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ワイが文章をちょっと詳しく評価する![51]

1 :ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE :2015/05/08(金) 02:35:46.63 .net
点数の意味
10点〜39点 日本語に難がある!
40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
満点は創作者が思い描く美しい夢!

ここまでの最高得点79点!(`・ω・´)

前スレ
http://peace.2ch.net/test/read.cgi/bun/1425799875/

734 :名無し物書き@推敲中?:2015/06/18(木) 16:41:05.27 .net
 鷹山は仕事を終えてマンションに戻ると、ポケットから鍵束を出しながら玄関ホールに入った。するとなにやらプラチナ色の髪をスポーツ刈りにした女性がパネルの前に立ってチャイムを連打している。
 よく見ると表示されている番号は鷹山の部屋の物だった。
「あの、家になにか?」
 振り返った女の顔を見て以外な人物像に鷹山は首をかしげた。抜けるように白い肌と真っ青な目に高い鼻。北欧系の美人だった。外国人の付き合いは多いが顔に覚えが無い。
「イティズフォアサムシング?」
 すると女性は目を吊り上げて怒ったような表情をしながら声を張り上げた。
「ウチはニッポン人や!」
 思わず体をのけぞらせた鷹山が焦って言った。
「し、失礼した、所でうちに何用でしょうか」
 一瞬眉に皺を寄せた西洋風日本人はぱっと目を見開いた。
「ひょっとしてトモ兄ちゃんでっか?」
「あ、ええまあ」
 鷹山は理解した。確実に美世の知り合いである事を。女は満面の笑みになるとビシっと姿勢を正して切れのいい角度のあるお辞儀をした。
「田中レンっす!よろしゅうに!」
 すると突然鷹山の後ろからすっとんきょうな美世の声がした。
「おま、こんなとこで何やっとんねん」
 田中レンと名乗った女が顔だけ上げてボソリと言った。
「あ、美世や、ほんまにおった」
「ほんまにおったてどないやねん、おまえになんでここにおるんか聞いてんのに、ほんでなんやねん田中レンて日本人ぽく言うなこの糞外人が!」
「ウチはニッポン人や!」
 その時小さな女の子を連れたお母さんがホールに入ってきて一同は思わず黙った。すると女の子が田中を指差して言った。
「あ、外人さんだ」
「こら、サキちゃん」
 すると田中はジャケットの内ポケットからピンクのペンをシュパっと出した。
「でぃすいずあぺん!」
 凍りついた空気の中で田中はさらに半身を捻って花瓶が置かれている台をペンでシュパっと指した。
「ざっといずあですく!」
 すると女の子はにこにこ笑って言った。
「はわゆー?」
「あいむふぁいんせんきゅーあんどゆー?」
「ふぁいんさんきゅー」
 怒ったようななんとも微妙な顔をしていた田中はにっこり笑うと腰を屈めて女の子に猫キャラのペンを差し出した。

735 :名無し物書き@推敲中?:2015/06/18(木) 16:41:46.17 .net
「はいプレゼント」
「ありがとー」
「すいません」
 母親が頭を下げながら去っていくと、田中は姿勢を正して腕組みをしながら美世を睨んだ。
「どや!」
「お、おう、完全に日本人やなロレンス田中」
「アラビアみたいに言うな!田中フローレンスや!」

