
そして孫たち等々、短い作ながら「家族の肖像」が活写されている。
母殺し(実は事故死)と思われで、一応、ハッピーエンド、
シニカルなラストではあるな。
「不可解な理由」
78年の作だが、リストラ社会な米を実感させるものあり.
終盤の展開(重役陣襲撃)は妙にリアルな恐さがある。

394 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/07/03(木) 19:19:29.42 ID:BouBU3uo.net
「第七の核」ピーター・ジョーンズ(二見書房)

多国籍過激集団〈東の風〉がアメリカの持つ核弾頭を七つ強奪し、大統領を脅迫してきた。
安全保障担当補佐官トマス提督は田舎へ引っ込んでいたシークレットエージェントヒッチを呼び出し、CIAの切れ者ティナと共にチームに加える。
愚鈍なリーダーの妨害にも遭いながらも二人はテロ集団と闘うのだった。

邦題はちとおかしい。七個の核じゃね?
さて、技巧的にもストーリー的にもあまり見るべきものはないが、悪役として登場する日本人がカッコイイのは嬉しい(実質ラスボスだし)。
キャラクターでは他に宗教狂いの大統領も目立った。これどの程度有り得るんだろ。

そして本作のハイライトは後半思い任務を負わされたパイロットがジレンマに悩むシーンかな。ワイヤーマンを初めて知った。

395 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/07/03(木) 20:52:21.55 ID:BouBU3uo.net
「ナイトストライク」グレゴリー・G・ヴァニー(東京創元社)

アメリカ大統領が乗ったヘリが落雷を受けて墜落した!
この事故を受けて予てより大統領の急進的な革新路線に嫌悪を示していた極右勢力は驚くべき計画をスタートさせる。
大統領の葬儀会場を空襲し、参列する閣僚及び海外の元首その他の要人たちを一網打尽にしようというのだ!
この恐るべき企てを察知したCIA職員JRは安全保障担当顧問ホーキンスに進言するが信じて貰えない。JRは海兵隊にいる弟ジェイソンに望みを託した!
世界の命運を懸けたドッグファイトが始まる!

まず解説は読んじゃダメよ。ネタバレの気もなくほぼ完全にネタバレしているから。シャッチョさんたら。。。
それに関連するが、裏表紙見たら確実に誤解するから注意。本作の主眼は空中戦ではなく(迫真の描写なのは間違いないが分量は少ない)、色と野心渦巻くホワイトハウスの人間模様である。
殊に色気ムンムンの安全保障担当顧問ローズマリーは出色。大統領を虜にして操り、事故後は速攻で副大統領を落とすという強烈なセックスアピールの持ち主で、登場シーンには常に性的な描写が付きまとう。
それでいて単なる野心家のアバズレではなく純粋さや弱さを持っていて一筋縄ではいかないキャラクターなのだ。本作は彼女の存在感に支えられていると言っても過言ではない。

そしてクライマックスのドッグファイト。これがまた凄い! こんな展開前代未聞じゃね? 小説はおろか映画でも無いだろ。しかもただの悪のりじゃなくて必然性があるし。
傑作とは言えないが作者の他の作品も読みたくなる作品である。

396 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/07/03(木) 21:11:18.36 ID:BouBU3uo.net
「オメガ・コマンド」ジョン・ランド(新潮社)

アメリカのスペース・シャトルが宇宙でUFOの襲撃を受けて破壊された。同じ頃アメリカの新興諜報機関〈ギャップ〉のエージェントが何者かに暗殺される。
事態を受けて大統領らが協議を重ねる中、〈ギャップ〉の長官は問題を起こして左遷されていたエージェントマクラッケンを密かに呼び戻し捜査に当たらせる。
一方著名なアンカーウーマンサンディは姿を見せない巨大IT企業の創業者の実態に迫ろうとしていた矢先、瀕死の男からフィルムを託される。
一連の事件の背後には大企業の巨大な陰謀が渦巻いていた。

スーパー・ハードボイルドなんぞと銘打っておりますが、何のことはない007の焼き直しですな。主人公があちこち駆け回って死体の山を築くオハナシ。
ただしマクラッケンはかなり独善的な所があってここはボンドとは違う。ちなみに上司は殺されるのが怖くてクビに出来ないらしい(笑)。

あとお色気がないのも007と違うな。これは不満。後半まではサンディのパートと交互に進んでいくのだが彼女美人なのにサービスシーンないし。マクラッケンとマクラッケンしないし。

とまあだらだらと読んでいたら終盤で思わぬどんでん返しがあってこれは予想外だったので少し驚いた。それだけ。

397 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/07/03(木) 22:18:41.95 ID:BouBU3uo.net
「男たちのゲーム」ピエール・サリンジャー&レナード・グロス(東京創元社)

恋人メレディスとの結婚を間近に控えた著名なジャーナリストアンドレは何者かに命を狙われていると知らされる。
隠し持っている特ダネが原因なのか? アンドレはメレディスと共にCIAに匿われ極秘に結婚式を挙げるが幸せも束の間、凶弾に見舞われる。
運良く生き延びたアンドレは妻を守るため外見も内面も変え完全な別人となって自身の暗殺の真相を暴くべく闘いを挑む。

総合点は低いので以下つらつらつらねます。
まず「敢えて3話目から始めました」的な演出が鼻につく(但し後述の疑惑あり)。そして前フリが長い!何なのこのダラダラぶり。早く復讐に入れ!
と思ったら復讐ってテンションでもなく淡々と進んでいって拍子抜け。掴み所が無くて困っちゃう。
そもそも主人公夫婦の関係が不自然よ。20以上年下の美人と出逢って3ヶ月で結婚とか妄想大概。そのせいか妻のキャラ立ちもイマイチな印象だし。
更に更に、キャラクターと言えば嫌なキャラクターが一人もいないのもマイナスだね。およそスパイものには嫌な奴(敵とは別)がいて、
その彼彼女が“返し”として物語に質感をもたらしたりする訳なんだが本作は味方側には良い奴ばかりでMI6もKGBもトップは話の解る人物という呆気なさ。
もっと力むのを楽しみたいのにあっさりボッチャンしてがっかりしたことあるでしょ?あれよ、あれ。

まあでも残り1/4くらいからはスピードがついて読ませるんだけどね。逆説的な真相も悪くはないし。ただそれ以前がね〜。
最後に最初に挙げた演出について。解説によるとシリーズ2作目の可能性もあるんだよなあ。明言してないのが狡い所でね。順番に出さなかった後ろめたさの表れか?

398 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/07/03(木) 22:20:35.79 ID:BouBU3uo.net
「昏い季節」チェルシー・ケイン(ヴィレッジブックス)

豪雨による洪水が懸念される中公園のメリーゴーランドに乗せられていた死体。検屍後毒殺であることが判明するが、その手口はちょっと類例のないものであった。
犯人を追うアーチーだが相棒が姿を消し犠牲者は増え続ける……。

どうしちゃったのチェルシーちゃん!
ビューティー・キラー3部作の輝きよ何処。一応サプライズはあるものの弱い弱い。今回はサスペンスに徹したのか?にしても洪水じゃなあ。
日本じゃ梅雨時に毎年あることだし更に未曽有の大津波の後じゃどうしても作中のパニックぶりはピンとこない。
次に期待か。もうグレッチェンはいいけど。

399 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/07/03(木) 22:25:38.78 ID:BouBU3uo.net
「人形パズル」パトリック・クェンティン(東京創元社)

太平洋戦争に海軍中尉として出征していたピーターはとうとう念願の休暇を貰うことができ、今はハリウッド女優として人気の妻アイリスと久しぶりの再会を果たす。
しかし喜びも束の間、ホテルの部屋が取れないことから始まりサウナで軍服を盗まれたり見知らぬ男に謎めいた言葉を投げかけられたりハプニングの連続。
挙げ句の果てには会いに行ったアイリスの従姉が自室で殺されているのを発見し、おまけにピーターに疑いがかかる状況になってしまう。
警察に頼れない2人は知り合った私立探偵の協力を得て濡れ衣を晴らそうとする。

シリーズ3作目。これで6作目まで開通した訳です。
これは今までと違って巻き込まれ型サスペンスぽくなっております。推理するというより終始逃げたり追っかけたりしている印象。
前半は相次ぐ謎とスピード感とを楽しんで読んでいたのですが、後半になるとやや退屈に思えてきました。密度と順序の問題だとおもいます。
推理がないのと、もう一つサプライズを出すタイミングが変なんです。そこでやられてもビミョーな気持ちになっちゃうよ的なことです。
解説で指摘されているように事件の背景を語る箇所も長いですしね。

さてパズルシリーズ半分読みいよいよ波瀾の後半へ向かいます。

400 :名無しのオプ:2014/07/04(金) 00:04:16.10 ID:1YaUD3H5.net
読後感の荒らしが酷いね。

401 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/07/05(土) 12:03:37.72 ID:hJqtmG3u.net
トニイ・ヒラーマン「時を盗む者」を読む。
本国では人気シリーズだったらしいが、今回初読。
昔々にはシリーズ第1作(「祟り」)が、「名探偵はインディアン」という
諸なタイトルでジュブナイル化されていたが、面白くなさそうなので
スルーした記憶あり。ずっと後、90年代前半に早川(ミステリアスプレス)が
盛んに邦訳出版したが、結局、他社(角川、DHCから各1作)からの刊行も
含めて、シリーズ邦訳は半分に終わった。
やはり西部小説(本邦でいえば時代小説相当か)が愛読される伝統がある
メリケンでは、この手の雰囲気の作がウケる土壌があるんであろうか。
シリーズものは刊行順に読む楽しみもあるのだが、未訳も多いので、
一応、最高傑作との評がある本作から手にしてみた次第。
うーん、インディアンのリザベーションという特殊な舞台設定が
馴染みにくくも、風俗もわかり難い。この辺でかなりリーダビリティを阻害
されるものあり、ミステリ部分(女性考古学者の失踪)も考古学の知識がある
椰子が絡んでいそうと察しがつけば、意外性は少ない。
つまり面白くはないのだ。ネイティヴの文化面に興があるとかでなければ、
基本逝ってよし!作品と言い得よう。

402 :名無しのオプ:2014/07/06(日) 03:54:02.09 ID:59rj1rtK.net
魔神は早く「木曜日の男」読めよ

403 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/07/06(日) 08:06:05.71 ID:yVQOZQOX.net
「ハーディ短篇集」を読む。
テスの原作者の短篇集。
ミステリ集とは言い難いものがあるが、文学苦手な重症ミスオタも面白く
読めるものとして紹介しておく(w
とにかく訳文が日本語としてくだけていてリーダビリティ大
(少しくだけ過ぎてる感もあるが)
各人、心して読め!!!
渾身の収録作品全話講評逝ってみようか!!!
「ドイツ人部隊の憂鬱な軽騎兵」
英国のヨーク軽騎兵にドイツのサール地方やアルザス地方の青年が所属
しているという歴史的経緯が、正直言うて「?」。
本筋はこの作者らしい現実的で移り気な女心を活写して間断が無いものあり。
そこそこな好短編と言い得よう。
「三人の見知らぬ乗客」
これは「ミステリ」と言い得るかもしれぬ作。
婚礼の夜に訪れた3人の旅人の正体とは?
昔話風の語りが、サスペンスの盛り上げに逆に効果をあげている。
「帰らぬ人」
女性の微妙な嫉妬心を描いて見事な作だが、シビアなラストは特に印象的。
「いいえ、どなたもお見えになりませんよ」
この台詞の引用だけでも、ひょっとしたらネタばれやもしれぬ。

404 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/07/06(日) 08:07:06.53 ID:yVQOZQOX.net
「リール舞曲をひくフィドル弾き」
本作は、いろんな意味でヒロインを惑わす存在のフィドル弾きを悪魔の化身
とかすれば(示唆するだけでもOK、女の子は何処ともなく
悪魔に連れ去られたという解釈も有りとなる)ホラー足り得た作だが、
徹底リアル志向のハーディゆえ、そうはせじ。
「夢見る頃は過ぎても」
作家、シナリオライター、画家、音楽家、映画監督等々、
クリエイターなるものを志したことがある者には、ヒロイン(エラ・マーチミル)の心情は文字どおり「痛い」ものがあるとわかるはず。
クールな現実主義者であるヒロインの夫が遂にその疑心暗鬼に敗れる
ラストは、全体的に抑制されたユーモアが効いて陰惨な感はないが、
やはりバッドエンディングではある。
「変わりはてた男」
これもありきたりなハッピーエンディングとは無縁な作であった。
娘時代は軍人オタなモーンブリ夫人は未亡人としてその生涯をまっとう。
「グリーブ家のバーバラ」
横溝スレで犬神に部分的アイデア(有名なスケキヨマスク)を与えた作として
紹介されたことあり。
横溝御大や大乱歩が大好きな大谷崎が入れ込んだ作でもある。
今一歩踏み込めば十分にホラー足り得たという非常に面白い作、
規制なのだろうが、イラストのウィローズ(火災による変貌後)は
描写に忠実に描くなら、もっと悲惨でないと駄目でしょ。
ヒロインのバーバラとアップランドタワーズ伯爵の屈折した愛情関係
が印象的。
国と時代を超越して、こういう現代にも通じる天使足り得ない生身の
女性を書かせたらこの作者は正に超一流、ハーディは今読むと面白くない
とか抜かした輩は一体誰や?
「古代土塁での逢引き」
やや艶っぽいタイトルだが、これはおふざけ、ちゅーか、トマス流のユーモアか。
主人公の逢引きの相手とは遺跡発掘に情熱を傾ける老考古学者である。
深夜の発掘作業は書き方によってはホラー、鬼気迫るものさえあるだろうが、
あえて軽くゆく。

405 :名無しのオプ:2014/07/07(月) 06:40:20.98 ID:4wtVCtc3.net
書斎がモノホンのインテリだということがよくわかる書評だね。
普段は冗談交じりでも本気を出せばこういうものなんだよね。

406 :名無しのオプ:2014/07/07(月) 10:00:06.84 ID:bju+CFTo.net
書斎さんは、まだ本気は出してないと思うよ。ひまつぶしに軽く書き流してる感じだな。

407 :名無しのオプ:2014/07/07(月) 12:28:22.68 ID:4wtVCtc3.net
2ちゃん向けに優しく書いているのは確かだね。

408 :超電少年でつまつマン ◆VZ06MJxOCbt1 :2014/07/08(火) 18:14:14.00 ID:gARZJqAz.net
これで本気ざないって・・
もう頭がどうにかなりそうでつ・・!
完璧にしか見えないでつのに・・

409 :名無しのオプ:2014/07/08(火) 19:55:32.37 ID:uN90x1ej.net
書斎のレベルはヒマラヤよりも高いよ。

410 :名無しのオプ:2014/07/10(木) 14:34:14.39 ID:vg/Otbu3.net
国内編を立てましたのでこちらもよろしくお願いします。

http://peace.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1404970261/

411 :名無しのオプ:2014/07/10(木) 15:59:43.94 ID:J1NRMVBA.net
区分けは固定せず適当に使う方がよさそうですね。

412 :名無しのオプ:2014/07/10(木) 16:13:44.65 ID:l6t7NwhK.net
区分けできない脳足りんもいるからね、某書斎みたいな。

413 :名無しのオプ:2014/07/11(金) 08:26:59.53 ID:lwnIlEoe.net
またアンチによる稚拙な印象操作か

414 :名無しのオプ:2014/07/11(金) 09:42:42.50 ID:Ek9IgAD5.net
アンチ読書による稚拙な印象操作
http://peace.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1400224689/477-480

415 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/07/19(土) 20:48:37.39 ID:kk6d1etq.net
クリスチアナ・ブランド「自宅にて急逝」を読む。
「はなれわざ」「緑は危険」「ジェゼベルの死」「ジェミニー・クリケット事件」と代表作と称されるものは読んでいるが、描写が濃すぎて鼻につく感があり、
どうも好きになれない作家である。
ミステリとしての面白さもアガサに一歩譲るという感あり。
巨額な資産を有する被相続人=叔父の死を巡る相続人たちのドラマ、
本作もアガサならもっと会話文主体にすっきり、サクサクと書いたのではないかな。
ミステリ的には、離れにおける密室殺人トリック(ちゅーか、足跡トリック)が本作の目玉だが、バレエシューズ(トゥシューズだっけ)ネタでした。
(これなら簡単に消せる)、それなりに面白いものの小技感は拭えず。
推理の手がかり呈示も無いしね(先妻がバレエをやっていたことは書かれて
いるが、さり気なくシューズの件を記しておかないとNGでしょ)

416 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/08/01(金) 20:23:44.94 ID:jFixHSq5.net
「悪女パズル」パトリック・クェンティン(扶桑社)

再び休暇を貰ったピーター大尉はハリウッド女優として大人気の妻アイリスと共に大富豪ロレーヌの招待を受ける。同じく招待されていたのはいずれも離婚しようとしている3人の女性たち。
ロレーヌはその夫たちも招待して寄りを戻させようと試みるが意に反して険悪なムードになってしまう。
そして翌日の夜。カジノでピーターと踊っていた妻たちの一人が突如命を落とし、連続殺人が幕を開ける。

まだ日本は粘っている模様。本作はまた戻って本格。
いや、傑作だった!
これまでで随一かも。よく練られた凝ったプロットで伏線もしっかり。凶器とその消失トリックも良い。
探偵役が頼りないからかっちり余詰め出来なくて事件が勿体無かったけど(笑)。
中盤「ははーん。今となってはやな」とか独り合点した自分が恥ずかしい。
そして登場人物たちの人間ドラマが読ませるんだわ。ここはマンネリ打破のために重要。ちゃんと事件に繋がっているしね。
解説で言及されている通り合作の最大の成功例なのかも知れんね。まだ断言はできんが。

本作のアイリスは渋るピーターに無理やり探偵役を承知させたり彼の言いつけを守らず危険な中で独断専行したりと精神的に自立した女性としての萌芽を見せ始めており、
これは彼女が女優として大成し既に経済的に自立していることと無関係ではないのかも知れない。
とは言えこれを以て後の波瀾の兆しとみるのは牽強付会やね。てへぺろ。

417 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/08/01(金) 20:26:22.32 ID:jFixHSq5.net
「砂塵の町」マックス・ブランド(中央公論社)

ファムの町の鼻つまみ者ハリー・デストリーは列車強盗の濡れ衣を着せられ懲役10年の実刑を言い渡される。去り際ハリーは陪審員たちに復讐を誓う。
そして6年後、戻ってきたハリーは変わり果てた姿になっていた。かつての見る陰もなく弱々しい負け犬となった彼を人々は憐れみ嘲り、
ハリーの無実を信じて待っていた婚約者シャーリーすら愛想を尽かしてしまう。
一方元陪審員たちと強盗事件の真犯人とはハリーを亡き者にするべく陰謀を巡らせるのだった。

映画が有名な西部劇。西部小説を読むのは「賭博師ファロン」以来か?
作者は↑のルイス・ラムーアと並ぶ大家らしい。確かに話運びが達者で一気読みさせる力がある。
○○○とか、予め敵の数を設定しておくとか日本人にも親和性のあるストーリー展開で西部劇の中でも取っ付きやすい部類だと思う。
主人公をマッチョなヒーローとして描かず人間的に成長させていくのも読んで爽やかだ。それに引き替えヒロインは類型的な憾みがあるが……全体としてお薦め。

418 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/08/01(金) 20:30:08.52 ID:jFixHSq5.net
「シャトル防衛飛行隊 上・下」マーティン・ケイディン(早川書房)

グアンタナモから原爆4個を積んで飛び立った輸送機がフロリダ上空で何者かに襲われ積み荷を強奪された。
近郊にはスペースシャトル打ち上げを控えるケネディ宇宙センターがあり、世界中からVIPが集まる予定だ。
未曽有のテロを阻止すべくNASA保安主任ハドフはこんな時のために付近の飛行場に潜り込ませて航空ショーをやらせていた捜査官バーノンを呼び出し事件に当たらせる。

読みながらデビュー作かなと思っていたら日本語Wikipediaもある大家だったんですね〜。意外。
なぜデビュー作と思ったかですって?
まずキャラクター設定です。主人公はワイルドな色男でヒロインはナイスバディの絶世の美女、おまけに頭も切れるし体力もあるというアニメ的チートぶり
(ちなみに弟が目と足が不自由ってバーブ・ワイヤーみたい)。
次に長さです。一冊になるとまではいいませんが説明的なセリフや無駄なやりとりがいくつか目に付きました。
最後にストーリー展開のバランスの悪さが挙げられます。バーノンサイドとハドフサイドとのストーリーが同時進行していくのに、
ハドフばかり語られてなかなかバーノンのターンが来ないため冗長に感じられるのです。
そのバーノンサイドにしてもヒロインとそしてもう一人の金持ちイケメンパイロットとの三角関係を匂わせながらほぼ機能していません。
そもそもイケメンの出番自体が極端に少なく、メインプロットにまで悪い影響をもたらしていると思います。

そして最大の不満はヒロインの濡れ場がないことです!(笑)。
主人公とのセックスを焦らしておいて今やるか→やらない、さあやるか→やらないではフラストレーションの持って行き場がありません。入浴シーンとか出して期待させといてですからね。
その癖脇役のブサデブの濡れ場(未遂)はあるんです(笑)。

あ、あとグロいシーンが2箇所あるので注意して下さい。上記のシーン以外でね(笑)。

419 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/08/01(金) 20:32:36.24 ID:jFixHSq5.net
「青銅の斧」ジェフリー・ロード(東京創元社)

イギリス特別秘密情報部の腕利きリチャードは休暇を婚約者と過ごそうとしていた矢先上司Jに呼び出される。
天才科学者レイトン博士の発明したコンピューターの実験台にされたリチャードはバグによりパラレルワールドへ飛ばされてしまった!
異世界を舞台にリチャードの冒険が始まる。

創元がB級アクションシリーズをドバドバ出してた頃の一冊ですね。あらすじ読んで新ジャンル「バーバリアン・スパイ」ものか!?
とwktkしたんですが、読み終わるとただのバーバリアンものでした。ここは主人公の職業をもっと活かして欲しかったですね。勿体無い。
解説によると後にKGBとかも関わってくるみたいなんですが、翻訳は途中でストップしているからな……。行き先は毎回変わるそうです。

なお、本シリーズの特徴の一つとしてエロ描写が挙げられます。本作にも69シーンがありますが、こういうのは舞台に合っていると言えそうです。

420 :名無しのオプ:2014/08/01(金) 21:35:10.57 ID:3xxn1GTO.net
>>419
たぶん途中の何冊かを読んだけど
どれもたいして変わらない
SFっぽい設定だけど、そういうのを求めて読むとがっかりするね

421 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/08/02(土) 06:22:31.36 ID:YYuNKeJM.net
マーガレット・ミラー「殺す風」を読む。
昔は代表作として挙げられることが多かった「鉄の門」の読後感がいまいち
だったゆえ、以後は手を出しかねていた閨秀作家の全盛期に書かれた
まじもんの代表作のひとつ、最高傑作に推す評も存する作である。
しかし、感想はやはり「いまいち」でした。
友人間の夫婦における浮気、妊娠、失踪騒動ってのが、地味に延々と展開
してゆく感じ、平易な会話文が多く読む負担は少ないものの、
米への移住後のお話って手紙だけのものなので、普通レベルの
ミステリ読みなら、「ああ〜嘘臭い。何かあるな」とわかってしまうんだな。
それぞれに弱点を持つ人間像をビビッドに描いたとかは言えるかもしれんが、
俺が読みたいのは「ミステリ」であるわけだし。
最後の最後にアガサのナイル(夫婦で仕掛けたトリック)的展開だが、
やはりそうか的印象しか残らず。
問題の夫婦(というか正式には元だが)を探し出す展開も広大な米という点を
考慮すると、少し無理筋と言わざるを得ないものあり。

422 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/08/08(金) 18:53:28.72 ID:cuEFMhlN.net
「悪魔パズル」パトリック・クェンティン(論創社)

戦争が終わり海軍を除隊したピーター。日本へ米軍慰問に旅立つアイリスと空港で別れて……気が付くと見知らぬ部屋のベッドの上。
何も思い出せないでピーターの側には母だと言う女がいて「ゴーディ」と呼び掛けてきた。やがて“妹”や“妻”も現れる。彼の周りでは一体何が起きているのか!?

シリーズ異色作です。記憶喪失+監禁というのも一つのパターンではありますが、あまり作例はないように思います
(ダール「36時間」やトーマ「悪魔のようなあなた」とか? 「仮面の情事」もかな?)。ついでに言えば性的描写もちと多め(笑)。
一般に、設定が奇抜であればあるほど真相は見当が付きやすくなるというジレンマがあるかと思うのですが、本作はそこをなかなか巧くクリアしています。
他の作家ならそのジレンマを受け入れて過程で魅せるサスペンスとして仕上げるところを、クェンティンはきっちり本格をブレンドしてきます。流石の合作です。

序盤から想像させる方向へ一応は向かうのですが、途中でひねりが入って飽きさせません。こういうストーリー展開が出来るのは謎を大事にしているからだし、
もう一つピーターというキャラクターの存在があるからとも言えるでしょう。
ピーターは「推理出来ない探偵役」であるため、本シリーズはしばしば解決部分がサスペンス的になってしまいます(個人的にはそれもまた良しです)が、
その頼りなさ故にミステリーとして深みを持たせることも可能となるのだと思います。

それにしても記憶喪失とは言えあんな感情を抱くとは、ピーター大丈夫でしょうか(切なさも残ります)? ラストのやりとりも意味深に思えてきます。。。

423 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/08/08(金) 18:59:58.96 ID:cuEFMhlN.net
「巡礼者パズル」パトリック・クェンティン(論創社)

夫婦間格差からアイリスと不和になったピーターはしばしの別居期間の後、メキシコにいるアイリスの元へ赴いた。
しかし、アイリスは現地で知り合った妻ある男マーティンと恋に落ち彼の元へ去っていく。傷心のピーターはマーティンの妹マリエッタと知り合う。
マーティンの妻サリーは離婚を拒んでマーティンを脅迫しており、ピーターはアイリスに彼女の説得を頼まれるのだが、会いに行ったときサリーは死んでいた。
思い断ちがたいアイリスとマリエッタのためピーターは事件に巻き込まれていく。

パズルシリーズ最終作。とは言えダルース夫妻ものはまだ続くのでこれで安心せずあと3冊は頼むぞ論創元!
さて個人的に大好物な展開な訳で、これをベストコンディションで読みたいがために「迷走パズル」出るまで手を付かなかったみたいなとこあるんで。

とまれ好物は後回しの原則に従いミステリー的なことから。結論から言うと犯人判った。手掛かりは2つ。
a.登場人物表 b.**ページ
トハイエ脇の謎――過去のネタやあの人の狙い――と、そしてある意味メインの謎というか問題で引っ張られるのでモウマンタイです。

そこでNTRですよ。いやあ驚くね。クラシックな本格ミステリでこんなことある? 空前絶後じゃね?
ネタバレされてる今だからいいけど、当時の読者の衝撃は凄かったんじゃないかな。だってトミタペとかニクノラとかが比較対象でしょ?
まさかシリーズキャラクターそれもヒロインがというね。それでも読者は期待するでしょ? 何かあるんじゃないかって。ないからね。ガチのベタボレで夫の前で不滅の愛を誓う始末。カプ厨死亡フラグ。
おまけに自分らがくっつくために向こうの妻と話付けてと電話や手紙で頼んでくるんだからね。

(続)

424 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/08/08(金) 19:01:38.44 ID:cuEFMhlN.net
(承前)

とこう書くと糞ビッチだが、実際読むとアイリスは終始衰弱気味で暗い描写が多くあまり攻撃的でもないし、ピーターにも新しい女性が登場するのでそこまで悲哀漂う感じはない。
それよりも特筆すべきはピーターの純愛ぶりというかお人好しぶりというかそれらを内包した強さ。いや大した男だよ。
アイリスも初登場から比べると強くなった。評価は保留しておく。しかし今の読者は不幸にもこの先何があるか知っている。その時の態度次第じゃボロクソに叩いてやるからな。覚悟してろよ。

追伸 解説の飯城はあけすけな物言いで面白い部分もあるが、当時の読者はそんな期待しないだろうし、あのラストからして意外ではないと思うぞ。

425 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/08/09(土) 09:26:16.99 ID:wb0rR/Qg.net
マーガレット・ミラー「狙った獣」を読む。
結局、ヒロインがサイコでした。(そして自死)
という今読めばありきたりなオチ。
まあ、50年代の作品としては斬新だったんでしょうな。
「殺す風」と並んでマーガレットの代表作・傑作と称される作だが、
これにてこの閨秀作家の作はアウトでOKかなという感あり。

426 :名無しのオプ:2014/08/09(土) 10:53:56.57 ID:wlieWb9Z.net
読後感のウザさに比べて、書斎のなんとシンプルなことよ。
これこそ大事ですわな。

427 :名無しのオプ:2014/08/09(土) 11:05:32.52 ID:kwSGuAwi.net
土曜の朝なのに国内編を入れて本を2冊読んだというあからさまに不自然な設定w

時間帯も考えずに土曜だから休日だから2冊読めるんだというんだから笑えるw

428 :名無しのオプ:2014/08/09(土) 11:50:18.95 ID:o0KmJKw/.net
いろんなとこでなりふり構わず犯人だけ書いて荒しまわるようになっちゃったのな
ああ惨めなもんだね

429 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/08/13(水) 23:47:21.70 ID:yWj11/gp.net
「ドラゴンの棲む川」(早川書房)

元森林管理官で今は植林で生計を立てているジョージはある時旧友の生物学者トムの元を訪ねるが彼は殺されていた。トムの足跡を辿ってとある渓谷に入ったジョージは新種のサンショウウオを発見する。
そこは開発を巡り対立が続いている場所だった。
ジョージはトムの恋人カーラを捜し出し話を聞こうとするのだが……。

ドラゴンてサンショウウオのことね。自然文学作家の初ミステリーだがよく書けている。
自らが得意なフィールドに持ち込んではいるものの、それだけじゃないところに感心した。ここは重要で、エンタメ作家に脱皮できるかどうかの分水嶺だと思う。そういう意味ではまず合格。
ただしやっぱりこなれてない印象は全体的にある。風景描写書きすぎじゃないかとか。ヒロインの描写も良いんだけどやり過ぎ。これで押し通したら存在感が減る。

ま、第二作に期待するか。

430 :名無しのオプ:2014/08/14(木) 17:28:21.27 ID:BdxI0W8g.net
イラストレーターで収入が少ないからと30代後半で漫画家になろうとする、ひきこもりのバカ発見。
足立区に住んでいるそうだ
http://inumenken.blog.jp/archives/7002197.html

431 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/08/20(水) 21:30:19.98 ID:P7gAy+n4.net
「奇跡の巡洋艦」ダグラス・リーマン(早川書房)

第二次世界大戦末期、ドイツの巡洋艦プリンツ・ルイトポルト号は“鉄の海賊”の異名をとるヘヒラー艦長の元で縦横無尽の働きをして米英から一目置かれていた。
ヘヒラーは自分に隔意を持つ副長や狭量な上官に囲まれながらも戦火を潜り抜け運命の女エリカとの愛も育んでいく。
しかし、ドイツの敗色が濃厚になっていき大西洋で輸送船団の撃滅を図っていたプリンツ・ルイトポルト号の前にイギリスの巡洋艦ウィルトシャー号が立ちはだかる!

ドイツ人が主人公の第二次大戦ものって珍しいよね。作者はボライソーの人らしいが未読。敵をどう描くのか気になったが、主人公はナチ党員ではなく、機関長はユダヤ人政策に批判的だったりする。
更にスペイン内戦を借りて戦後レジスタンスによる女性への暴行を批判したりもしている。

アレグザンダー・フラートンとの違いは陸の描写があまりなく海上メインということ。ただヘヒラーのロマンスや妻に対する葛藤を始め人間ドラマはちゃんと描かれておりマニアのための小説ではない。
でも下士官見習いと幼馴染みとのエピソードが消化不良だったのが残念。

敗者の物語だからどう締めるのかハラハラしていたがどうも自分には……。

432 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/08/20(水) 21:32:50.28 ID:P7gAy+n4.net
「呪いの訪問者 トム・マーロウの奇妙な事件簿3」クリス・プリーストリー(ポプラ社)

トムはハーカー博士と共に博士の旧友エイブラハムを訪ねてノーフォークへ行くことに。彼は七王国時代の王レッドウルフの墓を調べていた。
やがて二人たどり着いたのは荒涼たる入江のほかに何もない場所。しかも館に到着早々葬式帰りの人々に出会う。メイドが入江の底なし沼に埋まっていたというのだ。
エイブラハムの美しい妻スザンナに惹かれていくトムだが、メイドは呪いにより墓の番人に殺されたのではないかとの噂を聞く。そして二人目の犠牲者が……。

シリーズ最終作だそうでちょっと残念。正直大人の読書に耐えうる出来ではないがそれでもね。
今回も呪いの墓守、不気味な異端者、謎の巨人、凶悪な秘密結社と道具立てはばっちりながら犯人はちっとも意外ではない。

新シリーズを少し楽しみに待とう。

433 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/08/20(水) 21:37:26.05 ID:P7gAy+n4.net
「ホートン・ミア館の怖い話」クリス・プリーストリー(理論社)

母親が亡くなって天涯孤独の身となった少年マイケル。葬儀のあと、弁護士のジャーウッドから後見人のスティーヴン卿が会いたがっていると聞かされ嫌々ながら卿の住むホートン・ミア館へ行くことになった。
馬車に揺られまもなく館へ着こうという時、マイケルは窓の外に女の姿を見る。薄着でずぶ濡れのその女はすぐに消えてしまった。
館で陰気な卿と美しい彼の妹シャーロットに迎えられたマイケルだが、晩餐の席でどこからともなく不気味な音が聞こえてくる。周りには聞こえていないようで……。
この館には一体何が隠されているのか?

ワンパターンやなこの人。続けて読むときついわ。難易度の問題じゃなくて、これは何とかして欲しい。
あと本作に限って言えば話の畳み方が下手。終盤グダグダやもん。この人ホラーは短編じゃなきゃ無理みたいやね。

でも使用人たちは皆いいキャラしてる。イーディス萌え(笑)。

434 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/08/20(水) 21:39:02.30 ID:P7gAy+n4.net
「戦慄の候補者」トニー・マコーレイ(新潮社)

ベルリンで旧ナチ幹部の隠し金の行方を追っていたアメリカ関税局調査官ラシターは調査を続ける内、民主党の大統領候補者の一人ヴァンデンバーグに突き当たる。
彼は別居中の妻マリアンが秘書を務めている人物だった。
一方そのヴァンデンバーグは過去の過ちから強請られ、ある決断を迫られていた。大統領となるため形振り構わず策略を巡らせる……。

作曲家のデビュー作だそうで、筆力はあるのだが、敵役のキャラクターと構成に難がある。

まず前者。「粛清選挙」ほどキチガイでも「凍りつく心臓」ほどクレバーでもない。悪党ではあるんだけど、妙に人間臭くて迫力不足なんだよね。
後半フットワークが軽すぎるのも嘘臭く感じてしまう。そこはエンタメだからという見方もあろうが。

そして後者。ロシターパートとヴァンデンバーグパートとが交互に進行していくんだけども、両者がなかなか交わらないのがもどかしくて冗長。
登場人物が被っていて人間関係も判っているのにこれはダメでしょう。もっと早い段階で敵を明確にして対決を描くべきだったと思う。
クライマックスの慌ただしい展開は盛り上がりに欠ける。

他見所としてはロシターと二人の女性―現地妻エリカとマリアン―との関係など。マリアンも妻子ある男性と不倫していておまけにヴァンデンバーグと……。

〆は支持する。

435 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/01(月) 00:10:58.33 ID:I0Q2tBvG.net
古書店にて纏まったミステリマガジンをゲット、
掲載されたフィクションを中心に順次内容紹介してゆきたく思う。
なお、2014年8月号の乱歩特集号に関する論考は、大乱歩スレに
掲載した。
「ミステリマガジン2013年12月号 
特集 あまちゃんとローカル・ミステリ」
今読むと、ミスマガらしからぬ流行に乗じた少し無理やり気味な特集企画
であったと言い得ようか。
そもそも、横溝御大の代表作は殆どがローカル・ミステリだし、
海外ではアガサもジョンも多数書いてるわな。
何を今更という感を抱かせてしまう。
「犬の生活」  マイクル・イネス
短い作だが、断崖を利用した入れ替わり(犯人とガイシャ)トリックで
さらっと読ませる。
ローカルな地形を作品中に上手く取り入れ、コンパクトに纏めた
英国らしいローカル・ミステリではある。
「都会のブロンド、田舎のブロンド」 パトリック・クェンティン
室内での謎解きなので、特にローカルな舞台である必要性はないような。
いわゆる口紅ネタです。余談だが、イラストが恐過ぎ(w
「欠け落ち」 三沢陽一
姉妹入れ替りトリック。前記したイネス作品とは異なるパターンとはいえ、
もう少し違うテーストのものをチョイスして欲しかった。
特集の趣旨からローカル色を優先か。
「ぶちかませ!」 エルモア・レナード
本号のもうひとつの特集「追悼エルモア・レナード」のため掲載
された中編。
途中からかなり見えるラストとはいえ、
旧友関係にある保安官とレイシストの犯罪者の対決を
バイオレンスとアクション満載で一気に読ませはする。
レナード作品らしい言わば現代西部小説ですな。
ゆえに、ハードボイルド小説(西部小説の後継)ではあっても、
ミステリではないでしょ。

436 :名無しのオプ:2014/09/01(月) 00:19:01.78 ID:lFt16+Z4.net
>>433
ヤングアダルト向けではあるけど
この人のホラー短編はけっこう良いよね
長編は微妙なのか

437 :名無しのオプ:2014/09/01(月) 05:37:54.17 ID:paCkj6Sf.net
このMMでは読む人はいないだろうね。
部数を落としていくわけだわ。

書斎のような人が陣頭指揮を取るといいんだが、立場が違いすぎるのがネックか。

438 :名無しのオプ:2014/09/01(月) 07:55:52.71 ID:VqVGL7lo.net
そりゃど素人の書斎魔神なんか指揮をとる立場とはほど遠いわな
当たり前のことをいちいち書くなバカ

439 :名無しのオプ:2014/09/01(月) 08:15:33.75 ID:paCkj6Sf.net
オーナークラスとパーティーしたりクルーザーに乗ったり、だからなあ。
編集長ごときに口を出すのは憚られると感じるのも無理はない。

440 :名無しのオプ:2014/09/01(月) 08:16:38.01 ID:wZVoG4pm.net
っていう無職の妄想

441 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/09/04(木) 22:02:35.42 ID:ePfBeB/o.net
「骨董屋探偵の事件簿」サックス・ローマー(東京創元社)

骨董屋を営む奇妙な老人モリス・クロウが美しい娘イシスを従え奇怪な事件の数々を解き明かすという短編集。

ライヴァルたちですね。クロウの探偵法は事件現場で寝るというユニークなもので、そうやって残留思念を読み取るのだそうです。
本作の特徴としてはこの探偵法ともう一つ、イシスの存在が挙げられます。絶世の美女で豪華な衣服を身に付け父親を完璧に補佐する彼女のキャラクターはライヴァルたちの中でも異色ではないでしょうか?
それ故たまに取り乱す描写にグッときたり(笑)。

ベストは「ギリシャの間の悲劇」でしょうか。警備員が次々と同じ部屋で変死を遂げるという話で、
本格としてみると杜撰ですが道具立て含め何とも言えない異様なムードが漂っていてこのシリーズの本質を端的に表すエピソードだと思います。
次点は「象牙の彫像」に。一瞬目を離した隙に女神の像が消え失せるというもの。バカミスぽいですが最も印象的なトリック。今は…ですけど。
トリックで言えば「ブルー・ラージャ」「グレンジ館の呪い」なども。後者はクロウが最大のピンチに陥りイシスもガクブルでした。

この流れで「神秘博士アストロの事件簿」も出しChinaよ。

442 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/09/04(木) 22:04:21.12 ID:ePfBeB/o.net
「殺し屋はサルトルが好き」スティーヴ・ニックマイヤー(ごま書房)

私立探偵クランマーと助手マネーリのコンビはある女性からの依頼でオクラホマの宝石商テイバー殺人事件の調査をすることになる。背景には新市庁舎建設のための補助金が絡んでいるらしい。
現地に乗り込んだ二人は身分を偽って関係者に近づいていく。
一方元警官の殺し屋ストレートは相棒コーディと共にテイバーを仕留めるが、何者かに目撃されてしまう。
かくして探偵と殺し屋とは互いに知る由もなく解決に向けて競争するはめになるのだった。

