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ほんのりと怖い話スレ 126

1 :本当にあった怖い名無し:2017/10/11(水) 15:25:00.41 ID:8ji+ny5I0.net
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実体験に基づく話が多く、意外と“シャレにならない”より怖い話もあったり…
ガイシュツ・都市伝説、何でもOK!
ほんのりマターリヒヤーリと……
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774 :本当にあった怖い名無し:2017/12/07(木) 17:24:19.70
ここに書くべきか迷ったんだけど一応怖かった話だから書いていくね。
他人に話すのは初めてだから分かりにくかったらごめんね。

もう何年も前に亡くなった俺の祖父は狩猟をやっていた。
鉄砲と罠の免許を持ってて、どっちもいい腕だったらしい。

俺も子供の頃は猪肉や鹿肉の鍋とか焼き鳥とか食いながら集まって晩酌してる
爺ちゃん達の輪に入ってよく狩猟の話を聞いていた。
酒が回ってくるとみんな自分の狩猟自慢を話し出すんだけど、俺はそれが大好きだったんだ。
まぁ、毎回同じ話を聞かされる事になるんだけどね。

775 :本当にあった怖い名無し:2017/12/07(木) 17:25:19.76
Aさんが話すのは遭難しかかった時に見た大鹿の話、Bさんが話すのは撃った
猪が大きすぎて山の中で血まみれになりながら解体した話って具合にね。
中には下ネタで猪の睾丸あたりの解体中に顔○されたなんて話もあった。

そんな中で俺の爺ちゃんの自慢話は「山の怪」を撃ったって話だった。
しかも爺ちゃんの幼馴染で同じ狩猟仲間のよっちゃんもその場に居て一部始終を知ってたんだ。
「よっちゃん」は市役所の市民課課長やってる人で、爺さん連中からよっちゃんって呼ばれてたから
ガキの俺もそう呼んでた。本名は知らない。
すごく真面目な人だったからそんな嘘を付くとは思えない。爺ちゃんだけじゃなく、
よっちゃんも本当だって言うんだったら本当なんだろうと爺さん達も馬鹿にした感じはなかった。
俺は当然信じてたが、「山の怪」なんて物を大の大人が少しでも信じてたんだからすごいよな。
その話はこうだ…

776 :本当にあった怖い名無し:2017/12/07(木) 17:26:33.08
『いつものように雨沢から登って笠岳を越えたあたりで山の様子がおかしい事に気が付いた。
仕掛けた罠が荒らされていて、自力で掛かった罠から逃げたにしては落ちてる血が少ない。
山の気配もなんだか騒がしい。一緒に居たよっちゃんも違和感を感じて辺りを見回していた。
よっちゃんと顔を見合わせながら笠岳から東山に入った時だった。

左側の斜面上方にボロボロの服の上に蓑の様なものを背負ったやつが四つん這いになって何か掘っていた。
でもタケノコにしては時期が違うし山芋にしては道具を持っていない。不思議に思って確認する目的で
近づきながら挨拶をした。そうするとそいつは一瞬ビクッとしてゆっくり振り向いた…。

その顔はまさに化け物だった、大きな顔に目玉が見えないくらい深くくぼんで
垂れ下がった目、あごは無く顔と首が平面で繋がっていて、何かが人の生皮をかぶっている様だった。
血で真っ赤に染まった口は大きく裂けていた。掘っていた様に見えたのはウサギを生のまま食ってたんだ。

777 :本当にあった怖い名無し:2017/12/07(木) 17:27:39.64
それを見てよっちゃんは腰を抜かして座り込んじまったし、俺も膝がガクガク笑って木にもたれかかって
ようやく立ってた。するとソイツはギクシャク動きながらよっちゃんに近寄ってきやがったんだ。
よっちゃんは震える手で鉄砲を構えようとするが肩掛けがリュックに引っ掛かって銃口はあさって
の方向を向いちまってた…だから俺は慌てて鉄砲を構えて「動くな!」って叫んだんだ。

それでもそいつは怖がるそぶりも見せずニヤッと笑って今度は俺に近づいてきた。
化け物とは言え人の形をしたもんを撃ちたくなかったから何度も「撃つぞ!撃つぞ!」って叫んだが
そいつは笑ったまま近づいてくる。このままじゃ食われると思った俺は一発をそいつの足元に撃った。
音には多少驚いた様だったが、それでも近づくのを止めない。
そろそろ10mって所で俺は覚悟を決めて腹を狙って撃った。弾は命中してヤツはゆっくり膝をついた。

