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Great Expectations 読書会1

1 :胃酸:2014/02/26(水) 23:44:19.68 .net
チャールズ・ディケンズの『大いなる遺産』。
原書を少しずつ丁寧に読みます。
仲良く楽しい読書をしましょう。

2 :胃酸:2014/02/27(木) 00:30:46.33 .net
My father's family name being Pirrip, and my Christian name Philip, my infant tongue could make of both names nothing longer or more explicit than Pip.
So, I called myself Pip, and came to be called Pip.

PirripはわかるけどPhilipって「フィリップ」でしょ?
僕の日本人感覚だと、ピップとピリップはつながるけど、
フィリップはちょっとつながってこない・・・
どうなんだろ?

3 :胃酸:2014/02/27(木) 23:33:58.25 .net
chapter1
章終わりの大きな風景。
これを背景に“young man"にビビッている小さなPipが可愛い。

4 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 06:17:43.32 .net
胃酸(遺産?)さんが立てたこのスレに、たった今、気づきました。今まで気づかなかった。
ほんとは僕もコテをつけるべきなんだけど、ごめんなさい。理由を話せば長くなるけど、
僕はコテをつけないでおきます。

Philip の冒頭の ph- は、もともと古典ギリシャ語では p という発音を強く発音して、
h という息の音(ハアッという音)をつけただけのものなので、単なる p という音に
限りなく近く聞こえる。だから、Philip を古典ギリシャ語式に発音すると、
「ピリップ」に近くなる。そうなると、Philip が Pip というふうに退化してもおかしくはないと
思います。

さらに、フィリピン人は自らのことを Pilipino(ピリピーノ)と呼んでいるはずです。
(うろ覚えなので、確かではありません。)フィリピン人たちの母国語である Tagalog
などでは、f の発音がなく、それがすべて p に入れ替わっているようなのです。

さらには、韓国人に f の発音をさせようとすると、下手な人たちはそれをすべて p に
置き換えます。first は post と発音してしまいます。

このように、世界の諸言語と比べてみると、f がいかに p と混同されやすいかがわかります。
第一、音声学的に考えてみても、f の発音をしようとして、下唇をかむのを忘れると、
うっかりと p になってしまいますよね。このように、f と p はきわめて似ているようです。

だから、子供の Pip が Philip という発音を正確には発音できず、f を p にしてしまい、
さらには L を R にしてしまった結果として、 Pirrip になってしまったのは、自然なこと
なんだと思います。

5 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 06:46:22.06 .net
文学に造詣が深いわけでも何でもないけど、冒頭の語り口についてコメントしてみます。

【My】 father's family name being 【Pirrip】,
and 【my】 Christian name 【Philip】,
【my】 infant tongue could make of both names
nothing longer or more explicit than 【Pip】.
So, I 【called】 myself 【Pip】, and came to be 【called】 【Pip】.

(1) 全般的に、知的な大人の文体ではなく、わざと子供っぽい文体で書いているような
気がする。

(2) my を何度も繰り返しているところが、いかにも子供っぽい。少しばかり文章のうまい
大人なら、何度も my を繰り返すことはせず、なるべく言葉の調子に変化をつけるだろう。
しかし、Dickens はこのような、一見して稚拙に見える文体の中にも、詩的ともいえるほどリズミカルな
いきいきした調子を与えていると思う。my を繰り返していながらも、だらだらした調子になることなく、
逆にリズミカルになっていて気持ちがよい。

(3) Philip や Pirrip や Pip のように、よく似た単語(名前)を何度も繰り返している
点も、上記の (2) と同じく、リズミカルだと感じさせる。

(4) 第一文にある and や、第二文にある so も、やはり子供らしい稚拙な言い回しなんだろう
と思う。

(5) 第二文で call という言葉を繰り返している。大人なら call のあとは、似た意味の別の
単語を使って、変化を与えるだろう。しかしここでも、まったく同じ単語である call を繰り返しながらも、
リズミカルで気持ちのいい調子を与えることになっている、と僕は思う。

(6) というわけで、この冒頭の数行で、いきなり Dickens の音楽的ともいえるほどの
調子のいい語り口が始まる。彼のリズミカルな語り口の妙味は、このあとの方で、大いに
発揮されることになる。

6 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 07:13:29.24 .net
my infant tongue could make( of both names) nothing longer or more explicit than Pip

ofは〜から

直訳 私の幼い話し方は二つの名前からピップより長く明確な何もない物を作りだした。

S=tongue V=make O=notning

意訳 私の幼稚な口からは、二つの名を合わせても、ピップ以上の長くはっきりした言葉は出なかった。

7 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 07:18:54.17 .net
So, I called myself Pip, and came to be called Pip.

come to 〜するようになる

だから私は自分をピップと呼び、ピップと呼ばれるようになった。

8 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 07:35:48.08 .net
課題
I give Pirrip as my father's family name, on the authority of his tombstone and my sister, Mrs. Joe Gargery, who married the blacksmith.
As I never saw my father or my mother, and never saw any likeness of either of them (for their days were long before the days of photographs),
my first fancies regarding what they were like were unreasonably derived from their tombstones.

9 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 08:35:32.04 .net
良スレですね!僕も週明けぐらいから(ROMですが)毎日参加したいです
息の長い読書会になることを祈っています
企画された方、積極的にレスをされている方、お疲れさまです

以上、自分なりの「読み」を語るわけでもないのにレスしてすみません

10 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 09:01:12.39 .net
>>6
make A of B   BからAを作る

Aが長いとmake of B Aとなる

11 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 09:01:12.59 .net
>>8 の一行目
and my sister, Mrs. Joe Gargery, who married 【the】 blacksmith.

ここで、初出の blacksmith(鍛冶屋)という言葉に、いきなり the がついている。
通常ならここは "a blacksmith" になるはずだ。これをあえて "the blacksmith" にする
ことにより、あたかもこの小説の冒頭が、本当の語り始めではなく、この小説の始まる前から
この語り手が誰かに向かって話を続けていたかのような印象を与えているような気がする。

あるいは、小説によくある、初出なのに the をつけたがる傾向をそのまま踏襲しただけだとも
言える。たとえば有名な Orson Wells の映画 "The Third Man" でも、いきなり
the をつけている。通常なら "A Third Man" と言ってもよさそうなところに the
をつけることにより、読者に「えっ?どの third manなの?すでにそれについては
みんな知ってるの?私は知らなかったんだけどな〜。どんな third man なの?」と
疑問を抱かしめる。

この "Great Expectations" の冒頭の数行目にいきなり出てくる "the blacksmith" も、
やはり、すでに語り手としては「例の、僕の父親がわりになってくれた、あの blacksmith」
と心に思いながら語っているものだから、ついつい "the blacksmith" というふうに the
をつけてしまったとも言える。

12 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 09:16:23.99 .net
>>11
>my sister, Mrs. Joe Gargery, who married the blacksmith.

叔母さんの夫だから逆行照応的な用法のtheが付いたのでは?

>The Third Man

序数だからtheが付いたのでは?

13 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 09:38:38.89 .net
"Great Expectations" 全編の朗読を収めた webpage

http://www.youtube.com/watch?v=qDy8vbliNSA&list=PL899A9A014634AF04

14 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 09:41:52.08 .net
>>12
序数 (second, third, fourth) でも、a がつくことは大いにあるよ。

(1) Yesterday you gave me a book. Give me 【a second】.

(2) There came one man. Then came 【a second】. And then came 【a third】.

15 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 09:46:25.97 .net
>>12
>>叔母さんの夫だから逆行照応的な用法のtheが付いたのでは?

あ、なるほど。その通りみたいだね。納得。"the blacksmith" って書いてあるからこそ、
「ああ、この blacksmith に the がついてあるということは、その前のどこかにこの blacksmith
に相当する誰かの名前か名詞があるんだな」と読者が気づくというわけだね。そこで、よく考えてみると、
どうやら【Mr. Joe Gargery】がその the blacksmith だということだと気づくわけだね。

16 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 10:35:05.39 .net
>6
違いますよ。
「私の幼い舌は、どちらの名前もピップより長くはっきりは発音できなかった」

>8はピップのお姉さんの旦那Joe Gargery=the blacksmithというだけのこと。
ピップの両親のlikenessとはポートレイトの意味だね。

さあ、次へ行きましょう。

17 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 10:37:55.89 .net
>>8
>>never saw any 【likeness】 of either of them

この likeness という言葉を「肖像画、写真」という意味で使うのは、19世紀くらいまでであって、
現代では(つまり、たとえば30年前から今まででは)、そういう意味ではあまりこの言葉は
使わず、「肖像画」という意味でははっきりと "a picture, a painting, a portrait picture"
などと言い、「写真」という意味でははっきりと "a photograph, a photo, a picture"
などと言うのではないかと思う。(僕の思い込みかもしれないけど。)

19世紀までの文学小説を読んでると、この likeness という言葉を countable noun として
「肖像画や写真」という意味で使っているケースによく出くわすような気がする。
(ただし、19世紀までの小説をがんがん大量に読んできたわけではないので、僕の思い込みかもしれない。)

たとえば、Jane Austen の小説を読んでると、そんな意味での likeness が出てくる。

Yes, good man!―thought Emma―but what has all that to do with taking
【likenesses】? You know nothing of drawing. Don't pretend to be in
raptures about mine. Keep your raptures for Harriet's face.
"Well, if you give me such kind encouragement, Mr. Elton, I believe
I shall try what I can do. Harriet's features are very delicate,
which makes 【a likeness】 difficult; and yet there is a peculiarity in
the shape of the eye and the lines about the mouth which one ought
to catch."

("Emma" by Jane Austen, 1815)
http://www.gutenberg.org/files/158/158-h/158-h.htm

18 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 12:33:46.51 .net
>>8
Joe Gargery という人名が出て来るけど、Gargery はついつい「ガージャリー」と
発音したくなってしまう。でも、二つのサイトで確かめたけど、実は「ガーガリー」が正しいようだ。

(1) YouTube 上の "Great Expectations" の朗読での発音
http://www.youtube.com/watch?v=uE4SUro0gqM
上記のビデオの 0'50" あたり。

(2) Gargery という人名を発音してくれる webpage
http://www.pronouncehow.com/english/gargery_pronunciation

この二つのサイトで、はっきりと「ガーガリー」と発音している。

19 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 15:01:06.79 .net
課題
From the character and turn of the inscription, "Also Georgiana Wife of the Above,"
I drew a childish conclusion that my mother was freckled and sickly. To five little stone lozenges,
each about a foot and a half long, which were arranged in a neat row beside their grave,
and were sacred to the memory of five little brothers of mine,ーwho gave up trying to get a living,
exceedingly early in that universal struggle,ーI am indebted for a belief I religiously entertained that they had all been born on their backs with their hands in their trousers-pockets,
and had never taken them out in this state of existence.

20 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 16:01:34.89 .net
>>19 の二つ目の文の文字面の意味はわかるけど、なんでこんなことが書いてあるのかが
わからない。二つ目の文は長いけど、あいだに挿入された修飾語をすべて取り除いて、
骨格だけを示してみる。

To five little stone lozenges,
I am indebted for a belief I religiously entertained
that they had all been born on their backs with their hands in their trousers-pockets,
and had never taken them out in this state of existence.

僕なりに訳してみる。
「5つの小さな菱形の石のせいで、僕の5人の兄弟たちはみんな、ズボンのポケットに両手を突っ込んだまま、
仰向けになって生まれてきて、死ぬまで手はそのように突っ込んだままだったのだと、僕は宗教的に信じるようになったのだ。」

もしこのような意味だとしたら、これはいったいどういうこと?菱形の石のせいで、なんでこんな
ふうに思うようになったのか?そしてそんなことを信じてしまったことには、何か意味があるのか?
全然わからん。ただし僕は、この小説の最初の5分の1しか読んでいない。先の方まで読めば
わかるのかもしれないけど。

21 :マグナ ◆vI4NRkhGyA :2014/02/28(金) 16:24:13.76 .net
>>20
ググったらあった。ディケンズの文章も引用されてる。
ttp://www.bbc.com/news/uk-england-kent-20640902
ここの三番目。”stone lozenges”ってのは確かに「菱形の石」だが、英語を使ったときにイメージされる形ってのはあんまり菱っぽくないな。
こういうかたちならズボンの後ろ側のポケットに手を突っ込んで仰向けになってるイメージを連想するのも何となく分かる。
画像とかネットで豊富に出てくるし、それに頼るのもいいかもしれんぞ。

22 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 16:35:21.36 .net
>>21
その写真に出ている stone lozenges を見ると、確かに人間がズボンのポケットに
手を突っ込んで、仰向けに寝ているという感じがするよね。さすがだね。いい情報をありがとう。

23 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 17:49:32.91 .net
課題
Ours was the marsh country, down by the river, within, as the river wound, twenty miles of the sea.
My first most vivid and broad impression of the identity of things seems to me to have been gained on a memorable raw afternoon towards evening.
At such a time I found out for certain that this bleak place overgrown with nettles was the churchyard; and that Philip Pirrip, late of this parish,
and also Georgiana wife of the above, were dead and buried; and that Alexander, Bartholomew, Abraham, Tobias, and Roger, infant children of the aforesaid, were also dead and buried;

24 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 17:51:59.65 .net
課題続き
and that the dark flat wilderness beyond the churchyard, intersected with dikes and mounds and gates,
with scattered cattle feeding on it, was the marshes; and that the low leaden line beyond was the river;
and that the distant savage lair from which the wind was rushing was the sea; and that the small bundle of shivers growing afraid of it all and beginning to cry, was Pip.