ゴマノベルスなんてもんがあったんですね。
内容は軽ハードボイルドです。主役二人のゴキゲンなやりとりとちょっぴりのお色気、そして殺し屋二人のどこかユーモラスなやりとりなどが見所でしょうか。
謎はそんなにない他愛もない話だなと思いつつ読んでいましたがラストにちと風谷がいまして。

個人的にはお色気をもうちょっと頑張って欲しかったですね。
ナイスバディの被害者の愛人トレイシーや被害者の妻で一時間かけても舐めきれない爆乳の持ち主デニーズを始め、探偵事務所の秘書シンディや宝石店店員のスレンダー美女マーサと
美女目白押しなのに描写が少なめなのが残念でした。

443 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/09/04(木) 22:08:36.78 ID:ePfBeB/o.net
「ヴァチカンへの密使」デニス・ジョーンズ(新潮社)

第二次世界大戦前夜。ナチスSD(親衛隊保安部)少佐シュターケは部長ハイトリヒの密命を帯びてユダヤ人になりすましモサドの助けを借りてパレスチナへ向かった。
一方イギリスの監視の目を盗んでユダヤ人のパレスチナへの亡命を進めていたモサドの工作員ロッシはアメリカからきたユダヤ人協会員ジュリアと知り合う。
やがて巡り会った3人はそれぞれの思惑を胸に秘め共にローマへ旅立つ。そこにはヨーロッパの未来がかかっていた……。

戦争ものナチものシオニストもの。色々混ざってる。というかモサドって難民支援組織だったのね。その後イスラエルの情報機関になった訳か。

まず不満を先に言うと裏表紙のあらすじの展開になるまでが遅い!
全体のまとまりを考えた場合、前フリに尺取りすぎなのでそこは切ってローマ行き以降をたっぷり描くべきだったんじゃないかと。
本書の場合あらすじの方を「ネタバレし過ぎだ!」とはならない。

でもそんなことを補えるだけの魅力が本作にはある。主人公の一人シュターケのアンチ・ヒーローぶりがそれだ。
共感は出来ないけれど、彼の強烈なキャラクターは読者にある種の依存性を齎すと思う。色んな目に遭いながらもしぶとく巻き返そうとする姿は半沢直樹チックで読ませる。
後の二人はキャラ立ちがイマイチだが、伯爵夫人の高級娼婦ソフィアという存在感があってゾクゾクさせてくれる脇役もいる。
お薦め。

444 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/09/04(木) 22:09:29.34 ID:ePfBeB/o.net
「ボヘミアン・ハート」ジェイムズ・ダレッサンドロ(早川書房)

元警官で私立探偵事務所を営むフェイガンの新しい依頼人は夫殺しの容疑をかけられた美女コリーン。
被害者の不動産王ファラガットはフェイガンの宿敵で彼を警察から追放した人物であった。
報酬として提示されたファラガットの日記を手に入れるため調査に乗り出したフェイガンだったが、蠱惑的なコリーンの虜になっていく。

脚本家のデビュー作らしいけど、プロット自体はオーソドックスなハードボイルド。古色蒼然と言ってもいい。
しかし筆力はあるので詰まらなくはない。些か退屈ではあったがね。
単に探偵と被害者というだけじゃなく両家の争いという血の宿命地味た設定を盛り込んだのは少なくとも依頼人と寝るだけの関係性を醸造している点ではプラスと言えるね(笑)。

445 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/09/04(木) 22:10:44.05 ID:ePfBeB/o.net
「砕けちる鏡」ジョン・バーデット(早川書房)

新鋭の法廷弁護士ジェームズの人生はオリヴァー・サーストの依頼を受けた瞬間に大きく変わり始めた。
美人だが気紛れな恋人デイジーは激しさを内に秘めたオリヴァーに惹かれていき、ジェームズもまた不安や抵抗を感じながらも彼を受け入れてしまう。
だがやがて破局が訪れ、11年後、殺人が起こる。そこに隠された真実とは――。

表紙はジェニファー・コネリー?
ありがちと言えばありがちな筋立てであります。あらすじ読んだだけでも「ゴールドコースト」とか「ビッグ・ピクチャー」とかが思い浮かびます。
本作は三部構成になっており、三人の出会いと別れとを描く第二部を現在の殺人事件パートで挟んでいます。
読み応えがあるのはやはり第二部で、彼らの心の動きや破局に至る過程などがそれなりの説得力を持って描かれています。
個人的にはあんなに奔放だったヒロインでもあんなに理由付けがいるという点に納得させられました。

そしてこういうタイプの小説には意外なことにサプライズも仕掛けられていまして、ちと驚きました。
ただ伏線が弱めなのが残念な点で、悪徳警官を有効活用すればもっとスマートに驚けたのにと思います。

446 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/09/04(木) 22:16:38.81 ID:ePfBeB/o.net
「シェルゲーム」ダグラス・ターマン(早川書房)

インディアンとメキシコとの混血児プロキャシーは義理の兄アルバレスの招きに応じてキューバへと渡った。
その地でアルバレスの恋人アリシアと出逢い燃えるような恋に落ちる。やがて吹き荒れる動乱の嵐の中で反革命派に身を投じた二人だったが、
ある時プロキャシーの元にアリシアが捕まり処刑されたとの知らせが届く。
それから数年後、ある情報を携えてアメリカへ脱出しようとしたプロキャシーは追っ手から驚愕の事実を聞かされた。
死んだはずのアリシアが生きていて、今ではカストロの右腕となったアルバレスの愛人となっているというのだ。
二人に会うため必ず帰ってくると誓ったプロキャシーはCIAの手先となってキューバに再潜入を図るのだった。

大著である。二段組で500ページ! 何度か本を閉じてうへえとなりながら指入れたまま寝ながらやっとこさ読んだ。
本作はキューバ危機に焦点を合わせソ連の陰謀を背景に男女の愛憎を描いた冒険小説であるが、3人の視点で進行していくため、男女の部分はすぐに読者に真相が明かされてしまう。
これは興を削ぐなと思ったのだが、途中で過程を楽しませるための措置かもと思い直し、読み終える頃になってやっぱり冗長になったと思い直した。

部分的には良いところもあるのだが―ハンググライダーでのキューバ潜入とか検問突破とか―この長い物語を牽引するための縦糸が不足していたような印象。

447 :名無しのオプ:2014/09/05(金) 11:17:53.50 ID:s7RY6lej.net
誰も読まない連続投稿はよそでやって。

448 :名無しのオプ:2014/09/05(金) 12:54:19.99 ID:BGsIjlJe.net
誰もが読むスレに沿った投稿>誰も読まないスレに沿った投稿>>>447

449 :名無しのオプ:2014/09/06(土) 22:54:09.33 ID:r9SMEp03.net
>>441
探偵の設定がオカルトな割に、意外とミステリ部分は普通なんだよね
良くも悪くも大して驚きがないというか
中では「ト短調の和音」と「イシスのヴェール」が好きだな

450 :名無しのオプ:2014/09/06(土) 23:01:17.37 ID:u/JNKD44.net
読後感との会話は禁止とする。
これは命令と心得よ。

451 :名無しのオプ:2014/09/07(日) 00:14:34.88 ID:w/igXS3p.net
『閘門の足跡』ロナルド・A・ノックス

ノックスの十戒で有名な著者のシリーズ探偵マイルズ・ブリードンもの第二作目

あの『陸橋殺人事件』の作者の作品だけあって、捻くれた内容の作品
起伏は少なくノンビリとした物語進行だが、『陸橋殺人事件』と比べて次々と事態が展開していくので
割かし飽きずに読める
マイルズとその妻アンジェラのキャラも立ってて、登場人物の掛け合いも楽しい

ミステリーとして見た場合、なかなか面白い事をやってるんだが、
真相が解明される前に枝葉の部分の謎をほとんどネタ明かししてしまったせいで真相が読めやすくサプライズ感に欠けるのは残念
それでも『陸橋殺人事件』と比べたら真相解明でカタルシスを感じるようにできていて、最後まで読んでガッカリしたなんて事はなかった

452 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/13(土) 11:09:32.36 ID:cx5szf6O.net
ルイ・C・トーマ「死のミストラル」を読む。
ポケミスでの刊行当時から気にかかっていたフランス・サスペンス・ミステリ。
今回、縁あってやっと読了した次第。
タイトルに冠されたミストラルは高校での地理履修者には懐かしいワード
かもなー。
フランスのミステリだが、奇妙な味わいのものではなく、南仏を舞台にした
典型的なムーディなサスペンスものである。
妻の浮気(後半に判明)、自動車事故を契機に殺人(実態は過失致死ではあるが)に発展し、
自滅してゆく若夫婦・・・
主人公の夫妻よりも脇に魅力的で立ったキャラが目立つ作、
幼馴染でやり手のアンティークショップ女店主、彼女の弟で明朗過ぎる大食漢の青年、そしてドーヴァー警部かおなピザな警視(作品の雰囲気に沿わない
ユーモラスな存在だが、全く活躍しない)等々、
作品の出来そのものは、皮肉な死(というか死に方)によるエンドまで、
一応は読ませる程度かな。
この作者のものでは「悪魔のようなあなた」というエロい映画化作品を見た
ことがあるが、原作準拠とすれば、タイトルからしてボワロー&ナルスジャック風なこちらの方が出来は上かもしれぬ。

453 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/13(土) 11:10:16.85 ID:cx5szf6O.net
ジョナサン・ラティマー「モルグの女」を読む。
本作も長年気にかかっていた作、「幻の女」と同じネタの「処刑六日前」と
並ぶこの作者の代表作。
本邦では「処刑・・・」はジュブナイル化されたが、本作は設定、展開共に
エロ有りで無理ですな(w
モルグから消えた女の死体をめぐる騒動の顛末、カーター・ブラウンとか好きな
向きには推したい軽ハードボイルドだが、
ゆえに翻訳も名調子な田中コミさんだったらなあ・・と思わずに
いられぬものあり。
妙に直訳調で丁寧過ぎ、ぎこちない面が感じられるのである。

454 :名無しのオプ:2014/09/13(土) 12:32:20.31 ID:dbklC84X.net
書斎の書評は本当に読む気にさせてもらえるんだよね。
単なる自己満足の読後感との大きな違い。

455 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/14(日) 13:15:05.42 ID:xtP5t1/2.net
トマス・フラナガン「アデスタを吹く冷たい風」
文庫化されていないこともあってか、人気のポケミス作品だが、
表題作を読んだ限りでは、過大評価という感を否めないものあり。
お宝=武器は看視哨舎の床下、この手のトリックもありがちだわな。
その他の収録作品に関しても簡単に触れておくこととする。
・「獅子のたてがみ」
テナント少佐の陰謀が冴え渡りそれなりに読ませる作。
不義者を撃て!
・「良心の問題」
ナチスねた。ミステリ的にはガイシャと犯人の入れ替わりトリックである。
・「国のしきたり」
麻薬密輸の黒幕は旅団長。
テナント少佐もの最終話ではあるが、まあ、普通な謎解きミステリ。
・「もし君が陪審員なら」
サイコホラー風なオチ。やはり犯人であったかというありがちなお話。
・「うまくいったようだね」
まんまと女の罠にはまる弁護士とか、オチが見える凡作。
・「玉を懐にて罪あり」
冒頭の訳註がネタばれ気味なのが残念。
大公からの使者の正体がマキアヴェリというのは最後の1行にあって
こそ効いて来るものかと思う。

456 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/14(日) 13:15:56.20 ID:xtP5t1/2.net
ウィリアム・P・マッギヴァ―ン「緊急深夜版」を読む。
警官もの十八番なこの作者が新聞記者(いかにもブンヤという形容が
ふさわしいアクティヴさ)を主人公にした異色作にして代表作。
市長選候補者の冤罪事件を契機に市政の腐敗に敢然と挑む
新聞記者サム・ターレル、
仲間のブンヤのメンツも面白い個性派揃いだが、
集団捜査(でなく本作では活動か)を描く作家でないので、
サムの一人舞台的展開になるのは少し残念。
(この作家の警官を主人公にした諸作も同様だが、組織の中に生きる個人
を描いたとは言い得る)
市営駐車場設置委員会を利用した不正な土地買収というネタは、
法制度の違いもあってわかり難い面もあるが、社会派と称されるに
ふさわしいハードなテーマではあり、
敬愛していた上司の裏切り、そしてその死を伴う和解と終盤にかけて
人情話風になって来るのが俺好みには非ず、
マッギヴァ―ンはハードボイルド作家そのものな人ではないから仕方ない
かもしれぬが。(悪い意味でなく亜流、傍流の系統かと思う)

457 :名無しのオプ:2014/09/14(日) 15:55:30.29 ID:q1ktgWkf.net
これぞ論考だねえ。

458 :名無しのオプ:2014/09/14(日) 17:03:52.59 ID:2reJ4hJf.net
うむ

459 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/15(月) 12:16:32.13 ID:rYacL798.net
エリック・アンブラー「武器の道」を読む。
シンガポールの密林に隠された共産ゲリラの武器、
バス会社経営を夢見る(この動機からしてこの手の作では何とも異色)
ゴム園勤務のインド人青年は武器売却を意図し、
華僑の企業家にアプローチする・・
政情不安な40年代東南アジアを舞台にした作だがスパイ小説ではなく、
(スパイは出てきそうで出て来ない)、
アンブラー作品にありがちな巻き込まれ型の冒険ものでもない
(武器売買に絡む初老の米人夫妻はむしろ積極的)等々、
この作者にしては異色作だが、HM文庫の早期ラインナップに入っただけ
あって、絵に描いたような悪人(例えばデミトリオスの如き)も
正義の味方も登場せず、地味ながら非常にリアルなスリル溢れる作、
舞台を中東やアフリカに変えれば今でも通用するストーリーではなかろうか。
先日付小切手や約手を駆使した入念な武器売買契約などは非常に読ませるもの
があり、近年の海外エンタメでは見かけなくなった読み応えあるオトナの
エンタメと言い得よう。
序盤で米人夫妻と親しくなる船客のうるさ方中年婦人が、後半は全く物語に
絡まず、(夫妻が下船し武器売却に関わる因とはなったとは言えるが)、
フェードアウト。意外な感もあるが、創り過ぎない展開で良しと言い得る。

460 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/15(月) 12:17:08.21 ID:rYacL798.net
モーラ・ジョス「夢の欠片」を読む。
10年ほど前に刊行されたポケミス。
当時はこんなタルい感じのダークな作品も受け入れられる余地があった
(と思われかな)わけです。
たまたま他人のマナーハウスに集った孤独な3人(留守番係の天涯孤独な老女、
詐欺、窃盗犯罪を繰り返す無職中年男、未婚の母となった若い娘)その行く末
(全滅エンド)は見えてしまうわな。
娘がベビーシッターとして預かった他人の赤さんまで道連れ(集団無理心中)ってのは意外だったけど。
ここに至る顛末を情景描写、登場キャラの過去等をまじえて詳細に書き込んでゆく、いかにも近年の英国ミステリらしい作、喩えていえば、
謎解き要素が弱いP・D、テンポがユルユルなレンデルと言うたところか。
ゆえに、あえてミステリにする必要があったか否かという疑問を感じざるを得ないものもある。
前半に登場した牧師(中年男の窃盗の被害者)が偶然にも本筋に絡んで来て
(預かっている赤さんの祖父だった!)殺人被害者となったりなどという
無理筋やらんでも済んだろうに。
シルヴァー・ダガー賞受賞作とはいえ、いまだ文庫化されず、シリーズものも
書いている作者とのことだが、邦訳も本作のみというのは、出来を見れば仕方
ないという感あり。

461 :名無しのオプ:2014/09/15(月) 13:11:34.04 ID:JhDLrr+l.net
本当に素晴らしい論考だねえ。

462 :名無しのオプ:2014/09/15(月) 16:45:07.82 ID:PY1vl3sl.net
昭和こいるのごとき投げやりな相槌をうつ書斎支持者w

463 :名無しのオプ:2014/09/16(火) 13:41:53.11 ID:cwrjoK7U.net
年配のヲタが書斎に粘着して荒らしているのはみっともないな。

464 :名無しのオプ:2014/09/17(水) 00:06:10.86 ID:+VU0ByDw.net
などとほざく老人の書斎w

465 :名無しのオプ:2014/09/17(水) 00:19:04.00 ID:y+EB/miC.net
論考に対するイチャモンは勲章
書斎へのストークは有名税

466 :名無しのオプ:2014/09/17(水) 00:54:26.24 ID:+VU0ByDw.net
その 勲 章 w を剥奪しようとするのが自称書斎支持者w

467 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/09/18(木) 20:58:38.96 ID:cInZnbTl.net
「ザ・スクープ」A・クリスティ/F・W・クロフツ(中央公論社)

英国黄金時代の作家たちによるリレー・ミステリを二作収録した中編集。
リレー・ミステリは「漂う提督」以来二冊目。

表題作はバンガローで起きた人妻殺人事件を探る新聞記者を描いた話で執筆陣はセイヤーズ、クリスティー、ベントリー、バークリー、クロフツ、クレメンス・デインの六名で各人二章ずつ担当している。
事前に打ち合わせして書き上げられたものらしいが、正直本格というよりサスペンスでフーダニットが安易過ぎ。
あと犯人の行動に二つばかり余計な点がある。バークリーとデインは何考えてたんだ? てかデインて誰だ?
良質なアリバイ崩しはあるものの、ほぼクロフツのスタンドプレーだし、全体としては凡作。

「屏風のかげに」は実業家が下宿先で殺されるという話で執筆陣はウォルポール、クリスティー、セイヤーズ、バークリー、ベントリー、ノックスの六名。
こちらは前半三名がぶっつけで、後半三名が打ち合わせたとのこと。
一見一家団欒の風景に見える居間の奥で死体が血を流しているという第一章が秀逸で一気に引き込まれる。流石ウォルポール。
ただこちらも本格としては弱い。探偵役もいないし。警察の捜査で見つかった手掛かりのみが決め手となり、終章で辻褄合わせが行われる体裁。
ケネディが懸賞出したらしいが正解者がいたのにはビビる。
とは言え各執筆者とりわけまとめ切ったノックスの手並みは見事だと思う。しっかり自分らしさも入れてね。

昭和三十年当時ウォルポールの短編集が邦訳されていたとは意外だった。

468 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/09/18(木) 21:26:49.47 ID:cInZnbTl.net
「大座礁」ジェイムズ・W・ホール(講談社)

マイアミの名家の血を引いていながらフラフラと自堕落な生活を続けているダメ男ハップ。
しかし考古学者の兄ダニエルが死体で見つかったことにより彼の周囲はめまぐるしく変動し始める。
地元の大物からダニエルの約束を果たせと迫られ、家は謎の女に荒らされる始末。ハップは嫌っていたダニエルの恋人マルゲリートと共に彼の死の真相を探るがそれは沈没船に眠るという四億ドルの財宝の在処へと繋がっていた……。

マイアミを舞台にした600ページの大作。マイアミの歴史に纏わる因縁あり隠された財宝あり開発業者と政治家との悪巧みありとマイアミステリーとでも言うべきシロモノ。
テーマが多彩ならキャラクターも多彩で皆バッチリ描き分けられており、長いと感じさせずにサラサラ読ませる。お気に入りは特にいないけど(笑)。
あ、でもヒロインが最初つるぺたでヒップがほぼ無いみたいな描写だったときはどうしようかと思ったよ。そこは分かり易く巨乳美人にして(笑)。

主役カップルが巨悪に立ち向かう話かと思いきやそうは流れず三つ巴の競争が始まるという筋書きも○。ただ期せずして一同に会するのは予定調和だったね。

傑作ではないが暇潰しにはお薦め。

469 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/09/18(木) 21:32:56.09 ID:cInZnbTl.net
「カリブ海核戦争を阻止せよ」バート・デイビス(光文社)

かつてニカラグア革命で名を馳せたセグラ一家。
それから時は流れ、兄セバスチャンは反政府ゲリラとして南に潜伏し、妹ジュスティーンはCIAの支援を受ける〈コントラ〉の幹部として北に拠っており、そして弟ミゲルは独裁政権の国防次官となっていた。
1987年、アメリカはニカラグアへの上陸作戦を計画する。それを察知した最高幹部会はソ連から原子力潜水艦を奪い、核の力によって国を守るという決断を下した。
中米に一触即発の危機が到来しようとする中、アメリカ海軍の男たちは潜水艦で決死の闘いに挑む。

面白いけど勿体無いというのが読後感。二つのテーマを消費しちゃってるんだよねえ。三兄妹弟で一つ、潜水艦で一つ書けるのに。

先に言っとくけどストーリーに断絶はない。きちんと一つの物語にまとめている。何か問題が起きてもすぐ解決へと向かうのでスラスラ読める。読み物としては◎だ。
しかし作品の完成度を量る時、焦点がぼやけてしまったのは否めない。
そして一つ目のテーマについて、三兄妹弟間における争いに関するリールはすぐに巻かれてしまって、彼らを取り巻く連中の思惑に翻弄されるという展開になっていったのは物足りなかった。
三人の行く方も尻切れ蜻蛉だし。
これだけで一作書かれていればもっと釣り上げるまでの引きを楽しめたと思うのに残念だ。
ヒロインと潜水艦艦長ピーターとのロマンスもテーマ間の連結通路めいて座りが悪いと感じる。

力量のある作家なのであまりあれもこれも盛り込まずにテーマを絞って書いて欲しい。

追伸 ヒロインのキャラクター、超絶美人で名ピアニストでワニとも渡り合う空手の達人て、そんなのあり?

470 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/09/18(木) 21:36:06.97 ID:cInZnbTl.net
「盗聴」チャールズ・キング(講談社)

兄のロジャーが家族を惨殺して自殺した!?
知らせを受けたNYPDの刑事ジェイクは愕然とする。
ロジャーも殺されたに違いないと信じるジェイクは唯一生き残った兄の養子ウィンストンの記憶を頼りに真相を炙り出そうとするが、思わぬ妨害に遭い孤立してしまう。
その間にも狡猾かつ残忍な犯人は猟奇殺人を繰り返していく。果たしてジェイクは殺人鬼を捕らえることが出来るのか……。

あとがき書け馬鹿野郎。
閑話休題。600ページ半ばという分厚さだが一息に読めた。
最初は久々に直球のサイコスリラーだと思ったがそれだけに留まらない骨格を備えていて警察内部の腐敗によりどんどん追い詰められていく主人公の行方に引き付けられてページを繰った。
ちなみに犯人はすぐに明かされ、生い立ち含む犯人パートと主人公パートが並行して描かれていく。

前半はジェイクがいかにして周囲の無理解をはねのけて犯人の工作を見破り真実に近付いていくかが見所だが、後半は反対に犯人がジェイクたちを追う過程がスリリングに描かれている。
そこで鍵を握るのがジェイクの妻サリーの存在。
デートレイプに遭ったトラウマに苦しめられる一方救ってくれたジェイクにはストーカー紛いのアプローチを繰り返して結婚したという特異なキャラクターだが、
作家志望という所で事件に影響を与えることに……。

前述したようにリーダビリティは十分にあるので他の作品も読んでみたいなと思ったけど、ラストがギリギリでポカーンだった。
バカ女どうするかとか気になることもあるのでせめてもう一章欲しかったね。

最後にいきなり『虚栄と偏見』て。出鼻挫くなや。

471 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/09/18(木) 21:39:44.94 ID:cInZnbTl.net
「名画狩り」(文藝春秋)

長らくの間ベラスケスの幻の傑作と言われてきた「侯爵令嬢」がオークションに出品されるとの報が欧米を駆け巡った!
名だたる美術館やコレクターたちは欲望を剥き出しにして画に群がるが最低落札価格は1200万ドルとも。
アメリカナショナル・ギャラリーの館長アンドルーとメトロポリタン美術館長オリヴィアもライバルとして火花を散らすが、何故か惹かれ合っていく。
果たして絵画は誰の手に……?

楽しい美術ミステリーでした。美術ミステリーと言えば「闇のアンティーク」「絵画鑑定人」「左ききの名画」など読んでいますが、大体コンゲーム的な展開になりがちだと思っているところ、
本作はストレートに美術品の奪い合いを描いており逆に新鮮でした。まあコンゲーム的な要素も含んでいますし、それどころか米ソの深慮遠謀にまで関わってきたりもするのですけど。

主役二人のロマンスはかなりベタベタではあるものの、パリやローマのオシャレな風景やペダンチックなやりとりに包まれて食傷することなく読み通せました。
絵画のみならずメトロポリタンの次期館長の座を巡ってもライバルである二人の恋と争いとも読みどころの一つです。

不満だったのは、まず天才ハッカーという安易な存在がえらく幅を効かせているのと、作者の欧米至上主義が透けて見えたことでしょうか。
入札者にアジアアフリカ系は一人もいないし、前半オリヴィアと第三世界の代表たちとの略奪容疑がかかっている美術品についての議論の結末も露骨だなと思いました。
あとこれは仕方ないかも知れないとは言え、アファーマティブ・アクション臭がするのもややマイナス。辛いかな。

472 :名無しのオプ:2014/09/19(金) 09:03:43.72 ID:X2UjdwFF.net
長文連続投稿は荒らし。
はっきりさせておくよ。

473 :名無しのオプ:2014/09/19(金) 18:38:39.33 ID:mvSkCble.net
削除されなきゃ荒らしじゃない、
2ちゃんで認められた行為だというのが

犯罪者である書斎の論理w

474 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/20(土) 17:24:53.52 ID:YgrFIMxB.net
ロバート・バーナード「ペリー警部シリーズ 拷問」を読む。
シリーズ第1作とのこと。
恥ずかしい死に方(薄いスパンコール着用、中世の拷問具であぼーん)
をした実父の捜査に当たることになった貴族階級出身のペリー警部、
その困惑は深い・・・
うーん、殊の外エンタメ性を重視する光文社が何でこれを出したかな?
英国文学、演劇、絵画、音楽等の芸術ネタ(というか「くすぐり」みたいのも
ある)満載、それなりの英国人読者が読めば楽しめはするだろうが、
大半の日本のミステリファンには面白いものではないでしょ。
ミステリ的にはガイシャを死に至らしめた拷問具のロープを切断した高さ、
その用具(鋏)に着目した論理的な推理(ゆえに、子供たちでなければ、
→さすがにこのありがちな解決は早々から排除される、
自由に動き回れない車椅子の人物だ!)が、一応、事件関係者一堂を会した
お約束な場面設定で開陳されはする。
小説的にはこの後にもう一展開(第一順位の相続人の登場)と相成るわけだが。
本シリーズも数作訳されたものの、本邦では高い人気は得られず。
その特異性ゆえ、仕方あるまいと思われだ。

475 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/20(土) 17:25:29.27 ID:YgrFIMxB.net
ハーバート・ブリーン「真実の問題」を読む。
強盗殺人犯を捉えた定年退職間近なベテラン刑事と若手刑事が起こした
証拠捏造事件。
しかし、マッギヴァ―ン作品のような悪徳警官ものの方向には行かず、
現実と自身の倫理観とのギャップに苦悩する若手刑事の姿
が描かれてゆく・・・
(当初は冤罪事件ではないと思われだが、後にはその疑いまで出て来る)
古い作品だが現代日本でもリアルな感覚で読める問題意識溢れるスリリングな
序盤から中盤だが、最後は自身の左遷人事に本部長の見解を問いただす
青過ぎる主人公、美人ストリッパーと結ばれるとか、何だかなあ(w な一応の
ハッピーエンディング展開である。
犯罪者の妹と結ばれるとかよりはメロドラマ的でなくて良しかもしれないが。
ミステリ的には、兄ではなく良く似た弟でした、でも兄も別件の犯罪者でした
ということ。
発表当時は、それなりにショッキングな作だったかもしれぬが、
この題材で後のJ・ウォンボー(元警察官)あたりが書いていれば
もっとリアリティ溢れる作になったのではないかと思われだ。
ミッチーこと都筑道夫は、本書巻末おぼえがきで、
警察小説ではないとしているけど、
現代的視点だと警察小説(集団捜査ものではないが)、
少なくとも警官小説には入るわな。

476 :名無しのオプ:2014/09/20(土) 17:36:42.74 ID:1OI6r5do.net
>>474
>>475
長文連続投稿は荒らしだってさ


473 名無しのオプ 2014/09/19(金) 09:03:43.72 ID:X2UjdwFF
長文連続投稿は荒らし。
はっきりさせておくよ。

477 :名無しのオプ:2014/09/20(土) 18:00:36.27 ID:lwsdeBnc.net
二回や三回くらいはいいだろ。

478 :名無しのオプ:2014/09/20(土) 18:06:50.15 ID:m9veucGX.net
ID:lwsdeBncは書斎の駄乾燥文を見たのはこれが初めてだってさwww

479 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/21(日) 19:23:55.92 ID:Q4mWjG5X.net
ロイ・ウィンザー「死体が歩いた」を読む。
正直言う、駄目だこりゃあ(w
タイトルから想起するような怪奇探偵小説でなく、
またユーモア・ミステリでもない。
自損事故の死亡者がなぜか池の中に・・
更には殺人事件まで発生する。
謎を地道に論理的に追及してゆくオーソドックスな本格ミステリ
である。ゆえに、コンパクトな作ながら単調で退屈してしまう面もある。
舞台は捕鯨で有名、観光地でもあるナンタケット、特異な魅力に富んだ地
だけに作品の魅力が劣るのが残念でならない。
犯人は終盤に入る早々と割れ、後はその証明、ちゅーか追い込みに終始、
どんでん返しのつもりらしいが、
犯人の奥さん(シンディ)が浮気を知らぬはずないわな(w
まあ、79年のポケミス刊行ながら後に文庫化もなく、この作者の作品紹介も
本作のみに止まったのは、納得がゆく出来ではある。
「複雑な物語、結末におけるこれ以上はない皮肉な大どんでん返し、
これにナンタケット島の風物誌が加わって、面白さが一段と濃密なものに
なっている。さすが受賞作(75年度MWA最優秀ペーパーバック長篇賞受賞
作品)・・」
訳者あとがきに記されたベンチリー作品翻訳で知られた平尾先生の評だが、
褒め過ぎもいいとこでしょ。
いくらペーパーバックとはいえ、この程度の作が受賞した事こそ問題かと思う。

480 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/21(日) 19:24:47.56 ID:Q4mWjG5X.net
A・D・G「おれは暗黒小説だ」を読む。
マンシェット作品を読んだ時も驚きだったが、
ノワールとしての本作のC調ぶりは突出。
し過ぎていて、楽しめずというたところかな。
J・ジョバンニとかある意味で正統派、伝統的なフランスのノワールを
ある程度読んで来てこそ楽しめるパロディ、パスティーシュとして
楽しむべきものなのであろう。
ノワール作家が政治家絡みの殺人事件(ガイシャの一人は不仲な妻)に
巻き込まれ、自作のフィクション超えな大バトルを演じる。
彼の友人のナイフ魔、その妹(色キチガイの不具者)等々、
怪しい危ない連中続々とか終盤のガス・バーナーで敵方を倒す凄惨な
シーンは、これぞ「ノワール」という感はあった。

481 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/23(火) 20:53:51.06 ID:kQTs+953.net
ボアロー、ナルスジャック「海の門」を読む。
横領の末、自殺した義弟に成り済ました主人公(不動産会社経営者)、
自身が分譲を手がけた建築中の海浜マンションに逃げ込んだが、
そこには人の気配が、そして謎の美女(ケバい30女なので「?」付きだが(w )まで現れ・・・
うーん、入れ代わりトリックに無理有り過ぎと思うたら、
ストーリー中でもすぐに露顕、むしろこの後の終盤に入ってからの
ドンデン返しの連続が読ませどころだが、DNA鑑定まで可能な検死解剖が
ある現代を思うと、
やはり隔世の感がある昔話という印象は拭えないものがある。
気が良さそうな主人公が救われるラストは、この作者には珍しいかもしれぬ。

482 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/23(火) 20:54:26.83 ID:kQTs+953.net
ビル・ピーターズ「金髪女は若死する」を読む。
ベストコレクションとしてリヴァイバル復刊されたこともある
(この時、自分はジョンの「読者よ・・」をゲット)
警官小説の名手マッギヴァ―ンの別名義作品として前から気にかかって
いた通俗ハードボイルド。
まあ、諸にスピレーンですわ、これは(w
ねんごろになった女の死をきっかけにシカゴの事件にタッチしてゆく
フィラデルフィアのプライヴェート・アイ、
最終的には麻薬組織のボスをみずから始末(文字どおり銃弾をぶち込む)。
あらたにねんごろになった美貌の女性記者の裏切りなんてのもあるが、
銃弾をぶち込まず、人情話風(ブンヤ魂の復活)になるのは
マッギヴァ―ンタッチだな。
どうこう言うべき作ではないが、舞台となるウィンディシティ、シカゴの情景
描写も適にあって、さらっと読ませはするが、まあ、それだけかな。
初期ポケミスらしいコンパクトに纏まった作とは言えようか。

483 :名無しのオプ:2014/09/23(火) 21:41:10.50 ID:6grQU03t.net
句読点もまともに打てないバカとパクり改変失敗するバカ
書斎魔神はどちらを選ぶのだろう

484 :名無しのオプ:2014/09/24(水) 06:55:32.01 ID:iwFmweyE.net
ありがたく拝読すること。
感謝の気持ちなくしてよい人生は送れないよ。

485 :名無しのオプ:2014/09/24(水) 07:33:52.77 ID:GM0a/pVo.net
じゃあ読後感に感謝しよう

486 :名無しのオプ:2014/09/24(水) 11:19:08.35 ID:7gcVxl6E.net
書斎の駄文は粗筋や他人の書いた感想やらだけを読んでデッチ上げたものであって
本体の作品自体を読んでいないんだよね。
だからいつもズレたようなことしか言えないんだよ。

487 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/27(土) 21:49:02.80 ID:78isiH14.net
ジョゼ・ジョバンニ「穴」を読む。
映画化もされた仏ノワールの大御所(前科者として有名)のデビュー作。
訳文のせいもあるが、まるで東映やくざ映画の世界ですわ(w
図解が付されているものの、特殊な形態の刑務所のせいか、
イメージを掴むのが少し大変な感もあった。
脱獄計画(脱獄そのものは実行直前に仲間の一人の裏切りにより失敗)
のスリル、アクションよりも、個性的な囚人連中の「人間ドラマ」こそ
読ませどころというた感あり。
まあ。シャバの話でもジョゼ(「ジョゼと虎と魚たち」のジョゼではない(w )
作品の力点は同様だが。

488 :名無しのオプ:2014/09/28(日) 18:08:34.41 ID:tdvNDxUg.net
いいチョイスだなあ。

489 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/10/04(土) 13:33:28.64 ID:ag3sgbnt.net
ロス・マクドナルド「ウィチャリー家の女」
随分と久々、このハードボイルド・ミステリの古典を
再読することになった。
他スレで話題に出たジョンの歴史ミステリを書庫で探索していた際、
偶然に目にとまり、手にし、何気に読み始めて完読。
ロスマクの訳者としては随一と言われる小笠原豊樹先生の手による
カリフォルニアの情景描写の鮮やかさに魅せられた。
(代表作と言われるが、LAのプライヴェートアイであるリュウにとっては
アウェイの事件)
だけんど、あらためて思うた。
ミステリとしては、いかに西洋人は老けて見えるとはいえ、
「普通、よく見ればわかるやろ(w )」なんである。
(状況設定は異なるものの、この言は本格のマエストロ、
ジョンのプレーグコート、エルの中途等にも該当するが)
娘を母親(既に死亡)と見間違うとか・・・
自嘲気味とはいえ、自称優秀な私立探偵であるリュウも
諸に会ってるわけだし。
本筋には関係しないものの、レイモンドと比較すると、
いわゆる探偵が吐く粋な台詞もいまひとつな感あり。
この辺も先達の人気には及ばなかった因のひとつであろうか。

490 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/10/09(木) 01:22:42.30 ID:zR65WNyS.net
「ノヴェンバー・マン」ビル・グレンジャー(集英社)

CIAのカウンターパートとして作られた諜報機関Rセクションの工作員デヴェローは二重スパイヘースティングスに会うためイギリスへ向かった。
重大な情報を握ったからと金を要求してきたのだ。しかしデヴェローが会った直後ヘースティングスは惨殺されてしまう。IRAの暗殺計画が絡んでいるらしいのだが、デヴェローもまた命を狙われる。
CIA、KGBそしてRセクションが入り乱れる暗闘が繰り広げられ恐るべき陰謀が姿を現す――。

う〜ん、久々にプロフェッショナルなスパイ小説を堪能した。アメリカ作家なのにイギリスぽい渋めで硬質なストーリー。巻き込まれ型も好きだけどこのビターな味わいも良い。
160&202ページのやりとりとかカッコいい。
哀愁漂うデヴェローのキャラクターも秀逸で、淡々と同じことを訊き続ける尋問スタイルがプロっぽくて痺れるわ〜。

真相の意外性もなかなかだし、新しい構図で魅せてくれた好シリーズに出逢えたことを喜びたい。

491 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/10/09(木) 01:26:18.40 ID:zR65WNyS.net
「インパーフェクト・スパイ」アマンダ・クロス(三省堂)

フェミニストの文学部教授ケイトは夫の法学部教授リードと共に一学期だけスカイラー・ロー・スクールに行き講義を持つことになる。
しかしスカイラーは男尊女卑が罷り通る時代錯誤な大学であった。終身在職権を得た唯一の女教授が不審な死を遂げていたり、虐待を理由に教授である夫を殺した妻が不利な証言をされたりしたのだという。
ケイトはリードや謎の秘書ハリエット、同僚ブレアらと共に旧態依然とした大学に立ち向かう。

騙された。「海外ミステリ全カタログ」に何か凄い驚きがあるとか書いてたからいきなり11作目を読むという暴挙を強行したのに、これフェミ女のイケイケ道中記じゃん。
フェミ云々はおいてもミステリー要素が薄いよ。作中ケイトやハリエットがやたらル・カレの小説を引用したり各章の始めにもル・カレの小説からの引用が置かれたりしてるけど、それだけ。
マッチョ男を啓蒙したい気持ちが勝っちゃっててどうしようもない。
これまで何度も浮気してて今も同僚とペッティングまでやっててケロリとしているケイトにも好感が持てない。フェミニズムて女の不倫容認してるぽいのがどうもね。

ラストで一応意外な真実が明かされるけれども前提に無理があるから全然気持ち良くない。白けた。

492 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/10/09(木) 01:55:18.56 ID:zR65WNyS.net
「迷信」R・L・スタイン(ソニーマガジンズ)

のどかな大学町フリーウッド。ストーカーから逃れ都会から戻ってきた大学院生サラは新任の大学教授リアムに一目惚れする。
民俗学を研究するリアムは古来より言い伝えられている迷信に並々ならぬこだわりを持っていた。
時を同じくして町では連続変態猟奇殺人が発生する。それはおよそ人力では成し得ない所業であった……。

友成純一初翻訳作品だって。しかしこれは失敗作じゃないかなあ。明らかにB級ホラーな内容なのにハードカバー二段組470ページて。
ボリュームだけ“キング”サイズにしたって羊頭狗肉やんか。ウレタンか?
読んでみると案の定大して捻りもないし。ちょっと面白い設定はあるものの、総合的に言って読む価値はない。

つか友成純一ってベテランでムック本とかにも寄稿してて多読家だと思ってたけど、えらいウブな作家なんだなあ。よっぽど偏ったもん読んできたのか……。
ま、怪奇ミステリーを貶してた時点でお察し。

493 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/10/09(木) 01:56:50.78 ID:zR65WNyS.net
「鋼鉄の罠」パヴェル・ヘイツマン(実業之日本社)

チェコ出身の三流エンジニアハンスはストリッパーをしている妻アウグスタの進めで貨物船ヒルデボルク号に乗り込んだ。
しかし、大量のウランを積んでいたその船は航海中謎の船の襲撃を受け、乗っ取られてしまう。
とっさにタンクの中に隠れたハンスは港に着いた隙を狙って脱出を果たすが、そこは人種差別渦巻く南アフリカだった。
身を守るため反テロリスト部隊に潜り込んだハンスはヨーロッパへ帰るため決死の逃避行を図る。

チェコの冒険小説という触れ込みだが前半はハードなロードノベルという感じでしかなく、船が占領された背景にも切り込まない。ただただハンスの逃亡の物語でしかない。
後半に入ってやっと追っ手の存在がクローズアップされてくるものの作者の着眼点はやはりそこにはない。
まあつまらなくはなかったけど、起承転結もままならない程度の低い冒険小説だね。

494 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/10/09(木) 01:59:02.57 ID:zR65WNyS.net
「聖人と悪魔 呪われた修道院」メアリ・ホフマン(小学館)

