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後味の悪い話 その160

15 :3@\(^o^)/:2015/11/22(日) 00:48:47.62 ID:Qchnehny0.net
チェチェンの山中の廃墟となった施設で、ついにトァンとミァハは再会を果たした。
ミァハは語る。
「ここは、かつてロシア軍の兵士が少女たちを抱くための施設だった。私もその中の1人」
ミァハはもともと日本人ではなく、ある少数部族の出身だったが、幼い頃に誘拐され、兵士たちの慰み者として扱われていたという。
「憎悪が目覚め、ここで私の意識が誕生した」
ミァハの部族は近親婚により劣勢因子が受け継がれていった結果、ハーモニープログラムの副作用と同じように「意識のない」状態の人々で構成されていた。
ミァハが現在持っている「意識」は後天的なものであり、通常の人間とは別の部分の脳が意識を形作っているのだ。
「このチェチェンでの日々も地獄だったけど、日本も地獄だった。優しさに殺されてしまいそうだった」
WatchMeによって高度に医療が発達した社会の裏では、子供たちが「自分の居場所がない」と感じて
自ら命を絶つ事件が増えていた。
「だから、ハーモニープログラムを発動させるの」
誰もが悩むことなく、考える必要もなく、茫洋とした幸福に包まれる世界。
それは、ミァハにとって現社会への復讐であり、人類の救済だった。

ミァハの宣言したタイムリミットまであとわずか。
世界は「大災禍」の時と同じく大いなる混沌につつまれていた。
隣人の命を奪えず自ら命を捨てる者が、その逆の者が続出し、世界中で暴動が多発している。
ハーモニープログラムの実行権を持つ「次世代ヒト行動特性記述ワーキンググループ」の主流派は、
この状況を回避し世界の安定を図るためプログラムを起動せざるを得ないはず…
この状況こそがミァハの狙いだった。
ミァハはトァンに語りかける。
「今度こそ、一緒に、新しい世界に行こう」
トァンはミァハの手を取り、抱き寄せると、こう応えた。
「ミァハが望むなら、私は新しい世界を受け入れる」
「でも、その世界にあなたは連れていかない。私が好きなミァハのままでいて」
彼女を銃で撃つトァン。
「愛してる、ミァハ」

ミァハの読み通りハーモニープログラムが実行された。
全人類が意識を手放し、「私」が「私」ではなくなる新世界。
それは、調和(ハーモニー)のとれた平和な世界。

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