25 :吾輩は名無しである:2014/02/28(金) 18:10:57.83 .net
>>23
>>Ours was the marsh country,

イギリス文学を読んでると、よく marsh(湿地、沼)という言葉が出てくるような気がする。
イギリスに行ったことがないんだけど、日本に比べて湿地(沼)が多いんだろうか?

26 :胃酸:2014/03/01(土) 00:38:40.33 .net
わーお!
一日にしてこの盛況、びっくり・・・
きょうはchapter2のお姉さんの育て方、'by hand'。
母乳じゃないってことね。

27 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 02:04:08.17 .net
>>23
>>24
and thatが目に付く。〜で〜で〜でみたいな表現で記憶を喚起してる感じが出てる。

28 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 02:14:47.55 .net
課題
"Hold your noise!" cried a terrible voice, as a man started up from among the graves at the side of the church porch.
"Keep still, you little devil, or I'll cut your throat!" A fearful man, all in coarse gray, with a great iron on his leg.
A man with no hat, and with broken shoes, and with an old rag tied round his head. A man who had been soaked in water,
and smothered in mud, and lamed by stones, and cut by flints, and stung by nettles, and torn by briars;
who limped, and shivered, and glared, and growled; and whose teeth chattered in his head as he seized me by the chin.
"Oh! Don't cut my throat, sir," I pleaded in terror. "Pray don't do it, sir." "Tell us your name!" said the man. "Quick!"

29 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 02:18:23.84 .net
課題続き
"Pip, sir." "Once more," said the man, staring at me. "Give it mouth!" "Pip. Pip, sir." "Show us where you live," said the man.
"Pint out the place!" I pointed to where our village lay, on the flat in-shore among the alder-trees and pollards, a mile or more from the church.
The man, after looking at me for a moment, turned me upside down, and emptied my pockets. There was nothing in them but a piece of bread.

30 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 02:25:18.30 .net
>>28
iron 〔鉄製の〕手かせ、足かせ

31 :マグナ ◆vI4NRkhGyA :2014/03/01(土) 02:38:12.37 .net
”in””by””and”が繰り返される文章だな。英語でもこれだけ繰り返すと稚拙になる場合はあると思うんだが、
それに一種の迫力を与えてるのはやはり文豪だからか。表現が大仰な割に誇張はなく的確に物を捉えられてるからかもしれん。

32 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 06:07:27.52 .net
>>28
>>"Tell 【us】 your name!" said the man. 【"Quick!"】

(1) Tell 【me】 というのが標準英語。ここではこの囚人に "Tell 【us】" と言わせることにより、
この囚人が Cockney などの方言を使っているらしいことがわかる。

(2) "Quick!" は、19世紀の小説の中では初めてお目にかかった。今まで僕が読んできた
19世紀の小説では常に "Make haste!" だった。Jane Austen, Thomas Hardy, そして
Dostoevsky の "Crime and Punishment" の英訳(19世紀に英訳されたもの)でも、
こういうときは常にそうだった。

19世紀においては、少し知的な人は "Make haste!" と言い、労働者階級の人は "Quick!" と言っていたのだろうか、
と僕はいま考えている。なお、もちろん現代英語では、知的な人も含めてみんなが "Quick!" と
言っているよね。

なお、Dostoevsky の小説の英訳の19世紀版では "Make haste!" だった
けど、20世紀に別の人が同じ場面を英訳したものを見ると、"Quickly!" だった。
そう考えてみると、もともとは Make haste! だったものが、だんだんと Quickly! に
変わっていき、そのあとついに Quick! になっていったんだろうけど、ともかく19世紀においてさえ、
労働者階級の人はすでに Quick! と言っていたんだということが、この Dickens の小説を読んで
いるとわかるので、面白い。

33 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 06:14:30.36 .net
>>29
(1) "Show 【us】 where you live," said the man.

この us も、さっきの場合と同じ。me の代わりに us を使うのは、Cockney だけでなく、
Scotland の方言でもそうだと書いてあった。

(2) "【Pint】 out the place!"

Point の発音を、この囚人は Pint に近く発音していることを示している。Point を
pint に近く発音するのは、スコットランド方言の特徴であることを、手元の Scots dictionary
で僕は確かめた。もちろん、他の方言でもそういう特徴はあるかもしれないけど、さっきの
"Give us" のように me の代わりに us を使う点と合わせて考えてみると、どうも
この囚人は Scotland 人ではないかという気がする。

34 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 06:37:46.36 .net
>>28 の3行目
>>A man 【with no hat】, and with broken shoes,

「帽子をかぶっていない」とわざわざことわっているところに注目したい。日本人にとっては、
帽子をかぶっているかどうかなんて大した意味はないんじゃないだろうか?日本の小説において、
帽子をかぶっていたかどうかなんて書いたとしても、それは、その人のファッションセンスを
表すか、あるいは特に日差しの強いところを歩いていたかどうかを意味するに過ぎないだろう。
でも、欧米文学においては、帽子をかぶっていたかどうかは重要な意味を持つんじゃないだろうか?

かなり昔、テレビの放送大学の講義で、「音楽の歴史と理論」とか何とかいう講義を聴いたことが
あるけど、その中で Schubert の Winterreise(冬の旅)について講義していた。その
歌詞の中で、「帽子をかぶらずに」主人公が森の中をさ迷い歩いた、というような箇所について
解説していた。講師が言うには、そもそもヨーロッパ社会では、帽子をかぶらないで外を歩くことは
少なくとも当時はありえなかった。(現代について講師がどのように言っていたかについては、
僕は覚えていない。)帽子をかぶらないで歩くということは、人間社会から放逐されているという
ことを示していると言うのだ。

そのことを考え合わせると、今回のこの囚人が "with no hat" の状態でいたということは、
通常の人間社会からはずれているということを匂わせているのではないかと思うんだが、
違うかな?

35 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 07:02:09.39 .net
現代の日本で言えば、こんな格好
http://stat.ameba.jp/user_images/ca/ca/10139563937_s.jpg

36 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 08:48:01.44 .net
>>35
そのリンクは、僕のプロバイダーを通すと、閲覧できないんだよね。他の人には、見えるのかな?

37 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 15:47:00.28 .net
続き
When the church came to itself,―for he was so sudden and strong that he made it go
head over heels before me, and I saw the steeple under my feet,―when the church came to itself,
I say, I was seated on a high tombstone, trembling while he ate the bread ravenously.
"You young dog," said the man, licking his lips, "what fat cheeks you ha' got."
I believe they were fat, though I was at that time undersized for my years, and not strong.
"Darn me if I couldn't eat em," said the man, with a threatening shake of his head, "and if I han't
half a mind to't!"

38 :マグナ ◆vI4NRkhGyA :2014/03/01(土) 15:58:03.46 .net
>>34
帽子をはたき落とす事は全否定というか決闘の理由になってもいいぐらいの事だったらしいからな。
現代でも向こうの人の被ってる帽子を落としたら喧嘩になる可能性は高い。

39 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 16:04:56.58 .net
>>38
ほう、なるほど。日本の小学校・中学校・高校では、運動会で「騎馬戦」というものがあって、
敵の帽子を取ったチームが勝ちだよね。あれもそういう白人社会の風習や考え方から
由来するものなんだろうね。

40 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 16:32:58.27 .net
課題
When the church came to itself,―for he was so sudden and strong that he made it go
head over heels before me, and I saw the steeple under my feet,―when the church came to itself,
I say, I was seated on a high tombstone, trembling while he ate the bread ravenously.
"You young dog," said the man, licking his lips, "what fat cheeks you ha' got."
I believe they were fat, though I was at that time undersized for my years, and not strong.
"Darn me if I couldn't eat em," said the man, with a threatening shake of his head, "and if I han't
half a mind to't!"

41 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 16:45:36.03 .net
課題続き
I earnestly expressed my hope that he wouldn't, and held tighter to the tombstone on which he had put me; partly, to keep myself upon it; partly, to keep myself from crying.
"Now lookee here!" said the man. "Where's your mother?" "There, sir!" said I. He started, made a short run, and stopped and looked over his shoulder. "There, sir!" I timidly explained.
"Also Georgiana. That's my mother." "Oh!" said he, coming back. "And is that your father alonger your mother?" "Yes, sir," said I; "him too; late of this parish."

42 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 17:18:16.88 .net
>>40
>>"what fat cheeks you ha' got."
>>"and if I han't half a mind to't!"

have が ha' になってて、-ve の発音が消えていることに注意したい。Scotland 人の
発音では、このように -ve の発音が消えるんだったかどうだったか、ちょっと忘れた。

"to it" が "to't" になっていることにも注目したい。

43 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 17:25:20.54 .net
>>41
>>"Now lookee here!"

"Lookee!" は "Look 'ee" つまり "Look ye" のことだと思う。ye というのは、
「お前」という意味であり、スコットランドなどの諸方言で使う言い方だ。本来は
「お前」は thou なんだけど、「お前たち」という意味の ye で代用することもよくあるみたいだ。

そして、Look という命令文のための動詞が前に来て、そのあとに主語を意味する ye が来ている。
この形は、"Don't touch me!" って言いたいときに "Don't you touch me!" って
いうふうに言うこともあるのと似ている。(念のために書き添えるけど、この "Don't you touch me!"
はあくまで「触るな」という意味の否定命令文であって、「あなたは私に触りませんか?」という
意味の否定疑問文として引き合いに出しているのではない。)

ともかくこのように、命令文には本来は主語はつけずに Look! などと言うのだけど、
ときどきその動詞のあとに名詞(主格)をつけて、Look ye! (= Look 'ee! = Lookee!)
というふうにすることもあるみたいなのだ。

44 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 17:38:31.68 .net
>>43
この Lookee! の中に含まれていると思われる 'ee (= ye) は、この他の文脈にもよく出てくる。
たとえば、"to you" という意味で "to ye" と言うのだが、それが訛って "to 'ee" (= "t'ee")
となる。次の例を見られたし。

"Good night t'ee," said the man with the basket.

("Tess of the d'Urbervilles" by Thomas Hardy)
http://www.gutenberg.org/files/110/110-h/110-h.htm

この t'ee がまさにそれだ。

45 :吾輩は名無しである:2014/03/01(土) 19:11:11.10 .net
>>41
>>looked over his shoulder.

振り向いた、振り返った
http://ejje.weblio.jp/content/look+over+one%27s+shoulder

僕はこれが「首を横に向けて、横方向に視線を走らせた」という意味だと今まで思ってた。
いま調べてみて、初めてこの熟語の本当の意味を知った。

46 :秋吉君@玉転がす豚の脂肪 ◆2itMTGf8Qk :2014/03/01(土) 22:45:19.86 .net
あてんしょんぷりーず

お客様のなかに、まぐな様はいらっしゃいますでしょうか。

いらっしゃいましたら、お手数ですが、創文板の2ch文芸部までお越しください。

47 :胃酸:2014/03/01(土) 23:10:16.03 .net
みなさん勉強家ですね〜

さて、きょうはchapter3を読みました。
脱獄囚がパイを“犬食い”している描写、
いい味出してくるなー、ディケンズ!

48 :マグナ ◆vI4NRkhGyA :2014/03/02(日) 01:32:01.86 .net
>>39
日本の場合はどうなんだろうなあ。首を取れないから代わりに帽子をとる、という事ではないのだろうか。
日本だとむしろ帽子は儀式の時に被る物という色合いが強い。


ところで最後の章の「友達」ってあれどういうことだろうな。
"And will continue friends apart,"
読んでる途中の人に悪いから暈かすが、あの二人がこれから恋愛とか夫婦関係になる、と読んでる人も多いが、
あくまで離れても「友達」でいましょうね、ということと読み方も出来ると思うが。
末尾の"I saw no shadow of another parting from her."
の読みも分かれるところだろうなあ。

49 :吾輩は名無しである:2014/03/02(日) 02:35:35.98 .net
課題
"Ha!" he muttered then, considering. "Who d'ye live with,—supposin' you're kindly let to live, which I han't made up my mind about?"
"My sister, sir,—Mrs. Joe Gargery,—wife of Joe Gargery, the blacksmith, sir." "Blacksmith, eh?" said he. And looked down at his leg.
After darkly looking at his leg and me several times, he came closer to my tombstone, took me by both arms, and tilted me back as far as he could hold me;
so that his eyes looked most powerfully down into mine, and mine looked most helplessly up into his.