ペルージャの貴族の跡取り息子シルヴァーノは憧れの女性アンジェリカの夫殺しの濡れ衣を着せられ父の手引きで修道院へ潜伏する。
そこで顔料師のブラザー・アンセルモの助手を務めることになったシルヴァーノは仕事を通じて隣接する女子修道院のある見習い修道女に出会う。
その女性キアーラもまた意に反して修道女にされようとしていたのだった。
やがて修道院に滞在していた商人が刺殺されたのを皮切りに連続殺人が起こり、シルヴァーノはまたも嫌疑をかけられてしまうのだが……。

「読みだしたらとまらない!! 怪奇ミステリー」との帯に煽られ読んでみたがちっともそんな風ではなく、所詮は児童書にありがちなハラハラドキドキ物語であった。
トリックもどんでん返しもなく唯一フーダニットはあるも伏線は少ない。修道院に籠もる退屈な話じゃなかったのはホッとしたが。
主人公の少年が年上の人妻に横恋慕してるとかどうよと思ったが健全なロマンスが始まり、大人とコンビを組んで、共に場所移動していくので児童書としては合格点だろう。

495 :名無しのオプ:2014/10/09(木) 16:05:27.78 ID:PwyRS0H+.net
面白くもなんともない。参考にもならない。

496 :名無しのオプ:2014/10/09(木) 19:13:27.79 ID:6qXy134O.net
30秒じゃ読めないわな

497 :名無しのオプ:2014/10/10(金) 13:59:47.42 ID:ndQVuzGj.net
読後感がいなければ良スレなのに

498 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/10/11(土) 11:44:05.50 ID:YbRztdgj.net
ロス・マクドナルド「人の死に行く道」を読む。
美人看護婦が地元のヤクザと共に失踪、彼女の母親から相談を受けた
リュウが探索が開始される。ここにヤクザのボスも絡んで来て・・・
遂には殺人事件がというお話。
ロスマクらしいヘビーでシリアスなタイトルに思えるが、
初期作ということもあって、後年の物静かなリュウ像を想起すると
外される。殴られ(あまり強くないのが御愛嬌)、拳銃で脅し(ぶっ放しは
しない)、ギャングと交渉と元気満々、口調もまだまだハードボイルドらしい
荒々しさに富む。
メーントリックは名作・代表作と定評がある「さむけ」「ウィチャリー家の女」、
映画化もされ知名度がある「動く標的」「魔のプール」等の諸作よりも、
ダイナミックで面白い。
被害者=犯人のパターンに入るのだろうが、この彼女が犯人どころか、
事件の黒幕とでも称すべき存在なのである。
ヘビーで単調な看護婦生活に飽き、大金に惑わされた末の巧み、かつ、
残忍な犯罪、この辺の犯人心理を詳細に書き込めば、本邦の作に
喩えるなら松本清張先生風の社会派ミステリとして現代にも通じる
テーストのものに成り得たやもしれぬが、単にキティと処理されている
のが惜しい感あり。

499 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/10/13(月) 10:10:49.64 ID:R7HDcUVv.net
「ニューヨーカー短篇集T」を読む。
分厚く、細かいポイントの活字二段組みハードカヴァー(全3巻)だが、
これ読んでると、何ともかっちょいいと思われな「時代」もあったわけである。
雑誌「ニューヨーカー」は今も健在ながら、本書に収録された作家は新しい方
でも70年代までに活躍した者が多いせいもあって、(本書刊行が69年)、
現代では完全に忘れられた作家と化しているか、遂に本邦では無名なまま
終わった者も多く見受けられる。
一時期は当誌の看板作家の一人であったジョン・オハラも過去の人となった感
があるし、(ただし、収録作品、彼の代表作のひとつと称される
「河を渡って木立をぬけて」は、当時の老いの様を描きそれなりに読ませる佳作)
ジョン・コリア、シャーリイ・ジャクスンというこの板的な作家の作も収録
されてはいるが、当然のことながらニューヨーカー誌掲載作品に限定される
ため、ベストな出来のものとは言い難いし、
事件らしい事件もなく淡々とエンディングする作が多い。
まあ、当時はニューヨーカー気分に浸る事こそ、この企画の最大の眼目であった
のであろう。
(あえてこの板的にフィットする作家を一人あげれば、ロバート・M・コーツ
という作家か。1巻には「網」「怒り」の2作が収録されているが、いずれも
犯罪者の心理をビビッドに描き切った作と言い得る。特に後者は少女を狙う
変質者の視点、天罰ちゅーか、最終的に悲惨の死を遂げるわけだが、
ねらー的には「これは漏れ自身だ・・・」と身に詰まる者多数かもなー(w)
私なども学内生協の書店で本書を購入し、
あえて表紙を見せつける感じで学内を闊歩したりしたものである。
今となっては、かわゆくも、懐かしい思い出。
巻末の「ニューヨーカー物語」を記した
後の直木賞作家である常盤氏(貴子ではない(w )は、当時は正に
NY文化のパイロット的存在であった。

500 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/10/13(月) 10:11:35.35 ID:R7HDcUVv.net
ロス・マクドナルド「一瞬の敵」を読む。
これは最後期作品。
ゆえに少女の輪姦(まわし)ネタとか諸に出て来る。
ミステリとしてのトリックは、顔のない屍体によるすり替りネタ。
前記したウィチャリーよりは無理筋はないし、
この点をメーンに書けばすっきりした「ミステリ」になったと思われだが、
ロスマクはそうはならない(しない)んだよね・・・
相変わらずの人間関係のゴチャゴチャ度アップ気味、
家系図を付ければネタばれってのが、エンタメの書き手としては、
この作家の苦しいところかな。
本作の反省に立ったのか、この後の「別れの顔」「地中の男」等は
多少は把握し易いストーリーになっていたかと思う。

501 :名無しのオプ:2014/10/13(月) 17:33:19.34 ID:FPEavF78.net
お手本の論考が続くね。

502 :名無しのオプ:2014/10/13(月) 17:51:04.03 ID:kvOsOwez.net
書斎の自称感想文は悪いお手本w

503 :記憶喪失した男:2014/10/15(水) 12:54:50.24 ID:2416aF2K.net
ハヤカワ復刊フェアだよ。

『風の十二方位』 アーシュラ・K・ル・グィン/小尾芙佐ほか(訳) ハヤカワ文庫SF

『重力が衰えるとき』 ジョージ・アレック・エフィンジャー/浅倉久志(訳) ハヤカワ文庫SF

『MOUSE(マウス)』  牧野 修 ハヤカワ文庫JA

『シュロック・ホームズの冒険』 ロバート・L・フィッシュ/深町眞理子ほか(訳) ハヤカワ・ミステリ文庫

『ジェゼベルの死』 クリスチアナ・ブランド/恩地三保子(訳) ハヤカワ・ミステリ文庫

『漂う提督』 アガサ・クリスティー、G・K・チェスタートン、ドロシイ・L・セイヤーズ、ロナルド・A・ノックス、F・W・クロフツ、アントニイ・バークリーほか/中村保男(訳) ハヤカワ・ミステリ文庫

『侍女の物語』 マーガレット・アトウッド/斎藤英治(訳) ハヤカワepi文庫

504 :記憶喪失した男:2014/10/15(水) 20:23:33.44 ID:2416aF2K.net
ハヤカワ復刊フェアだが、ミステリの方の「シュロック・ホームズの冒険」と「ジュゼベルの死」もかなり面白い名作なんだってね。
ミステリは古典を積んだままなので今回は買わないが、気になる。

505 :名無しのオプ:2014/10/15(水) 20:49:19.72 ID:bGNHph+/.net
記憶喪失さんの素晴らしい論考が読みたいですね
書斎さんを越える論考が書けると確信してます

506 :名無しのオプ:2014/10/15(水) 21:59:11.48 ID:xzrJ/0QP.net
記憶さんは書斎やでつまつくんと並び立つスーパースターだからね。

507 :記憶喪失した男:2014/10/16(木) 07:27:10.41 ID:dlqbtBfG.net
書斎さんにすすめられた「Zの悲劇」すらまだ読んでないし、
「レーン最後の事件」「赤毛のレドメイン家」も読んでなししで、
積読がたまってるから、新しく買うのには抵抗があるんだけど、

「シュロック・ホームズの冒険」と「ジュゼベルの死」は買ってみることにするよ。
いつ読むかわからないけど。

508 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/10/16(木) 22:36:15.58 ID:yiyZ9j6o.net
>>507
久々、ハロー(w
>「シュロック・ホームズの冒険」
贋作としては悪くはないので買ってもよいかと。
>「ジェゼベルの死」
まさか死人が・・・あえてネタバレ回避、
この作者の最高傑作の評もあり、買いです。

509 :名無しのオプ:2014/10/17(金) 07:39:34.06 ID:z2sgPACE.net
贋作w
バカすぎ

510 :名無しのオプ:2014/10/17(金) 07:50:19.42 ID:TTP7nVkp.net
XもYも読んでないブラウニング魔神がZを薦めた?何の冗談だ

511 :記憶喪失した男:2014/10/17(金) 10:44:29.62 ID:eMMNczxw.net
>>508 お久しぶりです。
さすが、両方とも読んでいるんですか。
ただ、「ジュゼベルの死」の方は今回は見送ろうかと思ってます。
要検討中。

アンチどもでは手が出せないようだ。
またしても一級の論考が出たね。
天才だよ。

512 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/10/18(土) 01:51:42.42 ID:FRJNfGxi.net
「死者の声なき声 上・下」フォルカー・クッチャー(東京創元社)

恋人に別れ話を切り出そうとしていたラートは上司であるベーム上級警部に呼び出される。映画撮影中に女優が死亡したらしい。
捜査に乗り出したラートは事件が起きた映画会社とは対立関係にある会社でも女優が行方不明になっていることを知る。
やがて彼女も死体で発見され、両者に関わりがあると見たラートはベームに睨まれながらも独断専行を続けるのだが……。

シリーズ二作目。1930年のベルリン。「人々が自らの信念に忠実でありえた最後の時代」てフレーズカコイイね。
前作同様ストーリーの配分が良く飽きずに読めた。ドイツ映画界の内幕も興味深い。「カリガリ博士」「メトロポリス」くらいしか聞いたことないけど。
↑の事件に加えラートは父ともう一人歴史上有名な人物からも厄介な依頼を受け愛車ビュイックを駆ってベルリンを奔走する。
ついでにまだ未練たっぷりの元恋人まで現れて悶々ラート!

犯人は中盤で割れるなど寂しい部分もあるが、警察小説としては良作の部類に入るだろう。
しかし彼女必要だったか? こういう脇の甘さも非英米系欧州ミステリーにありがちな欠点かもねむ。
そして「ラート自身の事件」にはいつケリがつくのか? ラインラント進駐までお預け?

最後にロマンス面に言及。英米では破局フラグになるであろうこともドイツではまだ終わらんらしい。そのせいで読者としてはもやもやの残る幕切れになってしまった。
その後のことから考えて違うぽいんだけど……。

じわりじわりとナチが存在感を増していく。三作目も早く訳してね。ネレはまだ未読。

513 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/10/18(土) 01:56:56.44 ID:FRJNfGxi.net
「ムーンズエンド荘の殺人」エリック・キース(東京創元社)

同窓会の招待状を受け取って雪山の山荘を訪れた探偵学校の卒業生たち。だがそこに待っていたのは謎の人物による殺人ゲームだった!?
唯一の脱出路であった吊り橋を爆破され閉じ込められた彼らは必死に犯人を探し出し身を守ろうとするのだが、不可能状況の中次々と殺されてゆく……。

珍しい現代アメリカ作家の現代アメリカが舞台のCC。
最初は登場人物たちが漏れなく秘密を抱えていて複雑そうだなあと不安になったが徐々に明らかになっていき、一息吐いたところで第一の殺人が起こる。
以下密室あり100%アリバイありでガンガン進んでいくのでこれは雑な結末になるんじゃないかと心配になったが、見事に解かれてため息。雑なようでちゃんと伏線を張っていたのね。参った。
CCのネタは何種類か読んでいるがこれは初めて。現実には難しいけど。
あと偶然に頼ったかなり無茶なミスディレクションがあるのも見過ごせない疵だとは思うが、ゲーム小説としては佳作以上の出来だと思う。
作中で語られる過去の事件の謎解きも良い。

それからフラグ外し的な演出もなされていてニヤリとさせられた。

514 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/10/18(土) 01:59:13.11 ID:FRJNfGxi.net
「殺しのデュエット」エリオット・ウェスト(河出書房新社)

ウエストコーストの私立探偵ブレイニーは秘書ベデリアと映画に行った帰りに銃撃戦に巻き込まれ麻薬密売人を射殺してしまう。
一躍時の人となったブレイニーに大富豪コルビーからの依頼が舞い込む。逃げた若妻を捜し出し百万ドルのダイヤを取り戻せというものだった。
ブレイニーはベデリアと助手ドンと共に奪還計画を練り実行に移すが、彼の元には何者かからの脅迫状が……。

この叢書は3冊目。今んとこハズレなし。本作も良かった。
最初はあまり描写もなくどんどん展開していくから梗概読んでるみたいで違和感あったし(三人の会話の場面は別)、前半なのにクライマックスぽくなってきて?だったけど、
中盤にあるイベントが発生して漸くプロットのアウトラインが掴めてくる。これは追う者ではなく追われる者のハードボイルドなんだと気付く。
それからは普通に読み進められた。実は作中感じる違和感がもう一つあってそれは物語の根幹に関わる部分なんだけど、これも最後まで読むとこのためだったのかと解る。
フーダニットは意外だけど後半にはピンとくる類のもの。しかし! ラストのどんでん返しは読めなかった! 最後の数行も意味深。

ハードボイルドはこれだけらしいがスパイものの方も読んでみたい作家だ。
166ページの主人公の切り返しは見事。これはいつか言いたいセリフベスト5に入る。

515 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/10/19(日) 16:09:16.20 ID:qI1A8F6k.net
「ニール・サイモン戯曲集 T」を読む。
収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「カム・ブロー・ユア・ホーン」
才人ニールのデビュー作。やや若書きで後半はバタバタと進行する
感があるが、最初からこれだけ書ければたいしたものかと思う。
・「はだしで散歩」
若き日のJ・フォンダ、R・レッドフォード主演の映画も懐かしい。
(舞台をアパート一室限定というわけにもいかず、屋外シーンもあり、
この辺は間延びしている感があるのは残念だった)
今、原作を読むと、いかにも60年代のNY新婚風景で牧歌的な感せ受ける。
・「おかしな二人」
これは傑作中の傑作。映画版、テレビシリーズ共に面白く見たが、
(ただし、テレビシリーズはオスカーとフィリックスの別れた細君たちが
登場する回があるのが問題。直接の登場はないのがこの劇の「ミソ」のように
思うのだ)
当時はニールの原作を読み事得ず。非常に残念な感があった。
(本書の刊行は80年も後半になってからである)
・「プラザ・スイート」
本作のホテルの一室を舞台にしたオムニバス形式って、ミステリでは
ウールリッチ作品で有名。
果たしてニールは読んでいたかどうか?
熟年夫婦の破綻、同級生同士の不倫、ひきこもる新婦という3話構成。
3話目が一番面白いが、
新郎の「ミムシー?・・・ボーデンだ・・・やめな!・・・」
新婦の両親の悪戦苦闘にもかかわらず、これで全て解決とか(w
全体としては、三部構成の趣向こそ評価すべき作であろうか。

余談ながら、この手のシチュエーション・コメディ、三谷氏の尽力にも
かかわらず、現代日本では人気定着せずという感大。

516 :名無しのオプ:2014/10/19(日) 16:23:21.70 ID:4LMhkQi8.net
思わず読んだ気にさせてくれるぐらいワクワクする素晴らしい論考だね。
これで書斎が天才であることが証明されたね。

517 :名無しのオプ:2014/10/19(日) 16:55:31.32 ID:j02aJMql.net
書斎の論考があれば、読まなくてもいいぐらい。
アンチが逆立ちしても敵わない圧倒ぶりだよ。

518 :名無しのオプ:2014/10/19(日) 17:26:30.74 ID:lw1Em+PN.net
つまり読む気が失せる、と

519 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/10/21(火) 00:17:05.80 ID:x7Zeu+Vn.net
>「ムーンズエンド荘の殺人」エリック・キース(東京創元社)
これ読む予定でいて、1年以上経ってしまった(w
芳しい評は見た記憶がないが、読後感氏はわりとプラス評価だな。

520 :名無しのオプ:2014/10/21(火) 06:35:12.13 ID:0bkPDt+a.net
書斎はフェアだねえ。

521 :名無しのオプ:2014/10/21(火) 08:43:54.57 ID:5iwgsxJ+.net
書斎は作品を読んでないが感想ばかり漁っていることと
中傷を繰り返すだけの書斎派はアンフェアだとの自白にしかなってないな

522 :名無しのオプ:2014/10/21(火) 11:34:37.98 ID:0bkPDt+a.net
荒らしの読後感にすら一定の評価を下す。
アンチには到底できないことだよな。

523 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/10/24(金) 23:22:58.21 ID:NpqRm0nf.net
「ジャンピング・ジェニイ」アントニイ・バークリー(国書刊行会)

殺人犯仮装パーティーの夜、嫌われ者の女が絞首台で揺れていた。
参加者の一人であった作家ロジャー・シェリンガムはある発見から殺人だと当たりを付け、犯人探しを始める。
しかしそれはいつもとは違っていて……。

バークリー攻略作戦もいよいよ大詰めか!?
最高傑作とも言われるはねジェニまで来ました。感慨深いすね。翻訳リアルタイムで読んでたら「レイトン・コートの謎」すらまだ読めてなかったんだから。

さて本作の面白さは裁くためではなく救うために犯人探しをするというところ。この点では登場人物たちはほぼ完全に思惑一致するという。
当然趣向倒れに終わらないサプライズがあるんやろうなと期待しつつ、お約束と化したロジャーの一人相撲も楽しみつつ読み進むとクライマックスの検屍審問で真実が暴かれ更に……という展開。

うーむ、ちょっと伏線が足りないなあ。ここがもっときっちりしてたら良かったんだけど。
ノックスと違ってパロディだけに終わらせないのがバークリーという作家だと思っているのだが、今回はちと手抜きかな。

524 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/10/24(金) 23:28:49.04 ID:NpqRm0nf.net
「インクィジター T/最後に地獄を見た男」サイモン・クイン(東京創元社)

ヴァチカン聖務省・異端審問所に属する審問官キリーは所長チェルラの命によりフランスへ向かう。
大戦中チェルラとその仲間たちを裏切った男サランの正体を暴くのがその目的であった。
キリーの前に立ちはだかるフランス情報局の殺し屋たち。そして謎の女スパイ。果たしてキリーの運命は!?

80年代創元がB級アクションを量産していた頃のシリーズものです。Tとなっていますがあとがきによれば2作目で、著者の意向で1巻と3巻とは割愛されたんだそうです。イミフですね。

内容は表紙絵やあらすじから想像がつく通りでページ数も200台とお手軽で読みやすい……はずなんですが、何故か結構時間がかかりました。
場面が目まぐるしく変わるのはある意味当然としても、ちょっと流し読みを拒む節があります。スピード感を持って読めないと言いましょうか。ヒロインも魅力がないですし。
これ一冊のお付き合いかなと思いつつググるとWikipediaに項目があり更に内一作個別項目があり気になる記述が。最低あと一冊は読みそうです(笑)。

525 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/10/24(金) 23:35:13.05 ID:NpqRm0nf.net
「一弾で倒せ!」ジェラルド・シーモア(新潮社)

駐ソ連イギリス大使とその秘書がシリアのテロリストの凶弾に倒れた。目の前で恋人を殺された秘書官ホルトは複雑な思いを抱えながらも、
復讐のためユダヤ人スナイパークレインと共にテロリストのキャンプ地を目指す。

ぎらついた復讐ものかと思いきや、主人公は喧嘩すらしたことのない気弱な青年で一向に燃え上がらない。
クレインの下で修行に励みながらも、イスラエルやユダヤ人の考えに毒されたりはせず、ズケズケ言ってしまう。

単なる甘ちゃんと切って捨てることは容易いが、イギリスやイスラエルの国益追求を当たり前として動く連中に囲まれた中にあってはその青臭さがどこか心地よい。
特に235ページ。ユダヤ人の記念碑で思いを馳せるクレインに対し「歴史は人を独善的にします」と言い切っちゃうホルトは素敵だ。

そして敵のテロリストアブ・ハーミッドの物語も平行して語られる。組織に踊らされる彼の生き様もなかなか読み応えがあるし、一方に偏らない作者の姿勢が窺えて好印象。
ラスト、果たしてホルトは何者になったのか? ということを考えさせられたりもする。

526 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/10/24(金) 23:39:38.06 ID:NpqRm0nf.net
「女王のメッセンジャー」W・R・ダンカン(早川書房)

タイのジャングルからMI6へ向けて貴重な情報を送り続けていた謎の男チャーリー。しかしある時、彼からの文書を携えたメッセンジャーが消息を絶ってしまう。
背後にKGBの気配を嗅ぎ取ったMI6はチャーリーの担当だった局員クライヴを現地へ派遣する。そこは彼にとって因縁の土地だった。

裏表紙にはスパイ・サスペンスとありますが、確かにプロットで魅せるエスピオナージュでもなくアクションで魅せる冒険小説でもないので上手く間を縫った表現だと思います。
本作は一言で言うと主人公の内省と葛藤の物語であるのです。クライヴは一年前バンコクで敵に捕まり拷問に耐えられず部下たちを売ってしまった過去があり、今も苦しんでいるのです。
その彼が再びバンコクへ戻ってきて過去と向き合うのが最大の見所なのです。
同じ境遇にあるメッセンジャーへの思い、別れてしまった元恋人との邂逅などを経てクライヴがどう変わっていくのか。過去を乗り越えられるのか。そこを読んで下さい。

二冊続けて似た雰囲気の話でしたなぁ。

527 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/10/25(土) 18:38:57.20 ID:parndCHY.net
「ニューヨーカー短篇集U」を読む。
まあ、Tが面白かったわけでもないが、何となく手に取ってみた。
作家にもよるのだが、短時間にさっと読むのに適し、「癖」になるってのは
あるんだわな。
Tの講評中で推したロバート・M・コーツの作品も2作収録(「二つの世界」
「ある田舎の冬」)されているが、
オチ無し、ヤマ無しのニューヨーカー誌の基本スタイルにフィットして来た
のか、わりとおとなしめ。
前者には若干のワイルドさが残るものの、後者は完全に独自のまったりNY誌
スタイルですわ。 

528 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/10/25(土) 18:39:28.40 ID:parndCHY.net
S=A・ステーマン「殺人者は21番地に住む」を読む。
ジャック・ザ・リッパ―級の連続殺人者が特定の街区21番地建物(下宿屋)
の住人なのは判明したのだが、さあ、ここから、捜査も推理も大難航というお話。
終盤、2度に渡る読者への挑戦挿入は御愛嬌として、複数の下宿人による
リレー殺人(あるいは駅伝殺人)そして相互にアリバイ工作というアイデアは
なかなか秀逸、ブリッジのプレイ模様から犯人(トリオ)キャラを推理し真相に至るという展開もS・Sのカナリヤ(こちらはメリケンだけにポーカー)を
想起させる面白さではある。
フランス・ミステリという範疇で語られることが多い作だけに、
トンデモ展開あるいは雰囲気のサスペンス重視かと思うていたが、
地味に読ませるコンパクトに纏めた佳作と言い得るかと思う。

529 :名無しのオプ:2014/10/26(日) 11:51:50.56 ID:RLM6fjab.net
歴然と差が出るね。
書斎の方が圧倒的に品があり、まともだ。

530 :名無しのオプ:2014/10/26(日) 11:55:48.11 ID:nEA36TQY.net
それに加えて、読後感のレスは、ネタバレを避けているから、薄っぺらい感想文の域を出ていない。

531 :名無しのオプ:2014/10/26(日) 12:08:10.16 ID:s91Vhk0O.net
幼稚なネタバレが重厚だと称する能無し書斎の泣き言でしたとさ。

532 :名無しのオプ:2014/10/26(日) 12:22:39.46 ID:nEA36TQY.net
黙れ・・・

533 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/10/26(日) 18:09:00.60 ID:Ht2fu+TX.net
ニール・サイモン「サンシャイン・ボーイズ」を読む。
「おかしな二人」と並ぶニールの代表作としてあげられることが多い作。
(60年代が前者、70年代は本作でしょうな)
プライヴェートではしっくりいっていなかった往年の人気ボードビリアン
コンビ、あの人は今的な番組で1夜の復活が企画されたのだが・・・
十分に作家としての経験値積んだあとの作だけに、
手慣れたスピーディなコメディに仕上がっているとは言えるが、
やはり「おかしな・・」の笑いの中に漂う哀感、
ラストのオチの面白さ等には及ばずという感あり。
まあ、こちらの方が好きという向きもあるではあろうが。

534 :名無しのオプ:2014/10/26(日) 19:13:22.05 ID:nEA36TQY.net
書斎のセレクトが、コキゲンだね。

535 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/01(土) 23:08:03.12 ID:NnmGX72Q.net
「ニューヨーカー短篇集V」を読む。
ヤマ無し、オチ無しの作品主流(前記したとおり、
これがニューヨーカー誌スタイル)な全3巻を、我ながらまさかの完読であった。
Tと比較して長めの作品が多くなっている。
この最終巻では、前記したコーツの何ともSF風通勤小説とでも称すべき作、
(「ウェスタリーを過ぎて」)が印象に残る。

536 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/01(土) 23:08:58.46 ID:NnmGX72Q.net
エリック・キース「ムーンズエンド荘の殺人」を読む。
いかにも人間が描けていない本邦の新本格好き向きな軽量級ミステリ
という感を受けた。
ラストは、男同士(共にプライベートアイ)の親愛感ちゅーか
ハードボイルド風なのが、いかにもメリケン作家らしくはある。
まあ、俺は犯人は早期でわかりました。興は「どこにいるんかな?」程度かな。
狂った弟の兄の死に関わる狂ったリベンジ(逆恨み)ですわ。
主人公(と言えるかと思う)ブライアンの死んだふり逆転も予想どおりでした(w
多くの本邦作家と異なり女性キャラ全滅(検事のアマンダはサヴァイブすると思うていた)な容赦無い点は、
ちと面白いものはあるけど。
登場人物(探偵学校の同期生)の御都合主義的過ぎる人間関係を、もう少し
自然に書けないものだろうか、というのはゲーム作者上がりという事を
考慮すれば無理な注文であろうか。

537 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/02(日) 19:40:40.03 ID:DKwE/JWz.net
S・A・ステーマン「マネキン人形殺害事件」を読む。
マエストロ鮎推薦の帯付で刊行されたのは、はるか昔。
ベルギーの田舎町、深夜、文字通りマネキン殺害(?)事件の裏に
隠された謎とは?
偶然に事件の目撃者の一人になったとはいえ、
どう考えても管轄外やろな探偵役(マレイズ警部)の個人的興味本位としか
思えぬ強引な捜査は???だが、横溝作品を想起させるような怪奇な事件
の魅力でグイグイと読ませる。中盤はマレイズ警部自身の捜査も行き詰まり
のせいか、やや失速気味、終盤では「猫の爪」(このワード、本作のポイントでっせ(w)とでも題したい奇抜なトリックが開陳され、
殺人犯人(あくまでこちらだけ)も最後の最後まで秘される展開は見事なり。
おなじみポワロはベルギー人だが、母国を舞台にした事件はナッシング。
シムノン(ベルギー人)のメグレ警部シリーズにはあったかどうか?
ステーマンもベルギー人だが、前記した「殺人者は・・・」は
作品舞台はロンドン、ベルギーを舞台にしたミステリってのは初めて読んだ
感あり。

538 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/03(月) 23:27:13.53 ID:+VWuL4C0.net
S・A・ステーマン「ウェンズ氏の切り札」を読む。
この白作家、なかなかですわ。
中編2作収録、ゆえに、収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「ウェンズの氏の切り札」
中編にもかかわらず、序盤から人間関係が錯綜気味なののが、
リーダビリティ的にはやや難あり。
しかし、何だかんだで、単純な一人二役トリックを最後までわからせぬ
手際はそれなり見事かもしれぬ。
まあ。プロの捜査官もいるわけだし「よく見ろや(w 」と言われてしまえば
それまでではあるが(w
・「ゼロ」
前記したマレーズ警部は完全レストレード状態(w
ミス・マープルかお(w な婆ちゃん(語り手である新聞記者の祖母)が
見事な推理を見せる。
「列車が殺した!」あるいは「殺人列車」とでも題したい真相。
怪奇探偵小説らしい予言には合理的な解決が呈示されない投げっ放しな
ままエンドには、やや不満。
俺は欝エンドは好きな方だが、ヒロインしぼんぬというラストは
あえて必要だったか否か?

539 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/11/04(火) 01:08:32.73 ID:ThVSI3Wj.net
「五百万ドルの迷宮」ロス・トーマス(早川書房)

失業したてのテロ専門家ブースは謎の男からフィリピンのゲリラを買収する手助けを依頼される。
大掛かりな計画を成功させるため一癖も二癖もありそうな連中が集まってくるのだが、彼らはそれぞれ相手を出し抜こうと策謀を巡らせ始める……。

トーマスは3冊目かな。どうも乗れない作家なのよねえ。駄作家とは思わないが食欲をそそらせる魅力はないと感ずる。
本作も然り。ありがちなコンゲーム以上の印象ではなくむしろやや下がるくらい。各書評で評価されていた悪女のキャラクターにしても、個人的には淡白であまり痺れなかった。最後も気に食わなかったし。
合わない作家なんだろうなあ。

540 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/11/04(火) 01:13:25.53 ID:ThVSI3Wj.net
「傷のある女」リチャード・S・プラザー(早川書房)

おれはLAの私立探偵シェル・スコット。今回の依頼は失踪した娘を捜すことだった。前任の探偵も消えてしまったらしい。
その娘イザベルの行方を追ってラス・ヴェガスへやってきたおれは着いて早々に命を狙われる。どうやらナイトクラブのやり手オーナーが絡んでいるようなのだが……。

通俗ハードボイルドを代表する私立探偵シェル・スコットシリーズ4作目。
「おあついフィルム」「ハリウッドで二度吊せ」以来3冊目。スラスラ読めて楽しんだ。これだよこれ。すぐ殴り合いになり、悩殺美女が次々に現れ、簡単に人が死ぬ都会のおとぎ話。
例えばシェルがヴェガスのバーで美女コリーンに会う場面。徐に屈み込んでVネックの谷間から白い巨乳の先のバラ色のつぼみを覗かせちゃったりするんだからもう辛抱堪るか!
下品上等エロ上等!
ポケミスはこういうのを読むためにある叢書なんだと革新的に確信したよ。新生ポケミスの重厚路線なんざ邪道もいいとこだ。
最後もきっちり書いちゃうのが凄いよ。あんなもん本当なら蛇足以外何物でもないんだけど、そんな気取りなど犬に食わせろ!
読者はあれが読みたいんだよ。うんうん。

ただプロットが弱いのが残念だね。意外性は想定内で犯人の設定も甘い。これでは描写不足。
例えばフィックリングは軽とは言えちゃんと錯綜させてたもんな。
おまけに94ページの記述は何だよ。こんな訳あるか。探偵失格!

541 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/11/04(火) 01:18:30.75 ID:ThVSI3Wj.net
「カトリーヌはどこへ」ルイ・C・トーマ(早川書房)

行われている裁判の被告人エルヴェはある日突然新妻カトリーヌに去られた傷心の夫だった。私立探偵に頼んでも行方は判らず、彼女と折り合いが悪かった同居人の姉アンヌ=マリーはどこかせいせいした様子。
2ヶ月ほど経った日、一人の男が訪ねてきた。一万フランでカトリーヌに会わせてやると言う。姉の制止も聞かずこの申し出にのめり込むエルヴェだったが、そこには恐るべき陰謀の罠が張り巡らされていた!

トーマを読むのはミスマガ掲載の短編に次いで2作目。映画「悪魔のようなあなた」は以前観た。
フランスミステリーの二大潮流であるところの「情感だけの心理サスペンス」と「大味な一発トリック小説」の内前者だと思い、半ばdisりながら読んだ。

過去の妻捜しの合間に現在の裁判シーンが挿入される構成。数ページで真相判ったと思った。しかし思いの外話が広がりを見せていき、自信がちとぐらつくも、最後まで読んだら大まかには当たっていた。
ちょっと異なったアプローチが加えられていたから判りにくかったのか。これはプラス評価するに吝かでない。何も見えていなかったようだ。

あと210ページにニヤリ。やっぱりフランス人なんてろくなもんじゃないね。

542 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/15(土) 18:00:22.12 ID:z9DLcVo7.net
J・H・チェイス「殺人狂想曲」を読む。
これはチェイス作品中でも完全NG作品でした。
設定も目新しいものはなく、無理やりな筋立てが目立つ。
会社の同僚から紹介されたコールガールが惨殺され窮地に陥るイケメン銀行員、
ここから町を支配するボス、市・警察の幹部まで絡んだ争闘に発展してゆく・・
ダークなラストを予想していたが、堅気のイケメン銀行員はサバイブするが・・
ちょいツイストが効いたエンディング(犬ねた)を迎える。
ストーリーテリングに優れた作家ゆえ、強引な御都合主義展開、
漫画ちっくなオーバーキル状態等々は、気にする間もなく、
ぐいぐい読ませるものはあるが、
ミステリとしてはフーダニット部分にこの作家十八番の悪女ものが来たか
と途中で見えました。

543 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/15(土) 18:00:53.80 ID:z9DLcVo7.net
マイクル・イネス「ある詩人への挽歌」を読む。
翻訳は90年代に入ってからとなったが、大乱歩が高評価したことで有名な
この作者の代表作のひとつ。
古老の語り(靴直しのベル爺さん)で始まり、奇人で知られる城主の謎の墜落死
(最後まで読むとわかるが、やはりこの表現でOKなのだ)をめぐる顛末が
スコットランドの荒涼たる風景描写と共に語られてゆく・・・
まさにジョンお誂え向きな舞台設定であり、彼氏なら怪奇とロマンス(城主の
姪と村の青年の駆け落ち話、偶然に城を訪れた若い男女(連れではなく城主の
係累の娘と通りがかりのロンドンっ子キャラあり)たっぷりに語りまくるの
だろうが、カレッジ中退の米版司法崩れ作家と大学の先生の違いか、
この2要素は積極的に排除する傾向である。
(登場人物たちは怪奇現象は完全否定、ロンドンっ子にはフィアンセがいたり
してロマンスは成立せず)
代わって作品の装飾、謎のヒントとして散りばめられた詩の挿入が、
わかり難くも読み難くなってしまっている恨みはあるのだが。
入れ替わり墜落殺人トリックが偶然の闖入者(ベル老人)により妨げられ、
大逆転へ・・夜間の暗い塔中で死角も存する設定とはいえ、目撃者(親戚のオーストラリア娘)もいる状況で、やはり強引過ぎる展開に思えてならぬ。
まあ、面白いことは面白いのだが.
余談ながら、セックスねたが露骨とは言わぬまでも、意外にオープンに
語られているのがこの作者にしては意外。
シェリフ=判事という訳も初めて目にしたわな。

544 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/11/15(土) 19:23:21.81 ID:R6ZAFWKb.net
「虹の果てには」ロバート・ロスナー(早川書房)

20年近い刑務所生活から遂に解放された銀行強盗ブリッジャーは故郷の町オークハロウへ戻ってきた。町は変貌を遂げていたが、変わらないものもある。
盗んだ金を埋めたあの木――警察に拷問されても頑として隠し通したため満期勤め上げることとなったが、それだけの価値はあるはずだ。
しかし、かつてブリッジャーを痛めつけた刑事ジャビットが再び現れは執拗に彼につきまとう。果たしてブリッジャーは金を手に出来るのか?

