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【源泉の感情】平岡公威・三島由紀夫の詩♭♯♪

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 13:58:59 ID:x4aZTVVz.net
★小説家として有名な三島由紀夫ですが、幼少時、多くの詩を書いています。
本名、平岡公威
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/bf/Yukio_Mishima_1931.gif
大正14年(1925年)1月14日、東京都四谷区(新宿区)永住町2に
父・平岡梓(元農林省水産局長)、母・倭文重の長男として誕生。

三島由紀夫関連過去スレ検索
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dat落ちした前スレ
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2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 14:02:24 ID:x4aZTVVz.net
「木枯らし」

木が狂つてゐる。
ほら、あんなに体を
くねらして。
自分の大事な髪の毛を、
風に散らして。

まるで悪魔の手につかまれた、
娘のやうに。
木が。そしてどの木も
狂つてゐる。

平岡公威(三島由紀夫)11歳の詩

3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 14:02:53 ID:x4aZTVVz.net
「父親」

母の連れ子が、
インク瓶を引つくり返した。
インク瓶はころがりころがり
机から落ちて、
硝子の片が四方に飛び散つた。
子供は驚いた。
ペルシャ製だといふじゆうたんは、
真ッ黒に汚れた。
そして、破れた硝子は、くつ附かなかつた。

母の連れ子の
脳裡に恐ろしい
父の顔が浮び出た。

書斎のむち、
今にも
つぎはぎだらけのシャツを
脱がされて、
むちが……
喰ひ附くやうに、

母の連れ子の、目の下に、
黒いじゆうたんが、
わづかな光りに、ぼやけてゐる

平岡公威(三島由紀夫)11歳の詩

4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 14:03:33 ID:x4aZTVVz.net
「蛾」

窓のふちに、
蛾がとまつてゐて、
ぶるぶると体を震わせてゐた。
私は、可哀さうになつて、
蛾を捕へようとした。
窓は、堅く、閉ざされてゐたので、
私は、窓を開けて、
放してやらうと思つた。
私は蛾にさはつて見た。
蛾は勢ひよく飛び出した。
私は、気が抜けた。
さつきの蛾と、
そして、
今の蛾と……。

平岡公威(三島由紀夫)11歳の詩

5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 14:04:18 ID:x4aZTVVz.net
「凩」

凩よ、
速く止まぬと、
可愛さうな木々が眠れない。
毎日々々お前に体をもまれて、
休む暇さへないのだ。
凩よ、
お前は冬の気違ひ、
私の家へばかり、は入つて来ないで、
いつその事、雪を呼んでおいで。

平岡公威(三島由紀夫)11歳の詩

6 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 14:04:49 ID:x4aZTVVz.net
「斜陽」

紅い円盆のやうな陽が、
緑の木と木の間に
落ちかけてゐる。

今にも隠れて了ひさうで、
まだ出てゐる。

然し、
私が一寸後ろを向いて居たら、
いつの間にか、
燃え切つてゐて、
煙草の吸殻のやうに、
ぽつんと、
赤い色が残ってゐるだけだつた。

平岡公威(三島由紀夫)12歳の詩

7 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 14:08:25 ID:x4aZTVVz.net
「独楽」(こま)
(音楽独楽なりき。白銀なせる金属にておほはれる)

それは悲しい音を立てゝ廻つた。
そして白銀のなめらかな体を
落着きもなく狂ひ廻つた。
よひどれの様に、右によろけ、
左にたふれ。

それは悲しい酔漢の心。
踊るを厭ふその身を、一筋の縄に托されて。
唄ふを否み乍らも、廻る歯車のために。

それは悲しい音を立てゝ廻つた。

「静寂の谷」から、
「狂躁の頂」に引き上げられ、
心のみ、尚も渓間にしづむ。

それは悲しい酔漢の心。
そして白銀のなめらかな体を、
落着きもなく狂ひ廻つた。

平岡公威(三島由紀夫)12歳の詩

8 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 14:09:19 ID:x4aZTVVz.net
「三十人の兵隊達」

三十人の兵隊達。
赤と黒の階調。

三十人の兵隊達。
銀流しの拍車があらはす。
銀と白の光の交叉。

三十人の兵隊達。
硝子の目玉。
極細の毛糸は、
漆黒の頭髪。

けれども、
八つを迎へた女の子は、
この兵隊を捨て去つた。

そして、女の子は、
赤ん坊の人形に、
頬すりする。

芽生えた、母性愛の
興奮。

三十人の兵隊達。
母性愛の為に捨て去られた、
兵隊達。

三十人の兵隊達。
赤と黒の階調。

平岡公威(三島由紀夫)12歳の詩

9 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 14:10:13 ID:x4aZTVVz.net
「絵」

孤児院の片隅で、
幼い子が、大きな絵を眺めてる。
そこには、飴ん棒のやうな木が、
列を作つて並んで居、
木には、パン、草には、ビスケットが、
今を盛りになつてゐる。
口を開けて、夢中になる孤子に、
あたゝかい日差しがあたつてゐる。
しかし、入つてきた院長は、さつさ
と子供を引張つて外に出て来た。
「あんな絵は、目に毒ぢやてな」

平岡公威(三島由紀夫)13歳の詩

10 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 14:10:39 ID:x4aZTVVz.net
「誕生日の朝」

青と、白との光線の交錯のうちに、
身をよこたへつゝ、
その日のわたしは、生れたばかりの
雛鳥のやうだつた。

さて、細い一輪差まで
絶えいるやうな花の香に埋もれ、
太陽をとり巻く雲は、一片の花弁に見えた。

誕生日の贈り物がとゞいた。
美しい贈物の数々は、
石竹色の卓子の上に置かれた。

平岡公威(三島由紀夫)14歳の詩

11 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 14:11:04 ID:x4aZTVVz.net
「見知らぬ部屋での自殺者」

骨董屋の太陽のせゐで
カーテンの花模様も枯れ
家具は色褪せ 空気は
黄色くただれてゐたので
その空気に濡れた古鏡に
わが顔は扁たく黄いろに揺れた
……やがて死は蠅のやうに飛び立つた
うるさくかそけく部屋のそこかしこから

平岡公威(三島由紀夫)14歳の詩

12 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 14:13:44 ID:x4aZTVVz.net
「夜猫」

壁づたひに猫が歩む
影の匂ひをかぎながら

猫の背はなめらかゆゑ
光る夜を、辷らせる

ああ、蝋燭の蝋のしたたる音がする。
真鍮の燭台は
なやめる貧人のごとき詫びしい反射であつたから、
ふと、傾いた甃(いしだたみ)の一隅に
わたしは猫の毛をわたる風をきいた
影のなかに融けてゆく一つの、寂寞の姿をみた

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

13 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 14:14:34 ID:x4aZTVVz.net
「民謡」

夕ぐれの生垣から石蹴りの音がしてきた

微温湯をいれたコップの内側が、赤んぼの額のやうに汗ばんでゐた。
病気の子のオブラァトと粉薬が窗のあぢさゐの反射であをざめた
石竹色の植木鉢に、錆びた色ブリキの如露がよつかゝつてゐた

早い蚊帳がみえる離れで、小さな母は爪立つて電気を灯けた。
ねむつた子の横顔が 麻の海のなかに浮びあがつた

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

14 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 14:15:10 ID:x4aZTVVz.net
「夏の窗辺にくちずさめる」

雲の山脈の杳か上に
花火の残煙のやうなはかない雲が見えてゐた
サイダァのコップをすかしてみたら
やがて泡になつて融けて了つた

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

15 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 14:15:41 ID:x4aZTVVz.net
「幸福の胆汁」

きのふまで僕は幸福を追つてゐた
あやふくそれにとりすがり
僕は歓喜をにがしてゐた
今こそは幸福のうちにゐるのだと
心は僕にいひきかせる。
追はれないもの、追はないもの
幸福と僕とが停止する。
かなしい言葉をさゝやかうとし
しかも口はにぎやかな笑ひとなり
愁嘆も絵空事にすぎなくなり
疑ふことを知らなくなり
「他」をすべて贋と思ふやうに自分をする。
僕はあらゆる不幸を踏み
幸福さへのりこえる。
僕のうちに
幸福の胆汁が瀰漫して……

ああいつか心の突端に立つてゐることに涙する。

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

16 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 14:16:09 ID:x4aZTVVz.net
「アメリカニズム」 万愚節戯作

たるんだクッションのやうなスヰートピィ
もう十年代、流行おくれの色ですね
玉蜀黍の粕がくつついてる
赤きにすぎる口紅の唇。
ショォト・スカァトは空の色がみえすぎます。
歓楽は窓毎に明るく灯り、
スカイ・スクレェパァはお高くとまり、
鼻眼鏡で下界をお見下しとやら、
だが、ニッケルの縁ではね。
野蛮の裏に文化はあれど……
白ん坊の裡にも黒ン坊がゐる。
欧州向の船が出て、
髯なし共が御渡来だ、
カジノで札の束切つて
縄の御用もありますまい
レディ・メェドの洋服が船にのつておしよせる
あくどい洒落がおしよせる
自由とスマァトネスがおしよせる
「世界第一」がおしよせる
星のついた子供の旗をおし立てゝ。

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

17 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 14:42:57 ID:qU38DF3q.net
「薔薇のなかに」

薔薇のなかにゐます。
わたしはばらのなかにゐます。
しつとりしたまくれ勝ちの花びらの
こまかい生毛のあひだに滲みてくる
ひかりの水をきいてゐます。
薔薇は光るでせう、
園の真央で。
あなたはエェテルのやうな
風の匂ひをかぐでせう。
大樫のぬれがての樹影に。
牧場の入口に。
大山木の花が匂ふ煉瓦色の戸口に。
わたしは薔薇のなかにゐます。
ばらのなかにゐます。
小指を高くあげると
虹の夕雲がそれを染め……
ばらはゆつくり、わたしのまはりで閉ざすのです。

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

18 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/11(土) 20:53:05 ID:VwfZvXyr.net
「江の島ゑん足の時」

ぼくはゑん足をお休みしました。
二十日の朝はおきると、みんなは今新宿えきへついて、もう電車にのつただらうと思ひました。
すぐそんな様なことをかんがへ出します。ひまがあるとおばあ様やお母様の所へお話しにいきます。
もうみんな江の島へついたかと思ふといきたくつてたまりませんでした。
ぼくは江の島へいつたことがないのでなほいきたかつたのです。
ぼくは朝から夜まで其ことをかんがへて居ました。
ぼくは夜ねると、次の様な夢を見ました。
ぼくもみんな江の島のゑん足にいつて、そしてたのしくあそびましたが、いはがあつてあるけません。
そこでもう目がさめてしまひました。

平岡公威(三島由紀夫)7歳の作文

19 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/11(土) 20:59:20 ID:VwfZvXyr.net
「私は学生帽です。」

私は平岡さんのお家の学生帽です。坊ちやんが一年生の時西郷洋服店から参りました。

私は喜ばしい事もあれば泣きたい事もあります。
いつも坊ちやんが学校へいらつしやる時に、おとなりのぐわいたうさんとが書生さんに昨日のごみを取つて
もらひます。私達はそれを毎日楽みにして居ります。
私はずい分古い帽子ですが、坊ちやんが大事にして下さるので、坊ちやんからはなれようとは思ひません。
私は何年と云ふ長い月日をかうやつて暮して来ました。
今迄の間にどんな事があつたでせう? 私はそれを物語りたいのです。
(つい此間の事でした。坊ちやんがこはれた帽子を学校から持つていらつしやいました。
それは云ふ迄も無く私です。
坊ちやんは御母様に「之をぬつてね」とおつしやいました。お母様は「ええ、え」とおつしやつて、ぬつて
下さいました)
私は何と云ふ幸福な身でせう?

平岡公威(三島由紀夫)7〜8歳の作文

20 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/11(土) 21:01:24 ID:VwfZvXyr.net
「かみなり」

きのふのよる僕は雨戸をしめて寝床へ入つた。その時がらす戸から「ぴかりつ!」といなびかりが見えた。
五六べうたつて大きならいが鳴つた。たんすの上にある時計はゆれるしれうりだなの上においてあるせとものも
かちやりと音をたてた。
なんだか家中がゆれるやうなきがした。
おはなれにいらつしやつたおぢいさまが「ひどい雨だ」とおつしやつた。
ほんたうにひどい雨だ。
又こんなかみなりが今ごろなるときではない。又ことしはこんな大きなかみなりが一度もならないのに。

平岡公威(三島由紀夫)8歳の作文

21 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/11(土) 21:05:25 ID:VwfZvXyr.net
「冬」

もうそろそろ冬になつてきた。
お庭のかきの木のはや、もみぢの葉がさらさらとおちてくる。
お家のうらの小路にほこりがさあつと立つ。
がらす戸に時々つよい風があたつていやにうるさい。
お池の水はじやぶじやぶとおとを立てる。
金魚が驚いて水の中へ沈む。
花園の花がぽきぽきと折れる。
お父さまがお役所からかへつていらつしやつて「今日は実にひどい風だつたよ」とおつしやつた。

平岡公威(三島由紀夫)8歳の作文

22 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/11(土) 21:06:45 ID:VwfZvXyr.net
「冬の夜」

火鉢のそばで猫が眠つてゐる。
電灯が一室をすみからすみまでてらしてゐる。
けいおう病院から犬の吠えるのがよくきこえる。
おぢいさまが、
「けふはどうも寒くてならんわ」
とおつしやつた。
冬至の空はすみのやうにくろい。
今は七時だといふのにこんなにくらい。
弟が、
「こんなに暗らくつちやつまんないや」
といつた。

平岡公威(三島由紀夫)8歳の作文

23 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/11(土) 21:08:30 ID:VwfZvXyr.net
「朝の通学」

四谷西信濃町十六番地。
朝、おきて見ると、空は晴れて居たが、大へんさむかつた。
お祖母様がからだをこゞめて、あんかにあたつていらつしやつた。
お家を出る時、うらの小路を、外たうを着て皮手袋をはめた大学生が寒さうにポケットへ手を入れてゐた。
あめ売のおぢいさんも、ふところへ手を入れて、あたゝかい方へあたゝかい方へと歩いて行つた。
自動車屋の車庫では、子供が二人、たき火をして、手をあたゝめてゐた。
又、でんしやの中ではしやつを沢山きて洋服がふくれてゐる人や、顔や手を年がら年中まさつして居る人が大分あつた。
四ツ谷駅に下りて見るとみなポケットに手を入れてゐた。
学校へきて見ると、運動場一ぱいに霜が下りてゐた。
いつもはあんなにあつたかい御教場の中も、今日は何だか、寒くかんじた。

平岡公威(三島由紀夫)8〜9歳の作文

24 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/11(土) 21:10:17 ID:VwfZvXyr.net
「雨降り」

雨がふつてきた。
ポタンととひの中に入つてとひをつたつてザアッとおちる。
庭のすみに落ッこちてゐる小さなくびふり人形も雨水でビショビショになつてゐる。又木の葉の上にのつてゐる露が
まるで真珠のやうだ。
雨だれの音はどんなにでもきこえる。
タンタラタンともきこえるし又タカタカタンとも、自分の思ふとほりにきこえる。
まるで音楽をきいてゐるやうだ。
雨がふるとお百姓さんも亦(また)草も木もおほよろこびだ。

平岡公威(三島由紀夫)9歳の作文

25 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/11(土) 21:14:56 ID:VwfZvXyr.net
「ばけつの話」

僕はばけつである。
僕は大ていの日は坊ちやんやお嬢さんがきて遊ばして呉れるが、雨の日などは大へん苦しい。
ほら、この通り、大部分ははげてゐる。
又雪の日なんかは、ずいぶん気もちがいい。あのはふはふしたのが僕のあたまへのつかると何ともいへない。
それから僕が植木鉢のそばへおかれた時、あの時位いやな事はなかつた。となりの植木鉢がやれお前はいやな形だの、
又水をくむ外には何ににも使へないだのと云つた。あそこをどかされた時は、ほんとにホッとした。
ではわたしの話はこれでをはりにする。

平岡公威(三島由紀夫)9歳の作文

26 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/11(土) 21:16:03 ID:VwfZvXyr.net
「夕ぐれ」

鴉が向うの方へとんで行く。
まるで火のやうなお日様が西の方にある丸いお山の下に沈んで行く。
――夕やけ、小やけ、ああした天気になあれ――
と歌をうたひながら、子供たちがお手々をつないで家へかへる。
おとうふ屋のラッパが――ピーポー。ピーポー ――とお山中にひびきわたる。
町役場のとなりの製紙工場のえんとつからかすかに煙がでてゐる。
これからお家へかへつて皆で、たのしくゆめのお国へいつてこよう。

平岡公威(三島由紀夫)9歳の作文

27 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/11(土) 21:18:37 ID:VwfZvXyr.net
「農園」

今週の月曜でした。
唱歌がをはつておべん当をいただかうと思つて、教室にはひつて来ました。
すると、おけうだんの上に大きなかごがあつて、その中にはたくさんそら豆がはひつてゐました。
僕はうれしくて、うれしくて、「早くくださればいいなあ」とまつてゐたら、おべんたうがすんだら、皆の
ハンカチーフにたくさん入れて下さいました。おうちへかへつて塩ゆでにしていただいたら、大変おいしう
ございました。
思へば、三年のニ学きでした。
おいしいみが、たくさんなるやうにとそらまめのたねを折つてまいたのでした。
果して、たねはめが出、はがでて、今ではおいしいみがたくさんなつて、僕たちがかうしていただくまでに
なつたのでした。
(中略)
又この間は五六年のうゑた、さつまいもの苗に水をかけました。秋になつたらこのおいもも僕達の口の中へ
はひる事でせう。

平岡公威(三島由紀夫)9歳の作文

28 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/11(土) 21:20:59 ID:VwfZvXyr.net
「海」

先をと年、小田原の海へ行つたとき、大分沖の方まで泳いだら、お腹がいたくなつたので、およぎをやめて
かへりました。するとその翌日、にはかにきもちが悪くなり、病気になりました。それで泳ぐのに、僕は
こりごりして了ひました。(中略)
波打際であそんでゐると、ビーチパラソルの中から、をばさまが「こんどは少うし川の方であそんだらどうを?」
とおつしやつたので僕は「えゝさうしませう」といつて、弘道さんと、バケツやたもをもつて、川へいきました。
二人でふなの子をとつたり、水の中をあるいて向う岸へいきッこをしたりしてゐるとをばさまが大きなこゑで
「公ちやんとひろみちちやん! ごはんよ」とおつしやつたので僕とひろみちさんは一さんにかけて行つて
おいしいおべんたうをたべたり、おしよくごのキャラメルをたべたりして、又一しきりあそんでかへりました。
その翌日は朝はやくおきて畑へ行くと、お百しやうさんが「このいも、まだあたらしいでがすよ。あんちやんたちに
あげませう」とさつまいもをくれました。

平岡公威(三島由紀夫)9歳の作文

29 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/11(土) 21:23:38 ID:VwfZvXyr.net
「大内先生を想ふ」

ヂリヂリとベルがなつた。今度は図画の時間だ。しかし今日の大内先生のお顔が元気がなくて青い。
どうなさッたのか? とみんなは心配してゐた。おこゑも低い。僕は、変だ変だと思つてゐた。その次の図画の
時間は大内先生はお休みになつた。御病気だといふことだ。ぼくは早くお治りになればいゝと思つた。
まつてゐた、たのしい夏休みがきた。けれどそれは之までの中で一番悲しい夏休みであつた。
七月二十六日お母さまは僕に黒わくのついたはがきを見せて下さつた。それには大内先生のお亡くなりに
なつた事が書いてあつた。むねをつかれる思ひで午後三時御焼香にいつた。さうごんな香りがする。
そして正面には大内先生のがくがあり、それに黒いリボンがかけてあつた。
あゝ大内先生はもう此の世に亡いのだ。僕のむねをそれはそれは大きな考へることのできない大きな悲しみが
ついてゐるやうに思はれた。

平岡公威(三島由紀夫)9歳の作文

30 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/12(日) 03:08:12 ID:hBPwvdmR.net
るsこりすこ

31 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/12(日) 11:19:03 ID:5Ug+bd1q.net
「電信柱」

お家のお庭向きのへいの前に小さい道がある。
そしてそこに木でできた電信柱が立つてゐる。今日の噺はその電信柱の電線の噺である。
ある春の日、僕は縁側に座蒲団をしいて日向ぼつこをしてゐた。
その日は勉強もなかつたし、又遊ぶ事もなかつた。
それでなんの気もなくその電線をながめてゐた。するとそこへ、三羽の雀がさへづりながらとんできた。
三羽の雀はふとその電線の上へ停つた。そして鬼ごつこでもするやうに電線の上を飛び廻つたのだ。
その度に電線はゆらゆらとゆれた。そのとき電信柱は、
「雀さん、そんなに体の上を飛び廻つてはいたいですよ」
とでも云つたのだらう。三羽の雀は又話をしながらとんでいつた。
(続く)

平岡公威(三島由紀夫)9歳の作文

32 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/12(日) 11:20:14 ID:5Ug+bd1q.net
「電信柱」

それから月日はたつて八月になつた。
八月といへば暑いさかりである。
僕はハンカチーフで汗をふきふきシロップを飲んでゐた。
その時、僕の頭に浮かんだのは、あの春の日のことであつた。
今度は帽子をかぶり庭にでてその電線をみてゐた。
するとそこにはいつの間に来たのか沢山の小鳥が電線の上にとまつてゐて、大きな声をはりあげて歌をうたつてゐた。
あげは蝶や黄色虫が小鳥のまはりをとんでゐる。
樅(もみ)の木や杉の木や松などが歌に合はせて踊るやうに葉をうごかしてゐた。
お向ひの物干の青竹が笑ふやうにして云つた。
「電線さんおにぎやかですね」

平岡公威(三島由紀夫)9歳の作文

33 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/12(日) 11:22:12 ID:5Ug+bd1q.net
「松の芽生」

これはまだ僕が大森へ泊りに行かないまへの話です。
或る日お庭へ出て箱庭をなんの気なしに見たら、小さなざつ草を見つけたので、かはいい草だと思つて、掘つて
おばあさまにお見せしたら、「あゝこれは松の芽生ですよ」とおつしやつたので、僕は拾ひ物でもしたやうに
有頂天になつて、急いで、又元のところへ植ゑました。そしてもつと有りはしないかと方々をさがしますと、
その箱庭のすみの方にと、それから小さい箱庭とにありました。それから毎日たんねんに水をやつたのです。
そのうちに僕は大森へ行つて今朝かへつて来ました。

平岡公威(三島由紀夫)年月未詳(推定は9歳)の作文

34 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/13(月) 12:18:21 ID:MtGDB3CF.net
「涼しい夕涼みの一時」

入日が西の空をまつかにそめてゐます。
縁先の夕顔がぽつかり白い花をひらいた。昼頃降つた雨がまだかわからないのか。庭下駄でふむ庭の土が
何となくじめじめしてゐます。
それでまた一段と庭の空気が涼しいやうな気がいたします。
えんの下で名も知れぬ虫がなきはじめると、椿の枝の虫籠から、琴をひくやうに美しい鈴虫の音(ね)が、
そよ風に送られて僕達の耳には入つてまゐります。
やがて、松の小枝をとほして、うすい月の光がさしてきました。
太陽はもうすつかり西山に姿をかくして、うす暗い夕空には、月とそれから五つ六つの小さい星がきらきらと
輝いてゐるだけです。

平岡公威(三島由紀夫)年月不詳(推定9歳)の作文

35 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/13(月) 12:21:39 ID:MtGDB3CF.net
「学校の二階の窓から」

いつもならさうも想はないが、かうやつてしみじみと二階から見える景色をながめると本当にいゝけしきだと思ふ。
赤坂御所の方はあまり木ばかり立つてゐてさうでもないが、学校のうらの製紙工場の方は木々が緑を増してゐて
何となく秋をおもはせる。
ごんだはらの市電停留所の所へつづいてゐる自動車路は大へん静で良い道路だ。
今度は一寸ちがつて左手の方をながめると、小高い丘の上に家が七、八軒並んで居る。黒い細い煙突から
煙が細く登つてゐる。そのそばに銀色をしたアドバルーンがふんはり浮いてゐる。
丘の上はこの位にして、段々下へうつつて行く。
先づお堀のすぐそばに四ッ谷のプラットホームがあるのがよくわかる。
こゝからは見えないが、始終、電車が出入してゐる。
半身黄、半身緑の市内電車が橋下のトンネルの中へ消えて行く。

(学校の二階のまどべの机で記す)

平岡公威(三島由紀夫)9歳の作文

36 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/14(火) 11:48:37 ID:oDFkT4cm.net
「長瀞遠足記」

朝起きて見ると東の空がほのかに紅くなつてゐる。
あゝ今日は遠足の日だ。
いつもなら、女中が、
「お坊ちやまお起き遊ばせ」
位云つてくれてもなかなか起きない僕が、今日は起してくれる前におきて了つた。
女中にきいたのだが、僕が十一、二時頃おきて、
「もう朝になつた?」
と、きいたさうだ。
      〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それから僕はお母さまと書生とで池袋駅へ急いだ。
いよいよ汽車にのつてあこがれの長瀞へ行くのだ。
汽車の中では僕が色々なものをもつて来たので相当面白かつた。
「かァみながァとろォ
 かァみながァとろォ」
と叫ぶ駅夫の声に汽車が止つて、先づ宮様方がお下りになり、それから一年から順に汽車から下り、列を作つて、
神保博士の長瀞の石の『ちんれつくわん』へ行つた。
色々な見たこともない石があつた。
けれどもその内で一番僕の面白いとおもつたのは木の化石だつた。
太い木がそのまゝ石になつて居るのは、作つた物としか思へない。
(続く)

平岡公威(三島由紀夫)9〜10歳の作文

37 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/14(火) 11:51:07 ID:oDFkT4cm.net
「長瀞遠足記」

たうとう河原についた。
こちらの河岸はまことに長瀞の名に応(ふさ)はしくトロトロと流れて居るが、向う岸は水が河底にある岩に
当つてドドドッとしぶきを上げて居る。
本当に『美しい天然』だ。
そこで少し休んで石畳でおべん当をたべた。ザアザアと流れる水の音をきゝながら御飯をたべるのは何とも云へない。
それから、遊園地を通つて、宝登山神社にお参りした。
そこで大へん面白い“獅子舞”を見せていただいた。
雄獅子が二匹と雌獅子が一匹とでピィヒャラピィヒャラとこつけいな踊りをした。
それがすんでから、神社に別れを告げ、この名ごり惜しい長瀞から東京へかへることになつた。
帰りに汽車の中で小松先生が俳句を一句作つて下さつた。その俳句はかうである。
 長とろや
   とろりとろりと
      流れけり
      〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今日の美しい日は夢のやうにすぎて了つた。
長瀞遠足は大へん為になつた。
ほんとにいゝ遠足だつた。

平岡公威(三島由紀夫)9〜10歳の作文

38 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/14(火) 11:58:35 ID:oDFkT4cm.net
「ある日」

ある日。
いつだつたかよく覚えてゐない。只その日にあつたことだけをおぼえてゐるのだ。なんでも春の夕方だつたとおもふ。
そしてまだ学校へはひらなかつた時らしい。
僕はお二階のヴェランダで女中にだつこをしてもらつてゐた。
女中に抱かれ乍ら僕は夕日の沈む空をみてゐたのだ。
すると遠くから一羽のとんびがまひおりてきた。空中で円い輪を描いて段々下へおりて大分下の方へきたら、
ものすごいスピードで溝をめがけて飛んだ。
そして空へ上つた時にはそのするどい爪で大きな溝(どぶ)ねずみをつかまへてゐた。
とんびはそのねずみをもつて松の木の上に止つた。
そこへ同じ大きさ位のとんびがやつてきた。前のとんびは後のとんびに頭をこすりつけ、一しよに仲よく
そのねずみの肉をたべた。
僕は二羽のとんびに友達は仲よくせよといふことを教はつた。

平岡公威(三島由紀夫)10歳の作文

39 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 10:35:03 ID:7UuwFovf.net
「夜のプール」

三時頃、林さんが来た。
僕はその前の日林さんの家へでんわをかけたのだ。そして、その時僕は、久しぶりで七時頃から夜のプールを
見にいきませうといつた。
果して林さんは来た。
ごはんをすませて三十分位たつた時の僕は、涼風吹くさはやかな外苑の夜道を足どりも軽くあるいて居た。

夜のプール。
物すごく明るい電気が左右から緑色のプールをくわうくわうと照らしてゐる。
ザブーン。
気持のよい音。五、六人一しよに飛びこんだ。サッサッ、水をかく音。ふとみると、夜空に日章旗が高く
ひらめいてゐた。

平岡公威(三島由紀夫)年月不詳(推定9歳)の作文

40 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 11:13:35 ID:7UuwFovf.net
「東京市」

昔は、秋風の吹くごとに、波の如くすゝきのざわめく武蔵野が、今や華やかな都東京市になつた。
それでも明治初期は、東京市と云つても所々に野原があり、本所、深川あたりでは狐狸(こり)が出て人を化かす
といふ噺もあつたが、大正、昭和となつては、さすがそんな噂はなくなつた。けれども、淋しいと云へば淋しい。
その頃は新宿も市外で、今のかつしか、えばら区などと言ふ所は勿論かやぶき屋根の立並んでゐる村であつた。
しかし、明治初期の頃の日本橋、銀座は、割合に発展してゐて、越後屋、高島屋、白木屋などの大商店が軒を
ならべて居たと云ふ。後に越後屋は三越と名を改め、外の大きな店々は三越と共に、豪壮なビルディングへ転居した。
昭和五、六年になると、東京市は実に偉大な発展を占め、旧市、新市合せて、何んと三十五区になつた。
おまけに、新宿が市内になり、銀座、日本橋、丸の内と合せて、東京市は東洋にほこる大都会となつた。
東京市は天をついて伸びてゆく、丁度若木のやうに。

平岡公威(三島由紀夫)10歳の作文

41 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 11:15:57 ID:7UuwFovf.net
「我が国旗」

徳川時代の末、波静かなる瀬戸内海、或は江戸の隅田川など、あらゆる船の帆には白地に朱の円がゑがかれて居た。
朝日を背にすれば、いよよ美しく、夕日に照りはえ尊く見えた。それは鹿児島の大大名、天下に聞えた
島津斉彬が外国の国旗と間違へぬ様にと案出したもので、是が我が国旗、日の丸の始まりである。
模様は至極簡単であるが、非常な威厳と尊さがひらめいて居る。之ぞ日出づる国の国旗にふさはしいではないか。
それから時代は変り、将軍は大政奉くわんして、明治の御代となつた。
明治三年、天皇は、この旗を国旗とお定めになつた。そして人々は、これを日の丸と呼んで居る。
からりと晴れた大空に、高くのぼつた太陽。それが日の丸である。

平岡公威(三島由紀夫)11歳の作文

42 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 11:21:16 ID:7UuwFovf.net
「端午の節句」

四月の始から、もう端午の節句のセット等を、デパァトは店頭に飾り出す。四月の半ばになると、電車の窓から
見えるごみごみした町にも、幾つもの鯉のぼりが立てられる。腹をふくらまし尾を上げて、緋鯉ま鯉は
心ゆくまで呼吸する。彼等は町の芥を吸ひ取り、五月の蒼空を呼んで居るかの如くである。
かうして五月が来るのだ。
私の家も例年の様に五月人形を床の間に飾つた。いかめしい甲は最上段にふんぞり返つて、金色の鍬形を
電気に反射させてゐる。よろひも今日は嬉しさうだ。今にも、あの黒いお面の後から、白い顔がのぞき側にある
太刀を取つて……然し、よろひは矢張りよろひびつの上に腰掛けてゐる。松火台の火は桃太郎のお弁当箱を
のぞいて見たり、花咲爺さんのざるの中を眺めたり、体をくねらして、大変な騒ぎである。
(続く)

平岡公威(三島由紀夫)中等科一年、12歳の作文

43 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 11:22:16 ID:7UuwFovf.net
「端午の節句」

神武天皇の御顔は、らふそくの光が深い陰影を作り非常に神々しく見える。
金太郎は去年と同じく、熊と角力を取り乍ら、函から出て来た。よく疲れないものだ。お前がこはれる迄
さうして居なければいけないのだ。
さうして、人形は飾られた。白馬は五月の雲。
そして紫の布、それは五月の微風だ。
白い素焼のへい子(し)。
その中には五月の酒が満たされてゐる。
五月が来た!
それは端午の節句が運んできたのである。

平岡公威(三島由紀夫)中等科一年、12歳の作文

44 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 13:47:26 ID:7UuwFovf.net
「三笠・長門見学」

船は横須賀の波止場へ着いた。ポーッと汽笛が鳴る。私達は桟橋を渡つた。薄曇りで、また酷い暑さの今日は、海迄だるさうだ。
併し、僕達は元気よく船から飛び出す。三笠の門の前に集合し、そして芝生の間の路に歩を運ぶ。艦前に来て
再び集まり、三笠保存会の方から、艦の歴史やエピソォドを伺つた。
お話が終ると私は始めて三笠を全望した。
見よ! 此の勲高き旗艦を。そしてマストにはZ信号がかゝげられてゐる。
時に、雲間を割つて出でた素晴らしき陽は、この海の館を愈々荘厳ならしめた。艦頭の国旗は、うすらな風に
ひるがへり、今にも三笠は、大波をけつて走り出さうだ。一昔前はどんな設備で戦つてゐたのか、早く見たくなつた。
やがて案内の人にともなはれて急な階段を上り、艦上に入る。よく磨かれた大砲が海に向つて突き出てゐる。
こゝで日本の大きな威力が世界に見せられたわけだ。伏見宮様の御負傷の御事どもをお聴きして、えりを正した。
其処此処に戦士者の写真が飾られてあるのも哀れだ。
(続く)

平岡公威(三島由紀夫)中等科一年、12歳の作文

45 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 13:48:30 ID:7UuwFovf.net
「三笠・長門見学」

私達は最上の甲板に登つて東郷大将の英姿を想像してみた。手に望遠鏡、頭上には高くZ信号。……皇国の興廃
此の一戦にあり、各員一層奮励努力せよ……。とは単なる名文ではなくて、心の底から叫んだ愛国の声ではないか。
士官の室が大変立派なのにも驚いた。又会議室へ行つて此処でどんな戦略が考へられたかと思つた。艦の全体に
ペンキで戦痕が記されてある。こんなに沢山弾を受けたのに一つも艦の心臓部に命中しなかったのは畏い極み乍ら、
天皇の御稜威のいたす所であらう。艦を出て、暫時休憩し、昼食を摂る。休憩が済むと、再び海に沿うた道を歩く。
そここゝにZ信号記念品販売所等と看板があるのも横須賀らしい。さうする中に海軍工廠の門内へ入つた。
クレーンや、色々の機械の動く音と、金槌の音が、あたりを震はせてゐる。「今造つて居る戦艦は、十一月に
進水式をするのです」と案内の人が言つた。あちらでは古い旗艦を保存してゐるのに、こちらでは新しい軍艦が
どんどん生れて来てゐる。一寸面白く思つた。
(続く)

平岡公威(三島由紀夫)中等科一年、12歳の作文

46 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 13:50:08 ID:7UuwFovf.net
「三笠・長門見学」

其の内にランチへ乗る。さうして五分も経たないで長門につく。先づ此れを望んで、さつきの三笠と較べて見ると、
余りにその設備の新式なのに驚いた。艦上には四十糎(サンチ)の素晴らしい大砲がある。其の太い砲口から
大きな大きな砲弾が出たらどうであらうと思ひ乍ら、案内の人にともなはれて下へ行く、水兵さんの頭を
刈つて居る所、色々な室、何も彼も物珍らしく面白い。時間が無かつたので、ゆつくり見学することが出来ず
残念であつたが、記念撮影をして再びランチに帰つた。あゝ日本の精鋭長門、こんな軍艦があつてこそ、
日本の海は安全なのであらう。ランチが着き菊丸まで歩いて、かうして今日の有益な見学を終つた。

平岡公威(三島由紀夫)中等科一年、12歳の作文

47 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 13:54:05 ID:7UuwFovf.net
「分倍河原の話を聞いて」

私達は早や疲れた体を若い小笹や柔かい青艸の上にした。視野は広く分倍河原の緑の海の様な其の向うには、
うつさうとした森があつて、遥か彼方には山脈の様なものが長々と横たはつて居た。白く細く見えるのは
鎌倉街道である。遠く黄色い建物は明治天皇の御遺徳を偲ぶ為の記念館であると、小池中佐はお話下さつた。
腰を下して、分倍河原の合戦のお話をお聴きする。元弘三年、此処は血の海が、清き流れ多摩川に流れ込んだのだ。
今でこそ此の分倍河原は、虫の音や水の流れに包まれてゐるが、六百年前には静寂がなくて其の代りに陣太鼓の音や
骨肉相食む戦闘が繰り返へされたのだ。《勝つて兜の緒を締めよ》この戦ひは如実に之を教へてゐる。
見よ。六百年の歴史の流れは、遂に此の古戦場を和かな河原に変化せしめたのだ。其の時、足下の草の中から、
小さな飛蝗が飛び出し、虫の音は愈々盛になつて居たのである。益々空は青い。

平岡公威(三島由紀夫)中等科一年、12歳の作文

48 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/19(日) 00:43:35 ID:W+Y4PDuZ.net
「支那に於ける我が軍隊」

七月八日――其の日、東京はざわめいて居た。人々は号外を手にし、そして河北盧溝橋事件を論じ合つてゐた。
昭和十二年七月七日夜、支那軍の不法射撃に端を発して、遂に、我軍は膺懲の火ぶたを切つたのである。
続いて南口鎮八達鎮の日本アルプスをしのぐ崚嶮を登つて、壮烈な山岳戦が展開せられた。懐来より大同へと
我軍はその神聖なる軍をつゞけ、遂に、懐仁迄攻め入つたのである。我国としても出来得る限りは、事件不拡大を
旨として居たのであるが、盧溝橋事件、大山事件に至るに及び、第二の日清戦争、否! 第二の世界大戦を
想像させるが如き戦ひに遭遇した。
        〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(続く)

平岡公威(三島由紀夫)中等科一年、12歳の作文

49 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/19(日) 00:44:20 ID:W+Y4PDuZ.net
「支那に於ける我が軍隊」

飲むは泥水、行くはことごとく山岳泥地、そして百二十度の炎熱酷暑、その中で我将兵は、苦戦に苦戦を重ねて
居るのである。その労苦を思ふべし、自ら我将士に脱帽したくなるではないか。たとへ東京に百二十度の炎暑が
襲はうとも、そこには清い水がある。平らかな道がある。それが並大抵のもので無いことは良く解るのである。
併し軍は、支那のみに止らぬ。オホーツク海の彼方に、赤い鷲の眼が光つてゐる。浦塩(ウラジホ)には、
東洋への銀の翼を持つ鵬が待機してゐる。我国は伊太利(イタリー)とも又防共協定を結んだ。
併しUNION JACK は、不可思議な態度をとつて陰険に笑つてゐる。
噫! 世界は既に動揺してゐるのだ!
        〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
支那在留の将士よ、私は郷らの健康と武運の長久を切に切に祈るものである。

平岡公威(三島由紀夫)中等科一年、12歳の作文

50 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/19(日) 00:45:06 ID:W+Y4PDuZ.net
「菊花」

渋い緑色の葉と巧みな色の配合を持つた、あの隠逸花ともよばれるつつましやかな花は、自然と園芸家によつて
造られた。
園芸家達の菊は、床の間に飾られるのを、五色の屋根の下に其の艶やかな容姿を競ふのを誇りとし、自然の
造つた菊は、巨きな石塊がころがつて痩せ衰へた老人の皮膚の様な土地に、長い睫毛の下から無邪気な瞳を
覗かせてゐる幼児のやうに咲き出づるのを誇つてゐる。
前者は人の目を娯ます為に相違ないが、野菊の持つエスプリはそれ以上のものである。
荒んだ人の心の柔かな温床。
荒くれ男どもを自然の美しさに導く糧。
それが野菊である。
《鬚むじやらの人夫などが、白と緑の清楚な姿に誘はれて、次々と野菊を摘んで行き、山の端に日が燃え切る頃、
大きな花束を抱へて嬉しげに家路に着く》それは美しい風景ではあるまいか。
        〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
時は霜月。
木々が着物を剥がされかけて寒さに震へる月であるが、彼の豪華な花弁が野分風も恐れずに微笑む時である。

平岡公威(三島由紀夫)中等科一年、12歳の作文

51 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 11:37:53 ID:25gKHcIG.net
古代の悲劇のいみじさは、現代の神経では涙といふもので味はふことは出来なくても、それ以上の、おそらく
ギリシャ人たちが味はつた感動以上の、ほとんど神を見たやうな宗教的感動を以て味はふことができるやうに
思はれます。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和17年5月1日、東文彦への書簡より


音楽部で例の「オルフォイス」のレコオド・コンサアトをやりましたのできゝました。
あのギリシャ的な晴朗さは日本の古代の晴朗さとまことによく似てゐると存じました。
新関良三教授から芸能の講義を演習の時間にうかゞつてゐます。能楽とギリシャ劇の比較など大へん面白いものです。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和17年5月7日、東文彦への書簡より

52 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 11:46:09 ID:WgWlDD+k.net
ペルシャ人の、酒と逸楽の享楽主義は、おなじ享楽主義でも「トリマルキオーの饗宴」にみるやうな羅馬の
それとはちがひ、後者が機智と皮肉と退廃とのあらはれでしかないのに、前者には東洋的な深い瞑想がみられます。
前者は月夜のおもむき、後者はまひるのコロッセウムを思ひ出させます。
体骼なぞもずいぶんこの二民族の間にはへだゝりがあつたことでせう。
それにしても西洋人の享楽主義のえげつなさは、支那人はともかく、とても日本人の肌にはあひませんね。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和16年7月10日、東文彦への書簡より

53 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 11:47:38 ID:WgWlDD+k.net
ニイチェの「ツァラトゥストラ」の中には日本のことをかいてゐるやうな気のするところもありますね。
そして超人の思想の根本なぞどうも私にはインド、又ひろく東洋全体の思想への接近より、ニイチェが自ら
意識するせぬに不拘(かかはらず)、日本への大きな意味があるやうに思はれてなりません。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和18年2月15日、東文彦への書簡より


――「真昼」―― 「西洋」へ、気持の惹かされることは、決して無理に否定さるべきものではないと思ひます。
真の芸術は芸術家の「おのづからなる姿勢」のみから生まれるものでせう。近頃近代の超克といひ、東洋へかへれ、
日本へかへれといはれる。その主唱者は立派な方々ですが、なまじつかの便乗者や尻馬にのつた連中の、
そここゝにかもし出してゐる雰囲気の汚ならしさは、一寸想像のつかぬものがあると思ひます。
我々は日本人である。我々のなかに「日本」がすんでゐないはずがない。この信頼によつて「おのづから」なる
姿勢をお互いに大事にしてまゐらうではござひませんか。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和18年3月24日、東文彦への書簡より

54 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 11:48:51 ID:WgWlDD+k.net
いやなことゝ申せば今度も空襲がまゐりさうですね。かうして書いてをります夜も折からの警戒警報のメガホンの
声がかまびすしい。一体どうなりますことやら。しかしアメリカのやうな劣弱下等な文化の国、あんなものに
まけてたまるかと思ひます。
――ニイチェが反理想主義であること、流石に確かな御眼と感服いたします。
ニイチェの強さが私には永遠の憧れであつても遂に私には耐へ得ない重荷の気がします。おそらくけふは
一人一人の日本人が皆ニイチェにならねばならぬ時かもしれません。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和18年4月4日、東文彦への書簡より

55 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 11:53:08 ID:WgWlDD+k.net
――行詰り……実はこの文学上のデッド・エンドといふくせものに私は小説をかきはじめたときから始終頭を
ぶつけてゐたやうなわけで、その為に私の作品にはどこかに必らずデカダンスがひそむのですが、私は今度の
行詰りを自分では別に絶望的とも思つてをりません。いまの心境は、書けなくなつたらかけなくてもよい
(これはまあ一概にヤケッパチからでもないんですが)といふところ。しかし貴下のいはれる素朴さは実は
私のたつた一つの切ない宿願です。それを実現する手段として私は戦争や兵隊を考へてゐます。しかし果して
兵隊に行つて万葉的素朴さを得られるものか、この点は化学方程式のやうなわけにはいきますまいし、
今のところ永遠に疑問なのです。それにしても貴下の御忠告と御心やりは今の私には悲しいほど身にしみます。
妙なたとへですが、さんざん不埒なことをした不良少年が、物わかりのよい先輩にさとされるやうな気持とも
申せませう。文学といふ仕事、これは矢張、つらい死に身の仕事ですね。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和18年4月11日、東文彦への書簡より

56 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 11:56:32 ID:WgWlDD+k.net
ニイチェについて、お陰さまでいろいろ新しいことを知りました。実はツァラトゥストラの登張竹風の跋文の外、
私にはニイチェに関する智識がございませんでした。ツァラトゥストラのあの超人の寂寥あれを私は平安朝の
女流たちにも感ずるのです。「古今の季節」といふエッセイのなかでその荒涼を語つたことがありますが、
ニイチェがあれら女人の深い寂寥にふれてゐたらどう思つたことでせう。ニイチェの愛した東方ではなく、
むしろニイチェ自身の苦しい影をみはしなかつたかとさへ思ひます。
「世々に残さん」をかく用意に「平家物語」を何遍も繰つてゐますが、川路柳虹氏も名文だとほめてゐられる
あの文章、又あのむしろ宇宙的な末尾の哀切さ、あれを一篇の小説としてみてみると、大原の大団円は、私には
ラディゲのドルヂェル伯の大団円などよりこのごろではずつと身近に感じられます。無常といふ思想は印度から
来たものでもそれを文学の極致にまで詩の極致にまで高めたのは日本人の営為ですね。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和18年4月11日、東文彦への書簡より

57 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 11:58:31 ID:WgWlDD+k.net
文学の上では日本は今こそ世界唯一であり、また当然世界第一でありませう。
ムッソリーニにはヒットラアより百倍も好意をもつてゐますので、一しほの哀感をおぼえました。ムッソリーニも亦、
ニイチェのやうに、愚人の海に傷ついた人でありませう。英雄の悲劇の典型ともいふべきものがみられるやうに
おもひました。かつて世界の悲劇であつたのはフランスでしたが、今度はイタリーになりました。
スカラ座もこはれたやうですね。米と英のあの愚人ども、俗人ども、と我々は永遠に戦ふべきでありませう。
俗な精神が世界を蔽(おお)うた時、それは世界の滅亡です。
萩原氏が自ら日本人なるが故に日本人を、俗なる愚人どもを、体当りでにくみ、きらひ、さげすみ、蹴とばした
気持がわかります。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和18年8月20日、東文彦への書簡より

58 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 12:10:20 ID:WgWlDD+k.net
「東健兄を哭す」

十月八日の宵、秋雨にまじる虫のねのあはれにきこえるのに耳をすましてゐると、階下で電話が鳴つてゐる。
家のものがあたふたと梯子段をあがつてくる気配、なにがしにこちらもせきこんで、どこから?と声をかけると
「東さんが……お亡くなりに」「えッ」私は浮かした腰を思はず前へのめらせて、後は夢中で階段を駆け下り
電話にしがみついた。その電話で何をうかがひ、何をお答へしたか、皆目おぼえてゐない。
よみ路の方となられては、急いても甲斐ないものを見境なく、仕度もそこそこに雨の戸外へ出た。
渋谷駅までの暗い夜道をあるいてゆく時、私の頭は痺れたやうに、また何ものかに憑かれたやうに、ひたすらに
足をはやめさせるばかりであつた。さて何処へ、何をしに――さうした問は、ただ一つのおそろしい塊のやうになつて、
有無をいはせず私の心をおさへつけた。あらゆる心のはたらきを痴呆のやうに失はせてゐた。

平岡公威(三島由紀夫)18歳の弔辞

59 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 12:11:40 ID:WgWlDD+k.net
「東健兄を哭す」

(中略)
兄の御寿(みいのち)はみじかかつた。おのが与へられたる寿命を天職に対して、兄ほどに誠実であり潔癖であり
至純であつた人を寡聞にして私は知らない。私は兄から、文学といふもののもつ雄々しさを教へられたのである。
文学は兄にとつてあるひは最後のものではなかつたかもしれぬ。しかし文学をとほしてする生き方が、やがて
最高の生き方たり得るといふ信仰を、身を以て示された兄の如きに親炙することによつて、わがゆく道の
さきざきに常にかがやく導きの火をもちうる倖せが、こよなく切に思はれるこの大御代にあつて、唯一の
謝すべき人を失ふとは。……兄は病床にありながら、戦に処する心構においては、これまた五体の健全な人間の、
以て範とするに足るものであつた。幾度かわれわれの、あるときなお先走りな、あるときは遅きに失した足取りは、
却つて病床の兄の決してあやまたない足取りのまへに、恥かしい思ひをしたのである。
せめて勝利の日までの御寿をとまづ私はそれを惜しんだ。
(続く)

平岡公威(三島由紀夫)18歳の弔辞

60 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 12:12:15 ID:WgWlDD+k.net
「東健兄を哭す」

(中略)
文学は兄にとつて禊であり道場であつた。文学のなかでは一字一句の泣き言も愚痴も、いや病苦の片鱗だにも
示されなかつた。平生の御手紙には尚更のことであつた。
そこに私はニイチェ風な高い悲しみを思ひゑがいたのであつたが、兄、神となりましし日、私は、つねに完全なる
母君であられ、今世に二なき悲しみにつきおとされになつた御母堂から、けつして愚痴を言はれなかつた四年間の
まれまれに、余人にとつてもおそらく肺腑をゑぐるものがあつたであらうそこはかとない御呟きを伝へ伺つて、
ふともらされたその御呟き――かうして治るのもわからずに文学をやつてゐるのは辛いなあ(誤伝なれば謹んで
改めまゐらせん)――といふ一句を、なにかたとしへもない真実が岩間をもれる泉のやうにのぞいたすがたと覚え、
かつはかく守られねばならぬたをやかさが兄の奥処にあり、守られたればこそ久遠に至純であつたその真実を思つて、
文人の志の毅さとありがたさも今更に思ひ合はされ、御母堂の御心事に想到し奉つても、暗涙をのまずには
ゐられなかつたのである。
(続く)

平岡公威(三島由紀夫)18歳の弔辞

61 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 12:13:14 ID:WgWlDD+k.net
「東健兄を哭す」

(中略)
初の御通夜、み榊、燭の火、虫のね、雨のおと、……私は言葉もなかつた。平家物語のあれらのふしぎなほど
美しい文章がしづかに胸に漣を立ててきた。……かくも深い悲しみのなかになほ文学のおもはれるのを、心の
ゆとりとしもいはばいへ。兄だけはあの親しげななつかしい御目つきを、やさしく私に投げて肯いて下さるであらう。
御なきがらを安置まゐらせし御部屋は、ゆかり深くも、足掛け四年前、はじめて兄におめにかかつた御部屋であつた。
そして今か今かとその解かれるのをこひねがつた永い面会謝絶のあとで、まちこがれてゐた再度の対面は、
おなじお部屋の、だが決しておなじになりえぬ神のおもかげに向かつてなされた。
私はなにかひどく自分が老いづいた心地がしてならなかつた。
徳川義恭兄、ありしままなるおん顔ばせを写しまゐらせ給ふ。感にたへざるものあり。
みそなはせ義恭大人が露の筆
道芝の露のゆくへと知らざりし
つねならぬ秋灯とはなかなかに

――昭和十八年十月九日深更――
平岡公威(三島由紀夫)18歳の弔辞

62 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 15:00:39 ID:WgWlDD+k.net
にはかにお召しにあづかり三島君よりも早くゆくことになつたゆゑ、たまたま得し一首をば記しのこすに

よきひととよきともとなりひととせを
こころはづみておくりけるかな

蓮田善明
昭和18年8月、召集をうけて戦地へ向かう際に三島由紀夫へ残した訣別の一首


古代の雪を愛でし
君はその身に古代を現じて雲隠れ玉ひしに
われ近代に遺されて空しく
靉靆の雪を慕ひ
その身は漠々たる
塵土に埋れんとす

平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年11月、蓮田善明への追悼の文

63 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 15:01:09 ID:WgWlDD+k.net
   遺言       平岡公威(私の本名)