50 :吾輩は名無しである:2014/03/02(日) 02:39:11.21 .net
課題続き
"Now lookee here," he said, "the question being whether you're to be let to live.
You know what a file is?" "Yes, sir."
"And you know what wittles is?" "Yes, sir." After each question he tilted me over a little more,
so as to give me a greater sense of helplessness and danger. "You get me a file." He tilted me again.
"And you get me wittles." He tilted me again. "You bring 'em both to me." He tilted me again. "Or I'll have your heart and liver out." He tilted me again.

51 :吾輩は名無しである:2014/03/02(日) 05:59:22.58 .net
>>48
帽子について、本当なのかどうかわからないけど、次のように書いている人がいる。

===== 引用はじめ ===============

帽子は今では防寒・日よけ、又ファッションアイテムの一つですが
先の回答者さんも書かれているように、元々は戦の防具『兜』が元です
兜=帽子を付けたまま食事の席に付き事は、会食者に対して不信感を持っていると現す事です
『自分を害する気ではないか?』と
又兜=帽子の中に武器を隠す事も可能です

会食者に友好的である気持ちを現す為に、一番大切な心臓と共に頭を晒す事が重要だった訳です

余談ですが、中世まで(貴族がカツラを常時使用してた時代ですね)
素の頭を人前に晒す事は、丸裸を見られるのと同じくらい恥ずかしい事だったそうです
(因みに、日本の貴族もそうですね。余程親しい人の前以外では決して冠を外してはいけなかったそうです)
そんな恥ずかしい頭を晒す程、貴方=会食者を信頼してますよ
という意味あいもあります


正式な食事の席で許されるのは『武器の隠し場所にも防備にも役立たない』女性がする“ヘッドドレス”だけです

=== 引用おわり ===============

52 :吾輩は名無しである:2014/03/02(日) 06:44:10.67 .net
>>49
>>Who d'ye live with,―supposin' you're kindly let to live,
which I han't made up my mind about?

試訳:
誰と一緒に暮らしてんだ?俺が仏の心でお前を生かしてやることにするかどうかは、
まだ決めてねえけど、仮にそうなるとしたらの話だが。

ここでわざわざ supposin' に始まる仮定を付けているのは、"Who d'ye (= do you) live with?"
というふうに現在形を使っているので、これからもその人と一緒に暮らすことになるということを
仮定した言い方をしているからだと思う。「お前を今から殺すわけじゃなくて生かしてやると
仮定したとしたらの話だが」というふうに言わないと、このような現在形の疑問文はおかしいという
ことになるのだと思う。

もしもこの囚人が Pip を今から殺すと決めているのだということを匂わせる言い方をしたければ、
どうなるのかな?ええっと、よくわからんが、"Who have you lived with?" とかいうふうに
現在完了になるのかな?

53 :吾輩は名無しである:2014/03/02(日) 06:49:26.34 .net
>>30
>>"the question being whether you're to be let to live.

この囚人は、しゃべりっぷりから見て、たぶんスコットランド人だと僕は今のところ見ているけど、
それはともかく、このような非標準的な、あまり知的でないと思われるしゃべり方をしているのに、
being というような分詞構文を使っているところが面白いと思う。もしかしたら、19世紀の
イギリスでは会話の中で分詞構文を使うのはごく普通だったのかもしれないし、スコットランド人の
話し言葉では特にそうだったのかもしれない。その点については、僕はよく知らない。

それはともかく、19世紀の小説を読んでると、話し言葉の中でもよく分詞構文が使われているように思う。
少なくとも、Thomas Hardy, Charles Dickens, Jane Austen をちらちら読んでいると、
そんなふうに思える。この点についても、僕はまださほどたくさんは読んでないし、注意深く
検討しているわけでもないので、今のところは断言はできない。

54 :吾輩は名無しである:2014/03/02(日) 06:55:11.59 .net
>>52
Who d'ye live with? は現在形だと思われるけど、もしも今から囚人が Pip を殺すと
決めた上で言う言葉だとしたら、"Who did you live with?" とはっきり過去形にするかもしれない。
ただしスコットランド人だと思われる彼の方言では、did がどのように発音されるかは知らないけど。

55 :吾輩は名無しである:2014/03/02(日) 07:15:57.08 .net
>>48
小説の最後の部分ね。

"We are 【friends】," said I, rising and bending over her, as she rose from the bench.
"And 【will continue friends apart】," said Estella.
I took her hand in mine, and we went out of the ruined place;
and, as the morning mists had risen long ago when I first left the forge,
so the evening mists were rising now,
and in all the broad expanse of tranquil light they showed to me,
【I saw no shadow of another parting from her】.

friends という言葉や、それに相当するヨーロッパの諸言語での言葉は、たぶん lovers とは
はっきりと区別されていて、肉体関係や恋愛感情を伴わない関係を意味するものだと思う。
だからここで "(We) will continue (= remain) friends apart." と言っているのは、
「肉体関係は持たず、恋愛感情も持たないように努力しながら、あくまで友達ということにしましょ」
と言っているのだと僕は思う。もしここで肉体関係を持ってしまうと、大変なことになる。
それから、friends のあとに apart を付けているのは、"even if we may be apart" と
かいう意味ではなく、friends を後ろから修飾したような意味合いじゃないかと思う。
つまり、「私たちは(常に一緒にいる恋人というようなものではなく)"距離を置いた友達" で
いましょう」という意味ではないかと思う。違うかな?これについてよく知っている人がいたら、
ぜひ教えてほしい。

56 :吾輩は名無しである:2014/03/02(日) 09:55:23.01 .net
課題
I was dreadfully frightened, and so giddy that I clung to him with both hands,
and said, "If you would kindly please to let me keep upright, sir, perhaps I shouldn't be sick,
and perhaps I could attend more." He gave me a most tremendous dip and roll, so that the church jumped over its own weathercock.
Then, he held me by the arms, in an upright position on the top of the stone, and went on in these fearful terms:—

57 :吾輩は名無しである:2014/03/02(日) 10:18:03.60 .net
test

58 :吾輩は名無しである:2014/03/02(日) 10:18:52.67 .net
>>55 の続き --- "friends" の意味合いについて

ともかく、friends とか lovers とか husband and wife という言葉の対比について、
一つ思い出す台詞がある。

(1) You know, I-I-I don't think many couples
could handle this. You know, they could
【just break up and remain friends】.

(2) ALVY(男性主人公)の台詞:So wanna get married or what?

ANNIE(女性主人公)の台詞: (Seriously)
No. 【We're friends. I wanna remain friends.】

(上に挙げた二つの箇所は、両方とも "Annie Hall" という映画の中の台詞である。)
http://www.dailyscript.com/scripts/annie_hall.html

この二つの台詞の前後関係を見てもわかるように、"We're friends" とか "We will remain friends."
というのは、あくまで恋人になるのではなく、結婚するわけでもない関係、「ただの友達」でいましょう、
という意味なのだと思う。

59 :吾輩は名無しである:2014/03/02(日) 12:53:13.51 .net
>>55
>>【I saw no shadow of another parting from her】.

この部分(小説の最後)は、やはり、「肉体関係を持たず、恋人でもなく、結婚もしないで、
あくまで "ただの友達" でいましょう」と言いながらも、やっぱりいつまでも離れることができないで
いる二人を表しているのだろう。そのあとどうなったのかは、読者がめいめいで想像することになる。

Dickens は確か、いとこか何かの女性とものすごく気が合って、何でも話し合える仲だったんだけど、
若くしてその女の人は死んでしまって、Dickens はそのあと深く深く悲しみ、相手が死んだあとになって
初めて、自分は彼女を実は愛してたのだと気づく。(確かそのようなことを Dickens の
ドキュメンタリーで言ってたような気がするけど、記憶違いだったら申し訳ない。)
そして、若くして死んでしまった相手を、Dickens は胸の中でどんどん偶像化していく。

この小説では、自分が偶像化した相手を文学の中で具象化しようとしているのだろう。
Dickens に限らず、誰でも、この世ならぬ理想の相手を胸の中で作り上げ、
その相手に恋焦がれながら生涯を送っているのだと思う。

60 :マグナ ◆vI4NRkhGyA :2014/03/02(日) 16:59:27.27 .net
なるほど、やはり切なげな意味と読んだ方がいいんだな。
"apart"は修飾の意味である方が頷ける。
デヴィット・リーンの映画では最後はかなり改変されてしまっている。
最後の二人は結婚する! と断言しているような評論も見付けた事があって、そこまで読むのは急きすぎだろと思う。
むしろこういうエンドは日本人好みではなかろうか。男女が結局すれ違って終わりとか日本映画には多い。
ある評者は明鏡止水なんて四字熟語を持ち出して説明していた。
そういうちょっととち狂ったこともやってしまうほど美しい文章だからだ。
大団円とは裏腹なエンドだな。

61 :吾輩は名無しである:2014/03/02(日) 18:48:50.82 .net
>>59 において、僕は Dickens のドキュメンタリーについて触れたけど、そのリンクをここに
貼っておく。

Charles Dickens Documentary
http://www.youtube.com/watch?v=L189MhnAloM

このビデオの 23'00" から 25'30" において、若き Dickens にとっていとこの Mary Hogarth
がいかに大切な存在であったかをいろんな学者が述べている。Dickens と Mary はお互いに
深く理解しあってたが、Mary が17歳のとき、突然に病気に倒れて死んでしまう。23'40" あたりで、
あるディケンズ専門の学者が次のように言っている。(僕の聴き取りと書き取りなので、間違って
たらすまん。)

My hypothesis is that Dickens fell in love with Mary Hogarth after she died
and built her up as an ideal partner. And of course, once people die,
they don't change. There she was; charming, beautiful, sympathetic,
17-year-old, supportive and helping in every possible way.
It was none of the, uh, difficulties that arise when people are
actually physical lovers.

(Charles Dickens Documentary, 23'40" to 24'14")

62 :胃酸:2014/03/03(月) 00:13:51.76 .net
chapter4
ジョーがくりかえしgravyをピップに掬ってやっている。
ほんとにやさしい人なんだなー。
Tar brandyはなんとかやり過ごせそうだったのに、
Oh, noooo! パイだ!

次のchapter5を読んで、
それを明日の分としてのちほど、うp。

63 :胃酸:2014/03/03(月) 01:05:19.17 .net
chapter5,manhunt
ボクの脱獄囚は謎・・・

...But if he had looked at me for an hour or for a day,
I could not have remembered his face ever afterwards
as having been more attentive.

これはどーゆーことなんだー!
物語の引きが強いのねん。

64 :吾輩は名無しである:2014/03/03(月) 01:38:54.03 .net
課題
I was dreadfully frightened, and so giddy that I clung to him with both hands,
and said, "If you would kindly please to let me keep upright, sir, perhaps I shouldn't be sick,
and perhaps I could attend more." He gave me a most tremendous dip and roll, so that the church jumped over its own weathercock.
Then, he held me by the arms, in an upright position on the top of the stone, and went on in these fearful terms:—

65 :吾輩は名無しである:2014/03/03(月) 02:18:25.13 .net
>>63
He remembers (forever) the man's face as so attentive, from that
momentary glance, that he couldn't have remembered it as more
attentive if the man had looked at him for a full day.

66 :吾輩は名無しである:2014/03/03(月) 08:54:21.85 .net
>>63 については、すでに >>65 でネイティブらしき人がパラフレーズしてくれてるけど、
僕なりに和訳してみる。

...But if (= even if) he had looked at me for an hour or for a day,
しかし、仮に彼が僕を一時間とか一日中ぼくを見つめたとしても、

I could not have remembered his face ever afterwards
as having been more attentive.
僕は彼の顔を、このときよりもさらに attentive(じっくりと僕を見つめている雰囲気のもの)として
あとになっても忘れないでいるということはなかったろう。

意訳すると(英文でパラフレーズしてくれたものと同じことになるけど):

(1) 意訳その1
彼はこのとき、あまりに attentive だったので(あまりに僕をじっくりと見つめていたので)、
仮に1時間とか1日中ぼくを見つめていたとしても、これほどまではっきりと、あとで忘れずにいるなんてことはなかったろう。

(2) 意訳その2
普通なら、1時間とか1日中僕を見つめていたとしても、あとで彼の顔をぼんやりとしか覚えていなかった
かもしれない。しかしこの時の彼の顔は、すごく attentive だったので、あとでものすごく
はっきりと僕は彼の顔を覚えていたのだ。

************

ああ、それにしても、この英文は僕にとっても難しかった。今回、質問してくれたから
僕も本気で考える気になったけど、一人で読んでたら、ざあっと読んでわからなかったら、
そのまま飛ばしてしまうところだった。

いつもそうなんだよね。一人で読んでると、
7割か8割くらいわかったら、どんどん先へ進んでしまう。それを踏みとどまり、基礎に
立ち返り、少しでも曖昧なところは執拗に追及する作業は、このような場所で
みんなで一緒に質疑応答して初めて、重い腰を上げて頑張ってみようかという気になる。

67 :吾輩は名無しである:2014/03/03(月) 10:56:25.24 .net
課題
"You bring me, to-morrow morning early, that file and them wittles.
You bring the lot to me, at that old Battery over yonder. You do it,
and you never dare to say a word or dare to make a sign concerning your having seen such a person as me,
or any person sumever, and you shall be let to live. You fail, or you go from my words in any partickler,
no matter how small it is, and your heart and your liver shall be tore out, roasted, and ate.

