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ワイが文章をちょっと詳しく評価する!【212】

809 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/04(木) 04:51:35.77 ID:txQuehyB0.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

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只今、八作品!(`・ω・´)

810 :この名無しがすごい! :2021/03/04(木) 17:58:28.38 ID:fbJ78uK+0.net
>>808脱字しちゃった
下から15行目
これ愛の鞭なのだ。→これは愛の鞭なのだ。
ツッコまれる前に

811 :シャム猫 :2021/03/04(木) 18:02:51.31 ID:e7dSbTg6F.net
平日の午前3時や午前4時にこんなママゴト杯の作文を必死で投稿するとか、やはり、ここはネカフェ生活者のガイジな暇人オッサンワナビーの集まりではないのか

812 :シャム猫 :2021/03/04(木) 18:04:43.78 ID:e7dSbTg6F.net
ローソンは、ロソーンか、なるほど
ならセブンはセブーンかもであるな

813 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/04(木) 19:16:06.71 ID:txQuehyB0.net
今日は作品が投稿されそうな気配がないので呑むとしよう!

書斎と台所が離れているので投稿されても気付かないかも、
と伏線を張っておく! これで心置きなく呑める!(`・ω・´)修正しないのだろうか!

814 :シャム猫 :2021/03/04(木) 19:28:10.84 ID:Z5pfn63d0.net
ワイくんはノートパソコンしかなくて、それを家中持ち歩いているはずであるのにまたそんなおかしな設定を付け足したのか、やれやれであるな

815 :シャム猫 :2021/03/04(木) 19:29:49.73 ID:Z5pfn63d0.net
しかも、台所だとか、昭和の爺丸出しであろう
今時は、皆がキッチンと言うであろう

816 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/04(木) 19:41:39.17 ID:txQuehyB0.net
家自慢になるので反論はしない!
豪壮な日本建築の建物にキッチンは似合わない!
台所や炊事場の方がしっくりくる!

筆を折って久しい者に語っても意味はない!(`・ω・´)ノシ ばいびー!

817 :シャム猫 :2021/03/04(木) 19:48:21.16 ID:Z5pfn63d0.net
ただの山奥の過疎地のボロ家を無償で借りているだけの山奥ニートのワイくんがまた虚言を吐いているのか、やれやれであるな

818 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/04(木) 20:57:35.20 ID:JMchL5b8p.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
 状況を素早く理解しなければ。
 いや、それより一刻も早くここを立ち去るべきだ。
 三月の澄んだ夜空。立ちのぼる湯けむり。全裸の俺。
 そして、脱衣所の方から聞こえてくる……女の声。
 誤って女の露天風呂に入るなんて、俺はとんだ間抜け者だ。
 もっとちゃんと入り口で確認していれば、こんな事にはならなかった。
 先客がいなくて貸し切り同然だ、とつい浮かれてしまった事が油断に繋がったのだ。
 頭を抱えてうなだれる。手には心許ない手ぬぐい一枚だけ。
 目の前にあるのは、広々とした露天風呂。
 前にも後ろにも逃げ場はない。
 俺は露天風呂の真ん中で膝から下、湯に浸かったまま動けないでいる。
 くそ、どうすれば。
 と無駄に考えている間に、二人の女が湯船に近づいてくる。
 隠れるスペースなんてある訳なかった。
 相手が気づいて、こっちを見る。もろに目があった。
「きゃー、男がいるわっ」
「ち、違うんだ。待ってくれ、訳を……」
「やだ……気持ち悪いっ、近寄らないで!」
「頼む……!」
 誤解だ、と言う前に俺は、女から顔面を拳で殴打されていた。
 ザッパーン!!
 思い切り後ろに吹っ飛ばされ、俺はそのまま沈み、挙句に湯船の底で後頭部を強打し、意識が途絶えた。
 気づいた時には、脱衣所だった。
 そばには風呂屋の店主がいて、仰向けの俺を険しい顔つきで見下ろしている。
 気絶した俺を湯船から抱え出し、パンツを履かせたのは店主のようだ。
「女の露天風呂に入るなんて変態野郎が」
「勘違いだっ、話を聞いてくれ!」
「五月蝿いっ」
「そんな……本当に悪意はなかったんだよ」
 決して意図した事ではなかったのに、まるで犯罪者扱い。
 ひどい仕打ちだ。
 いくら独身でハゲで中年太りしてるからって、見た目で判断するのは如何なものか。
 折角の一人旅だと言うのに、これじゃあ思い出もクソもない。
 別に若い女の体を見ようとした訳ではなかった。ただ少しだけ視界に入っただけだ。
 俺は三次元の女よりも、二次元の女を愛すると決めた。もう随分と前に。
 いや、そんな事を考えている場合じゃない。
 そうこうしてる間に、耳を塞ぎたくなるようなサイレンの音が響いてくる。
 数分後、正義感溢れる若い警察官が脱衣所にやってきた。
 さしずめ店主が通報したのだろう。
 警察官は挙動不審の俺の姿を見つけるや否や、見下した表情で言った。
「事情は詳しく聞いた。あんた良い歳して恥ずかしいと思わないのか?」
「だから、そういう気はさらさらなくてですね」
「被害者の話を聞いたら、そういう気満々としか思えん。取り敢えず詳しい話は署で」
「そんな勘弁して下さい。俺は悪くないんです!」
 そうだ。俺は悪くない。ただ本当に間違って女湯に入った。
 そして、後から入ってきた若い女と鉢合わせてしまっただけで。
 なんでそれだけで変態扱いされるんだ。おかしい。何故だ。何処に落ち度がある。よく考えろ。
 ……あぁ、そう言えば。
 裸の女が近づいてきて、向こうがこっちに気づく前、俺は相手の顔を見て、ふと思ったな。
 俺の愛する魔法少女センチメンタルの霧崎ライムちゃんにちょっと似てるって。
 そしたら、ライムちゃんの限定フィギュアを一昨日ゲットした事を思い出して、再び喜びが込み上げてきて、帰ったら存分に愛でてやろうと思って……。
 それだけのはず。
 帰る楽しみが出来たってだけの事。
 女と目が合った時も、ライムちゃんの事しか考えていなかった。女に手を出そうとしたり、何か卑猥な事を言ったりもしてない。ただ純粋にライムちゃんの事で頭の中がいっぱいだっただけで。
 いや、待てよ。あぁ、違う。大事な事を忘れていた。
 ……なるほど。確かに。それなら合点がいく。ふむふむそうか。
 間違いない。ライムちゃんに想いを馳せていた俺は多分、女と目が合ったあの時。
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

819 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/04(木) 21:26:43.18 ID:txQuehyB0.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

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>818

只今、九作品!(`・ω・´)トイレに立ったついでに見てよかった!