まず裏表紙の嘘吐きに渇を。「盛りあがるサスペンス」だの「快調なテンポと語り口」だのは170ページちょいのどこ探してもないぞ! ということはもちろん謎もアクションもない。
本作はミステリーというより登場人物たちの人間模様を淡々と描いた普通小説のおもむきなのだ。
例えばブリッジャーに思いを託す熟女司書フランシーヌの生活ぶりからは田舎の孤独さ、侘びしさ、質素さなどがひしひしと伝わってきた。
食堂の主人オットーやブリッジャーの雇い主ガス老人もなかなか味わいのあるキャラクターだ。

しかし、肝心の二人がどうも宜しくない。もしブリッジャーが悪人ではない訳ありで、ジャビットが悪徳警官なら話はもっとすっきりしていたはずである。
しかしブリッジャーはガチの銀行強盗で罪悪感は欠片もなく盗んだ金を手に入れることしか頭にないし、ジャビットも暴力的傾向があるものの使命感に燃える警官なのだ。
作者は何故こんな中途半端なことをしたのか? 「逆に深みが出た」などと一見もっともらしいことを書いてお茶を濁してもいいが、やはり物語がぼやけてしまったと思う。
おまけにラストがまたいただけない。ここまでやったキャラクターを書き割りにして結末を急がせているのだ。

読まずに逝ける。

545 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/11/15(土) 19:26:54.68 ID:R6ZAFWKb.net
「ゲームの名は死」ダン・J・マーロウ(早川書房)

仲間と共に銀行を襲ったドレークは警察に撃たれ、相棒バニーに金を託して別れた。しかしある時バニーの送金が途絶え、更に怪しい電報が届く。
相棒に何かが起きたと悟ったドレークはバニーの潜伏先ハドソンへ向かった。

〈千の顔をもつ男ドレーク〉の誕生譚だそうだが、初めて読んだら戸惑った。だってこいつ、ちっともシリーズキャラクターぽくないのだ。ガチの悪党なんである。
冒頭の銀行強盗ではバンバン射殺してるし、クロスカッティングで語られる飼い猫を巡る少年時代のエピソードにはドン引きした。この男には蜂の巣エンドが相応しい。

ただ、暴力警官に復讐するエピソードはスカッとしたし、先の嫌悪感はひとまず棚上げにして読み進む。ちなみに現代パートでも悪徳保安官と対決する。
そしてドレークに唯一好感が持てるのは女にも容赦しないところ。ここまで闇を背負っている奴がレディファーストとか激萎えだもんね。その点は気に入った。

ラストまで読むとシリーズ化の懸念が幾分腑に落ちた。こういうことだったのね。

546 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/11/15(土) 19:31:27.45 ID:R6ZAFWKb.net
「あぶない暗号」アンドリュー・テイラー(早川書房)

文学部の学生ドゥーガルは担当教授ガンバーが研究室で殺されているのを発見する。
その直後、ハンフリーと名乗る男が現れ、教授は依頼を受けて古文書を解読していたと話すが、程なくして彼も死んだと知らされる。
しかし、ハンフリーは生前ドゥーガルに手紙を書いており、例の古文書には高価なダイヤモンドのありかが記されていると明かしていた。
ドゥーガルは恋人アマンダと共にダイヤモンドを狙うのだが……。

一応カップル探偵の宝探し歴史ミステリーですが、それはあくまで外枠に過ぎず、むしろ目につくのはこの二人の危うさを孕んだ関係性です。
ドゥーガルの側からアマンダの奔放さ、心の読めなさに対する不安や焦燥などが随所にみられます。
これがもっと洗練されていればジェラルド・A・ブラウン的な旨味が出るのですがそこはデビュー作の憾みか一方通行に感じられてしまい、そのせいで印象的なラストが十分活かせていないのは残念でした。

とは言え後日談があるなら読みたいなとググったところ、本作はシリーズになっていましたが他に邦訳があるのは第3作だけでした。トホホ……。

547 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/11/15(土) 19:36:19.28 ID:R6ZAFWKb.net
「KGBから来た男」ジェームズ・ダフィ(早川書房)

元KGBの私立探偵ターボは旧知の弁護士の紹介で大富豪マルホランドと面会する。
誘拐された娘を助けて欲しいとの依頼を受けるターボだったが、マルホランドの妻はかつて苦痛と共に別れた前妻だった!?
この誘拐事件を突端に、ターボは過去のロシアの闇と対決しなくてはならなくなるのだが……。

スパイものかと思いきやハードボイルド風味。風味と書いたのはやや過剰に思えたからです。
主人公はスキンヘッドでアラフィフのロシア人なのでかなりの強面ではないかと思われますが、作中身体的にも精神的にも痛めつけられます。
前者も首を傾げるほど酷いが後者がまた非道い。当時の歴史の流れから来る理不尽を全部主人公におっかぶせて責められるのだから噴飯ものです。まして主人公は被害者なんですよ?
だから終盤の展開には主人公たちには悪いけれど胸がスッとしました。

内容は、ネタを割ってしまえばスパイものとしては初歩的なプロットを、主人公と元妻やマフィアのドンとの過去の因縁を散々煽って小出しにすることでリーダビリティを維持しており、
それ自体も至って単純なので少し拍子抜けしました。言ってみれば虚仮威しですが、デビュー作なので容赦しましょう。

ただこれだけの主人公sageに見合うカタルシスが欲しかったですね。二作目にはあるといいけれど。

追伸 アメリカの弁護士て年収数十億いけんのか。。。

548 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/16(日) 18:32:30.96 ID:Gb+qOTbx.net
トマス・チャスティン「子供たちの夜」を読む。
NY市警のカウフマン警視シリーズで一時期人気があった作者の
文庫化されなかったノンキャラ作品。
舞台は作者十八番のNY、より具体的にはセントラルパークである。
パーティ帰りにパンクしたヒロイン(母子家庭のキャリアウーマン)の
自動車から9歳の娘が消えた・・・
警察の大捜査網にもかかわらず、その行方はわからぬまま時は経過してゆく、
遂にヒロインはみずから夜のセントラルパーク探索に乗り出す・・
古い作品だが最近の日本の事件を想起させ、ビビッドではある。
冒頭の女浮浪者焼殺というショッキングなシーンから、
夜のセントラルパークの情景描写もたっぷりに、叩き込むような語り口で読ませるが、
非常にショッキングなラストまでが少し長過ぎる感はある。
まさか、まさかのラスボスはジェニファーちゃんなーんである・・・

549 :記憶喪失した男:2014/11/21(金) 16:27:14.04 ID:ZesXk0KJ.net
第二回ハヤカワSFコンテスト大賞の戦国武将柴田勝家「ニルヤの島」今日発売です。

ちなみに、病院が来い! と評される現代文学ソローキンの「愛」復刊。
アマゾンにはあと一冊です。お早めにどうぞ。

550 :名無しのオプ:2014/11/21(金) 18:11:18.69 ID:IxeyIPmy.net
日本語で

551 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/22(土) 20:54:38.41 ID:/oEbkCX/.net
ジョセフィン・テイ「ロウソクのために一シリングを」を読む。
古典「時の娘」の安楽椅子探偵で知られるグラント警部シリーズの
通常(?)捜査もの。
予言成就(と思わせるため)の殺人だが、ジョンの読者よのような
怪奇探偵小説という方向には行かず、普通に探偵譚。
モーターボートを使った犯行等はちょい面白いのだが、
フーダニット部分に後出しの事実が多過ぎなのは感心出来ないし、
タイトルもネタばれ気味はNGだとしても、もっとミステリ部分に
関連したものでないと不適でしょ。
純文学作品じゃあるまいし、意味有り気で凝ってれば良しというものではない。
1936年と古い作ながら、既にジャーナリズム批判の視点が取り入れられて
いることも興を惹くが、2ちゃん的には「グラントはロリコン?」なエピ
があるのが驚き。
引用部分は、グラントに対するものではないが、
「エリカ(*年の頃16ばかり、郡警察署長の娘)は短いスカートをぱっと
めくりあげ、夏冬にかかわらず履いている体操用ブルマ―のゴムバンドを親指
で引っ張って内側を見せた。
『読める?』
『エリカ・M・バーゴイン』男は目を丸くして、ラベルに赤で書かれた名前を
読んだ。
『あまり人を疑うと損するわよ』エリカは指を放してバンドをぱちんと元に
戻した」
ねらー歓喜(w、時代を考えると、相当にやばい描写のような。

552 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/23(日) 17:53:57.87 ID:mHJuz6fd.net
ロバート・ロスナー「虹の果てには」を読む。
うーん、読後感氏の感とはやや異なるかも。
長期服役後、強奪し隠した金を取りに男は故郷に帰って来た・・・
昔の東映映画あたりにありそうなクライムノヴェルである。
主人公(30後半)、同年代の図書館司書(女性)、主人公をいまだに
付け回すベテラン刑事、まあこのメーンキャラはビビッドに良く描けている。
刑事を単なる敵役にしていない硬派過ぎる孤独な男と言う設定が良し、
背景となる米の田舎町の描写は活きている(ヒロインが勤務する
月~金曜日ウィークデイ午後3時開館で夜9時閉館という図書館が面白い。
米には実在するのだろうか?)。
ラストは、まあ金を手にして男女の逃避行ハッピーエンディング、
追う刑事の車は駐車場の地盤が弱った部分(金は駐車場にある木の下に
埋められていたので、主人公は図書館の地下書庫からそこへと掘り進んでゆく)
ドボーン!という漫画ちっくとも言える展開。
これは萎えました(w
同様な設定で仏ノワール、東映映画とかなら、ラストはバッドエンディング
でしょうな。主人公たちは逝き、刑事も逝くとかな・・・
まあ、今では文庫版でも翻訳刊行されることはないであろう昔々(と言うても
70年代ではあるが)のコンパクトに纏まったポケミス作品とは言い得るわな。

553 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/24(月) 15:46:03.70 ID:C0iC76st.net
トマス・スターリング「一日の悪」を読む。
遺産目当てで水の都ベニスに集合した人々、
やがてその一人が死を遂げた・・・
アガサが書けばテンポ良く読ませたであろう設定だが、
中盤でやや展開がタルくなるのが難。
実は一文無しが打った大芝居(文字どおり芝居見立てなのだ、元ネタは日本人
には全く馴染みがないものだが)でしたというお話。
本格ミステリではなくサスペンスものという趣旨なので、
フェアな手がかり云々等の問題点は大有り(後出し、調べれば簡単にわかるやろ
要素多)だが、この面はともかく、テーマが謎解きよりも意図せず事件の渦中
に入ってしまった若い女性の再生(これも文字どおり)の物語が中心部分に
あると思われ。この手のものは他でやって欲しいという感大。
ポケミスに関するアンケートで本作を推す声もあったが、
相当に古い作でもあるし、
現時点では、「逝ってよし!」が妥当な評価でしょうな。
あとがきでミッチーこと都筑道夫が「アイデアの一部が、日本の古典落語
『こがね餅』に非常によく似ている」と記しているが、
これは?チョコにゴールドのエピか?

554 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/29(土) 19:10:01.85 ID:tJjTnut8.net
ハーマン・ランド「怪奇な屋敷」を読む。
何ともベタ過ぎるタイトル。
ラブロマンス有りないかにもアメリカンミステリな章と
タイトルどおりコテコテな怪奇探偵小説な章とのギャップは
面白くはある。
何か、名作(と称される)ユダを想起させるような密室殺人状況
(ガイシャと2人だけ状態)だが、
トリックそのものは、不気味なお面と画布に隠れろって(w、
天狗の隠れ蓑じゃあるまいし状態で頂けないものあり、
(現場捜査で天井の留め金に注意してもよさそうにも思える)
フーダニット的にも、犯人は元上司の声帯模写得意でしたって
肝心要の手がかりが完全後出し状態なのはNGもの。
探偵役のホテルの客室係が細部に至るまでホームズ級の推理力を見せる
という展開は面白いのだが、
(当初はルックスがぱっとしない地区検事長の部下ミリケンが探偵役
かと思うた。当初、彼氏もなかなか的確な推理力を見せるのだが)
本格ミステリとしては高く評価できる点は無い。
「訳者あとがき」(松本真一)では「猟奇的な雰囲気を醸し出しながらも、
実は緻密な蜜室殺人の謎解きを主眼とした本格推理小説としての醍醐味も
十分に堪能出来る作品」、
解説として付された「探偵小説の勃興期の一作品」(平野義久)では、
「ストーリーの展開に冗長な部分を感じたところもあって、本作を読んだ
直後では本格派の評価を下すには至らなかったが、作品が発表された1928年
という年代を思いなおせば、ミステリーの黄金期とよばれた時代に先駆けて
発表されたことに思い当たり、その時代に、これだけ練り上げた作品を書き
上げた作者に敬服を覚えた」
少し引用が長くなったが、自分の子(翻訳作品)は可愛いく思えるという点
を割り引けば、やはり後者の評が妥当と言い得よう。

555 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/30(日) 20:28:37.29 ID:lXeHPJi4.net
リン・メイヤー「ペーパーバック・スリラー」を読む。
女性精神科医が旅の徒然に偶然手にしたペーパーバックには
彼女の診察室としか思えぬ様が克明に描写されていた・・・
うーん、気色悪い話で掴みはOKなのだが、
このネタは平凡な若い主婦がなすすべもなく不安と恐怖におののく
という展開の方が面白くなったような。
(月並みかもしれないが、サスペンスの盛り上げにもこちらの方向性の方が
モアベター(w だ)
主人公はオーバーサーティのベテラン女医という強者(?)だけあって、
職業的興味の面からも、クールに事態の調査にあたってゆく・・
当時(70年代)の精神医学、心理学に関する薀蓄も散りばめられ、
これはこれでひとつの趣向なのだが、やや理屈っぽっくなり過ぎたという
感も強い。
あとがきによると、作者は左がかった社会運動家あがりとのこと、
なるへそ、恐れおののくか弱き女性像(専業主婦)なんてヒロインは
お好みでないか。
結局、とち狂った同業者(精神科医)が作家(侵入の実行犯)のバックに
いて、ヒロインの患者だった黒人のインテリ学者がガイシャという結末。

556 :名無しのオプ:2014/11/30(日) 20:47:39.56 ID:NIOcjBa7.net
こうやって読んでもない本を読んだ読んだと何年も書いてるのはむなしいけど気持ち悪いまでの執念だ

557 :名無しのオプ:2014/11/30(日) 20:58:50.99 ID:IMlascMU.net
読んでない本の感想をどうやって書くと言うんだ????
お得意のパクリ説を持ち出すなら、どこのサイトからパクったと具体的に出してみろ。

558 :名無しのオプ:2014/11/30(日) 21:26:32.98 ID:wUiVIEYQ.net
パツカユ
かわいいいいいいいいいいいい

559 :名無しのオプ:2014/11/30(日) 21:30:11.98 ID:VbmsaHeD.net
>>556は泣きながら敗走w

560 :名無しのオプ:2014/12/01(月) 09:49:55.27 ID:8nBbE73O.net
>>>554
ランドじゃなくてランドンだよ

561 :記憶喪失した男:2014/12/01(月) 22:48:39.95 ID:GV86y0wy.net
「○○○○○○○○殺人事件」が面白いらしいな。
200ページと短いし、場合によっては来年の読書感想文おすすめ本に入れるぜよ。

562 :記憶喪失した男:2014/12/01(月) 22:50:12.10 ID:GV86y0wy.net
海外古典は詰みまくってるんだけど、
「エラリイ・クイーンの冒険」ってどうなの?
「シュロック・ホームズの冒険」と並んで候補だわ。

563 :名無しのオプ:2014/12/02(火) 18:32:34.23 ID:BsmuWy+H.net
>>560
未読書斎にそういう常識は通用しないよw

564 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/02(火) 20:56:48.85 ID:5t8RJTK5.net
>>562
その2つの短編集は並列しての比較はできかねる。
冒険はエル自身の手になる気軽に読める作品集ではあるが、
冒険よりも、傑作との評が多い「神の灯」を収録した新冒険の方
を先に手にすべきかとも思う。

565 :記憶喪失した男:2014/12/02(火) 21:48:27.65 ID:feMV35Ms.net
>>564 うーん。それなら、エラリー・クイーンの冒険も新冒険も見送るかな。
ごめんね。

566 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/03(水) 21:05:12.08 ID:uAHJJY8q.net
>>565
何だ、また「ネタ」かよ(w
短篇集だと、ナゾナゾ集みたいな「クイーン検察局」はスルーすべきと書くと、
逆に手にしてみるとか?(w

また遊びに来てくれや。

567 :記憶喪失した男:2014/12/04(木) 16:56:32.86 ID:WpGvI5F9.net
>>566
ネタじゃないよ。本当に相談しているんだよ。
やっぱり、積読崩す方が先かなとも思うんだよね。

568 :名無しのオプ:2014/12/05(金) 12:00:00.68 ID:vevTPUfS.net
書斎の個人指導だね。
他の初学者も勇気を出して教えを乞えばいい。
ただし礼節は弁えるように。

569 :名無しのオプ:2014/12/06(土) 07:57:57.10 ID:0WHNalXV.net
暗痴は肝に銘じておけ

570 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/06(土) 23:37:09.45 ID:Y1k32NEs.net
A・D・G「病める巨犬たちの夜」を読む。
まあ、ギャングそのものは出て来ないが、田舎舞台のノワール、
クライムノヴェルですわ。
(偽札ネタ)
最後の最後に来て叙述トリックが使用されていたとわかる趣向は
面白いが、前記した「おれは暗黒小説だ」同様に、
原文の雰囲気を伝えるもための訳なのではあろうが。
崩したC調気分の語りが非常に読み難い。

571 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/07(日) 09:55:33.66 ID:GDvumuPA.net
E・D・ビガーズ「黒い駱駝」を読む。
中国人刑事チャーリー・チャン警部シリーズの一編。
昔、創元推理文庫に収録された2作を読んで以来の再会(?)。
常夏のハワイを舞台に当地を訪れていたハリウッド女優殺人事件を追う
我らがチャーリー、過去のハリウッドでの殺人が絡んでいるとわかってくる・・
風光明媚な観光地ハワイの情景描写たっぷり、ミステリとしての
仕掛けの単純さはともかくとして、テンポ良く気軽に読ませるものはある。
あの横溝御大が評価したとあるテーブルの座席の位置から犯人を特定する
趣向は面白いのだが、まあ、謎解きミステリらしい見せ場は終盤に来ての
このシーンのみ。
フェアな手がかり呈示を要求するような作とは思わぬが、
犯人も脇どころかガヤに近いようなキャラ(メイド)だし。
シリーズ中でも評論家諸氏からスルーされ気味(解説参照)なのは仕方
ない出来とは言い得よう。
中国の箴言の数々を口にしながら捜査に従事するデブで11人の子持ち
チャーリー警部をはじめ、
画才ある(?)ビーチコマ―(つまりホームレスである)のスミス、
主要登場人物表(つまり主要ではないか(w )にも名が無い
真面目だがどじっ子なカシマ刑事(チャーリーの部下でいたぶられ役)等々、
個性的なキャラは多く、この点は面白いんだけんどね。

572 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/07(日) 09:56:04.84 ID:GDvumuPA.net
ヘレン・マクロイ「逃げる幻」を読む。
巻末解説には「上手い。圧倒的に上手い。私はすっかり脱帽した」
「今まで翻訳されなかったのが不思議なぐらいだ」
とかあるが、「どの辺がじゃ?(w 」 
「これは翻訳が無かったのも不思議ではないでしょ」
というのが正直な読後の感ではある。
全編スコットランドが舞台というのは、本年では実にタイムリーと言い得るし、
荒涼としたムーア(雅子=マーちゃんは、なぜか「荒野」とか「荒地」
とは訳していない)等の情景描写は臨場感溢れるものがあるが、
肝心要なミステリ部分が何とも最早なーんである。
人間消失ネタは古代の地下室がありますた、終盤になって出て来る
密室殺人は実は割れた明かり採りの窓がありますた、
フーダニット的にはナチス少年の成り済まし、
重要な手がかりはオームの法則とか、そんなのわかるか!(w
刊行された終戦の年1945年に読んでこそ、それなりの感銘も
あったであろう作なのであろう。
犯人(ナチス少年、ヒトラーユーゲントか)の心理により深く切り込めば
「小説」としての読み応えは増したであろうが、
ありきたりなラブロマンスの成就でエンドするあたりにはがっくり来るもの
あり。まあ、ヘレンは所詮ミステリ作家(その描写力は惜しまれるが)という
ことなのであろう(w

573 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/13(土) 08:35:08.13 ID:gN9pvsPm.net
ジョゼ・ジョバンニ「おとしまえをつけろ」を読む。
顔役のギャングである通称ギュことギュスターブ・マンダの生き様、
ちゅーか、死に様を描いた作。
作中の2回の脱獄シーン、金塊輸送車襲撃シーンとかあるが、
エピソードのひとつに過ぎず、ポケミス作品とはいえ、
ミステリ的な緻密な面白さはなく、雰囲気で読ませる典型的な仏ノワール
である。前記したデビュー作「穴」が脱獄小説とでも称すべき内容で
全編ムショが舞台だったのとは対照的に本作はシャバがメーンな舞台ゆえ、
広がりがある物語展開となり、フランス暗黒街に蠢く多彩な人物像が
ビビッドに描かれてゆくのが読ませどころである。
訳文を見ればわかるとおり、本作も諸に東映ヤクザ映画の世界、
ギュは、時節に合せればケン高倉と言いたいところだが、
あえて喩えれば鶴田浩二だろうね。
ただし、決して仲間を売らない等の仁義(警察のトリックにかかって
会話を録音されてしまうあたりはドジっ子(w )を心得た顔役とはいえ、
警官殺しも辞さない冷酷な面もあるため、本邦だとそのままは映像化し難いか。
仏ではフィルム・ノワールの巨匠J・P・メルヴィル監督、リノ・ヴァンチュラ主演で映画化されたそうだが、
筆者は未見である。

574 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2014/12/14(日) 02:48:47.89 ID:ZmK0fqNK.net
質量共に圧倒的な書斎論考の前にぐうの音も出ないアンチ

575 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/14(日) 13:20:31.46 ID:bGgG2nhw.net
フィリップ・マクドナルド「鑢」を読む。
ロスでもなくジョンでもなくフィリップ、本邦ではわりと不遇な作家
(翻訳作品そのものが少ないうえ、早期に絶版)。
ノンキャラの密室もの「フライアーズ・パードン館の謎」が面白く
(溺死させた水を飲んでまうというトリックが秀逸)、
国書から鳴物入り(?)で刊行されたゲスリン大佐シリーズ作品
「Xに対する逮捕状」は奇を衒い過ぎた感があって面白くは思え
なんだ。
今回、多くの論者が推すゲスリンもの第1弾の本作を手にしてみた。
殺人事件(閣僚の撲殺だが政治絡みではない)捜査の過程は、やや変化に
乏しく退屈なうえに、本筋には直接関係しない恋愛ネタが何と3つもあり、
いささか(注 いささか先生ではない(w )うざくはある。
(解説ではトレントの影響かとあるが、あちらではこの辺はストーリー上も
上手く活かされている)
読ませどころは、真犯人指摘後、もう1回ドンデン返しがあるのでは?
と思わせるほどの頁数を残しての論理の詰め、犯行当日の関係者の行動を
分単位でトレースしてゆく点などは、エルの国名シリーズ好きとかには
たまらんものがあろう。
凶器となった鑢の柄に大工道具と見せかけて容疑者の指紋付着させるトリック、
二階から「犯行現場に今日は」に至る外壁の痕跡検証等々、細部の推理も面白い。
ただし、偶然性を利用した時計のトリック、カツラを利用したおとぼけトリック、
この辺はあまりに創り過ぎたという感は受ける。

576 :名無しのオプ:2014/12/15(月) 00:14:25.03 ID:gqcR2tw/.net
「特捜部Q キジ殺し」ユッシ・エーズラ・オールスン ハヤカワ文庫 1040円

一気に読めました。
北欧ミステリーなので、マルティンベック風の警察小説かと思い、
手にとったのですが、むしろ、フレンチやモースのような警官が主人公の
本格物に近い印象。
もちろん、現代ミステリーらしく、アクションもふんだんにあり、主役の私生活
も書き込まれてはいるのですが。
犯人は、あらかじめわかっており、犯罪の証拠をいかに掴んでいくかという
のが、この作品の最大のおもしろさで、主役のカール警部補は、フレンチ警部の
後継者たちのひとりといっていいでしょう。
時にとんちんかんな行動をとる部下たちお、魅力的fです。
この部下たちの不可解さが、なんともいえない魅力となって
います。
ユーモアとシリアスの狭間を縫って、微妙な均衡をたもち
ながら、地道な足による操作と、部下の奇矯ともとれる
行動からインスピレーションを得て、犯人を追い詰める。
ちょっと、日本人には書けないミステリーだと思いました。

577 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/20(土) 14:10:25.34 ID:BhMoJaa1.net
ドミニック・ファーブル「美しい野獣」を読む。
あとがきにも記されているが、これはミステリではないわな。
プロバビリティの犯罪ネタの官能的な普通小説でしょ。
フランス人作家の手になるものだけに、雰囲気で読ませるというたところ。
それでも退屈で読み難いが。
狙った完全犯罪は失敗、主人公のイケメン=美しい野獣は自滅するという
お約束で予想どおりのエンディングれす。

578 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/20(土) 14:11:09.10 ID:BhMoJaa1.net
レイモンド・ポストゲート「十二人の評決」を読む。
大昔の作品でいまだ文庫化もないが、大乱歩のベストチョイスに入っただけ
あって、非常に面白い作であった。
もう一人の「うの」こと宇野輝雄氏のくだけた読み易い訳文も良。
ただし、後味は極めて悪いので、勧善懲悪やハッピーエンディングを好む
向きにはお薦めは出来かねるものあり。
前記したP・マクドナルドは本格ミステリとしてはともかく、
キャラ形成等の物語作りに難ありとの指摘を目にするが、
本作などと比較した場合、その指摘に「なるへそ」という感あり。
十二人の陪審員の背景(=人生)を
あたかもショートストーリーが如く簡潔に描き切ったうえで、
(簡単に紹介されるだけのキャラもいるが)
本題の少年の不審死の件(第二部)に入ってゆく手腕は見事としか
言い様がない。
(この辺はエルのYを一捻りした展開で興味深い)
陪審員のメンツ、事件関係者も人間臭いキャラばかりでリアルそのもの、
典型的な善人、悪人と言い得るような者はいない。
叔母殺し(迷宮入り、人間の思い込みを利用した犯行トリックが良)の過去を
持つ陪審員もいるが、この女とて類型的な悪ではなく、
現代日本にも存在しそうなビビッドなキャラである。
本邦でも裁判員制度が導入された今、あらためて広く手に取り読んで欲しい作、
各人、心して読め!!!

579 :名無しのオプ:2014/12/20(土) 22:18:37.56 ID:W9PxB5Mi.net
ほんとへたくそな文章だな、おまえ

580 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/21(日) 20:21:29.07 ID:9tei1u3Z.net
>>579
ご意見は承ったが、ついでに「美しい野獣」「十二人の評決」に関する
貴方なりのコメントを頼む。
何か不都合でもあれば、その旨をレスしてくれたまえ(w

E・D・ビガーズ「チャーリー・チャン最後の事件」を読む。
この作者(探偵チャーリーの生みの親)の手になる最終作。
女性オペラ歌手殺人事件と今回もわりと華やかな題材だが、
舞台はホームグラウンドなハワイに非ずどころか、
第二のそれとも言い得るフリスコでもなく、
更に米本土奥に入った西部の雰囲気たっぷりな地、
ネヴァダとカリフォルニアの州境である。
季節が冬ということでもなかろうが、
何か売り物であるチャーリーの箴言も今ひとつ寒く冴えない感あり。
やはりこの辺は筆の衰えでしょうな。
ただし、ハワイやフリスコを舞台にした場合と同様に、
情景描写は詳細で見事、冬のタホー湖とそれを取り巻く山脈等が
鮮やかに眼前に浮かんで来るが如し。
さて、肝心要なミステリ部分だが、チャーリー自身も作中で
「この考えには好奇心をあおられ、しばらくもてあそんでいました」
と語っている、「飛行機から撃て!」なトンデモ風真相の方がおもろかった
のではなかろうか?
長年の忠実な下僕(シナ人)に庇われた、ええ歳こいた金持ちのボンボンの
発作的な前妻殺しって真相は、さほど面白いものとは思えぬのだ。
本作でワトスン役を務める地元のイケメン保安官とガイシャの若い愛人の姉(美人)のありきたりなロマンス話も、
予想どおり、彩以上のものでないのは、やはり物足りない感あり。

581 :名無しのオプ:2014/12/21(日) 21:31:13.81 ID:hOxkTT8F.net
ほんとへたくそな文章だな、おまえ

582 :記憶喪失した男:2014/12/22(月) 23:29:38.14 ID:c4oMb+2d.net
「善の根拠」 南直哉
5位/494作品。日本語小説。
必読の名著である。

胎児に対する生命工学を、胎児に対する親の所有権は「借りている」状態にあると説く。
不倫がいけないのは、家族を発明したのだと説く。

曹洞宗の僧侶の書いた本であるから、根拠とする出典を仏教に求めたり、道元の「正法眼蔵」に求めたりするが、
一神教に対する知識もおさえており、
現代に生きるものは、キリスト教もイスラム教も仏教も存在することを知っているのだから、
自分で宗教を選んだはずだというようなことが書いてある。

五十年後まで読み継がれるべき名著であり、南直哉は場合によっては聖人に列せられてもおかしくない哲学者である。
現代仏教の最先端はここに確立した。
現代哲学の教えがここに書いてある。

583 :名無しのオプ:2014/12/22(月) 23:30:37.20 ID:jBcrN0gz.net
キチガイは消えろや

584 :名無しのオプ:2014/12/23(火) 06:14:07.27 ID:VDZuYJXQ.net
南直哉は(小説ではないが)「語る禅僧」を読んで吐き気がしたわ
小説なら老師と少年がマシといったレベル

585 :記憶喪失した男:2014/12/23(火) 14:23:24.59 ID:t75B3mFP.net
>>584
そんなひどいのか。近年の向上は目を見張るものがあるな。

586 ::2014/12/23(火) 15:04:38.48 ID:2Hm2dzip.net
  /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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    l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::// ヽ::::::::::::::l
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   ):::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/    ノ/ __,'''i: ('''__):::l  
  )::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/         ̄ ̄ン:. :「 ̄`ヾ   
 1:::::::::::::::::::::::「 `┤l:::::::::::::::::l          ̄   ,  ヽ ̄ l   
  `l:::::::::::::::::::::ヽ  :l li:::::::::::::/        ヽ  /´   `l  |
  ヽ::::::::::::::::::::::\_」 lヽ::::/         .l  !:-●,__ ノ  /      
  ノ:::::::::::::::::::::::::::ノ | l `゙゙           i ,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,  /ヽ       
,/ ヽ::::::::::::::::::::::(  l l::::::::..         /.:''/´ ̄_ソ  /  `ヽ
     ヽ:::::::::::::::ヽ | l:::::::::::...      /::// ̄ ̄_ソ  /    \   ヴッ!!
        ヽ:::::::\| l::::::::::::::::...    / :::.ゝ` ̄ ̄/ /       ヽ
           ヽ:::l l:::::::::::::::::::..      ̄ ̄;;'' /         ヽ
              l l;;;;;;:::::::::::::::.....;;;;............;;;;;;''ノ            l
              l l '''''''''''''''''''''''''''''''''''''' ̄l |             |

http://www.youtube.com/watch?v=z2qK2lhk9O0

587 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/23(火) 15:56:01.72 ID:82Kxys4m.net
E・D・ホック「コンピューター検察局」を読む。
短編の才人の数少ない長編、しかもSFミステリである。
トランスヴェクション・マシン(スタトレでもおなじみ瞬間物質転送機ですわ)
開発者である政府高官がCP制御下の手術中に大量出血して死亡、
CPが間違いを犯すはずはないのだが・・・
コンピューター検察局(CIB)が動き出す。
うーん、ネタは悪くないのだが、正直言うて、失敗作ですわ。
トランスヴェクション・マシンは正に手品まがいのインチキ、
手術の失敗は事前にガイシャが薬(血液の凝固を妨げるもの)を注射されていたからやとか、これではなあ(w
CP検察局というのは連作短編に適した設定かと思うが、
コテコテのミステリ作家で、
密室ものを中心とした不可能犯罪ネタには事欠かない作者だが、
適したSFネタの持ち合わせが無かったのもなー。
エレクトリック・ランス(電動張り型)ってエロな小ネタは諸過ぎておもろくは
あったが(w

588 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/23(火) 15:57:23.19 ID:82Kxys4m.net
E・D・ホック「コンピューター404の殺人」を読む。
検察局シリーズ第二弾。
(第三弾もあるがこれは未訳、何気に面白そうな原題なので
残念ではある)
今読むにはタイムリーな選挙ネタ。
選挙用大型CPへの今でいうハッキング無断使用、
裏には反政府思想組織の存在が・・これに前作に登場した
現代のラッダイト運動組織とでも称すべきHANDが絡む。
真相は大統領になりたかった男(CPの開発者)の犯罪ですた
というもの。
まあ、前作同様にお色気やアクションもあって、
気軽に読むには適かもしれぬが、基本は逝ってよし!レベルだわな。

589 :名無しのオプ:2014/12/23(火) 23:43:42.06 ID:mm8wWT0F.net
>>587
>E・D・ホック「コンピューター検察局」を読む。
>短編の才人の数少ない長編、しかもSFミステリである。
>トランスヴェクション・マシン(スタトレでもおなじみ瞬間物質転送機ですわ)
>開発者である政府高官がCP制御下の手術中に大量出血して死亡、
>CPが間違いを犯すはずはないのだが・・・
>コンピューター検察局(CIB)が動き出す。
>うーん、ネタは悪くないのだが、正直言うて、失敗作ですわ。
>トランスヴェクション・マシンは正に手品まがいのインチキ、
>手術の失敗は事前にガイシャが薬(血液の凝固を妨げるもの)を注射されていたからやとか、これではなあ(w
>CP検察局というのは連作短編に適した設定かと思うが、
>コテコテのミステリ作家で、
>密室ものを中心とした不可能犯罪ネタには事欠かない作者だが、
>適したSFネタの持ち合わせが無かったのもなー。
>エレクトリック・ランス(電動張り型)ってエロな小ネタは諸過ぎておもろくは
>あったが(w

590 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/12/25(木) 00:01:06.55 ID:zDuYZGuc.net
「クリスマス・プレゼント」ジェフリー・ディーヴァー(文藝春秋)

どんでん返し職人の初短編集です。
期待して読み始めたんですが、どうも乗れない。いや、巧いは巧いんですよ? でも何か味気ないんですよねぇ。ディーヴァーってクセが無さ過ぎるのかも。
あとどんでん返しの中身も想定の範囲内で、教科書的というか伝統芸能“どんでん返し”を鑑賞してるみたいでビミョーなのです。

しかしながら中盤に差し掛かると次第に乗れてきて「この世はすべてひとつの舞台」はこうきたかと思い、ちょっと洒落た都会の御伽噺「ノクターン」にほっこりし、
「被包合犯罪」には快哉。これぞリーガルなどんでん返しですよ!

ベストは追尾を飾る「ひざまずく兵士」に。準・最後の一撃ものといった感じで幕切れは本の終わりにぴったりでした。

クセの無さは課題ではないかと思うものの総合的には及第点を差し上げることとします。

591 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/12/25(木) 01:43:44.04 ID:zDuYZGuc.net
「銃弾の日」ミッキー・スピレーン(早川書房)

民間の諜報機関に属するスパイタイガー・マンはある時憎んでも憎みきれない仇に巡り会う。タイガーは残酷な復讐を遂げようと執念を燃やすが……。

裏表紙は読まない方が良いね。10ページのセリフが死んじゃう。
閑話休題。スピレインのスパイものは「デルタ野郎」以来。つか、それ以外も1作くらいしか読んでないけど。

スパイものとは言っても本作は復讐がテーマなのであまりエスピオってない。派手な殺し合いとかもあってC級ハードボイルドぽいし。
スパイもののお手並み拝見は2作目からかな。

追伸 208〜209ページ辺り反共右翼のマッチョスピレインの価値観が端的に示されていて不快。

592 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/12/25(木) 01:47:05.98 ID:zDuYZGuc.net
「イン・ザ・ブラッド」ジャック・カーリイ(文藝春秋)

相棒ハリーと釣りを楽しんでいたカーソンは漂流していたボートから赤ん坊を救出した。
ハリーは赤ん坊にノエルと名付け可愛がるが、預けた病院では誘拐の危機に晒されることに。
一方差別主義者の説教師スカラーがSMプレイの最中かのような状態で死んでいるのが発見される。
全く無関係に見えた二つの事件には人類史を揺るがす驚愕の秘密が隠されていた!

カーリイ第5作。安定供給にホッとするね。但しスレイドとスタインハウアーな忘れそ。
奇しくも本作はそのスレイドに一脈通じるところがありそうな作品なのだ。ある意味では突き抜けた真相なのである。
そのためか本格ミステリとは言えない結構でショッカーに近く、フーダニットも一つ凄いのではなくそこそこのを複数仕込んでいる感じ。

おうそれからカーソンの女遍歴はお預け。アンテナはビンビン張ってんだけどね(笑)。

最後に、本作は人種差別がテーマなのだが正直お腹いっぱい。何か偽善的誇張のにほひが……。何作かに一編やらんとうるさい層がいるのかね。アリバイ作りに付き合わされた気分。

593 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/12/25(木) 01:48:37.59 ID:zDuYZGuc.net
「スピレーン傑作集1」ミッキー・スピレーン(東京創元社)

中編2つと短編3つ。
読み終わって驚く。
技巧的なサスペンスや乱歩チックなものなど、それまで抱いていたスピレーンのイメージとは違った味わいの作品が収録されているのである。
目玉はほぼ半分を占める「狙われた男」なのだろう。神出鬼没の殺し屋を巡るメロドラマだがこれは些か長すぎるように思う。いくらパルプマガジンの読者でも途中で気付きそうだし。
なのでベストは「高嶺の花」に。自らにつきまとい大切なものを奪っていく腐れ縁の相手への奇想天外な復讐とは? これは異色作だし、着想も全然悪くない。どころか面白い!

2もいずれな。

594 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/12/25(木) 01:50:39.79 ID:zDuYZGuc.net
「暗闇の囚人」フィリップ・マーゴリン(早川書房)

野心家の若手弁護士トレーシーは願いかなって無敵の敏腕弁護士レイノルズの事務所に就職を果たす。
それから程なくして切れ者の検事補アビーが夫殺しの容疑で逮捕された。アビーはこれまで対峙していたレイノルズに弁護を依頼する。
かねてから美しいアビーに憧れていたレイノルズはこれを快諾し、トレーシーも事件の調査に奔走することになるのだが……。

いやはや、面白かった!
マーゴリンを読むのは「黒い薔薇」「氷の男」に次いで三冊目だが、今までで一番面白かった。
読んでいて視点が方々に移るから「なんだゴール見えちゃって後は過程の問題じゃないか」と思っていたところが、そこから思いもかけぬどんでん返しの波状攻撃にやられた!
巧い作家だと初めて思った。単なるショッカーでなくそれなりに伏線もあったしね。

あと技巧的なことではないが、他のリーガルサスペンスの主人公たちが懊悩するであろう事柄をあっさり「それが何か?」するマーゴリンの姿勢には相変わらず清々しさを感じた。

追伸 しかし訳はちょっとおかしい箇所が散見四件。
イカボド・クレイン(訳文ママ)の訳注が「アーヴィングの『スケッチブック』に出てくる、いたずらによって恋路を邪魔され、学校から追い出される小学校教師」ってのはどうよ?

595 :記憶喪失した男:2014/12/25(木) 14:12:40.55 ID:1PPivsJ+.net
ダメだったよ。

「シュロック・ホームズの冒険」 ロバート・L・フィッチ
153位/195作品。翻訳小説SF以外。
なんというか、構成が下手くそなのだ。文章の配分が下手で、どこで笑うべきオチなのか状況把握ができない。
だから、まったく一度も笑わなかったし、一度も楽しめなかった。
ホームズが必ず推理を外すというところや、ホームズの劇中の時代が1954年であり、
本物のホームズより40年も古いのは面白いといえるだろう。
だが、これで、ホームズの二次創作で面白い方だというのだから、よっぽど、
ホームズの二次創作などつまらないのだろう。プロが書いた商業作品だけでホームズの二次創作は100個以上あるという。

596 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/27(土) 21:09:59.53 ID:1OStVD/p.net
E・D・ホック「大鴉殺人事件」を読む。
何とMWA賞受章式での殺人事件発生、
マイクから発射された銃弾が受賞者の一人(テレビの人気MC)を
貫いたのだ・・・
元私立探偵なMWA副会長の作家(その名はハメット(w )が探偵役
を務めることになる。
この作者の処女長編ながら、ミステリ作家世界の楽屋裏を覗わせるような
それなりに遊び心に富んだ作とは言い得るが、エル、クレイトン等の実在する
作家連は軽い顔見世程度で表舞台での活躍は無し。
真相も事件取材をしている雑誌編集長は成り済ましでした。
87分署シリーズのような集団捜査により、じょじょに過去の事件が
浮かび上がって来るというものなら、それなりに読める作になったので
あろうが、この辺は「遊び」と「謎解き」の融合が中途半端な感あり。

597 :名無しのオプ:2014/12/27(土) 22:25:22.89 ID:Na7teD4c.net
>>590
「被包合犯罪」いいよね
他にも展開よりも語りに騙される「三角関係」も好き

クセのなさは気にならないと言うか、その方がいいくらいだけど
どんでん返しにこだわり過ぎてて、読み進めるうちに慣れてきちゃう方が気になる
もっとはっきり違う傾向の作品も混ぜていけば衝撃を殺さずにすむんじゃないだろうか

598 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/12/28(日) 19:48:00.11 ID:7w5NNbNJ.net
「列車に御用心」エドマンド・クリスピン(論創社)

短編集。一編を除きシリーズ探偵ジャーヴァス・フェンが登場する。
やたら評判が良かった本だが、確かに本格としてよくまとまっている。良い意味でクイズ的。一編一編が短く伏線もしっかり張られていて解明部が解りやすい。
全体として評価すべきだがやや無理をしてベストを選ぶなら結末が印象的な「苦悩するハンブルビー」か真っ当な毒殺トリックもの「三人の親族」になろうか……追尾を飾る「デッドロック」も雰囲気は悪くないけどね。

ちなみにフェンの言葉遣いが大学教授らしからぬ俺様キャラで最初は違和感を持ったけど、読み進むにつれ作中の動きとマッチしているなと納得した。

599 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/12/28(日) 19:49:32.40 ID:7w5NNbNJ.net
「忘却へのパスポート」ジェイムズ・リーサー(早川書房)

イギリス秘密諜報機関のベテランスパイKがテヘランで消息を絶った。
スパイの情報が東側に漏れていることを懸念した次長マクギリヴレーは真相を探るべく素人をスパイとして送り込むことを決意。
白羽の矢が立ったのは戦時中彼の部下であった医師ジェースン・ラヴであった。
久しく覚えなかったスリルを求めテヘランへ飛ぶラヴの前に石油を巡る恐るべき陰謀の構図を浮かび上がる。

ポケミス60周年記念読書。しかし感想は……タイトル通りかな(笑)。
ストーリーがどうも取っ付きにくいんだよなあ。巻き込まれ型でありながらプロの悲哀みたいなものもねじ込んできたり……。
個人的にはもっと軽快に舵を切るべきだったと思うなあ。敵キャラの描写も登場シーンは良いのにその後が続かない。その時作った流れをラストのドタバタで放棄してしまったのもマイナス。
あそこは一つのキモだと思うのに、主人公も事なかれで行くし、拍子抜け。持て余すなら書くなよと。

あと訳文ね。向後英一と言えば割に聞く名で自分が読んだ中では「悪夢の五日間」とかも手掛けてたと思うんだけど、彼は彼はの連続で気分が削がれる。他もそうだったかしら。

とまれ読まんでよし。

600 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/12/28(日) 19:52:21.24 ID:7w5NNbNJ.net
「フォークナー全集 18 駒さばき」冨山房

かの文豪がものしたミステリー短編集と三蔵法師から聞いて読むもはてななり。
検事スティーヴンズと甥の少年マリソンとの二人が主人公のシリーズなのだが原文のせいなのか訳文のせいなのかどうも読みにくい。
その読みにくさがミステリーの演出として機能しているならばまだしもそれ自体は単純な場合が多いのでただ読みにくいだけ。
具体的に言うとどの話も迂遠な言い回しや関連性の薄いエピソードで水膨れを起こしている。
ミステリーとしてのネタを一応考えたもののそれだけでは弱いと解って書き足したのか、単にそうせずにおられないのか。
いずれにしろノーベルもピュリッツァーもこの場合全くお呼びでない。ネタが弱いならそれを補強するために全筆力を費やすべきである。
解説で探偵小説“仕立て”とあるのもむべなるかな。

ベストはEQMMで次席になったという「調合の誤り」だが、これにしてもそこまでの作品とは思えず。
妻を殺したと自首してきた男がすぐに脱獄して姿を消す。舅は事件後に部屋に閉じこもり証言を拒否してしまい更には……。
真相は確かに驚くべきものだし、事件に対するアプローチの仕方も面白いが、これは編集部がネームバリューで下駄を履かせたのではないか?
ちなみに表題作は主人公の遅かりしロマンスものだがピンとこず。

601 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/12/28(日) 19:53:36.86 ID:7w5NNbNJ.net
「リキデイター」ジョン・ガードナー(早川書房)

いたって普通の人生を送ってきたボイジー・オークスの運命は終戦直後のパリで大きく変わってしまった。
二人の暴漢に襲われていた男を助けたところが彼モスティンはイギリス特別保安部の人間だったのだ。
その実力を見込まれたボイジーは特別保安部のための殺し屋として雇われる羽目になってしまう。
どうにかこうにか務めをこなしていたボイジーはある日、モスティンの秘書アイリスとアバンチュールに旅立つのだが、それは大いなる陰謀の始まりであった。

スパイもののパロディということで期待したのだが、中途半端。コメディにも通俗ものにも舵を取りきれていない印象。
コメディとして観ればボイジーのキャラクターは地味だし何より最初に明かすべきことを中盤に持ってきているのは失策。
通俗ものならばはなから秘書と上手いこといってるのは何とも味気ないし、悪役も魅力不足である。
スパイものの定石たるフーダニットは評価するが……。

かのガードナーにも習作時代があったんだなあというのが正直なところ。次作(こっちから紹介したのは失敗では)読むかは迷う。

602 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/28(日) 22:02:47.84 ID:+K7lzQ4e.net
A・H・Z・カー「妖術師の島」を読む。
昔、ジョン以外のもう一人のカーと言えばこの作家だった。
ただし、専業作家でないためか長編は本作のみ。
原題とは大違いなこの邦題を見て、ジョン作品と思いこうてしまった椰子も
いるかも(w
十八番である短編が本邦で集成されたのは、21世紀に入ってからである。
(このミス等で上位にランクされはしたが、短編集「誰でもない男の裁判」は
面白いとは思えなかったが)
作者の本業は2代に渡り大統領ブレーンを務めた経済学者、
カリブの架空の島国を舞台に人種問題、政治・経済問題を描くあたりには
そのキャリアにふさわしい社会派らしさが感じられるものの、
基本線は女好きなアメリカ人旅行者殺しを担当する地元の警察署長の捜査と
推理を描く警察小説仕立ての本格ミステリである。
勤務時間中に嫁とニャンニャンしに帰る警察幹部ってのも、何だかなあ〜〜(w
ではあるが、これぞカリビアン!、ちゅーか、キャラ的に面白いのだが、
この作家、お堅い本職に似合わずお色気シーン(何と自慰シーンと思われるものまであり)も散りばめられているとはいえ、ミステリとしての出来は芳しくない。
登場人物のひとり(探偵役の警察署長の美人妻)曰く、「・・・推測と、想像と、
たぶんばかりじゃないの」。この台詞に尽きるかと。
せめてフェアな手がかり呈示でもあれば救われるのだが・・・

603 :名無しのオプ:2014/12/29(月) 09:12:05.17 ID:lK+yEgvp.net
>>602
一時間でだいたい何ページぐらい読めるの?