68 :吾輩は名無しである:2014/03/03(月) 10:59:07.10 .net
課題続き
Now, I ain't alone, as you may think I am. There's a young man hid with me, in comparison with which young man I am a Angel.
That young man hears the words I speak. That young man has a secret way pecooliar to himself, of getting at a boy, and at his heart, and at his liver.
It is in wain for a boy to attempt to hide himself from that young man.

69 :吾輩は名無しである:2014/03/03(月) 11:01:32.25 .net
課題続き
A boy may lock his door, may be warm in bed, may tuck himself up, may draw the clothes over his head, may think himself comfortable and safe,
but that young man will softly creep and creep his way to him and tear him open. I am a keeping that young man from harming of you at the present moment, with great difficulty.
I find it wery hard to hold that young man off of your inside. Now, what do you say?"

70 :吾輩は名無しである:2014/03/03(月) 11:42:00.76 .net
>>67
(1) "You bring me, 【to-morrow】 morning early, that file and 【them】 wittles.

those という代わりに them と言う、この方言が面白い。現代では tomorrow と綴るけど、19世紀には
to-morrow と綴るのが普通であったことも伺える。

(2) You bring the lot to me, at that old 【Battery】 over yonder.

"the Battery" というのは、近くにある「砲台」のこと。

(3) or any person 【sumever】,

sumever はたぶん、whomsoever という意味の方言だろう。

(4) You fail, or you go from my words in any 【partickler】,

partickler は、particular という意味の方言。

(5) your heart and your liver shall be 【tore】 out, roasted, and ate.

tore は torn という意味の方言。

71 :吾輩は名無しである:2014/03/03(月) 11:46:18.66 .net
>>68 ここでも方言が満載。

(1) Now, I ain't alone,

ain't = am not

(2) There's a young man hid with me,

hid = hidden

(3) I am a Angel.

a Angel = an angel(これも方言。間違いとは言い切れない)

(4) That young man has a secret way pecooliar to himself,

pecooliar = peculiar

(5) It is in wain for a boy to attempt

wain = vain

72 :吾輩は名無しである:2014/03/03(月) 19:40:14.33 .net
>>69
(1) A boy 【may】 lock his door,【may】 be warm in bed, 【may】 tuck himself up,
【may】 draw the clothes over his head, may think himself comfortable and safe,

may が4回も繰り返されていて、通常なら稚拙ということになるけど、Dickens はそれを承知の上で
このように書き、逆にリズム感を持たせている。

(2) I am 【a keeping】 that young man from harming of you at the present moment, with great difficulty.

"a keeping" は、もともとは確か "on keeping" ということであり、結局は keeping だけに
するのと同じような意味になるけど、古い英語にはよく出てくるけど、現代に近い時代でも、方言として
このような言い回しはしょっちゅう出てくる。

73 :吾輩は名無しである:2014/03/03(月) 20:02:51.45 .net
すごすぎて言葉がでません。

74 :吾輩は名無しである:2014/03/03(月) 20:20:17.84 .net
Chapter V の終わりの方

少年 Pip を脅かしていた囚人が警察につかまり、Pip の親代わりになっている Joe に
対して「あんたの pie を食っちまってすまねえ」と言ったら、Joe は囚人に対して、次の
ような優しい言葉をかけている。

"God knows you're welcome to it,―so far as it was ever mine,"
returned Joe, with a saving remembrance of Mrs. Joe. "We don't know
what you have done, but we wouldn't have you starved to death for it,
poor miserable fellow-creatur.―Would us, Pip?"

簡単に言うと、「飢え死にするくらいなら、僕の持ってる食べ物なら食べてくれてよかったんだよ。
ほんと気の毒に」と言っている。

Pip は、母親代わりの Mrs. Joe からはさんざんいじめられてきたが、Joe は Pip を
子供じゃなく、まるで大人同士の友達みたいに対等に接してくれる、とても優しい人なのだ。

75 :吾輩は名無しである:2014/03/04(火) 07:05:44.58 .net
Chapter VIII
主人公 Pip は、母親代わりの姉(Mrs. Joe)に強く促されて、近くに住む良家の Mrs. Havisham
のところに通うことになる。その Mrs. Havisham に出会った時の第一印象を語る場面。
前身を白い衣服で覆われ、髪までが白いが、その白は美しい白というよりも、かつては純白だった
ものがその輝きを失って精彩を失った濁った白という感じである。すべての希望を失って久しいという
感じのする Mrs. Havisham についての描写。

She was dressed in rich materials,―satins, and lace, and silks,
―all of white. Her shoes were white. And she had a long white veil
dependent from her hair, and she had bridal flowers in her hair, but
her hair was white. (中略)

But I saw that everything within my view which ought to be white,
had been white long ago, and had lost its lustre and was faded and
yellow. I saw that the bride within the bridal dress had withered
like the dress, and like the flowers, and had no brightness left
but the brightness of her sunken eyes. I saw that the dress had been
put upon the rounded figure of a young woman, and that the figure upon
which it now hung loose had shrunk to skin and bone.

("Great Expectations" by Charles Dickens, 1861)
http://www.gutenberg.org/files/1400/1400-h/1400-h.htm

76 :吾輩は名無しである:2014/03/04(火) 11:10:57.10 .net
"Great Expectations"(大いなる遺産)の映画版 (BBC, 1999)
http://www.youtube.com/watch?v=0xJFrAA82mU

これを見たあと、原作を Everyman's Library で最初の100ページだけ読んで、そこまでのだいたいの
荒筋はつかんでいたつもりだったけど、実はあまり味わえてはいなかったことを反省して、
最初から読みなおしてみて、今やっと Chapter 9 まで読んだ。全体の7分の1でしかないけど。

そこまで読んでみて、いろんな感想を持ったけど、そのうちの一つとして思うことは、
主人公の Pip の父親代わりになっている Joe Gargery(ジョー・ガーガリー)って、
すごくいい人だね。

Joe 自身が、暴力をふるう父親から育てられ、家庭環境が不安定すぎて学校には通えず、
そのため文字が読めない。そういう Joe は、心だけは清らか。職業は鍛冶屋。
典型的な労働者階級の家庭に預けられている孤児(みなしご)Pip は、彼自身も学校に
通えないけれども、独学で少しだけ字が書けるようになる。その成果を見せると、父親代わりの
Joe は大変に喜ぶ。

近くに住む良家の Miss Havisham のところの養女である Estella のところに遊び相手として
通わされることになったが、Estella は労働者階級の子である Pip を盛んに馬鹿にする。
それまでは意識もしなかった自らの教養のなさや貧困を、Pip は恥じるようになる。

あまりにもその体験が辛く、そして周りの大人たちの無神経な扱いに対する一種の防衛のためか、
Pip は育ての親たちに対して、Miss. Havisham の屋敷の中での様子について作り話を
してしまう。そういう嘘をついてしまって罪の意識を感じた Pip は、Joe にそのことを打ち明ける。

(その2に続く)

77 :吾輩は名無しである:2014/03/04(火) 11:12:06.79 .net
(その2)
Joe は叱らないが、「正直な生き方で偉くなれないんだったら、曲がった生き方でも偉くはなれないんだよ」
と優しくさとす。今回に限らず、いつも Joe は幼い Pip を大人の友達であるかのように
対等に接してくれるのだが、ますます Pip は Joe を心から慕うようになる。

Estella などの上流階級の人たちからは Joe は文字も読めないただの鍛冶屋かもしれない。
でも Pip は、心から Joe を本当の意味で偉い人だと再認識するのだ。

Charles Dickens は、12歳のときに父親が借金のせいで投獄され、その父親と一緒に暮らすため、
母親や兄弟たちはみんなその牢獄で、父親と共に暮らせたのだけど、12歳の長男である Charles
だけは、一家の稼ぎ手として、まったく一人で工場に送り込まれ、そこで労働者階級の男の
子供や大人たちと共に寝泊りし、毎日、靴墨を作り続けた。

一年後、父親は借金を何とか返せたので、父親と残りの一家は牢獄から釈放された。そして
父親は、もう長男の Charles を工場から救い出してやろうと言うが、母親は「お金が必要だから、
あの子は工場で働いてもらいましょ」と言う。それで Charles は、そのあとも工場で働き続ける。

父母の経済観念があまりにもいい加減なため、父親が借金のために投獄されただけでなく、普段から
家計は無茶苦茶だった。そのため、Charles はほとんど学校には通えなかった。

そんな彼が、12歳のときから靴墨工場で、そのあとは法律事務所の助手として、そしてそのあとは
新聞記者として働き、ついには流行作家になっていく。

(その3に続く)

78 :吾輩は名無しである:2014/03/04(火) 11:13:10.35 .net
(その3)

Charles Dickens は、靴墨工場で働きながら12歳のときから家族から離れて暮らし、
子供らしい時代をまるで経験していないので、のちに文字通りのイギリス随一、そして世界で
指折りの有名な作家になって引っ張りだこになって、裕福きわまりなくなっても、依然として
働き続けた。たくさんの子供たちに囲まれて居間にいても、彼だけはその居間において、
家族たちのすぐ脇にあるテーブルを使って、彼はただひたすら小説を書きつづけた。

彼の心の中には、彼を脅かし続ける demon がたくさん住みついていたのだ。その demon は、
たとえ押しも押されぬ流行作家であっても、いつ自分が父親のように投獄されるかわからない、
という強迫観念だった。

彼をあのような世界で指折りの作家に仕立て上げたのは、彼のそのような強迫観念だった。

以上のようなことを、僕の好きな次のドキュメンタリーでは言っていると思う。

Charles Dickens Documentary
http://www.youtube.com/watch?v=L189MhnAloM

79 :胃酸:2014/03/05(水) 03:14:13.80 .net
いろいろな人がいろいろな読み方をしているというのは、
事の当否は別にして、とても楽しいことだと思う。

chapter6
僕はもしかしたらこの章を読むことによって、
小さい者、幼い者、立場の弱い者の不正義について、
初めてちゃんと考える機会を与えられたのかも・・・。
・・・大げさだな(笑)

80 :吾輩は名無しである:2014/03/05(水) 06:38:36.39 .net
【心を病んだ上流婦人 Miss Havisham による、養女 Estella や主人公 Pip に対する精神的な虐待】

上流階級の Miss Havisham は、実に奇妙な人で、若い時に華やかに結婚式に臨む寸前に、
結婚相手の男性に逃げられたのだろうか?(途中までしか読んでいないので、まだわからない。)
ともかくそのようなことがあったらしく、自らの結婚式のためのウェディングケーキやドレスや
テーブルや食器などすべてを完備した大広間を、そのときのまま放置し、自らもそのときの
白いウェディングドレスをまとったままで生き続け、そのとき以来、一度も太陽の光を見ていない。

自らの心の傷から立ち直ることができず、彼女は寂しさのあまり養女として Estella を迎えるが、
養女を精神的に虐待してきたらしい。決して激しい言葉をかけたり肉体的な暴力をふるうことはなかった
らしいが、優しく寂しい言葉で虐待し続けてきたらしい。Estella を相手にするだけでは物足りず、
退屈しのぎに、その近くに住む主人公 Pip を屋敷に呼び寄せ、Pip と Estella がトランプ遊び
する姿を見て楽しむ。(続く)

81 :吾輩は名無しである:2014/03/05(水) 06:40:08.65 .net
>>80 からの続き

Pip は、Estella の美しさに魅惑されるが、貧乏で無知であることをさんざん馬鹿にされる。
Estella はもともとは素直な子だったのかもしれないが、養母である Miss Havisham が
彼女をひねくれた子供になるよう仕向けているらしい。Pip は、Miss Havisham の屋敷に
通うようになって、自らがいかに無知であり貧乏であるかを深く恥じるようになり、少しでも
勉強したいと思うようになる。学校に行けない彼は、Miss Havisham にアドバイスを求めるが、
彼女の方は、ありあまる財産と自らの蓄えた溢れる教養のごく片鱗たりとも彼に与えて手助けしようとは
露にも思わず、むしろ Pip が無知であることを彼女は楽しんでいる。

そんな中で、Miss Havisham は、幼女 Estella や主人公 Pip を、次に示す一節にある
ように静かに寂しく虐待する。Estella がわがままに Pip をいじめればいじめるほど、Miss
Havisham は喜ぶのだ。「もっといじめるがいい。もっともっと」とけしかける。

And sometimes, when her [Estella's] moods were so many and so contradictory of one
another that I was puzzled what to say or do, Miss Havisham would
embrace her with lavish fondness, murmuring something in her ear that
sounded like "Break their hearts my pride and hope, break their hearts
and have no mercy!"