「ほんで、何しにきてん」
 美世が紅茶を出し終えて鷹山の隣に座った。
「何しに来てんてご挨拶やな、わざっわざ東京くんだりまで会いにきたったのに」
「嘘付けぇ、お前がウチに会いに来る名目だけで来るわけない、なんかの目的にウチを利用しようとしとんのか」
「はいはいきたこれ、ショウネが腐っとる人間は他人まで同じやと思いよる」
 田中は冷めた声と目で美世に言った後、急に前かがみになって卑屈な態度で鷹山に顔を向けた。
「どない思います?トモ兄さん」
「気安く呼ぶな!お前は鷹山様と呼べフロイライン田中」
「ドイツ人みたいに言うな!あとウチはイギリス人でもないで」
 そう言って紅茶をシュパっと指さした。
 「ウチは緑茶しか飲まん!」
「嘘付けぇ、お前丸ビルに初めてスターボックスが出来た時先頭に並んでたやんけ」
 田中は悔しそうな顔をしながら声を詰まらせた。
「おいおい美世、せっかく遊びに来たんだからそんな態度は無いだろう、彼女は俺の事知ってるみたいだから彼女の事教えろよ」
 鷹山はわざと美世を咎めるような口調の後に田中に愛想よくわらった。田中も笑い返すと再び美世を見て仏頂面で言った。
「ほれみてみい、お前みたいな化け猫の飼い主とあってさすがに人格者やで」
「ちっ、ああ〜もう」
 美世は面倒臭そうに頭をぽりぽりとかきながらだらしなく言った。
「えーとなんやったっけな、最初は天王寺の毛唐が多い高校に通ってたこいつが、ウチらになんくせつけてきたんや、それ以来何かとウチに張り合うてくんねん」
「何をええように言うてんのや、最初はおんどれの取り巻きのジャガイモみたいなイチビリが、事もあろうかウチにナンパカマしてきよったんやろがい、しかもLA青春白書風に」
「それをオドレがシバキ倒してスクラップにしたんが元やろがこのドヤンキーが!」
「ウチはニッポンジンや!」
「そのヤンキーちゃうわ!」
「まあまあ二人とも、ちょっと落ち着こうか」

736 :名無し物書き@推敲中?:2015/06/18(木) 16:42:28.82 .net
 二人が黙って睨み会った所で鷹山が苦笑いしながら言った。
「つまり二人は高校以来の友達と」
「友達ちゃうわ!」
 二人が声を合わせて同時に鷹山に顔を向けた。

 すぐにでも追い出さんばかりの美世の態度に、とりあえず昼ごはんでもと言う鷹山のとりなしで三人で食卓を囲むことになった。しかし出された食事を見て田中は固まった。
 おかずはともかく手前にある味噌汁、ご飯、納豆のセットを見て絶句している。顎を上げて目を細めた美世がいやらしい笑顔で見ている。
「どないした、ニッポン人なら誰でも馴染み深いもんばっかりやで、遠慮せんで食べなはれや、外人さんならちょっと苦手なもんも混じっとるかもなぁ」
 料理を見つめていた田中はギロリと美世を睨むと箸を取って素早く手を合わせた。
「頂きます!」
 そしておもむろに納豆に醤油をたらすと、グリグリとかき混ぜた。
「辛子もどうぞ」
 美世が辛子のチューブを差し出したが、田中は美世を一瞥すると一気に納豆を口の中に掻きこんだ。
「うっぶふっ」
 口いっぱいに納豆を頬張りながら涙ぐんでいる。鷹山は溜息をつきながら関わる事をやめて食事を始めた。その時田中がガバっと立ち上がり、流しに駆け寄って倒れこんだ。
「ぐええええ」
「あらあら、外人さんにはちょっとお口に合わんかったようで」
 田中がガバっと振り返って怒りの表情を浮かべながら箸で美世をビシっと指した。
「ほならお前は食えるんか!」
「あほか、そんなもん日本人以前に人間の食いもんやないで」
 美世は同じ色の器に盛られた冷奴を悠然と食べていた。
「な……」
 驚愕の表情でわなわなと震える田中に美世が言った。
「納豆あかんのやったらゆうてくれはったらよかったのに」
 美世はおもむろにテーブルの端に布を被せてあった小鉢を手に取って田中の食卓に出した。
「どうぞ、おあがりやす」
 すまし顔の美世に鷹山が痺れを切らして言った。
「お前らしくないぞ、なんだその鬼姑みたいな仕打ちは」
 鷹山が少し怒っている空気を感じ取って美世がしょぼんとなった。
「ごめん、ちょっと調子乗った」