820 :この名無しがすごい! :2021/03/04(木) 21:55:17.27 ID:rP/nnfH30.net
ワイくん家は書斎あるのか、羨ましいぞ……

821 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/04(木) 22:08:00.29 ID:ADyqi7EL0.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
 街に突風が吹き荒れ、目の前を歩いていた女性のスカートが大きく捲れ上がった。
 舞台の幕が上がるように、長い黒髪と共につむじ風に踊るグレーのフレア。その奥から登場した、黒のストッキングに包まれた長い脚。膝上からわずかに顔を覗かせる太腿の白い肌。
 そしてモノトーンの背景の中にただ一つ色彩を顕にする、水色のショーツ。僕はその鮮烈なコントラストに、目を奪われた。
 だが僕が立ちすくんだのは、そのせいではない。その直後、慌ててスカートを抑えた女性が振り返りジロリと僕を睨みつけてきた、その眼を見てしまったからだ。
 彼女は僕と視線が合うと、その瞳に更なる怒りと蔑みを込め、それからプイっと前を向いて足早に去って行った。
 別に僕が悪い訳じゃないのに、なんて理不尽な。とは思わなかった。僕の脳裏にはただ、水色のショーツと蔑むように睨みつけてきた彼女の視線だけが、はっきりと焼き付いていた。
 そう、僕は一目惚れしてしまったのだ。
 それからの僕は、木枯らしの吹きすさぶ冬の街を毎日のように彷徨い歩いた。彼女に会いたい、そしてあのシーンをもう一度……。いや、そこまで妄想を膨らませた訳ではないが、でも僕には確信があった。彼女こそきっと、運命の人だと。
 そして一か月が過ぎ、僕は再び彼女と出会った。
 長い黒髪と、先日と同じような、でも今日は薄茶のフレアスカート。人ごみの中にその後ろ姿を見つけて、僕は思わず駆け出した。
 その時、再び突風が吹き荒れ、彼女のスカートを巻き上げた。
「あっ」と僕が声を上げるのと、彼女が後ろを抑えながら振り返るのが同時だった。
 ジロリと睨みつけて来るその視線は、記憶の中にあったものと同じ。そして水色のショーツも。僕は動悸が速くなるのを感じながら、彼女に声をかけた。
「あの……」
「何ですか?」
 冷たい声。僕のことなんか憶えてもいないのだろう。
「先日はどうも。今も……あの……」
 途端に、彼女が大きく眼を見開いた。僕を思い出したのだ。
「何なんですか、あなた。偶然とはいえ、ちょっと気持ち悪いですよ」
「いえ、偶然じゃないんです。ずっと貴女を探していました。貴女のことが忘れられなくて」
「ストーカー? やめて下さい、本当に気持ち悪い」
「ごめんなさい。でも、真剣なんです」
 嘘じゃない。僕は真剣に彼女を求め、そして彼女にとっても僕こそが運命の人であるはずなのだ。それを確かめるために、僕は言葉を発した。
「えっと、あの……」
「何ですか、言いたいことがあるならはっきり言って下さい」
「水色がお好きなんですね」
 彼女の顔色が変わった。
「ああああ、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い! 鳥肌が立つ!
 本当に何なんですかあなた、何言ってるんですか! その変な眼付きもやめて下さい! 豚みたいな体して、さっきから何をハアハアと息荒くしてんですか!」
「ごめんなさい」
「ごめんなさいじゃないですよ! 早く消えて下さい、死んでください!」
「ごめんなさい、ごめんなさい。あ、でも僕も黒のストッキングは好きです」
「ふざけんな! もっと真剣に謝れ! ほんと最低! あんたなんか生きてる価値あるの?! このみっともない豚! ウジ虫! 踏みつぶしてあげるからそこにケツ出せ!」
「有難うございます、有難うございます」
 僕はひたすら頭を下げながら、怒りと侮蔑に唇を震わせ罵声を浴びせかけてくる彼女の顔を、チラリと盗み見た。
 ああこれだ、間違いない。僕達はやっと出会うことができたんだ。
「ゴミ! クソ虫! 包茎野郎!」
 道路に這いつくばり頭上から降りそそぐ罵倒の嵐に身を震わせながら、僕は喜びに頬が緩むのを止められなかった。
 そして街中で人目もはばからず、大の男を踏み付けにして口汚くののしり続ける彼女の顔もまた、僕と同じ。
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

822 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/04(木) 22:16:54.16 ID:652CrFRtF.net
突然の出来事に立ち尽くす。
生きていれば誰もが遭遇するこの事態には、内容も衝撃も人それぞれだと思う。けれど、僕が体験したあの事態は普通の人のそれとは次元が違った。

その日の空は秋に澄んでいた。僕は表参道の欅に背を預けながら、当時婚約していた彼女と国際通話をしていた。
この時、僕は彼女から婚約破棄を告げられていた。その前触れは皆無だった。同棲生活も4年を過ぎてたし、保険プランの優遇を口実に結婚を提案してきたのは彼女だった。
結婚式場の予約済みで、指輪だって不備はなかった。
さらに港区のタワーマンションだって現金一括で購入していた。お互いが貯金の8割をはたいた。全てが順調で過不足がなかったはずだ。絆は人生レベルで強固だった。
けれどそれは、彼女の出張先の海外の街で待ち受けていた、落とし穴のような恋に呑み込まれてしまった。

これが晴天の霹靂か。確かに今日は晴れている、と思いながら、涙を堪えている僕に、彼女は「全部、あなたで処分して」とそっけなく言った。そうして通話は切れた。
「捨てないとなあ」僕は自分の婚約指輪に視線を落としながら、目を細めた。ダイヤモンドはいつもよりも眩しく見えた。鼻の奥が熱くて、痛い。
胸に敗北と陰鬱を抱えたまま、タワーマンションに帰宅。ドアを開けかけた時、室内の闇の向こうに、人の気配を感じた。
泥棒? という疑問は瞬く間に怒りに変化。泥棒を怒鳴りつけ、死闘を演じたくなった。
照明スイッチを押すと、闇の空間が白く弾けて……僕は突然の出来事に立ち尽くした。
黒髪の少女が立っていた。戴いたカチューシャには宝石が星のように散らばっていた。
が、それらの輝きよりも、少女の奥まった瞳に宿る独特な光の方が印象的で、どこか既視感があったが、思い出せない。
真紅のドレスの胸元は、大きくVの形に開いていた。そのウエストは高く、全体に金糸で薔薇の刺繍が施されていた。まるで中世の映画の貴族だ。
「……仮装大会?」
長い対峙の後に僕がそうつぶやくと同時に、少女は小さく叫んで、飛び上がった。牧草の匂いが漂ってきて、僕の鼻をついた。

その後、色々な試行錯誤と悪戦苦闘の末に、彼女の名前がリザだと分かった。リザは14歳で、出身はイタリアのフィレンツェ。
婚約者と喧嘩をして、彼の頬をひっぱたいてしまって納屋に駆け込んだ末に……。この部屋に迷い込んでしまったそうだ。
うん。信じがたい。しかも、婚約者は28歳の絹商人で、2回妻と死別した男やもめだという。
前妻との間に1歳の子どもがいて、彼女には不安な未来が待ち受けているそうだ。全て不可思議だが、僕はリザの言葉を信じた。
だって、OKグーグルが翻訳に苦労する訛りの強いトスカーナ語をあやつる少女は、アメリカの存在を知らなかったから。
その他、水道、電化製品、自動車といったあらゆる品が、リザにとっては未知の機構で奇蹟だったから。
極めつけは……専門店で鑑定してもらったら、リザの宝石は本物だったから。

僕達は1か月の期間を共に過ごした。リザに散々振り回される日々の中で、僕は元婚約者の事を忘れた。
その事実に気づいたのは、遠出した先で、リザと2人で、夕に染まる田園を眺めていた時だった。
「夕の雲は赤いですね。まるで血のようです」「うん」「故郷の空も、同じ色でした」
リザはこちらを見上げ、その黒い瞳で、僕をじっと強く見上げた。
「あなたがいなかったら、思い出すのは、もっと遅かったと思います」
返事を考えあぐねていると、リザの輪郭がぼやけ始めて、そして、田園に溶けるように、消えてしまった。
それからちょうど1週間後の日曜日。僕は上野の美術館を訪れた。リザの時代の、血のように赤い雲が描かれている絵を、フレスコ画を期待したからだった。
が、期待は予想外の方向に裏切られた。強化ガラスの向こうに……。リザがいたからだ。涙腺の崩壊する僕の視線の先には、レオナルドダヴィンチの作品があった。
額縁の中で、成人をしたリザが、微笑みを浮かべていた。

モナ・リザ。モナは『ma donna』の省略。意味は、私の貴婦人。

翌日、僕は銀座の画廊で、モナ・リザの原寸大のレプリカを購入。以来、夕方に在宅している時は、陽が沈むまで、その絵画を眺めるのが習慣となっている。
室内を闇が完全に満たしたと分かる時、僕は一度目を閉じる。そうして、あの頃のリザを瞼の裏に浮かべる。そうすると、まるで祈るもののように、自分の頭が自然と垂れるのが分かる。
何を僕は祈るのだろう? リザとの再会? 向こうでの彼女の幸福? 分からないままに、顔を上げて、照明を点灯する。
このルーチンにそって、今日も額縁の中の絵を見る。モナ、愛する貴婦人という通称で崇められるリザがいた。
薄っすらと笑みを浮かべていた。

823 :シャム猫 :2021/03/04(木) 22:18:36.95 ID:Z5pfn63d0.net
>>820
ワイくんは本をまるで読まないので、書斎などがあるはずもないであろうに

824 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/04(木) 22:18:59.44 ID:652CrFRtF.net
突然の出来事に立ち尽くす。
生きていれば誰もが遭遇するこの事態は、内容も衝撃も人それぞれだと思う。けれど、僕が体験したあの事態は普通の人のそれとは次元が違った。