("Great Expectations" by Charles Dickens, 1861, Chapter XII)
http://www.gutenberg.org/files/1400/1400-h/1400-h.htm

82 :吾輩は名無しである:2014/03/05(水) 09:26:13.25 .net
【鍛冶屋の守護聖人である Pope Clement I を題材にした歌】

Chapter XII では、主人公 Pip の父親代わりの Joe の職業である鍛冶屋 (blacksmith)
の守護聖人(patron saint)である Pope Clement I を題材にした歌が出てくる。
この守護聖人を Old Clem と呼んでいる。

Hammer boys round―Old Clem!
With a thump and a sound―Old Clem!
Beat it out, beat it out―Old Clem!
With a clink for the stout―Old Clem!
Blow the fire, blow the fire―Old Clem!
Roaring dryer, soaring higher―Old Clem!
http://www.gutenberg.org/files/1400/1400-h/1400-h.htm

この歌を、Joe は普段から仕事するときに、ハンマーで鉄を叩きながら、その鉄のカチンカチンと
いう音に合わせながらリズミカルに歌うのだ。この歌が実際にはどのようなメロディーで歌われて
いたのかは、映画でも参照しない限りは、僕らにはわからない。

Charles Dickens Great Expectations 1 of 2 (BBC 1999)
http://www.youtube.com/watch?v=0xJFrAA82mU

この映画の 33'30"-34'15 のところで Pip がゆっくりと歌い、そして 45'40" の近辺で、
今度は Estella が Pip を小馬鹿にしながら歌っている。

83 :吾輩は名無しである:2014/03/05(水) 09:33:51.92 .net
>>82
ここに出てくる鍛冶屋の歌の正確な意味は僕にはわからないけど、僕なりに無理やりに訳してみる。

Hammer boys round―Old Clem!
クレムさん、みんなをハンマーで叩きまわして

With a thump and a sound―Old Clem!
ガツンと一発、クレムさん

Beat it out, beat it out―Old Clem!
思いっきり叩いてね、クレムさん

With a clink for the stout―Old Clem!
コクのある酒のグラスをカチンとね、クレムさん
(訳注:the stout は stout beer のことか?)

Blow the fire, blow the fire―Old Clem!
火に息を吹きかけ、吹きかけ、クレムさん

Roaring dryer, soaring higher―Old Clem!
ゴオッと燃やして、大きな火を、クレムさん

84 :吾輩は名無しである:2014/03/05(水) 16:22:26.73 .net
父親代わりの Joe Gargery のもとで鍛冶屋の見習い奉公を続ける主人公の孤児の Pip は、
どうしても自分の仕事や生活に満足できない。何が何でも gentleman になりたくてたまらない。
そのことを幼馴染の Biddy に打ち明ける。

Chapter XVII

I continued at heart to hate my trade and to be ashamed of home.

I am not at all happy as I am. I am disgusted with my calling
and with my life. I have never taken to either, since I was bound.

("Great Expectations" by Charles Dickens, 1861)
http://www.gutenberg.org/files/1400/1400-h/1400-h.htm

85 :吾輩は名無しである:2014/03/05(水) 18:00:23.70 .net
"Great Expectations"(大いなる遺産)という言葉は、この作品のタイトル以外の本文には、
8回、出てくる。最初は、Chapter 18 に4回だけ出てくる。匿名の財産家から依頼を受けた
Mr. Jaggers という法律家が Joe Gargery と Pip のところに現れて、Pip が
「大いなる遺産」を受け継ぐ見込みであり、これからすぐに今の家と職業を離れて、大いなる
遺産を受け継ぐ見込みの gentleman としての教育を受けることになると伝えてくる。

(1) And the communication I [= Mr. Jaggers] have got to make is,
that he [= Pip] has 【Great Expectations】.

(2) I am instructed to communicate to him (中略) that he will come into
a handsome property. Further, that it is the desire of the present
possessor of that property, that he be immediately removed from
his present sphere of life and from this place, and be brought up
as a gentleman,―in a word, as a young fellow of 【great expectations】.

(3) You will have no objection, I dare say, to your 【great expectations】
being encumbered with that easy condition.

(4) It would all come out in good time, I observed, and in the meanwhile
nothing was to be said, save that I had come into 【great expectations】
from a mysterious patron.

("Great Expectations" by Charles Dickens, Chapter XVIII, 1861)
http://www.gutenberg.org/files/1400/1400-h/1400-h.htm

86 :吾輩は名無しである:2014/03/05(水) 20:30:40.66 .net
Chapter XIX (19) では、gentleman になるための教育を受けるためにロンドンに向かう
馬車に Pip が乗り込んだところが描かれている。故郷から離れて、涙を流すところ。
次の箇所が、とてもきれいだ。

Heaven knows we need never be ashamed of our tears, for they are rain
upon the blinding dust of earth, overlying our hard hearts.

http://www.gutenberg.org/files/1400/1400-h/1400-h.htm

87 :胃酸:2014/03/06(木) 01:02:58.79 .net
英語の本に限らず、僕は昔からどんな本でも読むのが遅い。
普通の人が1時間で読めてしまうところを2時間3時間かけなければ、
追い付いていけない。
さらに悲しいことに、他人より多くの時間を費やしたからといって、
理解度が増すというわけでもないのだ(笑)

chapter7
"...my father were that good in his hart, don't you see?"
I didn't see; but I didn't say so.
ジョーの人の善さとピップの優しさがじーんとくる。

88 :吾輩は名無しである:2014/03/06(木) 07:25:54.34 .net
Chapter 1 から Chapter 19 まで --- The First Stage of Pip's Expectations
(これは、孤児である主人公 Pip が姉とその夫 Joe Gargery に育てられ、上流階級の
Miss Havisham とその養女である Estella の住む屋敷に、彼女らの遊び相手としてその屋敷に
通い、そののち Joe の徒弟として年季奉公し、匿名の篤志家の財産を引き継ぐことになり、
財産を引き継ぐにふさわしい gentleman としての教育を受けるため、ロンドンに向けて旅立つところ
までを描いている。)

Chapter 20 からは、"The Second Stage of Pip's Expectations" ということになっていて、
舞台はがらりとロンドンに移る。周りの光景も人間関係も、そこで話される英語も、第一部(The First Stage)
とはまるで違うような気がする。今はまだ Chapter 21 を読み始めたところなので、これからどうなるのかは、
まだ僕はよく知らない。(ただし、映画だけは見たことがある。)

Chapter 21 で、僕にとって意外なことが書いてある。当時(たぶん19世紀半ば)のロンドンでは、
握手をするという風習がなかったらしい。(本当に握手の風習がなかったのかどうかは、あとで確かめる
必要があるけど。)Pip は故郷でいつもやってた通り、知り合ったばかりの人と
握手をしようとすると、相手のロンドン人は怪訝な顔をする。

I put out my hand, and Mr. Wemmick at first looked at it as if he thought
I wanted something. Then he looked at me, and said, correcting himself,―
"To be sure! Yes. You're in the habit of shaking hands?"
I was rather confused, thinking it must be out of the London fashion, but said yes.
"I have got so out of it!" said Mr. Wemmick,―"except at last. Very glad, I'm sure,
to make your acquaintance. Good day!"

http://www.gutenberg.org/files/1400/1400-h/1400-h.htm

89 :吾輩は名無しである:2014/03/06(木) 07:30:45.61 .net
ロンドンを舞台にした Chapter 20 では、s や z の発音をすべて th に変えてしまう言語障害
の人が出てきて、まくしたてる。

"Mithter Jaggerth! Half a moment! My hown cuthen'th gone to Mithter
Wemmick at thith prethent minute, to hoffer him hany termth.
Mithter Jaggerth! Half a quarter of a moment! If you'd have the
condethenthun to be bought off from the t'other thide―at hany
thuperior prithe!―money no object!―Mithter Jaggerth―Mithter―!"

http://www.gutenberg.org/files/1400/1400-h/1400-h.htm

90 :吾輩は名無しである:2014/03/06(木) 20:03:00.42 .net
辞書を引きながら丁寧に読むのが面倒なので、辞書なしで読むときも多い。あまり面白くないところも
たくさんあると感じる。よくわからないところも長く続く。でも気にせずにどんどん読み進めている。
すると、そのうちまたよく理解でき、面白いと感じる箇所にぶつかる。

Chapter 29 の次のような
一節を読んで、僕は何度も笑ってしまった。裕福な Miss Havisham は(そしておそらくは Pip
に遺産を与える見込みだと言い出し、ロンドンに送り出したのもおそらくこの人だと思うが)、
久しぶりに自分の屋敷に Pip と Estella を呼びつけ、美しく成長した Estella を
まばゆく感じている Pip に対し、暗示をかけるかのように次のように言う。その Miss Havisham
のあまりにもいびつな精神は、病的ではあるけど、実はあらゆる人間に潜む病気なので、
僕は笑ってしまうのだ。

She drew an arm round my neck, and drew my head close down to hers as she sat in the chair.
"Love her, love her, love her! How does she use you?"
Before I could answer (if I could have answered so difficult a question at all) she repeated,
"Love her, love her, love her! If she favors you, love her. If she wounds you, love her. If she
tears your heart to pieces,―and as it gets older and stronger it will tear deeper,―love her,
love her, love her!"
Never had I seen such passionate eagerness as was joined to her utterance of these words.
I could feel the muscles of the thin arm round my neck swell with the vehemence that possessed her.
"Hear me, Pip! I adopted her, to be loved. I bred her and educated her, to be loved. I developed
her into what she is, that she might be loved. Love her!"

http://www.gutenberg.org/files/1400/1400-h/1400-h.htm

91 :胃酸:2014/03/07(金) 00:02:13.54 .net
chapter8
パンブルチュックがお屋敷に入れてもらえないところが愉快。
ディケンズは嫌なヤツをちょいちょいイジル。

"Oh!" she said. "Did you wish to see Miss Havisham?"
"If Miss Havisham wished to see me," returned Mr. Pumblechook, discomfited.
"Ah!" said the girl; "but you see she don't."

エステラはまさに遠くで輝いてる星。
暗闇に浮かぶ美しくも冷たい光。

92 :胃酸:2014/03/07(金) 00:57:38.06 .net
chapter9
ジョーとピップ、ミセス・ジョーとパンブルチュックという取り合わせ。
鍛冶場でのジョーの説諭が胸に沁みる。
嘘はいかんよ、嘘は。

"There's one thing you may be sure of, Pip," said Joe,
after some rumination, "namely, that lies is lies.
Howsever they come, they didn't ought to come,
and they come from the father of lies,
and work round to the same...."

93 :吾輩は名無しである:2014/03/07(金) 05:48:59.61 .net
>>91
>>"Ah!" said the girl; "but you see 【she don't】."

Estella は、たぶん労働者階級に生まれたのだろうけど、おそらくは幼いときに Miss Havisham
に養女として迎えられたのだから、上流階級(あるいは中上流階級)にふさわしい言葉の教育も
徹底的に受けているはずだ。それなのにこの "she don't" と言っているところが、実に意外だ。
養女として迎えられて間もないときだったのか?

94 :吾輩は名無しである:2014/03/07(金) 08:50:26.12 .net
>>92
>>lies is lies

--- これも方言。標準英語では lies are lies。

>>Howsever they come, they didn't ought to come

--- 方言。標準英語では、さしずめ次のようになろうか。
Whatever they come from, they oughtn't (または shouldn't) have come.

95 :吾輩は名無しである:2014/03/07(金) 10:59:59.35 .net
僕の英語力は、まだまだ高が知れてるので、辞書をろくに引きもせずに読んでると、途端に
わからなくなる。よくわかるとき、とても面白いところもあるけど、わからなくて面白くなくなることも
多い。でも、やっとまた、すごく面白いところにたどり着いた。

フランスから帰ってきた美しき Estella と待ち合わせて、Pip と話をしている場面。Estella は
実は、赤ん坊のときから Miss Havisham の養女として育ち、その家に近づく様々な奇妙な
人々の、上品さを装った悪徳を嫌というほど見せつけられてきた。Estella は、養母
Miss Havisham を "that imposter of a woman" (あの詐欺師女)とさえ呼ぶ。

"It is not easy for even you." said Estella, "to know what satisfaction
it gives me to see those people thwarted, or what an enjoyable sense
of the ridiculous I have when they are made ridiculous. For you were
not brought up in that strange house from a mere baby. I was. You had
not your little wits sharpened by their intriguing against you,
suppressed and defenceless, under the mask of sympathy and pity and
what not that is soft and soothing. I had. You did not gradually open
your round childish eyes wider and wider to the discovery of
【that impostor of a woman】 who calculates her stores of peace of mind
for when she wakes up in the night. I did."