604 :名無しのオプ:2014/12/29(月) 11:34:27.44 ID:VUUoLcza.net
凡人にはわからないし、わかる必要もないね

605 :名無しのオプ:2014/12/29(月) 14:50:56.36 ID:PUk0b2bE.net
>>603
0ページ。

606 :名無しのオプ:2014/12/29(月) 17:25:20.50 ID:QLJ7NqCn.net
書斎も休みに入ったんだね。
日頃の激務の疲れを癒しつつ、論考も見せてくれると有難いな。

607 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/12/30(火) 14:38:37.05 ID:MwyL0NRs.net
「探偵ダゴベルトの功績と冒険」バルドゥイン・グロラー(東京創元社)

かつて乱歩が紹介した『オーストリアのホームズ』ことダゴベルトの活躍を描く連作短編集。

最初これが出ると聞いたとき「なぜ今頃」と思ったものだ。乱歩が紹介したのはもはや半世紀以上前のこと。本来ならとっくの昔に出ていて然るべきなのに、と。
それどころかいわゆる“ライヴァルたち”の括りでも紹介されることなく、創元はおろか国書からも論創からも無視されてきた。
それが突然今になっての邦訳刊行である。無論とにかくも出たことはめでたい。しかしなぜ……その疑問は読後氷解した。ミステリーとして大したことないからだ。

物語の構造はダゴベルトが親友であるグルムバッハ夫妻に招かれたディナーの後で探偵譚を語り始めるというもの。解決後ではなく現在進行中の場合もある。
毎回好奇心たっぷりにダゴベルトに話をせがむヴァイオレット夫人が微笑ましく、時に芸術や出逢った女性の美しさについて脱線しそうになるダゴベルトにぴしゃりと釘を指してそれに対し彼がユーモラスに不満を述べるやりとりなどニヤニヤして読める。

肝心の内容であるが、冒頭の「上等の葉巻」を読んだ時は「おほっ」と膝を叩いた。これは面白いでなはないかと。いきなりこういうことをするのか。実に挑戦的な試みだ。
チェスタトンの上を行く実験的な展開だ、と。余韻が遺るのもいい。
しかしそれが頂上であった。以後物語としてはともかく、ミステリーとして特に見るべきもののない話が続く。

気の利いたトリックもなく、鮮やかな推理もなく、ダゴベルトは警察のデータベースと自らの尾行、変装、家宅侵入によって事件を解決していく。
その繰り返しで正直ライヴァルたちの中で見てもピンよりはキリに近い。所詮この頃の非英米圏のミステリーはよくて劣化コピーに過ぎぬの
だと達観することにした。

ただ、キャラクターの面白さはある。前述したようなダゴベルトとヴァイオレットの他、相棒としての警察幹部の他に迷警部の存在があることは先見性も感じさせる。
またダゴベルトが伝聞を否定し殊更に一次証言にこだわる姿勢を見せるのも黄金時代の探偵たちに先んじている。
後は事件とその解決さえそれらの設定に相応しいものであったならと思わずにはいられなかった。

続く

608 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2014/12/30(火) 14:40:41.11 ID:MwyL0NRs.net
承前

ベストは先に挙げた「上等の葉巻」。真相とそれに纏わるやりとりのニクさが最大の魅力だが、ダゴベルトが手掛かりから演繹的に推理したり本格としての体裁も一応整っている。

他の紹介はいいや(笑)。

609 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/30(火) 19:27:42.30 ID:wpsh8SDv.net
ウィリアム・リンク「刑事コロンボ 13の事件簿」を読む。
コロンボシリーズ初の短編集。
うーん、前にはこういうのもあっても良いし、読みたくも思うていたが、
内容が酷すぎるものであった。
コロンボの生みの親(のひとり)の手になるものだけに期待したのに残念な感大、
ストーリーの根幹に関わる部分に破綻や疑問点が多過ぎなんである。
訳者あとがきでも指摘されているとおり、
第1話「緋色の判決」の凶器をそのままマイスーツのポケットにとか、
第2話「失われた命」のひき逃げの現場=犯人が車を乗り捨てた現場になってしまっていたり等、
いすれもストーリー上は看過できないものが連発される。
出来はともかくとして、「コロンボ」で非倒叙の作品をというのは企画的には
面白いとは思うのだが、所々にコロンボの心理描写があるのは頂けない。
あくまでコロンボは内面では何を考えているのかわからず
(往時のサラ・ブックスや二見文庫のノヴェラ作品、パスティーシュ等は全て
この線)、読者がそれを推理するという興趣があるのも、このシリーズの魅力
のひとつであったに。

610 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/31(水) 19:44:09.93 ID:BiaB7kuD.net
エド・マクべイン「最後の旋律」を読む。
87分署シリーズ最終作となった作。
(結果的に作者の逝去によるものであって、意図して書かれたものではないが)
最初期からの愛読者としては、アガサの「カーテン」と同様、長らく手にとり
かねていた作でもある。
フィドラー(原題は「これ」)、化粧品セールスレディ、カソリックの神父、
大学の女性教師、同じガンによる連続殺人が発生。
ガイシャの間には全く関係性が浮かんで来ず、87分署刑事連の捜査は難航
する・・・
援軍として登場のあの「よそ者」(88分署所属)愛すべき(?)
でぶのオリ―が、アガサのABC、ちゅーか、アガサ作品に触発された
のであろう記念すべきシリーズ第1作「警官嫌い」のような推理を披露、
バーンズ警部(あの事件当時から登場)に軽く一蹴されるのは
お遊びでしょうな(w
(本書解説担当の直井氏がウールリッチ作品にまで言及しながら、
「警官嫌い」には触れていないというのは不可思議千万)、
キャレラの娘がマリファナに手を出し、クリングは黒人女にダブルで失恋、
ホースはなぜか婆専へ(?)、締めがなぜかオリ―とか(w
過去に恨みを抱いた(オーバーキル状態ではあるが、理不尽とまでは言えない)連中を抹殺してゆく不治の病の犯人・・
人生においてスポットライトを浴びたことが無い者がメジャーを占める
ねらーには、最終作にしてあまりに重いテーマに感じられるかもしれぬが(w
最後が特定の刑事(特にキャレラ)に偏らない原点に戻った感な
集団捜査ドラマであるのは嬉しく思った。
だけんど、俺は好きなキャラなパーカー(文字通り、シリーズ最初期に殉職
してまうロジャー・ハヴィランドの生まれ変わりキャラ)のパンティ・ブロックって露骨過ぎるワードやろ(w
欲を言えば、不運な死神とでも称したいオブライエン刑事、
庶務のお茶汲み名人ミスコロ、市警鑑識のグロスマン等が、
全く姿を見せないのは最終作となったゆえ、残念ではあった。

611 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/01/11(日) 08:13:53.53 ID:kOPpB4jX.net
アンリ・トロワイヤ「仮面の商人」を読む。
とにかく面白かった。
ミスオタにはロスマク作品でおなじみ小笠原豊樹先生訳。
(ちゅー、わけではないだろうが、カバー裏表紙の本作紹介文に「ミステリの
手法を取り入れた斬新な第二部」とかあるのは「?」。
この手の主人公交代による探索が続く物語展開はミステリ特有のものでは
ないわな)
醜男ながら普通に読むとそれなりに優秀な県庁職員であり作家として才も
あった(この面では不遇ではあったが)第一部の主人公となる
ヴァランタン・サラゴス、その甥で同じく醜男ながら、
父(ヴァランタンの兄、兄弟仲は実は険悪であった)の事業を継承して成功、
悠々自適で若い愛人兼秘書までいるアドリアン・サラゴス、いずれもねらー的でありそうでいてそうではないのが面白い(w
大悪人も根っからの善人も全く登場しない文豪オノレ作品以上にリアルで人間臭いビビッドな世界展開、
女たちも醜くもどこか可愛いのだ。
この辺は人生の年輪を経た者でないとわからんかも(w

612 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/01/17(土) 12:05:39.33 ID:EKrDGzm+.net
エド・マクべイン「10プラス1」を読む。
87分署シリーズ初期作品で読み落としていた作、
ちゅーか、シンディ・フォレスト(ガイシャの一人の遺族=娘)登場編だが、
クリングの女性遍歴中では好かないキャラなので敬遠していたということも
ある。
本作ではキャレラに惹かれて近づく理屈っぽいJD、真相を知った後だと、
この辺は父譲りの血かなという感もある。
本作も連続殺人(いずれも狙撃)ネタ、やはりABC、
警官嫌いネタ(ターゲットは一人、木の葉を隠すための森作りというわけや)
の推理が披露され否定されているのが面白い。
真相は全員がターゲットという逆を行くものなのだが。
地道な捜査の末に真相判明、犯人検挙というシリーズお約束の展開は
警察小説としてはOKなんだろうが、謎解きミステリとしては、
終盤に犯人登場(ターゲットの一人と思われる女性の夫、レイプ、乱交、性病
ネタが絡むわけである)って展開は頂けないものあり。
更生した前科者をフルボッコして医療刑務所送りにしてまう他分署の暴力警官には何のお咎めも無し、レイプ事件の関係者である女優(当時はJD)が難を逃れ安泰とか、この頃のエドはまだまだビターな面はある。
本筋に関係無いものの、ガイシャの一人の職業である
漫画のギャグライティング(本邦では担当編集者が務めるこが多いようだ)の
製作過程が意外に興味深く面白い。

613 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/01/18(日) 11:20:34.41 ID:tTvbZRv1.net
ロス・マクドナルド「別れの顔」を読む。
リュウ・シリーズとしては後期に属する作だが、あとがき(「W・ゴールドマンの書評」のタイトル)にもあるとおり、ベストセラー作家の仲間入りした記念
すべき作。
(「内容に関してというよりは」と記されているのがミソか)
まあ、前作がロスマク最高傑作、ハードボイルド・ミステリのみならずミステリ史上に残る傑作「さむけ」だけに、評価が辛くなるのは仕方ない面もあろうが、
最後の最後までどんでん返しがあるコンパクトに纏まった、まずまず読ませる作に仕上がってはいる。
本作に限らないが、アイリーン=リタって一人二役のトリックは強引といえば強引だが、現在の連続殺人の謎解きに関連して、
過去の誘拐事件の真相(ニックの実父殺し)、
トラットウェル夫人の死(金庫から盗むのでなく隠すという逆の
発想の犯罪に絡む死)、エステル・チャーマーズ夫人の死(溺愛した息子の
正体を知る)等々・・時を経たうえでのこれらの謎解きも浮かび上がって来る
のは、いかにもロスマクらしい展開で面白い。
「グッドバイルック」というカッコ良いタイトルは、死に際の顔という
意らしいが、メーンストーリーには関連しないのは残念、
ポケミス時代には、タイトルだけ見て「かっけーーー!」とか思うて
買ってしまった椰子(当時なら高卒デフォ)、もいたかもしれんが(w

614 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/01/18(日) 18:53:02.41 ID:WQGB/1hz.net
エド・マクべイン「歌姫」を読む。
87分署後期作品では評価が高かった作。
FBI&市警本部エリートの特捜班VS我らが87分署、
犯人検挙という点では、お約束ながら後者が勝利を得るというエピ。
事件は著名な「キングの身代金」以来の営利誘拐ネタ
(ターゲットはセクシーな新人女性歌手)だが、
初期ではやらないというか、時代性もあって版元からNGが出たやもしれぬ
ハードな展開と相成るのは意外。
何とディーバは犯人の一人にレイプされたうえ、口封じに一味の女に銃弾を
食らわされ、いてまう・・・
わりと面白く読んだが(黒幕は一見被害者側のレコード会社のCEOってオチは予想の範囲内ではあったが)、
序盤、かなり詳しく書き込まれた米音楽業界事情は
本邦との違いも大きく、あまり興を惹かず、初期のエドならもっとコンパクトに
上手く纏めたのではあるまいか。(前記した「10プラス1」のギャグライティングや映画エージェントのエピの如く)
愛すべき(?)嫌われ者パーカーとウィークスは全くと言ってよいほど
本筋に絡まないのは残念だが、「昔にもどったみたいだ」と記される
刑事連のジョークを披露しながらの87分署の朝のミーティング風景は、
確かに懐かしい。意外に無いんだわな、後期にはこういうの。

615 :名無しのオプ:2015/01/18(日) 19:03:48.37 ID:QjTcugul.net
書斎の神論考を前にしては、さすがの読後感も恥ずかしくて出てこれないようだ(w

616 :記憶喪失した男:2015/01/21(水) 11:51:32.05 ID:x62ZXG6w.net
【おせーよ】Kindle for PC キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! [転載禁止]©2ch.net [512185958]
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617 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/01/24(土) 18:19:36.36 ID:4fKiqtL1.net
ヘレン・マクロイ「小鬼の市」を読む。
各種年間ミステリランキングでもさほど高い評価が無かったのがわかる作。
俺が今まで読んだヘレン作品中でも一番面白くはなかった。
カリブ海の島国での特派員殺し、戦争(第二次大戦)の影がつきまとうとはいえ
(これは事件の真相には絡む)
この作家には異色なエキゾチック南国情緒たっぷりながら、
とにかく物語中における犯人の登場が遅過ぎですわ、
本格ミステリの名手の一人と称される作者だけに、
点数は辛いものとならざるを得ないであろう。
面白いのは名探偵ヴェィジルの意外な登場(喪前かよな感(w )程度かな。
後は、本筋には直接関係しないものの、
主人公の格闘シーン(本邦に関する言及もあり)は、
やはり通俗ハードボイルド作家の元夫人らしいかなと(w

618 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/01/25(日) 20:22:43.25 ID:X0c+JCXr.net
アントニイ・バークリー「服用禁止」を読む。
才人アントニイのノンキャラもの。
ミスオタ間だけとは、この作家のプチブーム的時期もあったので、
まだこんなん未訳コテコテミステリが残っていたんかという感あり。
友人の急死に秘められた謎とは?
田園小説でもあるが、この手のもの十八番なアガサほど詳細に情景や人物を
書くタイプではないので、本筋に関係しない村の住人、警察関係者等は
背景の書き割り程度に過ぎない印象しかない。
アンチ・ミステリ、勧善懲悪スルー、自己の信念>遵法精神等々の
変化球(?)の名人の作だけに、犯人開き直り逃げ切りで探偵役の主人公困惑
というエンディング(最終の第13章「悔悟しない罪人」ってタイトルからして
ネタばれですわ(w )もさほどの驚きはなし。
まあ、フーダニットとしても読者への挑戦(265頁)まで入れる程の作
ではないように思われる。
(ただし、意図的なシニカルなお遊びの可能性はあるが)
2015年本格ミステリベスト10海外部門の第1位が前記した
ヘレンの「逃げる幻」、2位が本作、いずれもはるか昔に書かれた作の発掘(?)だが、本格ミスオタには好評ながら、出来は今ひとつという感あり。
(ちなみに第3位もレオの「ミンコット荘に死す」)
この企画そのものが既に本格ミステリが過去の遺物化した欧米では成立
し得ぬものなのかもしれぬ。

619 :名無しのオプ:2015/01/26(月) 22:53:29.72 ID:r12nsETi.net
『五匹の赤い鰊』ドロシー・L・セイヤーズ

ピーター・ウィムジィ卿シリーズ長編6作目
スコットランドの田舎町に起きた殺人事件にピーター・ウィムジィ卿が挑む

これまでのピーター・ウィムジィ卿シリーズとは違い、フーダニットが今回のメインで
探偵達の推理合戦や、アリバイ崩しなどミステリーの要素がたくさん揃った作品だ

スコットランドの田舎の描写やユーモアで読者を楽しませ、次々と事態が変化していくので
ドラマも弱く物語に起伏が少なくても飽きずに読む事ができた

ミステリーとしては、ピーター・ウィムジィ卿が容疑者の中から犯人を捜しあてる推理はなかなか感心できるが
トリックの方はちょっと物足りない

620 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/01/31(土) 18:47:16.43 ID:froyNL4i.net
フィリップ・マクドナルド「狂った殺人」を読む。
古典「鑢」には予想外に感心したので、昨年になりやっと翻訳された本作
(異色作と称されること多し)を手にしてみた。
往時、ジョンが傑作探偵小説10選のひとつにチョイスしたこともある作
である(後に「鑢」に差し替え、この判断は妥当でしょ)。
田園都市(単なる郊外の住宅地というだけではない法的定義があるようである)
ホームデイルを襲う残忍な連続殺人、ザ・ブッチャー(アブドラではない(w )
と称する犯人からの犯行宣言もあって、恐怖の町と化す・・・
うーん、現代的ちゃー現代的な素材、しかも犯人は女サイコ
(俺は208〜209頁にあるリストで見当が付きましたわ)とこれも今風な
ような。スコットランドヤードのパイク警視懸命の捜査が続く、犯人絞り込みのためのキャメラによる盗撮とかも良き工夫だが、現代なら看視カメラで無問題
でしょうな。
なお、事件の性質のせいかゲスリン大佐は名前のみ登場(脚を負傷とのこと)
オカルティズム抜きのコンパクトに纏まった田園舞台のサスペンスというのが犯人キャラも含めて後期ジョン作品的で、彼氏の好みに合ったのかもしれぬが、
今読むと、出来自体は平板としか言い様がない作ではある。

621 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/01/31(土) 18:49:15.18 ID:froyNL4i.net
ミルワード・ケネディ「救いの死」を読む。
原文のせいか、訳文が読み難いのか、ボリューム(280頁弱)のわりには
少し読み進むのに苦労したが、語り手(作者の工夫であろう、本人の美化した
語りからでさえ好色で嫌な爺とわかるのが面白い)=探偵=被害者という
ミステリの趣向は読み手を満足させるものではあった。
更に、解説でも指摘されているとおり、ジョンが興味を示しそうな
アクロバティックな(この表現がどんぴしゃ、正にサーカス技なんである)
密室トリック(雪の中の足跡ネタや)が終盤に来て炸裂。
プライドばかりは高い(背は低い)主人公にとって、村で嘲笑の対象、
悪くすれば刑事事件沙汰になるぐらいであれば、ある意味でタイトルどおり
「救いの死」であったのかも。
犯人たちにとっても異なる意味合いでこのワードが該当はするのだが。
あっさりと意外に意味深なタイトルかと思う。

622 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/02/01(日) 15:24:39.32 ID:gV7h2BzJ.net
アーネスト・ヘミングウェイ「誰がために鐘は鳴る」を読む。
映画化作品も有名な作。
舞台はスペイン内戦、アメリカ人ロバート・ジョーダンは
山中の共和派ゲリラグループたちと橋爆破の任務に臨む。
厳しい過去を持つ美しい娘マリアとの束の間の愛、決行の時は迫る・・
戦争冒険小説的に語れば、決して板違い作品ではないのであろうが、
長過ぎのせいかタルく、意外に辛気臭い(主人公の内面の独白等が意外に多い)感もある。
ラストは重傷を負いながら、敵(フランコのファシスト軍)に一矢報いんと
機関銃を構えて一人待ち受けるロバート・ジョーダン、
この締めはハードボイルド、
俗なところだと大藪春彦を読んでる感じではあった。
ゲリラの面々のキャラ立ちぶりはヘミングウェイの筆の冴えで見事、
特にだらしない勇者とでも称したいパブロ、そのカミさんの
超しっかり者な女傑ピラールの存在感は抜群。
明記されていないが、やはりマリアちゃんは性病に罹患してしまって
いるのだろうか?

623 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/02/07(土) 23:23:20.33 ID:yHn7poZF.net
ピエール・ルメートル「その女アレックス」を読む。
2015年版このミス、週刊文春等のランキング1位。
本格ミステリベスト10ではぎりぎり10位ランクインだが、
正直言うてこちらが妥当という感あり。
むしろ「本格」という観点での評価だけならこれでも甘、甘な感
さえある。証拠も後出しばかりだし。
フランス・サスペンス・ミステリが希少になっている昨今ゆえ、
現代風に犯罪描写(誘拐監禁、硫酸を使う連続殺人等)は鮮烈とはいえ、
この手のムーディな作は物珍しいのやもしれぬが、
アルレー、ボワナル、ジャプリゾ、カレフ等の全盛期
(邦訳も多数あり)に過ごした世代としては、格別見るべきものは無い
ように思える。
フランス作品十八番のもっとトンデモな展開、ドンデン返しを期待して、
外されたという思いが強いな。
近親絡みな過去のトラウマってのは本邦の圭吾作品でおなじみ
(よく見た風景)だし、一見、個性派揃いの捜査陣ながら。
主人公のヴェルーヴェン警部は超小男とはいえ、そもそもあの偉大なる
ベルギー人の名探偵は小男設定だったし、キャラの徹底性は見られるとはいえ、
ハンサムな富豪刑事、ケチでたかり屋な中年刑事という部下たちも、
どこかで見た「姿」でしかないような。
結局、誘拐事件から連続殺人事件へと転回してゆくくだりが、やや見せ場
というに過ぎない。

624 :名無しのオプ:2015/02/08(日) 11:32:35.17 ID:EPmodtof.net
おおむね同感です

625 :名無しのオプ:2015/02/08(日) 13:04:52.52 ID:ZY3F5ap+.net
投げやりな自演するくらいなら自演すなよバカ書斎w

626 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/02/08(日) 19:28:26.33 ID:E+xcIOla.net
「甦ったスパイ」チャールズ・カミング(早川書房)

アラブの春の直中の中東で作戦遂行中に捕虜の扱いを問題視されSISを逐われたトーマス・ケル。ある朝元同僚ジミーから次期SIS長官のアメリアが失踪したと電話を受け、彼女と親しく付き合っていたケルはジミーの求めに応じ一時的に任務に復帰する。

「ケンブリッジ・シックス」はあまり評価しなかったが本作はCWA賞を受賞したというのでいくらか期待して読んだ。
滑り出しは順調だった。異なった複数の出来事を並べて興味を引いておいて家庭崩壊寸前の疲れた中年スパイのストーリーに突入していく。筆裁きはなかなかのものだと思った。

しかし、読み終えた今本作は失敗作だと思っている。その理由を述べる前にまず前半で早々と味わった失望の意味から書いていきたい。
本作は主人公ケルの視点以外にも複数の登場人物の視点から描かれていく。筋書きそのものが謎として機能しがちなエスピオナージュにおいてこの手法は禁じ手に近い。
これで謎を担保するのは容易ならぬ筆力が求められるからだ。ロバート・ラドラムや最近ではジョン・ストックがこの手法で傑作を書くことに成功しているが、難しい業だ。
然るに本作はどうか。見事に失敗しているとみる。作者は視点人物の心情を直裁に書き過ぎるのだ。これでは真相の選択肢がどんどん狭まってしまう。
更に言えばその心情の不自然さもある。生き馬の目を抜く非情な世界に生きている人間がこうも単純に考え行動するだろうかとも思うのだ。
ここに英国伝統のスパイ小説の味わいは皆無だ。アメリカ的エンターテイメント小説に近い。

この一点だけでもCWAが顕彰したことに疑問を持つには十分なのだが、先に失敗作と断じた直接の理由はこれではない。
本作はもっとシンプルな誤りを犯している。地の文が嘘を吐いているのだ。もうこの時点で小説としてアウト。真実を伏せるならともかく偽りを書くのでは弁護のしようがない。
かつての巨匠達は前述の心情描写も含め叙述には最大限の注意を払っていたはずである。そんな配慮はどこ吹く風の本作の乱暴さには大いに眉を顰める。

受賞作がこれではもうこの先変わらないだろうし、この作者はもうこれで見限った。

627 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/02/08(日) 19:39:19.28 ID:E+xcIOla.net
「アーサー卿の犯罪」オスカー・ワイルド(中央公論社)

有名作家の短編集だが、中身はエンタメ的なバラエティに富んでいて面白い。
表題(とはちょっと違う)作は手相見にとんでもない予言をされてしまった主人公が開き直って奮闘する話。モラルなんぞそっちのけのドタバタの挙げ句それでいいのかエンドに唖然。
他古いお屋敷に取り憑いている幽霊と実際家のアメリカ大使ファミリーとの対決を描く「カンタヴィルの幽霊」やシェークスピア作品を巡る歴史ミステリー「W・H氏の肖像」など。

628 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/02/08(日) 23:44:31.15 ID:/NxlFAUZ.net
ジョン・ウィリアムズ(「ジョーズ」でおなじみの映画音楽家ではない(w )「ストーナー」を読む。
原書は半世紀前の刊行ながら、今、読書家の間(多くの新聞書評等にも
取り上げられてはいる)で静かな話題になっている作。
米の地方大学の助教授として65年の生涯を終えた
ウイリアム・ストーナーという男の生真面目で不器用、地味な人生の
顛末を描いたものである。
正直言うて、中盤までは退屈を感じた。
ただし、真摯に生きる者であれば、老境に入ってからの主人公の行く末は
見届けずにはいられないという感になって来るであろう。
先に「地味な人生」と記したものの、そこには、
学部長となった親友との変わらぬ友情、若くして戦死した友への尽きぬ思い、
(序盤でフェードアウトする彼の存在感が全編を通じて意外に大きい)
学部の同僚との長年に渡る確執、学才ある教え子との不倫、恋愛結婚した妻との性格不一致による不和、一人娘への愛情と微妙な距離感、そして、
最後までストーナーをストーナー足らしめたと言える学問と教育に対する情熱。
まあ、それなりに、いろいろ「普通」にあったんである(正に「人生」)。
ミステリ性はゼロ、しかし、あえて私は本作をこの板において紹介しておきたく思う。論者によっては人殺し小説と称されることもあるミステリを耽溺する
ばかりでなく、このような作も読み、1度、「人生」「生きるということ」という
意味を、しばし考えてみることも必要であろうと。
各人、座して、かつ、心して読め!!!

629 :名無しのオプ:2015/02/09(月) 11:44:03.74 ID:VqgMEslE.net
2500円以上の本を高いと思う普段海外文学を読まない人は貧相でけちんぼなんですか?

630 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/02/11(水) 21:16:34.97 ID:HidbkGOU.net
G・G・マルケス「ある遭難者の物語」を読む。
タイトルどおり、あるコロンビア人船員の壮絶な漂流譚、
そして生還後の極端な英雄視、そしてその後・・・という物語。
冒険もの(フィクションだとしても、ノンフィクションだとしても)ゆえ、
板違いにならず紹介出来得ることを嬉しく思う次第である。
(正に「マンモスうれぴー!」かも(w )
でも、海水飲んでも喉が焼けつくってのはないのかね?
何とか工夫の末捕まえた鷗を殺したが、結局、血生臭くて食えないって
展開は何とも「リアル」だけんど。
名作長編「百年の孤独」の面白さは今更言うまでもないが、
中編相当ボリュームの「予告された殺人の記録」
「わが悲しき娼婦たちの.思い出」や本作、
短編「エレンディラ」、ノンフィクション「誘拐」等々
ノーベル賞作家な文豪ガルシアの多彩な作、語りの上手さ、
描写の迫力は、最早、天才の域かと思う。
私は躊躇なく言う、各人、心して読め!!!と

631 :名無しのオプ:2015/02/11(水) 22:54:01.47 ID:OfUCmUMH.net
ガルシアw

バカ丸出し

632 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/02/13(金) 20:50:21.52 ID:i7D+NB6k.net
「ツーリスト 沈みゆく帝国のスパイ 上・下」オレン・スタインハウアー(早川書房)

CIAの“ツーリスト”ミロは追っていた殺し屋“タイガー”から意外な告白を聞く。衝撃を受ける暇もあらばこそ、次なる任務でフランスへ渡ったミロ。
同僚で旧友のアンジェラが外部に情報をリークしている疑惑をかけられたのだ。しかし彼女は死にミロにその容疑がかけられる。
果たしてこの陰謀の背後にいるのか誰か? 孤独なツーリストとなったミロの逃走と闘争が始まる。

「極限捜査」の続編出さんかいとの怒りも尽きた頃、こっちは続編も出たらしいので読んでみたら、あらまあ傑作ザマス。
解説でノヴェンバー・ソーが言っているようにこれぞスパイ小説! いやもう最近ヌルいアメリカエンタメを何冊か読んでうへえなりだったのが一気に引き締まった。
作者はアメリカ人ながらこれぞ英国の芳醇な香り漂うエスピオナージュばい。単純でもなく韜晦に淫するでもなく良い塩梅。「ブラック・ブック」とか如何にもな道具立てもワクワクさせてくれるジャマイカ!
やがて明らかになる陰謀の正体も実に魅力的。ホラ話にリアルさをまぶして提供する、これはラドラムの得意料理でありんしたか? よう吸収(踏襲)しとる。
これからのスパイ小説はこの人とジョン・ストックにかかっとるね。観てるかチャールズ・カミング!お前もこういうの書かんといかんぞ。

そして女性キャラクターが素敵。妻も娘も捜査官も妊婦も。

追伸
スパイ小説がつまらなくなったのはジャック・ライアンのせいだったのか!
読んだことないけど。

633 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/02/13(金) 20:55:48.74 ID:i7D+NB6k.net
「石の結社」デイヴィッド・マレル(光文社)

テロによって両親を殺された過去を持つ青年ドルーは暗殺組織スカルペルの手先としての生活に嫌気が差し修道院へ入る。
しかしそこには暗殺者の魔の手が。否応なく俗界に呼び戻されたドルーは見えざる敵と命懸けの闘いを強いられるのだった。

ホラー短編はてんでダメだったけど、冒険小説はどうか。まず序盤からの書きぶりは良い。ゆったり過ぎて好みの展開ではないが、今後を期待させてくれる。
しかし、恋人と再会した辺りからご都合主義が目立ち始め安っぽいハリウッド風エンタメに堕してしまってページから目が離れた。
主人公の過去が中々描かれず回想が後半まで続いているのも躍動感を削ぐまずい構成。左手の感触と目で残り少ないページ数が判るしね。

プロットも捻ろうとして捻挫しちゃってる。もし黒幕の言う通りなら偶然過ぎることになるし、組織を詰め込みすぎてタイトルの存在感も薄い。

美点は日本に気遣ってくれてるところかな。211ページとか。まあ他の作品に手を出したくなる作品じゃないね。

634 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/02/13(金) 20:57:57.12 ID:i7D+NB6k.net
「並木通りの男」フレデリック・ダール(読売新聞社)

大晦日のパリ。パーティーに参加するため妻子が待つ友人宅に向かう途中だったアメリカ軍人ウィリアムは路上に出て来た男を轢いてしまう。
男は死んだが目撃者がいたお陰で罪には問われなかった。しかし遺族のことが気になり、自ら訃報を知らせる役目を引き受けたウィリアム。
酔いつぶれた未亡人を連れ帰り介抱していると一通の電報が届く。それは死んだはずの男からだった! そして繰り返される無言電話。
ウィリアムは一体何に巻き込まれたのか?

傑作と聞いたので読んだが期待外れ。多作家のワンノブゼム。巻き込まれ型サスペンスで引き込まれるのは確かだが、真相がダメダメ。
こんなことしても無意味でしょ。「××××?じゃ××か」てなるだけ。時間と金の無駄でしかない。

ただ、そこに至るまでサスペンスを楽しむことは出来るし、ラストも暗くないから旅の時間潰しキオミスとしてはありかもねむ。

635 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/02/13(金) 21:06:41.37 ID:i7D+NB6k.net
「サンドマン・スリムと天使の街」リチャード・キャドリー(早川書房)

〈サークル〉の仲間たちに裏切られ地獄へ落とされた男スターク。しかし悪魔の奴隷として闘い続けていたスタークは魔法のアイテムを奪い地上へと戻ってきた。
自身を破滅させ恋人の命を奪った憎いかつての仲間たちを一人残らず殺すために……。

SFハードボイルドは以前読んだことがあったけど(「プルトニウム・ブロンド」)、ハードボイルド・ファンタジイてのは初めて。
傑作! まあ傑作ですよ。久々に読んでいてニマニマと幸せな時間を過ごしました。
抜群のキャラクター。抜群のストーリーテリング。抜群のアイテム。う〜ん、マンダム。

まずスタークの世を拗ねた一匹狼ぶりがカッコイイ!カワイイ! 子供っぽさこそハードボイルドの主人公に必要な素質である!
運命ナビ・どこでもドア・クリティカルナイフ他を持ち、一度受けた攻撃には耐性がつくというサイヤ人顔負けの体質と聞くととんだチートじゃねぇかと思われましょうがさにあらず。
相手も天使だ悪魔だそれ以外だとチートな敵ばかりなのですから。そんな中で裏切りに遭ったりしながらも神なんか糞喰らえとばかりに孤軍奮闘するスタークに萌えるのです。

他のキャラクターも魅力的な連中だらけ。スタークを助ける老探偵ヴィドック、塒のビデオ店の店員アレグラ、謎の医師キンスキー等々。
女性キャラもアレグラの他、武闘派冷血天使やチャーミングな吸血鬼と選り取り見取り。
そして忘れちゃいけないのが地獄の主ルシファー。彼の登場シーンも必見です


と、ここまでキワモノぽさを強調してしまいましたが、ストーリーの底流には喪った恋人への切ない思いが流れていて胸を打ちます。バトルにおける舞台や状況の描写が視覚的で映像化して欲しい作品でもあります。

最後にキワモノに戻って付け加えますと、作者はサブカルオタでカンフー映画やマカロニウェスタン、ジャパニメーションなどのタイトルがバンバン出てきます。
「もしバイアグラや違法ポルノ・ビデオでもダメなら、日本のアダルト・アニメをためしてみるといい」なんてセリフは皮肉ぽい賞賛なのか賞賛ぽい皮肉なのか……。

とまれ次を早く読みたいぞ!