その日の空は秋に澄んでいた。僕は表参道の欅に背を預けながら、当時婚約していた彼女と国際通話をしていた。
この時、僕は彼女から婚約破棄を告げられていた。その前触れは皆無だった。同棲生活も4年を過ぎてたし、保険プランの優遇を口実に結婚を提案してきたのは彼女だった。
結婚式場の予約済みで、指輪だって不備はなかった。
さらに港区のタワーマンションだって現金一括で購入していた。お互いが貯金の8割をはたいた。全てが順調で過不足がなかったはずだ。絆は人生レベルで強固だった。
けれどそれは、彼女の出張先の海外の街で待ち受けていた、落とし穴のような恋に呑み込まれてしまった。

これが晴天の霹靂か。確かに今日は晴れている、と思いながら、涙を堪えている僕に、彼女は「全部、あなたで処分して」とそっけなく言った。そうして通話は切れた。
「捨てないとなあ」僕は自分の婚約指輪に視線を落としながら、目を細めた。ダイヤモンドはいつもよりも眩しく見えた。鼻の奥が熱くて、痛い。
胸に敗北と陰鬱を抱えたまま、タワーマンションに帰宅。ドアを開けかけた時、室内の闇の向こうに、人の気配を感じた。
泥棒? という疑問は瞬く間に怒りに変化。泥棒を怒鳴りつけ、死闘を演じたくなった。
照明スイッチを押すと、闇の空間が白く弾けて……僕は突然の出来事に立ち尽くした。
黒髪の少女が立っていた。戴いたカチューシャには宝石が星のように散らばっていた。
が、それらの輝きよりも、少女の奥まった瞳に宿る独特な光の方が印象的で、どこか既視感があったが、思い出せない。
真紅のドレスの胸元は、大きくVの形に開いていた。そのウエストは高く、全体に金糸で薔薇の刺繍が施されていた。まるで中世の映画の貴族だ。
「……仮装大会?」
長い対峙の後に僕がそうつぶやくと同時に、少女は小さく叫んで、飛び上がった。牧草の匂いが漂ってきて、僕の鼻をついた。

その後、色々な試行錯誤と悪戦苦闘の末に、彼女の名前がリザだと分かった。リザは14歳で、出身はイタリアのフィレンツェ。
婚約者と喧嘩をして、彼の頬をひっぱたいてしまって納屋に駆け込んだ末に……。この部屋に迷い込んでしまったそうだ。
うん。信じがたい。しかも、婚約者は28歳の絹商人で、2回妻と死別した男やもめだという。
前妻との間に1歳の子どもがいて、彼女には不安な未来が待ち受けているそうだ。全て不可思議だが、僕はリザの言葉を信じた。
だって、OKグーグルが翻訳に苦労する訛りの強いトスカーナ語をあやつる少女は、アメリカの存在を知らなかったから。
その他、水道、電化製品、自動車といったあらゆる品が、リザにとっては未知の機構で奇蹟だったから。
極めつけは……専門店で鑑定してもらったら、リザの宝石は本物だったから。

僕達は1か月の期間を共に過ごした。リザに散々振り回される日々の中で、僕は元婚約者の事を忘れた。
その事実に気づいたのは、遠出した先で、リザと2人で、夕に染まる田園を眺めていた時だった。
「夕の雲は赤いですね。まるで血のようです」「うん」「故郷の空も、同じ色でした」
リザはこちらを見上げ、その黒い瞳で、僕をじっと強く見つめた。
「あなたがいなかったら、思い出すのは、もっと遅かったと思います」
返事を考えあぐねていると、リザの輪郭がぼやけ始めて、そして、田園に溶けるように、消えてしまった。
それからちょうど1週間後の日曜日。僕は上野の美術館を訪れた。リザの時代の、血のように赤い雲が描かれている絵を、フレスコ画を期待したからだった。
が、期待は予想外の方向に裏切られた。強化ガラスの向こうに……。リザがいたからだ。涙腺の崩壊する僕の視線の先には、レオナルドダヴィンチの作品があった。
額縁の中で、成人をしたリザが、微笑みを浮かべていた。

モナ・リザ。モナは『ma donna』の省略。意味は、私の貴婦人。

翌日、僕は銀座の画廊で、モナ・リザの原寸大のレプリカを購入。以来、夕方に在宅している時は、陽が沈むまで、その絵画を眺めるのが習慣となっている。
室内を闇が完全に満たしたと分かる時、僕は一度目を閉じる。そうして、あの頃のリザを瞼の裏に浮かべる。そうすると、まるで祈るもののように、自分の頭が自然と垂れるのが分かる。
何を僕は祈るのだろう? リザとの再会? 向こうでの彼女の幸福? 分からないままに、顔を上げて、照明を点灯する。
このルーチンにそって、今日も額縁の中の絵を見る。モナ、愛する貴婦人という通称で崇められるリザがいた。
薄っすらと笑みを浮かべていた。

825 :この名無しがすごい! :2021/03/04(木) 22:21:16.02 ID:652CrFRtF.net
>>823
>>824に訂正します。いやあ、焦った。でもとりあえず参加作品を投稿できて良かった。楽しんでもらえたら幸いです。

826 :シャム猫 :2021/03/04(木) 22:22:46.69 ID:Z5pfn63d0.net
卑屈なテシガイジくんは、わざわざファミマで作文を投稿しているのか、やれやれであるな
家のネット料金も払えないのでそうなったわけか、なるほど

827 :シャム猫 :2021/03/04(木) 22:24:22.68 ID:Z5pfn63d0.net
平日の夜の十時にわざわざファミマに行って、ドヘタクソな作文を投稿するとか、まさに滑稽過ぎるオッサンの姿であるわな

828 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/04(木) 22:37:14.33 ID:txQuehyB0.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

>742
>743
>747
>758
>759
>760
>804
>808
>818
>821
>824

只今、十一作品!(`・ω・´)

829 :美世だが :2021/03/04(木) 22:50:10.15 ID:1dTNK1+20.net
はいおっちゃんでーす
今回のワイスレ杯参加できそうにない
なんか今作に気持ちが移ってるから
今は熾烈な争いの只中
ハーフタイムショーにでもなるかな
そんなん邪魔って話もあるけど漫談します
俺の大学時代の友達さ、スーパーマンなんだよ
どれぐらいスーパーマンかというとまず博識
博識っつっても世の中そんなやついっぱいいるだろ?
だがヤツは一味違うんだ
誰も知らない事を知っている
どんな知識だって?
地底人の出入口を知ってるwwwwww
ちょwwwww
視覚外からの攻撃wwww
すげえwwww
そもそも出入りしてんのかwwwww
そんでさ、それどこだって聞いたんだよ
そしたらなんて言ったと思う?
天下茶屋の公衆便所wwwwww
アステカの遺跡とかイギリスのストーンヘンジとかじゃねーのかよwwww
でもそいつ地底人の知識もスゲーんだよ
地底人て目が退化して無いんだって
じゃあどうやってセンシングしてるかって聞いたらさ
超音波出して反響音を耳で拾ってるんだって
だから耳が大きいんだってさ
それどんな耳だよっていったらさ
絵にかいてくれたんだよ
そしたらさ
完全にエルフwwwww
無駄にクオリティ高いwwww
つぶらな瞳wwwww
ちょwwwww
目がないって言ったじゃんwwwwww
まあそいつ知識も凄いが経験も凄い
どれぐらい凄いかっていうと
宇宙人にさらわれてSEXしたwwww
気持ち悪くないの?って聞いたらさ
菅野美穂に似てただってwwwっww
それお前が好きな女優wwww
何処でさらわれたのか聞いたらなんて言ったと思う?
コーナン八尾店の駐車場wwwww
ワイオミングのデビルスタワーとかじゃねーのかよwwwww
でもそいつまだスキルがあるんだよ
なんと過去透視能力
5年ぐらいは遡れるそうなんだ
そんで俺さ、課題与えたんだよ
あそこのコンビニの可愛い田中さんの過去教えろって
そしたら言ったんだよ
もと女子高生だってwwwww
ちょwwwww
でも一応俺、本人に確かめたんだよ
そしたらさ
ほんとに2年前まで女子高生だったwwwwww
コイツの能力本物だったwwwwwうぇうぇ
常識的考察ってやかましわwwwww