一、御父上様
  御母上様
  恩師清水先生ハジメ
  學習院並ニ東京帝國大學
  在學中薫陶ヲ受ケタル
  諸先生方ノ
  御鴻恩ヲ謝シ奉ル
一、學習院同級及諸先輩ノ
  友情マタ忘ジ難キモノ有リ
  諸子ノ光榮アル前途ヲ祈ル
一、妹美津子、弟千之ハ兄ニ代リ
  御父上、御母上ニ孝養ヲ尽シ
  殊ニ千之ハ兄ニ続キ一日モ早ク
  皇軍ノ貔貅(ヒキユウ)トナリ
  皇恩ノ万一ニ報ゼヨ
天皇陛下萬歳


三島由紀夫「私の遺書」より

64 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 15:23:03 ID:WgWlDD+k.net
たゞいま午後七時半、マダガスカルとシドニイへの特殊潜航艇の攻撃のニュースをきゝをはりこのお葉書を書いて
をります。なんだか胸になにか閊(つか)へたやうで迚(とて)も並大抵のことばでお話できさうにもございません。
御稜威(みいつ)のありがたさに涙があふれおちるばかりでございます。同時に晴朗な気分は抑へがたく、
南方のまつ青な穹(そら)いつぱいに八百万神の咲(わら)ひ声をきくおもひがいたします。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和17年6月5日、清水文雄への葉書より

65 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 15:29:30 ID:WgWlDD+k.net
この間の三里塚の行軍では「月かたぶきぬ」の情景を季節こそちがへ、目のあたりはじめて味はひました。
正しく土佐絵にゑがかれた大胆な霞のあちらに松林の、つらなる松かげはそのかなたから虹のやうな曙を、
靉靆(あいたい)とたなびかしてまゐる向ひの空には、月がしづかな煌めきをみせていまにもひらひらと
おちてきさうでございました。日本画はなにひとつ嘘はつかなかつたのでございます。そのゑがかれる絵具に
ひとつとして日本の土におひいでぬものがないやうに日本の風光を画絹にとゞめようといふ切ない意欲が
かうまでたしかさをもつてゐるとは、私はいままで心附きませんでした。写実を旨とする油絵も、いくら
写実の枠をつくしたところで掴めないこの風土の秘密に狐につままれたやうな思ひがいたすでせう。この三日の
式のあと、明治神宮に詣でてやはりそれを感じました。
畏(かしこ)くも御神殿のおんありさまは申すまでもなく、なんでもない風景、紅白の幕が万緑の松のあひだに
張りめぐらされた景色でさへ、そのあでやかさは桃山時代の屏風のやうでございましたが、そのなかゝら
歌謡曲がちらときこえてきたのにはおそれいりました。浪花ぶしでないからよいやうなものゝ。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和17年11月5日、清水文雄への書簡より

66 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 15:30:42 ID:WgWlDD+k.net
この間徳川さんと志賀直哉氏の御宅にうかゞひ、意外なサッパリしたよい方で、御作の印象と比べふしぎの
感さへいたしました。
志賀氏はなにしろ大物にて、我々としても摂るべきところも多くあり、決して摂つてはならぬ所も多々あり、
こちらの気持がしつかりしてゐれバ、決して単なるわがまゝな白樺式自由主義者ではいらつしやらぬことを思ひました。
今の世の隠者の一模範とさへ思はれますが、仰言ることは半ばは耳傾けてうかゞつて頗る有益なことであり、
半ばは、我らの学ぶべき考へ方ではないといふことでございました。

平岡公房(三島由紀夫)
昭和18年7月29日、清水文雄への書簡より

67 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 15:35:00 ID:WgWlDD+k.net
日本の近代詩人のなかで、伊東静雄氏は私のもつとも敬愛する詩人であり、客観的に見ても、一流中の一流だと思ふ。
その煮えたぎつて煮つまつた抒情の底から、一粒一粒宝石をひろひ出すやうな作業は、おそろしいほど自虐的な
苦業だつたと思はれる。作品の上には完全な悲痛の静謐だけが現はれてゐる。伊東静雄氏の詩は私の青春の師であつた。
氏は浪漫派に属してゐるやうに言はれてゐるが、その一面をゲエテ的な明朗な古典精神が支へてゐるのである。

三島由紀夫「伊東静雄全集推薦の辞」より

68 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/22(水) 12:28:59 ID:1+/cfoTY.net
少年の最初の時期は、異性愛的なものと同性愛的なものが、非常に混在してをります。


私にもごたぶんに漏れず赤紙が来ましたが、即日帰郷になつて帰つて以来、ぱつたり
忘れたやうに、もう二度と来ませんでした。
…それはいつまで待つても来ない恋文のやうなもので、しかしいつ訪れるかわからないのでした。
来るのをおそれながら、みな何となくその赤紙を待つような気持ちにもなつてゐました。

三島由紀夫「わが思春期」より

69 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/22(水) 12:34:19 ID:1+/cfoTY.net
窓の外の雨にぬれた田園の景色をながめながら、何もかも見をさめだといふ気がしてゐました。
あんな不思議な感情は、今の若い人は知るまいと思ひます。もう負けるにきまつてゐる
この戦争は、おそらく日本国民の全滅をもつて終るだらうし、目の前にあるものは
惨たんたる破局だけ、要するに死だけでありました。ですから何を見るにも見をさめ
といふ気がしたし、ある楽しみを味はつても、それは最後の味だと思ふのでした。
ですから感覚は生き生きとし、つまらない事物にも、それを見ることに喜びを感じ、
ちやうど雨季に入りかけた木々の緑のしたたりも、実に新鮮に目に映るのでした。

三島由紀夫「わが思春期」より

70 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/23(木) 10:31:16 ID:xumr5SBF.net
「BL作品の氾濫は少子化の原因。児童ポルノとは別枠で小説も含めた厳しい規制が必要」
「ゲーム脳」の提唱者・森昭雄日大教授の新著「ボーイズラブ亡国論」(産経新聞社刊)
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/news2/1221494175/

71 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/23(木) 10:45:33 ID:32nqiDE4.net
叙事詩人とは何者でせう。一体そんな人はゐたのでせうか。僕はこの時代にもどこかに生き永らへてゐるやうに
信じられる一人の象徴的人物のことを考へてゐるのでせう。
その人の目にはあらゆる貴顕も英雄も庶民も、「生存した」といふ旺(さか)んな夢想に於て同一視されます。
その人の目には愛情の遠近法が無視される如く見えながら、実は時代の経過につれてはじめて発見されるやうな
霊妙な透視図法を心得てゐます。その人の魂の深部では、信じ合へずに終つた多くの魂が信じ合ふことを
知るやうになります。その人は変様であつて不変であり、無常であつて常住であります。

三島由紀夫「M・H氏への手紙――人類の将来と詩人の運命」より

72 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/23(木) 10:46:08 ID:32nqiDE4.net
その人こそは亡ぼさうと意志する「時」の友であり、遺さうと希ふ人類の味方です。
不死なるものと死すべきものとの渚に立ち、片方の耳はあの意慾の嵐の音をきき、片方の耳はあの運命の潮騒に
向つてそばだてられてゐます。その人は言葉の体現者であるとも言へませう。言葉はその人に在つては、
附せられた素材性を払ひ落し、事実を補へるのではなしに事実のなかに生き、言葉そのものがわれわれの
秘められた願望とありうべき雑多な反応とを内に含んで生起します。我々が手段として言葉を使役するのではなく、
言葉が我々を手段化するのです。――かくて叙事詩人は非情な目の持主です。
安易な物言ひが恕(ゆる)されるなら、人間への絶望から生れた悲劇的なヒュマニティの持主だと申しませうか。

三島由紀夫「M・H氏への手紙――人類の将来と詩人の運命」より

73 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/23(木) 10:46:29 ID:32nqiDE4.net
(中略)
思ひかへせばかへすほど、愚かな戦争でした。僕には日本人の限界があまりありありとみえて怖ろしかつたのでした。
もうこれ以上見せないでくれ、僕は曲馬団の気弱な見物人のやうに幾度かさう叫ばうとしました。
戦争中には歴史が謳歌されました。しかし彼らはおしまひまで、ニイチェの「歴史の利害について」の歴史観とは
縁なき衆生だつたとしか思へません。
戦争中には伝統が讃美されました。しかしそれは、嘗てロダンが若き芸術家たちに遺した素朴な言葉を理解する
ことができるほど謙虚なものであつたでせうか。

三島由紀夫「M・H氏への手紙――人類の将来と詩人の運命」より

74 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/23(木) 10:46:53 ID:32nqiDE4.net
ロダンは極めてわかりやすく慈父のやうに説いて居ります。
「(略)伝統を尊敬しながら、伝統が永遠に豊かに含むところのものを識別する事を知れ。それは『自然』と
『誠実』との愛です。此は天才の二つの強い情熱です。皆自然を崇拝しましたし又決して偽らなかつた。
かくして伝統は君達にきまりきつた途から脱け出る力になる鍵を与へるのです。伝統そのものこそ君達にたえず
『現実』を窺ふ事をすすめて或る大家に盲目的に君等が服従する事を防ぐのです」――この大家といふ言葉は、
古典と置きかへてみてもよいかもしれません。
戦争中にはまた、せつかちに神風が冀(ねが)はれました。神を信じてゐた心算(つもり)だつたが、実は
可能性を信じてゐたにすぎなかつたわけです。可能性崇拝といふ低次な宗教に溺れてゐたのです。

三島由紀夫「M・H氏への手紙――人類の将来と詩人の運命」より

75 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/28(火) 07:56:17 ID:0UNfGFMM.net
温家宝が宴会を始めました費用は日本が払うようです出席者は
中国と北朝鮮とロシアですあれっ日本は?
日本は金を出すだけです
ついでに領土も少し譲渡したみたいです 
暴力ふるう中国の被災地にお金もくれたようです
日本はなんて優しい国なんでしょう
アメリカ様は知らん顔です今日も日本にいるアメリカ様はエアコンつけっぱで
お出かけしてます。


76 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/01(金) 20:26:21 ID:qTK/eNlh.net
僕はキラキラした安つぽい挑発的な儚い華奢なものすべて愛した。サーカスの人々をみて僕は独言した。
「ああいふ人たちは」と僕は思つた。「音楽のやうに果敢で自分の命を塵芥かなぞのやうに思ひ、浪費と放蕩の
影にやゝ面窶(おもやつ)れし、粗暴な美しさに満ちた短い会話を交はし、口論に頬を紅潮させながらすぐさま
手は兇器に触れ、平気で命のやりとりするであらう。彼らは浪漫的な放埒な恋愛をし、多くの女を失意に泣かせ、
竟には必らずや、路上に横はつて死ぬであらう」と。僕は又、天勝の奇術舞踏に出てくる大ぜいの薔薇の
騎士たちを愛した。彼女達は、楽屋でも、日々の生活の上でも、あの危険な、胡麻化しにみちた、侘びしく絢爛な、
表情と身振りとを、決して忘れまいと思はれた。そこには僕の幼時にとつて禁断の書物であつた講談倶楽部や
キングや新青年に出てくる血みどろの挿絵のやうな、美しい生き方がされてゐるのだと僕は疑はなかつた。
長い剣が触れ合ふたびごとに本当に紫や赤の火花がとびちり、銀紙や色ブリキで作られた衣装が肉惑的に
ゆすぶれ乍らキラキラきらめきわたるのをみて、僕は自分の胸がどうしてこんなに高鳴るのかわからなかつた。

三島由紀夫「扮装狂」より

77 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/01(金) 20:27:49 ID:qTK/eNlh.net
僕が何かになつてみたいなあと思ふとき、それは大抵派手な制服であつた。僕の幼な友達もそれに心から同感した。
即ちエレヴェータア・ボーイであり花電車の運転手であり地下鉄の改札掛である。地下鉄の構内には一種麻薬の
やうな匂ひがある。日もすがらさういふ匂ひを吸ひ眩ゆい電灯の白光にその多くの金釦をかゞやかせてくらして
ゐるといふことが、彼等を尚更のこと神秘の人種めかしてみせる。僕には到底ああはなれまいと幼な心にも
思はれた。それで一そう憧れは険しくなる。――ホテルのエレヴェータア・ボーイや花電車の運転手といふ職業ほど、
此世に危険な悲劇的なやけつぱちな職業はないといふ風に感ぜられる。僕はホテルなどで彼等に話しかけられると、
不良少年によびとめられたやうに我しらずドギマギした。

三島由紀夫「扮装狂」より

78 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/01(金) 20:30:32 ID:qTK/eNlh.net
僕は少年期に入る。ブラと仇名された四つ五つも年上の少年。彼は落第してきて僕らのクラスで暴君のやうに振舞ふ。
僕はすぐさま彼に英雄を発見した。言ひかへればサーカスの人を。彼を不良だと呼ぶことは実にすばらしい
信仰である。僕は彼と対等な口をきゝながら息がつまりさうな気がした。それほどまでに僕は無理を犯した。
彼の白い絹のマフラーは、派手な沓下はまことに好かつた。(中略)
ブラの魂は人には言へぬ暗い汚濁のために哭きつゞけてゐる。――僕はさう思つて同情に惑溺した。そして
その同情が扮装欲のわづかな変形であることには気附かないでゐた。……ブラはしばしば学校を欠席しはじめた。
それでも偶には来る。あるとき用事で遅くなつて僕は夕日のほの明るいロッカア室へカバンをとりにゆくために
入らうとした。すると学生監室のドアが陰気に開いてブラが出てくる。ブラは無理に笑ふ。おおでも目の赤いこと。
君でも泣くのかと僕は責めたいやうな気持だつた。僕はだまつてゐた。ブラは学生監の悪口を二言三言云つた。
僕は悪口をいふブラが好きである。一緒にかへらうと誘つたところが、珍らしくもブラは承引した。

三島由紀夫「扮装狂」より

79 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/01(金) 20:33:54 ID:qTK/eNlh.net
(中略)桜のトンネルを出たときにブラは僕の顔をみないで軽蔑したやうな口調で言つた。――
「平岡! 貴様接吻したことある?」僕は後から来ていきなり目をふさがれたやうな気持であつた。僕はもう
ドキドキが止まらなくなつてしまつた。上ずつた声で僕は返事をせずにはゐられなかつた。「いや、ないんだ、
一度も」「フン」とブラは感興がなささうに云つた。「面白くもなんともないぜ。やつてみりやあね」――
二人は赤い煉瓦造のボイラア室のそばをとほつた。蝶々がうるさく足にからんだ。
「もう、俺、いゝところへいつちやふんだ」
「ぢやもう逢へないかもしれないね」
「逢いたかないや」
僕にはこんな露骨な愛情の表現ははじめてだつた。なんといふ粗暴な美しい話術。僕は一瞬、僕も亦サーカスの
人々の絵の中にゐると感じた。僕は返事ができなかつた。僕は耳傾けた。その言葉がもう一度くりかへされる
やうにと。……
だがブラはだまつたまゝ歩きつゞけ、いつのまにか僕らは裏門から、灯のつき初めた町の一劃へ出てゐた。

三島由紀夫「扮装狂」より

80 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/03(日) 19:46:41 ID:0FaJQh+S.net
偶然邦子にめぐりあつた。試験がすんだので友達をたづね、留守だつたので、二時にかへるといふので、近くを
ぶらぶらあてどもなく歩いてゐた時、よびとめられた。
彼女は前より若く却つて娘らしくなつてゐた。口のはじにはおしろいでもかくれない薄いヒゲがやはりあつた。
…彼女は前のやうな重つくるしい丁寧すぎる言葉遣いはなくなつてゐた。(中略)
「さよなら…お大事に」……云ひちがへて「お元気で」
「ええ」彼女は背を向けた。
…その日一日僕の胸はどこかで刺されつゞけてゐるやうだつた。
前日まで何故といふことなく僕は、「ゲエテとの対話」のなかの、彼が恋人とめぐりあふ夜の町の件を何度も
よんでゐたのだつた。それは予感だ。
世の中にはまだふしぎがある。
そしてこの偶然の出会は今度の小説を書けといふ暗示なのか?書くなといふ暗示なのか?

平岡公威(三島由紀夫)21歳のノートより

81 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/03(日) 19:49:04 ID:0FaJQh+S.net
僕は婚約した彼女を一度誘い出して話したいという計画を抱いてゐた。ところが突然別の僕がそれを気狂い沙汰だと
叫び出す。向ふの家の父は吃驚して怒り出すだらう。かりにも婚約した以上、ひとのものをと! 
ところが「冷静な」僕がじつくりと別の僕をなだめてかゝる。一度位ゐそれも昼内一緒に出かけたつて何の
悪いことがあらう。まして昔は仲の好すぎた友達だつたのだもの。向ふの家人も平気で彼女をだしてやるだらう。
お前のやらうとしてゐることはひどく常識的なことにすぎないのだと。

平岡公威(三島由紀夫)21歳のノートより

82 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/03(日) 19:53:33 ID:0FaJQh+S.net
彼女はレインコートさへ脱ぎたがらなかつた。まるでそれが下着ででもあるかのやうに。だから僕の彼女の
抱心地はゴワゴワした感触しか残らない。それのみか彼女は、唇を吸ふにまかせて自ら吸おうとしなかった。
また抱かれるにまかせて抱かうとしなかつた。彼女はお人形のやうに強ばつてゐた。そして戦争中の人目の
うるさゝから殆どお化粧をしてゐなかつた。そしていさゝか子供つぽすぎる横顔をますます子供つぽく見せてゐた。
――ところが彼女との間を第三者が隔てゝから彼女は急に美しくなり出した。
僕は彼女を真夏の薄着で、いささか厚化粧で抱きえなかつたことを後悔した。
彼女は今宵は頗る美しくみえた。彼女の白いレエスに包まれた胸のあたりに花房のやうに揺れるものを今日ほど
烈しく僕は欲したことがなかつた。

平岡公威(三島由紀夫)21歳のノートより

83 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/04(月) 20:02:45 ID:D5njpggP.net
「『西洋古典学事典』を編んで」という記事を月刊「新潮」10月号で読みました(pp.234〜5)。
見開き2ページの短い文ですが、編者ならではの見識が、よく伺えました。
とくに中程からは痛快至極の傑作な内容。覚えず大笑いしてしまったほどです。
オーラルセックスに関心のある向きには必読のコラムでしょう。
これぞ余人には真似出来ぬウィットとエスプリに富んだ小エッセーですネ。

84 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/06(水) 12:14:06 ID:6oi8KZLY.net
○ もし僕に子供が出来て、彼が天才の名にあこがれたら僕はどう云つて叱り、またいさめよう。彼にこんな暗い、
寂寞たる青春は与へたくない。

○ 天才がたゞその作物によつてのみ天才といはれるなら僕は明らかに天才でないだらう。天才がたゞ彼の
夭折によつてのみ天才といはれるなら、僕は尚天才ではないだろう。
しかし天才はたしかにある。それは僕である。それは凡人のあづかりしれぬ苦悩に昼となく夜となく悩みつゞける魂だ。
それは生れ乍ら悲劇の子だ。それは神の私生児だ。

○ 天才とは青春の虐殺者である。

平岡公威(三島由紀夫)「わが愛する人々への果し状」より

85 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/06(水) 12:49:37 ID:6oi8KZLY.net
人々は又しても責めるだらう、僕の作品には時代の苛烈さがないと。
しかし評家はもう少し炯眼であるべきだ。全く平和な時代に仮託したこの物語で、僕はまざまざと戦争と乱世の
心理をゑがくことに芸術的な喜びを感じてゐる。
戦争時と戦後の心理のそのすべての比喩をよむ人はこゝによむ筈だ。芸術とはさういふものだからだ。
――昔ばく徒は外出するときは必ず新らしい褌をはいて出た。さういふ生き方は実に我々には親しいものに
なつてゐたのである。それは近代文学特有の不安と衰弱の心理とは別の、もつと張のある活々した心理だつた。


僕が心中物をデカダンスとしてでなく書かうとする気持にはこの根拠がある。
元禄期の近松西鶴の溌剌たる悲劇の精神(殊に前者の「堀河波鼓」後者の「好色一代女」の幻想)に僕は最も
大きな共鳴を感じて書いた。

平岡公威(三島由紀夫)21歳のノートより

86 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/06(水) 12:54:03 ID:6oi8KZLY.net
我々がある思ひ出から遁れようとすると、その思ひ出自身が我々をはなれて激しく生きようと試み出すのを
見ることがある。
このやうな時我々の生きる意味はいやでも思ひ出のそれと一致して了ふ。そして我々の死の意味も。

僕の作品は、それを成立せしめた凡ての条件への仮借なき復讐である。


堀辰雄は僕にシンプルになれと云つた。
しかしシンプルにならうとしてそれに成功するなんて、さうおいそれと出来るものぢゃない。
第一氏が例に引いた立原道造も僕はあんまり尊敬してゐない、ましてや氏自身の素寒貧な小説――すぐ微熱が出たり、
切なくなつたりする小説を書きたいと思はない。

平岡公威(三島由紀夫)21歳のノートより

87 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/06(水) 12:59:05 ID:6oi8KZLY.net
作中の架空の事実と作者とどちらが不確定か? 俗人は前者がさうだと考える。
そして目の前にある確実な「架空」はぼつぽり出して、血眼で不確かな、不必要な作者自身を作中から探り
出さうとする。
この眼差が一部の批評家にも具つてゐることは驚異に値する事実だ。


僕は詩人だ。一皮剥けば俗人だ。
もう一皮剥けば詩人だ。もう一皮剥けば俗人だ。
もう一皮剥けば詩人だ。ぼくはどこまで剥いても芯のない玉葱だ。


私は一寸も苦心しないで文壇に出たとか、処女作を書いて忽ち認められたとか自慢げに書いてゐる作家をみると
気の毒になる。
この低俗な日本の文壇が、いさゝかの抵抗も感ぜずに、みとめ且つとりあげる作品の価値など知れてゐるのだ。
こんなことをいふ作者に限つて真の独創性をこれつぽちも持つてゐない。
彼等は読者に抵抗しない。反抗しない。ジイドが十年間みとめられなかつた事実をもう少し考へてみる要はないか。

平岡公威(三島由紀夫)21歳のノートより

88 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/06(水) 13:01:23 ID:6oi8KZLY.net
新聞記事で「火の会」発足の報をきく。
馬鹿なことだ。その無理論性の主張もフランスでこそ意味があつた。
そもそも日本に文学上の主張の化物、個性そのものが独創的な主義になつたやうな偉大な文学者が出たか?
骨の髄までのリアリスト、ロマンチスト、自然主義者が出たか? 主義とドグマで天地を一色(そう色)に
ぬりつぶすやうな作品が出たか?
さういふものゝ一流がはびこつて息が出来なくなつたフランスでこそ意味のあつた運動だ。
日本でこんなことをはじめるのは、風車の化物にとびかゝるドン・キホーテよりばからしい。
彼等は浮草中の浮草たらんことを企てるだらう。まことに結構な御志しだ。
しかしたゞフランス帰りが寄り集まつて「パリなつかし」の仁輪加芝居をはじめようとするなら御勝手だ。
彼等のことだから気の利いた芝居はみせるだらう。尤も代は見てのお戻りだ。

平岡公威(三島由紀夫)21歳のノートより

89 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/06(水) 13:08:42 ID:6oi8KZLY.net
僕とラディゲのちがひは
(一)ラディゲはノルマルな心理の展開そのものゝ中にロマンをみるロマンティストだ。
僕は現実に絶対にありえないロマンチックな心理をあくまでリアルに具現しようとするレアリストだ。*
共に言葉の一層深い意味において。
*初期における谷崎潤一郎との比較。

(ニ)ラディゲが作品の主題とした倫理はカソリシズムの歴史的伝統であると共にフランス近代文学の
テクニックの一種だ。
プランセス・ド・クレーヴの倫理とはやゝ性質を異にする。――しかるに僕は日本の歴史的文学的伝統の命ずる
処に従ひ、倫理的契機を無視する。
倫理は日本文学史に於ては小さな役割を演じて来たに過ぎない。

平岡公威(三島由紀夫)21歳のノートより

90 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/06(水) 13:10:50 ID:6oi8KZLY.net
ラディゲを殺したのは彼の健康さだ。僕を長生きさせるのは僕の病的な性格だ。
僕はかくてあの烈しい「人間の第一義」からのがれるのだ。


ラディゲ*には模索がない。僕は模索をたよりに小説を書く。
*夭折した。僕は長生きする。


ラディゲは二度と書き直しのできぬ手習草紙を書いたのだった。
彼は異常な心理を書かないと公言した。しかし彼の二つの小説は共に有夫の婦との恋をゑがいてゐる。
しかもそれは単なる偶然ではなく、その恋のTypus にはぬきさしならぬ必然性がある。
この必然性なるものが既に異常なのではなからうか。


共産党には「時代意識」がない。

平岡公威(三島由紀夫)21歳のノートより

91 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/06(水) 23:48:50 ID:2YzPCbpb.net
韓国人詩人てなんで評価高いの?

詳しい人教えてよ。
小学生レベルの詩なのになんで?


92 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/17(日) 23:44:02 ID:I/1NvRfQ.net
>>91
別に評価高くないと思います。歴史的に評価の高い文学者も詩人も誰もいないから。

93 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/17(日) 23:47:13 ID:I/1NvRfQ.net
この本は私が今までそこに住んでゐた死の領域へ遺さうとする遺書だ。この本を書くことは私にとつて裏返しの
自殺だ。飛込自殺を映画にとつてフィルムを逆にまはすと、猛烈な速度で谷底から崖の上へ自殺者が飛び上つて
生き返る。この本を書くことによつて私が試みたのは、さういふ生の回復術である。


肉まで喰ひ入つた仮面、肉づきの仮面だけが告白をすることができる。告白の本質は「告白は不可能だ」といふことだ。


私は無益で精巧な一個の逆説だ。この小説はその生理学的証明である。私は詩人だと自分を考へるが、もしかすると
私は詩そのものなのかもしれない。詩そのものは人類の恥部(セックス)に他ならないかもしれないから。

三島由紀夫「『仮面の告白』ノート」より

94 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/17(日) 23:48:42 ID:I/1NvRfQ.net
比喩を用ひる。――私は鏡の中に住んでゐる人種だ。諸君の右は私の左だ。私は無益で精巧な一個の逆説だ。


逆手の一つ。――私は自伝の方法として、遠近法の逆を使ふ。諸君はこの絵へ前から入つてゆくことはできない。
奥から出てくることを強ひられる。遠景は無限に精密に、近景は無限に粗雑にゑがかれる。絵の無限の奥から
前方へ向つて歩んで来て下さい。

三島由紀夫「序文(『仮面の告白』用)」より

95 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/28(木) 18:07:15 ID:pl3o9zYh.net


96 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/31(日) 14:54:45 ID:9O+ITcgi.net
――国家儀礼と申せば、この間新(日)響へゆきましたら、たゞ戦歿勇士に祈念といへばよいものを、
ラウド・スピーカアが、やれ「聖戦完遂の前に一億一心の誓を示して」どうのこうのと御託宣をならべるので、
ヒヤリとしたところへ、「祈念」といふ号令、トタンにオーケストラが「海ゆかば」を演奏、――まるで
浅草あたりの場末の芝居小屋の時局便乗劇そのまゝにて、冒涜も甚だしく、憤懣にたへませんでした。
国家儀礼の強要は、結局、儀式いや祭事といふものへの伝統的な日本固有の感覚をズタズタにふみにじり、
本末を顛倒し、挙句の果ては国家精神を型式化する謀略としか思へません。主旨がよい、となればテもなく
是認されるこの頃のゆき方、これは芸術にとつてもつとも危険なことではありますまいか。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和18年9月25日、徳川義恭への書簡より

97 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/31(日) 14:55:56 ID:9O+ITcgi.net
今度の学制改革で来年か、さ来年、私も兵隊になるでせうが、それまで、日本の文学のために戦ひぬかねば
ならぬことが沢山あります。
去年の戦果に、国外国内もうこれで大丈夫と皆が思つてゐた時、学校へ講演に来られた保田與重郎氏は、
これからが大事、これからが一番危険な時期だと云はれましたが、今にしてしみじみそれがわかります。
文学を護るとは、護国の大業です。文学者大会だなんだ、時局文学生産文学だ、と文学者がウロウロ・ソハソハ、
鼠のやうにうろついてゐる時ではありません。この際、貴方下の御決心をうかゞひ、大へんうれしうございました。
たゞ、かういふ言葉の意味もお弁へ下さい。鹿子木博士の言葉、「今日大切なことは、億兆一心といふ事であり
総親和といふ事ではない。陛下が詔書の中でお示しあそばされてゐる億兆一心とは、億兆一心とは、億兆の者が
一つの心、国体の精神によつて一つになる事也」(ラウド・スピーカアのお題目も亦、億兆一心といふことばを
形式化し、冒涜するものでせう)。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和18年9月25日、徳川義恭への書簡より

98 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/05(金) 11:09:20 ID:/KMyyxFP.net
大島正満博士の「修学院の秋」といふ文章を読んだことがありますか。塩原太助の馬を舞台に観てふきだした
アメリカ少年が、秋たけなはの修学院を周遊して、ふと拾つた一葉の紅葉に、日本の秋――日本の荘厳な美の
真髄を悟るといふ美しい記録文で、今に忘れられません。
アメリカ人が六代目の鏡獅子を本当に味解しようとする努力、――と云ふより大国民としての余裕を持つてゐたら
戦争は起らなかつた。文化への不遜な態度こそ、戦争の諸でありませう。日本の高邁な文化を冒涜する国民は
必ず神の怒りにふれるのです。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年1月6日、三谷信への葉書より

99 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/05(金) 11:10:19 ID:/KMyyxFP.net
けふで丸五日間、丸つきり空襲がありません。不気味な不安。そのなかにも駘蕩たる春の日は窓辺まで
押しよせて来てゐます。(中略)
大学から、「肺浸潤でも何でもかまはんから出て来い」といつ呼出しがあるかわかりません。さうなつたら
さうなつた時のことです。
僕はこれから「悲劇に耐へる」というより、「悲劇を支へる」精神を錬磨してゆかなければ、と思ひます。
古代ギリシャ人にその範を仰がずとも、身近な巣林子の元禄時代は、我々に文芸復興が何であるかを、赤裸々に
教へてくれます。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年3月3日、三谷信への葉書より

100 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/05(金) 11:11:13 ID:/KMyyxFP.net
佐藤春夫氏が近く疎開されるので、林さんと、大垣といふ陸軍曹長の詩人と、伊東静雄のお弟子の庄野といふ
海軍少尉と僕と四人でウィスキーを携へてお別れに行きました。
僕は短冊に佐藤氏の殉情詩集のなかにある詩「きぬぎぬ」の一節
「みかへりてつくしをみなのいひけるはあづまをとこのうすなさけかな」
といふのを書いていたゞき、嬉しうございました。僕は自分でその日の先生を、
「春衣やゝくつろげて師も酔ひませる」「澪ごとに載せゆく花のわかれ哉」
とうたひました。本当に美しい晩でした。佐藤春夫氏はたしかに第一流の文豪であると思ひます。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年4月7日、三谷信への葉書より

101 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/05(金) 11:12:30 ID:/KMyyxFP.net
ルーズベルトが死にましたね、日本時間の十三日の金曜日に。新聞は良き敵将を失つて哀悼の意を表す、といふ
態度に出てゐて、結構だと思ひます。阿南大将が二年程前、アメリカの国旗をふみにじつて行進する日本軍を
写した劇映画をみて、「これでは国が危い。徳義の戦ひをやつてゐるのを忘れたのか」と嘆かれたさうですが、
この挿話をきいて、頗る阿南大将を尊敬しはじめました。軍人でかういふ立派な見識をもつてゐられることは
実にありがたいことです。今は亡き帝大国家主義憲法学の泰斗上杉慎吉博士が大正十三年に著はした「日米衝突の
必至と国民の覚悟」なる警世の大文章をよみ、その史眼の卓越、見識の高邁に深く搏たれました。(中略)
――今日偶然地下鉄新橋駅で稲田さん(今海軍中尉です)にあひました。沖縄で、特攻隊と共に敵艦へ
肉迫したのださうです。「くはしく話して下さい」と云つたら「いやだ、ネタにされるから」とにげられました。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年4月14日、三谷信への葉書より

102 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/06(土) 19:58:41 ID:w7Py+0fg.net
君と共に将来は、日本の文化を背負つて立つ意気込みですが、君が御奉公をすましてかへつてこられるまでに、
僕が地固めをしておく心算です。僕は僕だけの解釈で、特攻隊を、古代の再生でなしに、近代の殲滅――
すなはち日本の文化層が、永く克服しようとしてなしえなかつた「近代」、あの尨大な、モニュメンタールな、
カントの、エヂソンの、アメリカの、あの端倪すべからざる「近代」の超克でなくてその殺傷(これは超克よりは
一段と高い烈しい美しい意味で)だと思つてゐます。
「近代人」は特攻隊によつてはじめて「現代」といふか、本当の「われわれの時代」の曙光をつかみえた、
今まで近代の私生児であつた知識層がはじめて歴史的な嫡子になつた。それは皆特攻隊のおかげであると思ひます。
日本の全文化層、世界の全文化人が特攻隊の前に拝跪し感謝の祈りをさゝげるべき理由はそこにあるので、今更、
神話の再現だなどと生ぬるいたゝへ様をしてゐる時ではない。全く身近の問題だと思ひます。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年4月21日、三谷信への葉書より

103 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/06(土) 19:59:49 ID:w7Py+0fg.net
御葉書拝見。何はあれ、このやうな大変に際会して、しかも君とそれについて手紙のやりとりの出来るやうな
事態を、誰が予想し得たでせう。想像するだに、時代の異常さに想ひ到らずにはゐられません。かゝる事態は、
その型式や態様の如何はしばらく措き、夙に想像し得たところでした。今は何も語りたくありません。
これから勉強もし、文学もコツコツ落着いてやつて行きたいと思ひます。自分一個のうちにだけでも、最大の
美しい秩序を築き上げたいと思ひます。戦後の文学、芸術の復興と、その秩序づけに及ばず乍ら全力をつくして
貢献したいと思ひます。(中略)
すべては時代が、我々を我々の当面の責務に追ひやります。僕は少なくとも僕の廿代を、文化的再建の努力に
捧げたいと思つています。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年8月22日、三谷信への書簡より

104 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/11(木) 12:21:52 ID:SZZ2Ap9+.net
君のゐる戦後の軽井沢が見せた変化よりも、ずつと激しい変化が東京の街にあります。
一寸用があつて尾張町へ出ましたら、その人通りの激しさは戦前と少しも変りません。と云つても日本人が
物を買へるやうな店はたゞ一軒もないのです。進駐軍人気といふか、たゞもう妙な人気で、カーキ色やモンペ姿の
貧弱な汚ない日本人が右往左往してゐるのです。(中略)
――東京が「世界の大東京」だとか、何とか云つて大見得を切つてゐた時はいつしか、それが汚いアバタの
地図になつて了つたのと同様、乙にすまして馴れない絹靴下にハイヒールを穿いたり、頭をテカテカ光らせて
レディ・メードの背広で夜毎に押し出した連中の化けの皮が見事にはげ、女は自堕落なうす汚いモンペ姿、
男は工員がへりらしいカーキ色の菜葉服姿で、彼等の痴鈍、醜悪、無智の本性を惜しげもなく、いやむしろ
快よげに、発揮してゐるのです。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年10月5日、三谷信への書簡より

105 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/11(木) 12:23:14 ID:SZZ2Ap9+.net
進駐軍からの煙草漁りに眉をひそめて「日本人も堕落した」と慨嘆する人がありますが、これは些か見当外れな嘆息で、
現在の彼等の醜状は、彼等に何ものをもプラスせぬと共に、何ものをも彼等からマイナスしません。日本人は
何といふ下劣な卑賤な、しかし愛すべき国民でせうね!
僕は総じてこの妖精のやうな刻々変様する東京に甚だ愛着を感じてゐます。これは僕がたゞ東京で生れたから
といふだけではありますまい。祖母の先祖は旗本で江戸に永くをりましたから、亡くなつた祖母からきいた、
江戸―東京、明治―大正の東京の移りかはり、(おそらく祖母が生きてゐた頃は、東京はこれで一応完成して少くとも
二、三十年は目に立つ変化もないと思はれたのでしたが)それに加へて、僕がこの短い二十年に経験して来た
東京の変転、それが定めなく、うつろひやすいものであると思へば思ふほど、僕は東京を愛するやうになります。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年10月5日、三谷信への書簡より

106 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/11(木) 12:24:21 ID:SZZ2Ap9+.net
東京を愛する人は、あるひは知つてか知らずか、その流転の美しさを愛するのではないでせうか。
歴史と時には不変と変様の二態があり、不変は変様によつてその刻々の意味を与へられ、変様は不変に
基礎づけられてはじめて変様たり得ます。日本で云へば、東京と田園、それが変様と不変でせう。
僕のやうな「せつかち」は、山野の不変を歌ふ余裕と胸懐に乏しく、ここにゐて終始変様に向ひ、それに耐へ、
この変様を、歌ひ疲れるほど歌つてゐる外はありません。我々の目は変様のかゞやきをとらへた。流れる目こそ
流されない目であり、変様に遊ぶ目こそ不変の目です。僕はこのやうに自負して自ら慰めてゐます。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年10月5日、三谷信への書簡より

107 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/18(木) 19:40:51 ID:CdXGO2Xx.net
○ 私は眺める人間として生れたかのやうであり、幼時から行動を奪はれ、物事の観照と、人間の心理の分析に長じ、
静的な文体を作つたが、いつしか、その反対の行為者としての自分、抑圧されてゐた自分を発見した。しかし
言葉は全く身について、その感覚は幼時から養はれるものであるから、この新しい自分はほとんど言葉では
現はしやうがなかつた。それを私は肉体としてあらはしたのである。
行為者と存在者は別物であるけれど、観察者の目からは等価である。したがつて観察者の陥りやすい誤解は、
この二つを混同することである。私はのちになつてわかつた。しかし観察者の矜持は表現(言葉、知性)にあつて、
その目からは行為者は美しくはあるが、いつも粗雑に見える。そして行為者の矜持は存在形態あるひは運動形態の
終極的瞬間的な美にかかはるから、観察者はいつも卑しげな奉仕的なものと感じられる。この両者の間には
もちろん愛も成立するが、この両者に通暁することは人生の大切な知恵である。

三島由紀夫「魅死魔雪翁百八歳の遺言録――己惚れ」より

108 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/18(木) 19:43:27 ID:CdXGO2Xx.net
行為者と存在者はどちらが永遠でありうるか? これは肉体がほとんど抽象される迄に、純粋化された瞬間的行為と、
ただ存在する肉体美との、どちらが永遠かと問ふのと等しい。流れを中断した横断面が行為者であり、流れを
体現するものが存在者ともいへよう。しかしこの二つはいつも相交はり、行為者の最高の瞬間は、彫刻芸術のやうな
存在的芸術によつてあらはされ、存在者の最高の姿は、音楽のやうな流動的芸術、行為的芸術によつて
あらはされうる。肉体は自らの神殿である。魂はそこに収まつてゐる。肉体は心をこめて管理し磨き上げ、
魂も亦さうする。そしてうつろひやすい肉体はその瞬間々々を、言葉を用ひずに、能ふかぎり非分析的に、記録し、
保留し、記念すべきであり、魂の仕事にかまけて、これを怠つてはならぬのである。

三島由紀夫「魅死魔雪翁百八歳の遺言録――己惚れ」より

109 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/19(金) 23:22:39 ID:cAkmx+87.net
文学運動は運命的なものである、縁(えにし)である、八犬伝の八犬士の会合の如きものである、
といふ感じが僕にはします。それは理論体系を前提しません。但し解説と批判は後から
大いに必要です。併し命名も亦、後人の附するところに委ねてよろしいでせう。たゞ我々は
我々の中のデエモンの奮起を信ずるのみです。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年12月10日、野田宇太郎への書簡より

110 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/27(土) 12:38:59 ID:ZG2PHEkT.net
思ひがけなく帰京でき、時ならぬ正月を致し候。後で思へば、十四日はわが誕生日、――寮へかへりて、
速達及び御手紙拝見、殊に御母上様の御文章、感銘深く、ゆかりも深き廿一歳の一月十四日、御母上が御廿一にて、
小生を生ませ玉ひし記念の日に、わが家へかへれしも何かの縁。思へば思ふほど、御心づくしのホット・ケーキの
美味しさ、忘れがたく候。――豆、乾パンなどハ同室の諸君とわけ合ひ、けふすでに一缶、消費致候。田作は、
けふストーヴにて焼いて喰べ申候。おいしく候。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年1月17日、平岡梓、倭文重への葉書より

111 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/02(木) 15:50:04 ID:xQasRf0w.net
4月12日(水)雨
ソ連、人間衛星船打上げ、回収に成功。
僕はこれから宇宙へすぐ行けるということは嬉しいと思うが、下の方の人、貧乏な人を
まず助けてから(それを)すべきだと思う。
森田必勝
昭和36年(高校一年)の日記より


1月29日(月)晴
いっこうに雨が降らない。人間ってどうしてこんなに悩んだり、考えたりするのだろう。
ありそうもない、起りそうもないことを想像して、ああ俺はだめだ、とか、この世は何とバラ色なのだろうと
無邪気に遊んでいるチビさんや赤ン坊の寝顔がうらやましい。でも彼らも何時かは人間として悩まなければ
ならない時がやってくるのか、と思うとよく判らないが、人生のはかなさ、うつりかわりというものをつくづく
感じる。今はなにかしら、苦しい。おれの心を本当に判ってくれるのが、この世に何人いるだろうか? (中略)
僕は今一人の人を思い切り愛したい。(中略)M子を思いっ切り、死んでもいいから、何とかして彼女に俺の心が
判ってもらえないかなあ。

森田必勝
昭和37年(高校一年)の日記より

112 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/02(木) 15:50:56 ID:xQasRf0w.net
5月11日(金)晴
母へ
僕の母、白い手、黒い髪、白い大きな目、いつも天のどこかで僕を見守り、愛撫してくれる。お母さん、僕、
今日学校で寝た。かんにんだよ。でもどこかでお母さんの声が、必勝、あと十分だからがんばりなさい、と
聞こえてきたよ。(中略)そうか、お母さんのいる天国へ僕も行こうか。お父さんも待っていてくれると思うけど、
きっと仲が良いんでしょうね。僕も今、そんな友達を求めているんだけどなかなか現われない。僕は自分なりに
夢をもっているつもりだけれど実際、自分でも何になるか判りません。でも悪い人間にはならないつもりです。

森田必勝
昭和37年(高校二年)の日記より

113 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/02(木) 15:51:46 ID:xQasRf0w.net
9月2日(日)晴
年も17歳。浮わついたことは極度に避け立派な人間になりたい。おれには日本、いや世界を背負うという
義務がある。それにはしっかり落着いて勉強し、どんな苦境にも負けないファイトと、強い精神を学ぼう。
さいわい、おれにはもったいないぐらいのガールフレンドが出来た。誰からも好かれる立派な人、森田必勝に
なりたい。今から17ヶ月間、頭のわれるようなトレーニングをやる。そして日本をおれがにぎってやる。
どんな時にも負けない人間にしておく。必ずや何かの形でおれが日本をにぎってやる。雑草のようにかみついてやる
その基盤をしっかり作ろう。

森田必勝
昭和37年(高校二年)の日記より

114 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/02(木) 15:53:49 ID:xQasRf0w.net
10月19日(金)曇
死にたくないが、死についてすごくあこがれる。このままポッと死んでしまったところで悲しむ者はいないし、
遠いのじゃなくて漠然と憧れる。気ばかり焦って実際には少しも勉強していない。ああおれは情なくなってきた。
番数が下ったことが、ひしひしとのしてくる。でもいいさ。人間は学校の成績だけじゃないんだ。しっかりやろう、
どこまでも。


10月26日(金)晴
おいらは天下の雑草だい。踏まれても踏まれても起きあがり、ますます強くなるんだ。おれには恋が出来ないんだ。
おいらは親なしの雑草さ、大人のエゴ、そして浮世の煩わしさ、みんな肌で感じとるんだ。
人間にののしられ、恥かしめられ、何をされようったって胸をはって生き抜くんだ。雑草は心が広い、広い。
何でも包んでしまう人間だぞ。生れたときから、親がどういうものか判らない。だからおれは子供だけは、
『寂しい』と一言も言わせないようにしたい。

森田必勝
昭和37年(高校二年)の日記より

115 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/02(木) 15:55:07 ID:xQasRf0w.net
5月23日(金)曇がちの晴
浪人がこんなにつらいものとは、覚悟はしていたものの悲しい。俺自身辛いと思っていることが、一般の人には
遊びに見られるのだから、まったく立つ瀬がない。

10月17日(土)曇
最近の国際情勢を見ていると、頭がおかしくなりはしないかと心配だ。まず第一に頭にくるのは、中国の核実験、
しないでもいいものをしやがって全く頭へ来る。バカにつける薬は無しってところだ。

森田必勝
昭和39年(浪人)の日記より


6月15日(火)晴
つまらない。何のために生きているのだろう。判らん。判らない。頭が痛い。
きれいなものが、見たい。本当にきれいなものが―。美しい、素晴らしいものが、女性でもいい、絵でもいい、
音楽でもいい、とにかくきれいなものがみたい。

森田必勝
昭和40年(二浪)の日記より

116 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/03(金) 12:12:26 ID:xLCbF9rD.net
5月某日(日付不明)
きのうクラス委員会で、早稲田精神丸出しの勇敢な先輩と知り合った。総会で、革マルの一方的な議事進行と、
独善的な議事内容に怒って革マルのヤツらに単身、喰ってかかっていた。(中略)
左翼に対決して学園正常化のために奮闘しているグループがあることを初めて知る。それでこそワセダ精神だ!