737 :名無し物書き@推敲中?:2015/06/18(木) 16:43:25.59 .net
「とにかく、食事が済んだら二人で買い物でも行って仲直りしてこい」
 すると田中がぱっと明るい顔になって言った。
「ウチビッグサイト行きたい!」
 鷹山と美世は田中を見て少し固まった後、顔を見合わせた。

「来てみたはええものの、なんやねん新エネルギーエキスポって、何がおもろいねん」
 二人はザワザワと人で賑わうビッグサイト内のブースを並んで歩いていた。中には様々なブースが建ち並び、よくわからない器械やボイラーの断面図等が展示されている。
「これからはエコやがな、クリーンエネルギーの事を考えてウチも地球に貢献すんねん、そういう志を同じくする同志が世界中から集まってきてんねん」
 美世は腕組をみして懐疑的な目で横の田中を流し見てから顎をしゃくりあげた。
「ふーん」
 すると通りかかったブースから図解のパネルを持った営業が進み出てきて半ば前に立ちふさがった。女二人組みだが、こんな所にいるのはどこかの会社のマーケティング担当しか居ないはずだからだ。
 しかし何を思ったかその日本人の営業は田中に英語で話しかけた。
「クッジュヒアザセールスピッチマダム」
 二人はピタリと足を止めて男を睨みつけると同時に吼えた。
「フロは」「ウチは」
「ニッポン人や!!」
 驚いて後ずさった男を尻目にお互いにわずかに顔を向け、冷めた目で見つめあった後、鼻で笑った。そして二人同時に歩き始めた。
 田中は会場の奥に入るにつれ、美世より少し後ろにさがってきょろきょろするようになった。美世は気配でそれを感じて田中が何を
しようとしているのか怪しんだが、特に指摘する事もなく歩いた。すると突然田中が立ち止まる気配がして美世は振り返った。
 どうしたのだと声をかけようとして田中の顔を見てその言葉を飲み込んだ。この世の終わりを見るような悲壮な目で一点を見つめている。
 美世も振り返ってその視線の先を見た。プラチナブロンドの初老の男性が自社製品について見学者に説明している。見学者が去り、実演セットを
男性が片付け始めたのを見てもう一度田中に振り返ると、視線だけを美世に向けて暫く固まった後、蚊のなくような声で言った。
「ちょっとまっとって」

738 :名無し物書き@推敲中?:2015/06/18(木) 16:43:51.48 .net
 そしておずおずと歩き出したが足は震えている。ゆっくりゆっくりと歩いていき、やがて男性の手前で立ち止まると手を止めた男性が顔を上げた。
 そしてみるみる表情を変えると男性はゆっくりと田中に歩み寄った。そして両肩に手をかけると確かめるように全身を見回し、そしてゆっくりと
しかし力強く抱きしめた。半ばぶら下がるように抱かれた田中の肩はしゃっくりでもしているかのように揺れている。体を離した二人は何か情熱的に会話をしているようだった。
 しかしやがて男性がチラリと美世に視線をやると、田中が振り返って戻って来た。そしてもじもじとして申し訳無さそうに口を開こうとしたが、美世が先に言い放った。
「何時に迎えに来たらええねん」
 驚いた表情に変わった田中が口を開けて二三度ぱくぱくした後言った。
「あ、あんな、電話するとかではあかん?」
「お前ウチの電話番号知らんやろが!」
 そういって美世は鞄から名刺入れを出してバシっと押し付けた。
「泊まる時も電話せえ!」
「……わかった」
 憮然としたまま回れ右をした美世の背中に田中が小さい声で言った。
「おおきに」
 美世は足早に歩きながら考えていた。田中にはハーフの母親がいたが、父親は純粋な白人である事はそれとなく聞いていた。しかしその所在については
話す事はなかった。面白くもない見本市に来るために運転手をさせられた意味がようやく理解できた。
「くそ、やっぱり利用されてもとるがな」
 晩御飯に予定していた田中の好物のちらし寿司は手間がかかるため中止にしたかったが、田中が戻る可能性がある以上用意せざるを得ないだろうと美世は舌打ちしながら買い物に向かった。

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