830 :この名無しがすごい! :2021/03/04(木) 23:39:13.94 ID:IlPedRWe0.net
こりゃ30作超えるかな

831 :この名無しがすごい! :2021/03/04(木) 23:51:15.32 ID:OxZEyQKU0.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品
よろしくお願いします。

突然の出来事に立ち尽くす。
テレビのアナウンサーは緊迫した表情で繰り返した。
「北朝鮮が弾道ミサイルを発射しました。予想される着弾地点は東京です、5分後に到達します」
東京、東京だと。そ、そんな馬鹿な。オレが住む場所じゃないか。
「う、うそだろ、ドッキリ番組か」
し、しかし、これはNHKのニュースだ。オレは体が恐ろしく震えだした。
「な、なにやってくれてんだよ、ふざけんな、どういうことだよ、どうすりゃいいんだ、人の命をなんだと思ってんだ」
わけがわからない。どうなってんだ。オレはどこへ逃げりゃいいんだ。もしかしてオレは死ぬのか?
「あのデブ、どんだけ暴君なんだ、残酷すぎる、サイコパスめ、自分だけよけりゃいいのか、エゴイストめ」
アナウンサーがあらたな原稿をあわてて読み始める。
「訂正いたします、予想される着弾地点は大阪です。東京ではなく、大阪です」
オレはワナワナと震え、口を開けたまま、言葉が出なかった。恐れと焦りと怒りはおさまらない、オレはその場にへたり込む。
ああ。
自分がどんな顔をしているのか、誰にも見られたくない。なぜなら。オレは。
薄っすらと笑みを浮かべていた。

832 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 00:22:05.45 ID:38zS92Wt0.net
木曜日時点で11だから30行くかもね。難易度は分からんけど、
こだわりが無ければ書きやすいお題だから。

833 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 01:14:54.26 ID:+kt6b2VEd.net
あかん
なんもうかばん

834 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/05(金) 02:06:07.54 ID:l7LfUPop0.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
 陛下が苦悶の表情を浮かべながら胸を押さえられた。声にならぬ声を上げられると、その場で頽れる。
 園遊会は騒然となった。絹を裂くような妃がたの悲鳴。『陛下! 陛下!』と必死に呼び掛ける宦官の叫び。『医官を呼べ!』と宮官長が大声で指示を出している。
 月英妃の後ろに控えていた私は、呆然と見ていることしか出来なかった。
 翌日、陛下は崩御された。
 
 朝の務めを果たすべく厨房に向かう。火を使い、ぬるま湯を盥に張る。両手で持ち上げると、主人である月英さまのお部屋へと足を向けた。
 一歩進む度に気鬱になる。
 敬愛する主のお顔を見るのが、ここ数日辛くてならなかった。しかし会わないわけにもいかない。
 とうとう、お部屋の前に着いてしまう。一旦盥を床に置くと、意を決して口を開く。
「水蓮です。入ります」
 戸を開き、盥を持ち上げてから入室する。
 月英さまのお部屋は、前後二室に区切られていて、前室が書斎、後室が寝室となっている。
 普段ならまだ寝ておられる時間だが、月英さまは既に起きていた。書斎にある長椅子(カウチ)に寝衣姿で横になっている。表情には陰があった。悲嘆、その言葉がこれ以上なく似合う有様だ。
「月英さま」
 呼び掛けに、ゆるゆるとお顔を持ち上げられ、虚ろな目で私を見る。
「水蓮」
 か細い声。私は常と同じ態度を心掛け『朝のお支度の手伝いをいたします』と返した。
 盥のぬるま湯で洗顔をしてもらい、その間に衣装箪笥から白生地に黒の刺繍がされた襦裙――喪服を取り出す。
 着衣を手伝い、次いで櫛を手に取る。
「御髪を梳かせて頂きます」
 背後に回り、少しほっとする。月英さまの痛ましいお顔を見なくて済むから。
 長い金砂の御髪を梳いていく。
 月英さまは、漢人ではなかった。北の異民族討伐の折に捕虜となり、都に連れて来られ、そこで偶々陛下の目に留まり、妃となった。
 長い金砂の御髪、翠の瞳、白い肌、嫋やかな歌声は簫のよう。異民族の余りに麗しい佳人を、陛下は溺愛した。
 遠く異国に連れてこられた月英さまは、初めの頃は人目を憚らず泣き、恨み言を繰り返していた。
 しかし陛下が何くれと気に掛け、月英さまの憂いが晴れるようにと心を砕き続ける内に、月英さまも陛下に心を開かれるようになられた。
 最近では、お二人の仲睦まじいお姿を拝見できるようになったのに……。
「水蓮」
 月英さまがぽつりと呟く。
「また一人になってしまったわ。私は、これからどう生きればいいの?」
「月英さま……」
 言葉に詰まる。何事か、慰めの言葉を口にすべきなのに、何も言うことが出来ない。
「……ごめんなさい。お前を困らせることを言ってしまったわ」
 振り向かれた月英さまが済まなそうな顔をされる。
 ――ッ! 本当にお辛いのはご自分なのに、このお方は……。
「お下がり。少し一人にさせて頂戴」
「はい」
 退室を促され、私は逃げるように背を向ける。
 ああ、自分は何と浅ましい人間だろう。
 慰めることが出来ぬばかりか、退室を促され内心安堵するとは。
 自己嫌悪を覚えながら、そそくさと足を進める。が、あることに思い当たり『あっ!』と声を出しそうになる。
 花瓶の水替えを失念していたことに気付いたからだ。思わず後ろを振り返ると、月英さまのお顔が視界に入る。
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

835 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/05(金) 03:22:46.06 ID:k5GuZ5S10.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

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>834

只今、十三作品!(`・ω・´)

836 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/05(金) 03:28:35.75 ID:k5GuZ5S10.net
>>829
その友人に次に会えることがあれば実践して欲しい!

美世君は何気ない笑顔を作る!
視点の定まらない目で友人は今日も地底人の話に興じる!
美世君は、うんうん、と理解を示した頷きを繰り返し、
手にしたハンカチで友人の口元の涎をそっと拭う!
話を聞き終わった美世君は人を安心させる笑みで、
「もう頑張らなくていいんだよ」と云いながら友人を抱き締める!

実に目に沁みる話ではないか!(`・ω・´)逆に美世君は頑張れ! 逃げちゃダメだ!

837 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/05(金) 03:33:15.66 ID:k5GuZ5S10.net
最近はこのような時間帯から仕事を始めている!
実に静か! 集中力が高まる、ような気がする!
同じ豆のブレンドのコーヒーもやや美味しく感じられる!
程よい寒さが旨味に加わる! 炬燵も執筆を手助けしてくれる!

さて、やるとしよう!(`・ω・´)後宮物を目にするとリーマン君を思い出す!