636 :名無しのオプ:2015/02/14(土) 01:04:05.90 ID:WH3+0bqq.net
>>635
サンドマン・スリムはたしかに面白いファンタジー系ハードボイルドだけど
プルトニウム・ブロンドはSFハードボイルド設定の「脱力ギャグ小説」だと思う

637 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/02/15(日) 07:46:20.21 ID:g/Wb49QC.net
ジョン・ロード「ハーレー街の死」を読む。
うーん、普通小説として読むのであればともかく、ガイシャ(真相判明後も
一応、そう称してよいかとは思う)の超上昇志向、お金大好きな医師
(本邦に喩えれば、ハーレー街は一流医師ばかり開業している医療の
アキバあるいは神保町的存在らしい)
は実にビビッドに描かれてはいるのだが、偶然にも過去に診療した患者からの
遺贈の件を担当した弁護士が昔捨てた女に産ませた実の息子だったとか・・・
親譲りな理科系の才を利用し、憎むべき実父を死へ追い込むのであった。
ミステリ的にはこれだけですわ。
後出しの事実満載、犯人(?)曰く「偶然によることが多い」展開・・
ロード(今話題の世界のミフネの娘の元旦那のヒット曲ではない(w )
が本邦では徹底スルーされたのがわかる作ではある。

638 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/02/15(日) 07:46:51.12 ID:g/Wb49QC.net
スチュワート・パーマー「ペンギンは知っていた」を読む。
この邦題からミステリファンが想起するのは、仁木悦子嬢の猫でしょうな。
(原題は「ザ・ペンギン・プール・マーダ―」)
あの作は今読んでも十分に面白いのだが、本作はデビュー作ということも
あってか、凡作と断定してよい出来。
犯人は早々と出しゃばり弁護士野郎とわかり、
その動機も普通に読んでれば丸わかり。
授業の一環として水族館見学に来ていた引率の中年女教師(若い美形とかありきたりな設定でないのは良し)がペンギンの水槽で男の死体をハケーン!、
彼女が思わぬ名探偵ぶりを発揮してゆく・・・
この出だしは興を惹くのだが、それだけだな。
軽快で読み易いとはいえ、基本、逝ってよし!作品ですわ。
ペンギンも今少し事件に絡んで来るかと思ったのだが、
単なる小説上の小道具に過ぎない扱いに止まったのもガクーリ期待外れ。

639 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/02/15(日) 19:26:21.59 ID:5WrAbtsm.net
「レティシア・カーベリーの事件簿」M・R・ラインハート(論創社)

頑固で我が儘なオールドミスレティシアとその友達アギーと私ことリジーの三人組が活躍する短編集。

ラインハートは「螺旋階段」ぶり。もう10年くらい前になります。特に可もなく不可もなくという印象でしたが、以後論創含む複数の出版社からぽろぽろと翻訳されて割合恵まれた作家ですね。
正直あまり食指は動きませんが、短編集というので手に取りました。

注目すべきは半分を占める「シャンデリアに吊された死体」でしょう。
レティシアが入院中の病院で起きた怪事件。霊能者の死体が霊安室から消え失せ別室で首を吊っていたという発端から、院内を徘徊する謎の“足”、ねじ切られた鉄棒、深夜に屋上へ向かう怪しい看護婦等々本格のエッセンスがたっぷりで期待を持たせます。
ただし解決編はがっかりの一言。レティシアが推理の披露をだらだら引き伸ばすのは良いとして、このネタはないですよ。
今ならバカミスとも言えるでしょうが発表年を考えるに安易なオチとみた方が正しいかと。

残り二編は別にどうってこたないロマンティック・スリラー。どちらもヒロインが安直なツンデレで、出だしを事後にすることで奇をてらう虚仮威しの手法が使われています。
やはり忘れられるべき作家のようですね。
本当にいつも馬鹿の一つ覚えの繰り返し派。

そう言えば派閥のもう一人の領袖ミニオン・G・エバハートは不遇ですね。近年のクラシックブームでも翻訳は論創の初期に一作きり?
まあどうでもいいですけど(笑)。

640 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/02/21(土) 12:41:56.40 ID:rTedH+lH.net
リチャード・ハル「他言は無用」を読む。
本邦では「伯母殺人事件」(実は伯母の殺人事件だが)で著名な作者の
ホームズねた等々のユーモアもまぶしたミステリ、訳者は今は角川エル作品で
知られる越前氏である。
ロンドンの高級社交クラブで発生した会員の突然死、
どうやら殺人らしいが・・・ここから右往左往の大騒動と相成り、
更なる殺人事件発生へ・・・
うーん、伯母殺ほどのドンデン返しもないし、森英俊氏の解説では、
バークリーの作品群や前記したケネディの作(「救いの死」)と並べて語られては
いるものの、先にこれら諸作を読んだ者としては、今ひとつインパクトを欠く
ものあり。殺人犯の自死(ラトヴィアの法律)というラストは見え見えだしね。
殺人犯おびき出しのために仕組まれる終盤の活劇じみたシーンも
この手の作にはらしくない感じしかない。

641 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/02/21(土) 12:42:33.25 ID:rTedH+lH.net
リチャード・ハル「善意の殺人」を読む。
やはり昔(ちゅーか、大昔になるが(w )に読んだ伯母殺が面白かったという
印象が強いので、もう1冊ハル作品を手にしてみたのだが・・・
今回は前記した「他言は無用」の解説を担当していた森英俊氏が訳も担当
している。
カットバックの手法を使い、基本は法廷小説のスタイルによる被告人当て
(つまり裁判の被告人が最後まで誰かわからない)が主眼な作、
そして判決の行方を左右した仕掛け(判事の信念にもとづく、一種のトリック)
も存したという作。まあ、かなり凝った構成とは言い得るものの、
比較対象するレベルが高すぎて本作には気の毒かもしれぬ面はあるが、
バークリーを読み慣れ、
法廷ものでは、R・ポストゲイト「十二人の評決」のような傑作を知っていると、
物足りなく思える出来であった。

642 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/02/22(日) 09:35:03.99 ID:yh//wunz.net
E・S・ガードナー「カナリヤの爪」を読む。
ハードボイルドちゅーか、往時は行動派の探偵(刑事事件十八番の弁護士)
もの、法廷ものとして高い人気があったぺリイ・メイスン・シリーズの一編。
コンパクトに纏まった謎解き風味が強い作とされている。
女性依頼者が連れていたカナリヤの爪の左右のカッティングが異なるため、
まるでびっこのように見える。
何でそんな事になったのかとメイスンが疑問を抱いたこところから・・・
最終的には、入れ替わりトリックが明らかになる。
顔の無い屍体テーマですな。
偶然にもガイシャの義妹が来てたとか、偶然にもお隣のおしゃべりおばはんが見てた等々のストーリー進行のための御都合主義は満載だし、
メイスンたちの捜査も順調にゆき過ぎるきらいがあるが、
まあ、気軽に読んでポーンならOK、OKな作と言えるでしょうな(w

643 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/02/22(日) 09:35:35.58 ID:yh//wunz.net
E・S・ガードナー「ビロードの爪」を読む。
爪繋がりというわけではないが、記念すべき(?)メイスン・シリーズの
第1作を久々に読む。
「血の収穫」や新潮文庫版「郵便配達は二度ベルを鳴らす」でおなじみ
べらんめえ調な田中(西)先生の訳すところのメイスンは、弁護士でありながら
台詞も行動もハードボイルドそのものという感あり。
真相は「おじさんには好かれてるのに何でそんなにあせるねん?」という
感を抱かざるを得ない犯行。
今読むと、無理やりストーリーを創り過ぎた感がありますな。
弁護士=正義の味方=弱者の味方とか思うのはアホというのが当たり前に
なった現代ではメイスンが依頼者にさずける知恵も何やら疑問も感じざる
を得ないものもあるのだ。

644 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/02/22(日) 20:16:17.44 ID:ausZIG02.net
「霧の中の館」A・K・グリーン(論創社)

女流ミステリー作家の元祖グリーンの短編集。二人のシリーズ探偵の活躍3+2。
面白かった。流石に古さは感じるけど、それがまたコクがあって良い感じ。
まず最初の「深夜、ビーチャム通りにて」でグッと掴まれた。深夜大金と共に留守番をする若妻の元へ現れた無頼漢。サスペンスが肝かと思いきや予想だにしないドンデン返しが決まる。
当時の世相を逆手に取ったような趣向か。
以降はぐい揉みならぬぐい読みよ。

ベストは表題作。濃霧の中見知らぬ館に迷い込んだ青年ヒューは遺産相続に絡んだ恐るべき因縁を目の当たりにする。
冒頭の幻想的な演出が秀逸(オブライエンの「目から口へ」を思わせる)で、そこから卑俗な一族の邂逅に繋がり、愁嘆場を経て恐るべき真相が開陳される。
アイリッシュの某作品は本編を参考にしたのやも? 陰惨になりきらない爽やかな読後感も良い。
他にウィルキー・コリンズ風トリック奇譚「ハートデライト館の階段」や女探偵バイオレット・ストレンジ嬢が活躍する「消えた失せたページ13」、
そして裕福な彼女が探偵になった動機を語る「バイオレット自身の事件」がある。
お薦め。

続けて読んだためラインハートとは作者も読者も格が違うなと痛感したのであつた。

645 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/02/22(日) 20:23:58.69 ID:ausZIG02.net
「アウト・オブ・レンジ―射程外―」ハンク・スタインバーグ(早川書房)
2005年、ジャーナリストのチャーリーは国際ボランティアに従事する妻のジュリーと共にウズベキスタンにいた。
広場には独裁政権に抗議する民衆が溢れ、カリスマ実業家ビーコが登壇していた。そこへ政府の治安部隊が突入し辺りは凄惨な殺戮の場と化してしまう。
そして現在、辛くも逃げ出しLAで平穏な家庭を気付いていた二人だったが、ある時ジュリーが幼い子供たちを残して姿を消す。
その直後何者かに捕まったチャーリーは妻の行き先がウズベキスタンであると判断し、単身後を追った。そこに巨大な陰謀が待ち受けているとも知らず……。

一読して思うのはとてもアメリカ的な冒険小説だったということ。
まあ、作者はアメリカの脚本家で「FBI 失踪者を追え」
等を手がけた人なのでそれも当たり前なのだが、何が言いたいのかというと、本作のあらすじから想像した内容とは違ったということなのだ。
かつて貧しい独裁国家でボランティアに携わっていた妻が失踪し、夫が後を追う。現地には大物の元恋人がいる。
本作にはここから期待される要素が何もない。
妻の行き先はすぐに都合良く割れるし、なぜ失踪したのかについても―真相は流石に伏せられたままだが―、妻の心理描写がすぐに描かれるため物語を牽引する謎とはなり得ていない。
同じ理由で元恋人との三角関係の愛憎などにも分け入ることがない。
本作は夫が妻を助け出す課程を描いた冒険小説でしかないのだ。これにはがっかりした。イギリスの作家が書いてくれたならと思わずにはいられない。
ヒロインは半分イギリス人だし、MI6の出番も多いのでイギリスの作品と言っても十分通用する内容なのだ。
だからこそ余計そう思う。レン・デイトンが書いたならどうなっていたであろう。或いはジョン・ガードナーなら?
きっと妻の描写を抑えつつ謎を深まらせ、じっくりと読み応えのある作品を紡いでくれたことだろう。
ジョン・ストックでもいい。カミングは勘弁。

646 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/02/22(日) 20:25:27.14 ID:ausZIG02.net
続き

もう一つ個別具体的な不満を言うと、ウズベキスタンに対しては独裁者の実名を出し、実際にあった虐殺事件を描写して大いに批判しているのに対し、
それに関わっていたとされる欧米諸国への批判が矮小化されていておざなりなのである。無論肯定も無視もしていないが、黙殺しても構わないレベルの扱い。所詮自分たちの社会は批判できないか。
それがハリウッドの限界なんだろうな。

647 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/02/28(土) 15:02:25.72 ID:+xlHIK9D.net
A・フィールディング「停まった足音」を読む。
未訳の傑作本格という話もあって、期待の翻訳だったようだが・・・
(禿人の解説も力が入っている感あり)
うーん、解説にはブッシュ(勿論、前米大統領ではない(w )や
ロード(繰り返しになるが、今話題の世界のミフネの娘の元旦那のヒット曲ではない(w )のように退屈さは無い旨が記されているが、これは比較の問題かと。
名探偵=犯人パターンにたどりつくまでは、事件(ある女性の自宅での
拳銃による死)も謎(足音)も地味なうえ、作品のボリュームもコンパクトに
纏めたとは言い難く間延びした面もあり、読んでいて普通に退屈してしまう。
まあ、クラシックなミステリは大好き、更に怪奇色は好まないすっきりした
謎解き物語が好みであれば、読んでみてもよかろうというレベルの作であった。

648 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/02/28(土) 15:03:09.99 ID:+xlHIK9D.net
「新幹線大爆破」を読む。
ケン高倉追悼の意もあって一読、
ただし、カッコ良いミドルだったケンさんとは異なり、
本書の犯人グループ主犯(倒産した町工場のおっさん)は
腹が出たぱっとしない中年である。
まあ、設定キャラを考えれば、リアルちゃーリアルだが。
往年の東映作品は、豪華キャストによる傑作パニック映画
なのだが、英国でノヴェライズされた本作はメーンストーリーは同様ながら、
全く駄目という印象。映画にあるシリアスな緊迫感は無く、
ノヴェラズ版オリジナルな米人夫婦(偶然にも爆薬が仕掛けられた博多行き
新幹線に乗り合わせた眼科医の妻、その夫である米軍の爆発物専門家な軍人)
の存在が、英国人作家に手になるものとはいえ、諸にハリウッド的類型キャラで
うざいくもわざとらしい。
有名企業のオーナー社長である老人、商社マン(四菱商事(w )等の
ハイクラスに属する乗客が登場するが、この状況(新幹線に爆弾仕掛け)
を把握すれば、この手の人たちは本書で描かれたほどはバタバタしないでしょ。
だから、現在の地位、職業につけたわけだし、それなりの胆力があって普通。
日本人をどこかバカにしとるんか感もある。
米人眼科医の奮闘むなしく、産気づいた若い妊婦が死産してしまう欝展開は
オリジナル(映画)どおり活かした点だけは、評価しておこう。

649 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/03/01(日) 17:45:48.35 ID:u0CXTU8Q.net
グラディス・ミッチェル「タナスグ湖の怪物」を読む。
74年に書かれたネッシーねた(舞台は架空の湖だが)に殺人事件が絡む
異色作。当時は本邦でも木曜スペシャル等の世界の謎というたものが高い
人気を呼んでいたでの、当時、訳されていればタイムリーではあったかもしれぬ。
ただし、謎の怪物の正体が判明するわけでもなく、殺人犯の大佐は怪物により
海の藻屑ならぬ湖の藻屑と化す顛末。
そこに至るまでの一応の推理も捜査もあるのだが、まあ、何だかなあという
感あり。
残念なのは、魔女の末裔にして魁夷なルックスの名探偵ブラッドリー夫人
のキャラが、本作では立っていないこと。
何か、ミス・マープルみたいなもの静かさであり、表面に出て活躍するのは
姪っ子とコンパニオン。
魔女の末裔が湖の怪物の謎を解くとか期待して読むと、大外れガクーリと相成る。

650 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/03/02(月) 01:06:15.51 ID:39ML1VPS.net
「原罪」チェルシー・ケイン(ヴィレッジブックス)

連続殺人鬼グレッチェンは精神病院に収監されポートランドに平和が訪れたのも束の間、残虐な連続殺人事件が発生する。
捜査に着手するアーチーにグレッチェンが面会を望んでいるとの知らせが。どうやら彼女の子供のことであるらしい。
会うべきか悩むアーチーだが、そこへ旧知の元新聞記者スーザンが首を突っ込んできて事態は否応なく動き出す。

シリーズ第5弾。面白かった。前作はやや下がったかと思ったが持ち直した。本作はいい鯛焼き。シリーズを跨ぐ伏線を回収したり侮れない。残虐描写も堂に入っていてとても幼児の母とは思えない。
「ライトなディーヴァー」という二つ名がピッタリ。それ以上でも以下でもない。絶妙なラインを行く。誠に分を弁えた作家である。

とは言え、解説でノヴェンバー・ソーも書いていたようにこのシリーズの良いところはグレッチェンの取り扱い方。
神出鬼没で美貌のシリアルキラーとキャラクターこそマンガだが、彼女を取り巻く視線はとても冷徹だし無闇に煽ったりもしない。
この抑制されたストーリー展開がこのシリーズを“陳腐”とか“B級”とかいうレッテルから救っていると思う。
グレッチェンを切るべきとの主張は基本的に変わらないが、カーリイやベケットと共にこの先も期待が持てるシリーズであることは間違いない。

651 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/03/02(月) 01:10:26.03 ID:39ML1VPS.net
「ツーリストの帰還」オレン・スタインハウアー(早川書房)

疑いも晴れ、CIAの打診を受けて復職したミロ。しかし、しばらくは雑用とも取れる任務ばかりをこなしていた。
そして数ヶ月が過ぎたとき、新たに出された指令。それはある少女を殺せというものだった。娘のいるミロにとってそれは耐え難いものだった。
だが遂行出来なければ仕事を逐われてしまう。苦渋の末プリマコフに助けを求めたミロだったがそれが思わぬ事態の引き金となるのだった。

三部作之二。相変わらず面白い。オレン(こう書くと不遜だと承知しているが、「スタインハウアー氏」「オレン先生」と呼ぶのはご本人が嫌われると思うので)は明らかにスパイ小説家のセンスを持っている。
ルカレやデイトンやガードナーや最近ではストックらが持っているもの。そしてカミングが持っていないもの。

今回ミロは少女殺しともう一つもぐら探しにも従事することになる。読みながらこの二つが結びついちゃうと何だかなーと思っていたがそこはオレン、巧く捌いている。
そして現れるツーリズムひいてはアメリカの安全保障を揺るがす巨大な陰謀。これは中盤に相応しい大ピンチですよ!
邦題は帰還だが、「エピソード2/中国の逆襲」とでも呼ぶべき内容。否が応でも次が気になる。だって次は勝たせなきゃいけないから。それも意外性そして緊張感を持続しつつ。
オレンにこれが出来るのか? 僕は出来ると信じてますけどね。マーティンも見とけよ。

そしてミロと家族との関わりも本シリーズの読みどころだが、これも一筋縄では行かない面倒な感じが堪らない。この部分の筆捌きもまた良きスパイ小説家のタレントの一つだと思う。ちなカミングにはない。

おまけ
・下巻のあらすじは×
・ミロのデータが西側とは言え他国にあるのはダメじゃない?

652 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/03/02(月) 01:16:40.91 ID:39ML1VPS.net
「死の渦」デイヴィッド・ハリス(東京創元社)

クライマーのゴードンとアレクスの二人はアメリカ・カナダ国境の山脈で登攀中墜落したセスナ機に遭遇した。
パイロットは既に死亡していたが、もう一人の乗員には息があった。その男マシスンを助け出した二人は、麻薬の詰まったスーツケースを発見する。
ゴードンはマシスンの代わりに麻薬を運んで大金をせしめようと提案し実行に移す。
首尾良く金を得た二人。やがてアレクスには恋人も出来る。人生上向きになってきたかと思われた頃、マシスンの仲間が金を奪おうと襲い掛かってきた!

山岳冒険ものは男臭くて場面も山ばっかりで苦手なんだけど、これは変わり種ぽくて読んでみた。
変わり種と言えば本作は3部構成でそれぞれ主要キャラの名前章題になっていて、普通に考えれば視点人物かと思うところ、全然違う。というか、麻薬密輸事件を追う両国の刑事たちのパートと交互に綴られている。
じゃあ何故と思ったが読み進むと意味が判ってくるからご安心。ブラックな大オチにも通じているのがミソ。

プロットそのものは大したことないけど、500超えて読ませる力はあると思った。

653 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/03/07(土) 19:50:29.79 ID:JilKp3qO.net
ミルワード・ケネディ「スリープ村の殺人者」を読む。
バークリー風変化球な「救いの死」が意外に良だったので、
この作者による正攻法な謎解きミステリの代表作とされている
本作を手にしてみた。
うーん、可もなく不可も無く、格別面白くも、叩くほどNGでもない
というたところか。
主舞台となる川沿い3軒の家の位置関係と周囲の状況が詳しく把握できないと
ややストーリーがわかりにくい面があるのが難か。
(一応、図面は挿入されているが)
トリック的には、謎の男の正体は探偵(スコットランドヤードのお偉いさん)
でしたってのは御愛嬌としても、体格差もあろうし、車椅子生活の障害者の老人
に犯人たち(屈強な老人や若者)が成り済ましが可能がどうか、
疑問に感じざるを得ない。探偵役にさえ目撃されてるわけであるし。
義理の父娘で2人暮らしという設定は、現代小説なら危うい関係を想像
しがちだが、本作は時代性もあってこの点は無問題であった。

654 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/03/07(土) 19:51:15.23 ID:JilKp3qO.net
クリフォード・ナイト「ミステリ講座の殺人」を読む。
邦題からは軽いタッチのライトなミステリを想起したのだが、
売れっ子(であった)女流ミステリ作家がカリフォルニアの景勝地に建設
した豪邸(女流によるミステリ講座が主催されている)を舞台にした館もの
アメリカン・ミステリであった。
女流作家の女性秘書が刺殺され、次いで講座に参加していた女性滞在客も
絞殺されるが、事件を担当する地元警察の保安官はやる気無さげ、
やがて館の主人である女流作家も姿を消した・・・
探偵役は語り手=わたし(新聞記者あがりの物書き)でなく、
同じく滞在客の一人である英文学教授ハントゥ―ン(ハント)・ロジャーズ
(森英俊氏の解説によればシリーズキャラとのこと)。
うーん、おばはんの犯人狙撃(失敗に終わる)って展開にどうも心理的にも
無理を感じるし、それ以前に拳銃のありかを何で知っていたのか、
少し言及が欲しかったところだ。(この点は解説でも指摘されている)
巻末の「手がかり索引」が売りの作らしいが、列挙された事項を読んでゆくと、
「わからんだろそんな事では」というものばかり。
フェアプレイと大上段に振りかぶったはよいが、結局は俺様ルール、
大部分の本格ミステリに見られがちな結果に終わっているという感あり。

655 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/03/08(日) 17:46:46.05 ID:1up8M5To.net
ミルワード・ケネディ「霧に包まれた骸」を読む。
超変化球な異色作「救いの死」(本書巻末の真田啓介氏の解説によれば本邦の
ミスオタには不評だったようだが)は勿論、まずまず読める田園ミステリの
「スリープ村の殺人者」と比較しても、かなり落ちる作という感あり。
霧の夜のロンドン、街中でパジャマ姿の死体ハケーン!、この冒頭はミステリとしては、雰囲気十分で魅力的ながら、そこまでという感あり。
消去法でわかり易い犯人、予想どおりな女ホームズ登場、
後出しのありきたりな動機・・・未訳作品は、まだ数あろうに何で本作を
今頃(2014年)になってチョイスしたのか、極めて理解に苦しむもの
ありと言わざるを得ない。
この作者の著作をもう少し読んでみたい感はあれど、もう少しまともなもの
は無かったのであろうか?
コンフォード警部登場作品の前作(未訳)があり、ここに関連したキャラや
エピがあるのも問題かと思う。

656 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/03/11(水) 02:31:44.14 ID:vQE9JC3X.net
「ミッドナイト・ゲーム」デイヴィッド・アンソニー(角川書店)

ロスへ流れてきたギャンブラースタンリーは旧知の判事から依頼を受ける。彼の長男グラントは少し前に亡くなっていたのだが、未亡人カレンにグラントの不倫相手を名乗る女から電話がかかってきたという。
カレンと共にその女サンディと会ったスタンリーは彼女の話を怪しいと睨み調査を始める。

安心と信頼の小鷹印。面白かった。表紙はロジャー・ムーア?
77年発表であるがネオではなく正統ハードボイルドという感じ。ホワイダニットで引っ張りアリバイトリックを挟み最後のどんでん返しまで中身が濃い。
トリックの成立やキャラクターの行動原理が一部御都合主義に感じられるのが残念だが、読んでみてもいいと思う。

657 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/03/11(水) 02:41:55.10 ID:vQE9JC3X.net
「卑弥呼の密室」獅子宮敏彦(祥伝社)

祖父が残したノートを元に邪馬台国の謎を解いて名を成そうという野望を持っている三文歴史ライター黒覇王樹。
うだつが上がらない黒覇はある時怪しげな男たちにさらわれかけたところを間一髪、謎の美女に助けられる。
その美女上偶一十三から誘われるまま車に同乗したし、連れて行かれた先で待っていたのは邪馬台国の民の末裔と称する男たちだった。
彼らの案内で邪馬台国の末裔たちが住む集落邪馬栄国へと向かった黒覇たち。そこには奇妙な密室殺人が待ち受けていた……。

この人は器は立派だけど中身がイマイチであると前から言ってたよね。前作を見る限りミステリーの知識は海外は殆ど読んでなくて国内も有名どころだけという印象。
そして今回ときたら今更伝奇もの?それも冴えないおっさんが美女に助けられる巻き込まれ型なんて80年代かと見紛うばかりの古臭さ!
しかし私はそんな古臭いエンタメが好きだ!大好きだ!中盤辺りにエロシーンでもあれば言うこと無しだ!
だから期待して読んだ。タイトル通り卑弥呼の密室殺人から始まり、テレポートの奇跡からネトウヨ集団の襲撃そして某国の陰謀など濃いエンタメ要素には事欠かない。
しかし、しかしである。やはり中身が甘いのだ。調べ方が足りないというか世界観の浅さ・薄さが端々で感じられる。
例えば専門家が鉢巻きの意味に気付かないとかはいくら何でも不自然。あそこはもっとマイナーな特徴にしないと。

3つ出てくる密室トリックも真新しさも閃きも特に感じないし、「その為に作った」感が抜けない。
ただし歴史推理の最大の肝である現代との繋がり、ここはまあまあ及第点かなと思う。「何故今か」も含めて。在特会やしばき隊なんて連中もいるしね。

さてストーリーを観ると、黒覇が一十三の美貌に見とれる場面が散見される。戦闘力も推理力も高い絶世の美女と運動音痴のおっさんコンビいいじゃない。ノン・ノベルでシリーズ化しろやと思っていたらあの落ち。しどい……。

658 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/03/11(水) 02:42:58.42 ID:vQE9JC3X.net
誤爆失礼。
国内編に転載します。

659 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/03/14(土) 21:06:18.66 ID:0Dl8ZEhM.net
「フェイスフル・スパイ」アレックス・ベレンスン(小学館


アルカイダに潜入しているCIAの工作員ウェルズはある時幹部ザワヒリからアメリカへ戻るよう命じられた。
時間をかけて内部で少しずつ信用を築きつつあったウェルズはいよいよ重要な作戦を任せられたかと緊張する。
一方、CIAでは長く音信不通が続き9.11の情報も知らせてこなかったウェルズに不信感を募らせていた。
そこへウェルズが国内にいるという情報が入り、担当官で恋人でもあったエクスリーは複雑な心境を抱えつつウェルズと協力してテロを防ごうとする。

あらすじと書き出しはHOMELANDに似てるなと思った。主人公は潜伏中にイスラムに改宗してコーランを持ち歩いてるし、敵か味方か判らないような叙述がなされていたから。
しかしそれも束の間、すぐに味方だと判明するからそこのサスペンスは無かった。

閑話休題。タイトルにスパイがつく割にスパイ小説らしくないのはマイナス。正確に言えば上質なスパイ小説らしくないと言うべきか。まずこの分野の傑作群が持つ滋味というか香味というかそれがない。
そして前半で恋人とすんなり再会して愛を確かめ合って別れる場面で読書欲を大きく削ぎ落とされる。くせえくせえ。
その後もアメリカが誇る探知システムの煩雑な説明やらウェルズの退屈な道程やらがダラダラ綴られていて些かうんざりする。前述の事柄からしてどんでん返しとかなさげだと見当がついちゃうから尚のこと。

マイティー・ソーが某解説で言ってたような00年代のダメなスパイものの一つって感じでよくMWA賞獲れたなと思うよ。二作目も訳されてるがはてさて。

660 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/03/14(土) 21:10:57.36 ID:0Dl8ZEhM.net
「命取りの追伸」ドロシー・ボワーズ(論創社)

資産家のラックランド夫人が自室で毒殺された。彼女は病身だったが傲慢で支配的な人柄で孫や召使いを抑圧しており、内外の人々から嫌われていた。
地元警察の要請でロンドン警視庁からやってきたパードウ警部は相棒ソルト巡査部長と共に捜査を始める。担当医師に届いた殺人犯呼ばわりする手紙を出したのは誰か、毒は何故瓶に入っていたのか。
執拗に張り巡らされた犯人の計略がパードウを真実へ導く!?

セイヤーズの後継者とのことであるが、まずはオーソドックスな本格と見たり。
絵に描いたやうな被害者、変わった遺言、中傷の手紙等定石を押さへてゐる。
よつて最初は若干退屈なのであるが、そこをこらへて読み進むとやがてストーリイが色々と動き出し面白くなつてくる。
キャラクターの書き分けも無難で犯人の意外性も悪くない。中盤であからさまな記述がありて戸惑うも後まで読むと腑に落ちてニヤリとするなり。

ただし、探偵役の語る決め手が決め手になっていない箇所がある。「××ということは○○以外知らないはずだ」と言っても、すぐならばともかく大分間が空いていれば○○から聞き出すことも不可能ではあるまい。
更にこれは訳文のせいかも知れぬが、要領の掴めない文章が散見さることは、気の利いたことを言おうとして失敗しているのをいくつも見せられているやうで上手くない。
それから220ページ最後から二番目のキャロルはジェニーであらう。
まあまずまず及第点と言ったところか。

661 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/03/14(土) 21:13:05.39 ID:0Dl8ZEhM.net
「羽男」マックス・ベントー(角川書店)

ベルリンで巻き起こる猟奇殺人。死者は髪を切り刻まれ眼球をくり貫かれ体内に鳥の死骸を詰め込まれていた。
刑事局のトローヤン警部は悪夢にうなされつつも相棒ロニーと共に犯人を追う。そんな時新たな事件が発生し、目撃者の少女は被害者の上に大きな鳥が乗っていたと語る……。

ドイツ発サイコサスペンス。ともかくも会話が多くサクサク読めるのは美点と言って良い。ただ物語の結構はどこか観た場所いつか来た道。
羽男とその由来とか掛かり付けのセラピストが意中の女で狙われるとかクライマックスのSAWばりの責め&派手なバトルとか、それぞれ楽しめるっちゃ楽しめるんだけど売れ線狙いが透け透けでチトビミョー。
ラストも続編狙いが透け透けでビミョー。……まあつまんなくはないから、2作目を待って評価を決めよう。

662 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/03/28(土) 21:30:09.02 ID:q9rJPmay.net
「古書店主」マーク・プライヤー(早川書房)

元CIAで在仏アメリカ大使館外交保安部長のヒューゴーは休暇を使って別れた妻に会いに行こうとしていた矢先、親しくしていたブキニストマックスを目の前で連れ去られてしまう。
警察は何故か捜査に消極的で、独自に調べることにしたヒューゴーは程なくマックスから最後に買った本がとんでもない稀覯本であること、そして彼がナチの残党狩りに血道を上げていたことを知る。
更に他にも被害を受けたブキニストたちがいるらしいことも判り、ヒューゴーは新進ジャーナリストクラウディアの助力を得てパリを覆う巨大な陰謀に迫る。

ビブリオミステリー+スパイ小説?みたいで珍しいから読んだ。
前半は確かに期待通りというか、セーヌ河の橋の上に露店を連ねるブキニストという魅力的な素材を活かした展開で、そこに稀覯本やらロマンスやらを織り込みストーリーが直線的になるのを避け、
といって無関係という訳でもなくメインに集約させていく手際の良さが光っている。ただし後半に入ると現実的というか生臭ささが増していき、やや拍子抜けだった。
意外な犯人もズレてる感じがする。読者のハラハラドキドキはその真相にはないだろう。

あと登場人物表に違和感。大して出番ないのに名前出すなよ。何かあるのかと勘ぐっちゃったじゃん。

663 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/03/28(土) 21:32:56.19 ID:q9rJPmay.net
「ブラック・フライデー」マイクル・シアーズ(早川書房)

ウォール街でトレーダーとして働いていたジェイスンは不正取引で逮捕され有罪判決を受けてしまう。二年後出所したものの妻も子も失い金融関係の仕事に就く資格も失っていた。
そこへとある証券会社の最高財務責任者から声がかかり、ジェイスンは自殺したと見られる若手トレーダーの調査を頼まれる。
自閉症の息子を抱え別れた妻と争いながら事件の真相に迫るジェイスンだったが、魔の手は彼の元にも……。

金融サスペンスとかって苦手なんだけど、本作は大丈夫だった。脇筋の息子を巡る妻との戦いやロマンスにも筆を割いているから飽きずに読める。
これは専門分野を扱ったミステリーの成功例だね(なお失敗例を知りたい人は「相棒は女刑事」を読むべし)。
元妻に再会した時には「何百回でも魂を売り渡す」だの「もっと唾を浴びたい」だの妄想していて、とんだ腰抜け変態オヤジだと思ったがどうやら出所直後の生理的反応だったようで一安心。
息子の描写もなかなからしく見えて良かった。それがメインと絡めばなお良かったけどデビュー作にそこまで求めるのは酷か。
あ、一応フーダニットも頑張っていたよ。まずまずといったところかな。

しかし、自閉症児の子守りって時給48ドルも貰えるのか。

664 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/03/28(土) 21:35:00.08 ID:q9rJPmay.net
「秋のスロー・ダンス」フィリップ・リー・ウィリアムズ(早川書房)

最愛の女が百科事典のセールスマンと逃げやる気を失っていた私立探偵ハンク。
そこへ旧知の保険業者ジャックが訪ねてくる。友人トニーが失踪したというのである。彼は麻薬取引に手を出していて、妻シェリルはかつてハンクが愛した女だった。
調査を始めるとトニーが麻薬密売の大物シュラーを怒らせたらしいという情報が入る。しかし先に処刑されたのはシェリルの方だった……。

88年なのでネオ・ハードボイルドになるんだろうけど、そこまで悲惨ではない。
女に逃げられた逃げられたとこだわるところも何かわざとらしいし。すぐ次の出会いがあるし。途中の別離も如何にも取って付けたイベントみたいで笑っちゃった。
フーダニットは折角意外に出来る素材をバレバレにしちゃってて評価できない。

ま、アパートの仲間たちとかのキャラクターはユーモラスでちょっこし良かったと思うけど。

665 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/04/18(土) 13:43:24.56 ID:2mzROldb.net
「消された私」スコット・ボーグ(早川書房)

バーで見知らぬ男と美女たちの誘いに乗り酒を飲まされた青年アンダーソン。やがて意識朦朧となった彼は車で運び出され何故か溺死させられそうになる。
必死に抵抗するアンダーソンは相手を殺してしまう。それは自分とそっくりな顔をした男だった。現場から逃げ出すがポケットには他人の財布と免許証が入っていた。
その男ピーターソンになりすましたアンダーソンは一体何が起きたか突き止めようとするが……。

奇妙な巻き込まれ型サスペンスと期待するも構成がまずくゲンナリ。600ページ近い厚さは水増し感ブヨブヨ。基本設定に200ページくらいかけてて飽きてくる。デビュー作だからかねぇ。
キャラクターもいまいち立ってないし出し入れ方もぎごちない。パツキン巨乳の女子大生とセックス好きの女実業家が互いに稀釈し合ってるよ。
あと本作はヒッチコックに例えられたらしいが、ピーターソンの描写を浮かび上がらせようとの試みもレベッカほどの鮮やかさはない。
それからギョッとするような不必要な残酷な展開が出てくるのが如何にも素人て感じがする。

ただし、謎の設定そのものは良い。意外な犯人も頑張っていると思った。その辺りの惑わし方は「めまい」ぽかったかな。やや強引に言うと(笑)。

666 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/04/18(土) 13:49:33.96 ID:2mzROldb.net
「パインズ―美しい地獄―」ブレイク・クラウチ(早川書房)

公園の近くの芝生で目が覚めた男。身体は傷つき酷い頭痛に見舞われている。ポケットには何もない。ここがどこかも名前も思い出せない。
やがて町の名前がウェイワード・パインズだと知らされ、病院に運び込まれた男は自分がシークレットサービスの捜査官イーサンであることと任務の内容とを思い出す。しかし、本当の困惑はここからだった。
親切そうだがどこかおかしい住民たち。高圧的に振る舞う保安官。いくら電話をかけても相手に繋がらない状況。町を出ようとしてもまた戻ってきてしまう。
ウェイワード・パインズでは一体何が起こっているのか?

いやはやこれは怪作!そして快作! 冒頭シチュエーションのヘンテコリンさもさることながらそれはまだ想定の範囲内。しかれどもこの真相にはぶっ飛んだ。凄い。
あらすじ読んだ時は「プリズナーNo.6」や「ユーレカ」みたいなもんかなと思い、やがて中盤でこれはあの映画だなとピンとくるもすぐ後の展開でポッキリ折られ意気消沈ゴリラ(でも上記の主人公が相対化される瞬間は鳥肌ものだった)。
更に唐突にカットバックが出て来て混乱に拍車をかけてくる。いやいやこんな訳ないやんか。だってフラフラしてないし――。それがまさかこんなオチだったとは。しかも三部作ぅ? 参ったね。面白そうだ。

667 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/04/18(土) 14:28:36.35 ID:2mzROldb.net
「探偵モデル・マケーデ 偏愛」タラ・モス(ヴィレッジブックス)

モデルの仕事でカナダからオーストラリアへやってきたブロンド美女マケーデ。しかし出迎えてくれるはずの親友キャサリンの姿は無かった。
のろけていた秘密の恋人と出掛けているのだろうと思っていたマケーデだが、翌日ビーチで変わり果てた姿のキャサリンを見つけてしまう。
大きなショックを受けながらも、警視を父に持ち法医心理学を専攻するマケーデは親友の仇を討とうと心に誓うが、担当刑事のアンディに鼻であしらわれたと感じ苛立ちを募らせる。

表紙、あらすじ、レーベルと明らかにロマンティック・サスペンスのかほりが濃厚。更に作者が元モデル兼女優で結婚3回ときた日にゃどんだけ補強してくれてんねんと。
内容は皆さんが思った通りの流れ。幼少期に問題ありの変態が綺麗な女の子を解剖するオハナシ。刑事ともしっかり反発→着火→消火していく。

それでも、読んでいてフーダニットにはちょっと力を入れるのではと期待したりもしたが(密告者はアイツかなとか)、実につまらない。狙ってやったとしたら経験値が足りない。
これをやるにはこれ“まで”が大事なんだから。

もろに続きを意図した終わり方もフックが弱い。こんなんじゃすぐ外れるよ。アイツに高遠は務まらん。

668 :記憶喪失した男:2015/04/22(水) 18:12:07.83 ID:joZ0LJIq.net
ミステリファンは、全翻訳作品のリストを作ってるこのサイトを知ってるかい?

翻訳作品集成
http://ameqlist.com/index.html

669 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/04/25(土) 17:07:06.98 ID:PVUHxcw9.net
「ロッポンギで殺されて」アール・ノーマン(論創社)

日本に住む元GIの私立探偵バニオンは友人アレックスの紹介で新聞発行人ラケッツと会った。
彼は完全犯罪のやり方を教えるという主旨の広告を掲載しないと殺すとの脅迫を受けており助けを求めてきたのだ。
嫌々ながら依頼を引き受け広告に応えるバニオンだったが、そのためにとんでもない陰謀に巻き込まれ命を狙われることになるのだった。

在日米軍のために書かれた観光ハードボイルドシリーズの最終作。読者が欲求不満の野郎どもに限定されているせいか色々な点で過剰である。
暴力、エロ、敵組織どれを採っても同年代の通俗ハードボイルドを上回っていて、カーター・ブラウンでも匂わす程度に留める所を「四回戦までやった」とかズバズバ書いちゃう。
過激さの必然として主人公がまあ、モラルの欠片もないような探偵の面汚し。ヤクザをえげつないやり方でボコるわ美人と見たらラブホに連れ込むことに必死になるわ。
ジメッとしていないのは救いだが、山猫を最後までディスるのには引いた。
ただ陰謀に関しちゃトンデモであっても当時の日本(と世界)の状況を踏まえたものでちょっと感心しちゃった。雑だが一応意外な犯人も。

そして肝心の日本の描写だがこれが案外まとも。まあ観光の面があるからね。訳者あとがきで舞台となった場所を比定しているのも面白い。
次々読みたいとは思わんけど。

670 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/04/25(土) 17:08:53.21 ID:PVUHxcw9.net
「探偵モデル・マケーデ 魔性」タラ・モス(ヴィレッジブックス)

散々苦しめられた連続殺人鬼の公判に証人として出廷するためオーストラリアに戻ってきたマケーデ。
再び犯人に対面する恐怖心を抑え、また遠距離恋愛に耐えられず関係が自然消滅してしまった刑事アンディとの再会にも不安を感じていた。
一方、刑務所の殺人鬼は逃がした獲物マケーデを仕留めるべく虎視眈々と計略を練っていた。

久々に0点の小説を読んだ。貶しといてすぐ続編読んじゃう俺可愛いとか思ってた2、3日前の自分を殴りに行きたい。
この女は哀れだ。マケーデではない、タラ。チェルシー・ケインにもリンダ・ハワードにもなれない。それでいて長い。
犯人にも謎にもロマンスにもストーリー展開にも全くと言っていいほど魅力がない。どうすればこんな気の抜けたソーダみたいな小説を書けるのか。

具体的なとこ挙げればキリがないけど一つだけ。後半香港に舞台を移してアンディを排除するってアホかと。アイツをあそこまで引っ張った意味もほぼ0だし。

671 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/04/25(土) 17:11:31.87 ID:PVUHxcw9.net
「ミステリマガジン700【海外篇】」杉江松恋編(早川書房)

〈評価〉
○、×、○、△、◎、◎、○、△、○、◎、○、○、△、○、○、×

〈感想〉
早くこういうのをやるべきだとずっと思っていた。変にコンセプトやテーマを考えようとするから出来ない。ミスマガ年刊短編集で良いではないかと。その第一歩になるならば嬉しい。
↑だと基本的に落ち穂拾いになるが本書は流石に700冊の重み。当たりが多かった。
ベスト1はレンデル「子守り」。ベビーシッターとして通うっていた先の亭主と理無い仲になってしまったヒロイン。ある時ささいな事故から思わぬ惨事に……。
収録号で読んでいたがやはり出来が良い。これ以上サスペンスに振れると評価かが下がるギリギリを見極めている感じ。
2はアーサー「マニング氏の金のなる木」。銀行から大金を横領した男は金を隠して服役し、出所後取りにきた。しかしそうするにはある障害があって……。
あの「五十一番目の密室」の作者がこんな非トリックものを書くのか!? やや説話臭いが面白い。編者の昔のミスマガの雰囲気というのも解るような解らないような……。
3はホック「二十五年目のクラス会」。同級生から頼まれて高校の同窓会の手伝いをすることになったレオポルド。その過程で卒業ピクニックの時に起きた同級生の溺死を思い出し疑いを抱く。
ホックにしては異色? いやいや「夜はわが友」「夜の冒険」にみられるようにこれも巨匠の持つ顔の一つ。ありがちな筋書きだけど、謎解きとドラマとの配分が見事で歯応えがある。
次点はマシスン「探偵ガリレオ」かカーシュ「肝臓色の猫はいりせんか」。
前者はお馴染み偉人探偵シリーズ。有名なピサの斜塔の実験に絡んだ殺人事件でトリックもシンプルで好感。後者は主人公が酒場で会った男から聞く不気味な猫の話。このスタイルなのがミソだね。

国内篇もちょっと楽しみ。

672 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/05/01(金) 20:35:03.49 ID:2dUisQkA.net
「誰もがそれを狙ってる」マイクル・ストーン(早川書房)

一匹狼の賞金稼ぎストリーターは依頼で当たり屋の美女ストーリーの嘘を見破るが、その後彼女の依頼を受けることになった。元恋人ダグが事故死しその遺産を相続したいのだが隠し場所が判らないというのだ。
興味を持ったストリーターだが同じくダグの金を狙う悪徳弁護士クーパーも荒くれ者の調査員を送り込んでくる。
更に警察内部にも敵が!?

