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ワイが文章をちょっと詳しく評価する!【230】

280 :ぷぅぎゃああああああ :2021/11/24(水) 19:05:41.39 ID:pRJICQAn0.net
「不穏な週末」

 城山光は週末になると機嫌が良くなる。土曜日は決まって末永大悟のアパートにいそいそと出かけた。手の込んだ料理やお気に入りのワインを持ち込み、泊まり掛けの二日間を謳歌した。
 それが急遽、取り止めとなった。突然のメールには『急で悪いが今週の土曜日は会えない』と素っ気ない一行で伝えられた。明確な理由さえ、書かれていない。
 光は納得しなかった。が、返信はしない。オフィスの昼休み、スマートフォンの画面を睨みつけた。
 土曜日となった。光は手ぶらで大悟のアパートに向かう。いつもと違って小走りとなった。
 右手にあるアパートの敷地に飛び込む。階段を駆け上がり、一番端に行き着いた。ショルダーバッグから財布を取り出し、小銭入れに潜ませた鍵を鍵穴に差し込む。目が驚きで丸くなる。
 鍵は掛かっていなかった。そっと扉を開ける。玄関には二足のスニーカーがあった。途端に目を剥いた。
 光は静かに靴を脱ぐ。細い廊下を摺り足で歩き、突き当たったドアの前で立ち止まる。微かなテレビの音が聞こえた。二人の楽しげな会話に片方の口端が不自然に吊り上がる。
 感情の爆発に等しくドアは開け放たれた。部屋にいた二人の男性が驚きの表情で振り返る。
「お、おい、ちょっと待ってくれ。これは違うんだ」
 大悟は上ずった声で立ち上がる。肯定するように一緒にいた男性は頻りに頷いた。
 二人と対照的に光は落ち着いた調子で言った。
「やはり来るべきタイミングではなかったようですね」
「いや、だから違うんだって。高校の時のクラスメイトで久しぶりに地元に帰ってきたんだよ」
「部屋の独特な臭いでわかります。ゴミ箱を調べてはっきりさせましょうか?」
「それは……ごめん! 俺の好きなアイドルに少し似ていて魔が差したんだ! 本当にごめんなさい!」
 大悟は手を合わせて頭を下げた。相手の男性は、知らなかったんだ、と涙目となって訴える。
「ウソなのに認めたわね」
 光は筋力を活かして跳んだ。ドロップキックの姿勢で鬼の形相となった。
「最愛の俺がいながら、ふざけんじゃねえぞおおおおお!」
 怒りの一撃で大悟は吹き飛んだ。後ろにあった家庭用ゲーム機が犠牲となった。
 光は素早く起きて震える男性の前に立った。厚みのある手を合わせて関節を鳴らす。
「人の男に手を出したお前、覚悟はできているんだろうな」
「ご、ごめんなさい! もうしませんから!」
「……一回はしたんだな」
 怒りで震える声を聞いて、あ、と短い声を漏らす。光の野太い腕が喉元に炸裂。ラリアットを食らった男性は床をゴロゴロと転がった。

 その日、アパートの一室は三人の男性で修羅場となった。

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