838 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 07:36:23.90 ID:u4Aq0y+7a.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
「何してるの?冷めちゃうじゃない。早く座りなさい」
 テーブルに置かれた二つのホットコーヒーに男は驚いた。
「えっ!?あぁ……うん、いやまさか君が?」
「ここは私の家で、私のリビングよ?他に誰がコーヒー入れるっていうのよ」
「君はその……ちょっと変わった女性だったから」
まさかコーヒーを出してもらえると思わなくて、男は戸惑いを隠せない。
殺風景な部屋だった。ガラステーブルと椅子。灰皿、置時計、伏せられた写真立て。
「正直に言えば?『冷徹で無表情な女』って」
「そんなこと僕は言ってないよ!ま、周りはそう言ってたかもしれないけど……」
「別にいいけど。で、何しに来たの?意味もなく元クラスメイトを尋ねにきたわけじゃないんでしょ?」
『元クラスメイト』その表現がチクリ、と男の胸に刺さる。
「……ただクラスメイトを尋ねに来ただけだよ」
 何を何から話せばいいかよく分からなくて、異様に遅い秒針だけが聞こえた。
 コーヒーを啜る彼女をちらりと見る。彼女は大人っぽくなっていた。短くなった黒髪、制服代わりのリブニットと黒のスキニー。
「何?」女と目が合った。変わらないものもあった。退屈そうな顔。綺麗で冷たい目。
「じゅ、十年振りだね!今は何をしてるの!?」
じっと見つめていたのがバレたと思い、慌てて取り繕うため、うっすらと笑みを浮かべる。
「綺麗で身長も高いからもしかしてモデルさんとかーー」「やめてよねその愛想笑い。気持ちが悪い」視線と言葉が、言葉を遮る。
「ご、ごめん」
 彼女はコーヒーを置き、
「……本来、『笑う』という行為は、屈服を意味するそうよ。プライドの高いお笑い芸が笑うのを我慢するように。笑ってしまえば目の前にいる人間に屈服するの。分かる?」
「……だから君は、高校のころ笑わなかったの?」
「屈服という、本来の意味を知っていたわけじゃない。ただ嫌いな同級生で笑うことがなかった、それだけよ」
冷たい刃が心を刺していく。
「うっすら笑みを浮かべる奴。二月にチョコレートを渡すような奴。そんな奴らが大嫌いなの」
「ご、ごめん」
また長い沈黙が流れる。男はどんどん胃が小さくなっていくのが分かった。
小さくなりすぎてどこかへ飛んで行ったと勘違いするほどの時間が経て、ようやく男は用件を口にした。
「……あの日、僕は現場にいたんだ」
 無表情の彼女の眉が動く。
「サッカー部の片付けのために体育倉庫に行って……君が先輩にれ……レイプされてたのを、僕は見つけた」
顔を上げて彼女を見る。
「……そうあの日に」
視線の合わぬまま、彼女は呟くように思い出す。
「声を上げようとしたんだ……でもあいつら」
「あの日、いたのね」
「謝りたくて……その、もしあの日あの場所で、僕が声を上げていたらなにか変わったんじゃないかって……ずっと謝りたくて……でも君は学校に来なくなって」
「そっか……」
「本当にごめん……」
男は泣きながらテーブルに頭をつける。
女は静かに立ち上がり、
「コーヒー、冷めちゃったわね」
と口をつけていない男のコーヒーと自分の空のカップを台所へ持っていく。
二つ分のカップを持ち、テーブルに戻る。
頭を下げ細い声で謝る男が昔の姿と重なり、女は窓の外へ視線を逃がす。ぶっきらぼうな言葉だった。
「……今は、映画館のスタッフとして働いてるわ」
「えっ?」
それから、女は。抑揚のない言葉を話しはじめた。先ほどまでのことをなかったかのように。男は戸惑いながら、それに合わせる。そのうち男がしゃべり、女が相冷たい言葉を放つ。男は苦笑いをし、気持ち悪いと怒られ、それを受け入れる。
映画を見る約束をし、元彼氏は玄関の扉を閉めた。彼女は大きく肩をおろし、煙草に火をつけた。どうして彼の前では吸わなかったのか、考える気にもならなかった。寝転がった写真立てを手に取り、一度だけ行った映画館デートの写真を眺める。
「自分が楽になるために、謝りたかったのよねあなたは」
 自分勝手な奴だ、と心の中で思う。でも謝罪を受け入れれば、少なくとも彼は救われる、そう思った。
女はあの日について思い出す。
寒空の下、彼の部活が終わるのを待っていた。
らしくもなく、バレンタインのチョコを作った。初めてだった。
体育倉庫に連れていかれ、男達に襲われた。初めてだった。
異物が入ってくる感覚がとにかく恐ろしかった。やめてと叫んでも止まらず。そして何度も叫び、声が枯れ。どうしようもなくなったから。
媚びへつらうかのように。私は。
うっすらと笑みを浮かべた。

839 :蜜柑箱『第五十六回ワイスレ杯参加作品』 :2021/03/05(金) 07:41:18.26 ID:u4Aq0y+7a.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
「何してるの?冷めちゃうじゃない。早く座りなさい」
 テーブルに置かれた二つのホットコーヒーに男は驚いた。
「えっ!?あぁ……うん、いやまさか君が?」
「ここは私の家で、私のリビングよ?他に誰がコーヒー入れるっていうのよ」
「君はその……ちょっと変わった女性だったから」
まさかコーヒーを出してもらえると思わなくて、男は戸惑いを隠せない。
殺風景な部屋だった。ガラステーブルと椅子。灰皿、置時計、伏せられた写真立て。
「正直に言えば?『冷徹で無表情な女』って」
「そんなこと僕は言ってないよ!ま、周りはそう言ってたかもしれないけど……」
「別にいいけど。で、何しに来たの?意味もなく元クラスメイトを尋ねにきたわけじゃないんでしょ?」
『元クラスメイト』その表現がチクリ、と男の胸に刺さる。
「……ただクラスメイトを尋ねに来ただけだよ」
 何を何から話せばいいかよく分からなくて、異様に遅い秒針だけが聞こえた。
 コーヒーを啜る彼女をちらりと見る。彼女は大人っぽくなっていた。短くなった黒髪、制服代わりのリブニットと黒のスキニー。
「何?」女と目が合った。変わらないものもあった。退屈そうな顔。綺麗で冷たい目。
「じゅ、十年振りだね!今は何をしてるの!?」
じっと見つめていたのがバレたと思い、慌てて取り繕うため、うっすらと笑みを浮かべる。
「綺麗で身長も高いからもしかしてモデルさんとかーー」「やめてよねその愛想笑い。気持ちが悪い」視線と言葉が、言葉を遮る。
「ご、ごめん」
 彼女はコーヒーを置き、
「……本来、『笑う』という行為は、屈服を意味するそうよ。プライドの高いお笑い芸が笑うのを我慢するように。笑ってしまえば目の前にいる人間に屈服するの。分かる?」
「……だから君は、高校のころ笑わなかったの?」
「屈服という、本来の意味を知っていたわけじゃない。ただ嫌いな同級生で笑うことがなかった、それだけよ」
冷たい刃が心を刺していく。
「うっすら笑みを浮かべる奴。二月にチョコレートを渡すような奴。そんな奴らが大嫌いなの」
「ご、ごめん」
また長い沈黙が流れる。男はどんどん胃が小さくなっていくのが分かった。
小さくなりすぎてどこかへ飛んで行ったと勘違いするほどの時間が経て、ようやく男は用件を口にした。
「……あの日、僕は現場にいたんだ」
 無表情の彼女の眉が動く。
「サッカー部の片付けのために体育倉庫に行って……君が先輩にれ……レイプされてたのを、僕は見つけた」
顔を上げて彼女を見る。
「……そうあの日に」
視線の合わぬまま、彼女は呟くように思い出す。
「声を上げようとしたんだ……でもあいつら」
「あの日、いたのね」
「謝りたくて……その、もしあの日あの場所で、僕が声を上げていたらなにか変わったんじゃないかって……ずっと謝りたくて……でも君は学校に来なくなって」
「そっか……」
「本当にごめん……」
男は泣きながらテーブルに頭をつける。
女は静かに立ち上がり、
「コーヒー、冷めちゃったわね」
と口をつけていない男のコーヒーと自分の空のカップを台所へ持っていく。
二つ分のカップを持ち、テーブルに戻る。
頭を下げ細い声で謝る男が昔の姿と重なり、女は窓の外へ視線を逃がす。ぶっきらぼうな言葉だった。
「……今は、映画館のスタッフとして働いてるわ」
「えっ?」
それから、女は。抑揚のない言葉を話しはじめた。先ほどまでのことをなかったかのように。男は戸惑いながら、それに合わせる。そのうち男がしゃべり、女が相冷たい言葉を放つ。男は苦笑いをし、気持ち悪いと怒られ、それを受け入れる。
映画を見る約束をし、元彼氏は玄関の扉を閉めた。彼女は大きく肩をおろし、煙草に火をつけた。どうして彼の前では吸わなかったのか、考える気にもならなかった。寝転がった写真立てを手に取り、一度だけ行った映画館デートの写真を眺める。
「自分が楽になるために、謝りたかったのよねあなたは」
 自分勝手な奴だ、と心の中で思う。でも謝罪を受け入れれば、少なくとも彼は救われる、そう思った。
女はあの日について思い出す。
寒空の下、彼の部活が終わるのを待っていた。
らしくもなく、バレンタインのチョコを作った。初めてだった。
体育倉庫に連れていかれ、男達に襲われた。初めてだった。
異物が入ってくる感覚がとにかく恐ろしかった。やめてと叫んでも止まらず。そして何度も叫び、声が枯れ。どうしようもなくなったから。
媚びへつらうかのように。私は。
うっすらと笑みを浮かべた。

