【盗作・複垢疑惑】月夜涙総合スレ56【参考にしました】

この名無しがすごい！

──まさか、こいつは。
有り得ない、在るべく筈もないものが、そこには存在していた。
眩い光を煌々と放ちながら周囲を睥睨する、数字をモチーフとした紅の看板。
「御主人様、これって一体……？」
「『コンビニエンス・ストア』」
「…………こん？？」
小首を傾げながらこん？と呟く様子があまりにも愛らしかったが、同時にややムカついたので、俺は乱暴に乳を揉んだ。
「ご、御主人様、こんなお外でなんて、大胆すぎますよぉ……あ、でも出すなら中に出してくださいね……きゃはっ」
馬鹿め、外でなどするものか。破傷風になる。

そう。感染症というものは、決して舐めてはいけないのだ。元の世界でも盛ったバカップルどもという生物には
往々にして屋外で盛りたがる謎の習性が見られ、その結果、訳の分からない病気になって泌尿器科や産婦人科のお世話になる間抜けが大勢いたものだ。
奴らは例外なく原因についての問診を受け、そして激怒されるかクソデカため息をつかれる。
およそ文明人には似つかわしくない猿のような行為の当然の結果であり、同情の余地はなかった。
故に、万人の見本であるべき文明人代表たる俺は、奴らのような野蛮な行為はしない。三大欲求を己の理性の下にコントロールすることこそ、万物の霊長たる人間の証なのだから。

そうしている内に突然現れたコンビニの探索も終わる。
理屈はわからないが、どうやら無人レジのようなもので支払いを終えない限り、商品を外に持ち出すことはできないらしい。
（試しにやってみたらドアから外に出た瞬間手に持っていた商品が消えた）
魔法のようなものなのか？　しかし、何故？

「ご、御主人様ぁ……」
……やれやれ。喘ぎ声が五月蝿いし、そろそろ乳を揉むのを止めてやるか。
全く、コイツもいい加減猿のような本能直結具合だな。いや、猿ではなく狐なのだが。
俺は頭を振ると、極めて理性的に言い付ける。
「盛りつくのはトレーラーハウスの中に入ってからにしろ。行くぞ」
「あっ……は、はいっ！」
ノブレス・オブリージュ──高貴なるものの義務というのも、これで中々大変なものだ。

──静寂の中、氷を削り取る音だけが響いていた。
「……よろしかったのですか？　あのような素性の知れぬ者に、ラボの太鼓判などを押して」
「俺の懐が痛む訳じゃないからな」
「……御冗談を」
何を考えているのか分からない、底冷えのするような笑顔を浮かべながら、男は氷塊を削り続ける。
「アレが何事かを成し遂げるならば、よし。成し遂げねば、それもまたよし。いずれにせよ退屈しのぎにはなろう」
「……自分の金でやるギャンブルではない、という事ですか」
「願わくば俺の渇きを癒やしてくれよ」
ガガガ……ラボ『奨学館』の凍えるような一室の中、いつまでも氷を削る音が響いていた。

（第６話おわり）