("Great Expectations," Chapter 33, Charles Dickens, 1861)
http://www.gutenberg.org/files/1400/1400-h/1400-h.htm

96 :吾輩は名無しである:2014/03/07(金) 20:36:35.35 .net
一見、楽しそうな物語ばかり書いて人を喜ばしてきたスーパースター的な流行作家であった
Dickens だけど、その素顔については、YouTube 上にある45分の Dickens ドキュメンタリー
の中で見事に描き出されている。

Dickens が12歳のとき、父親が借金を抱えたために牢獄に入れられ、母親やきょうだいたちも
みんなその牢獄に入って父親と共に暮らした。でも Dickens だけは重要な稼ぎ手として、
靴墨工場で働き続けた。父親がやっと借金を返せたので出獄できることになったので、
「息子を工場から呼び戻そう」と言ったとき、母親は「お金が必要なんだから、あの子には工場
で働き続けてもらいましょ」と言った。

日本の工場とは違い、イギリスの当時の工場での労働条件は過酷だったし、middle-class の
家庭に育った Dickens が12歳のときに家族から離れて工場で単身で働き、寝泊りもすべて
working-class である、工場の同僚たちと共有せねばならなかったということは、日本の
事情しか知らない我々が簡単に想像することはできない。

そういう体験の中で彼は、人間の恐ろしい面を嫌というほど見せつけられたに違いない。
この輪読会で読んでいる "Great Expectations"(大いなる遺産)は、Dickens が
49歳のころに書いたものだ。当時の平均寿命は短かったろうし、さらには彼は58歳で
死んでいるので、49歳と言えば晩年に近い。

(続く)

97 :吾輩は名無しである:2014/03/07(金) 20:46:19.88 .net
(続き)

すでに 13本くらいの長編を書き終えたあとの円熟しきった彼が、晩年近くに書いたこの作品は、
かなり完成度が高いのだろうと思う。(文学に通暁しているわけではないので、僕には
よくわからないけど。)

そのせいかどうかわからないが、この作品は決して悲惨な痛切な書き方をしていないのに、
人間の最も恐ろしい醜さを、嫌味にならない程度に見事に描いているように思う。

Chapter XXXVIII (38) では、フランスで磨きをかけて帰ってきた、まばゆいばかりに美しい
Estella が、Pip の目の前で Miss Havisham と、穏やかな言葉を使ってではあるが、
激しく対立する。

その穏やかで静かな筆致で描いた悲惨さ、恐ろしさ、醜さに、僕は笑いを禁じ得ない。
Estella が別の章の中で笑いに笑ったときと同じように、僕も笑わないではいられない。
そして、Dickens 自身も、読者にここで笑ってもらいたいんだろうと思う。
Dickens は、単なる娯楽作家では断じてない。人間の恐ろしさをとことんまで凝視した
作品を書いた作家なのだ。

98 :吾輩は名無しである:2014/03/08(土) 16:24:00.49 .net
ストーリーが意外な展開を見せているときは、なるべくそのネタを明かさないように努力するけど、
もしどうしても細かい部分さえストーリーを前もって知りたくはないという人は、なるべくこのような
スレは読まない方がいいと思う。

Chapter 20 から Chapter 39 は、第二部(The Second Stage of Pip's Expectations)だ。
その最終章である Chapter 39 では、Pip に多額の金を投資している人が誰だったかが
明かされる。ちょっと意外だった。

というか、映画版を見てたので、本当は筋を知ってたはずなのに、
ヒアリングの力が十分ではないためか、映画版でのその部分が僕は聴き取れていなかったらしい。
映画版でろくに聞き取れていないだけでなく、ゆっくりと原書を読んでても、やっぱりろくにわからない
ままでどんどんページをめくっているときもある。実に情けない話だが、僕の英語力はこの程度でしかない。

Chapter 38 では、Estella が好きでもない男から目を掛けられている。Pip が嫉妬した
そぶりを見せると、「じゃあ、あなたは私から騙されて魅力の虜にされたいの?」と言う。
Estella は、Pip だけは例外だが、他の男すべてを騙して虜にしてきたのだ、と言う。

"There is no doubt you do," said I, something hurriedly, "for I have seen you give him looks and smiles this very night, such as you never give to―me."
"Do you want me then," said Estella, turning suddenly with a fixed and serious, if not angry, look, "to deceive and entrap you?"
"Do you deceive and entrap him, Estella?"
"Yes, and many others,―all of them but you."

("Great Expectations," Charles Dickens, Chapter 38, 1861)

99 :胃酸:2014/03/09(日) 00:29:36.68 .net
chapter10
どんなに田舎でもパブだけは絶対にある。
Three Jolly Bargemen。
ここで三人が飲むのはラム。大英帝国なのだ。
と、おおおおっ、あのヤスリ!

...in my sleep I saw the file coming at me out of a door,
without seeing who held it, and I screamed myself awake.

うなされてます(笑)

100 :胃酸:2014/03/09(日) 01:35:49.85 .net
chapter11
Satis Houseは完全に化け物屋敷。
僕にはウエディング・ケーキが一番強烈だった。
章終わりでエステラはピップにキスさせる・・・。

101 :吾輩は名無しである:2014/03/09(日) 06:25:32.36 .net
【Estella への Pip の恋の告白】

Chapter XLIV (44) では、Pip が Miss Havisham の前で Estella に対して、
初めて会った時からずっと胸の中で燃えてきた切ない恋心をついに告白する。なぜ今まで
告白しなかったかという理由も伝える。それを聞く Miss Havisham や Estella の
反応も面白い。当然のことながら、Dickens 自身の体験がかなりこの中にも含まれている
はずだ。この第44章は、あまりにも僕にとって面白いので、アンダーラインだらけになってしまった。

102 :胃酸:2014/03/09(日) 10:44:30.73 .net
chapter12
ミセス・ジョーの悔しがりかたが酷い。
罵詈雑言としての「黒人女奴隷」。
ここでもジョーはナイス。
Joe offered no answer, poor fellow,
but stood feeling his whisker and looking dejectedly at me,
as if he thought it really might have been a better speculation.

103 :胃酸:2014/03/09(日) 11:36:26.28 .net
chapter13
昔も今も人間の根本の価値というのは変わらない。
正直、寛容、センス・オブ・ヒューモア。
これは社会的地位や学歴や財力とは別のことだ。
人間として優れたジョーという人を深いところで裏切るピップ。
現状を受け入れ難いものにさせる欲望・・・。
大人になってきたのだ。

...I was truly wretched, and had a strong conviction on me
that I should never like Joe's trade.
I had liked it once, but once was not now.

104 :胃酸:2014/03/09(日) 13:49:56.96 .net
chapter14
“a strong sense of the virtue of industry”
真面目に精一杯働くこと。
贅沢するためでも威張るためでも復讐のためでもなく、
生きるに値する生を支え、実践し、それを証しするために。
おのずと自分の限界、至らなさも見えてくる。
生活するには知恵や我慢や喜びが必要だ。
仕事の厳しさは人に謙虚であることを教え、ときに自信を与える。
一国の盛時にはやはり説得的なテーゼがある。

105 :マグナ ◆vI4NRkhGyA :2014/03/10(月) 01:10:11.67 .net
ちょっとぬるぽだな。もう少し細かい一文を上げて、マニアックに論じる辺りに行きたいもんだ。

106 :吾輩は名無しである:2014/03/10(月) 05:49:12.39 .net
確かにマグナさんの言うようにやりたいんだけど、それについて僕には疑問が二つあるので、
素直にそのような方向に進めない。

(1) 一つの文を追求しようとすると、どうしても作品全体の細かい内容にも触れないといけないので、
先を読んでいない人にもプロットを明かしてしまうという危険を冒すことにもなる。それでもいいのなら、
どんどんやっていきたいと思う。

(2) 一つの文を追求するにあたっては、文学的な意味合い(プロット的な意味合い、登場人物
たちの心理的な問題など)についてだけでなく、たとえば方言とか文法(そして文法の破格)など
についても突っ込んでよいのだろうか?

107 :吾輩は名無しである:2014/03/10(月) 05:55:20.02 .net
"Great Expectations" の文章について、文学的な側面のみならず、
英語学的な側面(方言・文法・表現・語法)からも論じていいのかどうか、ちょっと不安であるが、
気にしないでそれについても書いてみたい。ここでは書かない方がいいかもしれないと思って
遠慮していたため、English 版にて書いたことを、ここにも書く。
*****************

【sunset-gun】 ("Great Expectations" の中の、Pip の少年時代の話の中で出てきた言葉)

まったく知らなかったが、昔のイギリスでは、日没のときに銃を撃つという習慣があったらしい。

sunset-gun n. a gun fired at sunset.

1840 H. D. Thoreau Jrnl. 16 June (1981) I. 129
To hear..the bittern begin to boom from his concealed fort―like a 【sunset gun】!

1861 Dickens Great Expectations I. ii. 25
There was a conwict off last night..after 【sunset-gun】.

(OED Online)

このような【sunset-gun】という言葉は、Charles Dickens の本を読んでいて知った。

"There was a conwict off last night," said Joe, aloud,
"after 【sunset-gun】. And they fired warning of him. And now it appears
they're firing warning of another."

("Great Expectations" by Charles Dickens, 1861)
http://www.gutenberg.org/files/1400/1400-h/1400-h.htm

108 :吾輩は名無しである:2014/03/10(月) 05:56:44.58 .net
【There was Convict】(本来なら countable noun である Convict が無冠詞)(この記事も、別スレから転載)

Charles Dickens の "Great Expectations" に出てくる一節で、文法的に面白いところが
あったので、ここで覚え書きとしてメモしておこう。

. . . from head to foot 【there was Convict】 in the very grain of the man.

["Great Expectations," Charles Dickens, Chapter XL (40), 1861]

この一節の背後にある文脈を説明すると、ロンドンにて gentleman になるための修業を
している主人公の Pip のところに、少年時代に出会った例の convict である男が
訪ねてきたときのこと。その男が警察につかまってしまうと死刑になるので、Pip は
一生懸命に男に仮装させようとするのだが、どうやっても男は例の囚人にしか見えない。
そこでこの一節では、
「頭からつま先に至るまで、男の筋そのものに囚人の雰囲気が染みついているのだ」
というような意味のことが書かれている。この「囚人の雰囲気」とでも訳せそうな言葉として
Convict という無冠詞の名詞が使われているのだ。

このような無冠詞の Convict は、無冠詞の材料名詞とよく似た使われ方をしている、という
ような説明を文法家はしているはずだ。たとえば
The desk is made of wood.
という場合の wood とよく似た使い方だ。このような "There was Convict. . . ." という
言い回しによく似た例として、他にはたとえば、次のようなものがある。

There was cat all over in the room.
(部屋じゅう、猫の気配がたちこめていた)

確かそのような無冠詞の cat を使った例文が、Mark Petersen の書いた岩波文庫の
「日本人の英語」という本の中にあったと思う。

109 :吾輩は名無しである:2014/03/10(月) 05:57:55.63 .net
【What wind blows you here?】(どういう風の吹き回しで、ここに来たの?)(この記事も、別スレからの転載)

びっくりした。日本語の「どういう風の吹き回し?」とそっくりな言い回しが英文小説の中に
出てきた。この英語表現こそが起源であり、日本語の言い回しはそれを真似てできたのだろうけど、
もしそうだとしたら、実にうまい日本語訳だし、日本人はそれを翻訳後の表現だと意識しないで
日本語の中に完全に定着してしまっているではないか。全20巻の小学館「日本語大辞典」には
語源についてどう書いてるのか僕は知らないけど。

【"And what wind," said Miss Havisham, "blows you here, Pip?"】

["Great Expectations," Charles Dickens, Chapter XLIV (44)の冒頭付近, 1861]

110 :吾輩は名無しである:2014/03/10(月) 06:52:21.37 .net
原文ではなく邦訳だけを読んでいる人でもいいので、第何章のどこの部分がどのように面白く、
どのような問題を孕んでいるかという問題提起をしてくれたらありがたい。その箇所の原文を
じっくりと検討してみたい。

僕は今さっき、Chapter XLVIII (48) を読み終えたばかりなんだけど、この章も面白くて、
アンダーラインばかりになった。ここではミステリー小説めいたプロットになっていて、
Estella の出生の秘密が明かされる。

ミステリーっぽく、登場人物たちが毒々しくて、わくわくしながら読めるものとしては、
"Bleak House"(荒涼館)があるけど、残念ながら僕はこの作品の原文が難しくて、
一応は最後まで通読したけど、あんまり味わえなかった。そのうちもう一度、今度は
辞書を丁寧に引きながら時間をかけて読みたい。ただこの作品の映画版は、
どきどきしながら見た。例の弁護士がド憎たらしくて「早く死ねよ、カス」と僕は
ずっと念じていたんだけど、ちゃんと死んでくれたのでよかった。

もちろん、"Bleak House" は単なるミステリー小説めいたものではなく、
実はもっともっと深い内容のものだし、僕がこれを読み始めたのは、その
深さを読み取りたいからこそだったのだけど、なんせあの作品はかなり文体が
凝っているそうで、実に難しいと思う。ただ、邦訳を読んだ人たちはみな、
「別に読みにくくはなかった」と言っている。原文を読んだ人たちは、
「確かに文体が凝っているので難しいだろう」と言っている。

111 :胃酸:2014/03/10(月) 20:12:12.66 .net
chapter15
人を使うのは難しい。
とりわけオーリックのように性悪な人間を使うとなると猶更。
それでも捌いて凌いでいくのがジョーの偉いところだ。

"On the Rampage, Pip, and off the Rampage, Pip―such is Life!"

