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ワイが文章をちょっと詳しく評価する!【234】

791 :ラスヒロ :2022/03/01(火) 22:16:46.30 ID:XunLNJos0.net
>>790の続き

ふん。最初から、そういう態度を見せなさいな。と内心吐き捨てたのを最後に、この無神経な友人を許してやることにする。
「で? 智子は今、どんな小説を書いてるんだっけ?」
 少しは反省したのか、紗月は私の耳元に顔を寄せ、囁くように尋ねる。彼女の吐息が耳を撫ぜて、何だかむずがゆい。
「……今書いているのは、海外の女子校を舞台にした小説よ。主人公のソフィアは、同級生のメイに恋をしてしまうの」
「ほう。いわゆる百合ものですな」
 私は軽く頷く。
「メイは、闊達で、どこか無神経な所もあるけれど、それでもどうしてか憎めない。そんな女の子。短髪で男勝りな性分だけど、でも心は普通の女の子なの。ソフィアのように同性の女の子に恋をしたりはしない」
「おっと、悲恋チックな気配が流れて来たね」
 紗月は、それでそれで? と視線で促してくる。
「叶わぬ恋心に、ソフィアは思い悩むわ。……そこに、一人の魔女が現れるの」
「魔女? 真っ黒なとんがり帽子を被ったお婆ちゃんかな?」
 私はくすりと笑う。
「そうね。童話に出てくるような老婆の魔女。安直かしら?」
「いや、いいんでない? 分かりやすいの大事だよ、きっと」
「そうね。私も、分かりやすいのは大事だと思うわ」
 私はふるふると首を振ると、脱線しかけた話を元に戻す。
「でね。その魔女は、魔法のブルーベリーをソフィアに差し出すの」
「ブルーベリー?」
「……メイの好物なのよ」
 私は紗月の顔をまじまじと見る。紗月は、そうなんだ、と只頷いただけだった。
「それでね。そのブルーベリーには、食べた人の心を変えてしまう効果があるの」
「心を、変える?」
「ええ。恋愛対象の性別を反転させてしまうの。つまり、普通の女の子に食べさせれば、その子は男の子ではなく、女の子を恋するようになる」
 パンと、紗月は両手の平を合わせる。
「なるほど! ソフィアは嬉々として、メイにブルーベリーを食べさせるわけだ!」
「違うわ。ソフィアをそんな浅ましい女の子に仕立て上げないで。……ソフィアはやはり思い悩むことになるわ。メイに振り向いてもらいたい。でも、好きな子の心を捻じ曲げてしまうことに、良心の呵責も覚える」
「おお……! そういう展開か!」
 紗月はオーバーな合の手を入れた。

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