森田必勝
昭和41年(大学一年)の日記より

1月某日(日付不明)
日文研でも早稲田祭で「紀元節考」の展示をやったが、ぼくらも少しは民族の正気回復のために役立ったのだろう。
しばし「古事記」や「日本書記」の由来や日本人の祖先について討論。先輩達の博識におどろいた。考えてみれば、
ぼくらの高校の歴史教科書は、民族のロマンなんかぜんぜん教えてくれなかった。日教組が悪いことにして
先輩達に質問集中。

森田必勝
昭和42年(大学一年)の日記より

117 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/16(木) 23:48:53 ID:sTXFI/pY.net
益荒男が たばさむ太刀の 鞘鳴りに
幾とせ耐へて 今日の初霜

散るをいとふ 世にも人にも 先駆けて
散るこそ花と 吹く小夜嵐

三島由紀夫 辞世の句

今日にかけて かねて誓ひし 我が胸の
思ひを知るは 野分のみかは

森田必勝 辞世の句


火と燃ゆる 大和心を はるかなる
大みこころの 見そなはすまで

小賀正義


雲をらび しら雪さやぐ 富士の根の
歌の心ぞ もののふの道

小川正洋


獅子となり 虎となりても 国のため
ますらをぶりも 神のまにまに

古賀浩靖

118 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/20(月) 13:07:55 ID:GpGJvkCH.net
かけまくもあやにかしこき
すめらみことに伏して奏(まを)さく
今、四海必ずしも波穏やかならねど
日の本のやまとの国は
鼓腹撃壌(こふくげきじやう)の世を現じ
御仁徳の下(もと)、平和は世にみちみち、
人ら泰平のゆるき微笑みに顔見交はし
利害は錯綜し、敵味方も相結び、
外国(とつくに)の金銭は人らを走らせ、
もはや戦ひを欲せざる者は卑劣をも愛し、
邪まなる戦ひのみ陰にはびこり
夫婦朋友も信ずる能(あた)はず
いつはりの人間主義をなりはひの糧となし
偽善の茶の間の団欒は世をおほひ
力は貶(へん)せられ、肉は蔑(なみ)され
若人らは咽喉元をしめつけられつつ
怠惰と麻薬と闘争に、
かつまた望みなき小志の道へ
羊のごとく歩みを揃へ
快楽もその実を失ひ
信義もその力を喪ひ、魂は悉く腐蝕せられ、
年老いたる者は卑しき自己肯定と保全をば、
道徳の名の下に天下にひろげ
真実はおほひかくされ
道ゆく人の足は希望に躍ることかつてなく
なべてに痴呆の笑ひは浸潤し、
魂の死は行人の顔に透かし見られ、
よろこびも悲しみも須臾(しゆゆ)にして去り、

三島由紀夫「悪臣の歌」より

119 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/20(月) 13:11:02 ID:GpGJvkCH.net
清純は商(あきな)はれ、淫蕩は衰へ、
ただ金(かね)よ金よと思ひめぐらせば
金を以てはからるる人の値打も、
金よりもはるかに卑しきものとなりゆき、
世に背く者は背く者の流派に、
生(なま)かしこげの安住の宿りを営み、
世に時めく者は自己満足の
いぎたなき鼻孔をふくらませ、
ふたたび衰弱せる美学は天下を風靡し、
陋劣(ろうれつ)なる真実のみがもてはやされ、
人ら四畳半を改造して
そのせまき心情をキッチンに磨き込み
車は繁殖し、無意味なる速力は魂を寸断し、
大ビルは建てども大義は崩壊し
窓々は欲球不満の蛍光灯にかがやき渡り、
人々レジャーへといそぎのがるれど
その生活の快楽には病菌つのり
朝な朝な昇る日はスモッグに曇り、
感情は鈍磨し、鋭角は磨滅し、
烈しきもの、雄々しき魂は地を払ふ。
血潮はことごとく汚れて平和に温存せられ
ほとばしる清き血潮はすでになし。
天翔(あまが)けるもの、不滅の大義はいづくにもなし。
不朽への日常の日々の
たえざる研磨も忘れられ、
人みな不朽を信ぜざることもぐらの如し。かかる日に、
――などてすめろぎは人間(ひと)となりたまひし。

三島由紀夫「悪臣の歌」より

120 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/20(月) 13:16:43 ID:GpGJvkCH.net
かけまくもあやにかしこき
すめらみことに伏して奏(まを)さく。
かかる世に大君こそは唯御一人
人のつかさ、人の鑑(かがみ)にてましませり。
すでに敗戦の折軍将マッカーサーを、
その威丈高なる通常軍装の非礼をものともせず
訪れたまひしわが大君は、
よろづの責われにあり、われを罰せと
のたまひしなり。
この大御心(おほみこころ)、敵将を搏(う)ちその卑賤なる尊大を搏ち
洵(まこと)の高貴に触れし思ひは
さすがの傲岸をもまつろはせたり。
げに無力のきはみに於て人を高貴にて搏つ
その御けだかさはほめたたふべく、
わが大君は終始一貫、
暴力と威武とに屈したまはざりき。
和魂(にぎみたま)のきはみをおん身にそなへ
生物学の御研究にいそしまれ、
その御心は寛厚仁慈、
なべてを光被したまひしなり。
民の前にお姿をあらはしたまふときも
いささかのつくろひなく、
いささかの覇者のいやしき装飾もなく
すべて無私淡々の御心にて
あまねく人の心に触れ、

三島由紀夫「悪臣の歌」より

121 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/20(月) 13:18:54 ID:GpGJvkCH.net
戦ひのをはりしのちに、
にせものの平和主義者ばつこせる折も
陛下は真の人の亀鑑、
静かなる御生活を愛され、
怒りも激情にもおん身を委(ゆだ)ねず、
静穏のうちに威大にましまし
御不自由のうちに自由にましまし
世の範となりぬべき真の美しき人間を、
世の小さき凹凸に拘泥なく
終始一貫示したまひき。
つねに陛下は自由と平和の友にましまし、
仁慈を垂れたまひ、諸人の愛敬を受けられ
もつとも下劣なる批判をも
春の雪の如くあはあはと融かしたまへり。
政治の中心ならず、経済の中心ならず、
文化の中心ならず、ただ人ごころの、
静止せる重心の如くおはし給へり。
かかる乱れし濁世(ぢよくせ)に陛下の
白菊の如き御人柄は、
まことに人間の鑑にして人間天皇の御名にそむきたまはず、
そこに真のうるはしき人間ありと感ぜらる。
されどこはすべて人の性(さが)の美なるもの、
人のきはみ、人の中の人、人の絶巓(ぜつてん)、
清き雪に包まれたる山頂なれど
なほ天には属したまはず。すべてこれ、
人の徳の最上なるものを身に具(そな)はせたまふ。
――などてすめろぎは人間(ひと)となりたまひし。

三島由紀夫「悪臣の歌」より

122 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/20(月) 17:05:57 ID:GpGJvkCH.net
かへりみれば陛下はかの
人間宣言をあそばせしとき、
はじめて人とならせたまひしに非ず。
悪しき世に生(あ)れましつつ、
陛下は人としておはしませり。
陛下の御徳は終始一貫、人の徳の頂きに立たせたまひしが、
なほ人としてこの悪しき世をすぐさせ給ひ、
人の中の人として振舞ひたまへり。
陛下の善き御意志、陛下の御仁慈は、
御治世においていつも疑ふべからず。
逆臣佞臣(ねいしん)囲りにつどひ、
陛下をお退(さが)らせ申せしともいふべからず。
大事の時、大事の場合に、
人として最良の決断を下したまひ、
信義を貫ぬき、暴を憎みたまひ
世にたぐひなき明天子としてましましたり。
これなくて、何故にかの戦ひは
かくも一瞬に平静に止まりしか。
されどあへて臣は奏す。
――などてすめろぎは人間(ひと)となりたまひし。

三島由紀夫「悪臣の歌」より

123 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/20(月) 17:09:03 ID:GpGJvkCH.net
陛下の大御代(おおみよ)はすでに二十年の平和、
明治以来かくも長き平和はあらず、
敗れてのちの栄えといへど、
近代日本にかほどの栄えはあらず。
されど陛下の大御代ほど
さはなる血が流されし御代もなかりしや。
その流血の記憶も癒え
民草の傷も癒えたる今、
臣今こそあへて奏すべき時と信ず。
かほどさはなる血の流されし
大御代もあらざりしと。
そは大八洲(おほやしま)のみにあらず
北溟(ほくめい)の果て南海の果て、
流されし若者の血は海を紅(くれな)ゐに染め
山脈を染め、大河を染め、平野を染め、
水漬(みづ)く屍は海をおほひ
草生(くさむ)す屍は原をおほへり。
血ぬられし死のまぎはに御名を呼びたる者
その霊は未だあらはれず。
いまだその霊は彼方此方(かなたこなた)に
むなしく見捨てられて鬼哭(きこく)をあぐ。
神なりし御代は血潮に充ち
人とまします御代は平和に充つ。
されば人となりませしこそ善き世といへど
――などてすめろぎは人間(ひと)となりたまひし。

三島由紀夫「悪臣の歌」より

124 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/21(火) 11:08:50 ID:uofXgdqQ.net
御代は血の色と、
安き心の淡き灰色とに、
鮮やかに二段に染め分けられたり。
今にして奏す、陛下が人間(ひと)にましまし、
人間として行ひたまひし時二度ありき、
そは昭和の歴史の転回点にて、
今もとに戻すすべもなけれど、
人間としてもつとも信実、
人間としてもつとも良識、
人間としてもつとも穏健、
自由と平和と人間性に則つて行ひたまひし
陛下の二くさの御行蔵あり。
(されどこの二度とも陛下は、
民草を見捨てたまへるなり)
一度はかの二、二六事件のとき、
青年将校ども蹶起(けつき)して
重臣を衂(ちぬ)りそののちひたすらに静まりて、
御聖旨御聖断を仰ぎしとき、
陛下ははじめよりこれを叛臣とみとめ
朕の股肱(ここう)の臣を衂りし者、
朕自ら馬を進めて討たんと仰せたまひき。
重臣は二三の者、民草は億とあり、
陛下はこの重臣らの深き忠誠と忠実を愛でたまひ
未だ顔も知らぬ若者どもの赤心のうしろに
ひろがり悩める民草のかげ、
かの暗澹たる広大な貧困と
青年士官らの愚かなる赤心を見捨て玉へり。

三島由紀夫「悪臣の歌」より

125 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/21(火) 11:12:21 ID:uofXgdqQ.net
こは神としてのみ心ならず、
人として暴を憎みたまひしなり。
されど、陛下は賢者に囲まれ、
愚かなる者の血の叫びをききたまはず
自由と平和と人間性を重んぜられ、
その民草の血の叫びにこもる
神への呼びかけをききたまはず、
玉穂なすみづほの国の
荒れ果てし荒蕪(くわうぶ)の地より、
若き者、無名の者の肉身を貫きたりし
死の叫びをききたまはざりき。
かのとき、正に広大な御領の全てより、
死の顔は若々しく猛々しき兵士の顔にて、
たぎり、あふれ、対面しまゐらせんとはかりしなり。
直接の対面、神への直面、神の理解、神の直観を待ちてあるに、
陛下は人の世界に住みたまへり。
かのときこそ日本の歴史において、
深き魂の底より出づるもの、
冥人の内よりうかみ出で、
明るき神に直面し、神人の対話をはかりし也。
死は遍満し、欺瞞をうちやぶり、
純潔と熱血のみ、若さのみ、青春のみをとほして
陛下に対晤(たいご)せんと求めたるなり。
されど陛下は賢き老人どもに囲まれてゐたまひし。
日本の古き歴史の底より、すさのをの尊(みこと)は
理解せられず、聖域に生皮を投げ込めど、
荒魂は、大地の精の血の叫びを代表せり。
このもつとも醇乎たる荒魂より
陛下が面をそむけたまひしは
祭りを怠りたまひしに非ずや。
――などてすめろぎは人間(ひと)となりたまひし。

三島由紀夫「悪臣の歌」より

126 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/21(火) 11:16:51 ID:uofXgdqQ.net
二度は特攻隊の攻撃ののち、
原爆の投下ののち終戦となり、
又も、人間宣言によりて、
陛下は赤子を見捨てたまへり。
若きいのちは人のために散らしたるに非ず。
神風とその名を誇り、
神国のため神のため死したるを、
又も顔知らぬ若きもの共を見捨てたまひ、
その若きおびただしき血潮を徒にしたまへり。
今、陛下、人間(ひと)と仰せらるれば、
神のために死にしものの御霊はいかに?
その霊は忽ち名を糾明せられ、
祭らるべき社もなく
神の御名は貶せられ、
ただ人のために死せることになれり。
人なりと仰せらるるとき、
神なりと思ひし者共の迷蒙はさむべけれど、
神と人とのダブル・イメーヂのために生き
死にたる者の魂はいかにならん。
このおびただしき霊たちのため
このさはなる若き血潮のため
陛下はいかなる強制ありとも、
人なりと仰せらるべからざりし也。
して、のち、陛下は神として
宮中賢所の奥深く、
日夜祭りにいつき、霊をいつき、
神のおんために死したる者らの霊を祭りておはしませば、
いかほどか尊かりしならん、
――などてすめろぎは人間(ひと)となりたまひし。

三島由紀夫「悪臣の歌」より

127 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/21(火) 11:19:45 ID:uofXgdqQ.net
陛下は帽を振りて全国を遊行しし玉ひ、
これ今日の皇室の安寧のもととなり
身に寸鉄を帯びず思想の戦ひに勝ちたまひし、
陛下の御勇気はほめたたふべけれど、
もし祭服に玉体を包み夜昼おぼろげなる
皇祖皇宗御霊の前にぬかづき、
神のために死せる者らをいつきたまへば、
何ほどか尊かりしならん。
今再軍備の声高けれど、
人の軍、人の兵(つはもの)は用ふべからず。
神の軍、神の兵士こそやがて神なるに、
――などてすめろぎは人間(ひと)となり玉ひし。

三島由紀夫「悪臣の歌」より

128 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/25(土) 13:46:31 ID:5aI/Sr+E.net
儂がまだまだずつと若い頃のことぢや。勿論、こんなに腰も曲つて居らんでな。白いひげなんか、
一つもなかつた時分ぢや。いつ頃のことか忘れて了うたが、その晩は全く妙な夜ぢやつた。
月はうまさうな朧月ぢやつたとおぼえとる。星が沢山々々儂の家の屋根にあつまつての、
まるで話しでもしとるやうぢや。
儂はひよんな事ぢやと思うたから、下駄をつつかけて庭へ出て、一生懸命星を見とつたが、
どうも不思議でならん。それでな、上を見て、ぼんやりしとつた所が、おやおや何と
気味の悪いことぢや、足下の叢から人の声が聞えてござらつしやる。
じーつと見て居つたらの。竜胆(りんだう)の葉のかげで、小人どもが踊つてゐるのぢや。
真中に、角力の土俵のやうなものが有つて、一人が踊ると、踊らん小人らは恰好をなほしたり、
注意したりして、まあ、やかましいのなんのつてお話にならんのぢやが、その中の一人が
こんなことを言ひよつたのぢや。
『今晩“萩ヶ丘”でやる舞踏会はな、十二時きつかり始まるで、それまでによう練習
しとかんといかん』

平岡公威(三島由紀夫)10〜11歳「緑色の夜」より

129 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/25(土) 13:47:30 ID:5aI/Sr+E.net
なんというたらいゝぢやらうか。
その綺麗なことこと。錦の布の金糸、銀糸をほどいて、それを細う切り、ぱアーつと
散らばしたやうぢや。
気の早い連中がこんなにも多いと見えて、未だ一時間あるのにもう踊りのけいこをしとる。
大分長い間たつた。十二時十分前頃にな。ほれ、珍客どもが揃つてござつたわ。
湖底の洞にすむ竜の背中で暮してゐる小人は、竜のキラキラする鱗をつづつて作つた
甲冑のやうな洋服を着て来居つた。
橄欖(かんらん)の木に居る妖精は、葉の面を剥いで仕立てた、つやのある、天鵞絨
(ビロード)のやうなのを、大きな樹の叉に住まつて山蚕を飼つとる小人は、そのまゆで
こしらへた良い肌ざはりの絹の衣裳を着て来るのぢや。
水晶の沢山ある山に住んどる奴は赤い木の実をつぶして染めた紅衣裳に、水晶の粉を
ちりばめて来たが、まあ、その美しかつたことと云つたら。口では話せんわい。

平岡公威(三島由紀夫)10〜11歳「緑色の夜」より

130 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/25(土) 13:49:30 ID:5aI/Sr+E.net
自然に対する病的な、憧憬や、執着が子供にもある。否、それは、大人より強烈な場合がある。


彼は充分に笑つてから、まだお腹の隅で、くつくつと笑つてゐるのを押へて、ポケットから
白いボールを出し、空高く投げた。
青空だ。
青空が、ボールについて、上つて行く、そして恐ろしい勢で落ちてくる。彼はそのボールを
受けると、青空を我がものにしたやうに喜んだ。それから、彼は、思ひ切り切り空気を吸つた。
秋彦は、室内や町の中でこんな空気を吸つたことはなかつた。否吸つたと云ふより、
食べたのだ。不思議な味をし、香りをした空気を、青空を、それから、雲を、彼は口の中に
押し込んだ。その味や香りが、どこから湧き出て来るのかわからなかつた。併し彼は、
今その源がわかつたやうな気がする。再び、喜びが湧いて来た。空気の味と香りの源を
確かめたのは、最も大きな喜びであるに違ひない。
それから、秋彦は、大地の躍動を知つた。大地は心臓の鼓動の様に踊り始め、秋彦の足も
自然にそれに伴つた。森羅万象は音楽を奏し始めた。

平岡公威(三島由紀夫)13歳「酸模(すかんぽう)――秋彦の幼き思ひ出」より

131 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/25(土) 20:08:53 ID:5aI/Sr+E.net
――僧よお汝(まへ)は今まで他人をまねて悟りを開かうとした。併しそんないやしい考へで
得られよう筈がない。私はそこで痩せこけた老人に身を変へてお汝を悟りのいとぐちへ
導いたのだ。行きなさい、明日の朝、お前は悟りを得ることだらう――朝開が稲妻のやうに
迫つて来た。太陽は光を得五条の光が閃いた。
――そして坊主は悟りを得た。
それから坊主いや聖人のもとへ一人の小さな男の子がどこからともなく入つて来た。
坊主はそれを極端に可愛がつた。
翌々年聖人はねはんに入つた。聖人は男の子に苦しい息の下から遺言した。――庵の縁の下に
大きな函がある。それをあけなさい。私のお汝への遺産ぢや。お汝の子孫はその遺産を以て
栄え栄えるであらう――
男の子は泣き乍ら、函をあけて見た。中に大きな石があつた。石の上に墨黒々と信念の二字が
かいてあるのみだつた。男の子はいぶかしく思つて石の下をさぐつて見たが何もなかつた。
只石の下面に字があつた――この石にかじりつきて働き働くべし、怠ることなかれ――

平岡公威(三島由紀夫)13歳「座禅物語」より

132 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/28(火) 16:12:55 ID:l2gLNZjV.net
皆さんは月に一つぺん位、大きな入道雲を御覧になるでせう。入道雲はおどけた人のやうな顔を
してゐます。あれは、淋しく弟と暮らしてゐるお母さんを笑はせてなぐさめるために、
月に一度来るときには必らずお面をかぶつて来る男の子の姿なのです。
一度あのお面をとつて見たいものですね。

平岡公威(三島由紀夫)10〜11歳(推定)「大空のお婆さん」より


悲しみといふものを喜劇によそほはうとするのは人間の特権だ。

平岡公威(三島由紀夫)15歳「彩絵硝子」より


死のもたらす不在はそのすみずみまでが、あらけない不吉な確信にみたされてゐる。それは
はげしい風のやうにすべてをそのなかに見失はせてしまふ。だがそこからは再びなにものも
生れてはこないのであらうか。それらのおもひでを耕す鍬を人はもう失くしてしまつたので
あらうか。

平岡公威(三島由紀夫)17歳「青垣山の物語」より


ほんのつまらぬ動機からも、子供にありがちな移り気と飽きつぽさは、なにかおおきな意味を
みつけたがるものでございます。

平岡公威(三島由紀夫)17歳「祈りの日記」より

133 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/02(日) 15:51:52 ID:7BGvz1Ur.net
祖母は神経痛のために風にあたるのを嫌つたので、障子は悉く閉め切られ、光は殆ど
得られなかつた。
わたしは祖父のところへ行き、書籍をよみをはつたのをうかゞつて「おぢいさまはこんなに
暖かいのに何故こたつなんかに這入つていらつしやるの」と言ふと、祖父は小さく笑ひ乍ら
私を見た。わたしは炬燵蒲団の上に細々と砕けてこぼれてゐる正午に近い陽光を指さした。
祖父とわたしとでゆつくりと庭へ下りる前にわたしは、祖母の居間の障子をそうおつと
明け放つた。風は草の葉を揺がす程もなく、祖母は徐ろに庭先を眺めた。そこには新緑が
春光に反射されて、さふあいやのやうな光を放ち、庭木は逞ましい腕をさしのべて蒼穹に
向つて伸び行きつゝあつた。その木の間に真赤なひらひらするものが、こまかい枝々を
とほして見えた。祖母が何ときいたので、山椿ですよ、と答へた。まあ、山椿! もう
山椿が咲き出す時分になつたかねえ。

平岡公威(三島由紀夫)13歳「春光」より

134 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/02(日) 15:52:55 ID:7BGvz1Ur.net
わたしはその下に行つて、手頃な小枝を二三本手折つた。びろうどのやうな不透明な柔かさが
しつとりと指先に吸ひついた。――祖母は女中に一輪差を持つてこさして自分がさし、
顔をそうーつと花のそばへ持つて行つた。葩一枚一枚には、春光がすつかりしみ込んでゐた。
祖母の面(おもて)は、眼(まなこ)は俄かに若々しくなり再び一輪差の中からそれを
とり出していつまでももてあそんだ。
祖父は涼亭(ちん)へ行つて了つたので、わたし一人芝生の上にとりのこされた。芝の匂ひは
むせるやうに激しくて、一匹の蟻がよたよたと嬰子のやうな恰好して歩いて来た。怪我を
してゐるらしかつた。わたしは急にいとほしくなり、そうおつと掌にのせてやつて
蠢(うご)めいてゐる小さな生物の生命のよろこびをたのしんだ。
祖父は涼亭の石段をことことと下りて来た。

平岡公威(三島由紀夫)13歳「春光」より

135 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/04(火) 13:19:20 ID:pm6N69gf.net
女は愛するだけが最大の幸福だ――何といふ腹だゝしい定理であらう。


いかさま恋といふものは自分の想像も及ばないやうな深いところに現はれて来るものなのである。
真実の恋とは自分では気付かないものなのだ。恋の最初の身振はいささかの無理を伴つて来る。
人々は強ひて、自分の狂ほしい気持をその深い井戸のなかへもつて行かうとする。


恋は保護色であらゆる色のなかにしみいつてゐるものなのだ。すべての女たちのやうに
恋人に対してわれ知らず自分の印象をよく見せようにしてゐる天性が彼女のなかに果して
少しもなかつたか。恋といふものは決して裸かでは為されないものである。身につけあつてゐる
さまざまな鎧がいつか鎧ではなくなつて、それが攻撃の道具となり手引となり、身体の
一部と相手に思はせるやうになるものなのだ。

平岡公威(三島由紀夫)14歳「心のかゞやき」より

136 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/04(火) 13:19:43 ID:pm6N69gf.net
恋のはじめといふものは鞦韆(ぶらんこ)の下の花のやうなものである。自分で鞦韆を
うごかしておきながら、花をつむことの難しさに、わざと大きくゆらして花をとりたい気持を
自分自身に隠さうと見栄を張るのだ。


愛情の爆発でない嫉妬といつたら、形式的な虚栄(みえ)の混つたものではないだらうか。
わづかにのこつた薄い愛情からも嫉妬は炎え出すものであるが、愛情が薄ければうすいほど、
その形式的な気持や虚栄が濃くなつてくるものとはいへないだらうか。世の人の、
「最も激しい嫉妬」といふものこそ純粋な嫉妬の姿なのである。


恋敵への嫉妬は帰するところ、盗人への怒りである。恋人への嫉妬はそんな単純なものではない。
寛容と憤怒、失望と敗者の自己嫌悪、その他のあらゆるものが激し合ひ融け合ひ、彼あるひは
彼女の上に注ぎかゝる。

平岡公威(三島由紀夫)14歳「心のかゞやき」より

137 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/05(水) 11:19:29 ID:Gc8tBl9H.net
「やあ子」が泊りに来るときはその八畳の中央に床をならべた。康子の「す」の音がうすつぺらな感じを与へるので、
「やあ子」といふ彼女の撫肩そつくりな発音の愛称を、私は好いた。風呂から上るとこの小さな女の子は、洋服を
きちんと畳んで枕許におくので、おまんはそれを模範として私にも所謂「いゝ癖」をつけさせようとした。
癪にさはつて私がいふのである。
「お床にいれる方があつたかくなるからボクがいれてあげよう、やあちやん」
気のいゝ彼女はこの親切にさからへない。翌朝、私の床のなかに筋目も何もなくなつたしわくちやな洋服を
見出だして、おまんは憤慨し、やあ子は泣き出すのだつた。
大人つぽく肱で頬つぺたを支へながら、やあ子は心臓を下にし、私は左肩を上にして向ひあひ、お互に床ふかく
埋つて千代紙みたいな会話を交はした。それは千代紙のやうに稚拙な色をもち、金粉をかけ、皺がより、断片的な、
子供特有のあの会話の型式なのだ。私は「天井の木目」がこはくなくてすむところから、かうした夜々を好きに思つた。

平岡公威(三島由紀夫)15歳「幼年時」より

138 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/05(水) 11:21:10 ID:Gc8tBl9H.net
ひどく心配さうな目附で彼女が云ふのである。「沙漠のね」
「沙漠の?」
「なんだつたかしら」
「え?……」
「ラクダにのつかつて」
「隊商!」
「隊商がね、ラクダでザックザックつてくるでせう。その音がとほくからきこえるの」
「ほんたう?」
「やめようとおもつてもきこえるの。上をむくときこえないけれど枕を耳にあてるときこえてよ。近くなつて
くるわよ、だんだん」
「きこえない」
「あらへんね。やあ子とおんなじ方むいたら?」
「きこえない」
「へんね、やあ子ずつときこえてゝよ。また近くなつた……こはあーい」
さう云ふなり彼女は耳をおさへて私の床へはひつてきた。私は強がらないわけにはいかなくなり、
「大丈夫」とおまんの口真似をするのだつた。
その幻聴はやあ子の貧血の前駆症状だつた。

平岡公威(三島由紀夫)15歳「幼年時」より

139 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/05(水) 11:23:21 ID:Gc8tBl9H.net
玩具をみるときの子供の目つきは、ちやうど美しくめづらしい石をみつけたときの原始人の目付に似てゐる。
子供が大人からその玩具の使用法をおそはつて暫く無意識に何度もねぢを廻しては殆ど目的のぼやけた「興味」を
傾けたのち、はじめて子供はその玩具の本当の使用法を知るに到るのだ。玩具は玩具函のなかにあるものではない。
玩具は子供のなかにゐるものなのだ。母親たちはわづか二、三日でその玩具の機械(からくり)をまはさなく
なつた子供に悲観してはならない。玩具がもつてゐる不変の機械作用は、ほんの外面のものに過ぎないのだ。
玩具を了解する瞬間に子供にとつてそれは有形のものではなくなり、無形の抽象物……即ち消極的に生活の一部を
支配し、ある重要なつとめを有(も)つものと変る。かくして私のまはりの透明体の城壁の一部――それを
見透かすときあらゆる生物が植物のやうにみえ、あらゆる事物が不自然に拡大されてみえる城壁の一部として、
その玩具があらたに加はつたのを、私はすぐさま感じた。

平岡公威(三島由紀夫)15歳「幼年時」より

140 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/05(水) 11:25:14 ID:Gc8tBl9H.net
召使たちの別棟は、塀近い御長屋風の二階建で、おまんは塀へむいた二階の二間を占有してゐた。私の部屋の傍から、
長い覆附の渡廊下が、その棟に続いてゐた。祭の日に行列の通る時刻を予め問ひ合はせ、その半時ばかり前から、
おまんが私を迎ひに来るのだつた。これといつて刺戟のない日々に引き比べて、その前の晩、私はなかなか
ねつかれなかつた。ことにおまんが自分の部屋を「仕度し」にいつてゐる小一時間、私はひとりでそこへ行つて
了つてはつまらない気がするので、あのお年玉を待つときそつくりな気持でおまんの迎ひを待ちこがれてゐた。
倦怠と焦慮の様子は、両者とも時間をもてあましてゐる点で大へんよく似てゐるものである。(中略)
おまんの袖に抱かれるやうにして、「御前様にみつかりなさると大変でございますよ」いふおまんの声に
せきたてられて、一気に駈けぬける廊下は長かつた。杜鵑花(さつき)の植込の、非常に赤いのが目に残つた。

平岡公威(三島由紀夫)15歳「幼年時」より

141 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/05(水) 11:27:18 ID:Gc8tBl9H.net
几帳面で綺麗好きなおまんは、自分の部屋へ私が来るといふので、女の部屋特有な調度類は皆片附けて、隅々まで
掃除したうへ、道路に面した窓を一杯にあけはなしておいてくれた。なかんづく懐かしかつたのは、その時
用意してくれるウエファースだつた。ふだんの「お茶」にはウエファースなぞあまりつかないのに、祭のたびに
おまんが揃へておいてくれるのは決つてウエファースだつた。それも子供じみた秘密な儀式の、たのしい
「しきたり」の一つになつた。
私は窓ぎはにちよこなんとすわつて、祭のさきぶれの、ひどくあけつぱなしな雑踏をながめながら、うすい
九重(ここのへ)に頻りにウエファースをひたしては喰べてゐた。さうしてゐる私は、また自分の背中いつぱいに
注がれてゐる、いとしくてたまらないといふおまんの目附をあたゝかく感じて幸福に思つた。
疎らな竹藪と丈の高いひばの並木は街道のざわめきをよく見せた。裏二階はどこも開け放され、物干は満員だつた。
乾物のいろどりの間に、人の顔がいつぱい詰つてゐるのがゴシック模様のやうだつた。

平岡公威(三島由紀夫)15歳「幼年時」より

142 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/06(木) 11:06:21 ID:K8VLwhba.net
焼けた河原から河原へ大きな橋がかゝつてゐて、その下を清い多摩川の流れが、昨日の雨に水量を増して大速力で
走つて居ました。
私も河の中を海へ海へと走つてゐました。ところが“流れ”は私達“水”を海へ運んで行きはしませんでした。
陽はかんかんと照りつけて、私達の冷たい体も、ぽかぽかとあたゝかくなりました。両側の河岸では、麦藁帽子を
被つた人々が、呑気さうに、けれども如何にも暑さうに釣をして居ました。白いペンキで塗つた新らしいボートが
するすると水面をすべつて行くのも気持のよいものでしたが、古い昔からの渡船がのんびりと、ろを動かし動かし、
眠さうに走つて行くのも何となくいゝ気持になりました。
やがて、私達はごうごうといふ音を立てゝ、何やら暗い所へ入つて了ひました。
これは、かねがね噂に聞いた“海”といふものではなささうでした。第一、しほつからくもありませんし、
《常に頭の上にある》と云ふ太陽さへ、今はどこにも見出だせません。

平岡公威(三島由紀夫)10〜11歳「“水”の身の上話」より

143 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/06(木) 11:06:55 ID:K8VLwhba.net
体が何度か上へ押し上げられ、激しく落とされました。随分長い時間でしたが、やつと日の目を見ることが出来ました。
そこは、浄水池といふところでした。けれども、暫くの間でまた暗い暗い道に入らねばなりませんでした。
道は私達の前居た多摩川とは比べものにならない程窄(せま)くて、ひどく曲りくねつてゐるものですから、
体のもまれやうが大変でした。
やがて妙な音がして私達の体がぐぐつと押し上げられました。
そして、せまい器の中へ納まりました。
さて私達が浄水池へ行つて体を見た時にはあんなにすきとほつて美しかつたのが、今、水道の口金から出て、
器へ入つた拍子に、真白で、すきとほらなくなつて了ひました。
それは、お米をといでゐる女中さんが、お釜の中へ私達を入れたのでした。その為、ぬかにそまつてこんなに
なつて了つたのです。
私は絶えず掻きまはしてゐる女中さんの手の間から、台所の中を見まはしました。向側に瓦斯があつて、薬鑵が
のつかり、白い湯気を一杯出してゐました。私が湯気と云ふものを見たのは、これが始めてでした。

平岡公威(三島由紀夫)10〜11歳「“水”の身の上話」より

144 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/06(木) 11:07:20 ID:K8VLwhba.net
面白くなつて一生懸命覗いてゐますと、すぐ私達を、じやあつと捨てゝ了ひました。
捨てられた私達(水)は、白い体のまゝいやな臭ひのする下水へと急がねばなりませんでした。下水には、
黒い大きな泥溝鼠が、我物顔に走つてゐました。
泥溝鼠は新入の私達を迎へて、私達の流れる速さと同じにかけながら、白い私に話しかけました。
「君は多摩川で、鼠の死んだのを見かけなかつたかね」
私は多摩川をそんな汚ない所に思はれるのがいやでしたので、返事をしないで居ましたが、彼は更に云ひました。
「実は僕の弟が、三人とも居なくなつて了つたのでね」私達はそれを聞いて、少し可哀さうになつたとは云ふものゝ、
この下水と多摩川とがつながつてゐるやうに考へてゐる泥溝鼠を可笑しくもなりましたので「そのうちに、
さがし出して上げませう」と云つて別れました。

やがて下水は、大きな深い穴で終りました。そしてまた、暗い鉄管の中を通つて行きました。

平岡公威(三島由紀夫)10〜11歳「“水”の身の上話」より

145 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/06(木) 11:07:54 ID:K8VLwhba.net
闇の中にぽつんと明るい点が見えたと思つたのは、嬉しいこと、河へ注いでゐる出口でした。私達の流れは急に
早くなりました。そしてボシャンといふ音を立てゝ川に落ちこみました。

川は広かつた。そして水はきれいでした。ゆるやかにゆるやかに私達は動き、そして、ふつと自分の体を見たら、
多くの水が混り合つて、すつかり元のやうに美しく透通つてゐたではありませんか。
それからの毎日毎日は楽しい時がつゞきました。
ある時はかはいゝ鵞鳥の子が大勢で泳ぎました。
又、小さな子供が笹舟を、そのやはらかい紅葉(もみぢ)のやうな手で作つて、そつと水に浮ばせたときも
ありました。私はさゝぶねを乗せて、ごくゆつくりと歩いてあげました。
小さな子供は、赤いほゝをしてゐて、それはそれは可愛く、さゝぶねが流れるのを追つて面白さうにかけました。

平岡公威(三島由紀夫)10〜11歳「“水”の身の上話」より

146 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/06(木) 11:08:23 ID:K8VLwhba.net
それは春のことでした。いつの間にか河底で生れた鮎の子は、元気にかろやかに泳ぎました。河辺には荻が茂つて、
私達はするすると、荻の間を進みました。

やがて朝の霧がうすくうすくわからないやうにはつてゐる向うに、土も、それから樹も、丘も山も何も見えないのに
気付いたのです。
そして、なんとなくしほつからくなつて来たやうに思へます。

海へ出たのでした。私は、あんなに多摩川からすぐ海へ行つた友達をうらやましがりましたが、海へ出るのに
こんな方法もあつたのでした。
春の日は、水面、もう海面である私達の頭に、金色のこてをあてました。こてにかゝつた髪のうねりは次第に
高まつて、始めて知つた波となつて、白砂の浜にうちつけました。
私は、気持よく、ゆりかごにのつたやうに、波打つてゐたのです。

平岡公威(三島由紀夫)10〜11歳「“水”の身の上話」より

147 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/07(金) 00:09:21 ID:75s1oFUw.net
川端やお堀端やどれもこれも同じ顔立をしてゐるところがふるさとのかなしい人々を思はせるゆがんだ軒並や、
築泥や舟板塀だのに沿うて走つてゐる電車は、ハンドルをまはしつゞけると何度も同じ汽車が鉄橋のうへに
出てくるあの玩具にも似て、かうした退屈な町ではどの電車も一台だと信じてうたがはぬだらうと思はれるほど、
みな同じにいたましくペンキが褪せ、いつしんにはしつてゐた。お客の影は、ものゝ二三人しかみえない。
凸凹なみどりのシイトが、まのびした長さでひろがつてゐる。わたしはかうした町へきてふるい空々(ガラガラ)な
電車にのるたびに、もう何年もあはぬなつかしい人にあへるやうな気がしてならない。稚ないころすでに
としとつてゐたそれらの人たちは、あるひはもうこの世にゐないのかもしれないけれど、昔よりもつと若い、
さうして古風な皃立(かほだち)に地味な小紋の着物をきた束髪の姿で、おせんかなにかの土産包を片手にしながら
よろよろと急な乗降口を、のぼつてくるやうな気がしてならない。

平岡公威(三島由紀夫)15歳「でんしや」より

148 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/07(金) 00:09:58 ID:75s1oFUw.net
髪を高い「行方不明」に結ひあげたあの上品な吃りのお婆さんは、祖父時代の芸者あがりの富士見町の秋江さんは、
それからいつも植木をみやげにもつてくる昔道楽ものでならしたといふへうきんな小父さんは、いつたいどこへ
行つてしまつたのだらう。聞かぬ名前のひつそりとした停留所を、わき目もふらず電車がすぎてしまふと、
その停留所ちかくの町の一廓にあゝいふ人々の表札がのきごとにかけつらねてあるやうな気がする。生垣や
ひくい板塀ごしに、さういふひとたちのひいてゐるもう拙なくなつた三味線の音が、なにかおどけたものゝやうに
きこえてきはしないか。……だがその停留所をすーつとすぎてしまつたことに、悔いやのこり惜しさを感じつゝも、
何だかそれをみきはめずにおいたことが、ひどく安心なやうな気持がうまれてくる。と、それにしたがつて益々
つよい色彩でさうした空想がにじみ出てくるのであつた。

平岡公威(三島由紀夫)15歳「でんしや」より

149 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/07(金) 00:10:22 ID:75s1oFUw.net
ひとむかしまへ西片町時代の奉公人であつたのが、すこしへんになつて暇をやつてからといふもの、ちかごろは
大分よくなつたと毎年々々たづねてくるその男に、幼な心にも「まだヘンだ」といふ気持をすぐかんじた。
勝手口から女中連を大声でからかひながら、それでも小綺麗な唐草の棉風呂敷片手にはひつてきて、奥へ挨拶に
ゆくまではよいのだが。……
「けふらは大奥様のお好きな枝豆をうんともつてめえりやした」といふ。この寒さに枝豆もないものだと祖母が
おもつてゐると、すばやく兼さんは包をあけひろげてゐた。中味といふのが汚ない菜つ葉と小如露と、子供の
バイである。みるなり「そらいつもの兼さんがはじまつた」と祖母と女中が笑ひくづれるのへ「ほうれ女房め
いれまちがひしよつたわい」と頭をかきながら一旦調子をあはせるものゝ、またすぐけろりとして十五、六分
話しこんだすゑ、ふいにかへつてゆくのであつた。

平岡公威(三島由紀夫)15歳「でんしや」より

150 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/07(金) 00:10:43 ID:75s1oFUw.net
落語の「堀之内」を地でゆくやうだと、奉公人たちは笑ひあつたが、その兼さんも、「死んだ」といふあやふやな
風聞(うはさ)ばかりのこして、祖母の死後つひぞ姿をみせなくなつてしまつた。

どこの河畔の何町だかすつかりわすれたあひかはらずガラ空きの電車に足をふみいれてぎくりとした。
古半纏(ふるはんてん)の兼さんがこつちむきにすわつてゐるのだ。妙なことにひとのかほさへみれば
「坊ッさ、大きなられましたなあ」と大声でいふ筈のが、目の前にみてゐながら声ひとつかけようとしない。
大体目のピントがすつかりはづれてゐるのだ。少々頬のあたりなど狂暴でうすきみわるかつた。前歯が一本
戸まどひして、唇の間からたれてゐた。胃癌になつた鷄といふ感じがした。車掌が前をとほると首にぶらさげた
合財袋から無意識的に小銭をとりだす。なれつこになつてゐるとみえて車掌はつりを袋のなかへおしこんだ。

平岡公威(三島由紀夫)15歳「でんしや」より

151 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/07(金) 00:11:07 ID:75s1oFUw.net
終点で下車してわたしはしばらく尾(つ)けてやらうとおもつて、ちやうど同じ方向であるのをさいはひに川端を
あるいていつた。川に映つた空のなかには燻製のやうな太陽がいぶつて流れてゐた。空にうつつたその川のやうに、
曇天のなかにひときは濃い、ひとすぢの雲が澱んでゐた。半纏を柳と平行になびかせてうつむきながら狂人は
あるいた。それがふいに立ち止つたのでわたしはびつくりした。
川のなかをそはそはのぞきこんでゐる。
ときふに膝をたゝいて廻れ右をして、おどろくわたしを尻目にもかけず、すたすた目のまへをすどほりし、
折から今来た方向へ走つてゆくかへりの電車にとびのつて了つたのである。この一幅のカリカチュアのなかの自分に
苦笑してふりかへつたわたしの視界を、電車はいつもの暗い音をひゞかせながら、不器用にとほのいて行つた。……

平岡公威(三島由紀夫)15歳「でんしや」より

152 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/08(土) 10:33:48 ID:ETb20whY.net
お父さんが大阪へ転任したので、それからちよいちよい関西旅行をするやうになつたある夏のこと、お父さんは
わたくしをお役所へつれていつてくれました。仔熊をみたいとせがんだからです。その仔熊は――若しおぼえて
いらしたら、大阪の新聞や、その社のコドモニュウス映画で、ごらんになつた方々も、ずいぶん多い筈だと思ひます。
お父さんは仔熊をうつした写真を、よく東京へもつてきました。お役所の女のひとだのお父さんだのが、
眩しいやうなコンクリイトの空地のうへで、熊にお菓子をやつてゐるところでした。さうしてどの写真の熊も
チンチンをして一寸首をかしげて、まだ小つぽけな両手の爪を、全部だらしなく出してゐました。
赤か、それとも派手な模様のリボンを、首につけてやりたいやうでした。
お役所のAさんは話してくれました。
「あんまり深い山でも有名な山でもありませんけど、大阪近県の山おくで、きこりが木をきつてゐたのです。
するとどつかで、コリッコリッといふ音がしてきました。…

平岡公威(三島由紀夫)15歳「仔熊の話」より

153 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/08(土) 10:34:24 ID:ETb20whY.net
(中略)
ふいに明るいところへ来て眩しかつたものか、目をしよぼしよぼさせた仔熊が、耳だのあるかないかわからないほどな
尻尾だのをぴくぴくうごかして、両手でつかんだきいろい木片をコリッコリッと噛みながら出てまゐりました。
さきほどからの音はこの音だつたんです。
おいしくもなさゝうなその木片を、さも大事さうにカジつたりシャブつたりなめたりしてゐるのをみると、
きこりはかはいらしくつてふきだしさうになる一方、大へんかはいさうにも思ひました。きつとたべるものが
なくなつたので空きぬいたお腹をだますために、そんなものをかじつてゐたのに相違ないのです。きこりは熊を
抱き上げました。すると真暗な、小さな革コップをかぶせたやうな鼻先を、しきりにきこりのえりだのふところだのに
つつこみました。手を出してやるとふんふんといひながら、ふざけるつもりか喰へ物と思つたのか、そつと
やはらかく指をかみます。
ありあはせの縄で傍らの木にひとまづつないでおき、お弁当なんぞを分けてやつたのち、仕事がすむとそれを抱へて、
村里へ下りてゆきました。

平岡公威(三島由紀夫)15歳「仔熊の話」より

154 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/08(土) 10:34:52 ID:ETb20whY.net
(中略)
営林署の大竹さんがあるいてきました。
『へ、だんな熊ッ子です』ときこりは、いちぶしじゆうつかまへた話をしました。どれどれとわらひながら
大竹さんは熊を抱かうとして手をのばしました。すると口にくはへてゐた煙草をおとしてしまひました。大竹さんが
ちよつと惜しさうにしてそれをみますと、熊も心配さうな顔をして、自分が落し物をしたやうに下をみました。
大竹さんはアハヽハと笑ひました……」
Aさんはそこまで話して自分もをかしさうに笑ひながら、
「営林署でゆづりうけてそれから大阪の、この営林局へつれてこられたんですよ……」といひました。
背のひくい女のひとゝAさんとの案内で、わたくしは熊を見に行きました。廊下の両側にはタイプライタアの音が
つつかゝるやうにやかましく響いてゐました。(中略)
小さいドアをあけて二三段下りると、地べたへぢかの屋根付廊下がまはりを囲み、バラックがみえてゐて、
ちよつとペンキの匂ひもする、一面セメントのたゝきのやゝ広い場処へ出ました。

平岡公威(三島由紀夫)15歳「仔熊の話」より

155 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/08(土) 10:35:37 ID:ETb20whY.net
仔熊はそのはじつこの岩乗な檻のなかでオォン・ウォンとないてゐました。営林局へ来てからといふもの世話を
一ト手に引き受けていちばん懐かれてゐる小使さんが、わたくしたちを待つてゐました。(中略)
やがて小使さんが小さな金だらひに御飯でつくつた糊をたんといれたのをもつてきて、をりの戸をあけますと、
熊はなれなれしく小使さんにすりつきました。それをいれてやるとみるまにパクパクたべてしまひましたが、
いよいよ手が要用になつて前脚でたらひを抱へ、顔をすつかりつつこんで隅から隅まできれいにしてしまひました。
お食後には林檎をひとつやりました。一寸爪先で皮をむくやうなまねをしましたけれども、思ひ直したやうに
ガブリとかみついて芯から何からみなたべてしまひました。
「熊を出しませう」と小使さんが云ひました。わたくしはもうちつとも熊がこはくなくなつてゐましたから、
ニコニコ笑ひました。
「あんよはお上手」なんぞと言はれながら小使さんに前脚を持たれると熊は困つたやうな顔をして立つたまんま
危なつかしげに出てきました。

平岡公威(三島由紀夫)15歳「仔熊の話」より

156 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/08(土) 10:35:58 ID:ETb20whY.net
足の裏のぶよぶよした灰色が、そのとき日に光つてまつしろに濡れてみえました。鎖をつけて小使さんが引つぱつて
あるきました。
「また梯子のぼりさせようぜ」と云つて別の小使さんが梯子をもつてきて屋根にかけました。満腹で御機嫌に
なつたので、熊は云ふとほりになりました。ウヴォオンと呟やいて梯子のまへにチンチンすると、屋根のうへの方を
まぶしげに眺めながら、手招きしつづけてゐるやうな前脚をそつと梯子にかけ、それからはすらすらと三四段
上りました。
もうそれ以上はのぼれないとわかると熊は恨めしさうにトタン屋根のまぶしい反射を見上げて、かへりはひどく
用心ぶかく下りてきました。
……そのときむかうの出口から給仕さんがやつてきました。「お父さんがお呼びですよ」
……わたくしは何度も何度も熊のはうを見ながら、のこりをしさうにその扉の前の段段を上つてゆきました。
熊はねぶられたやうな眩しい目付をして一寸わたくしを見ましたが、なんだつまらないと云つた顔付で、また
むかうを向いて歩いて行きました。……

平岡公威(三島由紀夫)15歳「仔熊の話」より

157 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/08(土) 10:38:48 ID:ETb20whY.net
(中略)
あるときお父さんが大阪からかへつてきて夕食のときに申しました。
「あの仔熊は室垣さんとこへ払下げちやつたよ」
「まあ何につかふんでせう、まさか毛皮にするんぢやないんでせうね」とお母さんがいひました。(中略)
室垣さんといふのはお父さんの高等学校時代からのお友達で、温泉の会社をやつてゐました。その会社では
温泉地に宿屋なんぞを経営してゐるのださうで、そんなところへ仔熊は買はれて行つたものとみえます。
「こんどつから大阪行つてもつまんないな」とわたくしが言ひましたらお母さんは、
「熊の毛皮は冬ころしたんぢやないと毛がぬけてだめなんですつて」と別なことをいひ出しました。それをきくと
なんだかあの仔熊はどうしても皮をはがれなけりやならないやうな気がして来て可哀さうで御飯がたべられませんので、
水ばかりのんで流しこんでゐました。
お父さんは新聞に夢中になつて活字のうへにひとつごはん粒をこぼしました……。

平岡公威(三島由紀夫)15歳「仔熊の話」より

158 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/08(土) 10:39:31 ID:ETb20whY.net
十二月のなかごろに室垣さんは久し振りにたづねてきました。そしてあしたから××といふ山の温泉へいきませうと
いひました。お正月もそこですごすつもりで、学校が早くお休みになつたわたくしはお父さんと室垣さんとで
さきに行き、妹や弟たちもお休みになつてから、お母さんといつしよにやつてくることになりました。(中略)
駅には宿の番頭さんや二、三人のひとが迎へに来てゐました。鈴蘭灯がつゞいてゐる町をぬけると、そのへんは
大へん静かでした。早くも梅のつぼみがふくらんでゐました。宿はまつしろい谷川をみおろして、古びた土橋の
よこにたつてゐました。
わたくしはお風呂にはひるまへに、熊をみにいきました。
「さあさあどうぞ、こちらですわ」とお女将さんが案内してくれました。いちど玄関においてお客さまにみせて
ゐたのですが、おびえてちゞこまつてばかりゐるので、人の少ないこつちの内庭へ、移したのだといつてゐました。

平岡公威(三島由紀夫)15歳「仔熊の話」より

159 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/08(土) 10:39:54 ID:ETb20whY.net
それは宿屋から渡り廊下でつゞいてゐるお女将さんたちの家の、ごく内輪な庭で、茶梅(ささんくわ)の白と
鴾(とき)いろの花が、落ちついた濃みどりの葉のあひだに、少しちりかけてゐました。文鳥がかつてありました。
三万を棟に囲まれた庭の隅に、営林局のころよりはずつとしやれた檻にいれられて熊はゐました。銅板に彫つた
トミィといふ名札がうちつけてあるところをみると、この仔熊も「トミィ君」になつたとみえます。わたくしが
トミィ、トミィや、と呼びますと、寄つてきて前とおんなじのクスンクスンフンフンをやりましたから、
かはいらしくてだつこしてみたくさへなりましたが、何分大へん大きくなつてゐてかみつかれる心配もなくは
なささうでした。
おかみさんは、
「オヤオヤはじめてン人には見向きもしないのにお坊ちやんばかりには大へんな甘つたれですわ」と云つてゐました。
わたくしがさいしよにそれを見たとき感じたのがほんとになつて、熊は首にまつ赤な絞りの首巻をしてゐました。

平岡公威(三島由紀夫)15歳「仔熊の話」より

160 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/13(木) 11:40:04 ID:ICIvLlYa.net
花が咲くとは何といふ知恵のかゞやきでせう。咲くとは何といふ寂しく放胆な投身の意味。外へ擲(なげう)つことが
却つて中へ失はしめる勇気のあらはれです。内外の間に存するものをそれは捨てもせず生かしもせずきはめて
爽やかに殺さうと試みるのでした。この生命への不遜がいつか或るより大きな意味に叶つてゐることを信じ
させずには舎(お)きませんでした。(中略)
花が咲くとは運命でありませうか。花が咲くとは決心でせうか。僕にはそれがよくわかりません。まことに
荒々しい力が優に美しいものを押しゆるがしそこに震盪と困惑にみちたあまりに、憧れに近いやうな心地を
生み出すのを、人は創造とのどかによびます。運命も決心をもさういふ創造の一党だと私は信じ難かつた。
花が咲くとは風が吹き鳥がうたふやうに、あるおほきな無為から生れたもう動かしがたい痺れたやうな創造だと
僕は思ひました。決心も運命もそこでは投身そのものではなく、投身直前の、あのゆらゆらしたなつかしい虹の
時間でありました。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

161 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/13(木) 11:40:44 ID:ICIvLlYa.net
(中略)
もう一度僕らは同じ質問をくりかへしませう。「花が咲くとは?」「なぜ花は咲く」「いかにして花は咲く」
「なんのために」質問はこのやうに微妙な変様をかさねます。ともあれ花が咲くといふこの言葉、なんといふ
なつかしい慰めにあふれた言葉でありませう。それは訪れです。それは一つの便りです。それはある確乎たる海の
訪(おとな)ひのやうなものでした。燕とぶ巷をこえ潮風にきらめく松林の梢はるかに輪廻のやうに音立てゝゐる
あの海の訪れでした。(中略)
季節をまちがへずに咲くことはよいことにちがひありません。しかし花が咲くのはそのためばかりではありません。
多くの愛恋から見離され、かずかずの哀しみを拒みながら、抱きつゞけられたひとつの約束を、みごとにいさぎよく
破ることでもありました。さうした清らかな違約は、単なる放恣ではなしに、ある与へられた回帰の命令であつた。
出発への不信からではなく、もはや浄福にまで高められた信頼からもえ出でてくる素直な拒否のしるしであつた。
花を聡明なる宇宙とよぶなら、それはかうした聡明さであらねばならなかつた。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

162 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/13(木) 11:41:47 ID:ICIvLlYa.net
詩人は今日こそ花が咲く季節々々を呆けてうたつてゐてはならないのです。今こそよみがへる花々の歌が、
その死の意味よりして、切なく奏でられねばなりません。よみがへる日はおほきな回帰の日であつても出発の日とは
なり得ません。人々は死ぬやうにしてよみがへる。花々は枯れるごとに咲く。それはたゞ徒爾でせうか。救ひが
来る時、来るのは救ひではなくて、いつも慰め手であるやうに思はれるのです。花々の咲くのがつねに慰め手の
来訪にすぎぬのなら、なぜもつてそれは僕らのよすがになり得ませう。茲(ここ)に待つことのはかりしれない深さが、
菖蒲の園を侵す夕闇のやうに、濃まやかにあたりを籠めて下りてくるのであります。
しかし待つことについて僕らはまだいふべき力をもちません。もつと耐へ、もつと書いてからでなければ。
もつと生き、もつと苦しまねば。さうして莞爾としつゝ心はいつもあらたな悲しみに濯がれてゐることをもつと
学ばなくては。かくして詩人はいつの日も失はれたる預言の遵奉者です。この上なく直截に、「花が咲く」と
うたひうる人です。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

163 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/15(土) 11:11:27 ID:YZOULuUX.net
昔、燦爛たる天空へ手をさしのべて星占ひした人々が僕には羨ましさの限りでした。万物と一つにならう、
万物の嘆きと一つにならうとする豪毅な意志をもつ人よりも、彼らはむしろつゝましやかに万物を彼ら又ひいては
僕らすべてに対する示者とみる人でありました。僕らの目が万物から何ものかを示されることを信じたのです。
しかし僕らと万物の関係は、自と他の対局ではなかつた。そこにあるものはもつと秘めやかな不可思議な聨関で
ありました。万物は僕らにむかふときいつも高貴な示者であつたのです。それは同時に、僕らが「映すもの」で
あつたといふことです。のりかゝること、憑くこと、存在の本質を蝶のやうに闊達に舞ひのぼらせ、分ちながら
投身すること、それを僕らは示すと呼びました。映すことには之に反してある熱い無為のこもつた正確さが
在つたのです。憑かれながら確固として映すのが、僕らの所業でした。そのとき示者と映すものとは共に他であり
同時にまた共に自でありえたのです。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

164 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/24(月) 16:22:40 ID:JSi7dEFR.net
(中略)
示者によつて身を見ることこそ、創造の理に外なりませんでした。星占者はかくて身を見るもの、すなはち彼らは
天への彫塑者でした。宇宙への正確な造形術を、自分の克明な手の皺のなかに、しかと弁へてゐたのでした。
彫刻の不朽なかなしみを誰よりも直截に云ひえたのは彼らであつた。示者の憤りを誰よりもよく知つてゐたのは
彼らでした。
かういふ星占者のかなしみも僕にはよくわかるやうな気持がします。宇宙に対して彫塑者の手をもつこと、
それはどんなに人間であるゆゑの悲しみにみちた事柄でせう。僕らの手がそつくり天のどこかの一隅にのこされて
しまふとき、僕らは弁証にあふれた星空を、支へきれぬほどに重たく感じるでせう。僕らには星座のやうな孤独が
降りてくるでせう。この種の孤独のなかでは、神と親しいものたらんがために、永遠に神を拒否しつゞけねば
ならぬでせう。そして一言否といふたびに僕らは千度の投身を敢てせねばならぬのです。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

165 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/02(水) 14:54:32 ID:okfHshB1.net
(中略)
僕らは薔薇の花に背をむけるとき、その背の向け方から学ばねばなりません。季節がめぐるのは、――夏の最後の
光輝をつんざいて黒々とした葉につゝまれた樫が、はや初菊の薫りをはこんでくる雲のゆきかひに、荘厳に身を
ふるはす刹那のやうに――、花々の饗宴のあとに豊かな収穫の秋が訪れ、やがて連峯の頂きをめぐつて白雪の
かゞやきが日ましにひろくなつてゆくのは、一つの礼節なのであります。知恵にみちた、ふしぎなやさしさに
みちた礼節でありました。かうした礼節のひそかな正しい愛を僕らには測らう術もありませんでした。ある確かな
領域を占めてゐるのに測られぬ物事があるものです。そこでは測られると云ふさへ、可能の意味ではないのでした。
信ずるといふ尺度によつてのみ正確な度数を示して測られる物事があるものです。そのとき信ずるといふこのことは
物差でさへないのでした。触れて来るものをみなその内へとりこんでしまふやうな明澄さ。快晴の内部。僕らは
内部へ陥ちてくるものゝみを信じようとして、その内部自らのおほきな陥没について知りませんでした。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

166 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/05(土) 11:30:23 ID:/js9MKtR.net
礼節のまことのやさしさに僕らは盲ひであつたのです。礼節が詩人のみぶりとなるや、厳かな愛が彼らを貫いて
ながれました。運命の突端を担ひながら、彼らはめぐりゆくものに自分たちが親近にするのを感じました。
超克といふことの深いかなしみも、彼らには大らかな礼節をのぞいては考へられなかつたのです。洵に岸を
歩む人である僕らは、たえず彼岸の意識に浸つてゐます。しかし彼岸への川の超克が僕らの考へ得るすべてであるなら、
それは侘しいことではないでせうか。とりわけ川のはてに日が沈み、夕映えが水に映つて千々に砕かれた牡丹のやうに
みえるときは。……
かくて僕らは最初の言葉だけが確かであるとの誤謬に陥るのではありますまいか。その後のことばの証しは
軽んぜられて、預言のみが。その後のことばのすべてが再び最初の言葉であれ不当に要求される誤りが。――第二の
言葉であることは第三の言葉であるよりも辛いことであります。花が咲くとはむかし第一の言葉でありました。
今やそれは第二の言葉であります。むしろ第二の言葉であれと花が花自身に教へるのでした。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