840 :蜜柑箱『第五十六回ワイスレ杯参加作品』 :2021/03/05(金) 07:52:17.03 ID:suIUOcf30.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
「何してるの?冷めちゃうじゃない。早く座りなさい」
 テーブルに置かれた二つのホットコーヒーに男は驚いた。
「えっ!?あぁ……うん、いやまさか君が?」
「ここは私の家で、私のリビングよ?他に誰がコーヒー入れるっていうのよ」
「君はその……ちょっと変わった女性だったから」
まさかコーヒーを出してもらえると思わなくて、男は戸惑いを隠せない。
殺風景な部屋だった。ガラステーブルと椅子。灰皿、置時計、伏せられた写真立て。
「正直に言えば?『冷徹で無表情な女』って」
「そんなこと僕は言ってないよ!ま、周りはそう言ってたかもしれないけど……」
「別にいいけど。で、何しに来たの?意味もなく元クラスメイトを尋ねにきたわけじゃないんでしょ?」
『元クラスメイト』その表現がチクリ、と男の胸に刺さる。
「……ただクラスメイトを尋ねに来ただけだよ」
 何を何から話せばいいかよく分からなくて、異様に遅い秒針だけが聞こえた。
 コーヒーを啜る彼女をちらりと見る。彼女は大人っぽくなっていた。短くなった黒髪、制服代わりのリブニットと黒のスキニー。
「何?」女と目が合った。変わらないものもあった。退屈そうな顔。綺麗で冷たい目。
「じゅ、十年振りだね!今は何をしてるの!?」
じっと見つめていたのがバレたと思い、慌てて取り繕うため、うっすらと笑みを浮かべる。
「綺麗で身長も高いからもしかしてモデルさんとかーー」「やめてよねその愛想笑い。気持ちが悪い」視線と言葉が、言葉を遮る。
「ご、ごめん」
 彼女はコーヒーを置き、
「……本来、『笑う』という行為は、屈服を意味するそうよ。プライドの高いお笑い芸が笑うのを我慢するように。笑ってしまえば目の前にいる人間に屈服するの。分かる?」
「……だから君は、高校のころ笑わなかったの?」
「屈服という、本来の意味を知っていたわけじゃない。ただ嫌いな同級生で笑うことがなかった、それだけよ」
冷たい刃が心を刺していく。
「うっすら笑みを浮かべる奴。二月にチョコレートを渡すような奴。そんな奴らが大嫌いなの」
「ご、ごめん」
また長い沈黙が流れる。男はどんどん胃が小さくなっていくのが分かった。
小さくなりすぎてどこかへ飛んで行ったと勘違いするほどの時間が経て、ようやく男は用件を口にした。
「……あの日、僕は現場にいたんだ」
 無表情の彼女の眉が動く。
「サッカー部の片付けのために体育倉庫に行って……君が先輩にれ……レイプされてたのを、僕は見つけた」
顔を上げて彼女を見る。
「……そうあの日に」
視線の合わぬまま、彼女は呟くように思い出す。
「声を上げようとしたんだ……でもあいつら」
「あの日、いたのね」
「謝りたくて……その、もしあの日あの場所で、僕が声を上げていたらなにか変わったんじゃないかって……ずっと謝りたくて……でも君は学校に来なくなって」
「そっか……」
「本当にごめん……」
男は泣きながらテーブルに頭をつける。
女は静かに立ち上がり、
「コーヒー、冷めちゃったわね」
と口をつけていない男のコーヒーと自分の空のカップを台所へ持っていく。
二つ分のカップを持ち、テーブルに戻る。
頭を下げ細い声で謝る男が昔の姿と重なり、女は窓の外へ視線を逃がす。ぶっきらぼうな言葉だった。
「……今は、映画館のスタッフとして働いてるわ」
「えっ?」
それから、女は。抑揚のない言葉を話しはじめた。先ほどまでのことをなかったかのように。男は戸惑いながら、それに合わせる。そのうち男がしゃべり、女が相冷たい言葉を放つ。男は苦笑いをし、気持ち悪いと怒られ、それを受け入れる。
映画を見る約束をし、元彼氏は玄関の扉を閉めた。彼女は大きく肩をおろし、煙草に火をつけた。どうして彼の前では吸わなかったのか、考える気にもならなかった。寝転がった写真立てを手に取り、一度だけ行った映画館デートの写真を眺める。
「自分が楽になるために、謝りたかったのよねあなたは」
 自分勝手な奴だ、と心の中で思う。でも謝罪を受け入れれば、少なくとも彼は救われる、そう思った。
女はあの日について思い出す。
寒空の下、彼の部活が終わるのを待っていた。
らしくもなく、バレンタインのチョコを作った。初めてだった。
体育倉庫に連れていかれ、男達に襲われた。初めてだった。
異物が入ってくる感覚がとにかく恐ろしかった。やめてと叫んでも止まらず。そして何度も叫び、声が枯れ。どうしようもなくなったから。
媚びへつらうかのように。私は。
薄っすらと笑みを浮かべていた。

841 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 07:53:03.60 ID:suIUOcf30.net
連続投稿すみません
名前が間違ってたり最後が間違っていたりしたので修正しました

842 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/05(金) 08:04:53.95 ID:k5GuZ5S10.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

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>743
>747
>758
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>760
>804
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只今、十四作品!(`・ω・´)

843 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 12:02:47.69 ID:1u6MCfzda.net
ワイ杯も後半戦に突入すね。これまで投稿された皆さんお疲れ様です。
全部の作品に目を通してます。
執筆中の皆さんもファイトです。

844 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 12:14:12.20 ID:4BkbqYtYa.net
今のところおすすめはどれですか?

845 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 12:24:14.75 ID:1u6MCfzda.net
>>743
が内容的にシニカルで意外と好きです。
お題も自然に消化してます。

>>834
がこれまでの投稿作品の中では文章が一番美しいと思います。

印象的なのは上記の2作ですね。

846 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 13:09:11.81 ID:yXsdhjtwa.net
自薦または見る目ないかどっち?

847 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 13:26:30.12 ID:2eki4uq30.net
>>846
そう聞かれて「自薦」と答えられたら、拍手するしかないな

848 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 14:09:22.18 ID:1u6MCfzda.net
見る目のありなしの決め方が分からないけど、感性が特殊なのは否定しません。

849 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 14:11:12.53 ID:Lyv32K8S0.net
>>834が優勝候補かな
プロが書いただけあってとても美しい

850 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/05(金) 14:20:17.41 ID:tN7+h2C8p.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
 残業を終え、帰宅の途中コンビニで夕食を買い、自宅の玄関の鍵を開け、短い廊下を歩き、リビングの扉を開ける。
いつもと変わらない、半ば無意識のうちに済まされた行動はリビングの照明を点けることを最後に、私をいつもと違う現実に導いた。
 私が、倒れている。
 リビングの入り口からソファに向かう途中、うつ伏せになって倒れている男を見、しかし、私は直感的にその男を「私」だと悟った。
 硬直していた意識が少しずつ落ち着きを取り戻す。
何かをしなければいけないと思いコンビニで買ってきたペットボトルのお茶を一口飲み込んだ。ゴクリという音が大袈裟なほど部屋に響き渡る。
 その男は見れば見るほど「私」だった。三着しかないスーツの柄は今朝私が選んで着たものと同じだったし、少し天然パーマがかかったくせのある髪質は私の髪質そのものだった。
私と同じ中肉中背の身体は呼吸に合わせてゆっくりと動いている。生きている、そう思った。
 それならばこの私は一体誰なんだろう、という当たり前の疑問に帰結するまでかなりの時間を要した。
意識が魂のように抜け出して、自身を眺めているのか。ベランダの窓ガラスを向いて確かめてみる。確かに私と男の姿は窓ガラスに映り込んでいた。
 すると、誰かの悪戯なのだろうか、とも考えたがその考えをすぐに打ち消した。
私には私に悪戯をするような親しい間柄の人間などいないではないか。
第一に私は鍵を開けて入ってきた。開けたということは閉まっていたということだろう。

