百物語2017

本当にあった怖い名無し＠＼(^o^)／

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自律神経が乱れてた時に手の感覚がズレてるというか、おかしな感覚に陥ったことがある。
オカルト的には手だけが幽体離脱する感じっていうのが一番伝わりやすいかもしれんが
感覚もあるし動かせるけど見えてる位置より十センチ位浮いてるような、なんかちょっとズレるような変な感覚。
ちょうど仕事が正念場で成立したら出世コース、失敗したら見込み無しって局面で
休みを取ったり病院に行ったりっていうのはありえない状況だった。
掌をブラブラ振ったり指をニギニギして誤魔化すのが癖になっていた。

全てが変わったきっかけは多分ほんの一瞬だったと思う。
キーボードで作業しているとやはり上の方に掌だけが幽体離脱、抜ける感じがあって
またか、と思いつつそのまま作業に没頭していると自分の掌の上にある掌、さらにその上に被さるように誰かの手があった。
驚いて手を見るが、そもそも抜けた自分の掌すら見えるものではないのだから当然何も存在しない。
抜けた掌に誰かの手がしっかりと触れている感覚がある。
気味が悪いと思うかもしれないが、その時の俺にはそれはとても暖かく心地良い掌だった。
その瞬間に得た感覚を言葉に表すことはとても出来ないが、気付けば大粒の涙をボロボロとこぼしながら泣いていた。
とっくに限界は超えていたが、そこで踏ん切りがついて俺は会社を辞めた。

田舎の実家に帰ると母がガンだと聞かされた。仕事に必死になってるのを知っていたから黙っていたらしい。
今は田舎で独立して人脈を金に変えながら経験を活かした仕事をしている。
ガン介護はキツかったが、たくさん話せたし手を取って看取ることが出来たので後悔はしていない。
あの手が誰のものであったかは分からない。
幼いころ感じた母との記憶だった気もするし、もっと遠くて大きな何かである気もする。
もっとも、理性的に捉えるなら単なる幻覚にすぎないのだが
そんなものに翻弄されるその程度の人生も悪くないと今は思える。

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　 i　　ﾌｯ
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