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実話恐怖体験談 弐拾段目

829 :文豪の家@\(^o^)/:2015/02/18(水) 11:18:05.61 ID:kezBP+PO0.net
逢魔が刻って言うの?
薄暗くて、ぼんやりとしか見えなかったけど、人影はゆっくり坂を下ってるようだった。
でも、登ってるようにも見えた。

近くまで来ると、それはパジャマ姿の先輩だった。
先輩は、完全に空を見上げたまま、ボソボソ何かを呟きながら、一歩進んで、二歩下がるを繰り返していた。だから、体は下りを向いてるんだけど、後ろ向きに少しずつ登ってる状態だ。俺は、思わず泣きそうになった。いろんな感情が一気に襲ってきた。

先輩は少しずつだけど坂道を登っていて、俺はそれを見守ることしかできなかった。
情けない話、その場から逃げたしたかった。怖かったんだ。とにかく。

何度か話しかけてみたけど返事はなくて、そうこうしてるうちに頂上が見えてきた。
ふと俺は、あの夏の探検を思い出し、例の文豪の家に目をやった。
坂の終わりのさらに先に、その家は変わらずに佇んでいて、こちらを見下ろしていた。
あの時よりもさらに鬱蒼と生い茂った木々と、朽ち果てた壁面のせいで、最早家の原型はなくて、二階の窓ガラスが辛うじて確認できるぐらいだった。
あの窓は寝室だな、なんて思っていると、先輩が急に立ち止まり、体を左右にひねり出した。
グルングルンと、ラジオ体操のように。そして、空を見上げたまま

うぉあおおおおおおおおおおんっ
うぉあおおおおおおおおおおんっ
うぉあおおおおおおおおおおんっ

俺は全身が硬直して、息もできなかった。
ちょうど先輩の背後に例の家があって、まるで家が先輩を叫ばせているような風にも見えたし、逆に家が叫んでるようにも見えて、戦慄した。

俺はたまらなくなって、先輩を置いてダッシュで家に帰った。

今思い出すだけでも心臓がバクバクする。

結局あの後一年ぐらいして、先輩は死んでしまった。死因は教えてもらえなかったけど、教えられないような死に方だということは確かだ。

今ではあの高校も取り壊されて、家だけが残ってる。
でももうあの家に近づこうとは思わない。

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