167 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/05(土) 11:31:45 ID:/js9MKtR.net
星がまたゝき、葉末に露が結ばれ、萩の下かげに虫がすだくのさへ、なべては第二の言葉にならうとしてかなしんで
ゐる万物のいとなみではないでせうか。僕らにとつて生きてゆくことは宿題でも追憶でもなくなるでせう。
生きてゆくことは僕らにとつて凝視に庶幾(ちか)くなつてゆくでせう。凝視といふのが当らぬなら、凝結といふも
同じことでせう。生成としての凝結でなしに、凝結があらゆる一瞬にまつはつてゐて、間断なくそれに生の意味を
与へること。やがて僕らは斜めにとびゆく星となるために身を削がれるでせう。やがて僕は蠅のやうに物狂ほしく
宇宙の時象めがけて飛ぶでせう。それらの時象の目をさまたげ、あらゆる対象の圧殺者となるでせう。僕らは
このやうな驕慢な倫理を深く愛します。僕らは翼の遍在を信じ、それらの翼の殺戮者を信じます。あまりにも
すみやかな愛を信じ切つて、その愛のなかへ千度の投身を敢てして、なほ且つ僕らはその愛と共にゐることを
忘れるのです。共在を忘れることによつてのみ、僕らの愛は完全するのでした。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

168 :春樹はブローティガンのパクリ:2011/02/07(月) 18:36:35 ID:sJCy0aEX.net
三島に詩性はないよ

169 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/09(水) 00:12:03 ID:i34FtsB1.net
(中略)
優れた無為、それを僕らは水や風に対して考へました。先づ僕らは風のことを夢想しました。晴天の、凪ぎつくした
海にあつても、ある距離だけ岸から離れると、そこにはいつも帆船の帆を孕ますに足り乗手の髪をなびかすに足りる
ある不朽の迅速な風が吹いてゐるといひます。その風はなまなかの生物とは関はりのない、しかも一種過敏に
失した傷つき易さをもつ非情の風でありました。なぜならその風の所在に触れそれを感じそれを耳に聞き目に見
鼻に嗅ぐ時のみでなく単にそれを知りそれを夢見るにすぎぬ時でも忽ちにしてそれ自身の本質を根底から変へて
しまふやうな存在をもつた風でした。常住である点で頑なであり、傷つき易い点で優柔であるその風は、無関心と
非情の性質に於て、却つて人間の本質と深く相触れてゐるのでした。人間存在の本質を抹殺するその風に、実(げ)に
人間の真の不在が、即ち真の本質が潜在してゐるのではなかつたでせか。そこでは微小なポジティヴに対する
無窮のネガティヴがあり、あの巨大な夜のやうに鏤められた星辰を以て僕らを深く覆うてゐました。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

170 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/13(日) 16:32:53 ID:1FR2X2QM.net
かやうなものこそ宇宙の啓示といへ神秘なる証しといへます。そこは到達しがたい裏側であるが故に、何事にも
代へ得ざる礎の有処でした。あの烈しい実在の正統な母胎でありました。いかなる壮麗無比の夢がその風のなかで
ゑがかれようと、風は突如としてその夢を奪ひ、奪はれた夢のなかへ急速に陥ちてゆきます。激しく奔騰しながら
風は嘶きました。人間の夢のひとつひとつが風にはあらはな敵意と感じられたのです。
人間はこの風を記述するのに嘗て方法を知りませんでした。陸(をか)に揚げられるや忽ちその光輝は失はれ
華麗極まる彩色の美も死灰の色に移ろふといふあの深海魚をさながらに、人間のもつ作用の最も遥かな作用である
「知ること」に依つてすら、目にもとまらぬ迅さで風は己が様態を変へてしまふのでした。知ることを超えて
いかなる記述があり得ませうか。
深海魚のもつ美しさといへども、海底ふかく潜つてゆけぱ、目のあたり之を見ることができます。が、銀貨の
表をしてその裏を窺はしめることは不可能事でなくて何でありませう。しかもこの裏面は不動の厳めしい裏面では
ありませんでした。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

171 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/13(日) 16:34:04 ID:1FR2X2QM.net
この風こそは人間の真の不在をひつきりなしに証ししてゐるたをやかな面差の持主でありました。東方の仏陀のやうな
幽婉さを以て、宇宙万象のときめきに美しく慄へつゞけました。おもへば烈しい実在が人間の悲劇となることも、
その実在が彼(か)の風から生れ彼の風の逆説をきらびやかに身に纏つて、扨て人間の陥没をあまりにも荘厳に
アンダラインするからでした。風は逸脱と普遍によつて、摩訶不思議な中間者となりました。媒体ではなく中間者に。
風は超えるといふことを逸脱しつゝ自由でした。超者と被超者との間を自由に往来できるのは風のみでした。
そこに於て風は手を要しませんでした。風は手をもちませんでした。
それだのに、手をもつ人間が、かやうな風の嫡子たる烈しい実在を内在する機会に遭ふとは、いかに高貴な苦悩に
みちた歓びでありませう。清らかな愛の証跡も、運命の苦しい水脈(みを)も、あまねく歌ひつくされて、ふと
物に憑かれたやうに立止るあの真昼の時刻の歓びでありました。それは人間の癒しがたい疫病ではありましたが、
その悲劇の本性に於て、人間の魂の健康に相触れるところが寡くなかつた。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

172 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/14(月) 10:51:49 ID:NMKdMpKb.net
(中略)
風について語ることは、恰かも透視者がその霊妙な術を施し終つたあとで感ずるやうな死に庶幾(ちか)い疲労を
呼びさまします。透視者はその果てに死ぬといはれてゐます。しかしこのやうな疲労こそ人間の営為が、ある深く
美しい無為につながつてゐることの一つの証跡であり、人間の営為がかうした美しい無為を橋としてのみ現象と
実相のいづれからも逸脱し得るといふ一つの教へでありました。逸脱と遁走、――疲労はそれへの方法でした。
迅速きはまりない風に対して、彼(か)の美しい無為を持することは、巨きな古代の節制でありましたが、現代は
その代償に、死の惧れさへある疲労を負はせずには措きません。嘗て多くの船舶が憩うてゐる波止場の切岸に
立つた僕は、水面に向ひ沖に向つてこのやうに呼びかけました。水よ! 水は永遠に疲れてゐる。汝の内にいかに
強い意志が籠り、いかに烈しい決心が宿らうとも、汝自身のもつ疲労をあざむくことはできぬ。疲労は汝の属性であり、
汝も亦、疲労の属性であるからだ。永遠に疲れたるものよ。実在をたしかに支へ、支へる力の無為のために、
驕奢を保て。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

173 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/14(月) 10:53:29 ID:NMKdMpKb.net
(中略)
――僕は水にむかつこのやうに呼びかけました。水はそれに応へるやうにもみえなかつた。そこで僕は青い山々に
向つて、群れ飛ぶ鶴に向つて、古代の国々に沿うて流れる海峡の潮に向つて、折から数多の松笠が夕映のなかに
耀いてゐる傾ける松の森に向つて、檜の薫高い谿間に向つて同じやうに呼びかけました。万象は応へることを止め、
死にゆく神のやうに凝然とうなだれました。そのとき僕は、今もなほ僕自身が呼ぶものであることを、深く羞ぢました。
自ら宇宙の静謐の一分子であるといふ至上の愉楽は、今在る苦しみに身悶えする人間にとつて、いつかは最高に
享受されるでありませう。それまでいかにしてこの苦しみをつゞけるか。否、持続の意識が、既にその苦しみを
軽減するでせう。かゝる軽減から更に悪しきものは生れ出ても、どうして良きものが生れませう。投身と陥没が、
逸脱と遁走が、小田巻のやうに美しく輪廻せねばなりません。苦しみが将に此処にある日のことを、僕らは
祝日として歌ふべきであります。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

174 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/16(水) 13:07:50 ID:0mL4QppK.net
(中略)
今日、出発の意味を真に知るために、知慧の輝きがいかなる値ひを持つべきか、僕らはくどくは云ひますまい。
出発は輪廻からの解放ではなしに、まことに美しい日のための、輪廻の祝典でありました。そこでは知慧といふ
優雅な衣裳の、繊細な褶(ひだ)のひとつひとつが、たぐひなく華麗なものとみえ、すべては驕奢の、魅はし
ふかい影にあふれてゐました。僕らは斯くして、帆や旗について考へたのです。
帆や旗について、あれらの闊(ひろ)い風について僕らは考へたのです。すべてはためくもの、はためく姿を以て
風に対するもの、さういふ存在の比喩を僕らは熱心に考へたくおもひました。人間があの仏蘭西(フランス)の
哲人の云つたやうに葦であるべきか、また今茲に語るやうに旗であり帆であるべきか、――彼の偉いなる風を
語つたのち、僕らは思惟したく考へました。なべてはためくもの、烈しい実在をば己が裏側から刻明に表現しようと
する努力。僕らはさうして僕らの裏側を、この上なく烈しいものに対する、繊巧無比な楯としました。その楯は
人を覆ひかくす世の常の楯ではありませんでした。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

175 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/16(水) 13:08:56 ID:0mL4QppK.net
(中略)
人間の所謂発見とは? 寓話はいつでも教訓の私生児です。即ち人間が為し得る発見は、あらゆる場合、宇宙の
どこかにすでに完成されてゐるもの――すでに完全な形に用意されてゐるものの模写にすぎないのでした。発見は
完成の端緒であるといふ言葉は、また、完成は発見の端緒であると、神秘な口調で言ひ直すことができる筈でした。
「完全に」――この言ひ方は時空を超えた言ひ方であるのでした。在るとは在つて了つたといふことであり
在るであらうといふことでした。そして同時に、不在の意味が極度に神聖視される筈でした。完全存在が完全不在の
高貴な雛型となる筈でした。その場所では、本物も偽物も模写も同じなのではありませんか? 贋金つくりは
正銘の金貨をいやでも作るのではありませんか。偽物も本物も全く同価値ではないのですか。
では何故いふのです。正真の「永遠の青空」などと。あれは冗談ですか。却々(なかなか)以て、人間はこれ以上
真面目な物言ひはできぬ筈です。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

176 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/16(水) 17:41:28 ID:elYXPIqC.net
キリハラキリコという小説のおもしろさに比べたら、三島なんぞ

177 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/17(木) 19:54:59 ID:LFglGs/5.net
なぜなら右のやうな完全さが人間界で通用するとは人間の可能性を予め殺すものであり、可能喪失の足場に於てこそ
一番高い建築がなされ得るからです。一番高い建築とは、即ち人間の死でありました。
この得難くまた得易い秀麗な建築。それについて語ることは又更に大いなるものについて語ることでもあります。
そしてその建築の哀切な高さについて。
可能性を放棄するとき人間の身丈は嘗て見ざるほど高くなるであらう。その高さは深部の明澄とすらもはや
無縁なものであるだらう。しかしどこか脆弱な高さである。僕らはそれに気附いて戦慄しました。
死といふものが、あの物質の老朽のやうに、一刻々々が予兆にも触れられざる潔癖な緩さに満ちたものだつたら。
海に沈む日のやうに、蒼褪めた死神の頬をも染めて止まない赫奕たる幻光を放つものだつたら。頽落する宮殿のやうに、
時間の秩序を徐々に濁らせ、つひには別箇の瑰麗な秩序へと凝結させる性質のものだつたら。又は、地上に落ちる
流星のやうに、ある高貴な衝動が無為にかゞやいた一本の弧にまで浄化されるのであつたら。――それはよいであらう。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

178 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/18(金) 11:08:12 ID:9pu07eFm.net
しかし人間の死は、人間の死は何か別のものです。残された意志と云つたやうなもの。地球がもつ頽唐の感情を
奪去つたやうな一つの意志。最後の征服意志。時空の中絶をも奪はうとする一つの意志が、あるひは死への熱情となり、
あるひは不死への願望となるのでした。そして時にはそれが、人間に対して死自身がもつ不変の意志とも、全く
一致することさへあるのでした。そのみかけからの共謀も、戦慄に価する脆さをば、打破るわけにはゆかなかつた。
可能性の放棄といふ気高い英雄的行為。その高さが意志によつて脆くされるのであらうか。意志といふ白蟻が、
塔の高さを毀つのであらうか。否、むしろあの高さは意志様態であつた。意志の暗示のてだてであつた。たゞ
可能性の放棄は意志ではなかつた。可能性は意志の原形であつたから。ではそこにいかなる造形術が企てられたの
でしたか。僕らの原始のいかなるデフォルメーションがなされたのでしたか。それは言ひ難いことの限りでありませう。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

179 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/18(金) 11:10:21 ID:9pu07eFm.net
(中略)
「待つ」、それはどんなに贅沢な約束であり悔恨でさへありませう。待つといふ刹那を信ずるために、今までの
人類の歴史はひたすらにめぐりつゞけてきたのではないのか。その美しさは放心と等しく、その謐けさ寧らかさは
不屈な魂の距離であつた。このやうな距離にぬれながら、かつてなきさはやかな背信を不断に投げつゞけて
くれるのは、あなたではなかつたか。――僕らは畢竟かくして二人称へとかへるでありませう。僕らの本然の故郷、
その二人称の場所にこそ、僕らの勇気が、僕らの愚行が、甲斐なきことの純潔さを以て、乾き、また乾かされ、
たんぽゝの綿のやうに飛翔(といふより盈溢)を待つでありませう。その花蔭は、花々の密度にひしめき、海よりも
なほ色濃く、今や可能の微風の内に、最初の戦慄を伝へてくるであらう。場所の不易、場所の不朽が、今こそ僕らを
飛翔させるであらう。百万の王国の名にも値ひせぬ僕らの政治が、昼の間は、貝殻のやうに快晴の希臘を映し、
甘美な埃を夢みず、あらゆる立法の又とない出帆の契りのため、千代かけてサン・サルヴァドルたらんと念ずるで
ありませう。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

180 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/23(水) 15:46:46.75 ID:6z9cyMaj.net
○ 森を切り拓いて一本の道をつけることは、道そのものの意義の外に与へるのみでなく、その風景、大きくは自然、
全体の意義をかへる。風景(万象)は、道の右、道の左、道の上方、道の下方といふ観念を以て新たに認識され、
再編成される。預言並びにunzeitgemaβな仕事の意味は茲(ここ)にある。預言とは、「あるがままの変革」である。

○ 人が呼んで以て無頼の放浪者といふ唯美派の詩人たちは、俗世間の真面目な人間よりも、更に更に生真面目な
存在である。いかなる荒唐に対しても真面目であるといふ融通のきかぬ道学者的な眼差を、道徳をでなく美を
守るためにもつ人々である彼等は、また真の古代人たりうる資格を恵まれた人等である。

○ 微妙なのは恋愛でなくて男女関係なのだ。

平岡公威(三島由紀夫)20歳「詩論その他」より

181 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/23(水) 15:47:44.27 ID:6z9cyMaj.net
○ 近代人にとつては、虚心坦懐に真情を吐露せよと命ぜられるほど苦痛なことはない。それは苛酷な殆ど
不可能な命令である。近代人は手許に多彩な百面相を用意してゐるが、そのなかのマスクの一つに、自分の
「真情」が入りこんでゐることは確かだが、おしなべてマスクと信ずることの方が却つて容易なので。即ち真情を
吐露することの困難は選択の困難にすぎない。
しかし一方確固たる「真の」マスクをかぶる者たることも近代人には不可能になりつゝある。私はむしろ古代の
壮大な二重人格を思慕する。

○ 同情について
――同情は特殊な情緒である。その情緒としての独立性に於て喜怒哀楽と対等であるとしての。
――同情は最も人間的な情緒である。
人間的なるものには人間冒涜的なるものが含まれる。神的なるものは神的なるもののみから、悪魔的なるものは
悪魔的なるもののみから形成さるゝのに。……かくて同情は、かゝるものとしての人間的なるものゝ典型である。
それは人類の最も本質的な病気であり、愛の頽廃である。

平岡公威(三島由紀夫)20歳「詩論その他」より

182 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/23(水) 15:48:32.88 ID:6z9cyMaj.net
――同情の涙は嬉し涙と同類に数へらるべきであり、義憤と同範疇に入れらるべきではない。義憤はある道徳観念
(「正義感」その他を含む)と情緒との結合であり、その強度はこの結合の確信の強度に正比例する。偶発的な
結合をも確信が之を必然化する。かくて義憤は結合の一因子たる道徳観念の上によりも、結合の確信の上に、
より多く立つが、しかしなほ、その因子の故に価値判断の対象たりうるが、同情の涙は嬉し涙と同じく単なる
情緒間の結合であつて、何ら価値判断の対象たりえない。しかるに世間は、久しくこの「同情の涙」をば結果
あるひは結果としての行為から判断して、価値判断の対象とする底(てい)の誤謬を犯して来た。
――同情ほど偏見によつて意味づけられて来た、又意味づけられるべき情緒はない。

平岡公威(三島由紀夫)20歳「詩論その他」より

183 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/23(水) 15:49:26.71 ID:6z9cyMaj.net
○ 痒さには幸福に似た感情がある。一面幸福とは痒さに似たものではあるまいか。

○ いかなる兇悪な詐欺師からよりも、師から我々は欺かれやすい。しかしそれは明らかに教育の一部である。

○ 精神の知恵では女は男にはるかに劣るが、肉体の知恵では女は男をはるかに凌ぐ。

○ 天才は精神の岸辺である。

○ フリードリヒ・ニイチェの思想は要約するに次の一行を以て足る。
「我愛さず。愛せられず。我唯愛さしむ」

○ 最も強烈なる主観の持主は、また最も強烈なる客観の持主である。

○ 少年時の数々の思ひ出は怖ろしいほど悲劇化されてゐる。
何故であらうか? 形成がどうして喜劇であつてはならぬのであらうか?

○ 危険であると同時にその危険を排除するものは一家言的心理である。

平岡公威(三島由紀夫)20歳「詩論その他」より

184 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/23(水) 15:50:30.89 ID:6z9cyMaj.net
――先づ詩人のメカニズムについて語らう。
詩人の中核にあるものは烈しい灼熱した純潔である。それは詩人たる出生に課せられた刑罰の如きものであり、
その一生を、常人には平和の休息が齎らされる老年期に於ても亦、奔情の痛みを以て貫ぬく。どこまでこの烈しい
純潔に耐へるかといふ試みが詩人の作品である。それは生涯に亘る試作の連続である。然しながら「耐へる」
(経験的ナルモノ)といふことと「試みる」(意志的ナルモノ)といふこととの苦渋にみちたこの結婚には、
本質的な悲劇が宿るであらう。こゝに特殊な形成の形態が語られてゐる。
かゝる純潔はラジウムの如きものである。恐るべき速度を以て崩壊し放射しつゝあるが、この自己破壊は鉛に
化するまで頗る長き時間を要する。詩人の営為もかくのごときものである。
詩人は自らの尾を喰つて自らの腹を肥やす蛇に似てゐる。単なる自己破壊ではない。それは形成を通して輪廻に
連なることができる。詩人の永遠性は自己自身の裡にはじまるのである。(自己自身から唐突な仕方で永遠に
つながること)

平岡公威(三島由紀夫)20歳「詩論その他」より

185 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/24(木) 10:30:05.45 ID:Pfy2wqK0.net
アルチュウル・ランボオが言つてゐる。
「ひとつこの純潔の度合をじつくり値踏みしてやらう」と。併し神が彼に与へた運命的な時間は、「じつくりと」
値踏みする余裕をもたせなかつた。それは西欧に於ては後年、リルケ、ヴァレリィ等によつて果たされた処の
ものである。
――更に詩人のメカニズムについて語らう。
詩人は常人の裏返し的存在である。内部に皮膚、外部に血と肉、内部に於ては抱擁、外部に於ては孤絶、その
ヒリヒリする過剰な痛覚を以て外界にさらされ、感覚を超越し、一種の痛烈無残な不感帯を形成する。内部に対しては
温柔繊細な感受性の皮膚を以て、内在的万象を抱擁し摂取し吸受し、しかも無限に与へる。この内外の相剋が
矛盾的綜合作用をなして詩人の形成に参与する。詩人の形成そのものが矛盾である。矛盾を超えて矛盾する存在である。

平岡公威(三島由紀夫)20歳「詩論その他」より

186 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/24(木) 10:30:59.57 ID:Pfy2wqK0.net
「胃」

印度古代一青年美女に恋せり。
美女傍らに熟睡せる時、仏、青年をして変形せしめ美女の口に入れしむ。内に森あり、花園あり、一宇の堂あり。
金色妙なる龕の中に金色に輝くもの安置せらる。
一尼僧出でて曰く、
こは胃也。
何万億年前の汝の胃に汝自身が惹かれ汝自身が恋する也。
いでその胃が女に宿りし来歴を語らん。
……大海をわたり……
つひに胎内に胃となつて結実せり。
即ち汝は汝自身に恋する也と。
「女死する後、
たをやかなる胃はその体内より語り出だせり、
われを忘れざれ、
何万年の後われは再び生れん、われを焼け」
      ○――――――――――○
「輪廻は性を転ぜしむるものでありませうか?」
「極めて容易に」と婆羅門はこたへた。「相恋する男女は共に自己が輪廻の上にかつてありし自己の証跡に
恋するものであります」
      ○――――――――――○

平岡公威(三島由紀夫)20歳「詩論その他」より

187 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/24(木) 10:32:21.57 ID:Pfy2wqK0.net
「胃」

機縁
ある旅行者が野中の一軒家に入る。
するとその中にはその外部にある一切のものがあつた。
その内部のひろさは外部(全宇宙)のひろさと同様であつた。
しかし人かへつてこれを告げるや、婆羅門は微笑んで云つた。
おまへはその中に入つたと見た時、はじめて真に現存の世界にはひつたのである。おまへが見たといふ現世と
同じ世界は、この現世そのものであつたのである。しかしはじめて機縁が、この現世とその広さを汝自身に
示したのである。この世界は一であるが、機縁なきものゝ心にある世界と、機縁あるものゝ心にある世界とに
わける時二つになる。汝は汝自身の内へ汝の第二の世界に入り得たのであると。
この世界は一にしてしかも二重である。

平岡公威(三島由紀夫)20歳「詩論その他」より

188 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/26(土) 12:26:27.77 ID:tTs0nsuS.net
僕らは嘗て在つたもの凡てを肯定する。そこに僕らの革命がはじまるのだ。僕らの肯定は諦観ではない。僕らの
肯定には残酷さがある。――僕らの数へ切れない喪失が正当を主張するなら、嘗ての凡ゆる獲得も亦正当で
ある筈だ。なぜなら歴史に於ける蓋然性の正義の主張は歴史の必然性の範疇をのがれることができないから。
僕らはもう過渡期といふ言葉を信じない。一体その過渡期をよぎつてどこの彼岸へ僕らは達するといふのか。
僕らは止められてゐる。僕らの刻々の態度決定はもはや単なる模索ではない。時空の凡ゆる制約が、僕らの目には
可能性の仮装としかみえない。僕らの形成の全条件、僕らをがんじがらめにしてゐる凡ての歴史的条件、――
そこに僕らはたえず僕らを無窮の星空へ放逐しようとする矛盾せる熱情を読むのである。決定されてゐるが故に
僕らの可能性は無限であり、止められてゐるが故に僕らの飛翔は永遠である。

平岡公威(三島由紀夫)21歳「わが世代の革命」より

189 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/26(土) 12:27:03.85 ID:tTs0nsuS.net
(中略)
新らしさが「発見」であるとするならば、発見ほど既存を強く意識させるものはない筈だ。発見は「既存」の
革命であるが、それは既存そのものの本質的な変化ではなく、既存の現象的相対的変化に他ならない。既存の
革命といふよりも、既存の意味の革命といふべきだ。(中略)
読者は僕らがなぜ革命を云はうとするのか訝かるかもしれない。しかし手始めに僕らは、革命といふ概念の古さを
修正しようとかかつてゐるのだ。十八世紀以来使ひ古されたこの陳腐な概念そのものに、革命を与へることから
はじめるのだ。(中略)僕らは永遠への思慕を忘れかねて革命を欲求する。衝動のはげしさは革命の概念によつて
盲目にされはしない。熱情の血との併有。信仰と懐疑との美はしい共在。僕らは革命のスツルム・ウント・
ドランクを通じて、無風帯を留保しておくだらう。(中略)
熱情に対して、より低い次元の侵入を警戒せねばならない。あらゆる批判と警戒の冷水も、真の陶冶されたる熱情を
昂めこそすれ、決してもみ消してしまふものではない。むしろあらゆる冷血にも耐へうる熱情の強さに僕らは
誇りを感じるべきだ。

平岡公威(三島由紀夫)21歳「わが世代の革命」より

190 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/26(土) 12:27:32.81 ID:tTs0nsuS.net
(中略)
たえず高きを憧れる存在が同じくその存在にとつて本質的な他のものによつて掣肘される時醸し出される緊張は、
その存在から矛盾と衝突が取除かれ融和と協同のみが得られる所謂「完成」と之を比べる時、何れ劣らぬものを
もつてゐるのではあるまいか。形成とは本質的なるものの分裂とその対立緊張による刻々の決闘である。結果たる
勝敗を本質的なものとして固定的に考へるならそれは変様と過渡とにすぎぬが、併し真の普遍性と永遠性は
後者のなかに見出だされるかもしれないのだ。独創性は真の普遍性の海のなかでしか発見されぬ真珠である。
不変なるものは変様のうちにひそんでゐるかもしれない。僕らの若さはなるほど本質的なるものが分裂し互に
制約する点にもともと悲劇的なものであるといへるし、若さそれ自身が不吉であるとさへ感ぜられる。しかし
傍目には退屈なこの形成の過程は、それから生れ出る結果を俟つまでもなく、それがそのまま抽象されて評価に
耐へうる筈だ。未完的完結の形に於てその刹那刹那に終止する否定しがたい意味が見られる筈だ。

平岡公威(三島由紀夫)21歳「わが世代の革命」より

191 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/26(土) 12:28:14.43 ID:tTs0nsuS.net
その外見上の未熟と不完全とにも不拘(かかはらず)、(壮年老年の文学が表現によつて定型化されるなら)、
若年の文学は表現を掣肘せんとする凡ゆる時間的空間的因子によつて定型化されるであらう。いはゞそれは
ネガティヴな、これまた貴重な表現型式であるといはねばならない。若年の文学的作品はその言語的表現以前の
評価の基準となりうべき、或るかけがへのない不吉な「確かさ」に満ちてゐるものだ。
かくて僕らは若年の権利を提言する。「たゞ若年に可能性をのみ発掘しようとする努力に終るな。なぜなら我々の
最も陥りやすい信仰の誤謬は、存在そのものを信仰してゐるつもりでその存在の可能性のみを信仰してゐることに
存するのだから」かくの如く僕らは主張し警告することを憚るまい。そしてこの時代の奔騰の前に、若者が或る
兇悪な意志で見戍られてゐることを知るであらう。新らしい時代を築かうとする若年には夭折の運命がある。
神の国を後にした古事記の王子(みこ)たちは、凡て若くして刃に血ぬられた。彼等と共に矜り高くその道を
歩むことを、恐らく僕らの運命も辞すまい。

平岡公威(三島由紀夫)21歳「わが世代の革命」より

192 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/28(月) 16:33:19.41 ID:O6GqxdbA.net
叙事詩人とは何者でせう。一体そんな人はゐたのでせうか。僕はこの時代にもどこかに生き永らへてゐるやうに
信じられる一人の象徴的な人物のことを考へてゐるのでせう。その人の目にはあらゆる貴顕も英雄も庶民も、
「生存した」といふ旺(さか)んな夢想に於て同一視されます。その人の目には愛情の遠近法が無視される如く
見えながら、実は時代の経過につれてはじめて発見されるやうな霊妙な透視図法を心得てゐます。その人の魂の
深部では、信じ合へずに終つた多くの魂が信じ合ふことを知るやうになります。その人は変様であつて不変であり、
無常であつて常住であります。その人こそは亡ぼさうと意志する「時」の友であり、遺さうと希ふ人類の味方です。
不死なるものと死すべきものとの渚に立ち、片方の耳はあの意慾の嵐の音をきき、片方の耳はあの運命の潮騒に
向つてそばだてられてゐます。その人は言葉の体現者であるとも言へませう。

平岡公威(三島由紀夫)22歳「M・H氏への手紙――人類の将来と詩人の運命」より

193 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/28(月) 16:35:11.29 ID:O6GqxdbA.net
言葉はその人に在つては、附せられた素材性を払ひ落し、事実を補へるのではなしに事実のなかに生き、
言葉そのものがわれわれの秘められた願望とありうべき雑多な反応とを内に含んで生起します。我々が手段として
言葉を使役するのではなく、言葉が我々を手段化するのです。――かくて叙事詩人は非情な目の持主です。
安易な物言ひが恕(ゆる)されるなら、人間への絶望から生れた悲劇的なヒュマニティの持主だと申しませうか。
お嗤ひ下さい。僕の聯想はあちこちと急がしく飛びまはつてさぞ貴下をお困らせするだらうと思ひます。僕は
廿世紀の思潮が原子爆弾によつて決定されたなどと威勢のよいことは申せません。あの耀かしいヒュマニズムを
行動の原理と恃んで出発した十九世紀思潮の、継子として生れたのが廿世紀でした。廿世紀は何を発見したこと
でせう。まだ危険な試みの繰返しにすぎないではありませんか。次々と惨鼻な戦争がおそひかゝり、その間々に
もたらされた平和は、死刑囚が最後の日を待つ安楽な数日にすぎませんでした。

平岡公威(三島由紀夫)22歳「M・H氏への手紙――人類の将来と詩人の運命」より

194 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/28(月) 16:37:26.93 ID:O6GqxdbA.net
(中略)
たとへばかういふ比喩が可能ではないでせうか。全世界にうじやうじやと棲息してゐるのは実は人間ではなく、
人間性はプロメテのやうに荒涼たる岩山で鎖につながれてゐる。人間の奇怪なドッペルゲンゲルの生存が企て
られてゐる。さうしていつも「人間らしいもの」は人間性の影に依て脅かされ、人間性は不実在の人間の幻影に
脅えてゐる。カントは現象としての人間と本体としての人間を区別しましたが、彼は概念的分類を超えて人間を
信じた幸福者であつたに相違ありません。僕はカントが想ひもみなかつた右のやうな不幸な比喩を通じて、
ヒュマニズムそのものに対決の瞬間が迫つてゐるやうな予感を覚えるのです。宗教的救済といふおそらく
不朽であらう永続的な理想が、いつかヒュマニズムと袂別せねばならないのではありますまいか。そして
ヒュマニズムにとつて人類はじまつて以来の孤独の苛酷な出帆が促されるのではないでせうか。そこで我々は
東洋といふあの暗い群島に衝き当るのではないでせうか。

平岡公威(三島由紀夫)22歳「M・H氏への手紙――人類の将来と詩人の運命」より

195 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/28(月) 16:41:22.22 ID:O6GqxdbA.net
僕には廿世紀の問題を最も痛切に悩んでくれた人こそ、フリードリヒ・ニイチェだと思はれます。「哀しいことだ! 
人間が一つの星も最早産まないであらうやうな時が来るのだ。哀しいことだ! 最早自己自身を軽侮し得ない、
最も軽侮すべき人間の時代が来るのだ」
思ひかへせばかへすほど、愚かな戦争でした。僕には日本人の限界があまりありありとみえて怖ろしかつたのでした。
もうこれ以上見せないでくれ、僕は曲馬団の気弱な見物人のやうに幾度かさう叫ばうとしました。
戦争中には歴史が謳歌されました。しかし彼らはおしまひまで、ニイチェの「歴史の利害について」の歴史観とは
縁なき衆生だつたとしか思へません。
戦争中には伝統が讃美されました。しかしそれは、嘗てロダンが若き芸術家たちに遺した素朴な言葉を理解する
ことができるほど謙虚なものであつたでせうか。ロダンは極めてわかりやすく慈父のやうに説いて居ります。

平岡公威(三島由紀夫)22歳「M・H氏への手紙――人類の将来と詩人の運命」より

196 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/28(月) 16:43:52.90 ID:O6GqxdbA.net
「しかしながら君達の先輩を模倣せぬ様に注意せよ。伝統を尊敬しながら、伝統が永遠に豊かに含むところの
ものを識別する事を知れ。それは『自然』と『誠実』との愛です。此は天才の二つの強い情熱です。皆自然を
崇拝しましたし又決して偽らなかつた。かくして伝統は君達にきまりきつた途から脱け出る力になる鍵を与へる
のです。伝統そのものこそ君達にたえず『現実』を窺ふ事をすすめて或る大家に盲目的に君等が服従する事を
防ぐのです」――この大家といふ言葉は、古典と置きかへてみてもよいかもしれません。
戦争中にはまた、せつかちに神風が冀(ねが)はれました。神を信じてゐた心算だつたが、実は可能性を信じて
ゐたにすぎなかつたわけです。可能性崇拝といふ低次な宗教に溺れてゐたのです。
天使の翼を見るといつも僕は信仰の脆弱点を感じたものでした。ヰリヤム・ブレイクの優れた画面では翼のない
人々が見事に天翔けつてゐます。思ふに天使といふ考へは宗教の中でも伝統的な趣を多く持つたもので、そこに
可能性を期待する余地を与へ、神性の未完成を表象させてゐるのでせうか。

平岡公威(三島由紀夫)22歳「M・H氏への手紙――人類の将来と詩人の運命」より

197 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/28(月) 16:46:23.28 ID:O6GqxdbA.net
神のもつ完結性、可能なるものが体現され切つてもはや神の存在以外に歩み出すことができず、アルファであり
オメガであるところの完結性、それを信じようと努める強さがもてなかつたのもあの時代として無理からぬこと
だつたかもしれませぬ。神・即ち存在自体を信ずること、それは信ずることによつて神に一歩近づきうるのでもなく、
信じない人よりも一歩至福へ歩み寄ることでもないでせう。信ずることによつて神に何ものも加へえないが故に、
しかも信ずる行為を自分の上に還してはならないが故に、神との間にたえず不確定なおそろしい係累が結ばれます。
彼は神をもつとも露はな場所で信ずるでありませう。彼は自分の全生命と神の存在の一点との間に平衡関係が
生れる刹那に凡てを賭けます。その時、神は彼自身の「自足」の鏡なのです。彼が自らの行為によつて存在それ
自体を呼ばうとすると、その呼び声が可能性を人身によびよせた至高のものであるために、存在それ自体の
完結性から宿命的な懲罰を受けねばなりません。

平岡公威(三島由紀夫)22歳「M・H氏への手紙――人類の将来と詩人の運命」より

198 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/01(火) 10:52:24.60 ID:yCuiKiCW.net
(中略)
僕は近松に近代文学特有の不安と衰弱の心理とは別の、もつと張りのある活々とした心理を見出だして愕きました。
以前読んだ時にはそれほど切実に感じられはしませんでしたのに。――近松の心中物は明らかにデカダンスの
作物ではなく文化の創生期にあらはれる溌溂たる悲劇の精神でした。そこには訝られるほどあらたかな古代が
生きてゐました。生活のなかに悲劇的なものが漲つて、しかも些かの暗さもありませんでした。近松の人物たちは
愛といふ運命の厳しさを耀かすためにさまざまな日常の喜怒哀楽を見事に様式化してしまつてゐるのです。
そこには篩ひつくされた砂金のやうに、心の真実がわるびれず天日の下にかゞやいてゐます。封建的感情とそれを
呼び做すのは容易な業ですが、正しい史眼といふものはさうあつてはなりますまい。封建制創生期の人々が、
生活のなかにまだ活々とうごいてゐる道徳規範と対決し、それを悲劇の高まりに漲る清澄な心の真実に還元し、
死を媒介として生の洵の意味を知らうと試みる健康なきはめて常識的でさへある生き方をするのを見る時、
現代の貧しさを思はぬ人がありませうか。……

平岡公威(三島由紀夫)22歳「M・H氏への手紙――人類の将来と詩人の運命」より

199 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/01(火) 10:53:30.76 ID:yCuiKiCW.net
(中略)
ここまで書いて来たら、遠方で鶏鳴がきこえてきました。まだ空の色はかはらず、みづみづしい清涼な暗黒です。
もう卅分もすると窓の外の空は夢のやうに美しい紺色になるのです。その一面の潤うた紺青を、僕は一日の中の
どの時刻よりも美しい空の色だと思ひます。
しきりに汽笛がきこえます。あれは渋谷駅を深夜にすぎる無蓋貨車の立てる汽笛でせうか。ですが、汽笛といふと、
昔から僕はすぐ船を聯想してしまふのです。すぐさま僕一人を置きざりにした晴れやかな航海を嫉視してしまひます。
幼時病弱で、よく遠足に、風邪などを引いて出られなかつた記憶がよみがへつてくるのでせうか。深夜に港を
出てゆく黒天鵞絨張りの帆をつらねた大帆船が未知の海に向つて針路を定め、星のかがやく夜空の下を爽やかに
白波を立ててすすむ幻をよく見ました。帆船が汽笛を鳴らすのはをかしなことのやうに思はれます。あるひは
つねに僕らに別離と出発の感情をよびおこし、深夜の時間の深みから鳴りわたり、未知へとつきすすむ喇叭の音の
やうに僕らを力強く誘ひゆくもの、その象徴として汽笛を聞いてゐるのかもしれません。

平岡公威(三島由紀夫)22歳「M・H氏への手紙――人類の将来と詩人の運命」より

200 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/02(水) 10:22:15.42 ID:bBAzVi0p.net
○ 偉大な伝統的国家には二つの道しかない。異常な軟弱か異常な尚武か。それ自身健康無礙(むげ)なる状態は
存しない。伝統は野蛮と爛熟の二つを教へる。
○ 承詔必謹とは深刻なる反省の命令である。戦争熱旺(さか)んなりし国民が一朝にして平和熱へと転換する為に、
自己革命からの身軽な逃避が、この神聖な言葉で言訳されてはならない。
○ デモクラシイの一語に心盲ひて、政治家達ははや民衆への阿諛(あゆ)と迎合とに急がしい。併し真の戦争責任は
民衆とその愚昧とにある。源氏物語がその背後にある夥しい蒙昧の民の群衆に存立の礎をもつやうに、我々の
時代の文学もこの伝統的愚民にその大部分を負ふ。啓蒙以前が文学の故郷である。これら民衆の啓蒙は日本から
偉大な古典的文学の創造力を奪ふにのみ役立つであらう。――しかしさういふことはありえない。私は安心してゐる。
政治家は民衆の戦争責任を弾劾しない。彼らは、泰西人がアジアを怖るゝ如く、民衆をおそれてゐる。この畏怖に
我々の伝統的感情の凡てがある。その意味で我々は古来デモクラチックである。

平岡公威(三島由紀夫)昭和20年9月16日「戦後語録」より

201 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/02(水) 10:22:42.46 ID:bBAzVi0p.net
○ 日本的非合理の温存のみが、百年後世界文化に貢献するであらう。
○ ナチスもデモクラシイも国の伝統的感情の一斑と調和するところあるために取入れられ又取入れられ得たので
あると思ふ。これを超えて、強制的に妥当せしめらるゝ時、ナチスが禍ありし如く、デモクラシイも禍あるものと
なるであらうと思ふ。
○ 偏見はなるたけない方がよい。しかしある種の偏見は大へん魅力的なものである。
○ 芸術家の資質は蝋燭に似てゐる。彼は燃焼によつて自己自身を透明な液体に変容せしめる。しかしその
融けたる蝋が人の住む空気の中に落ちてくると、それは多種多様な形をして再び蝋として凝化し固形化する。
これが詩人の作品である。即ち詩人の作品は詩人の身を削つて成つたものであり、又その構成分子は詩人の身に等しい。
それは詩人の分身である。しかしながら燃焼によつて変容せしめられたが故に、それは地上的なる形態を超えて
存在する。しかも地上的なる空気によつて冷やされ固められ乍ら。
○ 人生は夢なれば、妄想はいよいよ美し。

平岡公威(三島由紀夫)昭和20年9月16日「戦後語録」より

202 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/02(水) 10:23:13.92 ID:bBAzVi0p.net
○ 退屈至極であつた学習院の学友諸君よ。諸君らに熱情ある友情の共感をもちつゞけることができるほど、僕は
健康な人間ではなかつた。君らがジャズを愛好するのもまだしも我慢できた。君らが一寸も本を読むといふことを
しらないで、殆ど気高くみえるほど無智なことにも我慢できた。だが僕には我慢ならなかつた。君らと会ふたびに、
暗黙の内に強いられたあの馬鹿話の義務を。つまり君たちが、おそろしく、さうだ慶応年間生れの老人よりも、
もつとおそろしく退屈であつたことを。――戦争が僕と君らを離れるやうに強いた。今では、昔より、僕は君らを
愛することができるだらう。尤も君らが僕の目の前にゐないことを前提としてだ。――なつかしい「描かれる」一族よ。
君たちは君たちの怠惰と、無智と、無批判の故に、描かれるべく相応に美しくなつてゐる筈だ。僕には「桜の園」の
作者となる義務があるだらう。(君らがゑがかれるために申分なく美しくなつた時代に)

平岡公威(三島由紀夫)昭和20年9月16日「戦後語録」より

203 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/02(水) 10:23:41.87 ID:bBAzVi0p.net
○ 流れる目こそ流されない目である。変様にあそぶ目こそ不変を見うべき目である。わたしはかゞやく変様の
一瞬をこの目でとらへた。おお、永遠に遁(に)げよ、そして永遠にわたしに寄添うてあれ。
○ 神界がもし完全なものならそれが発展の故にでなく、最初からあつたといふことは注目すべき事実だ。
○ どのやうな美しい物語にも慰さめられないとき、生れ出づるものは何であらうか。それを書いた瞬間に、
すべては奇蹟になり、すべては新たにはじめられ、丁度、朝警笛や荷車や鈴や軋りやあらゆる騒音が活々と
ゆすぶれだし、約束のやうに辷り出す、さういふ物語を私は書きたい。そしてそのやうな作品の成立がもはや
恵まれずとも怨まない。

平岡公威(三島由紀夫)昭和20年9月16日「戦後語録」より

204 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/02(水) 17:59:39.01 ID:bBAzVi0p.net
○ 私は悲しみのために色さへ蒼ざめ乍ら、自分の人との間に介在する塀の内側へ来て了ふのだつた。わたしは
その塀をどんなに悲しみ深くながめたらう。
しかしこのやうな、塀への愛情や憤怒や情熱は、君らの言葉では、それに当るものがない。君らはたゞ僕を
情熱なき人間と云つた。僕のマスクは君らの注文に応じてますます硬化した。僕の身悶えするやうな青春の苦悩が
君たちにはコレッポチもわからなかつた。
もし僕に子供が出来て、彼が天才の名にあこがれたら僕はどう云つて叱り、またいさめよう。彼にこんな暗い、
寂寞たる青春は与へたくない。
○ 天才がたゞその作物によつてのみ天才といはれるなら僕は明らかに天才でないだらう。天才がたゞ彼の
夭折によつてのみ天才といはれるなら、僕は尚天才ではないだろう。
しかし天才はたしかにある。それは僕である。それは凡人のあづかりしれぬ苦悩に昼となく夜となく悩みつゞける魂だ。
それは生れ乍ら悲劇の子だ。それは神の私生児だ。
○ 天才とは青春の虐殺者である。

平岡公威(三島由紀夫)推定20〜22歳「わが愛する人々への果し状」より

205 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/02(水) 20:36:51.31 ID:OWYJRfqR.net
                  ,!  \
           ,!\          !    \      こういうスレ、マジでもういいから・・・
         i  \         l      \,,..__
          ,i′  ,\___,,--―l       \::゙'冖ーi、、
        i     :;\::::::::::..l              `'‐、、
       /__,..;:r---―-、,..__.     ,;'il:;}          .;:::`L__
   ,.:f''""゙゙゙´          、 ̄ヽ,//           ...::::::l;;;:;;::::
  _/       ......  、   \//、            ::::::::リ;;:::::::::....
//       ......:;::::::::::::. ヽ、\ ゙ヽ  ヘ    ●      ....:::::::::i';;;;::::::::::::
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206 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/05(土) 10:36:20.67 ID:f6GaSjb6.net
最初の特攻隊が比島に向つて出撃した。我々は近代的悲壮趣味の氾濫を巷に見、あるひは楽天的な神話引用の
讃美を街頭に聞いた。我々が逸早く直覚し祈つたものは何であつたか。我々には彼等の勲功を讃美する代りに、
彼等と共に祈願する術しか知らなかつた。彼等を対象とする代りに、彼等の傍に立たうとのみ努めた。真の
同時代人たるものゝ、それは権利であると思はれた。
特攻隊は一回にしては済まなかつた。それは二次、三次とくりかへされた。この時インテリゲンツの胸にのみ
真率な囁(ささや)きがあつたのを我々は知つてゐる。「一度ならよい。二度三度とつゞいては耐へられない。
もう止めてくれ」と。我々が久しくその乳臭から脱却すべく努力を続けて来た古風な幼拙なヒューマニズムが
こゝへ来て擡頭したのは何故であらうか。我々はこれを重要な瞬間と考へる。人間の本能的な好悪の感情に、
ヒューマニズムがある尤もらしい口実を与へるものにすぎないなら、それは倫理学の末裔と等しく、無意味にして
有害でさへあるであらう。

平岡公威(三島由紀夫)20歳「昭和廿年八月の記念に」より

207 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/05(土) 10:36:53.85 ID:f6GaSjb6.net
しかし一切の価値判断を超越して、人間性の峻烈な発作を促す動力因は正統に存在せねばならない。誤解しては
ならない。国家の最高目的に対する客観的批判ではなく、その最高目的と人間性の発動に矛盾を生ずる時、既に
道義はなく、道徳は失はれることを云はんとするのである。人間性の発動は、戦争努力と同じ強さを以て執拗に
維持され、その外見上の「弱さ」を脱却せねばならない。この良き意思を欠く国民の前には報いが落ちるであらう。
即ち耐ふべきものを敢て耐ふることを止め、それと妥協し狎(な)れその深き義務より卑怯に遁(のが)れんと
する者には報いが到来するであらう。
我々が中世の究極に幾重にも折り畳まれた末世の幻影を見たのは、昭和廿年の初春であつた。人々は特攻隊に対して
早くもその生と死の(いみじくも夙に若林中隊長が警告した如き)現在の最も痛切喫緊な問題から目を覆ひ、
国家の勝利(否もはや個人的利己的に考へられたる勝利、最も悪質の仮面をかぶれる勝利願望)を声高に叫び、
彼等の敬虔なる祈願を捨てゝ、冒涜の語を放ち出した。

平岡公威(三島由紀夫)20歳「昭和廿年八月の記念に」より

208 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/05(土) 10:37:12.99 ID:f6GaSjb6.net
彼等は戦術と称して神の座と称号を奪つた。彼等は特攻隊の精神をジャアナリズムによつて様式化して安堵し、
その効能を疑ひ、恰かも将棋の駒を動かすやうに特攻隊数千を動かす処の新戦術を、いとも明朗に謳歌したのである。
沖縄死守を失敗に終らしめたのはこの種の道義的弛緩、人間性の義務の不履行であつた。我々は自らに憤り、
又世人に憤つたのである。しかしこの唯一無二の機会をすら真の根本的反省にまで持ち来らすに至らなかつた。
軈(やが)て本土決戦が云々され、はじめて特攻隊は日常化されんとした。凡ての失望をありあまるほどもちながら、
自己への失望のみをもたない人々が、かゝる哀切な問題に直面したことには一片の皮肉がある。我々は現在現存の
刹那々々に我々をして態度決定せしめる生と死の問題に対して尚目覚むるところがなかつた。もし我々に死が
訪れたならそれは無生物の死であつたであらう。

平岡公威(三島由紀夫)20歳「昭和廿年八月の記念に」より

209 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/05(土) 10:37:36.22 ID:f6GaSjb6.net
(中略)
沖縄の失陥によつて、その後の末世の極限を思はしむる大空襲のさなかで、我々がはじめて身近く考へ目賭したのは
「神国」の二字であつた。我々には神国といふ空前絶後の一理念が明確に把握されつゝあるが如く直感されたのである。
危機の意識がたゞその意識のみを意味するものなら、それは何者をも招来せぬであらう。たゞ幸ひにも、人間の
意識とは、その輪廓以外にあるものを朧ろげに知ることをも包含するのである。意識内容はむしろネガティヴであり、
意識なる作用そのものがポジティヴであると説明してよからうと思はれる。それは又、人間性の本質的な霊的な
叡智――神である。(中略)
我々が切なる祈願の裏に「神国」を意識しつゝあつた頃、戦争終結の交渉は進められてあり、人類史上その
惨禍たとふるものなき原子爆弾は広島市に投弾されソヴィエト政府は戦を宣するに至つた。かくて八月十五日正午、
異例なるかな、聖上御親(おんみづか)ら玉音をラヂオに響かし給うたのである。

平岡公威(三島由紀夫)20歳「昭和廿年八月の記念に」より

210 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/05(土) 10:37:55.40 ID:f6GaSjb6.net
「五内(ごだい)為に裂く」と仰せられ、「爾(なんぢ)臣民と共に在り」と仰せらるゝ。我々は再び我々の
帰るべき唯一無二の道が拓(ひら)くるを見、我々が懐郷の歌を心の底より歌ひ上ぐるべき礎が成るのを見た。
我々はこの敗戦に対して、人間的な悲喜哀歓喜怒哀楽を超えたる感情を以てしか形容しえざるものを感ずる。
この至尊の玉音にこたへるべく、人間の絞り出す哭泣の声のいかに貧しくも小さいことか。人間の悲しみがいかに
同じ範疇を戸惑ひしてうろつくにすぎぬことか。我々はすでにヒューマニズムの不可欠の力を見たが、これによつて
超越せられたる一切の価値判断は、至尊の玉音に於て綜合せられ、その帰趨(きすう)を得るであらうと信ずる。
人間性の練磨に努めざりし者が、超人間性の愛の前に、その罪を謝することさへ忘れ果てて泣くのである。この
刹那我等はかへりみて自己が神であるのを知つたであらう。人間性はその限界の極小に於て最高最大たりうることを。

平岡公威(三島由紀夫)20歳「昭和廿年八月の記念に」より

211 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/05(土) 10:47:10.04 ID:f6GaSjb6.net
(中略)
けふ八月十九日の報道によれば、参内されたる東久邇宮に陛下は左の如く御下命あつた由承る。「国民生活を
明るくせよ。灯火管制は止めて街を明るくせよ。娯楽機関も復活させよ。親書の検閲の如きも即刻撤廃せよ」
かくの如きは未だ嘗て大御心より出でさせたまひし御命令としてその例を見ざる処である。この刹那、わが国体は
本然の相にかへり、懐かしき賀歌の時代、延喜帝醍醐帝の御代の如き君臣相和す天皇御親政の世に還つたと
拝察せられる。黎明はこゝにその最初の一閃を放つたのである。
(中略)困難なる事態より国家を救ふの力は、既に一応の教養と智識によつて冷静正鵠なる判断を得たる廿歳以上の
智識青年の内に深く畳める情熱に俟つところ最も大である。真に宇宙の秩序を秩序とする太宗の文化を建設し、
平和世界の憧憬の的たらむ祖国に尽くすべき力は、我々に俟つ。
青年の奮起、沈着、その高貴並びなき精神の保持への要請が今より急なる時はない。ますらをぶりは一旦内心に
沈潜浄化せしめられ、文化建設復興の原力として、たわやめぶりを練磨し、なよ竹のみさを持せんと力めることこそ、
わが悠久の文学史が、不断に教へるところではあるまいか。

平岡公威(三島由紀夫)20歳「昭和廿年八月の記念に」より

212 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/06(日) 17:09:44.66 ID:noBOtv/Z.net
伊勢物語のやうな古典をよむと畏ろしくおもはれる。日本人にはたしかにああしたものを書きたい欲求があり、
いはゆる小説家の神経では禁忌のやうになつてゐるだけのつぴきならず怖ろしいのである。日本の古典が伊勢物語
一冊であつたら現代の小説家はみな絞(くび)れ死ぬであらう。雨月物語のやうな物語をかき、もつとあがきの
とれぬ春雨物語といふ悲痛な小説をかいた秋成が、そのあとで癇癖談を書かねばならなかつた気持がわかるのである。
(中略)伊勢物語は突端まで到りついた人間の戯文である。あの物語には人生の危機がどつさりゑがかれてゐる。
それがあれほどさりげなく書かれてゐるのがおそろしい。客観といふのでもなくましてや看過されてゐるのではない。
たゞ日本の詩文とは、句読も漢字もつかはれないべた一面の仮名文字のなかに何ら別して意識することなく
神に近い一行がはさまれてゐること、古典のいのちはかういふところにはげしく煌めいてゐること、さうして
真の詩人だけが秘されたる神の一行を書き得ること、かういふことだけを述べておけばよい。