かっこいー!
そもそもあのような奥さんとも暮らしていけてるのだから、
この人の度量の広さたるや、正に広大無辺。

112 :胃酸:2014/03/10(月) 20:30:42.80 .net
chapter16
ミセス・ジョーはあまりにも惨めになってしまって、
それほどザマーミロ的な気持ちにはなれない。
特に加害者のオーリックへのへつらい振りがなんとも哀れ。
対照的にビディの若さと健全さ、賢さが光っている。
彼女のおかげですっきりしたという感じ。

113 :胃酸:2014/03/10(月) 21:24:08.79 .net
chapter17
ヒーラーとしてのビディ。

She put her hand, which was a comfortable hand
though roughened by work,
upon my hands, one after another,
and gently took them out of my hair.

ホレれてまうやろ!
しかしオーリックが狙ってるというのがムカつく。

114 :胃酸:2014/03/10(月) 22:16:56.46 .net
chapter18
ジャガーズ登場。
ピップにジェントルマンへの道が開かれる。
しかしジョーは欲が無さすぎ。僕が代わりに補償金とかもらってあげたいよ(笑)
手で示される優しさ、偉さ。

O dear good faithful tender Joe,
I feel the loving tremble of your hand upon my arm,
as solemnly this day as if it had been the rustle of an angel's wing!

115 :吾輩は名無しである:2014/03/11(火) 06:50:42.13 .net
>>105
結局、マグナも、そこらへんの一行レスの DQN どもと同じで、
他人が真剣に取り組んでいることにケチをつけるだけで、
自分では何もしないんだな。

116 :吾輩は名無しである:2014/03/11(火) 07:17:51.46 .net
暇だなあ

117 :胃酸:2014/03/11(火) 23:37:18.71 .net
chapter19
“It's a--it's a bad side of human nature.”
人間もお金もいい面と悪い面がある。
仕立屋の小僧が面白い。

118 :胃酸:2014/03/12(水) 18:51:51.78 .net
vol.2のchapter1、2−1
ピップ、ロンドンに到着。
I think I might have had some faint doubts
whether it was not rather ugly, crooked, narrow, and dirty.
大きいだけでなく禍々しい首都。
ジャガーズはこの巨大な見世物小屋の座長だ。

119 :胃酸:2014/03/12(水) 19:27:27.26 .net
2−2
ウェミックさんの都会的近代的資本主義的クールさ。
“…there's not much bad blood about.
They'll do it, if there's anything to be got by it.”

ポケット・ジュニアはミス・ハヴィシャムのところで取っ組み合った
蒼白い若紳士だった。
“And you,” said I, “are the pale young gentleman!”

120 :胃酸:2014/03/12(水) 22:12:09.91 .net
2−3
醸造所のお大尽というのは日本ならさしずめ造り酒屋のボンかな。
成り立ちは全く違うけど。
それにしても上手いこと言う。

“…but it is indisputable that while you cannot possibly be
genteel and bake, you may be as genteel as never was and brew.”

ハーバートのお母さんは子沢山で本の虫。

121 :胃酸:2014/03/13(木) 00:41:51.73 .net
2−4
ハーバートのお母さん=ミセス・ポケットが熱心に読んでいたのは、
爵位=タイトルズについての本だった(笑)
こういうキツいシャレがぴしゃっと利いてる。
まったく使い物にならない、中身のない女主人。
ソフィーがかわいそう。
会社でも学校でも家庭でも、上が愚かだとマトモな人はみじめだ。

122 :胃酸:2014/03/13(木) 01:26:48.38 .net
2−5
ウェミックのベテランな感じが良い。
このプロがジャガーズをプロ中のプロとして尊敬している。
ぽろっと言ってしまうオーストラリア。
“Deep,”said Wemmick,“as Australia.”
悪人のcasts。

123 :吾輩は名無しである:2014/03/13(木) 11:04:22.28 .net
この小説を、一応は最後まで読んだ。途中で、かなり退屈だと感じた部分も多かった。
でもそれは、単に僕の英語力や(語学力とは関係のない)読解力の不足によって、
実は面白いものが僕にとっては面白くなく感じられたに過ぎないのだろうと思う。
面白い部分もたくさんあった。

Charles Dickens の作品としては、僕はまだ David Copperfield, Bleak House,
Great Expectations, Oliver Twist しか読んでいない。
僕は最近、Thomas Hardy の主要な長編小説を6本、続けて読んだのだけど、
それと比べると、Charles Dickens は、poetical な部分が弱い。Hardy の方が
はるかに poetical だと思う。ただ、Dickens の方がはるかに plot が面白いと
思う。

ここら辺が、Dickens を娯楽小説家だと感じる人がいるゆえんだろうか。
娯楽小説(大衆小説)の本質は、プロットの面白さにあるだろう。プロットが面白くなければ、
つまり、次から次へと珍しい(あっと驚く)出来事が矢継ぎ早に出てこなければ、
大衆小説としては失敗なのだろう。その点で、Dickens は素晴らしいのだろう。
そして、物語がゆっくりとしか展開しないけど、文章そのものに格調の高さを感じさせる
Thomas Hardy は、大衆小説にはなりにくいのかな?

124 :胃酸:2014/03/13(木) 19:54:02.41 .net
2−6
ウェミックの都市近在ホワイトカラーとしての身の処し方が好きだ。
年老いた父親への温かい眼差しと職業人としてベストを尽くす姿勢。
公私のけじめ、切り替えは、それぞれを大切にするということだ。
By degrees, Wemmick got dryer and harder as we went along,
and his mouth tightened into a post-office again.
ちょっと変わり者かもしれないが、優しく誠実な人である。

125 :胃酸:2014/03/13(木) 20:48:44.82 .net
2−7
優しいとか意地悪とかいった属人的な評言を超えているのがジャガーズ。
彼はdeepなのだ。
“Molly,”said Mr. Jaggers, not looking at her,
but obstinately looking at the opposite side of the room,
“let them see both your wrists. Show them. Come!”
ドラムルへの興味も同様。

126 :マグナ ◆vI4NRkhGyA :2014/03/13(木) 20:53:10.25 .net
ある程度どこからどこまでと指定してくれるならいいんだがこう言う風に絶えず流れていくとなあ。

127 :マグナ ◆vI4NRkhGyA :2014/03/13(木) 21:05:24.20 .net
>>123
時代が微妙に違うんじゃないか。特にハーディの場合、メレディスの洗礼を受けてるから。
メレディスを経て、イギリス小説は複雑かつ難解な風に変わっていく。

128 :胃酸:2014/03/13(木) 22:10:24.70 .net
2−7
...life is made of ever so many partings welded together,
as I may say, and one man's a blacksmith, and one's a whitesmith,
and one's a goldsmith, and one's a coppersmith.
Diwisions among such must come, and must be met as they come.
If there's been any fault at all to-day, it's mine....

129 :胃酸:2014/03/13(木) 23:42:21.05 .net
Yes, it is all my fault.
Joe’s moving utterance quoted in >128 should be from Vol.2 Chapter8.
Correction in chapter numbering: >128 2-7→>128 2-8

2−9
かつて2ポンドを渡して去っていった男と馬車で乗り合わせる。
男は囚人である。
“Good by, Handel!”Herbert called out as we started.
I thought what a blessed fortune it was,
that he had found another name for me than Pip.

130 :胃酸:2014/03/14(金) 01:32:07.76 .net
2−10
Miss Havisham had seen him as soon as I,
and was (like everybody else) afraid of him.
She made a strong attempt to compose herself,
and stammered that he was as punctual as ever.
ミス・ハヴィシャムのstammerに比べれば、
ピップのエステラ関連のそれは純でかわいいものだ。
もちろんその是非はまた別のことだけれども・・・。

131 :吾輩は名無しである:2014/03/14(金) 08:42:41.02 .net
>>127
George Meredith については、まるで知らなかったんだけど、
そんなに影響力のある作家だったんだね。

132 :吾輩は名無しである:2014/03/14(金) 12:55:51.45 .net
テスト

133 :胃酸:2014/03/14(金) 23:43:50.82 .net
2−11
仕立屋の小僧、再登場。
精彩を放つとはこういうことだ。
He wore the blue bag in the manner of my great-coat,
and was strutting along the pavement towards me
on the opposite side of the street, attended by a company
of delighted young friends to whom he from time to time exclaimed,
with a wave of his hand, “Don't know yah!”

134 :マグナ ◆vI4NRkhGyA :2014/03/14(金) 23:59:16.21 .net
>>131
所謂"Author's Author"って感じかねえ。先日翻訳出版されたメイ・シンクレアの短篇でもメレディス譲りの文鎮を大事に持ってる偏屈な著作家でてきたりしてる。
書き手には絶大な影響はあったようだ。あんな文章通して読めるかという気になるけどなあ。

135 :胃酸:2014/03/15(土) 00:46:58.28 .net
2−12
いっぺんでいいからこんなハムレット観劇をしてみたい。
木戸銭を払った以上は楽しみ倒さずにはおかないガラの悪い客として。
...on the question whether 'twas nobler in the mind to suffer,
some roared yes, and some no, and some inclining to both opinions said
“Toss up for it;”and quite a Debating Society arose.
ウォプスルさんは役者として名前が変わっている。
なんだかんだで午前二時まで管を巻く。

136 :胃酸:2014/03/15(土) 01:20:10.85 .net
2−13
死の接吻ならぬウェミックの握手。
ニューゲートを見せてからエステラをもってくる(馬車でご登場)。
“the contrast between the jail and her”
そしてまたもやよぎる“the nameless shadow”。

137 :胃酸:2014/03/15(土) 09:38:05.51 .net
2−14
エステラはリッチモンドで暮らすことに。
お茶をしているインがエンターテイメント(笑)
ピップにチクリの件を話すエステラ。
ポケットさんのところの赤ちゃんは大丈夫か?
...And more needles were missing than it could be regarded
as quite wholesome for a patient of such tender years
either to apply externally or to take as a tonic.

138 :胃酸:2014/03/15(土) 10:28:05.18 .net
2−15
借金はちゃんとまとめて管理しよう。
現実はキビシイ。
“So I would, Handel, only they are staring me out of countenance.”

