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ありふれた職業で世界最強 第十三章

455 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で:2019/08/13(火) 23:09:43.46 .net
 息を呑む音。それは誰のものだったのか。頭に一発、心臓に一発。正確に撃ち込まれた弾丸は、清水の体を一瞬跳ねさせ、確実で覆しようのない死を与えた。

 乾いた銃声の余韻が響く中、誰も言葉を発せず、白煙を上げる銃を片手に黙って物言わぬ死体を見下ろすハジメを、唯々呆然と見つめた。静寂が辺りを支配し、誰もが動けない中、ポツリと言葉がこぼれ落ちた。

「……どうして?」

 それは愛子だった。呆然と、死出の旅に出た清水の亡骸を見つめながら、そんな疑問の声を出す。ハジメは、清水から視線を逸らして愛子を見た。
同時に、愛子もまたハジメに視線を向ける。その瞳には、怒りや悲しみ、疑惑に逃避、あらゆる感情が浮かんでは消え、また浮かんでは消えていく。

「敵だからな」

 そんな愛子の疑問に対するハジメの答えは実に簡潔だった。

「そんな! 清水君は……」
「改心したって? 悪いけど、それを信じられるほど俺はお人好しではないし、何より自分の眼が曇っているとも思わない」

 最後の質問をしたときの清水の目は、何より雄弁に清水が堕ちている≠アとを物語っていた。死の淵で、殺そうとした愛子になお心を向けられて、あるいは生き方が少しでも変わるのではないか、
かつて自分が堕ちそうになったとき、ユエの存在が自分を繋ぎ留めた様に……そう思ってハジメは清水に問うたのだ。
もしそうなら、清水を愛子に預けて首輪付きではあるがチャンスを与える事も考えていた。しかし、死に際の清水の目に、そんな兆しは微塵もなかった。

 その事は、愛子も感じていたはずだ。ただ、愛子は先生≠ナあり、決して諦めるわけにはいかなかった。諦められなかっただけなのだ。

「だからって殺す事なんて! 王宮で預かってもらって、一緒に日本に帰れば、もしかしたら……可能性はいくらだって!」
「……どんな理由を並べても、先生が納得しないことは分かっている。俺は、先生の大事な生徒を殺したんだ。俺を、どうしたいのかは先生が決めればいい」
「……そんなこと」
「寂しい生き方=B先生の言葉には色々考えさせられたよ。でも、人の命が酷く軽いこの世界で、敵対した者には容赦しないという考えは……変えられそうもない。変えたいとも思わない。俺に、そんな余裕はないんだ」
「南雲君……」
「これからも俺は、同じことをする。必要だと思ったその時は……いくらでも、何度でも引き金を引くよ。
それが間違っていると思うなら……先生も自分の思った通りにすればいい……ただ、覚えておいてくれ。例え先生でも、クラスメイトでも……敵対するなら、俺は引き金を引けるんだってことを……」

 唇を噛み締め、俯く愛子。自分の話を聞いて、なお決断したことなら否定しない≠サう言ったのは他でもない愛子なのだ。言葉が続かない。ハジメは、そんな愛子を見て、ここでのやるべきことは終わったと踵を返した。

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