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『白鯨』を一緒に読もう!

88 :吾輩は名無しである:2017/04/12(水) 17:58:48.15 ID:00apawRK.net
まず、wadという単語です。
これは一般的には「詰め物」という意味、動詞としては「綿を詰める」みたいな意味です。
ここではエイハブの義足になんか布切れでくるんだりして音を小さくしてくれ、という文脈です。
ただし、そもそもなぜcannon ballという言葉が使われているのでしょうか?
この文脈では、wadは綿ではありません。銃器の押さえです。
この時代の捕鯨船には大砲の砲丸を、guns(大砲)の間に積み上げられており、砲架(gun-carriages)の側面にsolid masses of wadsで止められています。

深夜に歩き回るエイハブの尖った義足のたてる不気味な音、これを和らげるために布切れのwad。
「wad me that fashion?」あんなふうにwadするのか?これは直訳しても意味がないんです。that fashionは彼らの視野にあるものですから。
そこにあるのはcannonballが積み重ねられ、wadによって固定されているさまです。
で、大砲の爆音/義足の騒音の対比があります。八木訳はこの「that」に忠実なわけです。
cannon-balls piled between the guns; shot-plugs suspended within easy reach from the beams; and , big as Dutch cheeses, braced to the cheeks of the gun-carriages.
これはWhite-jacketで使われているメルヴィルの描写です。cannon-ballsとwadの関係がわかるでしょう。
メルヴィルは小説間で似た言い回しの言葉を使いますが、特に捕鯨船の語彙などは通常や現代とは違う用法をたくさんしています。
だから、あるメルヴィル研究者はその著者の全作品を読んだものでなければ翻訳するべきではない、という信念を持っていました。

ここでは詰め物(アイハブの義足)と、砲弾の押さえという二重の含意があり、砲筒は義足になぞらえられています。
要するに言葉遊びすら含んでいるわけで、しかもメルヴィル特有の「あんなふうに」という訳しにくいが挟まっているわけです。
訳語が異なるのはある意味当たり前なところです。

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