平岡公威(三島由紀夫)17歳「伊勢物語のこと」より

213 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/07(月) 12:10:52.35 ID:KYgHxjoL.net
「新潮」から愛誦詩を一つ挙げよ、と言つてきた。そこですぐ伊東静雄と答へた。俺はなぜさう答へたのだらう。
(中略)
なぜ伊東静雄なのか? 俺にとつてあの人の詩句は、着物の中に縫ひ忘れた針のやうに、どこかわからぬが、
突然、過去から針先をつき出して、肌を刺してくる感じがする。どんなに典雅な、たとへば詩集「春のいそぎ」の
中の詩句でもさうなのだ。
伊東静雄の詩は、俺の心の中で、ひどくいらいらさせる美しさを保つてゐる。あの人は愚かな人だつた。
生きのびた者の特権で言はせてもらふが、あの人は一個の小人物だつた。それでゐて、飛切りの詩人だつた。
詩人といふ存在は何と厄介なのだらう。人生でちよつと出会つただけでも、あんな赤むけのした裸の魂が、
それなりに世俗に揉まれながら、生きてゐたといふ感じが耐へがたい気がする。詩人などといふ人間がこの世に
ゐなかつたら、どんなに俺たちは、心を痛めることが少なくてすむだらう。

三島由紀夫「伊東静雄の詩――わが詩歌」より

214 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/07(月) 12:12:47.37 ID:KYgHxjoL.net
何か俺たちの見たくない不愉快な真実といふものがこの世にはある。しかもその不愉快な真実が、もつとも
美しい一行に結晶してゐるやうな詩を見るのは辛い。それでちつとも俺たちの不愉快は救はれはしない。美しい
詩句になつて、そいつは却つて一そう深く俺たちの心に突き刺さつて残るのだ。何のための記念碑ぞ。
さういふ一句は伊東静雄の詩のはうばうに散見する。
(中略)
俺が声のかぎりに叫んだ場所であの人は冷笑を浮べて黙つてゐた。俺が切実に口をつぐんでゐたときに、あの人は
言つてはならない言葉を言つた。あの人の詩句は、いつもそんな塩梅のものに俺には思はれる。そんな詩句が
これほど美しいのは、殆んど許し難いことだ。
伊東静雄の中からたつた一篇を選ぶとき、俺は、思ひ切つて、「海戦想望」を選んでやらうかと思つてゐた。あの、
「つはものが頬にのぼりし
ゑまひをもみそなはしけむ」
といふ天上的な一句によつて忘れがたい詩だ。しかし俺は敢てこれを捨てた。
俺はもつとも音楽的な、新古今集以来もつともきらびやかな日本語で書かれた、あの、ほとんど意味のない、
空しいほどに明るい燕の詩を選ぶことに決めた。

三島由紀夫「伊東静雄の詩――わが詩歌」より

215 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/09(水) 11:06:18.26 ID:ylKPrWac.net
僕はどこにゐてもその場に相応しくない人間であるやうに思はれる。どこへ出掛けても僕といふ人間が、あるべきで
ない処にゐる存在のやうに思はれる。(中略)これは驕つた嘆きといふものだらうか。かういふ嘆きに低迷して
ゐるのは、僕の心構へが甘いからだらうか。真の芸術家は招かれざる客の嘆きを繰り返すべきではあるまい。
彼はむしろ自ら客を招くべきであらう。自分の立脚点をわきまへ、そこに立つて主人役たるべきであらう。
とはいへ、この居心地のわるさが多くの場合僕の作品の生れる契機となつてゐる。僕は偶々口に入つた異物に
対する不快よりも先に、口に入れられた異物自身の不快を知つてゐる。このことは却つて、ある時代に生きる
人々の不幸を知るより先に、ある時代それ自身の持つ不幸を直感せしめる捷径である。少くとも僕はさう信じたい。
――僕を招かれざる客として遇する時間と場所の更に奥・更に彼方に存するものと僕は不幸を頒ち合ひ、頒ち
合ふことによつて親近感を得ようと欲しもする。

平岡公威(三島由紀夫)22歳「招かれざる客」より

216 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/09(水) 11:06:41.99 ID:ylKPrWac.net
今我々がそれと対決を迫られてゐる戦後の茫々たる無秩序は、我々の好悪・理論・道徳的信念のよく左右しうる
ところではない。解釈は可能であり、依然として解決は不可能である。たゞ僕は招かれざる客としてかう直感する
自由をもつてゐる。「無秩序自身にとつて無秩序は不幸であるに相違ない」と。僕は時代が自身に不幸を
課したのだと思ふ。
そしてまた人間がこの期に及んでも抱いて離さないナルチスムスの凄惨さを考へる。人間は己が病毒を指摘される
ことによつても容易に己惚れる。この弱味につけこむ者が喝采を博するのは当然なことである。人間を人間から
放逐すること以外に、よき治療法は残されてゐないのではないかとさへ思はれる。それといふのも僕は戦争時代に
人間が人間を見失つたとは考へてゐないからだ。戦争時代には人は今よりももつと切なく、人間といふ最愛の者の
消息にひたすら耳を澄ましてゐたと知つてゐるからだ。

平岡公威(三島由紀夫)22歳「招かれざる客」より

217 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/09(水) 11:07:30.82 ID:ylKPrWac.net
然しナルチスムスの昂進は、地上に嘗てないほど孤独が繁殖してゆくのと正比例するやうである。ナルチスムスの
考察は孤独の考察に帰着するやうである。そのためにも僕は招かれざる客の冷め果てた目が自分に備はつてくるまで
待ちたいと念(ねが)ふ。その目を養ひ育てることが当為ではなくて義務だと感ずる。僕はその時人間関係を
フラスコの中、真空状態の中にとぢこめてみたい。心理の化学変化をしらべ、元素の周期律表のやうな、心理の
様式化と象徴化を完成したい。人間を一旦孤独といふ元素に還元し、いかに複雑微妙な結合を示す時も、その
元素の姿を見失はぬやうにしたい。かうして抽象化された熱情が、熱情本来の属性を悉く備へながら、たとへば
乾板の上に定着された焔の一瞬の姿のやうな、もはや身動きならぬ形をとるのが見たい。定着は、いひかへれば
表現は、瞬時の出来事であるべきである。何ものもとらへぬ瞬間と凡てをとらへる瞬間とは、同一の瞬間である筈だ。
物そのものでもなく固化した標本でもない生(芸術の対象としての)は、かうしてとらへられる他はない。

平岡公威(三島由紀夫)22歳「招かれざる客」より

218 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/09(水) 11:07:56.90 ID:ylKPrWac.net
(中略)(僕が好んで戯曲を読むのも)人間の孤独と、対話の絶望的な不可能とをあれほど直截に感じさせる型式は
ないからである。言葉による表現といふ行為もかくて一の戯曲的行為に他ならないとすれば文学は戯曲にその
一つの典型を見出すことができる。偉大なる戯曲がさうであるやうに、偉大な文学も亦、独白に他ならぬ。
ゲエテが「諸々の山頂に、安息ぞ在る」といふあの詩句をキッケルハーンの頂に書きしるした時、彼は独白者の
運命を予覚したのであつたらう。
しかしいかに孤独が深くとも、表現の力は自分の作品ひいては自分の存在が何ものかに叶つてゐると信ずることから
生れて来る。自由そのものの使命感である。では僕の使命は何か。僕を強ひて死にまで引摺つてゆくものが
それだとしか僕には言へない。そのものに対して僕がつねに無力でありただそれを待つことが出来るだけだとすれば、
その待つこと、その心設(こころまう)け自体が僕の使命だと言ふ外はあるまい。僕の使命は用意することである。

平岡公威(三島由紀夫)22歳「招かれざる客」より

219 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/10(木) 12:32:29.08 ID:A863P6ms.net
○ 廿年十月四日夜放送のニュースによれば
米情報頒布係長、興行協会長を招いて十月興行を批判し、歌舞伎はじめ、封建的色彩強く、或ひは股旅物等
軍国主義的色彩を払拭し切れず、ポツダム宣言の趣旨に沿ふもの頗る貧困也、須(すべか)らく帰郷兵士等が
新建設にいそしむ様等を描ける新作を上演し、或ひは劇作家を動員してかゝる新作を執筆せしむべきなり、と訓示す。
嗚呼、歌舞伎より封建的色彩と軍国主義をマイナスして何が残る。米国的演劇観よりは解しがたき「技術の演劇」
として歌舞伎を見なければ、彼等によつて歌舞伎並びに歌舞伎役者は廃絶の他はなからう。宣伝演劇の悪弊は
米人御自身よく御存知の筈、演劇に対する不当な干渉は、マックス・ラインハルト等有識者の来朝を待つての後に
してほしい。
(中略)
遂に歌舞伎最後の日が来た。時事新報その他の記事に一月廿日この歴史的事実が発表された。菊五郎は云つて居る。
(中略)
菊五郎にして何といふ意気地のない信念のない役者根性、「上司の指示であれば」といふこの言葉と、日頃の
芸術家気どりとの矛盾がわからないのか。

平岡公威(三島由紀夫)20〜21歳「芝居日記」より

220 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/12(土) 10:56:42.41 ID:GaUxkyuS.net
現在、誰でも自由に意見を書き込める掲示板がセットになったニュースサイトが実生活に欠かせないものとなりました。
既存マスメディアによる一方通行の情報に身を委ねていた方々へ。
本日より目からうろこが落ちる納得の毎日を約束します。

2NN (2chトップページ)
+ニューススレッド(専属記者が立てる記事)に特化したニュース勢いランキング。
http://www.2nn.jp/

2chTimes
2NNとほぼ同じコンセプト。関連スレッドリンクあり。トップページ画像多め
http://2chtimes.com/

2番街
2NNとほぼ同じコンセプト。トップページ構成が異なる。
http://2bangai.net/

2ちゃんねる勢いランキング
+ニュース以外のニューススレッドもランクイン。ニュース全板縦断勢いランキング。
http://www.ikioi2ch.net/group/news/

READ2CH
2ちゃんねる勢いランキングとほぼ同じコンセプト。関連スレッドリンクあり。書きこみ不可。
http://read2ch.com/

2ちゃんねる全板縦断勢いランキング
2ちゃんねる全ての板をカバーする勢いランキング。書き込み不可。
http://2ch-ranking.net/

BBY (2chトップページ)
+ニューススレッド(一部除く)を新着順表示。
http://headline.2ch.net/bbynews/

221 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/19(土) 12:17:33.72 ID:FwKNEle8.net
「土耳古(トルコ)人の学校」

私の家の横にある坂を登つて細い道を真直に行くと、剥げた水色の番瀝青(ペンキ)に飾られた貧しい垣と
低い門が有る。其の門柱には墨で描いたのか殆ど見えない様な字がある。上方のは、土耳古回々教学校とどうにか
読めるが、下の方の奇妙な外国語がちよいちよいと顔を出して大抵消えてゐる。木造の洋風家屋は殺風景な庭の
一隅にあつて、二階は寄宿舎で階下は教室らしい。
日曜など、八時頃に起きて散歩に来て見ると、土耳古人の子等がどやどやと入つて行く。日曜だから御説教でも
聞くのであらう。昼過ぎになると出て来る。
寄宿舎に居るものは、かなり小人数らしい。女の児の方が多いが、男の子も少なからず居る。併し、彼等は実に
哀れな身装(みなり)をして居るのである。バンドのない状袋の様な洋服や、男の子達は短い皴くちやなズボンを
はき、見悪(みにく)く汚ない上着を着けて居る。時々彼等の口から本国の民謡風のものが唱はれるが、他は
流暢な日本語である。

平岡公威(三島由紀夫)中等科一年、12歳の作文

222 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/19(土) 12:18:07.05 ID:FwKNEle8.net
「土耳古(トルコ)人の学校」

或る雨の日、彼等ゴム長靴連の行方を見てゐたら、代々木八幡の方角であつた。何処でどんな暮しを行つて居るのか、
私は彼等の生活の上に好奇心を持つ。又彼等の容貌は云ひ知れぬ愁ひを含んでゐる。其の眼は、五月の空のやうに
蒼く美しいが、眉の奥深く黒い縁にかこまれて冷え切つた荒野の土のやうに沈んでゐる。その頭髪はブロンドも
あれば、稍(やや)鳶色のもあるが、酷く手入を怠つてゐると見え、雀の巣のやうである。疲れ切つてほのかな
紅色を失つた頬。凡て快活な少年少女らしさを失つて居るとはいふものゝ、彼等はよく遊ぶ。
固いボールを以て。
校庭の山羊を相手に。
秋雨の日など、よぼよぼの牝牡の山羊が、ぬれた雑草を食べてゐる。
此の老夫婦の所へ、もう直ぐ小山羊が来るさうである。
山羊は、親しみを湛へた目で私に寄つて来る。

平岡公威(三島由紀夫)中等科一年、12歳の作文

223 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/25(金) 12:56:54.05 ID:VAlw1wIt.net
中世にパロディー文学=連歌なり謡曲なりあの奇怪な古今伝授(これも私は文芸として考へたい)なりが生れて
きたのは漠然たる憧れの為ではあつたが、文芸の次の時代の生命を奪はれたところに必然に執られねばならなかつた
姿ともいへる。パロディー文芸は学問といふやうな態度を多くとらない。生活を抽象に高めて行つて極美に達して
ゐるのは古典であるが、パロディーはその抽象を生活に還元しようとする働らきだ。日本の詩人たちの隠遁は
かゝる古典の還元の一作用である。その慨きの切なさについては頃日云ふ人も多いので云はない。学といふものは
自らの生活への還元といふよりもつと遠心的なところに立つて身にかへるのを要したのは宣長の古事記伝の態度を
みればわかる。かゝるパロディー文学は大抵の場合パロディーのまゝ伝はるか又は全く別な新文学の内に融合するか
どちらかゞ普通だが、後者は門左衛門(巣林子)に一時成就するかとみえた。蓋し自ら身に行ふ戯曲は、その
本質に於てパロディー性を有するものであつたのか千本桜や嫩軍記に於ては中世の軍記物のもつ雰囲気が切ないほど
身近くゑがかれてゐた。

平岡公威(三島由紀夫)18歳「近松半二」より

224 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/25(金) 12:57:18.45 ID:VAlw1wIt.net
(中略)
日本の歴史の上の創造即ち「むすび」は段階的なものではなく、デカダンスの次の空間から生れるものではない。
「かへる」のではなく、いはゆる復古でもない。その前によこたはるものゝ「はじめ」が次の「はじめ」を誘致する。
「をはり」は「はじめ」を誘致するのではなく、「はじめ」が常に「はじめ」につらなるのである。これは
日本風な創造であり、仏教風な輪廻思想ではない。「はじめ」の連結により歴史が形づくられるが、「をはり」と
「はじめ」は革命思想でむすびつけられるのではない。「はじめ」が「はじめ」に結びつきうるのは血の
ありがたさで血の連続なきところにはかゝる結合はうまれない。支那では「はじめ」が「はじめ」にむすびつくなど
考へられぬ。日本ではじめて天壌無窮の御神勅ははじめて意義をもつのである。

平岡公威(三島由紀夫)18歳「近松半二」より

225 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/26(土) 11:55:35.73 ID:ue/bVTpJ.net
止ることから流れることへの転身は、夢みることにとつて誕生と復活の朝であらう。すべて夢みることに先行して、
礫のやうに人をうつあの幻は、まさに転身の成就に俟つて現はれるであらう。そのとき止る存在は流れる存在と
なりきるゆゑに、止る姿に無限に近づくに従つて即ち無限に遠ざかる流れの天性から、それが、一歩一歩が可能の
おそろしい断崖である「止る」存在とは似て非なる、「永久に止る」ともいふべき存在の型式をとるときこそ、
不朽の語は、はじめて使用に価する。立ちあらはれる幻は、無辺際の可能の海の極まりつくした充実と空虚の末に、
すなはち無への無限の接近の大きな消極の頂点に、すがすがしく、暁天の星をさながらの、最高の有が輝きだす瞬間、
つと人の目や心をよぎる。さうして人は陥ちるのだ。およそ陥没のなかでもつとも聖らかな陥没、上昇のうちで
もつとも美しい陥没を。あの止ることの「可能の海」が、完全の喪失へと身を向けるときに、おそらくそこには
完全さがはじめて存在する。はじめて。しかしなほ明けやらぬ東雲におぼめきわたるであらう。永くこの陥没を、
人々は愛して来たのだ。

平岡公威(三島由紀夫)18歳「夢野乃鹿」より

226 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/26(土) 11:56:16.47 ID:ue/bVTpJ.net
まことに小鳥の死はその飛翔の永生を妨げることはできない。中絶はたゞ散歩者が何気なく歩みを止めるやうに
意味のない刹那にすぎない。喪失がありありと証ししてみせるのは喪失それ自身ではなくして輝やかしい存在の
意義である。喪失はそれによつて最早単なる喪失ではなく喪失を獲得したものとして二重の喪失者となるのである。
それは再び中絶と死と別離と、すべて流転するものゝ運命をわが身に得て、欣然輪廻の行列に加はるのである。
別離が抑々(そもそも)何であらうか。歴史は別離の夥しい集積であるにも不拘、いつも逢着として、生起として
語られて来たではないか。会者必離とはその裏に更に生々たる喜びを隠した教へであつた。別離はたゞ契機として、
人がなほ深き場所に於て逢ひ、なほ深き地に於て行ずるために、例へていはゞ、池水が前よりも更に深い静穏に
還るやうにと刹那投ぜられた小石にすぎない。それはそれより前にあつたものゝ存在の意義を比喩としつゝ、
それより後に来るものゝ存在を築くのである。即ち別離それ自体が一層深い意味に於ける逢会であつた。
私は不朽を信ずる者である。

平岡公威(三島由紀夫)20歳「別れ」より

227 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/27(日) 12:08:04.42 ID:sG+piPJD.net
古人は国を思ふをものおもひと名付けてよんだ。それは恰かも恋情の呼び名と似てゐた。恋のものおもひは
憑かれつゝおもふことであつた。おもふために神憑りが、すなはち古里がなくてはならなかつた。おもふこそ
憑かれつゝ憧れること、春風を身にうけて、受身の身のよすがにむすぼほれた憧れをさぐることであつた。
いつも受けうる清らかな姿に古人は居た。そこに身を保つてあらたな目をつねに雲居のかなたへ馳せてゐた。
かゝる目こそ大きないのちの中にあつていのちの呼吸その身動きその手振のことごとくを共にし得る目であつた。
憑かれることに対して勇敢な、永劫新らしき目であつた。


詩のあらゆる故里への契りは、蕪村をとほしてむすばれた。私たちはけふの意味をそれのかなたに読むであらう。
私たちの存在から更に生ひ立つ鳥影を信ずるであらう。花時はやがて訪れる。私たちも亦、心もそゞろに
「待つ」人でありたい。重ねていふ、待つとは同時に、詩人の不朽のかなしみである。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「長柄堤の春――春風馬堤曲につきて」より

228 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/27(日) 12:09:10.30 ID:sG+piPJD.net
人々の関心は蝶々にも似てゐる。通ひつめる夥しい蝶に蜜といふ蜜を吸ひつくされる艶やかな大輪の花がある。
プルウストが嘗てさうであつた。――しかしこの熱烈にして気まぐれな恋人たちの訪問が途絶えると、花は一時、
疲れ果て萎え光を失つたやうにみえる。恋人たちはもう見向きもしない。花は色褪せて、花壇の翳の方にうなだれる。
果してその本質が発光作用を失くしたのであらうか? 果して豊かな蜜の井戸は涸れ果てたのか?――熱烈とは
いへないが不断に生命に向つて瞠らかれてゐる隠者の眼はある朝人気のない花壇の隅にふしぎな花の変容を
見出だして驚く。その花が嘗ての数倍も艶やかに蘇つてゐるさまを。数倍も香り高い新たな蜜に溢れてゐるさまを。
人に見られてゐないといふ秘密な喜びで、不用意な美しさを露はにしてゐるさまを。過剰が一種高貴な物憂さを
花弁に与へ、恣な光の遍満は不可思議の音楽を漲らせてゐるさまを。(別箇の生――生よりも活々とした生の
誕生が営まれたかのやうに)

平岡公威(三島由紀夫)21歳「バルダサアルの死」より

229 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/28(月) 11:33:35.64 ID:994fFJZ3.net
時代を考へることを皮相の面でするときそれは便乗に類する。便乗とはむしろ時代を考へない謂である。

平岡公威(三島由紀夫)17歳「無題(『輔仁会雑誌』編輯後記用)」より


芟夷(さんい)の詩であることは、不朽のますらをぶりとたわやめぶりのその礎を固くすること――太しく
たてる宮柱のみわぎの裔に外ならない。

平岡公威(三島由紀夫)18歳「後記(『赤絵』二号)」より


時世に敏なりといふことが詩人の特性のやうに言はれるのは滑稽で抱腹絶倒なことである。国の最高のなげかひを
共にせぬ詩人が最高の慶びにどうして侍(はべ)ることができよう。直毘をいふのはそこなのだ。だから日本こそは
古典主義即浪漫主義であるところの唯一の国である。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「古座の玉石――伊東静雄覚書」より

230 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/28(月) 11:34:00.13 ID:994fFJZ3.net
時間による超国家性は無窮の国に於ては国家性に外ならない。世界文学が時間で結ばれると真の国粋文学に一致する。
かゝる「時」の上の宣長の思想は本然的に血統となり血脈となり系譜となるものである。弁証法的思想史と全く
異つた思想を日本に於て宣明したところに宣長の世界的偉大がある。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「無題(『作文補遺』)」より


だんだんに私は文学を引き寄せるやうにしてゆきたいと思ふ。己れより乗り憑つて乗り憑りつつ清められると
云つたあり方に心ひかれる。さういふ場合の放胆さについてはもう口でいはぬはうがよいと思ふ。それは一種の
ニイチェ風な陥没であらうもしれぬが私は日本人にふさはしい手振だけをまなんでゆくほかはない。そして、
戦後の世界に於て、世界各国人が詩歌をいふとき、古今和歌集の尺度なしには語りえぬ時代がくること、それらを
私は評論としてでなく文学として物語つてゆきたい。

平岡公威(三島由紀夫)19歳「跋に代へて(『花ざかりの森』)」より

231 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/30(水) 11:29:30.31 ID:wqUMQeCR.net
お葉書うれしくありがたく拝見いたしました。(中略)
久々のお便りに愚痴もいかゞかと存じますが、東京のあわたゞしい生活の中で、高い精神を見失ふまいと努めることは、
プールの飛込台の上で星を眺めてゐるやうなものです。といふと妙なたとへですが、星に気をとられてゐては、
美しいフォームでとびこむことができず、足もとは乱れ、そして星なぞに目もくれない人々におくれをとることに
なるのです。夕刻のプールの周辺に集まつた観客たちは、選手の目に映る星の光など見てくれません。
たゞかれらの目に美しくみえるフォームでとびこんでくれることを要求するのです。
『私が第一行を起すのは絶体絶命のあきらめの果てである。つまり、よいものが書きたいとの思ひを、あきらめて
棄ててかかるのである』川端康成氏にかつてこのやうな烈しい告白を云はせたものが何であるかだんだん
わかつてまゐりました。しかも川端氏のやうなこの一言が云へる境地に、一体達することができるかしら、と
たへず不安に見舞はれます。

三島由紀夫
昭和23年3月23日、伊東静雄ヘの書簡より

232 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/30(水) 11:30:06.22 ID:wqUMQeCR.net
東京では印象批評が滅び去りました。たとへば中里恒子や北畠八穂のやうな美しい女流作家が不遇です。
川端康成氏が評壇から完全に黙殺され、日夏耿之介氏はますます「枯坐」して化石してしまひさうです。
横光利一氏の死に対してあらゆる非礼と冒涜がつづけられてゐます。私の愛するものがそろひもそろつて
このやうに踏み躙られてゐる場所でどうしてのびのびと呼吸をすることなどできませう。
斎田君も今の東京で仕事をすれば苦しむことがわかつてゐます。美しいものが美しい故に死刑に処せられるのです。

三島由紀夫
昭和23年3月23日、伊東静雄ヘの書簡より

233 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/30(水) 11:30:32.15 ID:wqUMQeCR.net
(中略)
ギロチンへみちびく民衆は笑はない民衆です。おそろしくシリアスな、ニイチェ的笑ひとおそろしく無縁の民衆です。
共産党系の雑誌や新聞に出てゐる漫画は笑ひを凍らせます。かれらはデスマスクをかぶつた民衆です。
美の死刑執行人であるといふ自負すらもちえない精神です。
銀蠅が芥箱から出てきてそこらをとびまはつてゐます。ブンブンといひて夜もねられず、といふところでせうが
――かれらは「海」とは無縁の精神です。蠅は海のまへで引返します。かれらは翼をもたないくせに翅(はね)を
翼だと思つてゐるのです。(中略)
――たゞ一意専念、あの未知の国から一条の光をこの地上へもたらせば私の仕事はすみます。
どうぞ時々お暇な折に励ましの御言葉をいたゞきたうございます。詩人に対し要求することは罪であると知りつゝ、
敢て(「要求」とは失礼ながら)お願ひいたす次第でございます。

三島由紀夫
昭和23年3月23日、伊東静雄ヘの書簡より

234 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/03(日) 17:46:28.09 ID:jX2MGpSL.net
タバコ出荷停止!
皆さん大丈夫ですか?
近所のコンビニにもタバコがありません
でも、ご安心を!
タバコは個人輸入すれば問題なし
なんせ海外のタバコは激安
送料込みで1箱60円とかもアリ
コンビニで買うのがバカらしく思える
日本語の個人輸入代行業者は沢山あります
「タバコ 個人輸入」とかで検索して
良さそうな業者を選べばOK

235 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/08(金) 13:06:16.17 ID:BdkVF1cs.net
文学運動は、結局、予定調和的な世界史の水先案内人をつとめる運命的なものだと思はれます。「意志」の観念に
於てよりも「使命」の観念に於て行はれる運動。覚醒運動であると共に、全く unzeitgemaB な運動。さうして
その直接の動力因は、近代性の矛盾から生れた我々の思想的苦悩と、その緊張であり、我々以前の歴史の全てを
賭けた大賭博に他なりません。我々が現に創造し負うてゐる思想による解決であり、同時にその思想からの
解放運動です。真の文学運動は「未だ名付けられざるもの」なのでありませう。
貴下の仰言つたロマンティシズムとクラシシズムとの間の緊張、その解決――それは近代人の常に課せられてゐる
問題であり、それ自身近代の矛盾なのでせう。
とまれ、文学運動は運命的なものである、縁である、八犬伝の八犬士の会合の如きものである、といふ感じが
僕にはします。それは理論体系を前提しません。但し解説と批判は後から大いに必要です。併し命名も亦、
後人の附するところに委ねてよろしいでせう。たゞ我々は我々の中のデエモンの奮起を信ずるのみです。

平岡公威(三島由紀夫)昭和20年12月10日、野田宇太郎への書簡より

236 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/08(金) 17:46:57.77 ID:vQY6APQJ.net
低木潅木喬木高木、とにかく三島は詩に関してはてんでだめ。

237 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/12(火) 11:49:33.29 ID:fcTd0jR8.net
僕は今この時代に大見得切つて、「共産党に兜を脱がせるだけのものを持て」などゝ無理な注文は出しません。
時勢の流れの一面は明らかに彼らに利があり、彼等はそのドグマを改める由もないからです。しかし我々の任務は
共産党を「怖がらせる」に足るものを持つことです。彼等に地団太ふませ、口角泡を飛ばさせ、
「反動的だ! 貴族的だ!」と怒号させ、しかもその興奮によつて彼等自らの低さを露呈させることです。
正面切つて彼等の敵たる強さと矜持を持つことです。ひるまないことです。逃げないことです。怖れないことです。
そして彼等に心底から「怖い」と思はせることです。
(中略)貴族主義といふ言葉から説明してかゝらねばなりません。
学習院の人々に貴族主義を云ふとすこぶる誤解されやすく、それはともすれば今までの学習院をそのまゝそつくり
是認する独善主義の別語とされる惧れなしとしません。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年2月10日、神崎陽への書簡より

238 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/12(火) 11:49:59.74 ID:fcTd0jR8.net
(中略)
明治以来、「華族」とは政治的特権を背景にもつた政治的な名称であり、文化的意義は頗る稀薄にしかもつて
をりません。新華族が簇生(そうせい)した所以です。――貴族主義とはプロレタリア文化に対抗すると同じ
強さを以てブルジョア文化(アメリカニズム)に対抗するといふことを知つていたゞきたい。この意味で
政治的意味の貴族主義は無意味です。なぜなら世界史の趨勢はアリストクラシイの再来を絶対に希みえず、
現今までわづかに残された政治的特権も過去の特権の余映にすぎぬといふ理由が第一、もう一つは、ブルジョア文化が
今では貴族社会一般を風靡し、単に華族を集めてみても貴族主義は達成されぬといふ理由が第二です。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年2月10日、神崎陽への書簡より

239 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/12(火) 11:50:19.92 ID:fcTd0jR8.net
――それでは文化的貴族主義とは何でせうか。それは歴史的意味と精神的意味と二つをもつてゐます。
…後者はあらゆる時代に超然とし、凡俗の政治に関らず、醇乎たる美を守るといふエリートの意識です。
(これは芸術からいふので、倫理的には道徳を守るエリートたりともある人はいふでせう)
…しかもその効果は美的標準に於て最高のものであらねばならぬ点で明らかに貴族主義的です。向上の意識、
「上部構造」の意識、フリードリヒ・ニイチェが貴族主義とよばれる所以です。
第二に、唯美主義は本質的に反時代性をもつといふ点で貴族的です。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年2月10日付、神崎陽への書簡より

240 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/12(火) 11:50:35.71 ID:fcTd0jR8.net
われらの外部を規制する凡ゆる社会的政治的経済的条件がたとへ最高最善理想的なものに達したとしても、
絶対的なる「美」からみればあくまでも相対的なものであり、相対的なものが絶対的なものを規制しようとする時、
それは必ず悪い効果を生じます。いかによき政治が美を擁護するにしろ、必ずその政治の中の他の因子が美を
傷つけることは、当然のことで仕方ないことです。したがってあらゆる時代に於て美を守る意識は反時代性をもち、
極派からはいつでも反動的と思はれます。すなはち、彼らのいはゆる反動的なるがゆゑに貴族主義的です。
――「中庸」といふ志那クラシックのいかにも睡つたやうなこの言葉がやうやう僕には激しい激越な意味を以て
思ひかへされて来ました。中庸を守るとは洞ヶ峠のことではありません。いはゆる微温的態度のことではありません。
元気のない聖人気取ではありません。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年2月10日、神崎陽への書簡より

241 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/12(火) 11:53:51.62 ID:fcTd0jR8.net
「中庸」の思想こそ真に青年の血を湧かせる思想なのです。それは荊棘の道です。苦難と迫害の道です。
漢籍に長ずるときく山梨院長が、戦時中の輔仁会で翻訳劇を上演しようとした僕の意図を抹殺し、戦争終るや
「モンテ・カルロの乾盃」を手もなく容認するやうな態度を、人々はいはゆる「中庸」の道だと思つてゐます。
これは思はざるの甚だしきものです。これこそいはゆる論語よみの論語知らずです。
右顧左顧して世間の機嫌をうかゞひもつとも「穏当な」道を選ぶといふ思想こそ、孔子が中庸といふ言葉で
あらはしたものと全く反対の思想です。
中庸といふこと、守るといふこと、これこそ真の長い苦しい勇気の要る道です。
このやうな時代に、美を守ることの勇気、過去の日本精神の枠、東洋文化の本質を保守するに要する勇気、
これこそ真の男らしい勇気といはねばなりません。
学習院は反動的といふ攻撃の矢面に立ち、真の美、真の文化を叫びつゞけねばなりません。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年2月10日、神崎陽への書簡より

242 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/12(火) 11:54:12.58 ID:fcTd0jR8.net
(中略)
君は大東亜戦争を何と考へてゐられますか。
僕らはあの戦争の中で育ち、その意味であの戦争を僕らは生涯(いや子孫代々)否定することはできません。
あの戦争が間違ひだつたのどうのといふことでなしに、人間の成長と形成の「過程」として否定したくもできない
一個の内面的事実なのです。我々が以て恥とすべきは戦争に協力したとか、戦争目的に盲目であつたとか、
為政者にだまされたといふことよりも、あの戦争から「我々が何も得て来なかつた」といふことではないでせうか。
何らわれらにプラスするものを得てこなかつたといふ痛切な恥ではないでせうか。この点は僕も省みて面を
赤くせぬわけにはゆきません。
しかし今日の輔仁会、といふよりはその背後にある昨今の学習院学生の気風にこれに対する反省がみられるでせうか。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年2月10日、神崎陽への書簡より

243 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/15(金) 11:21:24.22 ID:VuafhpDs.net
氏は純潔で、孤独で、わが少年期の師表であつた。しかし今、氏の作品を読み返してみると、その徹底的な孤独に
対して、文字どほり騒壇の人となつた自分を恥ぢるのみである。記憶はおぼろげながら、あの貴重な面唔の際、
何か氏の大事な訓誡を耳にしたやうな気がするのである。思ひ出すことの困難さが、氏のやさしい、しかし
厳しい沈黙の表情をばかり思ひ出させる。氏が教を垂れたのは、「沈黙」についてではなかつたか? 今、氏の
三詩集を順次に辿つてみると、戦後の氏の「沈黙」も一つの詩であり、詩人の営為であつたことが、はつきりして来た。

三島由紀夫「伊東静雄氏を悼む」より

244 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 10:54:04.28 ID:cAa8CDLA.net
非小説家の文壇への御戦に、私はいつも胸のすくものを感じてをります。そしてこれほど健康な「自明の理」が
今更力説されねばならぬ日本文壇の頽廃を併せ考へます。貴下の御説がユニークなものであるといふ一事ほど、
日本文学の悲しむべき現状を象徴してゐるものがございませうか。大前提が欠けて小前提ばかり発達してゐる
哀れな国状です。大前提を言ひ出す人は白眼で見られるのです。小前提ばかりバカの一つおぼえでくりかへして
ゐれば身の安全が保てるのです。(中略)
実に美を罵倒し、日本の伝統をののしり、舌を犬のやうにふるはせる芸当を心得、「歯ぎしり」といふ奴を
ハミングの代りに用ひ、それはそれは賑やかで、しかもしんみりした、何が何だかわからない、西洋料理と
中華料理をまぜこぜにしたやうな西欧人文主義的・レアリズム的・サルトル的・ドストエフスキー的・万能薬
ヒューマニズム宣伝的、あやしげなものであります。

三島由紀夫
昭和22年11月4日、林房雄への書簡より

245 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 10:54:34.28 ID:cAa8CDLA.net
(中略)今日「群像」十一月号が届き、高見、中島、豊島氏が僕を寄つてたかつてやつつけてゐる大人げない
継子いぢめの光景を見(この速記はもつと猛烈だつたさうですが)、鬱勃たる闘志を湧かせました。(中略)
「生きるために必要な、といふギリギリのところで已(や)むに已まれず生み出される文学」とは何でせうか。
今までの日本の告白小説家のやうな泣きっ面を、――男子としてあるまじき泣きっ面を――小説のなかで存分に
演じてみせることが、即ち「生きるための文学」であるといふ、さういふ滑稽なプリミティーブな考へ方に
僕は耐へられません。僕にはわづかながら遠いサムラヒの血が、それも剛直な水戸ッ子の血が流れてゐます。
僕の文学は、腹を狼に喰ひ裂かれながら声一つあげなかつたといふスパルタの少年に倣ひたいのです。その
少年の莞爾(くわんじ)とした微笑に似た長閑(のどか)な閑文学(とみえるもの)に僕は生命を賭けます。
僕は「狼来(きた)りぬ」といふあの臆病な子供になりたくありません。

三島由紀夫
昭和22年11月4日、林房雄への書簡より

246 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 10:54:54.46 ID:cAa8CDLA.net
もつとよい比喩がここにございます。我子の死に会つて数分後に舞台へかけつけなければならなかつた喜劇俳優が、
その時示した絶妙の技、さういふものにこそ僕は憧れるのです。(文学を芝居にたとへるなんて、旧文壇の人に
とつてはおそらく冒涜的な言動でせうが、文学といふものに対する自堕落な信念はそろそろ清算してよい時では
ないでせうか。僕は最後のところ、いつもギリシャ悲劇を考へます。作者が一言の思想の表白もさし控へた
純粋な技術と形式の精神がそこにあります。ギリシャ的単純さが最後の目標です。勿論これは志賀直哉氏の
単純さとは全く別個のものです)。
話をあとに戻りまして、ではその時、その喜劇俳優にとつて、喜劇といふ芸術は何ものでせうか。
逃避でせうか。自嘲でせうか。僕には彼の悲しみの唯一無二の表現形式として喜劇があるのだと考へられます。
彼は悲しみを決して涙としてあらはしてはならなかつたのです。それを笑ひとして示さねばならなかつたのです。

三島由紀夫
昭和22年11月4日、林房雄への書簡より

247 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 10:55:15.45 ID:cAa8CDLA.net
文学における永遠不朽な「情痴」の主題、僕はそれをこの「笑ひ」だと考へます。「戯作」と云つても同じこと
でございませう。もちろん僕としてもヒューマン・ドキュメントを書きうるゲエテ的作家の幸福を考へます。
しかしメリメのやうな「自己を語らない作家」の最も不幸な幸福をも考へます。作品の世界に凡(あら)ゆる
「日曜日」を託けて、永遠にウィークデイの累積をしか持たなかつた作家のおそるべき幸福を考へます。それを
高見順氏などは、ウヰークデイの匂ひのしない文学はディレッタンティズムだと仰言るのです。
日曜日は僕にとつて逃避の場所ではありません。そこにこそ僕は生涯を賭け、ギリギリ決着の「生活」を賭けて
ゐるのです。それこそ僕の唯一無二の喜劇の舞台なのです。僕はそこを掃除し、つやぶきんをかけ、花を飾り、
恋人を迎へ、おしやべりをし、……といふ比喩は甚だ皮相的ですが、その日曜日に、僕は自分の悪と不徳と
非情と侮蔑と残忍と犯罪とのあらゆる装ひを期待するのです。

三島由紀夫
昭和22年11月4日、林房雄への書簡より

248 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/18(月) 10:55:39.01 ID:cAa8CDLA.net
あらゆる種類の仮面のなかで、「素顔」といふ仮面を僕はいちばん信用いたしません。
僕はかうして、僕の生にとつて必然的であつた作品からそのあらゆる窮屈な必然性をぬがせてやつて、
くつろがせてやるのです。僕は作家の歯ギシリなどといふものを書斎の外へ洩らすことを好みません。僕の
作品はそれでも尚、僕の本質的な生活だと思はれるのですが……
尤もこんなことは口で言つてもはじまらないことでございます。作品で証明する他はありません。
しかし僕は決してひるみません。負けません。書き続けて、御期待にそむかぬ人間になることをお誓ひします。

三島由紀夫
昭和22年11月4日、林房雄への書簡より

249 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/27(水) 10:42:37.03 ID:fdivXURj.net
美しい日本語を守りたいと思ひます。日本語を土足でふみにじる新進作家諸賢に憎悪を抱きます。何も若い
もの同志だからとて肩を組まねばならない理由はありますまい。

三島由紀夫
昭和22年11月26日、林房雄への書簡より


「太陽と薔薇」は、たのしい小説と申し上げるのみで言葉がありません。夜ばかりを愛して来た人間は、昼間の
花園に出ると目がくらむのです。恋人の唇かと思つて花に接吻します。恋人の囁きかと思つて蜜蜂に返事をします。
(中略)
この間新潮に「戦艦大和」を書いた細川といふ人にある場所で会つて、その原文の、門外不出の原稿を見せて
もらひ驚倒しました。小林秀雄氏がこれを読まれて、細川氏の勤め先へかけつけられたさうですが、日本人が
うたつた最も偉大な叙事詩ともいへます。(中略)日本人のテルモピレエの戦の細述です。人間の「目」の
おそろしさを感じます。事によつたら「心」より神に近いのは目かもしれない、人間が神からさづかつたのは、
肉体とか精神とかではなく、「目」だけかもしれない、と思はれて来るのです。

三島由紀夫
昭和23年2月21日、林房雄への書簡より

250 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/27(水) 10:43:41.87 ID:fdivXURj.net
小生はたつた一つの的を何とか最上の瞬間に射当てようと、弓を引いてゐるやうな気がします。これは小生の
手に負へぬ強弓で、弓を引きしぼる腕がともすると耐へきれずに落ちさうになります。しかし引きしぼつて、
待つて待つて、これぞといふ瞬間に放さなければ、矢は思ふ方向へ飛んで行かないことも確実なのです。

三島由紀夫
昭和44年3月3日、林房雄への書簡より


全学連が静かになつて、又日本は眠りかけてゐるやうな気がします。本質的なことはなほざりにされ、又
「仮面の日本」がつづくうちに、素顔を忘れてしまふだらう、と思ふと、いささか焦燥の感なきを得ません。
(中略)
いくら年をとつても心は傷つき易く、矜りも傷つき易く、それだけにロマンティケルなのでせう。しかし日本は
いよいよロマンティシズムから遠のいてゆく感があります。
週刊誌でスエーデンではボクシングが禁止されたといふニュースを読みました。青年が烈しいトレーニングの
要るスポーツを好まず、テニスやバドミントンやボーリングにしか人気がないのださうです。いよゝ先進国の
無気力ここに極まれりといふ気がします。

三島由紀夫
昭和45年3月6日、林房雄への書簡より

251 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/01(日) 16:38:00.11 ID:IuAqgTkx.net
学習院高等科(旧制高校)は文科乙類(ドイツ語)で、卒業の時は文科の首席だつた。(中略)
首席の賞品として、精工舎製銀メッキ懐中時計を宮内省から頂いた。裏に「御賜」と彫つてある。又来賓の
ドイツ大使から乙類の僕に原書の小説を三冊、ナチのハーケン・クロイツが入つてるのをもらつた。この後で
宮中に御礼言上に、当時の院長山梨勝之進海軍大将と共に参内した。霞町の華族会館で謝恩会があり、これで
学習院の卒業行事が終つた。
(談)

三島由紀夫「学習院の卒業式」より

252 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/07(土) 17:17:55.05 ID:/Lsr2MOf.net
オルテガの史観は、所与の事実をそのまま歴史とはみとめない。(中略)
これは結局、キリスト教徒の歴史観のうちにあらはれた世代の観念である。世代を媒体にして、歴史的事実が
形成されるといふ世代論である。
私たちは歴史といふものを、必ずしもさういふ風に考へてゐない。太平洋戦争は、ともかく事件であつた。
その全部がこのやうな唯心論的史観で説明されようとは思はれぬ。あの戦争の核心には、われわれのうけとり方が
どうあらうと不変の、何かカチンとした、とてつもない「物」があつた。その「物」がわれわれの頭に
のしかかつてゐた。その物は不感で、こちらをまで、不感にしてしまつてゐた。
(中略)
今の三十代は、特攻隊のもつとも多く出た世代であるが、特攻隊の歴史感覚と、オルテガ流の「理念のなかに
おける再体験の試み」といふ歴史感覚ほど、相隔たること遠いものはない。
私には、今も、戦争体験はオルテガ流に甦つては来ない。特攻隊は歴史の中に突入し、埋もれた。われわれは
偶然生き残つて、歴史の外に取り残された。私は歴史の外にある自分の存在理由をたづねて、今日に及んだのである。

三島由紀夫「歴史の外に自分をたづねて――三十代の処生」より

253 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/09(月) 17:12:53.43 ID:jBMKa61u.net
「海と夕焼」は、奇蹟の到来を信じながらそれが来なかつたといふ不思議、いや、奇蹟自体よりもさらにふしぎな
不思議といふ主題を、凝縮して示さうと思つたものである。この主題はおそらく私の一生を貫く主題になるものだ。
人はもちろんただちに、「何故神風が吹かなかつたか」といふ大東亜戦争のもつとも怖ろしい詩的絶望を
想起するであらう。なぜ神助がなかつたか、といふことは、神を信ずる者にとつて終局的決定的な問ひかけなのである。
「海と夕焼」は、しかし、私の戦争体験のそのままの寓話化ではない。むしろ、私にとつては、もつとも私の
問題性を明らかにしてくれたのが戦争体験だつたやうに思はれ、「なぜあのとき海が二つに割れなかつたか」
といふ奇蹟待望が自分にとつて不可避なことと、同時にそれが不可能なこととは、実は「詩を書く少年」の
年齢のころから、明らかに自覚されてゐた筈なのだ。

三島由紀夫「『花ざかりの森・憂国』解説」より

254 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/12(木) 10:27:46.78 ID:eAbZfBTO.net
昭和二十五年満二十五歳の写真と、昭和三十一年満三十一歳の写真を比べてみると、この七年の経過は、私を
ずいぶん変へたと思ふ。二十五歳の私は一種の観念的な病気にかかつてゐる。その症状は写真からもありありと
うかがはれる。世間一般の通念でいふと、当時の私は今よりもずつと「純粋」だつたのである。
しかし私は或る種の天才的な詩人のやうに、純粋性そのものの、世界に身の置き処のない孤独をかこつて
ゐたわけではない。純粋な火の玉になつて、人々のあひだをころがりまはつて、火傷を負はせたりして、人に
迷惑をかけてゐたわけではない。(中略)
私は文学だけに生きるのだと思ひ込み、人生における自分の不器用を誇張して考へた。大そう蒼ざめて痩せて
ゐたから、肉体が私の固定観念になつた。私自身における肉体は、いやな、唾棄すべき、目をそむけずには
ゐられぬものであつた。それでゐて、芸術は肉体的劣等感と離れがたいものだと思つてゐた。その結果、人から
耽美主義者と云はれながら、芸術そのものをも私は憎んでゐた。

三島由紀夫「或る寓話」より

255 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/12(木) 10:28:46.65 ID:eAbZfBTO.net
私はどうにかして自分の一生の仕事である芸術を憎みたくないと思つて、私の範疇とちがつた文学を求めて、
ギリシアの健康な天才をあがめるにいたつた。
ソポクレースが、前四四〇年、「アンティゴネー」を以て大勝利を収めたあとで、ペリクレースと共にサモスの
叛乱を鎮定すべき十人の将軍の一人に任ぜられたことを知ると、それだけでソポクレースを尊敬した。また
ワイマールの宰相ゲエテを尊敬した。
そのうちに生来の夢想癖から、自分もそんなことができないでもないやうな気がしてきた。自分は思つたほど、
人から思ひ込まされてゐたほど弱くない。もしかしたら私は強者かもしれないのに、それを知らずにゐたら
一生の損ではないか。だんだんに私は自分のことを、しやにむに強者だと思ひ込むやうにした。進んでイヤな
ことをやり、気の進まぬことをもやつた。
牛のまねをして、蛙がお腹をふくらまして、たうとう破裂してしまふ話があるが、私はもしかしたらその破裂の
途上にあるのかもしれない。

三島由紀夫「或る寓話」より

256 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/12(木) 10:37:59.09 ID:eAbZfBTO.net
何だつて私は銀座へ出てくるのであるか! いくばくの金は費ふし、足はくたびれるし、胃はもたれるし、
ロクなことはないのである。大体私は物の味のわからない人間だが、マメに銀座へ出てくるうちに、好物が出来た。
(中略)食後の酒には、吉田健一氏のお仕込みで、シャルトルーズ・グリーンを舐めるやうになつた。それを
呑む前にはいたづらにマッチで火をつけて、青い焔を廿秒ほど燃やしてから。
私は銀座の洋服を着、銀座のネクタイを締め、銀座の猿股をはいてゐる。本当は銀座に住みたいのだが、これは
よしたはうがいい。友達に荒されて、何もできなくなるだらう。しかし何だつて、私はこんなに銀座に義理を
立てる必要があるのであるか! 私は銀座から一銭だつて貰つたことはないのである。
子供のころは、それでも銀座へ連れて行つてもらふことは、うれしいことであつた。家へよく来る人に銀座ッ児が
ゐて、七丁目あたりの表通りにあつた映画館へ連れて行かれた。その小さな映画館もめづらしかつたし、かへりに
連れられて歩いたクネクネした裏通りの小路も面白かつた。

三島由紀夫「わが銀座」より

257 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/12(木) 10:38:24.73 ID:eAbZfBTO.net
私は数寄屋橋上から、霧の夕方など、今のピカデリー劇場、そのころの邦楽座の壁面に、パラマウントの大きな
山形のイルミネーションがまばゆく光つてゐるのを、うれしく眺めた。そのころマツダ・ビル楼上のニュー・
グランドの部分が、赤、青、緑、黄に変幻して、サーチライトの光芒をひろびろと投げかけてゐた。
私は父母につれられて、そのニュー・グランドや、ローマイヤ・レストランへ行くとき、子供らしい虚栄心を
満足させられた。そのころケストネルの少年小説「点子ちやんとアントン」に夢中になつてゐて、その小説に
出てくる「泡雪クリーム」といふものを、何とかして喰べたいと憧れてゐた。しかし「泡雪クリーム」なるものは、
どこにも売つてゐなかつた。
銀座へ行けは何でも売つてゐると思ふのはまちがひだ、といふことに気がついたのはそれがはじめである。今でも
銀座で決して売つてゐないもので、私がもう一度喰べてみたいと思ふものが一つある。それは戦争中、海軍の工場で、
飯のおかずに喰はされて、こんなに旨いものはないと思つたところの、ポテト・チョップのやうな形をした、
大豆粕をいためた奴である。

三島由紀夫「わが銀座」より

258 :!ajnin:2011/05/16(月) 00:30:18.73 ID:XVNZtJ3p.net
テスト

259 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/24(火) 10:53:51.75 ID:Jk8OZWsD.net
東京へ出ました序でに学習院へ立寄り、はじめて焼跡を見てたゞならぬ感慨がごさいました。萌え立つ緑のなかに
赤煉瓦の礎石のみ鮮やかに残つて、近眼の目には、遠くの緑の光にまばゆく立ち働らいてゐる人々が懐しい
後輩たちかと映り、近寄つてみると、それが見知らぬ兵隊たちであつた寂しさ。(中略)
中等科の校舎の中には、見知らぬ人々が往来し、事務室もザワザワして、昔のやうに温かく私を迎へては
くれぬやうに思はれました。「ふるさとは蠅まで人を刺しにけり」それほどでもありませんが、無暗に腹が立つて、
何ものへともしれず憤りを抱きながら門を出ました。
ふしぎな私の冷酷。昔、共に学んだ友人たちには、具体的に逢つてどうといふ感激もないのに、たゞ会はずにゐると
漠たる悲しみと孤独の感じに苛まれるのを如何ともなす術がございません。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年7月3日、清水文雄への書簡より

260 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/24(火) 10:54:11.94 ID:Jk8OZWsD.net
そしてそれは却つてなまじひに顔見知りでない後輩たちを、電車のなかに見出す場合、懐しさに胸がドキドキして、
用もないのに話しかけたくなり、しかも我ながら馬鹿らしい含羞で、話しかけることもできずにじつと見つめて
ゐるやうな時、私のなかに私の少年時代が俄かに蘇るやうな気がします。こんな初々しい清らかな興奮をどんなに
長い間忘れてゐたことでせう。新宿駅で私は汚ない作業服とキャハンを穿いた後輩を発見しました。彼は私が
彼の先輩であることもしらず、私を不思議さうに見てゐましたが、その目は学習院の学生によくある澄んだ、
のんびりした目付で、口は少しポカンと開いてゐました。私は所用で大塚まで行くので、車内で、目白駅に下りた
その小後輩を見送つたわけですが、彼は、そこで我勝ちに下りた乗客たちとは似てもつかない、実にオットリした、
少したよりない、少し眠さうな歩き方で、階段の方へゆつくり歩いて行きました。何故かそれを見ると、私は
ふと涙がこぼれさうになりました。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年7月3日、清水文雄への書簡より

