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【小説家になろう】なろう系主人公 最強議論スレ ★3

358 :この名無しがすごい!:2022/07/02(土) 03:32:01 ID:LarfICBZ.net
「大魔王が倒せない」より


 ビザールは天鎖喰らいの使徒の中ではもっとも神に近かった。その獣じみた姿は天鎖喰らいから受け継いでおり、神の眷属としての性質が色濃い。
 特殊な能力に頼らなくとも地上を這いずり回る脆弱な生き物ごときに後れを取ることはないだろう。
 だが彼があえてその能力を使うのはどうしようもない絶望を見せつけることによって神の威光をよりしめしたいからに他ならない。
 彼の能力は大まかにわけると二つの要素から成り立っている。
 一つは検索だ。無限に分岐する並行世界から目的としたものを探し出すことが出来る。
 もう一つが召喚で、並行世界から任意の対象を召喚出来る。制限は人間大ぐらいまでの大きさの者しか召喚出来ないということだがそれが取り立てて問題となることは今までなかった。
 ビザールはこの能力で無敗を誇っている。

(中略)

 しっかりと恐怖と絶望を見せつける。
 ビザールは能力を発動した。
 いつものように目の前の相手自身を平行世界から検索する。条件は様々あるが重要なのは自分と同じ姿をした者を憎悪し攻撃する、対象よりもわずかに強いといったところだ。
 パエリア達は特に動きを見せていない。ビザールもその場から動かなかった。
 おかしい。そう思い始めたのはしばらく経ってからのことだ。
 検索に時間がかかり過ぎている。使用している条件はいつもと大して変わりはない。
 平行世界というのがどれほどの数があるものかはわからないが、ちょっとした条件の違いで分岐する世界のことだとすればそれは無限に存在するということだろう。どんな無茶な条件を設定したとしてもいずれ結果は出るはずだった。

(中略)

 焦燥感に駆られる。今までこんなことはなかった。何の手応えもない。感覚はこの条件ではかすりもしないと訴えている。
「あぁ! 私より強い方を召喚するとかそういうことなら適当なところで手を打たれるかと思っていたのですが……私自身を召喚しようとしていたのですね」
 パエリアがぽんと胸の前で手を叩いた。
「それは無理なのです。先ほど私が究極生物だとは思えないなどと失礼なことをおっしゃってましたけど、これがまさにそういうことなのですよ、つまりですね。私は全次元、全平行世界において一人しか存在しないのです。だからこその究極生物なのですよ」
「は?」
 ビザールは思わず聞き返してしまった。何を言っているのかさっぱりわからない。わからないのだがそれが真実なのだとどこかで感じている。
「私はですね、ありとあらゆる自分自身を倒して勝ち残った最も強いパエリアだということです。つまり天下一パエリア武闘会の優勝者なのです!」
 パエリアは胸を張った。
 そんなことがありえるのか?
 ビザールは自問する。だが先ほどから能力がなんの反応も示さないことがそれを裏付けていた。条件をただ一つ、パエリアより強い者をとして検索しても結果は同じだ。
 つまりビザールの能力ではパエリアには対抗できない。その単純な事実がじわりとビザールの脳裏に浸透し始めた。

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