「人間は……」

 不意に声が聞こえた。倒れている男の方から聞こえてくる。
「人間は、思いもよらない出来事に相対した時、二種類に分かれるんだってな」
「しゃ、喋れるのか?!」
 突然の事に驚き動悸が激しくなった。そしてこいつは私の声をしている。やはり、この男は「私」なのだろうか。
「ひとつは、状況を整理して、とりあえずでもいいからと行動を起こすタイプ」
 男は構わず続ける。
「もうひとつはいつまで経っても結論を先延ばしし、ただただ無意味に立ち止るタイプだ。馬鹿みたいにな。
どうだい? おまえが家に帰ってから随分と経つじゃないか」
「おまえは俺なのか? それともこれが幻覚というやつなのか?」
「さあね。幻覚かも知れない、幻覚じゃないかも知れない。どっちだっていいじゃないか。
現に俺はここにいて倒れているんだから。ずっと何の介抱も受けずにな」
 ククッと男の笑う声がする。まったく嫌な奴だ。
「そうだな。俺は『嫌な奴』だな。だから、妻子にも逃られ親しい友人もいない。そうだな。俺は嫌な奴だ。まったくその通りじゃないか」
「こ、心が読めるのか?」
 さあね、と男はひと言だけいった。のらりくらりとして埒があかない。
「俺はな、おまえの中の『何か』の象徴なんだよ、きっと。おまえずっと『いっそ倒れてしまいたい』って思っていたじゃないか。
疲れてて、何もかも投げ出してしまいたくて、いっそ倒れてしまえば何かが変わってくれるかも知れない、あるいは――」
 男は一度言葉を止めた。相変わらず突っ伏したままだ。
「あるいはそのまま死んでしまっても構わない。馬鹿みたいじゃないか。だったらさっさと仕事なんて辞めるか死ぬかすればいいのにそうしない」
「うるさい! 少し黙れよ!」
「養育費を払わないといけないからねぇ。仕事も辞められない。ろくに会いにも行かない子供の為に働かないといけない」
「黙れと言っただろ!」
 私は怒りの余り男に怒鳴りつけた。
「先延ばし、先延ばしだ。嫌なことからは上手に逃げる癖に自分の『したい』には偶然を頼って動こうともしない。倒れてしまったらきっと誰かが同情して……」
「うるさい! おまえに、おまえなんかに俺の何が分かるというんだ!」
「分かるさ。分かるだろ?」
 堪らなくなった。こんなやり取りをいつまでも続けていたら本当に頭がおかしくなる。私はゆっくりとネクタイをほどいた。
「ああ、ようやく決心をしたみたいだな。でもいいのか? 俺を殺したらおまえの中の『何か』も死ぬぜ? それが良いものか悪いものかは知らないがね」
 構うものか、私は思った。それにこいつを殺したところでそれは「私」なのだ。罪に問われることもあるまい。
「罪に問われなければ罪は存在しないとでも? 相変わらず卑屈な……」
 私はもう黙れとは言わなかった。代わりに男の横腹を蹴り上げた。うっ、という声を吐いて男は仰向けになる。
素早く男の上に馬乗りになり首にネクタイを巻きつけた。男の瞳に私の顔が映り込んでいるのが見える。
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

851 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/05(金) 15:17:37.07 ID:k5GuZ5S10.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

>742
>743
>747
>758
>759
>760
>804
>808
>818
>821
>824
>831
>834
>840
>850

只今、十五作品!(`・ω・´)

852 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 15:46:53.72 ID:vzp0clM+0.net
世にも怪奇な物語 影を殺した男を見たくなった。

853 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 16:11:07.79 ID:RK7ZyFwU0.net
 突然の出来事に立ち尽くす。足下に大きな穴が空いていた。カル(犬だ)が吠えていたのはそのせいか。
 いつもの散歩道。原っぱ。マンホールの蓋が空いているのでもなく。
 立体感のまったくない真っ黒な円が、夏草を踏み倒して地面に張り付いている。
 穴だよな、と思う。黒すぎて本当はなんなのかよくわからない。穴にしか見えないというだけだ。
 晴れた6月の朝だ。大気は濃く、雨の匂いを含んでいる。あたりを見渡す。誰もいない。
 空と穴と生い茂った草。
 おそるおそる上半身だけを前に出して穴をのぞき込んだ。風がそよいできて、草々がふれあう音がする。
「爾が深淵を覗くとき」
 ちょっと洒落のめして言ってみる。子供の頃の魔法使いごっこを思い出しながら。
「深淵もまた爾を覗くのだ」
 黒。あらゆる光を吸い込んで、逃がさない。閉じこめられた光はどこに行ったのだろう。
「あなた、そこで何をしているの?」
 突然声がして、穴の中に娘の顔があらわれる。長いまつげ、大きな眸は透明な青。亜麻色の髪、白い裸の肩。闇の中からなんの感情もうかがえない表情でこちらを見上げている。
 どのくらいの深さにいるのだろうか。
 カルがくんくん鼻を鳴らしながら顔を穴に寄せる。
「君はそこでなにをしているの?」
「訊いたことに答えなさいよ。ちょっと。その犬咬まないでしょうね?」
 彼女はむっと鼻の頭にしわをつくって言い返した。カルがおしりを地面につけて一度だけ吠える。コミュニケーションが必要な局面だ。
「犬の散歩中。カルは咬んだりしない」
「嘘よ」
 彼女は、鏡が像を映しだすより早く言いきった。
「嘘なんて」
「あなたはわたしたちを邪魔しに来たんだわ」
「そんなわけない。『たち』って言ったね。仲間がいるの? ここで何をしてるんだい? 」
 彼女は戸惑ったような表情で、しばらく考えてから言った。
「目印をつくってるのよ。そこにもうひとつ」
 彼女は裸の上半身を浮かび上がらせ西の方を指す。
「そこにも。まっすぐな線をひくの」
 そう言って南を指す。
「なんのために? いつもの散歩道でこんなことされたら困るよ。落ちたら大変だし」
「目印。言ってるでしょ。あなたはここにあるものの光の反射を知覚しているのではなくて、あなたが見ているがために知覚可能になったものを見ているのよ。そんな人はめったにいないから、他の人には関係ないと言いきれるわ。これはあなたとわたしの問題」
「何を言ってるのかわからないけど」
「あなたが光だといってるんだわ。困ったわね。これからまっすぐな線をひかなきゃいけないのに。あなたがいたら空間が歪んじゃう。何も見なかったことにしてもう行って」
「じゃあ、行くよ。でもその前に言いたいんだけど」
「なに」
「僕は人間だ。光じゃない」
「わかったわ。でも同じものなのよ。悪く思わないで」
「さよなら」 
「さよなら」
 
 それから数日後、世界中のあちこちでこんな(・_・)顔文字が発見されはじめた。顔文字(・_・) は無数にあり、なんやかやの専門家が集まってその原因と目的を追求した(僕には口を挟む方法も資格もなかった)が、ついにその日が来るまで謎が解明されることはなかった。
 その日、と言うのはそれを目印に地球外知的生命体の宇宙船が飛来した最初の日、ということだが。
 ただ僕が出会したあの娘、彼女が何だったのか、なぜ目印が必要なのかは皆目わからないのだが、あの娘の作った顔文字だけはこんな感じで。

 :)

 うっすらと笑みを浮かべていた。

854 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 16:12:25.83 ID:RK7ZyFwU0.net
メル欄に書いちゃったけど
>>853は第56回わいはい参加作品