261 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/24(火) 10:54:33.92 ID:Jk8OZWsD.net
ああした人種、ああした歩き方、あれがいつまでこの世に存続して行けるであらうか。私たちもその一員であつた、
閑雅なあまり頭のよくない、努力を知らない、明るい、呑気な、どこともしれず、生活からにじみ出た気品の
そなはつた学習院の学生たち、あの制服、あの挙止、そしてあの歩き方、そのすべてが象徴してゐたある美しいもの、
それ自身頽落を予感されてゐたもの(私の十数年の学習院生活はその予感のなかにのみ過ごされました。)が、
今や鶯色の汚れた作業服を刑罰のやうに着せられ、靴は埃にまみれ、トボトボと不安気に歩いてゆくのを見て、
私が目頭を熱くしたのも道理でございます。帰途学習院へ寄つてみて、あの焼跡を見、後輩たちをみて、
相似た感慨に搏たれました。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年7月3日、清水文雄への書簡より

262 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/24(火) 10:56:10.92 ID:Jk8OZWsD.net
(中略)かうした終末感を私は、徒らな感傷や、信念の不足からして感ずるのではございません。ある漠たる直感、
夢想そのもののなかに胚胎する覚醒の危険、凡て夢見るが故に覚めねばならない運命を感ずるのでございます。
現実に立脚した精神がわれわれの夢想の精神より更に弱体なものとみえる今日、われわれの夢想も亦凋落の決心を
必要とします。昼を咲きつづける昼顔の仄かな花弁は、昼の烈しい光のために日々に荒され傷つけられます。
何ものも神の夢想に耐へるほど強靭であることは出来ません。
しかし人の夢想の極限に耐へえた人は、その烈しさ極まる目覚めの失墜にも耐へうるであらうと思ひます。
ただ朝をのみ時めいた朝顔とはちがって、あの長い烈しい昼間をよく耐へた昼顔の夢想は、その後に来る長い
夜の烈しさにも耐へるでありませう。私共は今日ほど私共の生の強さと死の強さを感じることはございません。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年7月3日、清水文雄への書簡より

263 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/24(火) 10:56:42.14 ID:Jk8OZWsD.net
私共は遺書を書くといふやうな簡単な心境ではなく、私たちの文学の力が、現在の刻々に、(たとへそれが
喪失の意味にせよ)、ある強烈な意味を与へつづけることを信じて仕事をしてまゐりたいと思ひます。
その意味が刻みつけられた私共の時間は、永遠に去つてかへりませんが、地上に建てた摩天の記念碑よりも、
海底に深く沈めた一枚の碑の方が、何千万年後の人々の目には触れやすいものであることを信じます。
私共が一度持つた時間に与へた文学の意味が、それが過去に組入れられた瞬間から、絶対不可侵の不滅性を
もつものであると思はれます。
項日(けいじつ)、生じつかな名声は邪魔であるが、真の名声はますます必要であることを感じて来ました。
文学作品を本文とするなら、名声はその註釈、脚註に相当します。本文が死語に化した場合、この難解な
ロゼッタ・ストーンを解読しうるものは、たえず更新される註釈のみでございませう。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年7月3日、清水文雄への書簡より

264 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/29(日) 11:37:26.49 ID:CpSYsOL4.net
一体、作家の精神的発展などといふものがあるのかどうか、私は疑つてゐる。若いときむやみと旧秩序に反抗し、
浪漫派で悪魔派で個人主義だつたものが、中年に及んで円熟すると、古典派になり、社会的関心を持ち、微笑を
帯びた現実主義者になり、老境にいたつては、ヒステリックな人道主義者になり、むやみと民衆を尊敬する、
といふやうなのが、一体精神的発展であるか。これはただ平凡人の生涯の、青年の客気と、中年の円熟と、
老年の気の弱りに、思想の衣裳を着せただけのことではないか。又かりに、これが進歩主義思想の逆を辿つて、
社会主義的青年が、中年に及んで俗物の現実主義者になり、老年となるや神秘主義に沈潜すると云つたところで、
要するに、青年の客気と中年の円熟と老年の気の弱りといふ公式どほりのことぢやないか。もし前者だけを
精神的発展と名付けて、後者を精神的退歩と呼ばうと、それは思想や精神に一つの物差をあてはめてみるだけの
ことで、一人の生きた人間の生涯とは何の関係もない。

三島由紀夫「十八歳と三十四歳の肖像画 一」より

265 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/29(日) 11:38:47.90 ID:CpSYsOL4.net
(中略)
そもそも作家にとつて思想とは何ものであるかといふ問題は、そんなに簡単ぢやない。作家の思想は哲学者の思想と
ちがつて、皮膚の下、肉の裡、血液の流れの中に流れなければならない。だが一度肉体の中に埋没すれば、
そこには気質といふ厄介なものがゐるのである。気質は永遠に非発展的なもので、思想の本質がもし発展性に
あるとすれば、気質の擒(とりこ)になつた思想はもはや思想ではない。
しかし問題をあわててそこまで押し進めずに、気質と完全に結合した思想をも、思想とみとめることにする。
さうすると、かういふコケの一念みたいな、決して発展せずただ繰り返しながら硬化してゆく思想のはうが、
いかにも「作家の思想」らしく見えるからふしぎである。
(中略)
かういふ型の作家に、いかに技法上の発展があらうとも、精神的思想的発展のありえないのは自明の理で、その代り、
気質と結合して硬化してしまつたやうな思想は、冒頭に述べたやうな凡庸な人生的法則から作家を護るのである。
そこに老年の硬化と永遠の青年らしさとの奇妙な結合が生ずる。それはいはば青年の木乃伊(ミイラ)なのである。

三島由紀夫「十八歳と三十四歳の肖像画 三」より

266 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/29(日) 11:41:11.44 ID:CpSYsOL4.net
(中略)
まづ十八歳の私。
戦争も敗戦も兆をはつきりあらはしてきて、東京がいつ空襲されるかわからない時期である。学校へは制服に
ゲートルを巻いて行かないと門番が入れてくれない。軍事教練が重要な課目になつてゐる。
(中略)
私は文芸部の委員長になり、(中略)国文学雑誌に寄稿したり、学校の先輩と三人で「赤絵」といふ同人雑誌を
やつたりして、いつぱしの文学青年気取で、父親の眉をしかめさせた。でも大学は父親のいふとほり法科へ
進む気になつてゐた。どつちにしろ同じことだ。もうすぐ死ぬのだから。
学校へ行くと、文学なら私といふことになつてゐて、その点では一目置かれてゐたから、学校はきらひぢやなかつた。
(中略)
あるとき野球部に入つてゐる友だちが、肺浸潤の診断をうけて学校を休みだす直前、かへりの電車の中で、突然
私にかうきいた。
「君は sterben(死)する覚悟はあるかい?」
私は目の前が暗くなるやうな気がし、人生がひとつもはじまつてゐないのに、今死ぬのはたまらない、といふ
感じが痛切にした。
それから半年ほどのちその友だちは死んだ。

三島由紀夫「十八歳と三十四歳の肖像画 三」より

267 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/29(日) 11:42:06.19 ID:CpSYsOL4.net
…………………………。
次は現在の私。
現在の私は旦那様である。妻には適当に威張り、一家の中では常識に則つて行動し、自分の家を建てかけてをり、
少なからず快活で、今も昔も人の悪口をいふのが好きだ。年より若く見られると喜び、流行を追つて軽薄な服装をし、
絶対に俗悪なものにしか興味のない顔をしてゐる。
まじめなことは言はぬやうに心がけ、知的虚栄心をうんと軽蔑し、ほとんど本は読まない。百五十歳まで生きる
やうに心がけて、健康に留意してゐる。
(中略)
私はそれでも時々、自衛隊にでも入つてしまひたいと思ふことがある。病気で死んだり、原爆で死んだりするのは
いやだが、鉄砲で殺されるならいい。
「君は sterben する覚悟はあるかい?」
といふ死んだ友人の言葉が又ひびいて来る。さうまともにきかれると、覚悟はないと答へる他はないが、死の観念は
やはり私の仕事のもつとも甘美な母である。

三島由紀夫「十八歳と三十四歳の肖像画 三」より

268 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/04(土) 20:42:47.36 ID:2wESAsg6.net
あれより二週間病床に臥り、つい御返事がおくれしままにかくの如き事態となりました。
玉音の放送に感涙を催ほし、わが文学史の伝統護持の使命こそ我らに与へられたる使命なることを確信しました。
気高く、美しく、優美に生き且つ書くことこそ神意であります。ただ黙して行ずるのみ。
今後の重且つ大なる時代のため、御奮闘切に祈上げます。

たわやめぶりを みがきにみがかむ

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年8月16日、清水文雄への葉書より

269 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/05(日) 11:20:24.56 ID:4g/go2wS.net
(二十歳の私が書いた)「戦後語録」などと名付けた断想のノートを読むと、九月十六日の項にはこんなことが
書いてある。
「偉大な伝統的国家には二つの道しかない。異常な軟弱か異常な尚武か。それ自身健康無礙なる状態は存しない。
伝統は野蛮と爛熟の二つを教へる」
「デモクラシイの一語に心盲ひて、政治家達ははや民衆への阿諛と迎合とに急がしい。併し真の戦争責任は民衆と
その愚昧とにある。(中略)政治家は民衆の戦争責任を弾劾しない。彼らは、泰西人がアジアを怖るゝ如く、
民衆をおそれてゐる。この畏怖に我々の伝統的感情の凡てがある。」
「日本的非合理の温存のみが、百年後世界文化に貢献するであらう」
――かういふ文章を読むと、調子はいかにも国士調である。終戦のときにぼんやりした抒情詩人だつたものが、
一ヶ月でたちまち国士になるわけもないが、つまり甘い抒情的逃避と国士的居直りとは、私にとつて一つのもの、
一つの銅貨の裏表だつたのだらうと思はれる。これをしも「野蛮と爛熟」と自賛すべきか?

三島由紀夫「八月二十一日のアリバイ」より

270 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/05(日) 11:22:52.41 ID:4g/go2wS.net
(中略)
マッカーサーが厚木へ到着したのは八月三十日であるから、多分八月二十一日ごろは、工場(神奈川県高座工廠)の
解散まで、工場の宿舎に学友たちと寝泊まりしてゐたであらう。終戦物資の配給といつても、われわれのところへは
ろくなものは来ず、パラシュート一枚かつさらつて来る才覚もなく、のんきにだらだらと議論ばかりして暮らして
ゐたと思はれる。
私たちの宿舎は、夏草の原にかこまれた粗末な新築の兵舎で、各むねのまんなかを土間がとほり、その両側に
ゴザを敷いた二階の間仕切りがあり、二階へは直立したはしごで昇るやうになつてゐた。(中略)かういふ
記憶の中に、れつきとした海軍の工場であるにもかかはらず、軍人の姿が一人も出て来ないのはふしぎである。
また、われわれの知的故郷は焼け残つた本郷の大学であつたにもかかはらず、終戦直後の大学の姿が浮かんで
来ないのもふしぎである。
当時すでに私の心には、敗戦と共にをどり上がつて思想の再興に邁進しようとする知的エリートたちへの、
根強い軽蔑と嫌悪が芽ばえてゐた。

三島由紀夫「八月二十一日のアリバイ」より

271 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/07(火) 17:36:48.48 ID:BUQTZi9w.net
昨年10月以降、たばこ3〜4カートンを個人輸入する例が増えています」
と明かすのは、東京税関成田航空貨物出張所だ。
個人輸入であっても、紙巻きたばこには1本当たり約12円が課税される。
例えば、あるサイトで売られていたマイルドセブンは1箱330円。
課税されると570円となり、国内より割高となる。
しかし、税関は全ての郵便物を開封しているわけではなく、別の品目と偽って
輸入し、徴税を免れようとする例が後を絶たない。
「タバコ 輸入代行」とか「タバコ 激安」とかで検索すると出るわ出るわ、、、
 中には送料込みで1箱90円とかの激安サイトもある。


272 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/09(木) 22:38:47.38 ID:fPngA8PM.net
大神々社への参籠は八月下旬と決め、その後、広島へ一寸伺ひ、そのあと、汽車で、(飛行機はイヤなので)、
熊本八代へゆき、神風連のことをしらべたい、などと、夏のをはりの旅をいろいろと計画してをります。いづれ、
間近になつて旅程がはつきりいたしましたら、御連絡申上げます。
「英霊の声」は文壇では冷たいあしらひで、かれらの右顧左眄(うこさべん)ぶりがよく見えます。
天皇の神聖は、伊藤博文の憲法にはじまるといふ亀井勝一郎説を、山本健吉氏まで信じてゐるのは情けないことです。
それで一そう神風連に興味を持ちました。神風連には、一番本質的な何かがある、と予感してゐます。

三島由紀夫
昭和41年6月10日、清水文雄への書簡より

273 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/09(木) 22:42:21.66 ID:fPngA8PM.net
「豊饒の海」は終りつつありますが、「これが終つたら……」といふ言葉を、家族にも出版社にも、禁句にさせてゐます。
小生にとつては、これが終ることが世界の終りに他ならないからです。カンボジアのバイヨン大寺院のことを、
かつて「癩王のテラス」といふ芝居に書きましたが、この小説こそ私にとつてのバイヨンでした。書いたあとで、
一知半解の連中から、とやかく批評されることに小生は耐へられません。又、他の連中の好加減な小説と、
一ト並べされることにも耐へられません。いはば増上慢の限りでありませうが……。
それはさうと、昨今の政治情勢は、小生がもし二十五歳であつて、政治的関心があつたら、気が狂ふだらう、
と思はれます。偽善、欺瞞の甚だしきもの。そしてこの見かけの平和の裡に、癌症状は着々進行し、失ったら
二度と取り返しのつかぬ「日本」は、無視され軽んぜられ、蹂躙され、一日一日影が薄くなつてゆきます。

三島由紀夫
昭和45年11月17日、清水文雄への書簡より

274 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/09(木) 22:42:52.92 ID:fPngA8PM.net
戦後の「日本」が、小生には、可哀想な若い未亡人のやうに思はれてゐました。良人といふ権威に去られ、よるべなく
身をひそめて生きてゐる未亡人のやうに。下品な比喩ですが、彼女はまだ若かつたから、日本の男が誰か一人立上れば、
彼女をもう一度女にしてやることができたのでした。しかし、口さきばかり巧い、彼女の財産を狙ふ男ばかり
周囲にあらはれ、つひに誰一人、彼女を再び女にしてやる男が現はれることなく、彼女は年を取つてゆきます。
彼女が老いてゆく、衰へてゆく、皺だらけになつてゆく、私にはとてもそれが見てゐられません。
このごろ外人に会ふたびに、すぐ「日本はどうなつて行くのだ?日本はなくなつてしまふではないか」と心配さうに
訊かれます。日本人から同じことを訊かれたことはたえてありません。「これでいいぢゃないか、結構ぢゃないか、
角を立てずに、まあまあ」さういふのが利口な大人のやることで、日本中が利口な大人になつてしまひました。

三島由紀夫
昭和45年11月17日、清水文雄への書簡より

275 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/09(木) 22:43:20.31 ID:fPngA8PM.net
スウェーデンはロシアに敗れて百五十年、つひに国民精神を回復することなく、いやらしい、富んだ、
文化的創造力の皆無な、偽善の国になりました。
この間もベトナム残虐行為査問会(ストックホルム)で、繃帯をした汚ないベトナム農民が証言台に立ち、
犬をつれた、いい洋服の中年のスウェーデン人たちがこれを傾聴してゐるのに、違和感を感じる、と書いてゐる人が
ゐましたが、日本が歩みつつある道は、正に、「犬を連れた、いい洋服の中年男で、外国の反戦運動に手を貸す
『良心的』な男」の道です。
どの社会分野にも、責任観念の旺盛な日本人はなくなり、デレッとし、ダラッとしてゐます。

三島由紀夫
昭和45年11月17日、清水文雄への書簡より

276 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/09(木) 22:50:13.87 ID:L0LM7bzb.net
よっぽどこいつ三島に心酔してんのか

277 : 忍法帖【Lv=3,xxxP】 :2011/06/10(金) 17:45:59.55 ID:Bf37oOZ2.net
test

278 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/22(水) 12:08:58.24 ID:hKseQlOq.net
老人と若者のちがひは簡単なことで、老人はこの世の中が変はることを知つてゐるから、しひて変へようとも
しないし、若者はこの世の中が変はらないと思ひつめてゐるから、性急に変へようと努力する。そして結局、
世の中は多少とも変はるのだが、それはじつのところ、老人が考へるやうに「自然に」変はつたのでもなければ、
若者の考へるやうに革新の力によつて変はつたのでもない。両者の力がほどほどに働いて、希望は裏切られ、
目的はそらされ、老人にとつても若者にとつても、百パーセント満足といふ結果には決してならずに、変はるのである。
こんなことをいひだすと、ひどく悟りすましたやうであるが、さういふ見方が何とかできるやうになるときに、
人は四十歳に達するのだ。そして自分は五〇パーセントだけ「自然」に属し、五〇パーセントだけ「人間の意志」に
属することを、おぼろげながら理解するやうになる。
私は四十歳に達して、とにかく、変はる見込みのないと思ふ世の中が変はるのを何度か見てきた。

三島由紀夫「文学的予言――昭和四十年代」より

279 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/22(水) 12:10:04.12 ID:hKseQlOq.net
私の年齢は昭和と同年であるから、昭和といふ時代が、妙に周期的に、十年ごとに身じろぎをして、居ずまひを
変へるのを何度か見てきた。最初の意識的な強烈な体験は、いふまでもなく昭和二十年の敗戦である。つぎに
昭和三十年の、大衆社会化への明白な兆候は、そのときはよくわからなかつたが、いまになつて考へてみれば
歴然たるものがあり、それが昭和三十九年秋のオリンピックで、絶頂に達し、同時にその使命は終はつたといふのが、
いまの私の(多少希望的観測をまじへた)判断である。もちろん大衆社会化現象はますます進行するだらうが、
知識人がそのなかに巻き込まれて、西も東もわからずうろうろする時代は、もう確実に終はつた、と私は感じる。
それにつけても思ひ出されるのは、昭和三十二年にニューヨークに滞在してゐたとき、知識階級の孤立の状況を
まざまざと感じて、まだ大衆とともに、同床異夢にふけつてゐた感のある日本の知識階級の一人として、衝撃を
受けた記憶がある。

三島由紀夫「文学的予言――昭和四十年代」より

280 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/22(水) 12:11:34.76 ID:hKseQlOq.net
あのころの日本の大衆には、まだかすかに、古い観念的な教育体系(それは主としてヨーロッパ的なもので
あるが)への、よくいへば夢やあこがれ、わるくいへばスノビズムがのこつてゐた。知識人はさういふものに
乗つかつて、仕事をしてゐればいい、といふ暗黙の了解があり、そこにまた、日本の知識階級の、誠実さもあれば
不誠実さもあつた。それがその後の八年間に完全に根絶やしになり、わけても安保闘争といふ象徴的な事件によつて、
知識人と大衆とがまつたく遊離してしまつた、といふのが、私の見方である。
(中略)アメリカで起つた現象は、必ず、三、四年後に日本にも波及するといふのは、戦後史の定石だが、知識人の
孤立までが、これほど忠実に波及するとは、私も正直考へてはゐなかつた。もつともアメリカには、その孤立を
ささへる富める芸術愛好家のスノビズムが残つてゐるけれども、日本にはそれもない。
(中略)もはや知識人の大衆への媚びは、お笑ひ草となるだけであらう。それでも媚びたいと思ふ人は、本格的な
娼婦になるほかはないであらう。もはやセミ・プロは通用しないであらう。

三島由紀夫「文学的予言――昭和四十年代」より

281 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/22(水) 12:13:18.18 ID:hKseQlOq.net
本多秋五氏の文学の「有効性の上にあるもの」をもぢつていへば「無効性の上にあるもの」を信じなければ
ならぬ時代がくるであらう。サルトルが、文学が一塊のパンに値するかどうかといふ、昔ながらの議論を
むしかへしてゐるのを思ひ出しつつ、私はたまたま「自然居士」といふ能を見てゐて、哀れな子供を人買ひから
救ひ出すために、居士が遊芸の限りをつくし、つひに人買ひを感動させて、目的を達するといふ物語に、日本で
古くから信じられてきたこの種の思想を新鮮に感じた。芸術それ自体がかうして人命を救ふといふ物語は、
厳密にいつて、ヒューマニズムとも目的意識とも縁のない、いはば遊芸が、人を感動させるといふそれ自体の原則に
忠実にしたがふことから、ゆくりなくも生まれた結果についての物語である。観客は、物語に感動する前に、
まづ人買ひとともに、居士の遊芸に感動しなければならない。そして、そこに少しでも媚びが見えたら、観客と
ともに、人買ひも感動することはないだらう。媚びとは目的意識のことである。

三島由紀夫「文学的予言――昭和四十年代」より

282 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/24(金) 09:47:55.48 ID:fh0EpG7u.net
平田篤胤の筆記考按による「嘉津間答問」は、「仙童寅吉物語」の名で知られてをり、天狗界に行つてゐたといふ
神童の聞書であるが、その中にこんな一節がある。
(中略)
この本は私の年来愛読してゐる本で、面白い個所は何度もくりかへし読んだが、特に右の一節(寅吉がわが身の
宿命について言ふ)は山人天狗をそのまま「芸術家」と置き換へて読むほどに興趣を増すのである。
わけても「山人天狗などは自由自在があるといふばかり」といふ一行は美しい。ここに語られた天狗道の無償性は、
なぜ天狗が存在するか、なぜ存在しなければならぬか、といふ根本義に触れてゐる。天狗は人間とちがつて空を
自由に飛行(ひぎやう)することができる。こちらの峰からあちらの峰へ、月下に千里を飛ぶこともできる。
しかもこの超自然的能力は、それ自体が幸福でなければならず、彼には何か、世間普通の幸福を味はふ能力が
欠けてゐるのである。

三島由紀夫「天狗道」より

283 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/24(金) 09:48:24.53 ID:fh0EpG7u.net
これを裏から言へば、「自由自在」は羨むべき能力かも知れないが、本来市民的幸福には属さない。それは生活を
快適にする能力ではなく、日常生活にとつては邪魔になるもので、むしろそれがあるために日常生活は円滑を
欠くであらう。
自由自在は詩的概念であつて、市民的自由とは別物である。精神がそのやうな無償の自由を味はふといふことは、
辛うじて芸術にだけ許されてゐることで、一般社会では禁止されてゐる。
しかもこの魔的に自由な精神も、たえず「人間の幸福」を羨んでゐるのである。
天狗がこんなに自在であるにかかはらず、人間の生活に本当に感情移入ができず、「その道に入りて見」ることが
できないのは、ふしぎと言はねばならない。
相手方への完全な感情移入の不可能といふ点では、天狗も人間も同等同質なのであり、そこに相互の羨望が生れる。
私にとつては、天狗におけるこの「人間的」限界が甚だ興味がある。天狗はこの点では、「饗宴」篇中で
ディオティマの語るエロスに似てゐるのかもしれない。

三島由紀夫「天狗道」より

284 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/24(金) 09:48:53.91 ID:fh0EpG7u.net
天狗の自在な飛行は、もちろん天狗道の使命に従つて行はれるが、人間の目からはこの使命は見えず、従つて
飛行自体が戯れと見える。
寅吉はなほ人間時代の記憶を留めてゐるから、その戯れを人間的倫理で以て考察しようとするが、「善事か悪事か」
さつぱり分からないのである。
人間は楽でいい、と言つて羨んでみせるときの天狗には、もちろん多大のエリート意識があるが、そのエリート意識を
支へるものは、自在の飛行それ自体でなくて、日々種々の苦しい行である。これがなくては、天狗はたちまち
墜落して天狗でなくなる。
かくて天狗は、どうしても存在するために、日夜存在の努力を払ふ必要があり、このやうな存在学的努力は、
人間には本来不要なものである。
天狗にとつて人間は明らかに存在してゐるからであり、天狗のはうが分が悪いのは、或る人間たちにとつては
天狗は存在してゐる必要がないからである。

三島由紀夫「天狗道」より

285 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/24(金) 09:49:14.76 ID:fh0EpG7u.net
ここにいたつて、天狗の存在の問題は、そのまま天狗の倫理になる。天狗にとつて、天狗はどうしても存在し
なければならない。それでなければ、天狗はマイノングのいはゆる存在外(アウセルザイン)にとどまるであらう。
そして天狗を存在せしめるものこそ、「日々種々」の苦しい行であり、その発現としての自在な飛行の戯れである。
後段の天狗たることの宿命について語られた一節では、その「我師」といふ一句に、川端康成氏の名を当て
はめたい誘惑にかられるが、それでは私も天狗の端くれを自ら名乗ることになつて、不遜のそしりを免れまい。
むしろ、目を泰西文学に放つて、たとへば「トニオ・クレエゲル」の美しく踊るハンスとインゲボルクの姿を、
暗いヴェランダから硝子ごしにじつと見つめてゐる奇怪なトニオの鼻――それは又作者トオマス・マンの鼻――が、
しらぬ間に長々と伸びて来て、他ならぬ天狗の鼻に変貌してゐたりするところを、想像してゐたはうが無事かも
しれない。

三島由紀夫「天狗道」より

286 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/30(木) 12:37:34.92 ID:jg+VsZjT.net
(『詩を書くのが趣味の交際相手の男性が女々しく思えて許せない』という相談者に)
 美輪明宏『文学者でも例えば三島由紀夫や中原中也なんかは男らしかった思うけれど…。
貴女ももっと本をお読みになったらどうかしら?』
 相談者『(憤然として)読んでますよ』
 美輪明宏『どんなのを読んでらっしゃるの?』
 相談者『秋元康とか』
 美輪明宏『(一瞬判らず)あきも……?(ピンと来て)オホホホホホwwwww』
 相談者『?』


287 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/08(金) 12:23:28.74 ID:/2+UVQhx.net
正月……。三階から眺めると、今朝は空も澄み、富士の白い頂きもありありと秀で、海のかなたには、いつも
見えない島影すら見える。そして眼下に密集する家々には、日の丸の旗は甚だ少ない。
一体自分はいかなる日、いかなる時代のために生れたのか、と私は考へる。私の運命は、私が生きのび、やがて老い、
波瀾のない日々のうちにたゆみなく仕事をつづけることを命じた。自分の胸の裡には、なほ癒やされぬ浪漫的な魂、
白く羽搏くものが時折感じられる。それと同時に、たえず苦いアイロニーが私の心を噛んでゐる。
二十数年前に学校の先輩が云つた「文学をやる」といふ言葉は、今、私にとつて、ますます胸の中を風の
吹き抜けるやうな言葉として感じられる。過去の作品は、いはばみんな排泄物だし、自分の過去の仕事について
嬉々として語る作家は、自分の排泄物をいぢつて喜ぶ狂人に似てゐる。

三島由紀夫「『われら』からの遁走――私の文学」より

288 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/13(水) 13:05:57.28 ID:4JNxQ7vJ.net
東大法学部出の小説家といふと、私の知る限りでは、大仏次郎氏と林房雄氏と私の三人だけで、この三人に
はつきりした共通の特色でも見つかれば、人間の一生の仕事、それも個性的な仕事における大学教育の影響力が
つかめるわけであるが、あいにくそんなものは見当たらない。強ひていへば、大仏氏がフランス革命に、林氏が
明治維新に、私が二・二六事件に、特別の興味を寄せて来た点はあるが、これも偶然の一致といへぬわけではない。
ジッドが「プレテキスト」の中で、「芸術家にもつとも必要な天賦は官能性である」と述べて、暗に自分にそれが
欠けてゐることを認めてゐる口ぶりであるが、官能性は、日本式にいへば、色気といひかへてもよからう。
なるほど色気の欠けてゐることは法学士の通弊かもしれない。表現上の色気のみならず、実生活でも、大仏氏が
ドン・ファンだといふ噂はきいたこともなく、林氏も思想の道楽こそさんざんやつたが、恋に命を賭けたといふ
ほどの話をきいたことがない。

三島由紀夫「法学士と小説」より

289 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/13(水) 13:06:47.31 ID:4JNxQ7vJ.net
恥かしながら私も、この両先輩の驥尾(きび)に附して、色気のないことおびただしく、この間も大宅壮一氏から、
「もつと道楽をしなければ、えらい小説家にはなれませんよ」
と忠告を受けたばかりである。
(中略)
小説とはつくづく厄介な仕事で、情感と理智がうまく融け合つてゐなければならない。それも情感五〇パーセント、
理智五〇パーセントといふのでは、釣合のよくとれた良識のある紳士にはなれても、小説家にはなれない。
理想的には情感百パーセント、理智百パーセントほどの、普通人の二倍のヴォルテージを持つた人間であるべきで、
バルザックも、スタンダールも、ドストエフスキーも、さういふ小説家であつた。
日本人の間からは、体力のせゐもあつて、かういふ超人的怪物が出にくいのではないか、と思はれるふしがある。
一般人を百とすれば、せいぜい百二十ぐらゐが超人の限度であつて、その百二十のなかの配分によつて、それぞれの
才能が決るわけだが、法学士の小説家は、なまじ法律を勉強したばかりに、そのうち七〇パーセントぐらゐを
理智に奪はれてしまふのではないかと思はれる。

三島由紀夫「法学士と小説」より

290 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/26(火) 09:42:40.99 ID:blS8mqg8.net
私の生活は人から見るとフシギらしいのである。何がフシギなのか、私にはわからない。人間には精神があるが、
精神の特徴は人に見えないといふことである。文学の作品といふのは、その見えないものを、目に見える、
形のあるものに移したものである。ひとたび形が問題になれば、その形は美しくなければならない。
ここに形の世界がはじめる。いやしくも作品で形が問題になつてゐるのに、作者が生活において形を問題にしない、
といふ心理は私にはわからない。なりふりかまはず美しい作品を作るといふ名人気質には、何か病的なものが
感じられる。
形といつても、手を加へることができるのは、衣・食・住の他には、武道、スポーツその他による肉体訓練に
限られてゐる。(中略)人間は、自分の内面を包むのに、礼儀正しくなければならない。文学者の内面は
サンタンたる泥沼であつて、そんな醜いものを人目にさらすべきではない。外形さへ健康な力に充ちてゐれば、
それがすなはち「礼儀正しい私」の姿である。だから、たとへ裸であつても、私は礼儀正しいのである。

三島由紀夫「無題(『フシギな男三島由紀夫』)」より

291 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/29(金) 21:25:44.69 ID:3do0q8T1.net
     ____
   /__.))ノヽ
   .|ミ.l _  ._ i.)
  (^'ミ/´−〈−リ  
  .しi   r、_) |   
    |  (ニニ'. /    
   ノ `ー―i



292 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/07(日) 00:06:57.55 ID:bK8CFBx0.net
ものを書くことと農耕とは、いかによく似てゐることであらう。嵐にも霜にも、精神は一刻の油断もゆるさず、
たえず畑を見張り、詩と夢想の果てしない耕作のあげくに、どんな豊饒がもたらされるか、自ら占ふことができない。
書かれた書物は自分の身を離れ、もはや自分の心の糧となることはなく、未来への鞭にしかならぬ。どれだけ
烈しい夜、どれだけ絶望的な時間がこれらの書物に費やされたか、もしその記憶が累積されてゐたら、気が狂ふに
ちがひない。……しかし、今日も亦、次の一行、次の一行と書き進めてゆくほかに、生きる道はないのだ。

三島由紀夫「無題(『三島由紀夫展』案内文 書物の河)」より


にせものの血が流れる絢爛たる舞台は、もしかすると、人生の経験よりも強い深い経験で、人々を動かし富ます
かもしれない。音楽や建築に似た戯曲といふものの抽象的論理的構造の美しさは、やはり私の心の奥底にある
「芸術の理想」の雛型であることをやめないのだ。

三島由紀夫「無題(『三島由紀夫展』案内文 舞台の河)」より

293 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/07(日) 00:08:04.67 ID:bK8CFBx0.net
私の肉体はいはば私のマイ・カーだつた。この河は、マイ・カーのさまざまなドライヴへ私を誘ひ、今まで
見なかつた景色が私の体験を富ませた。しかし肉体には、機械と同じやうに、衰亡といふ宿命がある。私は
この宿命を容認しない。それは自然を容認しないのと同じことで、私の肉体はもつとも危険な道を歩かされて
ゐるのである。

三島由紀夫「無題(『三島由紀夫展』案内文 肉体の河)」より


この河と書物の河とは正面衝突する。いくら「文武両道」などと云つてみても、本当の文武両道が成立つのは、
死の瞬間にしかないだらう。しかし、この行動の河には、書物の河の知らぬ涙があり血があり汗がある。言葉を
介しない魂の触れ合ひがある。それだけにもつとも危険な河はこの河であり、人々が寄つて来ないのも尤もだ。
この河は農耕のための灌漑のやさしさも持たない。富も平和ももたらさない。安息も与へない。……ただ、
男である以上は、どうしてもこの河の誘惑に勝つことはできないのである。

三島由紀夫「無題(『三島由紀夫展』案内文 行動の河)」より

294 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/10(水) 17:41:41.94 ID:4tXJUVFp.net
研究課題申請・小澤正人

成果報告時の所属履歴すべて表示する
小澤正人

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2008年?年小澤正人

: 京都大学 /小澤正人 文芸学部 / 教授
2007年?年 :小澤正人小澤正人
小澤正人

小澤正人

北山成城大学 / 小澤正人教授
2006年?年 : 成城大学 / 社会イノベーション学部 / 教授
2006年 : 成城大学 / 助教授
2005年?年 : 成城大学 / 社会イノベーション学部 / 助教授


295 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/11(木) 20:57:14.88 ID:8GfJWS4B.net
 他人の不幸で今日も飯がうまい!!
    +        ____    +
      +   /⌒  ⌒\ +
   キタ━━━//・\ ./・\\━━━━!!!!
    +   /::::::⌒(__人__)⌒:::::\  +
        |  ┬   トェェェイ     |
     +  \│   `ー'´     /    +
     _|\∧∧∧MMMM∧∧∧/|_
     >                  <
   /  ─ /  /_ ──┐ヽ|  |ヽ  ム ヒ | |
 \/  ─ / / ̄ /   /  | ̄| ̄ 月 ヒ | |
  ノ\ __ノ   _ノ   \   / | ノ \ ノ L_い o o

296 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/24(水) 10:08:44.44 ID:BzKcI2MB.net
少年時代には、ホテルといふものは、日本の西欧化の一つのあこがれのシンボルであつた。東京にはホテルらしい
ホテルは帝国ホテルしかなかつたし、戦時中の日本主義全盛時代にも、ホテルの中だけは、欧化主義の治外法権が
ゆるされてゐた。堀辰雄の小説には、神戸などの洒落た小ホテルが、いかにもヨーロッパの一港市の憂愁にみちた
小ホテルのやうに描かれてゐたし、私も大人になつたら、そんなところへ一人旅をしてちよつと微熱を出して、
部屋に引きこもつて、洋書でも読んでゐたらよからうと思はれた。(中略)
ところが成人して作家になつた私にとつていつしかホテルは牢獄になつた。急ぎの、集中を要する仕事は、いつも
ホテルに自己監禁をして、仕上げるのが習慣になつたからである。ホテルに対するロマンチックなイメージは
完全に消失した。同じ形の窓を並べたあの巨大なコンクリートの巣を見上げると私はすぐさま、その一室で机に
向つてゐる自分の姿を思ひうかべ、異様な圧迫感にふたがれるのである。(中略)

三島由紀夫「ホテル」より

297 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/24(水) 10:09:21.78 ID:BzKcI2MB.net
なぜホテルで仕事がはかどるかといふと、その完璧な非人情、その無機質のサーヴィスが、仕事に対して、何ら
人間関係の邪魔物を持ち込まないからである。室内にする音は、冷暖房装置の衣ずれのやうな風音と、こちらの
原稿用紙の紙の音ばかり、集中を妨げるものは何一つなく、衣食住は機械的に保障されてゐるから、腹が減つたら
電話一本かければよく、フロに入りたかつたら、人手を借りずに入れる。何だか、寂しい、清潔な、福祉国家の
一員になつたやうな気がするし、フランスのランチエ(年金生活者)の生活感情に似たものを味はへる。何ら
不安も希望もないこんな状態が仕事に必要なのだ。つまり、生きながら死んでゐるといふ、ぜいたくな仮死状態を、
ホテルが保障してくれるのである。
仕事が行き詰まると、ドレス・アップして食堂へゆく。わざとメニューにない料理を注文したり、クレソンだけの
サラダを作らせたりして、ウェイターを困らせて、ヨーロッパの気むづかしい独り者の金持の老人のやうな
晩餐をする。ああはなりたくないと思つてゐるやうな人物に変身するたのしみ。(中略)

三島由紀夫「ホテル」より

298 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/24(水) 10:09:52.17 ID:BzKcI2MB.net
窓を見る。高速道路の上を車が流れ、ネオン・サインが地の果てまで、瑠璃光を放つて散らばつてゐる。動いてゐる。
動いてゐるけれども、この大都市の歓楽には、人間の欲望の組織化にはあたかもホテルの密室と同じやうな、
無機質の「完璧なサーヴィス」のにほひがある。人間にはこれこれのものだけを与へておけば、それで必要にして
十分であり、それ以上のものを与へる要はないといふ管理者の不人情がある。おびただしい赤・黄・紫・緑・青の
ネオンには、たしかに過剰と競争があるけれども、その熱気は、冷たい一枚のガラスの窓からながめると、
冷蔵庫の中でしんしんと四角い小さな氷を作つてゐる機構のやうに、「冷えきつた熱気」といふふうに感じられる。
そしてこれだけの大都会が、あたかも仕事中のホテルの密室のやうに、ただ人間を仮死状態に置くために活動して
ゐるやうに見えるのである。私はこんな世界におさらばをするのには、大した抵抗を覚えないやうな気がする……。

三島由紀夫「ホテル」より

299 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/24(水) 10:10:23.09 ID:BzKcI2MB.net
――もとよりかうした感想は、仕事に疲れた一文士の誇張にすぎない。ホテルといふ抽象的環境が、世界を
むやみに抽象的に見せてゐる心理作用にすぎない。いはばこれは幻覚なのだ。
しかし、かうした「はかなさ」の幻覚だけが、私を仕事へ向かはせるのもたしかなことだ。もし人生を十分に
愛してゐたら、文学をやらうなどといふバカな気を起すわけがない。「はかなさ」から仕事が生れ、別乾坤を
作り出さうといふ意欲が生れる。ともすると、仕事をするためには、人工的に「はかなさ」を作りだす装置が
必要なのかもしれず、ホテルはその最適の装置である。

三島由紀夫「ホテル」より

300 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/10(土) 16:34:45.58 ID:sNXrbOHX.net
むかしはどこの家の中も暗かつた。このごろの団地の子供は、ハバカリへ行くといふことの恐怖も快楽も知らない。
あの怖ろしい暗い穴の中から、立ちのぼつて来て目にしみるアンモニアの匂ひ、それから煙出し片脳油の
胸せまるやうな悲劇的な匂ひ。それに、どうしてむかしの家では、ハバカリの電気をあんなに倹約したものだらう。
大と小との境目に、五燭ぐらいの電燈がぼんやりついてゐて、それに金蠅の羽音がまつはりついてゐる。それなら
まだいいはうで、全然灯火のないハバカリさへあつたのだ。
(中略)このごろでは全然見かけなくなつたあの片脳油といふもの。あれにはたしか、ノコギリ形の屋根と
黒煙を吐く煙突から成る古くさい工場の絵を描いたレッテルが貼つてあつた。それは大てい油じみて、半分
やぶれかけたレッテルだつた。ほかの防臭剤には、蠅が薬の霧を吹つかけられて、ジタバタして、瀕死の表情を
うかべてゐる絵が描いてあつたものだが、そのすぐそばで、本物の蠅は、逞しく生を謳歌してゐたのだつた。

三島由紀夫「ポップコーンの心霊術――横尾忠則論」より

301 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/10(土) 16:36:20.03 ID:sNXrbOHX.net
(中略)ビール罎の廃物利用の焦茶いろの罎に、ものすごい刺戟性の薬液がたつぷり入つてゐて、そして何よりも
そのレッテルだつた。子供はしやがんでゐるあひだ、ずつとそのレッテルと睨めつこをしてゐるわけだから、
いやでも覚えてしまふ。
ノコギリ屋根と暗い煙突、それは正に暗い前近代的な工場の風景で、その屋根の下ではきつと家族的な暗い
労働条件があつたのだ。(中略)曇つた朝空へのぼる煙突の煙には、それなりに悲壮なものがあつた筈だ。
日本資本主義の最底辺の、ハバカリにつながる工場の悲哀のなかにも、何かしら、すばらしい矜持があつた筈だ。
日本そのものの匂ひ、都市における唯一の農村の残存物であるところの、あの人糞人尿の匂ひに対抗し、
打ち克つために、正に近代的化学技術の粋を尽してつくられた、圧倒的、殲滅的、かつ、感傷的、近代的スプリーン
そのもののやうな匂ひの発明者としての。

三島由紀夫「ポップコーンの心霊術――横尾忠則論」より

302 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/11(日) 20:39:19.89 ID:WJp3kHId.net




303 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/12(月) 21:07:26.25 ID:ukgVYge/.net
それから、これは多分、私の記憶ちがひであらうが、片脳油のレッテルには、子供にとつて最大の宇宙的無限の
謎を誘起する、当時はやりのデザインがあつたかもしれない。それは、人が何か手にもつてゐる図柄の中に、
又、人がそれを持つてゐる図柄があり、その中に又、人がそれを持つてゐる図柄がある、といふ無限小数的な
デザインである。さういふ、悲しくなるほど永遠に遠ざかり深まつてゆくものを暗示したデザインこそ、あの糞臭と
片脳油の匂ひのなかで鑑賞すべきものであつたのだ。
遠い汽笛、……どこの家でもきこえて、子供の夜を、悲しみでいつぱいにしてしまつたあの汽笛、しかし同時に
夜に無限のひろがりと駅の灯火の羅列とさびしい孤独な旅を暗示したあの汽笛は、どこへ行つてしまつたのか。

三島由紀夫「ポップコーンの心霊術――横尾忠則論」より

304 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/12(月) 21:08:37.00 ID:ukgVYge/.net
幼時の思ひ出は、どれをとつても、文字どほりウサン臭いのである。
暗さばかりかと思ふと、思ひがけない痴呆的な明るさが現前する。それはたとへば、聯隊の軍旗祭の記念の風呂敷だ。
いやに赤つぽい桜、富士、旭日の光芒、紫、黄、赤などのものすごい配色。あそこには、栄光といふものと生活の
さびしさとがせめぎ合つた、ヒステリカルなけばけばしさがあつたのだ。私は証言する。むかしの日本人は、
さびしかつた。今よりもずつと多い涙の中で生きてゐた。嬉しいにつけ、悲しいにつけ、すぐ涙だつた。そして
軍隊の記念の風呂敷の、あのノスタルジックな極彩色は、その紫がただちに打身の紫、その赤がただちにヒビ、
アカギレの血の色を隠してゐた。人間といふものはもともと極彩色なのだ。
大日本帝国の一人一人の生活は、湿つた暗い蒲団に包まれてゐた。なぜ蒲団はあのやうに暗く、天井はあのやうに高く、
ハバカリはあのやうに臭く、そしてあらゆるものに、バカバカしく金ピカのレッテルが貼つてあつたのだらう。

三島由紀夫「ポップコーンの心霊術――横尾忠則論」より

305 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/14(水) 13:57:04.13 ID:AxenzOtS.net
(中略)
お祭は、花やかで、きらびやかで、しかも陰惨そのものだつた。人々はまだ、不具に対する劃一的なヒューマニズムの
擒になつてはゐなかつた。あの安つぽさ、買つてくると一日でこはれる玩具、あきらかに有毒な着色剤を使つた菓子、
飲物、……そこではすべてが「禁止」されてゐた。少くとも「良家」の子供にとつては。従つてその禁止によつて
圧倒的な魅力を放つてゐた。
見世物の見るもおどろな泥絵具の大看板の、陰惨醜悪怪奇をきはめた半人半獣の図は、ここでもまた、紫の
ビロードと、金糸の縫取と、金銀の縁取りの房に囲まれてゐた。さういふものは、少年雑誌「譚海」の血みどろの
「切つたはつた」にもつながりがあつたのだ。衛生的な大人たちは、子供が「譚海」を読むことを賢明にも禁止し、
明るい、清潔な、そして親には孝行、軍国主義には賛成といふ、「少年倶楽部」を推賞したのだつた。

三島由紀夫「ポップコーンの心霊術――横尾忠則論」より

306 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/14(水) 13:58:33.86 ID:AxenzOtS.net
私の子供時代はそんなものであつた。そしてさういふ、さびしい極彩色の日本人の生活を私はなつかしむ。
家のどこかでは必ず女がこつそりと泣いてゐた。祖母も、母も、叔母も、姉も、女中も。そして子供に涙を
見られると、あわてて微笑に涙を隠すのだつた。私は女たちがいつも泣いてゐた時代をすばらしいと思ふのである!
しかし泣いてゐた女たちの怨念は、今のやうな、いたるところで女がゲラゲラ高笑ひをし、歯をむき出してゐる時代を
現出した。むかしの女の幽霊は、さびしげに柳のかげからあらはれ、めんめんと愚痴をこぼしたが、今の女の幽霊は、
横尾忠則の絵にあるやうな裸一貫の赤鬼になつて跋扈してゐる。うわア怖い!