早々に判りやすい敵キャラたちや美女を配置してきてこいつはオーソドックスなハードボイルドをやる気だなと。
それはそれで良いのだが、後半になると一気にチープさが露呈する。犠牲になるべき人物が生き延び、犯人であってはならない人物が犯人になってしまう。完全に安全圏で作っちゃった感じ。
そもそも視点を散らしすぎる。これではプロットで魅せられないし探偵もワンノブゼムに埋没してしまってハードボイルドとしての意義が失われてしまう。

邦訳これきりなのもむべなるかな。

673 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/05/01(金) 20:35:59.89 ID:2dUisQkA.net
「遠い女」ブライアン・フォーブス(二見書房)

ミステリー作家マーティンはヴェネツィアの空港で自殺したはずの友人ヘンリーを見かける。
見間違いではないと確信したマーティンはヘンリーの行方を追うが関係者が次々と殺されていく。更にヘンリーの妻で元恋人のソフィまでもが姿を消していた。

出だしは古き善き巻き込まれ型かと思いきや、プロットの組み立て方がダメよ〜ダメダメ。
現代と過去のクロスカッティングで進むんだがそこ広げるかってとこ展開させるKYぶりがダメだし、敵の正体を終盤まで隠すのも子供騙しみたいでダメだし、
ロシアイタリアイギリスと全く太刀打ち出来なかったのがアメリカで急に進展するのもご都合主義が過ぎてダメ。
トドメがラスト。ここまでそれのみでやってきといて何やせ我慢しとんねんと。まじイミフ。

しろうとの書いた小説。監督か木っ端役者やっとれ。

674 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/05/01(金) 20:39:16.19 ID:2dUisQkA.net
「狂った殺人」フィリップ・マクドナルド(論創社)

田園都市ホームズデイルを襲う猟奇連続殺人。犯行の後で警察や新聞社にはザ・ブッチャーと名乗る人物からの犯行声明が。恐れおののく住民たち。
やがてロンドンからパイク警視らが派遣されてくるが、敏腕の彼も苦戦を強いられ犠牲者は増えていく。パイクは大胆かつ新しい捜査方法を用いて少しずつ容疑者を絞り込んでいくのだが。

噂の古典ミステリーが遂に。しかしあっさりした放題だね。「殺人は狂おしく」とかじゃないんだ。
さてカーが十傑が選んだことで名高い本作だが、その理由はサイコパスの殺人を真っ向から描いたからだろうね。「逆に新鮮」みたいな。カーにもクリスティーにもクイーンにもこうは書けないよね。
シリーズ探偵ゲスリンを名のみ登場に留めてパイク警視を主役に警察の組織力、機動力をフル活用して犯人に迫るというプロットもベストチョイス。
スパッと思い切りよく本格を放棄できるプロ根性にも拍手(元々ガチの本格派ではない気もするが)。それでいてフーダニットは悪くない。

一読の価値はある作品だと思うが、解説者の言う弱点というのが何のことか解らない。はっきり書けばいいのに。解説で未読者への気遣いなんて無用。

675 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/05/05(火) 19:39:33.05 ID:+Vt1l44w.net
「多重追走」ウィリアム・バーンハート(講談社)

悪名高い刑事弁護士トラヴィスは今日も少女を残虐に殺した男を無罪に導いた。ライバルの女検事キャヴァノーの非難もどこ吹く風だったが、
続けて判事から少女を輪姦した容疑をかけられている男モロコーニの弁護を命じられてしまう。
前任者が失踪したという曰く付きの案件で、初公判の日に男たちに襲われ裁判に負けろと脅される。
それでも裁判を有利に進めるトラヴィスだったがモロコーニは脱獄したことからのっぴきならない殺し合いの渦に巻き込まれていく。
決死の思いでキャヴァノーに助けを求めるトラヴィスだったが……。

弁護士作家なのにリーガル・サスペンスぽくなく面白そうなあらすじだったから厚くても読んだのにリーガルの方が良かったと思ったのだった。
序盤は凄く良かったんだよね。まず黒であろう極悪人も平然と弁護出来るという主人公はとても良いし、その弁護ぶりも堂に入ったもので読ませる。
ただし逃亡者ばりの巻き込まれ型にシフトしてからはベタベタな流れを驀進して下総上総。ストーリーはそれで良いんだが、キャラクターがね。
ヒロインがもうちょっと派手だったら良かったんだがそうでもなく、悪役も類型を脱してない。

後半まさかの大トリック炸裂か!? と思いきや秋田紀亜、あっさり交わしちゃうのはセンスの無さを感じさせた。意外な犯人を用意してるところは悪くないけど、繋げ方が強引。

解説の穂井田は誉めすぎ。もう読まないだろうな。

676 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/05/05(火) 19:43:19.31 ID:+Vt1l44w.net
「メグ」スティーヴ・オルテン(角川書店)

自らのミスにより仲間を死なせて以来海に潜れなくなっていた古生物学者ジョナスは旧知の研究者タナカの依頼を受けグアム沖へと向かった。
マリアナ海溝へ送った無人探査機が損壊した原因を調査して欲しいというのが依頼の内容だった。
10万年前絶滅したとされる海洋最大のプレデターメガロドンの生存を唱えるジョナスはよもやという思いで潜航する。そこへ待ち受けていたのは果たして原始の怪物であった!

ちなみにメグってのはメガロドンの略称ね。
主人公は元海の男で妻は超美人だが野心家で主人公の親友と浮気中で更に若い美女が現れ……ときた日には「飢えた海」っぽいなと思ったが読んでみるとそうでもなかった。
まず奥さんが完全に悪役ってとこ。キャリアに傷を付けずに離婚するため主人公を潰そうと画策している。あと夫婦は最初以外別々でクロスカッティングしている。
前者もどうかと思うが後者は前者の設定を殺しちゃってる感じがしてダメだね。中途半端。

そして読み通すとデビュー作のぎごちなさが随所に漂っている。キャラクターの立ち具合、絡ませ具合などまだまだ。個々にドラマを始めちゃってて脇役の自覚がないんだな。
ただメグの描写はなかなかどうしてちょっとしたものだと思った。流石十年の研究成果と言ったところか。一人称も抑制が効いていて嘘臭くない。

100ページ書いた時点でディズニーが映画化権取得したらしいが製作されたんかいな?

677 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/05/05(火) 19:50:03.96 ID:+Vt1l44w.net
「殺意が芽生えるとき」ロイス・ダンカン(論創社)

夫を亡くし二人の幼い子供たちを抱える絵本画家ジュリアは今も夫マークの思い出が詰まった海辺の家で暮らしていた。
親友ルーシーが彼女の兄でジュリアの高校時代の恋人ロジャーを伴い訪ねてきた日の夜、娘カムが吐いて寝込んでしまう。息子ブラッドの話によると怪しいキャンディが原因らしい。
ジュリアの脳裏にロジャーへの疑惑が膨らんでいった。そもそもマークの死も彼の運転するボートのせいだったのだ。
その後、不審火から火事になりブラッドが火傷を負うに至りとうとうジュリアはロジャーのアパートへと向かった。しかしそこで見た光景は――。

「ラストサマー」の原作者でジュブナイルの書き手とあれば大して期待は持てないが、後半化けると評判なので読んでみた。
元恋人に怯えるシングルマザーという設定からして如何にもメアリ・ヒギンズ・クラーク的大量生産型サスペンスの流れかと思いきやフーダニットに舵を切る。
それでも「多分あいつやな。さらっと書いたつもりだろうがバレバレ」とニヤケターナーになっていたら第十五章で仰け反った。 これは判らんかった!
フェアではないが、一応伏線らしきものもあったんだけど。

全体として受けた印象はクリスティを現代風にして崩した感じかな? ミラーやアームストロングのようなプロットで魅せるタイプではない。

追伸 あの女ひでーな。お前が黙ってたせいじゃねーか。

678 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/05/17(日) 20:46:23.25 ID:l0/+PCpY.net
「コーディネーター」アンドリュー・ヨーク(論創社)

〈掃除屋(エリミネーター)〉のコードネームを持つ英国情報部の殺し屋ジョナス・ワイルドは心身共に傷を負った大仕事の後の休暇中に何者かに命を狙われる。
返り討ちにしてから情報部へ赴いたワイルドに新しい上司モッカ中佐はコペンハーゲンへ向かうよう告げる。ファルコンの異名を取った伝説のスパイモエルが次のターゲットだというのだ。
身分を偽りモエルの元へ潜入したワイルド。しかしそこへやってきたのは因縁の相手、KGBの大物キーゼリットだった!
計画を狂わされたワイルドはスカンジナビア諜報網の工作員モーガン=ブラウン夫婦の助けを借りようとするのだが向かった先に待ち受けていたのは死体だった……。

60年代のスパイシリーズ第2作(何故)。ちなみに一作目は映画化されており日本でも「謀略ルート」の邦題で公開済み(ソフトはなし)。
ちなみにちなみに作者は夫婦合作ペンネームマックス・マーロウでパニック小説も書いておりこちらはも邦訳あり(未読)。

さて、60年代スパイものというと007かルカレかという感じだが、あらすじから判るようにこちらは前者。しかしそれにしては失敗作……に近いと思った。
理由はいくつかあってまず“動”で魅せるべき活劇ものであるところ、中盤主人公に動きが無い展開が続く点。ここだけ切り離した場合それなりにスリリングなのだが、この小説には相応しくない。
次にキャラクターに凄みがない点。悪役の老スパイもKGB幹部も上司の中佐もCIAの男もプロフェッショナルとしてのオーラが感じられない。この辺りの雰囲気って大事なのよスパイものは。
あとは意外性かな。一応意外な正体、意外な理由など明かされるけど、一方はキャラの立ち具合がイマイチだしもう一方は後付け臭いのであまり驚けなかった。

この叢書で非本格が紹介されるのもスパイものが紹介されるのも歓迎するし、殊に本作についてはミスマガで小財満とかいうポッと出が絶賛していたから期待したが、これは読まなくても良かったやも……。

679 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/05/17(日) 20:48:48.95 ID:l0/+PCpY.net
「遅番記者」ジェイムズ・ジラード(講談社)

交通事故で妻と娘を亡くした新聞記者サムは遺された日記から妻クレアが編集長ルールと不倫していたことを知る。
落胆し一線を退いたサムは密かに復讐を企むが、そこへ連続婦女殺人犯を捕まえるため警察と協力せよという指示が下った。
女性記者ストッシュと組んでこれに当たるサムだが、ストッシュもまたルールとの関係を噂されていた。

騙された。ミステリーじゃなかった。主人公の自己再生の旅みたいな小説だった。
殺人事件は完全にシナリーでしかなく、犯人の意外性とかもなし。ついでに言えばヒロインにも魅力がない。

680 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/05/17(日) 20:51:09.90 ID:l0/+PCpY.net
「リッジウェイ家の女」リチャード・ニーリィ(扶桑社)

裕福な未亡人で画家のダイアンは自分の絵を気に入ってくれた退役軍人クリスと出会い、恋に落ちる。問われるままに夫を亡くした経緯とそれが元で娘と絶縁状態になっていることを語り出すダイアン。
一方その娘ジェニファーも失業中の株式仲買人ポールと知り合い、同棲を始めた。その後困窮し住む場所も失いそうになり、ジェニファーは思いの外近くに住んでいると判った母親に連絡を取る決意をする。
しかし、母と娘との再会は二人を新たな悲劇の渦中へと突き落とすのだった……。

ニーリィ4冊目。てっきり「殺人症候群」的な感じかと思って用心しいしい読んだのだが……なんかロマンスぽいストーリーが延々続いて一体どうミステリっていくのか予測がつかない。
ゆっくりジワジワと疑惑が広がっていき、後半に入ってついに事件が! そこから一気読み。確かにサプライズ・エンディングではあったが、はっきり言ってまあまあ以上の印象はなかった。
それなりの分量で前振りしてるからもっと強い衝撃を期待してしまうし、その間に色々と考える意外な結末に負けている。

とまれ、解説の折原がとにかくべた褒めしている「心ひき裂かれて」は絶賛積ん読中なので近い内にやっつけたいと思う。その前に同じく積ん読の「オイディプスの報酬」も。

681 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/05/24(日) 17:42:29.89 ID:m7dqfmnu.net
「大統領プログラミング計画」ローランド・ベリイ(早川書房)

アメリカ大統領選の取材中だった記者グレアムは恋人が死んだとの知らせを受ける。彼女は巨大企業レーザーコムとソ連との繋がりを調べていたという。
恋人の意思を引き継いだグレアムだが、レーザーコムやKGBから妨害、更にはプロの殺し屋に命を狙われることになる。
レーザーコムは最新コンピュータを使ってアメリカを支配すべく策動を続けていた……。

これはつまらなかった。もう話運びが雑なの。スパイものではないし、巻き込まれ型サスペンスとしてもご都合主義が目立つ上技巧をまるで感じられない。
愉しめる余地があるとすれば女スパイとのムフフな描写くらいか?

682 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/05/24(日) 17:43:38.43 ID:m7dqfmnu.net
「予期せぬ結末1 ミッドナイト・ブルー」ジョン・コリア(扶桑社)

井上雅彦編集の異色作家短編集シリーズ第一弾。コリアは短編集「ナツメグの味」しか読んでいないがその世界観に魅せられ好きになったので期待していた。
しかし第一部からインターミッションまでイマイチ薄味。未訳未収録中心に集めた傑作選より落ち穂拾い寄りだから仕方ないのかも。

と思っていたら第二部冒頭の「メアリー」にやられた。これだこれこれ! これこそ俺の好きなコリアだ! 勢いでベストにしちゃう。続く「眠れる美女」も良い。
落ちで驚かすのももちろん大事だが、意外性に乏しくとも過程を楽しめるサスペンスフルな短編を書ける方がひょっとしたら職人と呼ぶに相応しいのかも知れない。そう思わせる二編だった。
ただし全体としての評価は可もなく不可もなく。

追伸 「よからぬ閃き」の落ちが今ひとつ解らなかった。

683 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/05/24(日) 17:48:41.36 ID:m7dqfmnu.net
「深夜回線の女」ジョン・ラッツ(早川書房)

元警官の私立探偵アロー・ナジャーの元へ若い女性が妹を殺した犯人を見つけてくれと依頼してきた。
ジャネットと名乗ったこの女性は双子の妹ジャニーンが深夜に電話修理用の回線を無断使用して出会いを求めていたと告げ、同じことをしていた女性が2人殺されていると訴えた。
依頼を受け深夜回線を調べるナジャーはそこでただならぬ雰囲気を持った女性と出会う。彼女との会話に心を奪われていくナジャーだが、謎の大男に脅され更には新たな殺人も発生する。
殺され方に共通点はあったものの、今度の犠牲者は深夜回線を使っていなかった……。

ミスマガで短編を読んでプライベートに興味がわき探して読んだのでありました。一人称の印象だったのですが三人称一視点でした。
まあ心情描写も普通にやっているし主人公不在の場は描かれないので大差ないですが。

さて、なかなか面白かったです。テスト用回線が男女の出会いの場になること、それをテーマにしてることがまず興味を惹かれますね。そこに主人公自身の出会いを絡めてそっちも掘り進めていくのも巧いです。

メインの事件は囮捜査ばかりなので単純やな〜と思っていましたら、ラストでどんでん返し! これは予測つきませんでした。一応伏線はあったのですけども。こういうサプライズをしっかり仕込んでくれるのは嬉しいですね。ノリで書いてない。

そしてナジャー自身の出会い。クローディアが短編で読んだ印象と随分違ったので戸惑いました。こんな重い陰影を背負った女だったのかと――。
この女性がどういうプロセスを経てああなっていくのか読んでいくのが楽しみなような怖いような……。
とまれ次作はすぐ読みます。

684 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/05/31(日) 12:02:44.94 ID:hkTu9QBq.net
「稲妻に乗れ」ジョン・ラッツ(早川書房)

私立探偵ナジャーの今回の依頼人は儚げな美少女キャンディ・アン。強盗殺人で逮捕され死刑判決を受けた恋人コルトの濡れ衣を晴らしてくれとのこと。
彼には別のアリバイがあるというのだが、目撃者が四人もコルトだと証言しており、判決はもはや揺るぎそうになかった。それでも依頼を受け目撃者たちに聞き込みをするナジャー。
しかし目撃者の証言は覆らず、代わりに何者かに襲われてしまう。
一方恋人であるはずのクローディアには他の男の影がチラつき始め……。

邦訳3冊目にしてシリーズ4作目。
本シリーズの特徴としては、ハードボイルドであることに加えて、1謎の設定をきちっと作る 2恋人との不安定な関係 があるようです。

1について、今回も目撃者たちに支えられた鉄壁の有罪判決をどう崩すかという構図でスタートし、読者を引っ張ります。アリバイトリックがあるのか? それとも衆人環視下での錯覚トリック?
色々思い描いていると後半あっと驚く展開になりそこから更に意外な真相へと雪崩れ込んでいきます。
この方向性は評価するのですが、残念ながらサプライズありきで無理があります。動機と犯行とが釣り合っておらず本末転倒です。
2について、これはパーカーの影響なのでしょうか? 断言しますがこのパターンでハッピーエンドはありえません。必ず破綻します。成功例ないでしょ?
あの警察官もあの私立探偵も結局破局したではありませんか。こんな設定で深みを持たせようなんてのは凡そ有意義な試みとは言えませんね。

でもまあ、だからこそというか、続きが気になっちゃうんですよね(笑)。邦訳途絶えているから読めませんけど。安ければ原書買って翻訳に挑戦しちゃいそうです(笑)。

685 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/05/31(日) 12:08:40.15 ID:hkTu9QBq.net
「発掘 ディスカバリー」スティーヴ・シャガン(角川書店)

シリアの砂漠で幻の国エブラの遺跡の発掘調査を行っていたシリアとイタリアとの研究グループは見つかった書板を解読してヘブライ語が使われていることを発見した。
グループの一員ガブリエッラは歴史的発見に色めき立つが調査はシリア政府の妨害を受ける。
一方海の彼方アメリカロサンゼルスではLAPDの警部補ジャックの別れた妻が自宅で射殺される。現場にはエブラの遺跡からも出土された魔神パズズの像が安置されていた……。

すわ海外には珍しい歴史伝奇ミステリーかと色めき立ったが、読み進めると歴史謀略アドベンチャーと判った。それ自体はまあいいとして、作品全体がどうも収まりが悪い。
ガブリエッラとジャックそれぞれのパートが中々合流しないのだ。これらに繋がりがあるらしいことはすぐに解るのだが、それでいて交わらないから何とももどかしい。
また登場人物がバンバン死んでいく割にはそれぞれの印象が薄くストーリーの盛り上げ方が弱い。

まあ凡作かなあと思っていたら後半まさかの反日発言が飛び出し唖然呆然怒り心頭滅却不能。
主人公が日本人ビジネスマンたちを見ながら「日本人ぐらい簡単にやっつけられる」「原爆をお見舞いしてやればいい」なんてほざきやがるのだ!
いくらアメリカでは原爆投下が正当化されているとは言え、ジョークのネタにしていいことではない。
更にムカつくことに主人公はイスラエルシンパのシオニストなのだ。それはシリア大使館でのやりとり(「シオニストに知人はいますか?」「つまり、ユダヤ人のことですな?」)などに露骨に表れている。
それでいて日常レベルでは暴力は全否定みたいなこと言っちゃうんだから反吐が出るというか反吐も反吐が出そうになって自分から出た。
あとがきによると作者もユダヤ系らしいが、ホロコーストの悲惨さを思うのならばその感情の十分の一でも原爆犠牲者に向けるべきだろう。
結局「戦争による悲劇」ではなく、我らが災厄としか捉えていないのだ。

最後に男の一人称がどいつもこいつも「あたし」てのはないだろう。落語の若旦那しかいないのかと。特定のキャラ付けならともかく。

686 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/05/31(日) 12:09:41.86 ID:hkTu9QBq.net
「女性精神科医」ボニー・コンフォート(講談社)

精神科医として順調なキャリアを築いていた独身女性サラ。私生活でも素敵な実業家ウンベルトと出会い恋人同士になる。しかし不幸は弁護士ニックを患者として迎えた時から始まった。
幼少期に継母との関係が元でトラウマを抱えるニックは次第にサラに執着を見せる。それを拒みつつもどこか惹かれていたサラだがやがて決定的な出来事が起こる。
そしてニックは不適切関係を結ばされたとサラを訴えた。社会的信用を失いウンベルトとの関係も危うくなったサラは自分を守るため法廷で闘う。

ミステリーじゃねぇぇぇ。女性精神科医が自己投影して書いた私小説風ロマンス小説。ページ数が500近い上ニックが暴走するまでの前フリがこれまた長い!
一般的に言ってつまらないかと言えばそこまでではないが、地雷としての話題性もなく、誠に痛い時間の無駄であった。

687 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/06/28(日) 17:09:19.67 ID:b9kbsa5T.net
「黒頭巾の孤島」カトリーヌ・アルレー(東京創元社)

父が事故死し孤児になってしまった少女タガ。それまで付き合いの無かった伯父ルフスに引き取られることになり、ルフスの住むバルチック海の孤島へ向かうことになった。
島に立つ伯父の城でタガは黒頭巾をかぶった人物に迎えられ、戸惑う。
伯父は何かの研究に取り組んでいるようだが詳しいことは教えてくれず、城の中には立入ってはならない部屋があり、何処からかの来客も少なからずいるらしい。
好奇心の虜となったタガは我が身を利用して伯父の秘密を暴こうとするが……。

アルレーは悪女サスペンス作家ということで同工異曲を繰り返してるような先入観があり避けてきたところ、本作は毛色が違うようなのでチャレンジしてみた。
怪しげな島の城館にやってきた少女がそこに纏わる謎を探るといういかにもゴシックな筋立てだからだ。確かに悪女ものとは違ったが(悪女がいない訳ではないが)、期待したものとも違った。

謎の存在感が弱く、読者の知識欲を擽らないし真相もショボい。その上で〆も曖昧なので短いだけが取り柄の典型的な読み捨て本になってしまった。
積ん読の「呪われた女」や「死者の入江」など気になるのはあるからまだ見捨てないけど。

688 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/06/28(日) 17:10:42.79 ID:b9kbsa5T.net
「ゴールドスティン 上・下」フォルカー・クッチャー(東京創元社)

1931年、初夏のベルリン。副総監から呼ばれたラート警部は一人のアメリカ人の監視を仰せつかった。その男の名はゴールドスティン。マフィアの殺し屋として知られた人物だった。
今回ベルリンにやってきた目的は何なのか?
一方裁判所で働くラートの恋人でチャーリーは浮浪少女アレックスを取調べていた途中に逃げられてしまったことから、浮浪児の殺人事件に巻き込まれていくことになる。

シリーズ三作目。相変わらず地味だし、新鮮な展開はほぼ皆無なのだけれど、内容の密度は高く、モジュラー型であっても平凡な構成にはならないよう気配りがなされていると感じた。
真相もそれ自体は手垢の付きまくったというか手垢で出来た力太郎みたいなもんなんだけど、背景に上手く隠されていたもんだから気付かなくて少し驚かされた。ある意味徹底したミスリード。

そしてラートとチャーリーとの関係もまた焦点の一つ。仕事のことや男友達のことで痴話喧嘩をしてはセックスでうやむやにしたりしている。
こういうのが好きな人もいるのだろうが―自分もほどほどには好きだが―、やりすぎは良くない。……どうもチャーリーにスーザン化の兆しが見え始めて心配になった。杞憂だといいが。

689 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/06/28(日) 17:25:56.99 ID:b9kbsa5T.net
「毒杯の囀り」ポール・ドハティー(東京創元社)

14世紀のロンドン。国王エドワード三世が崩御し幼い息子が王位に就いたが、摂政となったその叔父ジョン・オブ・ゴーントとの間にはいささか不穏な空気が流れていた。
そんな折、摂政派の有力者であった商人トーマス卿が自宅の寝室で毒殺される。酒を運んだ執事が疑われ、屋根裏部屋で首を吊っているのが発見されるに至って事件は終わったかにみえた。
しかし、ジョンは検死官ジョン・クランストン卿に真相を究明するよう命じた。ジョン卿は若き修道士アセルスタンと共にトーマス卿の屋敷へ乗り込むが、その調査のさなかにも関係者が次々と死を遂げていく。

シリーズ第1作。かつてミスマガで森英俊が熱っぽく紹介したことで名が広まり海外古典本格ミステリ好きの間で邦訳が待たれていたドハティー。
しかし実際刊行までには10年かかった訳でみんな如何に海外ミステリの出版が難しいか思い知らされたと。

で肝心の中身。先の紹介ではカーが引き合いに出されていたところ、それには異議がある。歴史考証はしっかりしていると思うのだが、ミステリ部分がどうにも弱い。
まず出だしがどうも乗れない。表向きおかしな所は何もないのに命令で無理やり粗探しをさせられるというのが何かもやもやする。
そこは何かしら不自然な部分をきっかけとして提示して欲しい。
あとカー作品における不可能犯罪のような魅力的な謎がない。魅力な伏線もない(意味不明なメモとか不可解な独り言とかはあるがストレート過ぎる)。
これはちとがっかりだなあと読み進めていくと、最後の犯人指摘場面で思わぬ伏線が回収されて驚いた。言われてみれば確かにおかしい。半七的と言うかあからさまに書かれていたもので、これは見事。
失点回復とまではいかないが後悔まではしなくて済んだ。

それからキャラクターについて。探偵役二人の造形はまあまあかな。クランストンはもっとアクが強くていい気がする。アセルスタンの方はいい感じ。
思いを寄せる未亡人は静か過ぎて物足りないがこの時代なんてこんなもんか。フォレットが異常なのである。
蛇足ながらこの二人がどうなるかというところで即席の恋敵まで出して引っ張っているのはあざといやら安っぽいやらで笑ってしまった。

ああ、でも引っかかりそうな自分が怖い……。

690 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/07/05(日) 11:59:24.77 ID:Koe3s+9E.net
「大富豪のペルシャ猫」ローレンス・サンダース(早川書房)

パームビーチで父の弁護士事務所の調査員をしているアーチー・マクナリーは誘拐されたペルシャ猫の捜索を引き受けた。
飼い主であるいけすかない不動産屋を訪ねたアーチーはその義妹マーガレットと出会いすぐに良い関係に。
一方で妻への脅迫状が来たから調べてくれという詩人ロデリックの依頼も引き受けてしまうアーチー。一見無関係に思えた二つの案件だったが、背景の一人の心霊術師が浮かび上がる――。

シリーズ二作目。ユーモラスな私立探偵ものかと思いきや降霊会やら千里眼やらの謎が出てきてすわ本格好きにもアピールするかと思いきや……。

はっきり言ってミステリーとしては落第。思わせぶりな謎や独白(一人称なので)を撒きながら放置しているのにも唖然としたが、致命的なのは終盤で明かされる真相。
これを見破れない読者はいない。断言してもいい。一人もいない。舐めすぎ。
人間関係もプロットに絡めて巧く捌ききれていない。謎もストーリーも余剰してはみ出てしまっている。

だからキャラクターで読むしかない。
魅惑的な恋人がいるのに平気で他の口説いて浮気したり母親と同年代の高齢者にまで欲情したりする困ったちゃんである一方、
厳格な父へはジョークも言えず服従し汚い言葉に嫌悪を隠さないアーチーの造形はユニーク。ストーリーがダメでも次も読んでみるかという気にさせられそうだし……。

追伸 訳者よ、「ベーカー街の不正規兵」は酷すぎないか? ホームズくらい読んどけよ。

691 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/07/05(日) 12:02:52.40 ID:Koe3s+9E.net
「インヴィジブル・ワールド」スチュアート・コーエン(講談社)

シカゴの配管業者アンディは長らく会っていなかった親友クレイトンの自殺の報に愕然とする。つい先刻彼からファックスを受け取ったばかりだったのだ。
住んでいた香港での葬儀へ行くか迷うアンディだが、死んだはずのクレイトンから謎めいた手紙と航空券が届くと意を決して現地へ向かった。
それが、親友の遺した伝説の地図を求める旅の始まりとも知らずに。

これもがっかり。作者は織物鑑定家でよく知る分野をテーマにエンタメを書いたつもりなのだろうが、素人のダメなところが噴出しとる。
まず長さ。600近くある。もちろんプロットと不釣り合い。例えばいきなり第2章を丸々脇役(準主役ではあるが)視点のストーリーにしてしまっている。
主人公に感情移入もしない内からこれはキツい。後にちょこっと意味があったことが判るが、それにしたってここまでの長さは不要。
つか、その意味の部分だってストーリー全体からみれば若干浮いているし結局要らない気も。
作者の蘊蓄やら思索やらをろくに捨象せずにぶち込みよるからこうなる。

次に文章。改行や空白を経ずに視点が目まぐるしく移り変わり更には時制まで行ったり来たりして混乱を来す。
ついでに言えばそこで「どうだい幻想的だろう?」「ヘタウマぽく受け取れよ!」みたいな作者の声が聞こえてくるようでイラッとする。
ただ下手なだけだろが!

最後に登場人物。主人公が“いい人”なのは別に良いとしても、準主役の商人ホルトの造形はどっちつかずで焦点がぼやけてみえるし、ヒロインたるシルヴィアは更に曖昧な印象を受ける。
シルヴィアの造形なんかも前述の文章と同じで「敢えてはっきりさせない巧さ」を演出しようとしてただ下手さが当たり前に出ただけになったんじゃないかしらねえ。

ああそもそも内容を忘れていた。作者の独り善がりのせいで宝探し小説にも巻き込まれ型にもなれなかった哀れな文字列群。だらだらくっちゃべっりながらあっち行ったりそっち行ったりするだけ。

実に無駄な時間を過ごさせていただいた。

692 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/07/05(日) 12:05:32.03 ID:Koe3s+9E.net
「おしゃべり雀の殺人」ダーウィン・L・ティーレット(国書刊行会)

ドイツ出張中のアメリカ人技術者タッツォンは道端で一人の老人に話し掛けられた。雀に助けを求められたと訴えてきたのだが、その直後老人は血を流して倒れ絶命する。
警察の調べで被害者がタッツォンの会社の商談相手であるコールマンだったことも判り、彼は重要参考人としてマークされることになった。
更に謎の男に脅され、次の殺人が発生し、おまけにナチにまで狙われたことがきっかけで謎の美女と逃避行をする羽目になってしまう。
予定通り帰国しなければ職を失うピンチの中、タッツォンはこの混乱が抜け出そうとするのだが……。

ナチ政権下のドイツが舞台の本格ミステリ――しかもリアルタイムに書かれた――ということでかなり楽しみに読んだ。
のだが、これは本格というより巻き込まれ型サスペンスの趣が強いと感じた。白昼の街中で突然殺人に出くわし、美女と逃げるというプロットはヒッチコックさながら。
当時目に留まらなかったのかしら。
トリックとかもなく、射殺射殺なのも本格ぽくない点。あと主人公が事件を解決しようとは思っていないのも。
最後で意外な犯人が明かされ、推理場面もあるけれども、その順番が示すように危なっかしくちと説得力に欠ける。ただおしゃべり雀の謎は単純だが嫌いではない。

それより一番気になったのは文章が読みにくいこと!
現在ぽく始まったのに回想を匂わせたりしているのはまだしも、ちょいちょい描写を割愛するのは参った。セックスは仕方がないとしても殴るとこくらいは描けよ。
これも前回と同じくそういうのがオサレだと思ってるんだろうが、ケッてなもんよ。それでいて本筋と無関係のユダヤ人への暴力はしっかり描くんだからね。

訳すなら国書よりも論創に相応しいような作品だった。解説で紹介されている「チクタク殺人」の方を読みたかったな。ハチャメチャで凄そうやんか。

693 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/07/11(土) 21:58:29.32 ID:DQULGOcE.net
J・J・コニントン「レイナムパーヴァの災厄」を読む。
ドリフィールド卿シリーズの異色と言うてよい一編。、
現在容易に手に出来るのは、シリーズ中では本作のみである。
しかも、内容がアガサの「カーテン」的展開であるにもかわわらず、
最終作ではなく、解説によればワトスン役を勤めることが多いキャラ(治安判事)
も未登場、内容的にも田園舞台ながら国際的な白人女性人身売買ネタが
メーンで絡んでくるガチな本格とも言い難い内容、
この作者はマエストロ鮎も評価し、謎解きの興趣が強い未訳作品多数で
あるらしいのに、何であえて本作翻訳をチョイスしたのか、
理解に苦しむところではある。
理科系作家らしい前半のタイヤ跡からの丹念な推理、
ジョンもビクーリな拳銃自動発射殺人トリック等の
謎解きミステリとして面白い部分もあれど、
やはりコニントンの本領を伝えるのはこの作ではないのでは感が大。
余談ながら、キャラ的にはいい御歳の名探偵ドリフィールド卿が姪っ子の友人
を心憎からず思うている(しかも先方にもその気が)やに書かれている。
勿論、露骨な描写は皆無なれど、クラシックなミステリでロリコン要素ってのは
ちょい面白いかもなー。

694 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/07/12(日) 17:26:25.00 ID:qiBu9+hP.net
W・リンク&Rレビンソン作、藤崎誠訳「刑事コロンボ 二枚のドガの絵」を
読む。訳者藤崎誠=瀬戸川猛資氏、
ちゅーか、事実上の著者は瀬戸川氏である。
大ヒット刑事ドラマの本邦における初期ノヴェライズのひとつ。
コロンボシリーズ中でも、なぜか高評価の作だが、
序盤の犯行時間を誤認させるための電気毛布使用の体温維持トリックは
投げっ放し、後半の拳銃や絵に関する冤罪工作のための偽装は
雑としか言い様がなく、
コロンボの指紋があるはずのないところにある(ドガの絵)というのは
良しとしても、軍手オチはわざとらし過ぎて頂けない。
前半の犯人の丁寧な心理描写等は読ませるものがあるのだが、
結局、オリジナル(テレビドラマ)の弱点はそのまま継承してしまっているのは
仕方ないことであろうか。
ドラマにはない軍手調達のくだりが挿入されているのは御愛嬌か。

695 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/07/18(土) 16:49:00.52 ID:c++GnhAm.net
ロス・マクドナルド「地中の男」を読む。
ベストセラーとなった作らしいが、既に全盛期を過ぎた感はあるロスマク作品。
今回は、リュウがふとしたことから知り合った少年が連れ去られ、
母親の依頼を受けこの一件に関わることになったリュウが探索するうちに、
多彩な人物が絡んだ過去の悲劇(かけ落ち)が浮かび上がって来る・・・
まあ、おなじみの展開ですわ(w
全編においてカリフォルニア北部のローカル色を取り入れたと思われな
山火事ネタが背景にあるが、さほどサスペンスを盛り上げる効果を
成しているわけでもなく、あくまで単なる「背景」に止まってしまったのは残念。
物語のメーンにはいないように見えたいかにも脇キャラなキティ気味母子が
実は・・というのは、ドンデン返しではあるが、それ以上でも以下でもない、
本格ミステリなら反則スレスレ感もある。
内容面もそうだが、ゲシュタルトとかロールシャッハとか、この時期の
作者が心理学、精神病理学への嵌り具合を思わせるワードが目につくものあり、
時代性なのか、宇宙に関するネタもあり。

696 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/07/19(日) 22:00:40.91 ID:VSd44KV0.net
E・D・ビガーズ「鍵のない家」を読む。
またしてもおなじみチャーリー・シリーズ。
本作は彼氏のデビュー作である。
舞台は往時の常夏のハワイ、ミステリとしてはともかく(偶然による
御都合主義展開満載、犯人見え過ぎ、泳ぎの達人ってそれトリックちゃう
やろと(w )
丁寧に書き込まれた情景描写は実にビビッドで、今読んでも魅力に富む。
まだチャーリーも傍役のポジションで、主人公はボストンの名家出身の青年
である。ハワイの資産家である彼の叔父が殺害され、恋愛模様を含め
多彩な登場キャラを絡めて事件が展開してゆく。
まあ、気軽に読ませる観光小説テーストの軽ミステリと言うたところ
でしょうな。
前記したとおり、ミステリとしては基本「逝ってよし!」な出来ではあるが、
気軽な読物=エンタメとして見れば、いまだ捨て難い魅力があるとは
言い得よう。

697 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/07/20(月) 14:52:45.19 ID:ONijttfh.net
ジョルジュ・シムノン「紺碧海岸」を読む。
おなじみメグレ警部シリーズの1作だが、久々の邦訳とのこと。
舞台はメグレのホームグラウンドのパリではなく、タイトルに冠された保養地
として名高いコートダジュール。このシリーズの雰囲気からはやや意外感が
ある華やかな場だが、初期作品らしく事件の背景にある陰鬱な男女関係が
抉られが如く明らかになってゆく・・
メグレが夫人同伴で珍しく保養地で巻き込まれた事件譚かと思いきや、
ガイシャ(どこかメグレ自身に似た男)が諜報活動(結局、この具体的内容は
最後まで明らかにされず、またこの点は作品の主題ではないと言い得る)に
関連していたため、特命により派遣される。
スパイスリラーのような発端であり、この辺の展開も異色。
短い作品だが、それなりに読める、読ませる出来とは言い得ようか。

698 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/07/25(土) 19:02:58.83 ID:prNSopas.net
「漂う提督」を読む。
1930年代初頭、本格ミステリ黄金時代における著名ミステリ作家連に
よるリレー小説である。
この手の作品群の中にあっては、良い出来栄えとされているが、
その評価は「リレー小説としては・・・」という但し書きが付く
程度のものである。
この点は、大乱歩や横溝御大も参加している本邦における一連のリレー小説
のヨレヨレぶりを思えば納得できようか。
才人アントニイが何とか最終章(混乱収拾篇)で
締めくくっている感があり、犯人(デニー)の意外性は薄いものの
そのラスト(犯人の唐突な死)はいかにも彼らしいシニカルな味わいに満ちたものとなっておる。
邦訳は著者アガサ他と銘打って刊行されているものの、
実は担当部分は非常に短い。
いかにもアガサ作品らしいお喋り婦人キャラが登場するものの、
作品全体からすれば軽い「転」に該当する部分で10頁程度のボリューム
に過ぎないのだ。
第七章(頁数にして50頁弱)を担当して物語を展開させたドロシー
(本作刊行当時は邦訳に恵まれず、巻末に付された作家紹介に取り上げられて
いるのが隔世の感あり、ちなみにプロローグ部分担当のG・K、アガサ、
フリーマン、アントニイは略されている。
20頁強程度(第九章)の担当ながらフリーマンはいつもの足の捜査、警察小説スタイルを貫いているのはいかにも彼らしく思えた)
先行する章を検討して39の疑問点(第八章のタイトルでもある)を洗い上げた
ロナルド大僧正、この2作家の労が思われるところだ。
いろいろ各人の事情もあったのであろうが、執筆の負担がとても均等とは言い得ないのは気にかかった点ではあった。

699 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/07/27(月) 00:00:27.76 ID:BRgB6xUj.net
A・クリスティ/F・W・クロフツ他「ザ・スクープ」を読む。
リレー小説2編(表題作と「屏風のかげに」)収録。
表題作の第七章と十章を担当しているクレメンス・デインを除いては、
ミスオタにはおなじみのマエストロばかりである。
期待度低だったせいか、意外に楽しめた感あり。
・「ザ・スクープ」
郊外で発生した女性殺し、その特ダネ(凶器)を発見したブンヤも殺され、
新聞社と警察の捜査が開始される。6人の作家が各2章担当した全12章
で構成された作。
第一章担当のドロシーの筆に勢いがあるロケットスタート、
(当時の新聞社の活気がビビッドに伝わって来る感あり)
第二章でこれを受けたアガサの巧さ(検死法廷の様をいかにもアガサ作品
キャラらしいお喋り婦人を投入してさらっと読ませる手際は見事)
が後に続く作家たち(E・C,アントニイ、フリーマンら錚々たるメンツ)
にも好影響を与えたせいか、快調なテンポで一気に読ませる。
小技ながらふたつのピン(凶器)の謎解き等いかにも本格らしくて良し。
前記した無名作家(少なくとも本邦では)のデーン担当章だけ、
本作のヒロイン的存在(ベリル、新聞社の総務課秘書)メインな
冒険譚的展開なのが違和感ありありではあるが。
・「屏風のかげに」
日本屏風(本筋に無関係とはいえ、細かい描写はされていないのは日本人読者としてちと残念)のかげに死体が・・・
名作短編「銀の仮面」を想起させるヒューのサスペンスフルな語り口
による第一章から、アガサ→ドロシー→アントニイ→E・C→ロナルド大僧正
とリレーされた纏まりある一編。
大僧正によるオチのつまみ食いネタはくすっとさせるものの、
皮肉屋アントニイが最終章担当であればどんなんなったかとか興味深く思うた。

700 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/08/01(土) 20:00:29.96 ID:tgqN7D60.net
ジョン・ディクスン・カー他「殺意の海辺」を読む。
これもまたリレー小説。2作収録。
表題作よりも併録の「弔花はご辞退」の方が出来は良いのだが、
ある意味でビッグネームなジョンの名を冠したいための判断で
あろうか?
・「殺意の海辺」
トップバッター(第一章担当)にジョンを持って来たわりには、
後続の作家連の力不足により安手な冒険風味の恋愛ドラマに終わった
という感あり。まあ、ロマンスはジョン作品の主たるエレメントのひとつ
ではあるが。単独で書いていれば駄作なりに一応読めるものになったかもなー。
・「弔花はご辞退」
女性作家オンリーによる珍しいリレー。
ただし、なぜかアガサは参加していない。
(もし彼女が参加していれば、一般的なネームバリュー
(アガサ>越えられない壁>ジョン)的にもこちらが表題作になった
やもしれぬ)
本書翻訳当時は、ドロシーは邦訳出版に恵まれず、グラディスや
アントニーが本格的に紹介されるのは、ずっと後の90年代のクラシック・
ミステリ刊行ラッシュまで待たなければならなかった。
最終章を含む三章を担当(他の作家は各二章担当)したクリスチアナ
は当時からわりと本邦でも知られていたが、(ミスオタにはの限定付きではあるが(w )地味と判断されたか。
「小説」として見た場合、
ヒロインであるマートン夫人のキャラが作家により異なって感じられる
のは残念な点か。子供に頼らない自立したしっかり者キャリアウーマン婆という第一章(ドロシー担当)の設定が、後の章の担当、
書き手により変わってしまうきらいがあるのが残念な感はある。
最後はクリスチアナらしい意地悪な締め(w

701 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/08/02(日) 18:27:37.86 ID:ZWiJEB3Z.net
F・D・ルーズヴェルト他「大統領のミステリ」を読む。
このリレー小説は駄目駄目。著者の一人として当時の現職大統領の名を
冠したのが御愛敬なだけの無理筋(声帯模写、整形等による成り済ましという
のは強引過ぎでしょ)。
デラノは実際に執筆分担を担当したわけでもなく、
基本アイデア(いわば人間蒸発)とストーリーのアウトライン的ものを提供した
のみだが、プロの作家連の手でミスター・プレジデントのネタやストーリーに
応じた十分な解決や展開もなされているとも言い得ないのは、
S・Sとアール以外は本邦では無名作家、非ミステリ作家さえ参加している
せいか。
御都合主義な犯罪メロドラマ、お約束なハッピーエンディングである。
S・S作品でおなじみなレギュラーキャラ(ファイロこそ出ない)や
アール作品のペリーとポールが名前のみ登場しているお遊びがチョイ
楽しめる程度や。

702 :名無しのオプ:2015/08/02(日) 21:08:55.69 ID:CoFyVs13.net
書斎の海外作品紹介はやはり骨太な論考になるね。
普段、国内作家のチンケな作品ばかり読んでいるなら、ぜひ挑戦してみてほしい。
書斎はその手引きをしてくれているのだから。

703 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/08/08(土) 21:29:46.46 ID:4wLPNhlt.net
アレックス・ヘイリー「ルーツ」を読む。
テレビドラマも大ヒットしたノンフィクション仕立ての大河小説的作だが、
この板的には冒険小説的に読んでみれ。
奴隷としてアフリカから拉致されたクンタ・キンテ青年、
新大陸における彼の祖先たちの苦難と激動の人生を描く。
全体の7割程度がクンタ・キンテ編(彼の行く末は原作では言及されて
いない。ちなみにドラマでは印象的なキャラである奴隷仲間のフィドラーも
同様)、クンタの娘二代目キッジーの死が直接に描かれないのはドラマ版と同様だが、
(闘鶏師としての役目を終え英国から帰国したキッジーの
息子チキン・ジョージが主人=実父を訪ね奴隷解放に関する書面を手に入れる
シーンがある)
ドラマのキンテ家四代目トムに関する物語(KKK登場のエピ等)は、
テレビドラマにおけるオリジナルである。(つまり完全なるフィクション)、
後に「ルーツ2」で描かれるトムの娘たちの結婚をめぐるエピ、
チキン・ジョージとその妻マチルダの死等は、再び原作準拠。
原作にはドラマには登場しないキャラも多いし、
展開もドラマほどにドラマチックではない(何だか妙な表現やもしれぬが)、
前半にある不衛生と残酷さの極みとでもいえる奴隷船内の描写は強烈なものがあるが、全体として淡々と時間=歴史が叙述されてゆく感あり。
黒人サイド視点の独立戦争、南北戦争、ネイティヴ・アメリカンとの関わり方等の描き方、この辺が従来の徹底白人視点のものとは異なり非常に面白い。

704 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/08/09(日) 21:39:53.37 ID:A1xmPZ4W.net
ジャック・ヒット編「完璧な殺人」を読む。
これはリレー小説ではなく競作という呼称がふさわしい作だが、
参加した作家たちによるガチンコ勝負というわけではない。
現代のディレッタントが浮気してる女房とその愛人を芸術的殺人により
始末する手を知り合いの5人の作家連に手紙で相談、
ここに恐怖(?)の往復書簡が展開されるという設定からして「お遊び」
を楽しむものとわかろう。
フィクションらしい偶然性が介入せずしてミステリ小説にあるような殺人など成立せずと読めるアンチ・ミステリ的視点さえ覗えるが、
批判というかそういうものなのだという趣旨が強く思える。
最後の一文、「千年王国の実現は近い」の意とは?