姉の死の知らせが届く。

139 :胃酸:2014/03/15(土) 11:28:35.46 .net
2−16
姉の葬式。
パンブルチュックの厭らしい振る舞い。
黙々と立ち働くビディ。
彼女を不当に扱うピップ。
This really is a very bad side of human nature!
それでもベッドサイドからのビディの善き眼と健やかな耳は、
今際の際のミセス・ジョーの愛らしい仕草と言葉を記録してあげている。

140 :胃酸:2014/03/15(土) 12:00:52.56 .net
2−17
ピップ、21歳になったがパトロンについては明かされず。
500ポンド、ゲット。
ピップはこの金をハーバート支援に回したいと考える。
ウェミックさんはここでもいいことを言う。
"Choose your bridge, Mr. Pip," returned Wemmick,
"and take a walk upon your bridge, and pitch your money into the Thames
over the centre arch of your bridge, and you know the end of it.
Serve a friend with it, and you may know the end of it too,
—but it's a less pleasant and profitable end."
橋尽くし。

141 :胃酸:2014/03/15(土) 12:56:15.05 .net
2−18
ウォールワース城は楽しい。
奇矯さも含め、ここでの暮らしの愉快さ、
穏やかさ、相互信頼(ミス・スキッフィンズへのお触り付き)、
そうした人間らしいものにあふれた日曜日のために働いているのだ。
爺さんはなかなかの人。
Curious to know how the old gentleman stood informed concerning
the reputation of Mr. Jaggers, I roared that name at him.
He threw me into the greatest confusion by laughing heartily
and replying in a very sprightly manner, “No, to be sure; you're right.”
And to this hour I have not the faintest notion what he meant,
or what joke he thought I had made.
ポカンとした馬鹿が幸せになれるほど世の中は甘くない。

ハーバートのための工作は大成功、無事クラリッカーズ・ハウス入社。

142 :胃酸:2014/03/15(土) 15:05:47.41 .net
2−19
エステラとピップはSatis Houseへ。
ミス・ハヴィシャムに反抗するエステラ。
…“mother by adoption, I have said that I owe everything to you.
All I possess is freely yours. All that you have given me,
is at your command to have again. Beyond that, I have nothing.
And if you ask me to give you, what you never gave me,
my gratitude and duty cannot do impossibilities.”
もっともであるというより、やっぱり物凄く悲しい。

The Finches of the Groveでドラムルとエステラを巡る諍い。
バカバカしいのが紳士同盟だ。
The Tale of Genji、じゃなくてTales of the Genii。

143 :胃酸:2014/03/15(土) 16:10:38.60 .net
2−20
ピップ23歳。
陰鬱な雨風の夜に、ついにあの方の登場。
ピップのほうは彼の顔などちっとも覚えてはいなかった。
がしかし、記憶は甦るのだ。
Even yet I could not recall a single feature, but I knew him!
If the wind and the rain had driven away the intervening years,
had scattered all the intervening objects, had swept us to the churchyard
where we first stood face to face on such different levels,
I could not have known my convict more distinctly than I knew him now
as he sat in the chair before the fire.
それはともかく、お金を燃やすのはやめてもらいたい。
もったいない。
執念というか妄執の産物という意味でピップとエステラは同型。
海、船、あらし。

144 :胃酸:2014/03/16(日) 00:59:51.13 .net
Vol.3 chapter1、3−1
ニュー・サウス・ウェールズから遠路遥々やってきたのは、
“プロヴィス”エーベル・マグウィッチ。
“犬食い”は相変わらずで、馬子にも衣装とはならない。
彼こそbenefactor。
ジャガーズにミス・ハヴィシャムは全く関係のないことを確認。

145 :胃酸:2014/03/16(日) 01:52:43.32 .net
3−2
ピップはマグウィッチをどうするか、ハーバートと相談。
遺産相続は放棄するとしても、彼の命は守らなければということになる。
ピップは兵役も考えるが親友は自分のいる会社への就職も選択肢だ、と。
ここでちょっと恩着せがましい内心をチラ見せするのは微妙な所作だ。
Poor fellow! He little suspected with whose money.
そりゃそうだろうが、ハーバートに落ち度はないと思う。

146 :胃酸:2014/03/16(日) 02:26:40.07 .net
3−3
マグウィッチの因縁話。
“Low”であることの苛烈さ。
これは最近の日本でもじわじわと理解されやすいものになっている。
つまりはNo chanceということ。
コンピソンみたいなブラック企業家に使い捨てされるわけだ。
悲しかな、“戦後”という時空はゲームオーヴァーになり、
久しぶりに?Class societyという黒雲が日本全土を覆っている・・・。
それはともかく、ここでの話の筋としてはハーバート・メモが重要だ。
“Young Havisham's name was Arthur. Compeyson is the man
who professed to be Miss Havisham's lover.”

147 :胃酸:2014/03/17(月) 00:02:01.92 .net
3−4
Satis House への途中立ち寄ったブルーボアでドラムルと鉢合わせ。
難題を抱え天気も冴えない中、最悪の人間と同じ空気を吸う不快感。
読むふりをする故郷の古新聞は、そんなピップの有り様であり心模様だ。
Pretending to read a smeary newspaper long out of date,
which had nothing half so legible in its local news, as the foreign matter
of coffee, pickles, fish sauces, gravy, melted butter, and wine
with which it was sprinkled all over, as if it had taken the measles
in a highly irregular form...

148 :胃酸:2014/03/17(月) 18:38:57.05 .net
3−5
勝手にパトロンだと思い込んでいたのはピップの責任。
ミス・ハヴィシャムはたしかに悪い人だけど仕方ない。
エステラの心と体のチグハグさ、言表に対する不信、不感、不全感が、
ピップの思いが熱いだけにより浮き彫りになっている。
When you say you love me, I know what you mean, as a form of words;
but nothing more. You address nothing in my breast,
you touch nothing there.

ウェミックから“帰宅するな!”のメッセージ。

149 :胃酸:2014/03/17(月) 19:45:51.13 .net
3−6
ピップの不安な一夜。
臭いと虫と音と壁と新聞と自殺者。
ウェミックの機転とハーバートの協力でマグウィッチは転居。
コンピソンの魔の手。
ピップはウォールワースで終日おとなしくしている。
すっかり暗くなってから辞去。
爺さんのglances、こういうのが非常に良い。

150 :胃酸:2014/03/17(月) 21:59:15.24 .net
3−7
ハーバートのクレラがバスケットを持って可憐に登場、
なのだが父親がどーしょうもなく悪い。ラムを飲んでいる。
クレラの母親はすでにない。
ミセス・ウィンプルが母親代わりのようにしてくれてはいるが、
どうもこの小説には真正でまともな母親というのがいない。
マグウィッチはウェミックの描いた絵に納得している。
ハーバートの思い付きでボートを用意することに。
ピップは時にはハーバートを伴ったりしてボートを漕ぐ。

151 :胃酸:2014/03/17(月) 23:56:41.22 .net
3−8
ウォプスル出演のシェイクスピア崩しのような妙な舞台をみる。
公演終了後、ウォプスルが待ち構えていてドキリとすることを言う。
ピップの後ろにあの時の脱獄囚のうちの一人がいた、と。
どっちの方だった?と、ピップは冷静に、用心深くたずねる。
役者が客席に見たのはやられていた方(マグウィッチじゃない方)。
とにかくコンピソンの黒い影はすぐ近くまで迫っている。
ピップはハーバートと話し合い、ウェミックに手紙で指示を仰ぐ。

152 :胃酸:2014/03/18(火) 18:38:03.22 .net
3−9
エステラはモリーの子だった!
指の動き。
And a certain action of her fingers as she spoke
arrested my attention.
これをご都合主義と言う勿れ。
伏線がビシビシ回収されていくのは爽快である。

153 :胃酸:2014/03/18(火) 19:19:52.69 .net
3−10
炎を上げるミス・ハヴィシャム。
...I saw her running at me, shrieking, with a whirl of fire
blazing all about her, and soaring at least as many feet
above her head as she was high.
彼女は一体なにをしたのか・・・。

154 :胃酸:2014/03/18(火) 20:16:07.38 .net
3−11
手、腕、指・・・、上手い。
甲斐甲斐しく看護してくれるハーバートから、
ピップはマグウィッチの因縁話パート2を聞く。
And the man we have in hiding down the river,
is Estella's Father.

155 :胃酸:2014/03/18(火) 21:25:28.06 .net
3−12
はじめてジャガーズが感情らしきものを見せるのだが、
その見せ方とひっこめ方が良い。
やはりウェミックとのコンビネーションが良いのだ。
"Now look here my man," said Mr. Jaggers, advancing a step,
and pointing to the door.
“Get out of this office. I'll have no feelings here. Get out.”
“It serves you right,” said Wemmick, “Get out.”

156 :胃酸:2014/03/18(火) 23:31:00.52 .net
3−13
ウェミックの手紙はミッション・インポッシブル(笑)
謎の手紙はどう考えても怪しげなのだが、
そこはちゃんと状況もピップの心理状態も丁寧に処理されている。
久々にパンブルチュックの名を聞く。
相変わらずムカつかせてくれるクズ野郎だ。
だが世間の評判などというのはそんなものなのだ。
“It would turn a man's blood to white wine winegar to hear him tell of it, sir,”
said the landlord.

157 :胃酸:2014/03/19(水) 00:27:29.14 .net
3−14
ついに僕の大好きな仕立て屋の小僧がやってくれました!
といっても単に案内役で、主力はハーバートとスタートップなのだけれど。
...and told him that I was sorry ever to have had an ill opinion of him
(which made no impression on him at all).
善悪の彼岸というよりアナーキーな、ほとんど即物的な興味本位性。
見世物としての小説の楽しさと凄味。

158 :胃酸:2014/03/19(水) 18:51:06.94 .net
3−15
テムズ川。
Again among the tiers of shipping, in and out,
avoiding rusty chain-cables frayed hempen hawsers and bobbing buoys,
sinking for the moment floating broken baskets,
scattering floating chips of wood and shaving,
cleaving floating scum of coal, in and out,
under the figure-head of the John of Sunderland
making a speech to the winds (as is done by many Johns),
and the Betsy of Yarmouth with a firm formality of bosom
and her knobby eyes starting two inches out of her head,
in and out, hammers going in ship-builders' yards,
saws going at timber, clashing engines going at things unknown,
pumps going in leaky ships, capstans going, ships going out to sea,
and unintelligible sea-creatures roaring curses over the bulwarks
at respondent lightermen, in and out -- out at last upon the clearer river,
where the ships' boys might take their fenders in,
no longer fishing in troubled waters with them over the side,
and where the festooned sails might fly out to the wind.

マグウィッチは重傷を負ったうえ逮捕される。
コンピソンはおそらく“ジャック”にストッキングをとられるのだろう。

159 :胃酸:2014/03/19(水) 19:29:56.68 .net
3−16
クレラのところの親父さんの言われ方。
“Not to say an unfeeling thing,”said I,“he cannot do better than go.”
“I am afraid that must be admitted,”said Herbert...
対照的なのがウェミックのところの爺さん。
それにしてもミセス・ウェミックの堂々たるvioloncelloぶりはステキ。
イングランドのご馳走はなんといっても朝食(笑)

160 :胃酸:2014/03/19(水) 20:12:58.65 .net
3−17
マグウィッチ逝く。
死刑判決→毅然とこれを受け入れる。
容体悪化→泣き言は言わない。
臨終に際し娘の健在を告げられる→ピップの手へキスし穏やかに逝く。
臨終の場面は刑務所長の人情味ある計らいによって実現したもの。

161 :胃酸:2014/03/19(水) 21:00:59.31 .net
3−18
債務を抱えた上に病気で床を離れられないピップ。
この危機をジョーが来て救ってくれる。
今度はピップがジョーの手にキスをする。

故郷の消息は以下のごとし:
・ミス・ハヴィシャムはマシュー・ポケットにお金を遺贈して逝き、
・オーリックはパンブルチュックの店に押し入り監獄暮らし。

ジョーの短い置手紙。
ビディへの思い。声と手。
(and indeed I am as sorry, Biddy,
and have as much need of a hushing voice and a soothing hand)

162 :胃酸:2014/03/19(水) 22:11:43.25 .net
3−19
パンブルチュックがムカつくのは彼が言ってることが
まるっきりの出鱈目ばかりというわけでもないからだ。
特にby hand、これはその通りだ。

ジョーとビディの結婚についてピップは全く知らされていなかった。
これをどう考えたらいいのか、考えないほうがいいのか・・・。
いずれにしろ、結婚関係はピップにはいつも急な話なのだ。

163 :胃酸:2014/03/19(水) 23:09:56.28 .net
3−20
PIPはPIPに帰ってくる。
上から読んでも山本山、下から読んでも山本山(笑)
だがすべてが同じというわけではない。
エステラのthe friendly touch of the once insensible hand。

なぜここにいるのか、
知ったところでどうなるだろう。
むしろ知らないでいた方が断然いいこともある。
このさきどうなるのか、
だれにも本当のところは分からない。
みなそれぞれのexpectationsを心に抱いているにすぎないのだ。

A...I saw no shadow of another parting from her.
B...I saw the shadow of no parting from her.

164 :胃酸:2014/03/24(月) 19:33:20.36 .net
第一章
沼地の風景の描き方とピップの感覚ということにおいて、
lineをどのような比喩として考えるか。
自己の把握という点での茫漠感と読めるのかどうか、
暗示となるのかどうか。

165 :胃酸:2014/03/27(木) 00:54:34.09 .net
第二章
姉にby handで養育されたという事実。
ヴィクトリア朝のイングランドにあって、
親の後ろ盾がないこと、
“セルフ・ヘルプ”で成り上がっていくしかないという条件は、
人格的または倫理的な安定をあらかじめ喪失していることなのか。
お荷物であるという点から、すでに罪人であるという認識。
後の目標としての紳士というものの条件と内実は、
じつはひどく曖昧である。

166 :吾輩は名無しである:2014/05/09(金) 08:24:16.84 .net
http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/psycho/1393514224/8
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