……私は一体何を語らうとしてゐたのだらう。私は横尾忠則について語らうとしてゐた筈だ。しかし、私は別事を
語りながら、すでに彼についてすべてを語つてしまつたやうな気がしてゐる。少くともその根元的なものすべてを。

三島由紀夫「ポップコーンの心霊術――横尾忠則論」より

307 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/21(水) 11:33:04.38 ID:BR+hxMEV.net
ふしぎでならないことは、彼が彼の年齢にもかかはらず、戦前の「暗い日本」と、同時にそのノスタルジックな
けばけばしい意匠とを、潜在意識の底にしつかり貯へ持つてゐるやうに見えることである。(中略)たとへば
彼が作つたアニメーションの映画で、旭日の沈む海に、涙を流しつつ男の横顔が沈んでゆき、その上に強大な
女の横顔がおほひかぶさるコマ絵の連続を見ても、私には、それが、大東亜戦争の敗北と大日本帝国の崩壊を、
肉体的に味はつた世代の人間でなければ描けない図柄のやうに思はれたものだ。
もちろんそれは一面的な解釈である。彼の世俗的な成功は、日本的土俗の悲しみとアメリカン・ポップ・アートの
痴呆的白昼的ニヒリズムとを、一直線につなげたところにあつた。(中略)はつきり云つて、それは、日本的恥部と
アメリカ的恥部との、厚顔無恥な結合、あるひは癒着であつたといへる。(中略)
恥部とは何だらうか。それはそもそも、人に見せたくないものだらうか。それとも人に見せたいものだらうか。
これは甚だ微妙な、また、政治的な問題である。

三島由紀夫「ポップコーンの心霊術――横尾忠則論」より

308 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/21(水) 11:34:00.19 ID:BR+hxMEV.net
横尾氏のやつたことは、+に+を掛けて−にすることではなく、−に−を掛けて+にすることだつたが、これは
いはば国際親善とは反対で、又、ツーリズム、世界的流行、工業化社会、都市化現象、大衆化社会などとも反対の、
人の一番心の奥底から奥底への陰湿な通路を通つた、交霊術的交流なのだつた。彼は、日本の土俗の霊を以て、
アメリカに代表される巨大な機械文明の現代に、或るフハフハした、桃いろの、ポップ・コーンのやうでもあり、
ゴム風船のやうでもあり、いづれにしても、パンと割られたらおしまひの、合成樹脂製の人魂を喚起したのだつた。
この人魂には、ハバカリの匂ひや、悲しい巨大な旭日の栄光や、女の涙や、やさしい不具者や、あらゆる人間的な
ものがまつはつてゐた。それにしても、とにかくそれは人魂なのであり、人間の霊魂の証しなのだつた。
霊魂は温かい、唯一の温かい言葉になつた。彼の芸術の独特の暗さと温かさは、かくて霊的なものである。
それは(中略)心と心との交流、すなはち心霊術に基づいてゐるからである。

三島由紀夫「ポップコーンの心霊術――横尾忠則論」より

309 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/21(水) 11:37:51.24 ID:BR+hxMEV.net
そこに「英雄」が立ち現はれる。
英雄は、正にこのやうな交霊によつて喚起され、土俗の中から、土でつくられた巨大ゴーレムのやうに立上ら
なければならない。一例が、横尾氏の夢寝にも忘れぬ英雄、高倉健は、花札の刺青を背中に散らした土俗の
アイドルであると同時に、近代都市の映画産業のメカニズムを通じて、深夜興行といふもつとも文明的な興行形態の
中に生きのびてゆく幻影なのである。死んでもらひませう! さういふ血の叫びをあげるとき、われわれの中の
血の叫び、あらゆる進歩主義者、改良主義者、ヒューマニストが、おぞ毛をふるつて避けて通る血の叫びが、
よびさまされて、かう怒鳴る。「カッコいいぞう!」……しかしそのとき、こんなパセティックな共感のうちに、
われわれは無限に喪失してゆく。何かを。何を喪失するともしれず、ただ喪失してゆく。ハバカリの匂ひを、
農村を、血の叫びを。……そして何十年かのち、コンピューターに支配された日本のオフィスの壁には、横尾忠則の
ポスターだけが、日本を代表するものとして残されるだらう。

三島由紀夫「ポップコーンの心霊術――横尾忠則論」より

310 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/27(火) 10:37:57.57 ID:AS9GyO7f.net
日本といふ国は何といふ忙しい国でせう。でも、羽田から、みんなに引つ張られて、東横ホールの「鹿鳴館」
(慈善興業)の楽屋につれて行かれ、カーテン・コールのとき、舞台から帰朝の挨拶をさせられたとき、
「ああ、日本には、かうして僕を待つてゐてくれた人がゐた」と、満員の客席を眺めて、本当にうれしく思ひました。
僕はやつぱりジャーナリズムの spoiled child であつて、あんまり一人きりの淋しい生活はできないといふことを
痛感しました。

三島由紀夫
昭和33年2月3日
ドナルド・キーンへの書簡より


ニューヨークの新聞に、川端(康成)さんのインタビューがいろいろ出たやうです。しかし日本の新聞には、
その記事が一つも出ず、中共がへりの文士の座談会ばかりがデカデカと出てゐます。この片手落ちはますます
ひどくなつたやうです。日本で一等いけないのは、政治家よりも、全学連よりも、新聞だと思ひます。

三島由紀夫
昭和35年7月11日
ドナルド・キーンへの書簡より

311 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/27(火) 10:38:54.29 ID:AS9GyO7f.net
けふ久々のお手紙をいただき、洵にうれしく拝読、丁度数日前「文藝」で「近松と欧米の読者」を拝読、お手紙を
差上げようと思つてゐたところでした。この論文は、明晰で情理を尽したもので、一方きはめて具体的で、
岩波の「文学」系のチンプンカンプンの左翼国文学者たちに少くとも十回ぐらゐ味読させてやつたら、少しは
彼らの目もさめるかと思はれました。


このごろの日本人はあの勇敢なカミカゼ精神をどこへ忘れてきたのでせう。慨嘆に堪へません。

三島由紀夫
昭和37年9月9日
ドナルド・キーンへの書簡より

312 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/27(火) 10:40:04.47 ID:AS9GyO7f.net
日本の評論家の解説は、多く細部を無視し、理窟のために作品をねじ曲げ、作家はそのため、いつも苦い思ひを
心の底に持たねばなりません。この太宰集の御解説は、日本の批評家がほとんど触れない文体、構成、描写、
技巧などについて、周到な分析をされ、実に納得のゆくやうに書かれてゐるのみならず、一方、批評は批評として、
太宰のキリスト教についてのズバリとした御意見やら、「走れメロス」(小生もこれは少しもいいと思ひません)の
否定やら、太宰をよく読み、よく愛した人にだけ可能な正しい批判があります。

三島由紀夫
昭和39年4月15日、ドナルド・キーンへの書簡より


この間、安部公房君と一晩ゆつくり話し、彼が、
「僕はチェコに夢をかけてゐた。チェコにいつか亡命するつもりだつた。夢が砕けて悲しい」
と言つてゐた言葉が心を搏ちました。

三島由紀夫
昭和43年9月24日、ドナルド・キーンへの書簡より

313 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/27(火) 10:48:42.81 ID:AS9GyO7f.net
「日本人の西洋発見」は、実にいい飜訳で、おちついたしつかりした日本文になつてゐて、感心しました。
平田篤胤のところを最初によみ、今、日本人が誰も読まなくなつてゐるこの思想家をキーンさんが丹念精細に
研究されてゐるのに頭が下がりました。


一九七〇年にかけては、ひよつとすると、僕も、ペンを捨てて武士の道に帰らなければならないかもしれません。

三島由紀夫
昭和44年2月2日、ドナルド・キーンへの書簡より


三月一日から一ヶ月、又、富士の自衛隊へ行つて、浮世を離れます。しかし自衛隊の中の浮世もだんだん目に
つくやうになり、今度はどこへ逃げたらよいのでせうか。

三島由紀夫
昭和45年2月27日、ドナルド・キーンへの書簡より

314 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/27(火) 10:50:54.04 ID:AS9GyO7f.net
小生たうとう名前どほり魅死魔幽鬼夫になりました。キーンさんの訓読は学問的に正に正確でした。小生の
行動については、全部わかつていただけると思ひ、何も申しません。ずつと以前から、小生は文士としてではなく、
武士として死にたいと思つてゐました。


(豊饒の海)第一巻第二巻は飜訳がほとんど出来てゐますから、大丈夫かもしれませんが、問題は第三巻、
第四巻です。(中略)何とかこの四巻全巻を出してくれるやう、御査察いただきたく存じます。さうすれば世界の
どこかから、きつと小生といふものをわかつてくれる読者が現はれると信じます。

三島由紀夫
昭和45年11月、ドナルド・キーンへの書簡より

315 : 忍法帖【Lv=8,xxxP】 :2011/09/27(火) 18:47:15.81 ID:War8X+Us.net
てs

316 :電脳プリオン@生サナーギ:2011/09/29(木) 23:20:09.06 ID:hO2+ROu5.net ?2BP(1960)
三島由紀夫って本名じゃなかったのか

317 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/30(金) 16:24:51.02 ID:8JGm9gj4.net
今度のこりの三篇を拝読、「白毛」のをはりの小さいお嬢さんの件りに妙に心を動かされ、貴兄は小さい
女の子のことを書かれると、(楡家の桃子以来)どうしてこんなに人の心をゆすぶるのか、とふしぎになりました。
「静謐」でも千花といふ子が妙に感動的なのです。これは決して私小説的批評ではありません。貴兄と小生の間に、
「小さい女の子の孤独」に対する妙に深い哀憐の情の共通性があるらしい。小生の場合は、死んだ妹の記憶かも
しれません。

三島由紀夫
昭和41年7月16日、北杜夫への書簡より

318 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/09/30(金) 16:27:32.62 ID:8JGm9gj4.net
――それはさうと大江健三郎自殺未遂といふ噂をききましたが本当でせうか? 彼にはたしかに何か、精神病質の
危険な兆候が感じられます。
小生も躁病が極度に達し、つひにステージで歌をうたひました。しかしカーテン・コールで出ると、女の子が
一せいにキャーッと云つてくれたので感激しました。あのキャーッといふ声を一度体に受けてみたいと思つて
ゐたので宿望を達しました。あの声は一体どこから出るのでせうか。
貴兄の躁病の御文章をよんで、大笑ひ、といふのも、医者の病気ほど愉快なものはないからです。御病気悪化の
一助にもと、イヂワル・ヂヂイがこの手紙を書きました。

匆々

三島由紀夫
昭和41年7月16日、北杜夫への書簡より

319 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/02(日) 16:19:45.18 ID:3u8cBm90.net

みみずん検索 違法の可能性
http://mimizun.com/index1.html

2ちゃんねるの固定ハンドルみみずんは、2ちゃんねるの過去ログを自らのサーバーに勝手に保存し、
それを無料でネット上に公開している。
この中には2ちゃんねるで既に削除されたはずの危険なスレッドや書き込みが多数残っており、
誰かが気づいてメールで対応しなければ削除されることはない。
更にみみずんはこのような過去ログをCD-Rに取り込み、有料で売っていたという。


320 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/04(火) 11:15:07.74 ID:2tkIqSuL.net
私共はあの古代の壮麗な大爬虫類が、峻厳な自然淘汰の手で忽ち絶滅に瀕した時代を思ひ浮べます。しかしもし
彼等の多くがその危険を脱し、どこかで繁殖しつゞけてゐたとしたらどうでせう。恐らく私は、彼等の習性の内に、
「絶滅に瀕したもの」の身振が執拗に残つてゆくだらうと思ひます。


花々の矜りは咲いてゆくといふことよりも、咲いて来たといふことよりも、今「咲いてゐる」といふ一点に漂うて
ゐるのかもしれません。かう考へることはいくらか私共を慰めてくれます。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年7月18日、川端康成への書簡より


太宰治氏「斜陽」第三回も感銘深く読みました。滅亡の抒事詩に近く、見事な芸術的完成が予見されます。
しかしまだ予見されるにとどまつてをります。完成の一歩手前で崩れてしまひさうな太宰氏一流の妙な不安が
まだこびりついてゐます。

三島由紀夫
昭和22年10月8日、川端康成への書簡より

321 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/04(火) 11:16:06.93 ID:2tkIqSuL.net
この作品(仮面の告白)を読んだあと、私の小説をもう読まぬといふ読者もあらはれようかと存じ、相当な決心で
とりかゝる所存でございますが、この作品を「美しい」と言つてくれる人があつたら、その人こそ私の最も深い
理解者であらうと思はれます。

三島由紀夫
昭和23年11月2日、川端康成への書簡より


アメリカでは皆米人が親切にしてくれ、ミス・クルーガーといふパツシニさんの友達に殊に世話になりました。
会ふ米人がみないい人なのにおどろきますが、いい人と味のある人とは一寸別で味のある点では、パツシニ氏のやうに
永く日本にをられる人には誰にも敵ひません。日本は人間に「味」を与へます。

三島由紀夫
昭和27年2月13日、川端康成への書簡より

322 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/04(火) 11:16:53.43 ID:2tkIqSuL.net
目下、神島といふ伊セ湾の湾口を扼する一孤島に来てをります。(中略)映画館もパチンコ屋も、呑屋も、喫茶店も、
すべて「よごれた」ものは何もありません。この僕まで忽ち浄化されて、毎朝六時半に起きてゐる始末です。
ここには本当の人間の生活がありさうです。たとへ一週間でも、本当の人間の生活をまねして暮すのは、快適でした。
ある日は早朝から夕方まで、蛸壺船に乗り込んで楫取を手つだひました。(中略)
明朝ここを発つて、三重賢島の志摩観光ホテルへまゐります。そこで僕はまた、乙りきにすまして、フオークと
ナイフで、ごはんをたべるだらうと想像すると、自分で自分にゲツソリします。

三島由紀夫
昭和28年3月10日、川端康成への書簡より


大岡さんの歓送会で、揮毫帖に、
昇平何舎神洲地
駕夷狄車下米洲
冀以和朝化紐育
と書きましたら、お前はやつぱりフアツシヨだと叱られました。

三島由紀夫
昭和28年10月17日、川端康成への書簡より

323 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/04(火) 11:17:56.51 ID:2tkIqSuL.net
この間、中央公論の御集の解説に当り、「千羽鶴」をしみじみ再読して、初読のときと全くことなる印象を
与へられました。茶道及び日本的風雅の諷刺小説であるかの如くさへ感じられ、感興新たなるものがございました。
茶道といへば、本日、千宗興さんに会つたところ、外国旅行でお茶を教へた話ばかりするので、「そんな平和な
静かな国ばかりへ行かず、南ヴイエトナムのやうな戦乱の巷へ行つて、耳もとを弾がかすめるやうなところで
お茶を立てたらいかがです。それが本当のお茶でせう」と言つてやりました。

三島由紀夫
昭和38年12月15日、川端康成への書簡より


このごろ一般に、文学が紳士風家庭風になつてゐるのを苦々しく存じます。ブル紳の文学など読みたくありません。
文芸時評のインチキとハツタリもひどいもので、文壇墜落の兆候歴然、何かここらで、革命的暴力的新人が
あらはれぬものでせうか。

三島由紀夫
昭和41年8月15日、川端康成への書簡より

324 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/05(水) 10:51:07.39 ID:R8aRGSSx.net
あんまり悲壮に思はれるのはイヤですから、漫画のタネで結構なのですが、小生としては、こんなに真剣に
実際運動に、体と頭と金をつぎ込んで来たことははじめてです。一九七〇年はつまらぬ幻想にすぎぬかもしれません。
しかし、百万分の一でも、幻想でないものに賭けてゐるつもりではじめたのです。十一月三日のパレードには、
ぜひ御臨席賜はりたいと存じます。

ますますバカなことをとお笑ひでせうが、小生が怖れるのは死ではなくて、死後の家族の名誉です。小生に
もしものことがあつたら、早速そのことで世間は牙をむき出し、小生のアラをひろひ出し、不名誉でメチヤクチヤに
してしまふやうに思はれるのです。生きてゐる自分が笑われるのは平気ですが、死後、子供たちが笑はれるのは
耐へられません。それを護つて下さるのは川端さんだけだと、今からひたすら便り(ママ)にさせていただいてをります。

三島由紀夫
昭和44年8月4日、川端康成への書簡より

325 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/05(水) 10:52:15.75 ID:R8aRGSSx.net
又一方、すべてが徒労に終り、あらゆる汗の努力は泡沫に帰し、けだるい倦怠の裡にすべてが納まつてしまふ
といふことも十分考へられ、常識的判断では、その可能性のはうがずつと多い(もしかすると90パーセント!)のに、
小生はどうしてもその事実に目をむけるのがイヤなのです。

三島由紀夫
昭和44年8月4日、川端康成への書簡より


あひもかはらず、ただ徒らに体を使ひ、飛び廻つて、肉体の為に使ふ時間と精力の厖大さにわれ乍ら呆れます。
(中略)
時間の一滴々々が葡萄酒のやうに尊く感じられ、空間的事物には、ほとんど何の興味もなくなりました。この夏は又、
一家揃つて下田へまゐります。美しい夏であればよいがと思ひます。

三島由紀夫
昭和45年7月6日、川端康成への書簡より

326 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/05(水) 16:04:50.82 ID:R8aRGSSx.net
僕は凡そ小説を読むのに、主義や思想についての偏見をもたず、共産党の小説でも右翼の小説でも作品の価値に
ついては、素直に感動する魂をもちつづけたいと思ふのです。先輩の小説でも、中学生の小説でも、よいものには
搏たれる魂をもちたい、他人の中にある何物かに愕く心は自分に愕く心であり、他の発見は、自己の発見であり、
他に感動しなくなれば自己の発見も終る、僕はかういふ信念を川端さんから学びとりました。
しかし日本の文学であり日本語を使つてゐる以上日本語として美しくなければ感動するわけにはゆきません。

三島由紀夫
昭和22年12月25日、清水基吉への書簡より

327 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/06(木) 10:12:27.25 ID:/X/bvZl4.net
数日前、日清紡会長で東京都防衛協会会長(旧自衛隊協力会)の桜田武氏と、三輪元次官と、藤原岩市氏(協会の
事務局長)の四者会談の結果、一応、防衛協会の外郭団体の形で、「体験入隊同友会」の如き無難な名称の
組織を作り、これにはもちろん、一般体験入隊者は入れず、このたびの計画による一ヶ月訓練を経た者のみを悉く
リストに入れ、なほその中に、小生が直接手塩にかけて育てる中核隊を無名称で置き、この者たちのみが
祖国防衛隊の任務を身心共によく理解してゐる、といふ具合に作つてゆくことに賛同を得、資金の目鼻もついて
来ました。藤原氏は二年で五百人といふ目標ですが、なるたけ少数精鋭のはうがよいと思ひます。(中略)
一ヶ月体験をした者たちはたしかに人間が変り、よくなりました。この精神を持続させることが何より大切と
思ひます。小生は、ポカンと口をあけて水平渡りをする顔が、学生たちに甚だ親近感を持たせたやうですが、
落ちた偶像といふ評もあります。

三島由紀夫
昭和43年4月17日、菊地勝夫への書簡より

328 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/07(金) 15:40:25.87 ID:YEcsh0im.net
倉持君
まづ第一に、貴兄から、めでたい仲人の依頼を受けて快諾しつゝ、果せなかつたことをお詫びせねばなりません。
貴兄の考へもよくわかり、貴兄が小生を信倚してくれる気持には、感謝の他はありませんでした。それについて、
しかし、小生は班長会議の席上、貴兄を面詰するやうな語調で、激しいことを言つたのを憶えてゐられるでせうか?
貴兄は、小生が仲人であれば、すべてを小生に一任したわけであるから、貴兄を就職と結婚の祝福の道へ導くことも、
蹶起と死の破滅の道へ導くことも、いづれについても文句はない、といふ決意を披瀝されたわけでした。
しかし小生の立場としては、さうは行きません。断じてさうは行きません。一旦仲人を引受けた以上、貴兄に
対すると同様、貴兄の許嫁者に対しても責任を負うたのであるから、許嫁者を裏切つて貴兄だけを行動させることは、
すでに不可能になりました。さうすることは、小生自身の名を恥かしめることになるでせう。
さればこそ、この気持をぜひわかつてもらひたくて、小生は激しい言葉を使つたわけでした。

三島由紀夫
昭和45年11月、倉持清への書簡より(三島家で夫人が手渡し)

329 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/07(金) 15:41:52.38 ID:YEcsh0im.net
小生の小さな蹶起は、それこそ考へに考へた末であり、あらゆる条件を参酌して、唯一の活路を見出したものでした。
活路は同時に明確な死を予定してゐました。あれほど左翼学生の行動責任のなさを弾劾してきた小生としては、
とるべき道は一つでした。
それだけに人選は厳密を極め、ごくごく少人数で、できるだけ犠牲を少なくすることを考へるほかはありませんでした。
小生としても楯の会全員と共に義のために起(た)つことをどんなに念願し、どんなに夢みたことでせう。
しかし、状況はすでにそれを不可能にしてゐましたし、さうなつた以上、非参加者には何も知らせぬことが情である、
と考へたのです。小生は決して貴兄らを裏切つたとは思つてをりません。蹶起した者の思想をよく理解し、後世に
伝へてくれる者は、実に楯の会の諸君しかゐないのです。今でも諸君は渝(かは)らぬ同志であると信じます。
どうか小生の気持を汲んで、今後、就職し、結婚し、汪洋たる人生の波を抜手を切つて進みながら、貴兄が
真の理想を忘れずに成長されることを念願します。

三島由紀夫
昭和45年11月、倉持清への書簡より(三島家で夫人が手渡し)

330 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/13(木) 10:10:49.34 ID:5EyS8W79.net
楯の会会員たりし諸君へ

諸君の中には創立当初から終始一貫行動を共にしてくれた者も、僅々九ヶ月の附合の若い五期生もゐる。しかし
私の気持としては、経歴の深浅にかかはらず、一身同体の同志として、年齡の差を超えて、同じ理想に邁進して
きたつもりである。たびたび、諸君の志をきびしい言葉でためしたやうに、小生の脳裡にある夢は、楯の会全員が
一丸となつて、義のために起ち、会の思想を実現することであつた。それこそ小生の人生最大の夢であつた。
日本を日本の真姿に返すために、楯の会はその総力を結集して事に当るべきであつた。
このために、諸君はよく激しい訓練に文句も言はずに耐へてくれた。今時の青年で、諸君のやうに、純粋な目標を
据ゑて、肉体的辛苦に耐へ抜いた者が、他にあらうとは思はれない。革命青年たちの空理空論を排し、われわれは
不言実行を旨として、武の道にはげんできた。時いたらば、楯の会の真価は全国民の目前に証明される筈であつた。

三島由紀夫
昭和45年11月、楯の会会員への遺言「楯の会会員たりし諸君へ」より(倉持清への書簡に同封)

331 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/13(木) 10:12:00.36 ID:5EyS8W79.net
しかるに、時利あらず、われわれが、われわれの思想のために、全員あげて行動する機会は失はれた。日本は
みかけの安定の下に、一日一日魂のとりかへしのつかぬ癌症状をあらはしてゐるのに、手をこまぬいてゐなければ
ならなかつた。もつともわれわれの行動が必要なときに、状況はわれわれに味方しなかつたのである。
このやむかたない痛憤を、少数者の行動を以て代表しようとしたとき、犠牲を最小限に止めるためには、諸君に
何も知らせぬ、といふ方法しか残されてゐなかつた。(中略)
日本が堕落の淵に沈んでも、諸君こそは、武士の魂を学び、武士の錬成を受けた、最後の日本の若者である。
諸君が理想を放棄するとき、日本は滅びるのだ。
私は諸君に、男子たるの自負を教へようと、それのみ考へてきた。一度楯の会に属したものは、日本男児といふ
言葉が何を意味するか、終生忘れないでほしい、と念願した。青春に於て得たものこそ終生の宝である。決して
これを放棄してはならない。

三島由紀夫
昭和45年11月、楯の会会員への遺言「楯の会会員たりし諸君へ」より(倉持清への書簡に同封)

332 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/21(金) 15:10:48.04 ID:MCJMvpST.net
独乙(ドイツ)敗るゝ時、忌はしくも紙上に見える無条件降伏の文字、西欧的表現の行詰りを見る思ひがいたしました。
大御戦はもとより本朝のおほみわざ、戦争と文化の問題についても日本独自の解決があるべきと存じます。
ヒトラア死して逸早い、ハムブルヒ無防備都市宣言の如き、醜態の極でありました。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年5月5日、中河与一への書簡より

333 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/21(金) 15:11:11.31 ID:MCJMvpST.net
独逸(ドイツ)の悲劇はあくまで西洋古代の悲劇と相以て、運命と人との闘争の終局でありましたが、今や
我が国にはこれに類似の悲愴趣味運命観が流行してをりますことは、大いに警戒の要ありと存じます。新運命観は、
運命への抵抗乃至(ないし)闘争でもなく、運命への盲従乃至信仰でもなく、運命を汎(ひろ)く輪廻と解して、
これに対する濃まやかな愛情と親密な交遊の裡に、自己と輪廻との合歓、慇懃の甘美を極めた境地にまで、
相共に融合することであると考へます。単なる否定でも肯定でもない、かゝる主観客観を超えた魂の状態を、
貴下は兼てより「愛」と呼ばれましたが、「愛」の教は今日以後一層痛切な意味をもつでありませう。私は
今までの国学の偏狭、コスモポリティズムの軽佻を排して、真の意味の universal につながりたいと思ふやうに
なりました。

平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年6月27日、中河与一への書簡より

334 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/10/27(木) 20:46:15.42 ID:ytyCG0aL.net

中野剛志先生がTPP賛成論者の詭弁を全滅させたようです
http://www.youtube.com/watch?v=9amjatPD_l4
http://www.youtube.com/watch?v=8G29qFqId2w


中野先生が敗北宣言、暗殺される?
日本が米国の植民地に。すでに99%手遅れか?
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15973549


テレビ・新聞にだまされるな。
気づいたら、
「my日本」で検索


335 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/03(木) 21:26:43.87 ID:PK73cLDi.net
    パーン _, ,_  パーン
パーン_, ,_  ( ・д・)  _, ,_パーン
  ( ・д・) U☆ミ (・д・ )
   ⊂彡☆))Д´>>659 ☆ミ⊃  パーン
    , ,∩彡☆ ☆ミ∩, ,
  (   )  パーン (   )
 パーン      パーン

336 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/28(月) 13:57:45.95 ID:/f+f+8Ui.net


337 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/05(月) 14:18:43.75 ID:jpF9Eg+P.net
きのふの風 けふの風
恋の風 金の風
夢も涙も 吹きとばし
人でなしでも 人の子さ
からつ風野郎 あすも知れぬ命

ムショの風 シャバの風
恋の風 金の風
情しらずの ワナをかけ
惚れはさせるが 惚れはせぬ
からつ風野郎 あすも知れぬ命

ハジキの風 ドスの風
恋の風 金の風
独り笑ひの 口もとを
すぎる殺気の うそ寒さ
からつ風野郎 あすも知れぬ命

三島由紀夫「からつ風野郎」

338 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/10(土) 17:37:14.30 ID:hTBBlAgC.net
「桜花」

桜がさいた
美しい
桜がさいた
日本の
国花の
あのきれいな
さくらが

平岡公威(三島由紀夫)9歳の詩

339 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/10(土) 22:33:21.24 ID:2ZcaKGE0.net
「記おく」
元のお家。
永住町にあつた。

小さい頃。
雨のふつた日。

お窓の前で。
僕外見てた。

水たまりの、
中に、

銀の水玉。
ぽかッ。ういてた。

にげおくれたか
小さいとんぼが。

目、丸くして
のきにとまつた。

まだしとしとと、
降る雨が。

ぽたんとおちて
ちよろとながれた。

小さい頃の記おく。
古い記おく。

平岡公威(三島由紀夫)9歳の詩

340 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/10(土) 22:34:10.32 ID:2ZcaKGE0.net
「冬休のある日の家の附近の景色」

お日様がまるで春のやうに、
照つてゐる。
蟻もその他の虫も、
冬ごもりや冬眠をしてをり、
又は死んでゐる虫もある。
しかしその時羽根の
やぶれた一匹の蠅が
ぶーんと淋しさうに
とんでいつた。
遠くの方で小鳥の声
がする。
箱庭も今は汚なくなつて
ゐる。
上からおちる松葉のためだ。
日は、沢山照つてゐるが、
まはりの景色がなんだか
淋しい。
あゝ、さうだ。
忘れてゐた。
綴方(つづりかた)の題探しだ。
僕は急いで
ランドをあけ、
はきとり帳を
出し、机の上におき、
温い手で鉛筆を握つた。

平岡公威(三島由紀夫)9歳の詩

341 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/12(月) 15:29:20.64 ID:tO92Ep3u.net
「悲しき賤女(はしため)の唄」

終りなき、
悲しきつとめ、
女中奉公。

来りしは、
十九の春ぞ
六年(むとせ)の昔。

味気なく、
うつろに暮し、
我が青春(はる)逝きぬ。

さむざむと、
両手に握る、
冷たき帚。

雑巾は、
汚なくぬれて、
小竹の竿に。

夕焼に、
我が面(おも)映えて、
すゝきはそよぐ。

ふるさとの、
夕べを思ふ、
はした女の身を。

夕映よ、
行きて告ぐれよ、
老ふ父母(かぞいろ)に。

思ひはす、
故郷の野山
秋は去りにし。


342 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/12(月) 15:30:24.43 ID:tO92Ep3u.net
ひゞわれし
濡れ手にさはる
霜の冷たさ。

はく、いぶき、
煙となりて、
真白く消えぬ。

庭さきを、
通へるみちの、
あはれ、冷たき。

朝霜の、
こほりかたまり
朝陽にとけぬ。

とけぬれど、
ぬかるみ激し、
人行きなやむ。

さてやそれ、
我がぬかるみの
心に似たり。

あさけぶり、
古里こひし、
なつかしの色。

あさぞらに、
立ち上る白、
我が眼は痛し。

物いはぬ、
福寿の萌葱(もよぎ)
我あたゝかし。


343 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/12(月) 15:31:30.89 ID:tO92Ep3u.net
都より、
既に去(い)ぬれど、
我が里迎ふ。

はつはるぞ、
旗ひるがへる
門松が上に。

あなうれし、
しばしの休暇(いとま)
いかに用ひん。

さと向けて、
はせ、はするなり。
黒き列車は。

村々は
かすかに見えぬ、
粉雪の彼方。

我うれし、
激しき音に、
列車は入りぬ。

小さき駅、
その小さくとも
我がふるさとぞ。

家に続く
粉雪の道の
行く果てに、
かぞいろいます
小さきやは、
ほのぼのと、
浮び出でたり。

平岡公威(三島由紀夫)12歳の詩「悲しき賤女(はしため)の唄」

344 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/14(水) 15:07:23.94 ID:xZPpK4SC.net
「風と私」

風は丘をこえて、わたしの足下に達(とど)いた……。
……丘の向うに「春」があつた。
山々に拡がる空気の波紋。
朝は、鋭ぎすました冬空の下に展(ひら)く。
雅やかな音の 早瀬よ。
風は青ざめた森のなかにそれを見出だし、
わたしは白い冬木の陰にそれを開き、
遥かな呼吸を思惟し、
その呼吸を共にするべく、風をかきわけて
進み出た。
呼吸は丘の向うから、
ゆるやかに、おほどかに流れて来る。
白い桃の花弁が早瀬をはしり、
もう一つの流れと合して、紅い一片と交はる。
け高い香水におとした紅のやうに。

平岡公威(三島由紀夫)14歳の詩

345 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/14(水) 15:08:56.14 ID:xZPpK4SC.net
「桃」

薄化粧した桃の実よ、
それに近づく黄金虫。

再(ま)た
ぎんぎらの夏の白昼(まひる)だ
投槍をなげ、
男たちは遠くに海を感じた。

……桃のやうな少女の頬に、
手をふれてみる……

平岡公威(三島由紀夫)14歳の詩

346 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/14(水) 15:13:30.17 ID:xZPpK4SC.net
「文化地獄」

それは潰えた怒号を立てゝ
疾走する列車であつた。
よろめく摩天楼の群像だつた。
冬風の色した塀の、
限りない繰り返し限りない連続。
印刷インクで刷つたがごとくの
黒髪の人々さへ、「野生」を「知性」と発音する。

接吻さへも印刷だ。

幾何学図案そのものゝあの女、
胸のひゞきを知らすには
タイプライタァをご使用だ。

“文明を盲信するものは
一つの迷信に盲信してゐるのです。

月はわたしたちを
動く活字とばかりおもつてゐました。”

平岡公威(三島由紀夫)14歳の詩

347 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/16(金) 14:31:53.03 ID:YFMSqsCy.net
「不信」

かくも透明(す)きたる硝子さへ、
その切口は青いのだ
ましてや君の双の目(まみ)
あまたの恋も蔵(かく)せよう。

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

348 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/16(金) 14:33:46.05 ID:YFMSqsCy.net
「火と水についての小曲」

炭火のそこの朱色の水
その水(みな)そこの水の影

炭の黒さにちらばつて
きえる、またゝく火の砂は
あの夜の湾の町(ちまた)の灯
われらが心のすなどり灯

もえたつ、あつさ
君の頬……
われらが頬のほてりにや。

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

349 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/17(土) 00:06:14.35 ID:f9VWhjfk.net
>>344
しょぼい詩だな。まあ厨房のポエムはそんなもの

350 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/17(土) 20:18:04.87 ID:vB9n9vKc.net
「聖女」

あなたの寝台のヴェエルのやうに
雲は青空にひろがつてゐました
晴れ間の雲の金の縁
あなたの肌のやうに明るかつた……
    ○
忘却はたやすいことだが……
あなたがまばたくその度に
わたしの欲念はかぎろうた
――聖さは銀の鎧でした

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

351 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/17(土) 20:23:11.43 ID:vB9n9vKc.net
「凶(まが)ごと」

わたくしは夕な夕な
窓に立ち椿事を待つた、
凶変のだう悪な砂塵が
夜の虹のやうに町並の
むかうからおしよせてくるのを。

枯木かれ木の
海綿めいた
乾きの間には
薔薇輝石色に
夕空がうかんできた……

濃沃度丁幾(のうヨードチンキ)を混ぜたる、
夕焼の凶ごとの色みれば
わが胸は支那繻子の扉を閉ざし
空には悲惨きはまる
黒奴たちあらはれきて
夜もすがら争ひ合ひ
星の血を滴らしつゝ
夜の犇(ひしめ)きで閨(ねや)にひゞいた。

わたしは凶ごとを待つてゐる
吉報は凶報だつた
けふも轢死人の額(ぬか)は黒く
わが血はどす赤く凍結した……。

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

352 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/17(土) 20:25:46.77 ID:vB9n9vKc.net
「中学生」

朝 通学の傘が
ふとすれあつた
ときめいた布のこすれ
その音 あかるい雨
    *
果物を切るその頬に
ふとひらめくナイフの反射
僕は彼女の唇にしか
果物を見ないのだが……

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

353 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/20(火) 17:32:15.63 ID:oD8d1Ypz.net
「米人鏖殺」

米人よ地上を去れ。汝らの義務である。米人よ跡をも止めぬ者たれ。汝らの光栄ある使命はそれである。
米人よ滅びよ。尽(ことごと)く死ね。もはや躊躇すな。汝の剣は汝自身の血もてのみ衂(ちぬ)れ。米人よ
残らず死ね。米人よ再びこの地上へ来るな。米人よ死ね。――汝らの存在は私にとり不快である。目通り叶はぬ。
死ね。日輪の前にもおびえぬ群盲よ。死ね。私は日の方へ顔をむけるものゝ額に慎しみの代りに憎悪がある故踏む。
汝の額を踏む。いかなる大砂漠をも恐れげもなく蹴立てゝきた不遜な隊商が、懸橋なき断崖の上へ来て何とした。
墜落せよ。飛べ。寸時たりとも輝やける中空に在る光栄に喜死せよ。
臭い。涜らはしい。傍へ寄るな。退れ。汝の息が花園に近づく時花はみな剣をかざす。汝の息は清流のうちなる
魚をも腐らす。汝、蠅の母なる者よ。去れ。見苦しい。去れ。犬の犬。豚の豚。汚物を食とする卑賎猥雑な
バビロンの末よ。汝を鋤いて地を肥やし、汝の屍に毒だみの花咲かせん。屍は毀(こぼ)たれて踏み躙(にじ)られし
蟹の如けん。青き脳髄を地へは垂らすな。

平岡公威(三島由紀夫)戦時中(推定)の手記

354 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/28(水) 20:58:35.12 ID:Z5Bi0+qk.net
熟語や抽象語に頼りすぎたへたくそな詩(笑)まあ、三島は小説家だよ。詩人の感性はない。

355 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/31(土) 20:56:45.18 ID:WZkmUi7b.net
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16575369

356 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/01(日) 13:56:35.71 ID:gFZwdZWi.net
>>347
ラディゲのぱくりじゃねえか(笑)

357 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/04(水) 11:26:30.82 ID:DeWmg5Ld.net
「わが杖」

空があんまりとほいので
わたしは立つ瀬がないやうだ。
塀をうしろにするときは
わたしはまへへつんのめる。
その城あとの公ゑんに
松はかなしく高かつた。
天を指さすものゝ特権――
人を圧し、つきとばし
打ちたふし、ひれふさせ……
このきびしい祭壇のまへに
にぎつた一本の野草は
わが唯一の杖であつた。

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

358 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/04(水) 11:27:42.42 ID:DeWmg5Ld.net
「海浜の人」

歩むにつれてわが魂のやさしい愛は
くろずみ落ちて風によごれた。
松笠のやうに。
松笠おちる音はつゞいた、
身じろぐたびに胸のうつろに。
けふ旗めけり矣、松林。

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

359 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/06(金) 11:37:29.69 ID:xMU6Cvio.net
「さんぽする男」

終日(ひねもす)、貧弱な身に大きな重い下駄をはき
あるいてゐる雨のなかを
ぼろつきれのやうな風が過ぎてゆく。
犬を蹴り、猫を追ひ、塀を沿うて
しらぬ間に、つかれ果てゝ
こゝまできてしまひました。
遺言をかくやうな気持で路面をみれば
そこには言葉と意味がうかんで来て
ありもしない電柱のむかうに
わたしはみしらぬ故郷をさぐるのです。

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

360 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/06(金) 11:46:26.14 ID:xMU6Cvio.net
「ある女人の思ひ出に」

その人はきちんと坐つて銀の器に水仙を生けた
斜かひに帯止をしめてゐた
日向の庭を眩しげにながめやりながら
たへられぬものゝやうに微笑んだ

板塀のそとで人力車の鈴の音がした
茶を捧げて女中が
古い廻り縁から、いくつもの光の縞を
浴びぬけて歩いてきた

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

361 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/06(金) 11:47:38.65 ID:xMU6Cvio.net
「火鉢」

徒然に客は火鉢に文字をかく。
まちかねてわたしは心に君を彫る
人来れば顔あからめて客は消す
あなたを見れば、わたしは心の絵を捨てる

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

362 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/06(金) 11:48:53.16 ID:xMU6Cvio.net
「建築存在」

開け放たれた窗に合はせて
日向は四角く置かれてあつた
床に密着して、ものうく窄(せま)く。
風景の一角を遠い電車が
みえない人生のやうにとほりすぎた
汽笛をひゞかせて、鉄橋を轟ろかせて、
家々のむかうに風の音がしてゐたが……
家は
在つた
一つの無為にして永遠な存在を主張した。

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

363 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/08(日) 13:50:27.85 ID:oUv5bSIM.net
「紙上の水滴」

水滴の傍らのみぞ仄明り
紙厳かに、白肌、雲の面さながらに
疎にみえて、天を映し、
無窮を吸ひ、一つの点に無限を与へ……。

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

364 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/08(日) 13:52:10.53 ID:oUv5bSIM.net
「帰来の章」

夜のながれが矢のやうで
色硝子の高窗の聖人たちはみえなかつた
がらんどうの教会を
何かにつまづきながら歩いてゐた
をりをり窗にひらめく稲妻は
地平の高市(まち)を 廃墟のやうに
死面(デスマスク)のやうに あをざめ浮き上らせてゐるだらう
わたしのこめかみに紋章は痛み
わたしの足は笏(しやく)のやうに労(つか)れた
そのはげしい夜のなかを
歩みはとほく いつしか飛翔の幻を踏んだ

平岡公威(三島由紀夫)15歳の詩

365 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/08(日) 14:29:18.66 ID:oUv5bSIM.net
「大詔」

やすみししわご大皇(おほきみ)の
おほみことのり宣へりし日
もろ鳥は啼きの音をやめ
もろ草はそよぐすべなみ
あめつちは涙せきあへず
寂としてこゑだにもなし
朗々とみことのりはも
葦はらのみづほ国原
みなぎれり げにみちみちて
時しもや南の海 言挙の国の首(かうべ)に、
高照らす日の御子の国 流涕の剣は落ちぬ
時しもや声放たれぬ 敵共(あだどち)の涜しし海ゆ
海神(わたつみ)ら怒りきそひて 撃たれてし敵の船人
玉藻刈る沖にしづめぬ、
かちどきは今しとよめど
吉事(よごと)はもいよゝ重(し)けども
むらぎものわれのこころは いかにせむ
よろこびの声もえあげずたゞ涙すも。

平岡公威(三島由紀夫)17歳の詩

366 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/08(日) 14:31:15.60 ID:oUv5bSIM.net
「今日のアダリィ」
   『ミス・アダリィは……一つの可能性なのですよ』リイル・アダン《未来のイヴ》

その頭髪(かみ)は夢の重みのためにしだれ
彼女の硝子の薔薇をふみ
昨日の苦悩を侮蔑し
センシブルな機械を好んだ。
それは虹のやうに繊細に変化する
稠密(ちうみつ)な風の季節。
彼女は語らない、ある特定な沈黙しか
彼女にとつて言葉でない。
七つの夜をまとひ、饒舌な衣裳をからげ
朝ごとに彼女は
感性の鏡のまへに立つた。
それはしばし無表情に光りながら
やがて姿は
うすい軽金属のやうにふるへはじめた。

平岡公威(三島由紀夫)20歳の詩

367 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/09(月) 13:38:49.44 ID:lwYVeFgI.net
みんな〜〜俺の散文詩を聞いてぇくれ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
安藤優子、木村太郎は、特に木村は、某プロパイダの社外取締役、安藤は、社外の人間にもかかわらず、フジテレビジョンのM&Aの最中、フジのホワイトナ
イトの【親会社】の本業を無視して、「インターネットは虚業だ。具体性がない
。」というようなことをコメントしました。この虚業は、livedoorを指していた
としても、「同業者」であったということは、非常に、違和感を感じずには、い
られません。


368 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/09(月) 19:57:29.72 ID:jVXPXYn+.net
韓国に乗っ取られた山形・戸沢村
http://www.vill.tozawa.yamagata.jp/?page_id=225

対馬もやばい
外国人参政権

369 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/01/26(木) 16:50:18.27 ID:a0PxfcmJ.net


370 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/10(金) 15:16:07.07 ID:vLPCpnru.net


371 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/27(月) 14:18:15.25 ID:yOKy068X.net


372 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/27(月) 23:35:23.85 ID:wgOk+7CQ.net


MIKAMIのインターネット   でググれ


このブログ痛すぎwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
クソワラタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

373 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/02(金) 04:43:41.12 ID:afd9BvMt.net
6 名前:名無しさん@お腹いっぱい。

三島由紀夫が生きていたら、『禁色』の絶世の美青年・南悠一を
俺をモデルにして書き直すコトは必定だろうゼッ!
分かったナッ!!!!!!!



374 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/02(金) 06:31:58.41 ID:dvd+DVpb.net
2 名前:名無しさん@お腹いっぱい。

三島由紀夫が生きていたら、『禁色』の絶世の美青年・南悠一を
俺をモデルにして書き直すコトは絶対に間違え無いだろうゼッ!
そして俺の前に跪いて泪ながらに求愛するは必定なのサッ!!
勿論、言下に断ってやるゼッ!! 
どんなに哀願しても無駄なのサッ!!
アイツは腋臭が超ヒデエからナッ!!!!
分かったナッ!!!!!!!

『春の雪』の映画化だって断然オレを主役に決定してただろうしサッ!!!

375 : 【33.3m】 電脳プリオン ◆GDSZsj1GHk :2012/03/10(土) 11:50:07.80 ID:Qd/h//kL.net ?PLT(12078)
どういう詩があるのかも知らん

376 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/26(月) 20:51:27.77 ID:3z6n6F7B.net
祖国防衛隊の隊歌

 隊 歌
強く正しく剛(たけ)くあれ
文武の道にいそしみて
正大の気の凝るところ
万朶(ばんだ)の花と咲き競ふ
日本男子の朝ぼらけ
われらは祖国防衛隊

若く凛々しく勇ましく
高根の雪に恥づるなき
市民の鑑(かがみ)武士の裔(すゑ)
祖国を犯す者あらば
かへりみはせじ楯の身を
われらは祖国防衛隊

清く明るく晴れやかに
憂憤深き夜は明けて
正気光りを発すれば
歩武堂々の靴跡に
敵影(てきえい)霜と消え失せん
われらは祖国防衛隊

三島由紀夫「祖国防衛隊はなぜ必要か?」より


377 ::2012/04/04(水) 04:01:12.12 ID:aJ3iKbbz.net
と、発達障害者(チビ、ブサ、知的障害者)が申しております

378 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/04(水) 12:53:24.69 ID:ZBfYBBO8.net
詩はぱくりだよ、このひと。小説や戯曲はすごいが、詩はだめ。
なんか最悪な文体でばかっぽいエッセイのたぐいも だめだめ。

379 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/08(日) 11:32:50.22 ID:057BRzvb.net
昨日、三島由紀夫をグーグルで画像検索してたらいきなり生首のかなしそうな顔の三島が出てきてなんか間違った結論と感じた。

380 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/14(土) 10:54:22.56 ID:KwC69cPl.net
>>354
同意。抽象的な詩が多すぎる。

381 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/20(金) 15:38:22.21 ID:KxjGlvp2.net
三島は冗語法が苦手なのでつまらない

382 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/20(金) 15:44:27.77 ID:KxjGlvp2.net
類節並列法もへたくそ。

383 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/20(金) 22:58:24.89 ID:mA5fzH8Z.net
今の若い奴らは貴族なのか
親のすねをかじり南蛮渡来のものを買う
おまえらの回りにはいと高かなものばかり
いにしえの奴らはないてるぜ
そんなことでいいのか
南蛮人にあこがれて

384 : 【東電 83.3 %】 【28.3m】 電脳プリオン ◆GDSZsj1GHk :2012/04/26(木) 22:18:56.36 ID:GJXHDtUC.net ?PLT(12079)
読み方わからん→倭文重

385 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/11(金) 14:18:28.84 ID:tqvP0b4c.net
>>384
ふみえ

386 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/11(金) 14:18:50.52 ID:tqvP0b4c.net
前略
「蓮田善明とその死」感激と興奮を以て読み了へました。毎月、これを拝読するたびに魂を振起されるやうな
気がいたしました。この御作品のおかげで、戦後二十数年を隔てて、蓮田氏と小生との結縁が確められ固められた
気がいたしました。御文章を通じて蓮田氏の声が小生に語りかけて来ました。蓮田氏と同年にいたり、なほ
べんべんと生きてゐるのが恥ずかしくなりました。一体、小生の忘恩は、数十年後に我身に罪を報いて来るやうで
あります。今では小生は、嘘もかくしもなく、蓮田氏の立派な最期を羨むほかに、なす術を知りません。しかし
蓮田氏も現在の小生と同じ、苦いものを胸中に蓄へて生きてゐたとは思ひたくありません。時代に憤つてゐても
氏にはもう一つ、信ずべき時代の像があつたのでした。そしてその信ずべき像のはうへのめり込んで行けたのでした。
五十五回に及ぶ御努力によつて、かうした叙事詩的評伝をものされたことに対し、深い敬意と感謝を捧げるのみで
あります。

三島由紀夫
昭和42年11月8日、小高根二郎への書簡より


387 : 【東電 80.3 %】 【26.3m】 電脳プリオン ◆GDSZsj1GHk :2012/05/12(土) 13:05:22.44 ID:AfYMcbiy.net ?PLT(12079)
>>385
d

388 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/12(土) 15:48:11.84 ID:5x8o6L4d.net
左翼学者でも、丸山真男の如き、自ら荻生徂徠を気取つて、徂徠学ばかり祖述し、近世日本の
政治思想の中でも、陽明学は半頁のcommentaryで片附けてゐるかの如きは、もつとも
「非科学的」態度と存じます。
返つて大衆作家の司馬遼太郎などにまじめな研究態度が見え、心強く思つてをります。
東洋思想に盲目の近代インテリが今なほ横行闊歩してゐる現下日本で、先生のやうな真の学問に
学ぶことのできる倖せを忝く存じます。

三島由紀夫
昭和43年5月26日、安岡正篤への書簡より



389 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/20(水) 09:30:39.57 ID:Crx1AC0t.net


390 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/20(金) 17:43:08.85 ID:xK+tNacR.net
大内先生を想ふ

391 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/10(月) 11:52:11.63 ID:UWtGU0Db.net
息子が大きくなれば全学連にならぬかとおそれをののき、娘が大きくなれば悪い虫がつきはせぬかと
ひやひやする、親の心配苦労をよそに、息子ども娘ども、
「お前の高校は処女が一割だつていふぜ」
「アラ、わりかしいい線行つてるわね」
などとほざき、オートバイのマフラーをはづして、市民の眠りをおどろかし、雨の日には転倒して頭の鉢を
割り、あわてた親が四輪車を買つてやれば、たちまち岸壁から海へどんぶり。山へ出かけては凍え死に、
スキーへ出かけては足を折る。身体髪膚、父母からもらつたものは一つもないかの如くである。
蔭では親のことを「あいつ」と呼び、働きのない親は出てゆけがしに扱はれ、働きのある親とは金だけの
つながり。いつも親に土産を買つてかへる今どきめづらしい孝行者と思へば、万引きの常習犯で、親が
警察へ呼び出されて、はじめてそれと知つてびつくり。これなどは罪の軽い方で、いつ息子に殺されるかと、
枕を高くして寝られない親もあり、こどもの持つてゐる凶器は、鉛筆削りのナイフといへども、こつそり
刃引きをしておいたはうが無難である。
日曜日も本に読みふける子は、あつといふ間にノイローゼになり、本を読まぬ子はテレビめくら。親父の
代には不良は不良でも、硬派の不良となると世間も認めたが、今は硬軟とりまぜの時代で、親の目には
一向見当もつかず、軟派とおもへばデモ隊で声を嗄らし、硬派とおもへばいつのまにやらプレイボーイ
とかになり下がり、娘が「オレ」と言ひ、息子は「あのう……ぼく」と言ふ世の中。

三島由紀夫「贋作東京二十不孝――井原西鶴」より

392 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/10(月) 11:52:57.15 ID:UWtGU0Db.net
ここに一人の悪息子あり。これ以上りつぱな女はないといふほどの、心やさしい若い継母に育てられ
ながら、心のねぢくれた極道者、遊びの金に詰まつては父親の金庫をねぢあけ、勘当の一歩手前まで
行きながら、継母のとりなしで、どうやら息をつないで来た若者。
あるとき、父親が不治の病で一年も保たないとわかつたので、父の財産、生命保険、一切合財、三分の
一を継母に持つて行かれては一大事と、悪友に相談をもちかけるに、
「そりやおめへ、むざむざ、血のつながらねえ女に、財産をしよつぴいて行かれる手はねえよ。何とか早く
あの女のカタをつけなくちやいけねえな。それはさうと、おめへのおやぢは、あの女に惚れてることは
たしかなんだな」
「あの年で見られたザマぢやねえよ。惚れてるのもいいとこさ」
「そんならこの手はどうだ。西鶴といふ小説家の『本朝二十不幸』巻の四、『木陰の袖口』といふ短篇
小説に出てる手だよ。西鶴つていふのは、おめへも知らねえだろ、永いこと同人雑誌で苦労してゐる
古手の作家で、だれもあいつの本なんか読んでる奴はゐねえから、使へるよ。おい、うまくいつたら、
アイデア料これだけだぜ」
と両手をひろげてみせた。

三島由紀夫「贋作東京二十不孝――井原西鶴」より


393 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/10(月) 11:53:36.21 ID:UWtGU0Db.net
息子は悪友からきいた手順を呑み込み、父親に或る日こつそり、
「おやぢさんの体の具合が悪くなつてから、お継母さんが俺に色気を出して困るんだよ」
「そんなばかなことがあるか」
「嘘だと思つたら、あしたの朝、出かけるふりをして、生垣からのぞいてごらん」
朝、庭の柿を実も色づいて、ちやうどもぎ時だと息子は木の下へゆき、継母も庭へ出てくると、息子は、
頚筋背中に急に虫が入つたふりをして、
「お継母さん、早くとつてくれよ」
と呼べば、継母も何気なく、シャツの袖口から手をさし入れ、しばらく探して、
「見つからないわ。でも心配だから、裸になつてごらん」
とシャツを脱がせ、ズボンの中へ落ちたかと探るところを、遠くから見てゐた父親は、やつぱりさうだと
怒りに狂ひ、継母の言ひ訳もきかず、その日のうちに離婚の手続き、継母は泣く泣く家を追ひ出され、
その後数ヶ月で父親も死去、財産を一人占めにして北叟笑(ほくそえ)んだ一人息子は、相続税の
巨額に大びつくり、俺より上手は税務署だと、カブトを脱いだといふことだ。

三島由紀夫「贋作東京二十不孝――井原西鶴」より



394 :346:2012/10/22(月) 19:31:04.68 ID:5WznadI9.net
q

395 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/10/24(水) 18:52:03.53 ID:kq//jvpU.net
多くの人が漫然と思い込んでいる
 真理・真実・現実・事実・史実は一つだけ
 怒り・憎悪・悲しみは自然な感情
 戦争・テロ・犯罪・虐め・差別は無くならない
 躾に体罰は必要
 学校を何度変わっても虐められるのは、虐められる側に原因がある証拠
 死刑を廃止すると殺人が増える
などの論理的間違いを解説ちう m9(`・ω・)ビシ
義務教育では教えない 感情自己責任論

396 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/11/22(木) 12:50:30.25 ID:B7ukZecS.net
マドリッドの冬はかなり寒い。ヨーロッパのアフリカなどといふ蔑称のあるこの国も、冬の寒さだけは
ヨーロッパ並みである。
大晦日の晩には、群集は広場にあつまつて、寺院の鐘が、あらたまの年のはじめを告げるのを待ちうける。
手に手に葡萄の房をもち、町でも葡萄売りがたかだかと房をかかげて売つてゐる。さて、正十二時の鐘が
鳴りをはらぬうちに、葡萄をたべると、禍ひを免がれるのみか、新らしい年にきつといいことがあるといふので、
広場の群集がいつせいに葡萄を喰べはじめる姿は、まことに奇観である。鐘が鳴りをはると、知るも知らぬも
抱き合つて町の楽隊に合せて踊りだす。大つぴらな酔つぱらひの喧嘩も見られる。
ここの新年を迎へるけしきは、気候こそ寒いが、全く南国風で、スペイン女の肩掛のかげにのぞく黒い瞳も、
寒さをすつかり忘れさせてくれるのである。

三島由紀夫「マドリッドの大晦日」より

397 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/12/29(土) 00:21:18.89 ID:eHudhd/9.net
12 名前:pH7.74 :2012/12/27(木) 19:44:32.89 ID:flEAysJ6
なんJとか定型レスばかりの糞板だろwwwwまああと三日もすればこのゆとり低学歴どもも飽きるよ それまでの我慢

398 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/14(月) 23:10:44.50 ID:h0mgXOQd.net
ID:is5u+5Au 無能 なんJの恥曝し エセ東大生 ニート 引きこもり 2ch初心者 バカ 基地外 アニヲタ アフィヲタ 政治ヲタ お客さん クレーマー 童貞 コミュ障 池沼

399 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/15(火) 16:06:27.97 ID:iM9vwRRu.net
板違いだから落とそう(提案)

400 :萬ちゃ:2013/02/20(水) 14:21:47.88 ID:l8DW3vUN.net
センスとはデリカシーなり
http://www.youtube.com/watch?v=ctnRI7B4xSw

401 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/05/28(火) 09:18:48.17 ID:rf+6AdvR.net


402 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/07/28(日) NY:AN:NY.AN ID:o4DjQLLv.net


403 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/07/31(水) NY:AN:NY.AN ID:N6MvFmgx.net
伊丹市開票所。全く「折り目」のない似たような筆跡の票がどっさり。
http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/008/181/20/N000/000/010/137507060826713204060.JPG
http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/008/181/20/N000/000/010/137507056990413204367.JPG
http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/008/181/20/N000/000/010/137507059077613204439.JPG
http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/008/181/20/N000/000/010/137507062991513130082.JPG

名古屋市西区で無効票となるのを承知の上で投票・撮影し、開票立会。自分の無効票はみつからず。
http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/008/181/20/N000/000/010/137521805122813204405_201307211916000.jpg

伊丹市の投票用紙。回数と執行年の記載なし。こんなものを使ってもいいのか?
古い用紙を隠しておいて使いまわしできることになってしまう。
PP合成紙なら経時変化を防げるから採用している?
http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/008/181/20/N000/000/010/137513421341013116774.png

7.21不正選挙:坂出市の投票用紙 回数と年次の記載なし
http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/008/181/20/N000/000/010/137523344715913120867.JPG
http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/008/181/20/N000/000/010/137523348128913120790.JPG

あるソースによる近所の人の話によると
「この野郎!早く不正選挙の証拠を取ったビデオを渡せよ!」という怒鳴り声の後に、
人が壁に叩きつけられる様な音がし、その後「この野郎!早くしないと殺すぞ!」
という怒鳴り声がしたという。そして、この近所の人が最後に聞いた叫び声は、
7階の手すりにぶら下がっていた男が「あの選挙は不正選挙だった〜!」
と一言叫んだ後、地面に落ちて行ったという。
http://reptilianisreal.blogspot.jp/2013/07/blog-post_29.html

404 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/11/04(月) 10:21:34.06 ID:P0XWGqNv.net
テスト

405 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/11/13(水) 14:24:41.71 ID:1Gb04Tib.net
ズバリ二丁目

406 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/12/17(火) 11:33:03.72 ID:BOG+WGDa.net
>大阪府三島郡島本町の小学校や中学校は、暴力イジメ学校や。
島本町の学校でいじめ・暴力・脅迫・恐喝などを受け続けて廃人同様になってしもうた僕が言うんやから、
まちがいないで。僕のほかにも、イジメが原因で精神病になったりひきこもりになったりした子が何人もおる。
教師も校長も、暴力やいじめがあっても見て見ぬフリ。イジメに加担する教師すらおった。
誰かがイジメを苦にして自殺しても、「本校にイジメはなかった」と言うて逃げるんやろうなあ。
島本町の学校の関係者は、僕を捜し出して口封じをするな

>島本町って町は、暴力といじめの町なんだな

子供の時に受けた酷いイジメの体験は、一生癒えない後遺症になるなあ

407 :名無しさん@お腹いっぱい。:2014/01/18(土) 12:02:38.12 ID:SyBgTuma.net
http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/psycho/1314005547/121
  ↑  ↑   ↑  ↑   ↑  ↑

408 :名無しさん@お腹いっぱい。:2014/05/02(金) 12:58:36.35 ID:ldqUkusa.net
と、小悪性の書いた詩に、童貞の>>408がの賜っていますwwww

409 :名無しさん@お腹いっぱい。:2014/05/04(日) 21:11:47.63 ID:uJH5j2Rr.net
ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。
ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。
ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。
ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。
ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。
ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。ひんがら目気色悪すぎこっち見んな死ね。

410 :島本町で凄惨なイジメを受けて廃人になった方へ:2014/09/13(土) 16:57:44.17 ID:b8NRLpxs.net
>大阪府三島郡島本町の小学校や中学校は、暴力イジメ学校や。
島本町の学校でいじめ・暴力・脅迫・恐喝などを受け続けて廃人になってしもうた僕が言うんやから、
まちがいないで。僕のほかにも、イジメが原因で精神病になったりひきこもりになったりした子が何人もおる。
教師も校長も、暴力やいじめがあっても見て見ぬフリ。イジメに加担する教師すらおった。
誰かがイジメを苦にして自殺しても、「本校にイジメはなかった」と言うて逃げるんやろうなあ。
島本町の学校の関係者は、僕を捜し出して口封じをするな。

>島本町って町は暴力とイジメと口裏合わせと口封じと泣き寝入りの町なんだなあ

子供の時に受けた酷いイジメの体験は、一生癒えない深い傷になる
暴力とイジメの町に巣食うヤクザ・チンピラ・ゴロツキ・不良・ いじめっ子・殺人鬼・ダニ・
ノミ・シラミなどを監視して非難するのは暮らしやすい町を作るのに必要だ

411 : 【東電 61.0 %】 :2014/11/05(水) 03:38:45.30 ID:alySNnaZ.net
>>410
ふーん、相変わらず下らない無差別大量絨毯爆撃カキコしてるんだね。元気でなによりだ。
話は変わるけど、


神戸市の東、芦屋西宮の知的障害者施設で未成年利用者に性的な行為をして淫行条例で逮捕された三田谷学園元職員の堂垣直人(西宮市老松町)は、結局どういう罪になったの?
被害者家族のケアを芦屋市役所と兵庫県警はちゃんとやったのか?
差別や虐待は環境を選べない子供には関係ない。

http://www.youtube.com/watch?v=JxMzW3ZlV4g&sns=em



まあ、こっちに座れよ。薩摩白波のヤクルト割りでも奢るよ。一杯呑んで落ち着くんだ。

412 :名無しさん@お腹いっぱい。:2014/11/24(月) 18:33:26.72 ID:qoyamk54.net
三島由紀夫の男性同性愛をうたった詩歌はないのかナ?