705 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/08/15(土) 08:22:28.93 ID:rUe7Jmrq.net
ジョン・スタインベック「キャナリ―ロウ」を読む。
本国=米では人気があった作のようだが、名作中の名作葡萄の重量感、
佳作中の佳作二十日鼠のようなシャープさも欠く作。
とは言うても、米版山本周五郎(舞台ゆえか「青べか物語」を想起)みたいな
作をこのノーベル賞作家が書いていたとは。
一応、主人公(基本、群像劇ゆえ)なドック、孤独癖がある変人気味キャラとはいえ、善い人過ぎやろ・・・

706 :名無しのオプ:2015/08/15(土) 17:52:02.87 ID:iNcFRQ50.net
この論考、様々な背景や知識がなければ書けないね。
当然、読む側にもそれだけの知性が問われるわけだが。
書斎が嫌われるのは、飛び抜けているが故なんだろうな。

707 :名無しのオプ:2015/08/15(土) 18:46:43.34 ID:aOxUilE4.net
嫌われるのがわかっただけでも小さな進歩

708 :名無しのオプ:2015/08/15(土) 18:56:19.67 ID:XgqvZmPr.net
ワロタww

709 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/08/16(日) 06:34:11.86 ID:ZbZhZt39.net
L・A・モース「オールド・ディック」を読む。
齢78、史上最高齢のプライヴェートアイことジェイク・スパナ―登場。
かなり面白いキャラだが、残念ながらシリーズ化はされず「初登場」とは
書けず。この点はラスト、裏切った依頼者=昔の知人(とは言うてもギャング、
スパナ―が長期ムショに送りにしたという経緯もある)
と共にホットマネーを持ってトンズラにも関係する。
アメフトフィールド(終盤の舞台)に血の雨が降るかと思うたのだが、
見事に外されました(w、まあ、この点はともかくとして、
全体的に登場するキャラは立ちまくりとはいえ、ストーリーは御都合主義多しかな。展開も読者にも見え過ぎる(スパナ―の盟友元警官パットの行く末等々)。
高齢メイド探偵という企画の面白さに惹かれて読めはするものの、
さすがに昔の愛人の娘(20代のJD)と事に至る(マジやってまう)
というんは、読者サービス(?)過剰ちゅーか、ストーリー的にも「やり過ぎ」でしょ(w

710 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/18(火) 18:37:06.82 ID:g8dbCyvQ.net
「スパイたちの聖餐」ビル・グレンジャー(文藝春秋)

バンコクのアメリカ大使館に粗末な服装の老人がやって来た。彼の名はレオ・タニー。ラオスに入ったきり二十年以上行方不明になっていた神父であった。
突然の出現に各陣営は素早く反応し、CIA、KGB、教皇庁、マスコミなどがそこに隠れているものを暴き出そうと動き出す。
Rセクションの工作員デヴェローもまた密命を帯びてレオ・タニーのいるクリアウォーターへ向かった。

CIAのカウンターパートとして設立されたスパイをスパイする機関Rセクションのスパイ、デヴェローを主人公に据えたシリーズ第2作。
引き締まった文章で真っ向からスパイを描いた前作が地味ながら好みだったので期待して読んだのだが、ちと当てが外れた。
前半はゆったりとした聖職者同士の会話がだらだら続いて欠伸が出て来る。動きが少ないのだ。
後半やっと人が死に始めてスパイたちの闘いがスタートするのだけど、今度はレオ・タニーに錚々たる組織がそこまでこだわる何があるのか首を傾げることになる。
レオ・タニーが何を握っているのかだけでなく、彼らが何故それに注目するのかということまでも伏せて話が進められるため、読んでいて何ともあやふやな心持ちでいなければならない。
二つの内どちらか―――個人的には前者――は早めに明かした方がアウトラインがくっきり浮かび上がってストーリーが引き締まったと思う。

それとデヴェローに主人公補正がかかってるのもマイナス。
ある人物をはめるとことか手際が良すぎてそれまで築いてきたバランスを欠いているし、終盤私怨めいたことをやるのもプロらしくないし流れを無視して勧善懲悪に奉仕しただけのようで不快。
そんな奴が愛だの恋だの言われてもはあ? だよ。もっと傷つけ!
デヴェローの存在こそ前作の美点だっただけに残念。

711 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/18(火) 18:43:35.89 ID:g8dbCyvQ.net
「天国の囚人」カルロス・ルイス・サフォン(集英社)

父の本屋で店番をしていた青年ダニエルのところへ一人の老人が訪ねてくる。彼は店員フェルミンへ宛てたメッセージを残して去った。
ダニエルにこのことを告げられ青ざめていくフェルミン。やがて今まで黙して語らなかった己の過去を話し始める……。

てっきり三部作かと思いきや四部作だった。これまでは上下巻だったのに本作は一冊で内容も完結編への導入部といった印象で物足りなかった。
「風の影」と「天使のゲーム」とを上手く結びつけましたよという整理過程みたいな。そこそこに読ませるがあらすじを追う感じで深みが無かった。

あと妻の元婚約者との浮気疑惑騒動はストーリーから浮いている上に中途半端で期待しただけがっかりさせられた。この辺のことも次作に持ち越されるのだろうか?

712 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/18(火) 18:46:31.17 ID:g8dbCyvQ.net
「大密室 幻の探偵小説コレクション」ピエール・ボアロー トーマ・ナルスジャック(晶文社)

それぞれの単独作品を2編収録。

まずボアロー『三つの消失』。
美術館として開放されているモンセル伯爵のシャトーを訪ねてきた男はガイドを撲殺し逃亡を図った。程なく取り押さえられるものの、ダヴィンチの名画が跡形もなく消え失せていた。
更にその数日後シャトーに侵入した別の男は塀をすり抜けるようにして逃げ去る。
極めつけは最初に捕まった殺人犯が護送車ごと刑務所の直前でラッパの音を残して消えるという怪事件だった。
絵の行方は知れず絶望の淵にある伯爵の元へ謎の人物から身代金の要求が。誘惑に負けそうになりながらも名探偵ブリュネルに最後の望みをかけるが、彼は到着早々凶弾に倒れる!

トリックと言いプロットと言いこれでもかと畳み掛けてくる展開に圧倒されそうになりながら読んだ。
最初のトリックはだいぶ思い切ったものでホックの某短編を思い浮かべた。まあ盲点を衝かれた。次のは脱力。これは無理でしょう。最後のは島荘風。可能不可能の問題ではない。
トリックだけ抜き出せば拍子抜けしたかも知れないところへ探偵の危機を盛り込んでストーリーを引き締め現代性を持たせている。まあ古典としちゃ水準作かな。

続く

713 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/18(火) 18:47:43.34 ID:g8dbCyvQ.net
承前

そしてナルスジャック『死者は旅行中』。
アクシデントでアレキサンドリアからカサブランカへ向かう貨物船に乗り込むことになった新聞記者の私。
船へ招待してくれた美女グラディスと急速に親密になるも乗客たちが次々と殺され行方不明になっていく。

密室を盛り込んだCCという趣。解説で天城一もご存知ないと見栄を切っている密室トリックは確かに他の例を知らないかも(忘れてるだけかも)。
CCの方も斬新なアイディアで驚愕! ……と言いたいところなのだが誠に残念ながら現代の日本の読者ならばあれやこれや読んでいるので真新しさは感じない。
ま、それはこっちの都合だから仕方ないんで、これも古典としちゃ水準以上でしょう。

ただし全体的に文章が甘く描写不足。導入部から唐突というか強引というか、雑! さっさと本題に入りたかったんだろうがこれはプロ意識が薄いのでは。
折角位相の違うトリックを組み合わせているのに肉付けが不十分なせいで損している。
それから主人公が端々であれこれ推理というか推測を重ねるんだけど、地に足がついてないので分散発想って感じでピンと来なかった。探偵じゃないからしょうがないと言えばそうなんだが。

……どちらも少しずつ足りてない印象。やはり二人三脚の方が良いのかもねむ。

714 :名無しのオプ:2015/08/18(火) 19:51:43.42 ID:/f1jG7y3.net
何このスレ
自分の日記帳に書けばいいのに

715 :名無しのオプ:2015/08/18(火) 20:46:12.07 ID:8/9kOHZB.net
まtっくだ。書斎の論考を千回熟読してから出直せって感じ。

716 :名無しのオプ:2015/08/18(火) 20:48:59.81 ID:aHeQ6upb.net
書斎ってローマ字使えるのか………

717 :名無しのオプ:2015/08/18(火) 20:53:53.90 ID:8/9kOHZB.net
使えるさ、使えるとも!!!!!

718 :名無しのオプ:2015/08/19(水) 05:51:14.50 ID:hg78NFbl.net
読後感という気の弱い糞コテに言ってくれや。

719 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/19(水) 20:38:02.71 ID:19CYB/+X.net
「ピカデリーの殺人」アントニイ・バークリー(東京創元社)

裕福な伯母と暮らしている遊民の独身中年男チタウィック氏はたまたま寄ったホテルのラウンジである老婦人と若い男のペアに目を留めた。
そして男の手が相手のコーヒーカップの上へと動いたのを目撃する。その後老婦人は毒殺され、容疑者が捕まり一件落着に思われた。
しかし、容疑者の妻や知人たちに懇願されたチタウィック氏は何故か彼の無実を証明するための調査を始める羽目になってしまう。

10年くらい前に一度読みかけて中断したのを再チャレンジ。どうってことない事件と思われたものが探偵役の強引な介入によってねじ曲がってゆく、そんな話かと思いきや……意外な展開に?!
てな話運びで地味ながら楽しめた。しかし以降翻訳が途絶えたことからするとこのヒネたプロット(シェリンガムもののあれとかこれとかを連想した。)は当時あまり受けなかったのかな?
ドラマが無いからねえ。意識してそうしてるんだろうけど。

720 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/19(水) 20:40:48.96 ID:19CYB/+X.net
「ハロウィーン・パーティー」アガサ・クリスティー(早川書房)

近所の子供たちを集めたハロウィンのパーティーのさなか、一人の少女がバケツの中に顔を押し付けられて溺死しているのが見つかった。
その少女ジョイスはパーティーの前に「かつて殺人を目撃した」と話していた。
パーティーに参加していたミステリー作家アリアドニ・オリヴァは旧友である探偵ポアロに助けを求める。

タイムリーに読書。
アガサ79歳の作品だって凄い創作意欲だね。流石にミステリーとしてのプロットはわりとシンプルだけど、不思議な少女や幻想的な隠し庭の描写など小説としての豊かさは感じた。
緻密な推理とかハロウィンならではの伏線やトリックとかは無く、クライマックスの見せ場はだいぶ都合良く進む。なので決して傑作ミステリではないが、前述したように小説としての読みどころはある。

721 :名無しのオプ:2015/08/19(水) 21:53:56.89 ID:hg78NFbl.net
死ね。

722 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/22(土) 01:45:41.55 ID:wDXPfMZW.net
「百万長者の死」G・D・H&M・I・コール(東京創元社)

ロンドンのホテルに宿泊していたアメリカの大富豪ラドレットが姿を消した。部屋は荒らされており血痕が遺されていた。従業員によると同伴していたはずの秘書ローゼンバウムは慌ただしく発ったという。
ヤードのウィルソン警視は殺人事件として捜査を開始、一方ラドレットの取引相手イーリング卿は犯人によってある秘密が漏れることを恐れていた……。

経済学者と妻との合作で乱歩のベストテンにも入った作品ということで期待したが、凡作だった。乱歩は「門外漢が書いてみたのは面白い」という持論に引っ張られたんじゃないか。

本作はウィルソン警視が自身と部下のブレーキ警部とで足を使って捜査していくという典型的凡人型探偵のミステリーなのだが、クロフツと比べると捜査の描写の密度が薄くダラダラと続いて退屈する。
しかも並行して進むイーリング卿とその甥アーサーとのパートがまた負けず劣らず冗長でうんざり。
作中で語られるシベリアでの脱出行ややがて明らかになる真相など如何にも19世紀的で黄金時代のど真ん中とはとても思えないし、スリルもない。
これは読まなくて良かった。

723 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/22(土) 01:47:07.49 ID:wDXPfMZW.net
「不思議の国の悪意」ルーファス・キング(東京創元社)

『クイーンの定員』に選ばれた短編集。シリーズ探偵はいないが同じ町を舞台にしており登場人物も一部重複する。
しかし期待外れ。つまらなくはないが軽い小品ばかりという印象。
冒頭に置かれた表題作なんか数ページ読んで「これだ!」と思ったものの以降あらあら、アラが目立ってくる。都合良すぎだろとか電話は要らんやろとか。
他如何にもクラシックなロマサスとかディーヴァー風どんでん返しとかが並んでおり、アイディアやシチュエーションは良いものの完成度が今ひとつといったところ。

724 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/08/22(土) 01:48:06.13 ID:wDXPfMZW.net
「服用禁止」アントニイ・バークリー(原書房)

引退して悠々自適の生活を送っていた男ジョンが死んだ。少し前から下痢を患っていたようだったのだが、弟シリルは検屍を要求しその結果砒素が検出される。
警察の捜査が始まりジョンと親しく付き合っていた面々は否応なく巻き込まれていく。

挑戦状付きノンシリーズ。割と短めでサラサラ読めるし、いつものバークリー節で面白かった。
読みながら「ははん、こいつだな」「いやまさかこのパターン?」「やはり……」と事件は想定の範囲内で推移するかに見えたが、終盤になっても挑戦状が御目見得しないので焦る。
「え!?ここまでバラしてるのに?」と。しかししかし、遂に挑戦状が突きつけられた後は思いも寄らぬ推理が開陳され「まさかのこのパターンかよ!」と色めき立つもそれは多重の一重という展開に身悶え。

読み終わると確かに伏線はあったなぁと感心。ただ推理の論理性には割と疑問が残る。挑戦状は付けてもクイーンほどフェアプレイに徹してはいないかな。

725 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/08/22(土) 14:40:40.44 ID:WIYkPHsH.net
L・A・モース「ビッグ・ボスは俺が殺る」を読む。
前記した「オールド・ディック」がちょい興味深かったので(面白いと
までは言えぬが)手にしてみた。
これは正調(?)通俗ハードボイルド。
スピレイン好き、あるいはカーター。ブラウンとかも好きな向きには
たまらんものがあろうか。時代性もあってバイオレンスもセックスシーンも
パワーアップ(ちゅーか、またしてもサービス過剰気味、この作者の特性なのか)
ヴェトナム帰りのプライヴェートアイ、サム・ハンターは理由不明なまま
凶悪な大男から「ドミンゴには手を出すな」という強迫(もち、手痛い暴力付きで)を受ける。
どうやら調査中の3件の依頼に関連したものらしい。
タフガイなハンターの探索が開始される。
そして愛すべき女秘書、旧知の警官や私立探偵等、彼の周囲では殺人が連続、
ハンターの怒りが爆発する・・・
まあ、最後のヘロインとセックス産業を牛耳るラスボス(往年のテレビスター)との対決まで一気に読ませはする。
高評価云々とかではなく、暇潰しにはジャストフィットな作という感あり。
冒頭に登場する通称「山竜巻」という凶悪な大男=人間山の訳が面白い、
原文はどんなんなんだろう?

726 :名無しのオプ:2015/08/23(日) 19:36:59.70 ID:aTfJfUQj.net
初めてきたけどこのスレなんかすごいね…

古い作品だけどローレンスブロックの「緑のハートをもつ女」再読
内容を100%忘れてたけど面白くて一気読みしてしまった。
構成といいテンポといいさすが良作と思ったのでレビューを書こうとしたら
アマゾンみたら絶版になってて検索できなくなってた。
こんな有名な名作を再版してないなんて、なんということ

727 :名無しのオプ:2015/08/25(火) 00:56:28.18 ID:FS9oOJKU.net
ローレンスブロックは昔嵌ったなあ
スカダーやバーニイもいいけどシリーズ外の長編もどれも面白いよね
自分は盲目の預言者が好きだけどこれも絶版ぽい

少しずつ本の整理してるけどブロックは絶対処分できないわ

728 :名無しのオプ:2015/08/26(水) 15:05:53.45 ID:gmBYTF08.net
ブロックはタナーも好きなんだけど
あれは三冊目以降は訳されないんだろうか

729 :名無しのオプ:2015/08/26(水) 17:35:59.17 ID:QiGQkZNH.net
緑のハート〜
書名でググると出てくるよ

730 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/08/29(土) 14:41:39.67 ID:6iN636D+.net
L・A・モース「トリプルX」を読む。
L・Aのタフガイなプライベートアイ、サム・ハンターもの第二弾。
ポルノ産業にカルト宗教団体絡みの事件にサムの腕っ節と精力が
炸裂(この表現がジャストフィット)する。
詳細に書き込まれたL・Aの街の風景、米版B級グルメ(エスニック料理続出)、
そしてセックスシーン(フェラ等もあるでよ(w )・・・
色々あって、ひとまず楽しめはするが、前作(「ビッグボス・・・」)と比較して、
普通に読んでると早々とネタが割れる感あり。
スピレインの「裁くのは俺だ」(愛する女に裏切られる)パターンですわ。
原題は「スリーズ」=「劣情」、内容を沿ったタイトルではあるが、
これでは日本の読者にはわかり難いとの判断か?
邦題はカッコ良いが意を捉え難いものとなっている感あり。
三重のX(未知数→謎)か?
多数のキャラ登場による事件の錯綜ぶりを顕すということか。
この辺は訳者あとがきで言及しておいて欲しかったものである。

731 :名無しのオプ:2015/08/29(土) 16:59:27.98 ID:JDvI9434.net
>>729

これ、書名でググるとAmazonの該当ページが見つかるよって意味です。
説明が足りなかった。

732 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/09/05(土) 20:40:51.60 ID:AVyMTNt2.net
「さよなら、ブラックハウス」ピーター・メイ(早川書房)

事故で息子を亡くし休職中のエディンバラ市警幹部警官フィンは故郷ルイス島へ帰る。
そこは悲しい思い出が残る場所。親友はかつて好きだった女性と結婚していた。そして今年も伝統のグーガ狩りが始まる……。

いかにもありがちな筋立てながら、辺境の島の伝統文化に主人公の過去の因縁を上手く結び付けてオリジナリティを出せている。
ただしキャラクターまでが荒涼とした島の雰囲気に絡め取られて地味という薄いというか悲惨というか、あまり魅力的に映らなかった。
ヒロインマーシャリとの教会でのエピソードは胸が苦しくなる。

真相も筋立てと同じく定番ぽく、駄作ではないが必読とは言い難い。
なお本書は三部作の一作目。好きだね早川。

733 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/09/12(土) 22:01:50.85 ID:p5NMEq4y.net
シェイマス・スミス「Mr.クイン」を読む。
刊行当時(邦訳は2000年)は各種ランキングで高評価ながら、
時の経過により完全に忘れ去られた感がある。
北アイルランドを舞台に徹底した悪を描いた英国スリラー、
ちゅーか、超異色ノワール。
Mr.クインと題されているが、この主人公、正に冷酷非情な犯罪プランナー
(例外はあるが基本みずからは手をくださない、ある意味で究極の鬼畜や)、
しかも女好きでストイックでクールな犯罪者像とも程遠い、
不適なユーモアの持ち主。
この手の作は最終的には勧善懲悪に落ち着くのがお約束という感があるが、
本作は90パーセント救いがないままエンド、
(謀殺された資産家一家の生き残りの次女と義兄(長女の夫)が結ばれたことは示唆)、プランナーである主人公も実行犯も、彼らの背後にいる黒幕も一切
平安無事モード、倫理観と正義感に富む女性新聞記者(主人公の義姉=妻の姉)も
見事にはめられ挫折してまう・・・
まあ、「シンプルプラン」が売れ、トンプスン、ウェストレイクあたりの
ノワールも人気があった世紀末らしい作ではある。

734 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/10/10(土) 14:45:29.55 ID:iwdJIT5W.net
「プリムローズレーンの男 上・下」ジェイムズ・レナー(早川書房)

竜頭蛇尾の見本というか。期待させるだけさせてこのオチは酷いよ。例えるならトランクスのマッチョ化のようなもの。
やろうと思えば誰でも出来る。しかし敢えてやらない、やるべきでないものだ。それを……。こんなの評価すんなよ。勘違いしたバカが真似するだろうが。

735 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/10/10(土) 14:49:53.94 ID:iwdJIT5W.net
「真実の行方」ウィリアム・ディール(ベネッセコーポレーション)

凄腕の弁護士ヴェイルはあまりに勝ちすぎることを憎まれ、大物判事ショーネシーにより敗北必至の刑事裁判の弁護を押し付けられてしまう。
それは人望篤い大司教が見るも無惨に殺されたという事件だった。容疑者は凶器を持ち返り血を浴びて現場近くにいた青年エアロン。死刑は確実と思われた。
担当判事は保守派のショート。そして検察官はかつて負かしたことのある宿敵ヴェナブルだった。
準備期間も足りず裁判地変更も認められない圧倒的不利な状況の中でヴェイルは優秀な助手たちを使い敢然と闘いに打って出る。

以前午後ローで映画を途中から観て結末は知っていた&600後半という分厚い本を何故読んだかと言うと理由はただ一つ!
北上次郎が「極私的ミステリー年代記」の中で検察官ジェーン・ヴェナブルを豊満な美女とか何とか表現していたからである!
しかも続編も××とか……それだけで読む気になったのだった。

しかし、読んでみるとまともに面白い。何せヴェイルは常勝不敗の罰として敗北のための勝負を挑まされているという設定なのだ。
言うなればかの傑作ポーカー小説「ビッグ・ゲーム」のラストマッチに匹敵する闘いが全編に渡って展開するようなものだ。興奮しない方がおかしい。
最初は不純な動機で手に取ってもこういうことがあるから読書は愉しいのだ。これからも不純な動機でどしどし読もうっと。

キャラクターもライフスタイルはダサいが仕事ぶりは極めてストイックなヴェイルや絵に描いたような純粋無垢さが妖しい怪しさを醸し出すエアロンの他、
ボクサー崩れで弁護士志望の調査員トミー、助手の黒人美熟女ネオミ、有能でチャーミングな精神科医モリー、くだ巻き(元)判事スポルディングなどそれなりに多彩。
ライバルのヴェナブルも赤毛ですらりと伸びた肢体に高い鼻、そして証人と恋に落ちる情熱を持つ美女というなかなかのタマ。

終盤に至ると結末を知っているせいかやや失速した印象を受けた。ヴェナブルの反応は予定調和ではないかとか、そのトリックは成立不可能ではないかとか。
ただここまで引っ張ってくれたのだから水準以上であるのは間違いないと思った。
続編もすぐ読む。

736 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/10/10(土) 14:54:13.24 ID:iwdJIT5W.net
「邪悪の貌 上・下」ウィリアム・ディール(徳間書店)

田舎町で平凡な主婦が惨殺される事件が発生。弁護士から地方検事補へと転身していたヴェイルは死体の状況に驚愕する。
10年前自身が手掛けた殺人事件と酷似していたのだ。しかしあの時被告人として裁かれた人物は今も施設に収容されている。ならば一体誰が……。

「真実の行方」続編。3部作の2作目らしいが最終作は未訳ぽい。残念……と読む前は思っていた。

まずまずいのは構成。次々に死体が見つかるもんだからてっきり連続殺人なのかと思いきや、別々の事件に過ぎない。モジュラー型? なかなかヴェイルがメインの事件に向き合わず読んでて焦れる。
これが一作目ならそれでも良いが、あからさまな続編なのだからこれでは興を削ぐ。上巻は脇ででほぼ潰れたので、下巻だけでいいくらい。

次にまずいのは犯人の狙い。タイミングや動機はまあ納得してやってもいいが、リスクを考えていなさすぎる。作者がキャラクターを怪物化するあまり辻褄合わせを疎かにしてしまったのではないか。

こうなるとヴェイルとヒロインとのベッドに至る距離の短さにまでケチをつけたくなってくる。実は最初から惹かれていた、なんてそれはないだろう。

ラストの引きも陳腐の一言。続編未訳もむべなるかな。これでお別れ可能。

737 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/10/10(土) 14:55:45.39 ID:iwdJIT5W.net
「ダイヤに最後の挨拶を」デレック・ランバート(文藝春秋)

引退していたダイヤ泥棒ジョニー・ローズは退屈な日常に耐えきれず再びダイヤを盗もうと企む。
今度の獲物は4000万ドル相当! 史上最大のダイヤ奪取を成功させるべく同じく一線を退いていた古強者二人を誘い大作戦を実行に移すローズ。
しかし、取締側に転向した元泥棒と敏腕警部がその前に立ちふさがる!

読み出し当初は6〜70年代のおしゃれな犯罪映画の趣がありそうだなあと思ったものの、だらだら仲間と打ち合わせるばかりで全然本番が始まらず失望。
元ナチの撃墜王でサド趣味の老人をスカウトしたりして面白さの種はあるんだけど、作品として昇華してないのね。

5分の4くらいまで来てやっと作戦スタートになるんだけど、あっという間に終わっちゃう。一応スリルも意外性もありはするけど、短いのは物足りない。
尼レビューにあった“恋の鞘当て”なんてのもないし……。

738 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/10/11(日) 20:39:05.48 ID:5W9cnhrT.net
リチャード・マシスン「深夜の逃亡者」を読む。
ストーカー体質なキティ(イケメンな元ピアニスト)が病院を脱走、
片想いの女性の夫(広告マン)殺害へと向かう。
53年とオールドな作ゆえ、当時としては珍しいサイコ・ミステリちゅーか、
サイコ・サスペンスであろう。
直接描写は避けているものの、アッー!な看護人とのセックスシーンやその
殺害シーンも、現代視点ならおとなしめとはいえ、当時は強烈なものがあった
であろうな。
さて、作品の出来そのものは、稀代のストーリーテラーの手になるものだけあって、最後まで一気に読ませはするものの、まあそれだけとも言い得る。
殺人者であるキティは自爆(墜落死)、脇キャラの悪女とまでは言い得ぬが
ビッチなマネの妻は刺殺されてまう。
ラストを事件現場に駆け付けた警官たちのあっさりとした会話で締めているのは初期の87分署シリーズみたいで雰囲気良しという程度かな。

739 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/10/25(日) 13:33:59.73 ID:1VMj/qtD.net
サマセット・モーム「ジゴロとジゴレット モーム傑作選」を読む。
厨房時代にこの作者の短編「雨」を読んだ時のインパクトはいまだ忘れ難い
ものあり、しかし、その後スパイ・スリラー小説の古典、
短編連作「アシェンデン」、
代表作と称される「月と六ペンス」等の長編も読むが、
正直、つまらなくはないがイマイチという感があった。
本書はひとみパパこと金原端人氏による読み易い新訳で、
多彩な作品がセレクトされており一応面白く読める。
しかし、やはり前記「雨」に匹敵するものは見当たらずであった。
収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「アンティーブの三人の太った女」
リゾート地でダイエット中のブリッジ大好きな中年ピザ3人女、
そこに同年代のスマートな中年女が加わったことによる大混乱(?)、
最後のダイエット放棄、食いまくりシーンまで軽くうまく(文字どおり(w )
読ませはする作。まあ、それだけとも言い得るが。
・「征服されざる者」
前収録作品とは180度異なる。第二次大戦中、独占領下における仏の田園
を舞台にしたシリアスな作。
レイプされ妊娠した農家の娘(元教師)とその父母、そして主人公
となるのは何とレイプ犯たる独兵(鬼畜とかでなく農家出身の好青年、イケメン
なんである)、彼らの交流の果ては子殺しという悲惨の結末に・・
訳者あとがきに記されたとおり、サマセット作品にしては異色の構成・内容
であるが、とにかく後味が悪過ぎるのが難。

740 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/10/25(日) 13:34:36.11 ID:1VMj/qtD.net
・「キジバトのような声」
贅沢でわがまま、無教養な主人公のオペラ歌手を決して否定しない
語り手=作家の姿勢が徹底しているのが面白い小品。
・「マウントドラーゴ卿」
これは夢の中の殺人ネタというホラーとして読める作。
主人公の精神分析医も特殊能力の持ち主の如く描かれる。
エンタメ度は高いが、地に足が着き、かつ、面白いものが多い
サマセット作品にしては狙い過ぎてありきたりという感あり。
・「良心の問題」
凶悪犯罪者は果たして服役により反省や後悔を感じるものなのか?
この現代にも通じる問題を、流刑地を舞台にズバリ取り上げたのが本作。
答えは、そうでない場合ありなんである。
さすがサマセットという感を抱くリーダビリティ大で読み応えもある作。
・「サナトリウム」
主人公の名はアシェンデン、しかし、スパイ・スリラーには非ずだ(w
短い作ながら、丁寧な筆遣いでサナトリウムの人間模様が興味深く
描かれている。ラストは一応のハッピーエンディング(と言うてよいかと)
・「ジェイン」
登場時はぱっとしないヒロイン=ジェインのキャラが立ってくる展開
が面白し。彼女の義姉に対する最後の台詞「それは、お姉様が、ほんとの
ことをいわれても、ほんとだってわからないからじゃない?」
これは強烈ですわ。
・「ジゴロとジゴレット」
若いアクロバティック芸人夫妻の悲話ではないが哀話と言い得る作。
単純とも言い得るストーリーなのだが、表題作に冠されただけあって
妙に心に残るものがある一編。

741 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/10/31(土) 03:16:14.99 ID:VJUlxY16.net
「小説アーサー王 エクスカリバーの宝剣 上・下」バーナード・コーンウェル(原書房)

時は中世。大陸の北方に位置する島ブリタニアはローマ人の支配から脱した後の戦乱が未だ収まることなく続いていた。
東からサクソン人が、西からはアイルランド人が侵入しそれぞれ王国を樹立。先住民たるブリトン人の国々も終わりのない戦いに明け暮れていた。
ペンドラゴンの称号を持つ大王ユーサーには後継ぎとなるモードレットが誕生するが、幼い王子に不安を抱く大王は諸侯が居並ぶ会議の場で後見人を指名する。
その一人に挙げられたのが王子の異母兄アーサーだった。雄々しく心優しき戦士アーサーは多くの支持を集めブリタニアについに平和が訪れるかに見えたが、一人の女との出会いがすべてを変えてしまうことになる……。

ミスマガのバックナンバーを読んでいて目に留まった作品。
アーサー王物語というNTRかつBADということで読む気がしなかったのだが、紹介文によるとこれは少し違うようなのだ。
アーサーの出自についてもオリジナル設定のようだが、読んで一番驚いたのはアーサーに次ぐ重要人物たちの解釈。これは斬新。

物語自体も血と汗と泥にまみれた戦国小説といった趣で読み応え充分。特に「氷と炎の歌」ファンにお薦めしたい。

本書は三部作の一ということで、まだまだ楽しめそうだ。結末も変えてあるようだし期待期待。

追伸 この邦題はいただけないな。本作は超常的な要素はほぼなく、エクスカリバーもあくまでアーサーの愛剣以上のものではないし。
とは言え魔術師マーリンは登場するしトリックスターの役割を担っているけれども。

742 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/10/31(土) 03:20:48.85 ID:VJUlxY16.net
「小説アーサー王 神の敵アーサー 上・下」バーナード・コーンウェル(原書房)

奇跡的な勝利を遂げ、ブリタニア平定に大きく近づいたアーサー。グィネヴィアも懐妊し、流浪の王子ランスロットの縁組みも決まりすべては順風満帆に進んでいくかに見えた。
しかし、モードレッドの即位を目前にして悲劇は繰り返されブリタニアは再び火種を抱えることになる。そんな中ダーヴェルはマーリンに従い魔法の大釜を探すため征服された国フリーンへ向かうのだった。

三部作之二。あ、ダーヴェルはアーサーの腹心で本作の語り手です。
閑話休題。いよいよ有名なあの大型爆弾が引火する訳で、ワクワク半分不安半分で読み進んで行きました。不安半分というのは、本作がダーヴェルを中心とした話運びになっていて
アーサーもグィネヴィアもランスロットも主要キャラクターであるとは言え、物語に占める割合はさほど大きくないことによります。
要するにあまり感情移入できないだろうなってことです。

ところがどうしてどうして意気込んで読めました。期待とは少し違いますが。というのはダーヴェルの物語としても十分に手に汗握れる仕上がりになっていたからです。
それがアーサーの物語に流れていって最大の盛り上がりを(現時点で)見せるという次第です。
これまで清廉な純粋真っ直ぐ君であったアーサーが否応なしに大きく変わらざるを得なくなります。それは成長でもあり……喪失でもあります。

ああ、次が楽しみです。さあ読もうっと。

743 :読後感 ◆VkkhTVc0Ug :2015/10/31(土) 03:45:30.06 ID:VJUlxY16.net
「小説アーサー王物語 エクスカリバー最後の閃光 上・下」バーナード・コーンウェル(原書房)

悲しみに見舞われながらも陰謀による危機を脱したダーヴェルとアーサー。しかしアーサーは残酷な裏切りのため深い懊悩に囚われる。
そんな中ブリタニア併呑を狙うサクソン人の王エレとサーディックはドゥムノニアを窺い、対してマーリンとニムエはブリタニアを取り戻そうと恐るべき儀式に手を染めていた……。

完結編。いやそれに相応しい力作でした。
果たしてブリタニアはブリトン人の手に帰すのかサクソン人の手に渡るのか。モードレットの思惑は? アーサーとグィネヴィアとの関係は? ランスロットの運命は?
よく知られた様々なポイントに上手にチェックを入れていきます。
視点がアーサーに寄り添わないため程よい客観性を保ちつつそれらの帰趨を眺めることができ、ダーヴェルが中心に据えられていることの利点を改めて実感しました。
というかこれやっぱりダーヴェルの物語なんですよ。サクソンの大軍に包囲されて孤軍奮闘したり強大な呪いを解くべく単身魔境へ乗り込んだり、そしてラストも。ダーヴェルとマーリン、ダーヴェルとニムエ、そしてダーヴェルとあの人……うん、満足です。

そしてやっぱりコーンウェルは巧い!
書き方によっては「何で赦すねん!」「斬れよ、斬れ!」と叫びそうなところを流石の説得力で描ききっています。そりゃあの終幕も納得ですよ。
小悪党に描かれている奴にも不思議と愛着が沸いたりしてね。あれだって○を○○○ためでしょ? ね?

ちなみに本書で最も印象に残ったキャラクターはエレでした。粗野ですが豪放磊落で気っ風が良く茶目っ気もある硬骨漢です。そう言えばアイルランド人の王エンガスも貪婪ですが頼りになる良いキャラでしたっけ。
非ブリトン人のが魅力的ってどうなのかしら(笑)。

改めて書きますが「氷と炎の歌」ファンも必読ですよ。あの熱気と臭気が、ここにはあります。

744 :名無しのオプ:2016/01/01(金) 17:21:28.65 ID:kkxPSdzcF
早川ポケットミステリブック「六人目の少女」ドナード・カッリージ\清水由貴子訳

すごく面白いと思うが、ここまで行くとファンタジーだろうと読後思ってしまった。ミステリーファンタジー。

745 :名無しのオプ:2016/01/01(金) 23:43:43.62 ID:aDmvDvqpE
文春文庫「その女アレックス」P・ルメートル\橘明美訳
ただただ、悲しくて悲しくて。

746 :名無しのオプ:2016/02/02(火) 23:48:18.48 ID:/NyIq8cet
最初は私も怪しいと思いましたが、
結構有名な所みたいで、何にも心配いりませんでした。
是非お役に立ててください。
http://goo.gl/eNRrYJ

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