ワイが文章をちょっと詳しく評価する!【244】
- 134 :第六十三回ワイスレ杯参加作品:2023/12/16(土) 18:48:25.53 ID:FDozipOL.net
- 本物のサンタは何処にもいない? この格好が目に入らないのか? 俺がお前の父親? ふぅ〜〜。
毎年プレゼントを受け取っておきながら、それは無いだろう。
まあ、俺もお前と同じくらいのときにそういう疑問は抱いたもんだ。
少し昔話をしてやろう。
◯
まず……そうだな。
俺は学校から帰ってくると、部屋の中にサンタの死体が転がっていた。その日はクリスマスだったから、大いに驚いた。まあクリスマスじゃなくても死体は驚くもんだけどな。
ホトケの身長は2メートル。恰幅が良く、真っ赤なサンタの服……至って普通のデカいサンタだった。近づくのは怖かったが、死体だったら知らせなきゃいけないし、寝てるだけだったら起こしてやらないとプレゼントが貰えない。
サンタは冷たかった。呼吸も脈もない。死んでた。
俺は悲しくなった。サンタが死んだら、プレゼントはもう貰えない。俺だけの問題じゃない。世界中の子供達ががっかりするだろう。
泣くまい、泣くまいと自分を律する為、俺はナラニチュンビソギの構えを取って中空に「ディヤー!ディヤー!」アプチュモク・チルギを繰り返した。先祖代々伝わる精神鍛錬法だ。
俺は呼吸が落ち着いてくるのを感じると同時に、誰かが部屋に近づいていることに気付いた。
「犯人か? 出てこい」
「フォッフォッフォ……」
扉が勢いよく放たれると、サンタクロースが仁王立ちしていた。ナラニチュンビソルギ。奇しくも同じ構えで。
サンタクロースが二人。そんなことはあり得ない。こいつは本物を殺して、自分がサンタに取って代わろうとしているニセモノに決まっている。だからこんな不敵な笑いができるのだ。だからこれほど空気が張り詰めているのだ。
「行くぞ小童」「!?」
偽サンタの下半身が消える。否──いつの間にか頭上に迫っている! これは大技だ。前に飛び込みつつ、足を空中で回転させるネリャチャギ。ハンムンチャギだ。この威力を相殺するにはこちらもトラヨプチャギで迎え撃つのがセオリーだが到底間に合わない! 半月を描いた足刀が迫り来る。
「グワーッ」
とっさにガードした右腕が遥か後方に千切れ飛ぶような痛みが俺を襲う。
相手はすでに足を上げ次のネリャチャギを繰り出そうとしている。退けば負ける。
「ほう? 守りに入らんのか」「お前にサンタは渡さないッ」
俺は咄嗟にナラニチュンビソルギの構えを取る。偽サンタの足刀がギラリと光る。
「ディヤー!」「がはっ……」
アプチュモク・チルギ。俺の左拳が偽サンタの股間にめり込む。
「ディヤー!」チルギ「ディヤー!」チルギ「ディヤー!」チルギ!
偽サンタは足を下ろさず耐えていたが、やがて崩れ落ちた。
「強くなったな。お前の勝ちだ」
「……父さん」
拳を交えることで、俺は偽サンタの正体が分かってしまっていた。だが、なぜサンタを殺したかまでは理解できていない。
「これが最後のプレゼントになる……あのサンタの首筋を調べてみろ」
俺は言われるまま死体に駆け寄り、首筋に触れた。カチリ、と何かに触れた感触があった。
すると
『ホッホーイ! メリークリスマース! ホッホーイ』
◯
死体が息を吹き返した。いや、これはサンタクロースの人形だったんだ。
どう思う? サンタは存在するのかしないのか。少しは理解できたか?
確かにこの日、俺の中では今まで信じていたサンタは死んだ。その代わり、新しいサンタが生まれたんだ。強いサンタクロースだ。このサンタ服が擦り切れているのも、勲章なのだ。
どうだ。俺の話を聞いてほっこりしたか。胸に湧き上がる火種を絶やすんじゃないぞ。
構えを取れ。ナラニチュンビソルギだ。
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