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君のセンス5段階+αで評価するよ[vol.112]

53 :おかめインコ:2015/01/28(水) 18:42:33.78 ID:qlEUmiaU.net
「牝牛」

牛は理解していた
人間たちが迎えている飢餓のことを
家畜の売り手がしりぞいた
市場のことを
もはや 身を切らなくてはならない
月に一度
肥えた順に連れられていく同士の
ひゅるひゅると糸のように空を仰いでいく
最期の悲鳴を牛は聞いていた
牧夫に想いは届かない
星の美しい夜
濡れた鼻を仔に擦りつけると
牛はけたたましく叫びながら
畜舎をつきでた
果てしない砂利道をかけ抜け
めざしていた
広大な牧場へと紛れこんだ
綺麗な畜舎に 豊富な餌
牛は見事に肥えた
荒れていた毛並みも美しくなった
そして 牛は牧場を後にした
最初からそのつもりだった
不妊の気があった牛が仔を産めたのは
牧夫の手際と砕身があったからこそだった
仔の父親はたしかに牧夫なのだと牛は
ためらわなかったのである
柔毛を撫でつける夜風
牛は すがすがしい気持ちにあった
まるで星に魅せられたように
肥えた巨体に鞭打ちながら牛は
牧夫のところへと足を早めた

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