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死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?324

458 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2014/11/01(土) 12:36:58.10 ID:4jCYIIib0.net
エゾシカは出血もなく特にケガをしているようには見えなかった。
しかし小刻みに痙攣する体と乱れた呼吸、そして獣臭さによって私は不快な緊張を強いられた。
そのまま見捨てて立ち去ってしまう事も出来なくはなさそうだったが、
放置すれば別の車に轢かれるかもしれないし、その時は罪悪感が勝っていた。
エゾシカの体を揺すったり突いたりするも、シカは極度に混乱しているのか痙攣したままだ。
シカの乱れた呼吸が獣の臭いを振りまく度、私はなぜか緊張が高まり、鼓動が早まっていった。
何かの気配を感じたのか、ただ気を紛らわしたかったのかは分からない。
倒れたシカとの膠着状態のさなか、ふと周りを見渡した。
自分の車の発する光しかないので、はっきりとは見えない。
が、確実にいた。たくさんのエゾシカ達が。
私と倒れたシカを取り囲んで、一定の距離を保ちつつも離れはしない。
鳴き声をあげるでもなく、私に威嚇するでもなく、ただただ凝視していた。
なぜ見ているんだろう。仲間の危機の顛末を見届けようということか?
痛い位に早まった鼓動を必死にこらえつつ、倒れたシカを起こそうと悪戦苦闘しながら、頭の中で妙な空想が広がっていた。
もし私が腹を空かせたヒグマであったなら、獲物の獲得を素直に喜び、この肉に食らいついているだろう。
しかし、私はなんだ? 食いもしない、興味すらないシカを叩きのめして一体 何をやっているんだ?
取り囲んでいるシカ達も、もしかして それが知りたいのか?
私を包囲したシカ達の徹底的な凝視に晒されて、おかしくなりそうだった。
重苦しい沈黙は、ふいに破られた。
倒れたシカが突如 混乱から脱し、勢いよく飛び起き仲間達の方向へ走り出した。
意味ありげな沈黙と凝視を私に投げつけ、ひどく不気味に思えたシカ達も、ただのシカに戻ったように感じられ、
ようやく終わったのだと思うことが出来た。

おそらくは、たいした時間は経過していなかったのだと思う。
しかし極度の緊張の中、色々な妄想・恐怖・罪悪感を自ら作り上げて、本当にぐったりしてしまった。

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