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後味の悪い話 その166

374 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/10/08(土) 12:22:14.42 ID:KVUFpmBGO.net
星新一「生活維持省」

郊外の道に車を走らせる、二人の公務員。コンピューターが吐き出したカードに印字された各家庭を訪問するのが毎日の仕事。
いつもは道順を考えて運転するが今日は上天気、カードをランダムに引きドライブがてらのんびり行くことにする。公務員は効率など考えなくていいのだ。

戦前とは違い各家庭に十分な広さの土地が与えられているので、どこも広い庭を備え住む人の趣味をうかがわせる趣向を凝らした家々。
いつか結婚したらこんな家に、と言い合いながら目的地へ進む。
戦前とは違い汗水流して働かなくても十分な収入が保証されているので、皆趣味を楽しみのんびりと生活している。

途中ガソリンスタンドを兼ねた小さな何でも屋に寄ると、主人は顔を曇らせ言葉少なに応対する。
「今日はこちらでお仕事ですか」

訪問先で来意を告げると、応対の主婦は失神した。
支給品の気付け薬を与え、世の道理を懇々と教え諭す。慣れたものだ、死に神呼ばわりも。

国民には生きる権利がある。権利には義務が付き物だ、死ぬ義務が。
戦前にはこのあたりまでスラムが拡がり皆生きるだけで必死だった。
生存競争、絶え間無いストレス、病気、事故、画一化されたお仕着せの娯楽、犯罪、公害、行き着く先は戦争。
だから政府は、健康で文化的な幸福な生活を維持するために間引きを行うことにした。選定はコンピューターが行う。だから完全に公平で、私情の入る余地はない。

ターゲットはこの家の娘で、森に木苺を摘みに行ったという。
明るい歌声が近づいてきた。せめてもの情けで、物陰から光線銃を撃ってやる。
歌声が消え、わずかな煙が流れた。

「さて、次は?」
「ああ、この小川のほとりがいいな」
「なんだ、休憩か」
自分の名前が記されたカードを見せてやる。
カードを寄越した上司が無愛想なのはいつものことだが、今朝は特に…。
「すまんね、午後も君が運転だ」
「順番を最後にしてもいいんだぞ」
「いや、いいよ。この時代にここまで生きられて幸せだった」

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