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後味の悪い話 その156

1019 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/06/03(水) 01:05:39.26 ID:+e1rN/AG0.net
泣きだすA妻に、A母は優しい声でこう言った。
「子どもが出来たのね」
泣きながら頷くA妻に、係員は残酷な言葉を告げる。
「チケットは三人分だけ。お腹の子どもは船には乗れない」
お腹の中の子どもだけ下ろすことは出来ないから、A妻も船から降りるようにと係員は言った。
怒りを露わにして係員に掴みかかるA。
そんなAをA母が止めた。
「私が船を降りれば、三人は地球へ行けるでしょう?」
係員は了承した。
だが、地球に行ってしまえば、火星には二度と戻れない。
A母には二度と会えないのだ。
A妻はA母だけを残してはいけないと泣いた。
だが、A母はかぶりを振って言った。
「あなたたちとその子どもが幸せに暮らすことを願っているわ」
こうして、A母を置いて宇宙船は出発した。
A母は貧しい火星の家に戻り、AとA妻は地球へと向かった……はずだった。
宇宙船は地球とは正反対の、太陽へと迷わず突き進んだ。
窓の無い宇宙船に乗り込んだ乗客たちは、何も知らなかった。
何も知らないまま、太陽に飲みこまれ死んでいった。
それは、増え過ぎた人口を減らすために火星政府が執った対策の一つだった。

ある日、農作業をしていたA母は、空を見上げた。
「あの子たちは幸せに過ごしているかしら?」
そんなことを思いながら。

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