俺が弾込めしてる間に、今度はよっちゃんが一発撃ったが、弾はそれて土が跳ねた。
よっちゃんがもう一度狙いを定めて撃つと今度はそれが胸に命中。ヤツは倒れた。
よっちゃんの弾込めを待ってから、ゆっくり近づいて死んでるのを確かめたよ。
村に持って帰ろうかとも思ったが、触るのも嫌だったからよっちゃんと穴掘って埋めたんだ。』

778 :本当にあった怖い名無し:2017/12/07(木) 17:28:40.43
俺はこの話が大好きで、この話をする時の爺ちゃんとよっちゃんの得意そうな顔も好きだった。
当時、妖怪とかお化けに興味があった俺はよっちゃんに山の怪の絵を描いてもらったんだ。
よっちゃんは学生の頃、美術学校を勧められるくらい絵が上手かった。酔っぱらって描いた絵も
すごい迫力で、その絵は俺の宝物になった。

その爺ちゃんも82歳で亡くなった。
葬式の時に受付をやっていた俺は10数年ぶりによっちゃんを見かけて声をかけたんだ。
よっちゃんは市役所を退職した後、天下りで福祉関係の仕事に就いて70歳まで働いてたそうだ。
話題は昔の爺ちゃんの話になり、当然のように山の怪の話になった。
そこでよっちゃんの顔が一変したんだ。それまでのニコニコとした優しい顔が眉間にしわを寄せ、
奥歯を噛みしめる様に下を向いて拳を握っていた。

最初は具合でも悪いのかと思ってよっちゃんの背中に手を回した。
俺が近づくと、よっちゃんは絞り出す様な声で「そんな話は知らない!」と断固とした口調で言った。
何を言ってるのか分からなかった。あんなに楽しそうに、得意げに話してたじゃないかと思ったよ。
年取って忘れちゃったのかと思った俺は、絵を描いて貰った事も話したけど、よっちゃんは知らないの
一点張りだった。でもその様子は忘れたって感じじゃなかった。
「失礼するよ…」話を打ち切るように、それでいて少し申し訳なさそうによっちゃんは離れていった。

779 :本当にあった怖い名無し:2017/12/07(木) 17:29:55.50
もしかしたら俺の記憶が違ってるのかも知れないし、爺ちゃんとの間に何か揉め事があったのかも知れない。
参列者の中にあの時の狩猟仲間の爺さん達を探したけど、既に亡くなっているか疎遠になったか、
覚えている顔は居なかった。ただ、大鹿の話をしていたAさんと同じ名字の30代後半の男性が居たのを
思い出した。もしかしたらと思い慌てて探すと、焼香を終え、外に出ようとしている所だった。
俺は少し躊躇いながらも、話しかけると案の定Aさんの息子だった。

その息子さんから聞いた話では、Aさんの家でも何度も会が開かれており、ウチの爺ちゃんと猟に行った
事もあるとの事だった。当然「山の怪」の話も知っていた。よっちゃんが忘れちゃったみたいだと話すと
Aさんは少し考えたあと、俺に話してくれた。

よっちゃんがあの話をしなくなったのは市役所をやめた少し後で、その頃からうちの爺ちゃんにも
あまり話すなとか忘れろみたいな話もしていたらしく、それが原因で何度か揉めていたらしい。
よっちゃんは狩猟仲間からその話を振られる度に、忘れたと言っていた。
理由は仲間内でも誰も知らないみたいだったとの事。もちろんAさんも分からないとの事だった。
その後は猟仲間も減って寂しいとか、俺にもやってみないかとか他愛もない話をして帰っていった。

俺はそれ以上、追及する術もなく少し寂しい気持ちだけを残して忘れていった。
祖父の葬儀から5年ほど経った頃、よっちゃんの訃報が届いた。
葬式には親父と一緒に俺も同行し、線香をあげてきた。
帰宅してよっちゃんや祖父の話になり、古いアルバムを開いて話をしていると、小さく折りたたまれた
一枚の絵が挟まっているのに気が付いた。

そう、俺の宝物だった、よっちゃんに描いてもらった「山の怪」の絵だ。

780 :本当にあった怖い名無し:2017/12/07(木) 17:31:02.81
約20年ぶりくらいにその絵を見たとき、俺はあの時とは違う衝撃を受けた。
同時によっちゃんが何で忘れようとしていたのかもわかっちゃったんだ。

俺もその「山の怪」を知ってた。見たこともある。

『トリーチャーコリンズ症候群』って言うんだって…

ここからは俺の推測になる。
たぶん福祉の仕事に就いたよっちゃんは何らかの資料で見たんだと思う。
自分たちが撃った「山の怪」とそっくりの姿の病気の人の写真。
だから忘れようとしてたんじゃないかと思うんだ。

今となっちゃ当事者はみんな墓の中だし、60年以上前の事だから確かめようがないけどね。

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