ひじきのとなかまたち

名無しさん＠また挑戦

>>259 続き　※絵露有無：無

　ひじきもまたその日体調が芳しくありませんでした。
　風邪をひいて熱が３８度あることが分かり、仕事を早退するところでした。
　しかし、目の前に立っていた妊婦の体調があまりにも悪そうなので、
　妊婦に席を譲ってあげました。
　妊婦は深々と頭を下げ、大きなお腹をさすりながら苦しそうに息も絶え絶えに
　『本当に…どうも…ありがとう…ございます。
　　そして…大変…申し訳…ござい…ません。
　　何と…お礼を…申し上げたら…いいのか、言葉も…ござい…ません。
　　このお礼は…必ず…』と言い、ひじきの譲った座席にゆっくりと座りました。
　ひじきはいけないと思いつつ、この丁寧なお礼を自分に言った
　美しき妊婦に恋をしてしまいました。
　ひじきは妊婦にどこで降りるのかを聞くと、
　なんと自分の家の最寄り駅で降りるのだと判明しました。
　ひじきは、見るからに体調不良のその妊婦を自宅の最寄り駅の駅務室に連れて行き、
　駅員に
　『この妊婦さん、とても体調が悪いのです。ここでしばらく休ませてあげてください。
　　ついでに僕も熱が３８度あります。一緒に休ませて下さい』と頼みました。
　駅員はこの頼みに快諾しました。妊婦は、
　『本当に…あなたは…優しい…お方…ですね。あなた自身も…体調…不良…なのに…
　　あなたの…奥様は…幸せ…ですね』と言いました。すると、ひじきは
　『いえいえ、自分には妻はおりません。
　　家に帰っても1人ですよ』と言いました。すると、妊婦は驚いて
　『そうなのですか…自分も…1人…です』と言うので、ひじきも驚き、
　『立ち入ったことをお聞きするようですが、ご主人は？』と聞くと
　『主人は…病気で…半年前に…亡くなりました。
　　妊娠が…判明した…直後…でした』との答えが返ってきました。ひじきは、
　『悲しいことを思い出させてしまったようで申し訳ない。
　　あなたは重度の貧血に見える。今日、ちょうど鉄分たっぷりの
　　ほうれん草とひじきとレバーを夕飯に作ろうと思うので、もしよろしければ
　　ご一緒しませんか？―僕も独り身で作り過ぎてしまうので』と誘いました。