谷川流 341
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- 虚構世界はなぜ必要か?SFアニメ「超」考察
第12回 量子論的な多宇宙感覚/『涼宮ハルヒの消失』『ゼーガペイン』『シュタインズゲート』(2)
12月 07日, 2016 古谷利裕
おそらく『涼宮ハルヒの消失』で最も感動的な場面は、
世界改変後の、特別な力をもたず、キョンと知り合うこともなかったハルヒが、
キョンが発した「ジョン・スミス」という名前に反応するところでしょう。
改変された世界の方でも、ハルヒはジョン・スミスとは出会っていたのです。
ここでキョンが、改変前の世界のハルヒが神のような力をもつということを
ハルヒ自身に喋ってもかまわないのは、
改変後の世界のハルヒは何の力ももたないからですし、
二つの世界のハルヒの記憶は同期していないからです。
つまり、キョンの語る話は、この世界のハルヒにとってフィクションでしかありません。
しかしそれは、この世界のハルヒ自身が必要としていたフィクションだと言えるでしょう。
おそらくこの世界のハルヒも、別の学校のクラスの自己紹介で
「宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたらあたしのところに来なさい」と言ったでしょう。
そして望み通り、異世界から来たと自称するキョンに会ったのです。
ハルヒは、改変前の世界では、宇宙人、未来人、超能力者と出会い
――しかしそのことをハルヒは知りませんが――改変後の世界では異世界人と出会うので、
どちらの世界でも望みがかなったことになります。
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