たとえば、少年時代の作品で。

413 :名無しさん@お腹いっぱい。:2014/12/19(金) 01:02:29.17 ID:RIzYsdwN.net
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
    /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::://ヽ:::::::::::::::|
    l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::// ヽ::::::::::::::l
    l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:::「'ヽ::::::::::://   ヽ:::::::::::|
    |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ノl:::ノ l:::::::/      ヽ::::::::|
   ノ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ ゙゙  ノ:::/ ,,;;;;;;,,    ,,,,ヽ:::::l
   ):::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/    ノ/ __,'''i: ('''__):::l  
  )::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/         ̄ ̄ン:. :「 ̄`ヾ   
 1:::::::::::::::::::::::「 `┤l:::::::::::::::::l          ̄   ,  ヽ ̄ l   
  `l:::::::::::::::::::::ヽ  :l li:::::::::::::/        ヽ  /´   `l  |
  ヽ::::::::::::::::::::::\_」 lヽ::::/         .l  !:-●,__ ノ  /      
  ノ:::::::::::::::::::::::::::ノ | l `゙゙           i ,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,  /ヽ       
,/ ヽ::::::::::::::::::::::(  l l::::::::..         /.:''/´ ̄_ソ  /  `ヽ
     ヽ:::::::::::::::ヽ | l:::::::::::...      /::// ̄ ̄_ソ  /    \   ヴッ!!
        ヽ:::::::\| l::::::::::::::::...    / :::.ゝ` ̄ ̄/ /       ヽ
           ヽ:::l l:::::::::::::::::::..      ̄ ̄;;'' /         ヽ
              l l;;;;;;:::::::::::::::.....;;;;............;;;;;;''ノ            l
              l l '''''''''''''''''''''''''''''''''''''' ̄l |             |

http://www.youtube.com/watch?v=z2qK2lhk9O0

414 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/01/20(火) 02:28:02.85 ID:piubbwQk.net
モバイル板のアイドル草プで〜す。
http://sngk.net/5aaC8w/img1
このルーターはモックアップで〜す。
http://i.imgur.com/trUI3tS.jpg
http://i.imgur.com/Dxq7MLD.jpg
http://i.imgur.com/eoaYkoQ.jpg
WiMAXとぽんきちと原作者が大好物デース。
でもWiMAX2+はキライデース。
http://i.imgur.com/ss6PtBJ.jpg

415 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/02/03(火) 23:04:13.85 ID:/VQhF//k.net
☆☆☆☆☆
☆ 自民党、グッジョブですわ。 ☆
http://www.soumu.go.jp/senkyo/kokumin_touhyou/index.html

☆ 日本国民の皆様方、2016年7月の『第24回 参議院選挙』で、改憲の参議院議員が
3分の2以上を超えると日本国憲法の改正です。皆様方、必ず投票に自ら足を運んでください。
私たちの日本国憲法を絶対に改正しましょう。☆

416 :靖国参拝、皇族、国旗国歌、神社神道を異常に嫌うカルト:2015/02/04(水) 23:01:34.22 ID:eD877BJ6.net
★マインドコントロールの手法★

・沢山の人が偏った意見を一貫して支持する
 偏った意見でも、集団の中でその意見が信じられていれば、自分の考え方は間違っているのか、等と思わせる手法

・不利な質問をさせなくしたり、不利な質問には答えない、スルーする
 誰にも質問や反論をさせないことにより、誰もが皆、疑いなど無いんだと信じ込ませる手法


偏った思想や考え方に染まっていたり、常識が通じない人間は、頭が悪いフリをしているカルト工作員の可能性が高い


10人に一人はカルトか外国人

「ガスライティング」で検索を!

....

417 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/02/12(木) 11:57:13.67 ID:Xuwy/AnU.net
あなたもネットで告発しませんか?

ビッ苦カメラ札幌店 佐藤伸弦 暴行事件

418 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/03/05(木) 07:02:20.21 ID:3TcnO1G+.net
http://asdlkj43.blog.fc2.com/

419 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/03/06(金) 13:29:24.98 ID:XgT61dIH.net
http://jbbs.shitaraba.net/sports/42269/

420 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/04/17(金) 01:08:34.01 ID:Sij4sgLP.net
ぶりっちょ

421 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/08(水) 04:36:03.16 ID:DxThhPk5.net
【原発問題】大江健三郎さん「原発再稼働ノン」 パリで日本政府批判
http://uni.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1331959620/l50

5:名無しさん@12周年:2012/03/17(土) 13:48:13.27
おフランスの原発は「キレイな原発」。

7:名無しさん@12周年:2012/03/17(土) 13:48:49.88
左翼や在日って、「取り巻き」か「外人」にしか話さないよな?
一般の日本国民相手には、「説得」せずに「規制」しようとする。

「論理で説得できない」から、「強権で黙らせよう」とする卑怯者たち!

422 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/07/15(水) 11:48:11.71 ID:GSz8tXK7.net
長谷川櫂(長谷川隆喜)という変態田舎者オカマが
如何に陰険卑劣極まりない無知無教養な忘恩の徒であるかは、
『高橋睦郎の友達の作り方』(マガジンハウス・刊)の349ページ以下に語られている。
オカマの長谷川櫂は、新宿二丁目のゲイバーのママを介して詩人の高橋睦郎氏に、
あざとく巧みに取り入り、処女句集の駄句を一字一句ずつ添削してもらって、題名までつけてもらい、
出版させて貰っておきながら、おぞましくも嫌らしい忘恩ぶりをさらけ出し、意図的に高橋睦郎氏の名を謝辞から外して
恥じないありさま。
この陋劣下等な「人格」の欠落には、さすがの橋氏も長谷川櫂を「俳句とは無縁な人」と断言している。
東海大学の学生や関係者の皆さんも、是非とも本書に図書館ででも目を通してみて、
長谷川チョンの嫌らしさ、下劣卑賤さの実態を知るよう心がけて頂きたいものだ。
すでに長谷川櫂は、東海大学当局からも厄介者扱いされていると聞く。
長谷川を早々に追い出されるよう切に望んで已まぬ次第である。

423 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/06(木) 14:48:16.55 ID:68fdD5e7.net
長谷川櫂=長谷川隆喜という変態オカマは、昔から
吉田正とかいう老人に色目をつかったりしていたそうだ。

そのくせ蔭では、吉田正の悪口を叩いたりして、徹底して人格低劣、陰険卑劣な
クズのクズ、下の下以下の存在だったらしい。

年を取っても、やはりその嫌らしい変態根性は少しも変化しないとのこと。
早急にこの長谷川チョンを誰か叩き殺してやってくれ!

424 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/14(金) 10:44:03.96 ID:NmbJ2beg.net
変態オカマの田舎者、長谷川櫂が相変わらず
東海大学においても無知無教養の限りをさらけ出しているという。
男性教員や男子学生に色目をつかったり、ロッカールームで着替える場面を
盗撮したり、男性と見ると言い寄って股間に触れようとしたり、等々と数多の
変質者行為を働いているばかりではない。
あとで必ず陰口を叩いてまわり、カネをせびろうとしたり、陰険極まりない所業に
及んでいるという。
こんな山出しの老オカマ、去勢豚は、即刻に屠殺してしまうべきだろう!

425 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/17(月) 09:41:17.55 ID:AZIeY7Vl.net
長谷川櫂とかいう老オカマなら、今でも妻子に隠れてハッテンバへ通っては

男性の性器を覗き見したり、東海大学の更衣室で男子学生を隠し撮りしたり、

男性と見ると股間に手を触れたりしようと試みたりしているようだ。

こんな変態オカマの田舎者を放置しておいては絶対にいけない!

即刻、精神病院に収監して、死ぬまで出すナ!!!

426 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/20(木) 16:04:46.43 ID:saudQGoh.net
長谷川櫂とやらいう変態山出しオカマは、
今では高橋睦郎氏の陰口を公然と叩いているという。
「あんな老オカマ婆さんの世話には全くなっていない」
だとか、
「俳句は自分のほうが遙かに上手い」だ等と
ほざいているらしい。
徹底して恩知らずのゲス、女の腐ったのより嫌らしい下の下だ。
全く!

427 :『佳子様』の『秘密』を『暴露』:2015/08/20(木) 21:44:46.85 ID:FhODhm8R.net
.
Σ(Д・;)"プチエンジェル事件"!(小学生売春事件)
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
プチエンジェル事件に隠された日本の闇を暴露する!

■実は、『女性皇族』の『男遊び』と、
 女性皇族がおこなったハニートラップだった!!

■その『男遊び』と『トラップ』を誤魔化す為の、
『プチエンジェル事件』が真相だったのだ!!

■闇に包まれた真相を、私が『暴露』する!!

※知る覚悟はできていますか?
下記を『Google』か『Yahoo』で検索して下さい。

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検索⇒『佳子様 真子さま kare氏』
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※上記で検索しますと、1ページ目の5番目以内に、

〔懇約】秋條宮家の佳子様と・・・・・・・
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑が表示されます。

※世の中、知らない方が良い事もあるんです・・・。
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http://matome.naver.jp/odai/2143960880970769001
.

428 : ◆Ww2pZaKGaW0T :2015/08/21(金) 21:50:04.32 ID:UPupfYAX.net
最初に無があった
無は有を生んだ
これが全ての真理

429 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/23(日) 15:29:55.33 ID:Di8TqNKr.net
長谷川櫂とか長谷川隆喜とかいう同性愛者って
本当に最低最悪のキチガイなんですね。

一日も早く叩き殺されてしまえばイイのに!!
自殺する勇気も気概も無い臆病者の山出しオカマらしいから!

430 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/03(木) 11:12:41.26 ID:uSieWLKy.net
長谷川櫂という変態の山出しオカマは、今でも家族に隠れて

ハッテンバへ忍び通っては、トイレや映画館で他の男性の性器を

覗き見ているという話だ。

東海大学においても、男性教員や男子学生にセクハラまがいの痴漢行為を

繰り返しているとかいうぞ。


精神病院の独房に長谷川チョンめを監禁してしまえ!

431 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/11(金) 09:28:31.11 ID:uCWbMS2S.net
長谷川櫂とやらいう変態山出しオカマは、近頃では
散々お世話になった高橋睦郎氏の陰口や誹謗中傷を
あちこちで吹聴して回っているという。
こんな品性陋劣な変質者は、当然ながら東海大学でも
問題を起こし、学校側は色々と手を焼いているとか。
家族からも、嫌らしい異常者として軽蔑と嫌悪の的になっている
との専らの噂である。

432 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/14(月) 09:23:29.48 ID:ySXYX63+.net
rua de santa catarina

433 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/19(土) 16:07:29.89 ID:06BGVV3b.net
長谷川櫂とやらいう変態山出しオカマが、
NPO法人を設立しては、また売名行為に走ろう
としていやがるぞ。
こんな嫌らしく醜い根性の田舎者ごときが、野心をいだいても
なんの役にも立つはずが無い!
他の人々は、長谷川櫂(長谷川隆喜)という下種な変質者に利用されるだけだ。

434 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/10/23(金) 10:47:50.73 ID:5i+o1jBp.net
長谷川櫂とやらいう変態山出しオカマめは

自分は三島由紀夫より詩も俳句も上手い

だ等と増長しているバカでしか無いぞ。

田舎臭い俳句しか詠めぬ熊本県下のド田舎チョン部落出身者の分際で

笑止千万だナ!!!

435 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/10/24(土) 22:29:30.52 ID:h07wbLFr.net
長谷川櫂とやらいう変態山出しオカマは、妻子に隠れてゲイの発展場に通い、
とうてい口に出来ない淫猥下劣な行為を繰り返しているとか。
そのせいで、家族からは見放され、軽蔑嫌悪されて逃げ出され、
東海大学においても、男性教員や男子学生に対する淫らなセクハラ行為を続けたため
解雇を言い渡されたとのこと。

こんな変質者の長谷川チョンなる熊本県下のド田舎チョン部落出身者を、
我が国でのさばらせておいては絶対によくない!

早急に抹殺して、穢らわしい骸は半島へ送還してしまうように!

詳しくは「長谷川隆喜」で検索を


忘恩の長谷川櫂とやらいう変態山出しは、今では散々お世話になった高橋睦郎氏の陰口を
あちこちで吹聴して回っているというぞ!
かったい禿げの長谷川チョンを殺処分にしろ!

436 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/11/13(金) 01:58:42.12 ID:/gOmY2M7.net
横井とかいう女が大好きな不細工フケメン低学歴はさっさと死ね

437 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/11/14(土) 18:13:36.87 ID:A083HCpj.net
会社の給料だけにたよる不安な生活から抜け出せるでしょう。
http://stampfactory.net

438 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/11/20(金) 01:47:43.59 ID:W0NBwhZL.net
キターーー(゜∀゜)ーーーー!!!!!
セフレvsセフレ仁義なき女戦ファイ!!!!!
http://www.vacances-osaka.net/s/index.php/module/Store/action/GirlInfo/User_Id/8950?kou

439 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/11/20(金) 23:07:14.16 ID:pMgqY73I.net
長谷川櫂(長谷川隆喜)とやらいう変態山出しオカマが、
比類無き無智無教養にして品性陋劣、愚鈍無比、卑劣卑怯極まりない
クズでしかない、という事実には、まともな人間であれば誰しも気付いている筈。
醜い猜疑心と劣等感と嫉妬心の塊で、心組み飽くまでも卑しく、
外見が醜悪なばかりでは無く、芯の心まで腐れ果てた下劣下等な生き物でしかないという事にも。
さらに、醜行限りなく、田舎者のオカマにありがちな嫌らしい淫猥行為を不潔な発展場で繰り広げて已まず、
東海大学においても、男性教員や男子学生らに対して猥褻なセクハラ行為を働いているとか。
熊本県下のド田舎××部落出身者ゆえ、同情の余地があるとはいえ、藤沢界隈の住民たちからも蛇蝎の如く忌み嫌われて居る
というから、憐れみをかけるも愚か、というものだ!
駄文を書いては、赤恥をかき散らし、なおかつその事に気付きすらしない低能ぶり!
しょせん醜く歪んだ根性からは、醜く歪んだ文章しか生み出せず、後々にまで恥を留めるであろう!
オカマでありながら、相手を騙して結婚しても、肉親を不幸にさせる結果にしかならず、
妻子に隠れて、いかがわしい場所に忍び通い、穢行を擅にしているとか。

長谷川櫂という下の下、女の腐ったのより嫌らしい化け物を、これ以上のさばらせておくのは断じてよくない!

かかる忌まわしい奇形児を生かしておいては、我が国の恥辱となるであろう!!

440 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/11/21(土) 18:50:40.03 ID:Flsvaxh8.net
長谷川櫂(長谷川隆喜)という変態山出しオカマが、
品性陋劣にして無智無教養な下等きわまりない田舎者だ
という事実は、よく承知しています。
古典の知識は絶無に等しく、そのくせ知ったかぶりして駄文を書き散らしている
愚劣無比で憐れむ可き恥知らずだという事も、誰しも先刻承知でありましょう。
性格異常者にして変態性欲者の××部落民だということも、嫌らしい淫猥行為に耽るオカマだ
ということも、東海大学の関係者や親類縁者、藤沢界隈の近隣住民に限らず、万人がよくご存じかと思います。
おぞましい心根で、他人を利用しながら生きて来た過去も、己れより遙かに勝れた人物を陰険極まりない手段を弄して
陥れて来た事実も、いろいろと聞き及んでは居ります。

まことに女の腐ったのより醜悪にして嫌らしい長谷川櫂という化け物を、これ以上のさばらせておいては決してよくない事も
誰しも周知の事実です。
こんな忌まわしい奇形児、呪わしい化け物を生かしておくのは犯罪行為に当たりましょう!

即刻この去勢豚を血祭りに上げて、息の根を止めてしまいましょう!

満場一致で異存なし!!!
という結果が出ましたぞ!

441 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/11/23(月) 12:30:07.03 ID:Jyex83+H.net
田舎者の俳人・長谷川櫂とやらいう変態山出しオカマは
「ベン・ハー」という映画のタイトルすら知らなかったぞ。
この熊本県下のド田舎チョン部落出身者は、オカマの分際で
相手を騙して結婚した後も、家族に隠れてゲイの発展場に忍び通い、
男性と見るや誰彼かまわず言い寄っては悉く峻拒され(醜怪な容貌だから当然だが)、
仕方なく公衆便所で他人の男性器を覗き見たり、映画館などで男性客の股間に手出ししたり、
とうてい口に出来無い淫猥下劣な所業に走っていたという。
東海大学においても、男性教員や男子学生らに忌まわしいセクハラ行為を働き続けて、物議を醸しているとか。
こんな身の程知らずの品性陋劣にして無智無教養、臆病無比で陰険卑劣、傲岸不遜な怪物に、
我が国を穢されたママにしておいては断じてよくない!
早速このグロテスク極まりない化け物を半島へ強制送還させるか、血祭りに上げて処分してしまおう!!!

長谷川チョンに就いて詳しくは、「長谷川隆喜」で検索を!

参考までに。

442 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/11/23(月) 21:06:13.16 ID:Jyex83+H.net
俳人の長谷川櫂(長谷川隆喜)が、女の悪口ばかり言っている
と思ったら、男好きのオカマだった事実が判明した!
ところが、相手を騙して結婚し、しかもその後も家族に隠れて
ゲイの発展場へ忍び通い、男性と見るや誰彼かまわず言い寄っては
悉く峻拒されたり(醜貌だから当然だが)、公衆便所で他人の男性器を覗き見たり
東海大学においても、男性教員や男子学生に対して到底口に出来無い淫猥下劣な所業を働いたり
して、物議を醸しているという。
もともと性格異常者にして変態性欲者の熊本県下のド田舎チョン部落出身者だそうだが、
無智無教養にして陰険陋劣、臆病無比で人格下劣、嫉妬心と猜疑心の塊でしかない下等なクズでしかない!
こんなグロテスク極まりない化け物、変質者の奇形児にデカイ面をさせておいては断じてよくない!
身の程知らずにのぼせ上がった傲岸不遜なこの怪物を、これ以上生かしておいてはイケナイ!!!

念のため

443 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/11/28(土) 15:43:18.86 ID:HZVOKFS+.net
8 :名無しさん@お腹いっぱい。

今日のランチはホテルだったんだけど、
すぐ隣りの席に米良美一が来てやがったゼッ!!!

醜い小人の米良に

長身でイケメンの筋肉美ビルダーの俺、

とんだ好対照だったのサッ!!!!!!!!!

三島由紀夫の『春の雪』にも、こんな対蹠的な侯爵の息子どうしの場面があったよナッ!


閑話休題
もしも、アイツが言い寄って来やがったら、
「俺、真珠は入れて無えぞ」と答えて、峻拒してやるところだったのサッ!!!!



分かったナッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!

444 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/12/04(金) 19:28:15.67 ID:7oyCt2bs.net
もしも「三島由紀夫が存命ならば、絶賛したであろう」
と謳われる評判の書物がある。
それは、京都大学学術出版会から刊行されている傑作
『西洋古典学事典』
なる大作だ。
高橋睦郎その他の諸氏も、異口同音に称讃しているぞ。

http://www.kyoto-up.or.jp/book.php?isbn=9784876989256


なお、上記の書物が、電子書籍版
『西洋古典学事典アプリ』
として読める。
ヴァージョン・アップされていて、しかも廉価で携帯至便と来ているぞ。

http://www.kyoto-up.or.jp/book.php?id=1993&lang=jp

参考までに

445 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/12/07(月) 23:18:13.43 ID:qfd3ktlZ.net
http://tamae.2ch.net/test/read.cgi/ana/1418991221/l50

羽鳥慎一アナ


http://kanae.2ch.net/test/read.cgi/gaysaloon/1438711939/

フジテレビの男性アナウンサー



http://kanae.2ch.net/test/read.cgi/gaysaloon/1447888401/

男性アナウンサー


【スパニュー】榎並大二郎【褐色の弾丸】
http://kanae.2ch.net/test/read.cgi/ana/1418977095/

446 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/12/12(土) 15:07:27.90 ID:cHdBZGwN.net
http://tamae.2ch.net/test/read.cgi/ana/1418977095/l50

榎並大二郎

http://tamae.2ch.net/test/read.cgi/ana/1418991221/l50

羽鳥慎一アナ

http://tamae.2ch.net/test/read.cgi/gaysaloon/1438711939/l50
フジテレビの男性アナウンサー


http://tamae.2ch.net/test/read.cgi/gaysaloon/1447888401/l50
男性アナウンサー

447 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/12/13(日) 11:44:43.84 ID:7XRVCsAY.net
こんな書き込みがあった。こちらのほうもオススメします。
---------------------------------------
★プルースト、ワイルド、ジッド、ヴェルレーヌ、コクトー、三島由紀夫らに限らず、


アレクサンドロス大王

ユーリウス・カエサル

マールクス・アントーニウス、

フリードリヒ大王、等々。

歴史上の名だたる英雄は、誰も彼も男色好きだったよ。

そして、
レオナルド・ダ・ヴィンチ
ミケランジェロ
シェイクスピア、etc.の天才たちも揃って男性が好きだった!

作品社より刊行されている名作『図説・ホモセクシャルの世界史』を参照。

http://www.sakuhinsha.com/history/20793.html


必読書ですよ!
----------------------------------
参考までに。

448 : ◆S/YLxH/p.c :2015/12/13(日) 23:17:15.97 ID:Nr9LECkC.net
最初に無があった
無は有を生んだ
これが全ての真理

449 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/12/16(水) 16:05:13.16 ID:hTCD3CK2.net
11 名無しさん@お腹いっぱい。

トミーより榎並大二郎のほうがカワイイ身体をしてるゼッ!!!
これだけは間違いネエのサッ!!!!!

http://tamae.2ch.net/test/read.cgi/ana/1418977095/l50
榎並大二郎

http://tamae.2ch.net/test/read.cgi/ana/1418991221/l50
羽鳥慎一アナ

http://tamae.2ch.net/test/read.cgi/gaysaloon/1438711939/l50
フジテレビの男性アナウンサー


http://tamae.2ch.net/test/read.cgi/gaysaloon/1447888401/l50
男性アナウンサー


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
めざまし勢下落 榎並大二郎ランクイン

http://www.oricon.co.jp/special/48511/
やはり、榎並大二郎アナの裸は人気があるゼッ !
だけど、どうして榎並が第一位ぢや無えんだろう?



450 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/12/23(水) 17:18:10.55 ID:R1ieJSOg.net
16 名前:陽気な名無しさん :

榎並大二郎も、よくこういう表情で俺の雄汁を舐め取りやがるゼッ!!!!!


http://vt.tumblr.com/tumblr_nv7odnP2b21sp4ir9_480.mp4#_=_


もっと俺の亀頭は雁高で形も良くってデッカイけどナッ!!!!!!!!!!!
「まるで桃みたいですネ!」
とアイツが言いやがる位だからサッ!!!!!!!!!!!!!!!!

言っとくけど、俺の場合は6連発の最終回だって
もっと激しく飛ぶゼッ!!!!
1発目だったら、相手の顔面全体がパック出来るほど
大量にドッピュ〜ン!、ドッピュ〜ン!!、ドッピュ〜ン!!!
と勢いよく射精するのサッ!!!!!!!!!



分かったナッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!





451 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/12/27(日) 22:18:12.77 ID:OtsbMCmj.net
三島の詩に戻って下さい。

452 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/01/03(日) 13:25:28.44 ID:pdG3OtC6.net
「詩を書く少年」

453 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

454 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/06/07(火) 12:36:22.75 ID:BuDKaLGN.net
【アベノショック > リーマンショック】  マイト★レーヤは崩壊が起こり、それは日本から始まると言われました。  【ゲスウヨ、貢米ポチ、理研は命乞いしろ】



1ドル=90円台すぐそこ…止まらぬ円高に日銀打つ手なし 日刊ゲンダイWeb引用    山本太郎総理まであと一歩?



日本から始まる世界的株式市場の大暴落
日本がアメリカ国債の25%を引き出すと世界経済が破綻し、マイト★レーヤは出現するでしょう。彼は「匿名」で働いております。
非常に間もなくマイト★レーヤを、テレビで見るでしょう。マイト★レーヤは毎日テレビに現れ、質問に答えるでしょう。
彼は日本人ではありませんが、日本語で話すでしょう。彼は、非常に物静かなやり方で話します。彼の最初の控えめな態度に混乱してはなりません。


最初になくなるのは世界の株式市場でしょう。
差し迫る株式市場の暴落は、他の人々が飢えている間にお金を儲けることの結果です。かれらは自分の財産を隠し、犯罪的雰囲気さえも創出しています。


日本国民はどう対処すればいいのか。
「株式市場崩壊後に出現する新しい政権は国民の意志を反映し、国民の側に立つものであろう。」民衆の指導者は職業的政治家ではない人々から見つかるのです。
新しい政権は民意を反映し、先に食物と住宅、次に健康と教育、最後に防衛とするでしょう。今日の製薬産業によって「盗まれている」薬草も保護されるでしょう。


マイト★レーヤは次のように勧告される。
「国民の意志を裏切ることは危険な過程を始動させる。極端な場合、自殺や殺人にまでつながる。」


アメリカによる他国の虐待に反対の声を上げなければなりません。
世界平和の脅威は、イスラエル、イラン、アメリカです。イスラエルの役割は跪いて、パレスチナに許しを請うことです。
彼らは今世紀(21世紀)をこの帝国が出来上がるアメリカの世紀と呼ぶ。しかし、そうはならないでしょう。
彼らが世界中に‘民主的’制度を確立したいという衝動(1種類の政治形態が世界中を支配する)をコントロールするのは、マイト★レーヤの任務です。

455 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/07/26(火) 14:19:57.00 ID:qGJKcZpa.net
エセ左翼の目的は、わざと突っ込みどころが多い主張をすることで自分たちへ注意を向けさせ、
カルトへ向かう非難の矛先を逸らすこと。
国益に反することを言ったり、主張が食い違うもの同士の対立を煽ろうとするので放置し難いが、
主義思想についての洗脳を受けているわけではなく、フリをしているだけなので、
言い負かされてもダメージを負った様子もなく、論点をすり替えられるかスルーされる。
まともに相手をしてはならない。

サヨに対する危機意識が強すぎると、普段は常識的に振舞っている
(又は、サヨから不当に叩かれている)政治家などがズレたことをやろうとした時でも、
許容したり擁護してしまいがちになるので注意が必要。

456 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/08/05(金) 08:27:24.80 ID:v234EALw.net
悪いひとたちがやって来て
みんなを殺した

理由なんて簡単さ
そこに弱いひとたちがいたから

女達は犯され
老人と子供は燃やされた

悪いひとたちはその土地に
家を建てて子供を生んだ

そして街ができ
悪いひとたちの子孫は増え続けた


朝鮮進駐軍 関東大震災 日本人虐殺
https://goo.gl/vX3ERl

457 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/12/13(火) 01:27:00.61 ID:CNaqAuQe.net
百田尚樹 @hyakutanaoki
俵 万智氏の事務所は「新宿区西早稲田2−3−18 」なんですね。
初めて知りました。ここは「在日外国人の人権委員会」「在日韓国人問題研究所 」
「戦時性暴力問題連絡協議会」など、20以上の反日市民団体がある場所です。
ということは、俵氏は「日本しね」を積極的に推したのかもしれませんね。


俵 万智‏ @tawara_machi 12月10日
「死ね」が、いい言葉だなんて私も思わない。
でも、その毒が、ハチの一刺しのように効いて、待機児童問題の深刻さを投げかけた。
世の中を動かした。そこには言葉の力がありました。お母さんが、こんな言葉を遣わ
なくていい社会になってほしいし、日本という国も日本語も、心から愛しています。

https://twitter.com/tawara_machi/status/807392862203584512?lang=ja

458 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/12/17(土) 18:24:32.69 ID:IDim1I2Z.net
https://youtu.be/8fPmkq1CkCU

https://youtu.be/PR6r40GbIfk

459 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/12/19(月) 15:56:09.33 ID:Zuj1tN6X.net
https://youtu.be/8fPmkq1CkCU

https://youtu.be/PR6r40GbIfk

460 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/12/21(水) 11:03:22.44 ID:iUQTCOLA.net
856 :名無しゲノムのクローンさん:04/03/08 00:54
http://www.cdb.riken.jp/jp/0304orange/04/news040304_rich_travel_more.html

20代チームリーダー上田泰己さん、とりあえずPNASです。

860 :名無しゲノムのクローンさん:04/03/08 11:07
ナゴヤ大の助教授に、という要請を蹴って理研に来たらしい>ウエダさん

863 :名無しゲノムのクローンさん:04/03/08 17:20
>860
また宣伝ですか?
本人かその関係者が2chを宣伝の場にしてるらしい。

867 :名無しゲノムのクローンさん:04/03/08 19:51
パ゚ソコンと実験の両方をすんのがシステム
バイオロジーだしな。AA使えるCNS
ホルダーは漏れくらい。
            ∧_∧
     ∧_∧  (´<_`  ) さすが兄者。
     ( ´_ゝ`) /   ⌒i  
    /   / ̄ ̄ ̄ ̄| 
    /    // ̄ ̄ ̄ ̄|| 
  __(__ニつ/    σ   /.|____
      \イ       ,/ u ⊃ 
       ⊂ニニニニニニ⊃

869 :名無しゲノムのクローンさん:04/03/08 20:59
PNASの発表ですが、bioinfoのメーリングリスト
で自ら宣伝投稿したという事実はあります。

461 :sage:2016/12/22(木) 20:36:42.03 ID:LCoxUZtl.net
https://www.youtube.com/watch?v=7EekMD3GGHQ

https://www.youtube.com/watch?v=uH-WOOcNZ0s

https://www.youtube.com/watch?v=xHx5MbIGEoY

462 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/12/24(土) 19:16:30.45 ID:xb2Pq3Zr.net
https://youtu.be/7EekMD3GGHQ

https://youtu.be/uH-WOOcNZ0s

https://youtu.be/xHx5MbIGEoY

463 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/12/26(月) 13:48:58.69 ID:mc4SqJPI.net
https://youtu.be/7EekMD3GGHQ

https://youtu.be/uH-WOOcNZ0s

https://youtu.be/xHx5MbIGEoY

464 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/12/27(火) 12:36:22.40 ID:GP77cYTF.net
https://youtu.be/7EekMD3GGHQ

https://youtu.be/uH-WOOcNZ0s

https://youtu.be/xHx5MbIGEoY

465 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/12/28(水) 12:18:34.54 ID:gY5tIbQf.net
https://youtu.be/7EekMD3GGHQ

https://youtu.be/uH-WOOcNZ0s

https://youtu.be/xHx5MbIGEoY

466 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/12/29(木) 19:36:06.96 ID:oeQmbYle.net
https://youtu.be/7EekMD3GGHQ

https://youtu.be/uH-WOOcNZ0s

https://youtu.be/xHx5MbIGEoY

467 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/12/30(金) 14:41:37.22 ID:cF0JQ9z0.net
https://youtu.be/7EekMD3GGHQ

https://youtu.be/uH-WOOcNZ0s

https://youtu.be/xHx5MbIGEoY

468 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/01/02(月) 21:28:54.49 ID:y2rTfF+b.net
http://shironeko-taraba.boo.jp/test/read.cgi/jbbs/1483194517/2099-

469 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/01/06(金) 11:51:38.59 ID:IJo0QBOK.net
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470 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/01/20(金) 17:51:08.82 ID:ud5HQMRq.net
200 この頃流行の名無しの子 2015/11/19(木) 20:57:06.01 ID:6OnfbVs1
>>193
そうそう、「あの」クソカマキリだよ
ひきこもって毎日毎日ず〜〜と2ちゃんねるに張り付いて、見えない敵と戦ってる統合失調症。
おーい殿、お前の家のまわりでは大勢でお前の事を監視しているぞ〜〜www

ストーカー的言動1:「大勢でお前の事を監視しているぞ」

254 この頃流行の名無しの子 2015/11/21(土) 01:21:20.96 ID:KoQ122DC
>>253
だからお前が殿だろwww
みんな知ってるぞwお前の事見てるからなwwwwwwwww

ストーカー的言動2:「お前の事見てるからな」

265 この頃流行の名無しの子 New! 2015/11/21(土) 12:46:19.98 ID:z9hLUgpN
>>261
殿は渡邊さんのこと好きなんだろ?
いい加減こんなことやってないではっきり言った方がいいぞ

ストーカー的言動3:「渡邊さんのこと好きなんだろ」


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471 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/01/21(土) 10:44:10.05 ID:BWYIcVOH.net
https://youtu.be/quIHgwuF6r4

472 :resumi:2017/01/26(木) 20:05:19.10 ID:fRgNcFn0.net
https://goo.gl/7Z501e
これマジ!?
これから厳しいね。。

473 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/01/27(金) 14:02:39.21 ID:s+L7hXJJ.net
200 この頃流行の名無しの子 2015/11/19(木) 20:57:06.01 ID:6OnfbVs1
>>193
そうそう、「あの」クソカマキリだよ
ひきこもって毎日毎日ず〜〜と2ちゃんねるに張り付いて、見えない敵と戦ってる統合失調症。
おーい殿、お前の家のまわりでは大勢でお前の事を監視しているぞ〜〜www

ストーカー的言動1:「大勢でお前の事を監視しているぞ」

254 この頃流行の名無しの子 2015/11/21(土) 01:21:20.96 ID:KoQ122DC
>>253
だからお前が殿だろwww
みんな知ってるぞwお前の事見てるからなwwwwwwwww

ストーカー的言動2:「お前の事見てるからな」

265 この頃流行の名無しの子 New! 2015/11/21(土) 12:46:19.98 ID:z9hLUgpN
>>261
殿は渡邊さんのこと好きなんだろ?
いい加減こんなことやってないではっきり言った方がいいぞ

ストーカー的言動3:「渡邊さんのこと好きなんだろ」


キチガイ最終章!煽ってやらせて打つ!新 宿古 着屋発狂自滅方程式!
どんな餌にも飛び付くキチガイの浅ましさ♪ブタ箱とはよく言ったもの♪大爆笑

販売業者の名称  有限会社コー ルドターキー/DC BANK  代表取締役:渡邊弘宣
販売業者の住所  〒160-0022 東京都新宿区新宿3-12-11 石井ビル2F Phone:03-5269-3675

https://www.google.co.jp/?gws_rd=ssl#q=%EF%BC%A4%EF%BC%A3%E3%80%80%EF%BC%A2%EF%BC%A1%EF%BC%AE%EF%BC%AB+%E8%A9%95%E5%88%A4
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474 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/01/27(金) 16:44:24.02 ID:re4Cy6EE.net
https://youtu.be/quIHgwuF6r4

475 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/02/06(月) 00:51:21.31 ID:QhY0R2oS.net
hennayagisan1&#8207;@hennayagisan1 4 時間4 時間前
上田泰己氏  理研の税金無駄使い、954万円高級家具カッシーナ・イクスシーの指定購入も大問題 http://1000nichi.blog73.fc2.com/blog-entry-7696.html

476 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/02/06(月) 02:53:40.24 ID:5POrZzA7.net
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477 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/02/06(月) 22:14:47.45 ID:3YWMv2ZV.net
https://www.youtube.com/watch?v=quIHgwuF6r4&sns=em

478 :学術 ディジタル アーカイヴ@院教授:2017/02/07(火) 11:47:06.85 ID:Ir+P8a+T.net
ストルクス

479 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/02/08(水) 01:30:29.31 ID:59fM0/mz.net
【カッシーナ速報】理化学研究所からの開示文書が届きました
https://www.nantoka.com/~kei/diary/?20140530S1

平成23年02月25日入札公告「幹細胞研究開発棟2階交流スペース・ディスカッションルーム2用什器」
リンク先3、4ページ目

物品購入要求
起案年月日 2011年1月14日
依頼要求元 計算生命科学センター設立準備室 合成生物学研究グループ
納入場所 所在地 神戸 建物 幹細胞研究開発棟
使用者 上田 泰己
件名 幹細胞研究開発棟2階交流スペース及び居室用什器
業者 2100417 (株) カッシーナ・イクスシー
合計金額 4,872,000

480 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/02/08(水) 12:40:38.04 ID:9Yc9OCMF.net
https://www.youtube.com/watch?v=quIHgwuF6r4&sns=em

481 :学術 ディジタル アーカイヴ@院教授:2017/02/10(金) 13:56:19.07 ID:V8tJc8le.net
髭だけの詩の研究は。最高指導者歩層事務(ニュージム)フォンネムーン

482 :学術 ディジタル アーカイヴ@院教授 2chコンシェルジュ:2017/02/10(金) 13:58:23.30 ID:V8tJc8le.net
フハァンネ ムーンに 兵庫こうべへどうぞ。

483 :学自術デジタル アーカイブ:2017/02/10(金) 14:00:37.33 ID:V8tJc8le.net
乳保院そう寺務職。募集 アル売店。

484 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/02/10(金) 16:08:31.62 ID:OEEnAQCa.net
https://www.youtube.com/watch?v=quIHgwuF6r4&sns=em

485 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/02/25(土) 14:57:19.94 ID:Izo5myyx.net
https://youtu.be/85-XncAUZXc

486 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/03/03(金) 07:26:39.98 ID:+uJSOkUe.net
プレミア見れない
ブンデス見れない
CLEL見れない
音楽聞けねえちきしょう
テレビ見れねえちきしょう
同和のクズ共死ねクソ共がざまあみろ気違い共
ほれ気違い共もっともっとドア閉めろ通れ
それしか能のない能無し共がざまあみろ地獄に落ちろ
悔しいか、ざまあみろくたばれクソ同和
お前らの恐ろしさをもっと見せてみろ。そんなんじゃなんともねえぞ
袋とじ見たぞ
悔しいか、ざまあみろくたばれクソ同和
嫌がらせがエスカレートするのが楽しみでしょうがない
今それだけが楽しみだ
俺の生き甲斐藁
それだけ怒ってるってことだもんな藁

487 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/06/23(金) 05:32:16.82 ID:dMoOqt5r.net
「この、ハゲ〜〜〜」
「この、ハゲ〜〜〜」
「この、ハゲ〜〜〜」
「この、ハゲ〜〜〜」

488 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/06/23(金) 10:47:39.23 ID:/dV3jyKu.net
いるいるいるいるよね貝社員

489 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/11/24(金) 18:29:17.15 ID:PpPyJeSe.net
( ´∀`)/~~

490 :名無しさん@お腹いっぱい。:2017/12/20(水) 14:13:29.46 ID:SdCPepHY.net
無料で独自ドメインを多数取得&運用する方法
https://ryoma.space

491 :名無しさん@お腹いっぱい。:2018/01/23(火) 01:15:59.53 ID:BUVD56/G.net
人生はリベンジマッチ
https://youtu.be/BXanBVhXCBY

492 :名無しさん@お腹いっぱい。:2018/01/25(木) 01:34:45.39 ID:YIwAFC0V.net
やりすぎ防犯パトロール、特定人物を尾行監視 2009年3月19日19時7分配信 ツカサネット新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090319-00000026-tsuka-soci

この記事で問題になった通称やりすぎ防犯パトロールの問題ですが、これは創価学会と警察署が引き起こしていたようです

掻い摘んで説明すると

・創価学会は、町内会や老人会、PTA、商店会などの住民組織に関し、学会員が役員になるよう積極的に働きかける運動を
 90年代末から始めており、その結果、多くの住民組織で、役員が創価学会員であるという状況が生まれた

・防犯パトロールは地域の住民活動ですので、担い手は住民組織です
 しかも防犯活動に関する会議や協議会には、住民組織の代表として役員が出席する為
 防犯活動や防犯パトロールに対して、創価学会が間接的に影響力を行使できるようになった

・防犯パトロールは住民が行っている為、住民が不審者や要注意人物にでっち上げられ、トラブルになっていたのですが、
 創価学会はその緩さに目をつけて、住民組織を握っている状況を利用し、嫌がらせの対象者を不審者や要注意人物にでっち上げて
 防犯パトロールをしている住民らに尾行や監視、付き纏いをさせるようになった

・防犯パトロールは地元の警察署との緊密な連携によって行われる為、警察署の幹部を懐柔してしまえばし放題できますので
 創価学会は警察署幹部を懐柔して創価学会側に取り込んでしまい、不審者にでっち上げた住民への嫌がらせに加担させました

・主に当該警察署に勤務すると考えられる創価学会員の警察官を動かして、恐らく非番の日だと思いますが、職権自体がないにもかかわらず
 私服警官を偽装させて管轄内を歩いて回らせて、防犯協力をお願いしますと住民に協力を求めて回り、
 防犯とは名ばかりの、ただの嫌がらせ行為を住民らに行わせた(防犯協力と称して依頼して回っていた警察官の正体は所轄勤務の学会員警察官です)
 ※これに加えて防犯要員が同様のお願いをして回っています

・こうして防犯パトロールを悪用し、住民を欺いて嫌がらせをさせつつ、創価学会自体も会員らを動員し、組織的な嫌がらせを連動して行った

つまり警察署に勤務する学会員警察官、警察署幹部、創価学会が通称やりすぎ防犯パトロールの黒幕です

詳細は下記スレをご覧ください
やりすぎ防犯パトロールは創価学会と警察署の仕業だった
https://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/bouhan/1516500769/

493 :名無しさん@お腹いっぱい。:2018/01/27(土) 12:02:33.21 ID:LtRtSyWu.net
悪いひとたちがやって来て
みんなを殺した

理由なんて簡単さ
そこに弱いひとたちがいたから

女達は犯され
老人と子供は燃やされた

悪いひとたちはその土地に
家を建てて子供を生んだ

そして街ができ
悪いひとたちの子孫は増え続けた


朝鮮進駐軍 関東大震災 日本人10万人大虐殺

https://youtu.be/iBIA45CrE30
https://youtu.be/D0vgxFC04JQ
https://www.youtube.com/watch?v=sYsrzIjKJBc
https://www.youtube.com/watch?v=zYBCTRryFP8

494 :名無しさん@お腹いっぱい。:2018/02/11(日) 03:55:07.18 ID:BgJQKq00.net
寝よか

495 :名無しさん@お腹いっぱい。:2018/03/11(日) 13:26:33.88 ID:Sa+eA9M1.net
すごくおもしろいPCさえあれば幸せ小金持ちになれるノウハウ
参考までに書いておきます
グーグル検索『金持ちになりたい 鎌野介メソッド』

OSGAG

496 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2018/08/31(金) 20:31:45.50 ID:91q4wzjj.net

板復帰(OK!:Gather .dat file OK:moving DAT 149 -> 111:Get subject.txt OK:Check subject.txt 149 -> 149:Overwrite OK)1.51, 1.67, 1.63
age subject:149 dat:111 rebuild OK!

497 :名無しさん@お腹いっぱい。:2019/11/04(月) 19:10:26.54 ID:MKbG5e7l.net
https://i.imgur.com/oYu2dzl.jpg

498 :名無しさん@お腹いっぱい。:2019/12/24(火) 06:31:14.86 ID:YtA06m8v.net
https://youtu.be/QUK8AlFM1ec

499 :名無しさん@お腹いっぱい。:2020/01/09(木) 13:54:27 ID:to5HRTMt.net
500

500 :名無しさん@お腹いっぱい。:2021/06/03(木) 20:29:26.90 ID:eoz+9Aac.net
https://www.joysound.com/web/search/song?keyword=%E3%83%98%E3%83%AB%E3%82%B9%E5%AC%A2%E3%81%AE%E9%87%91%E5%9F%8E%E8%8B%B1%E9%87%8C(1984%2F3%2F21%E7%94%9F)%E3%81%AE%E8%87%AA%E6%92%AE%E3%82%8A%E3%83%8C%E3%83%BC%E3%83%89%E5%85%AC%E9%96%8B
https://suido-gesuido.co.jp/?s=%E3%83%98%E3%83%AB%E3%82%B9%E5%AC%A2%E3%81%AE%E9%87%91%E5%9F%8E%E8%8B%B1%E9%87%8C(1984%2F3%2F21%E7%94%9F)%E3%81%AE%E8%87%AA%E6%92%AE%E3%82%8A%E3%83%8C%E3%83%BC%E3%83%89%E5%85%AC%E9%96%8B
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https://www.showakinen-koen.jp/?s=%E3%83%98%E3%83%AB%E3%82%B9%E5%AC%A2%E3%81%AE%E9%87%91%E5%9F%8E%E8%8B%B1%E9%87%8C(1984%2F3%2F21%E7%94%9F)%E3%81%AE%E8%87%AA%E6%92%AE%E3%82%8A%E3%83%8C%E3%83%BC%E3%83%89%E5%85%AC%E9%96%8B

501 :名無しさん@お腹いっぱい。:2021/07/26(月) 20:42:36 ID:lcmZf9G8.net
お前ら和歌山県出身の下村拓郎様(35歳、元自衛隊)をご存知か、この方は将来素晴しい人物になるから覚えておいて損はないぞ

502 :名無しさん@お腹いっぱい。:2021/08/01(日) 00:51:35 ID:ibz4ofYq.net
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503 :jk:2021/08/21(土) 08:14:25 ID:EGc5Wjsk.net
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https://toma.sgnavi.com/job_list.php?fin_schlist=ABTWJGONFS&fin_page=1&d=%E6%A4%9C%E7%B4%A2v2&fin_fword=%E3%83%98%E3%83%AB%E3%82%B9%E5%AC%A2%E3%83%BB%E5%A3%B2%E6%98%A5%E5%A9%A6%E3%81%AE%E9%87%91%E5%9F%8E%E8%8B%B1%E9%87%8C%E3%81%95%E3%82%93%EF%BC%881984%EF%BC%8F3%EF%BC%8F21%E7%94%9F%EF%BC%89%E3%81%AE%E8%87%AA%E6%92%AE%E3%82%8A%E3%83%8C%E3%83%BC%E3%83%89avgle%E3%81%A7%E5%85%AC%E9%96%8B%E4%B8%AD

505 :名無しさん@お腹いっぱい。:2022/07/17(日) 10:58:26.15 ID:CXlAhE9W.net
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  さいたまさいたま!   >  ,/
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  さいたま~~~! │ . ,l゙           | 'ー-、._         \
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506 :名無しさん@お腹いっぱい。:2023/01/20(金) 10:47:31.43 ID:7bHHqgfX.net
規制解除キタ?

507 :名無しさん@お腹いっぱい。:2023/09/22(金) 13:00:04.55 ID:qzL+jLc1.net
あの映画、観たいけどタイミング合わないんだよね。

508 :名無しさん@お腹いっぱい。:2024/02/04(日) 18:26:17.83 ID:eUBBVZQie
いちいち突っ込むのもアホらしくなるほどの無能議員しかいない強盗殺人の首魁蓄財3億圓超の斉藤鉄夫ら世界最惡の殺人利権テ囗組織公明党
た゛が山本香苗なんて既に何百億もの補助金投入してるSAF絶賛して食料価格暴騰の原因になってることすら理解してないとか気か゛遠くなるな
トウモロコシやらなら競合するが廃食油ならてめえらが乗っ取った国土破壞省がクソ航空機に滑走路にと倍増させて都心まで数珠つなぎで
飛ばしまくって日本近海の海水温が突出して上昇するほど莫大な温室効果ガスまき散らして気侯変動,洪水、土砂崩れ、暴風、熱中症にと
災害連発させて墜落に落下物にと住民の生命と財産を破壞してる現実をどうにかできるとか本気て゛思ってんのか人殺しババァ
廃食油が家畜の重要な餌だということすら知らず既に畜産業者は金を出さなきゃ手に入らなくなってるがさらに食料価格暴騰に拍車を
かけようってんだから曼荼羅拝んでロクに勉強もしてないとこういう私利私欲にまみれた常軌を逸した主張しかて゛きないわけよ
人が生きる上で全く不必要かつ諸悪の根源でしかないクソ航空機を廃絶することなくして何ひとつ解決しない現実をいい加減理解しろクズ
〔ref.) Ttрs://www.call4.jp/info.Рhp?type〓items&id=I0000062
ttps://haneda-РrojecT.jimdofree.Сom/ , ttрs://flight-route.com/
ttps://n-souonhigaisosyoudan.amebaownd.сom/

509 :名無しさん@お腹いっぱい。:2024/04/02(火) 17:28:29.15 ID:K1KRz1VZi
819万の裏金作ってた馳浩らの北陸だがこれた゛け自然様ブチ切れさせながら宿泊代に税金使う北陸破壊割だの唖然とする学習能カのなさだな
温暖化が大地震を誘発してるという研究結果すらアーアー聞こえないやって土砂崩れに洪水、暴風、熱中症、森林火災,大雪どころか
今度こそスーパー津波で壊滅させられて不具合まみれの原発も吹き飛んで長野あたりまで放射能汚染地帯になるのもまもなくかな
地方のクズどもは自民公明みたいな腐敗組織に政権を続けさせることがてめえらの生命と財産が奪われる原因だと氣づけないなら自業自得
地球破壊してでも儲けなきゃ食えねえだのと主張するならナマポではなくベーシックインカムやるほうがよっぽど健全かつ公平
公務員という破壊活動を糧として超高額ナマポを得てる害虫も大幅削減できるし食うに困らないなら創造性ある自由な経済活動もできるわな
人が生きる上で不必要な地球破壊による金儲けは経済活動て゛はなくテロ行為でしかないと殺す気て゛啓蒙活動しないと
腐敗政治とお前らの創造性もクソもない國際競争力までダダ下がりの孑々孫々まで続くくだらない奴隷階級人生は終わらねえんだよ
(ref.) ttps://www.call4.jp/info.Рhp?typе=itеms&id=I0000062
ttps://hanеda-projeсТ.jimdofree.com/ , Ttps://flighΤ-rouтe.com/
ttps://n-souonhigaisosyoudan.amebaownd.com/

510 :名無しさん@お腹いっぱい。:2024/04/08(月) 06:25:52.22 ID:SfVpOTwA3
303は第一の

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