855 :第56回ワイハイ参加作品 :2021/03/05(金) 16:15:51.45 ID:RK7ZyFwU0.net
  突然の出来事に立ち尽くす。足下に大きな穴が空いていた。カル(犬だ)が吠えていたのはそのせいか。
 いつもの散歩道。原っぱ。マンホールの蓋が空いているのでもなく。
 立体感のまったくない真っ黒な円が、夏草を踏み倒して地面に張り付いている。
 穴だよな、と思う。黒すぎて本当はなんなのかよくわからない。穴にしか見えないというだけだ。
 晴れた6月の朝だ。大気は濃く、雨の匂いを含んでいる。あたりを見渡す。誰もいない。
 空と穴と生い茂った草。
 おそるおそる上半身だけを前に出して穴をのぞき込んだ。風がそよいできて、草々がふれあう音がする。
「爾が深淵を覗くとき」
 子供の頃の魔法使いごっこを思い出して、呪文のように唱えてみる。
「深淵もまた爾を覗くのだ」
 黒。あらゆる光を吸い込んで、逃がさない。閉じこめられた光はどこに行ったのだろう。
「あなた、そこで何をしているの?」
 突然声がして、穴の中に娘の顔があらわれる。長いまつげ、大きな眸は透明な青。亜麻色の髪、白い裸の肩。闇の中からなんの感情もうかがえない表情でこちらを見上げている。
 どのくらいの深さにいるのだろうか。
 カルがくんくん鼻を鳴らしながら顔を穴に寄せる。
「君はそこでなにをしているの?」
「訊いたことに答えなさいよ。ちょっと。その犬咬まないでしょうね?」
 彼女はむっと鼻の頭にしわをつくって言い返した。カルがおしりを地面につけて一度だけ吠える。コミュニケーションが必要な局面だ。
「犬の散歩中。カルは咬んだりしない」
「嘘よ」
 彼女は、鏡が像を映しだすより早く言いきった。
「嘘なんて」
「あなたはわたしたちを邪魔しに来たんだわ」
「そんなわけない。『たち』って言ったね。仲間がいるの? ここで何をしてるんだい? 」
 彼女は戸惑ったような表情で、しばらく考えてから言った。
「目印をつくってるのよ。そこにもうひとつ」
 彼女は裸の上半身を浮かび上がらせ西の方を指す。
「そこにも。まっすぐな線をひくの」
 そう言って南を指す。
「なんのために? いつもの散歩道でこんなことされたら困るよ。落ちたら大変だし」
「目印。言ってるでしょ。あなたはここにあるものの光の反射を知覚しているのではなくて、あなたが見ているがために知覚可能になったものを見ているのよ。そんな人はめったにいないから、他の人には関係ないと言いきれるわ。これはあなたとわたしの問題」
「何を言ってるのかわからないけど」
「あなたが光だといってるんだわ。困ったわね。これからまっすぐな線をひかなきゃいけないのに。あなたがいたら空間が歪んじゃう。何も見なかったことにしてもう行って」
「じゃあ、行くよ。でもその前に言いたいんだけど」
「なに」
「僕は人間だ。光じゃない」
「わかったわ。でも同じものなのよ。悪く思わないで」
「さよなら」 
「さよなら」
 
 それから数日後、世界中のあちこちでこんな(・_・)顔文字が発見されはじめた。顔文字(・_・) は無数にあり、なんやかやの専門家が集まってその原因と目的を追求した(僕には口を挟む方法も資格もなかった)が、ついにその日が来るまで謎が解明されることはなかった。
 その日、と言うのはそれを目印に地球外知的生命体の宇宙船が飛来した最初の日、ということだが。
 ただ僕が出会したあの娘、彼女が何だったのか、なぜ目印が必要なのかは皆目わからないのだが、あの娘の作った顔文字だけはこんな感じで。

 :)

 うっすらと笑みを浮かべていた。

856 :第56回ワイハイ参加作品 :2021/03/05(金) 16:16:30.57 ID:RK7ZyFwU0.net
すんません。>>855にして。

857 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 16:40:04.62 ID:/n9Nyu+n0.net
>>856
一文目で改行しないと失格なりますよ。

858 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 16:42:41.15 ID:RK7ZyFwU0.net
ありがとう。
今なおします。

859 :56回ワイハイ :2021/03/05(金) 16:46:19.28 ID:RK7ZyFwU0.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
 足下に大きな穴が空いていた。カル(犬だ)が吠えていたのはそのせいか。
 いつもの散歩道。原っぱ。マンホールの蓋が空いているのでもなく。
 立体感のまったくない真っ黒な円が、夏草を踏み倒して地面に張り付いている。
 穴だよな、と思う。黒すぎて本当はなんなのかよくわからない。穴にしか見えないというだけだ。
 晴れた6月の朝だ。大気は濃く、雨の匂いを含んでいる。あたりを見渡す。誰もいない。
 空と穴と生い茂った草。
 おそるおそる上半身だけを前に出して穴をのぞき込んだ。風がそよいできて、草々がふれあう音がする。
「爾が深淵を覗くとき」
 子供の頃の魔法使いごっこを思い出しながら、呪文のように唱えてみる。
「深淵もまた爾を覗くのだ」
 黒。あらゆる光を吸い込んで、逃がさない。閉じこめられた光はどこに行ったのだろう。
「あなた、そこで何をしているの?」
 突然声がして、穴の中に娘の顔があらわれる。長いまつげ、大きな眸は透明な青。亜麻色の髪、白い裸の肩。闇の中からなんの感情もうかがえない表情でこちらを見上げている。
 どのくらいの深さにいるのだろうか。
 カルがくんくん鼻を鳴らしながら顔を穴に寄せる。
「君はそこでなにをしているの?」
「訊いたことに答えなさいよ。ちょっと。その犬咬まないでしょうね?」
 彼女はむっと鼻の頭にしわをつくって言い返した。カルがおしりを地面につけて一度だけ吠える。コミュニケーションが必要な局面だ。
「犬の散歩中。カルは咬んだりしない」
「嘘よ」
 彼女は、鏡が像を映しだすより早く言いきった。
「どっちのこと?」
「散歩のこと」 
「嘘なんて」
「あなたはわたしたちを邪魔しに来たんだわ」
「そんなわけない。『たち』って言ったね。仲間がいるの? ここで何をしてるんだい? 」
 彼女は戸惑ったような表情で、しばらく考えてから言った。
「目印をつくってるのよ。そこにもうひとつ」
 彼女は裸の上半身を浮かび上がらせ西の方を指す。
「そこにも。まっすぐな線をひくの」
 そう言って南を指す。
「なんのために? いつもの散歩道でこんなことされたら困るよ。落ちたら大変だし」
「目印。言ってるでしょ。あなたはここにあるものの光の反射を知覚しているのではなくて、あなたが見ているがために知覚可能になったものを見ているのよ。そんな人はめったにいないから、他の人には関係ないと言いきれるわ。これはあなたとわたしの問題」
「何を言ってるのかわからないけど」
「あなたが光だといってるんだわ。困ったわね。これからまっすぐな線をひかなきゃいけないのに。あなたがいたら空間が歪んじゃう。何も見なかったことにしてもう行って」
「じゃあ、行くよ。でもその前に言いたいんだけど」
「なに」
「僕は人間だ。光じゃない」
「わかったわ。でも同じものなのよ。悪く思わないで」
「さよなら」 
「さよなら」
 
 それから数日後、世界中のあちこちでこんな(・_・)顔文字が発見されはじめた。顔文字(・_・) は無数にあり、なんやかやの専門家が集まってその原因と目的を追求した(僕には口を挟む方法も資格もなかった)が、ついにその日が来るまで謎が解明されることはなかった。
 その日、と言うのはそれを目印に地球外知的生命体の宇宙船が飛来した最初の日、ということだが。
 ただ僕が出会したあの娘、彼女が何だったのか、なぜ目印が必要なのかは皆目わからないのだが、あの娘の作った顔文字だけはこんな感じで。

 :)

 うっすらと笑みを浮かべていた。

860 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 16:46:42.61 ID:RK7ZyFwU0.net
ほんとすみません、何度も

861 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 16:47:34.12 ID:tN7+h2C8p.net
>>858
✖ うっすらと笑みを浮かべていた。

○ 薄っすらと笑みを浮かべていた。

862 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 16:53:16.86 ID:RK7ZyFwU0.net
orz
今やります

863 :56回参加作品 :2021/03/05(金) 16:58:47.06 ID:RK7ZyFwU0.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
 足下に大きな穴が空いていた。カル(犬だ)が吠えていたのはそのせいか。
 いつもの散歩道。原っぱ。マンホールの蓋が空いているのでもなく。
 立体感のまったくない真っ黒な円が、夏草を踏み倒して地面に張り付いている。
 穴だよな、と思う。黒すぎて本当はなんなのかよくわからない。穴にしか見えないというだけだ。
 晴れた6月の朝だ。大気は濃く、雨の匂いを含んでいる。あたりを見渡す。誰もいない。
 空と穴と生い茂った草。
 おそるおそる上半身だけを前に出して穴をのぞき込んだ。風がそよいできて、草々がふれあう音がする。
「爾が深淵を覗くとき」
 子供の頃の魔法使いごっこを思い出しながら、呪文のように唱えてみる。
「深淵もまた爾を覗くのだ」
 黒。あらゆる光を吸い込んで、逃がさない。閉じこめられた光はどこに行ったのだろう。
「あなた、そこで何をしているの?」
 突然声がして、穴の中に娘の顔があらわれる。長いまつげ、大きな眸は透明な青。亜麻色の髪、白い裸の肩。闇の中からなんの感情もうかがえない表情でこちらを見上げている。
 どのくらいの深さにいるのだろうか。
 カルがくんくん鼻を鳴らしながら顔を穴に寄せる。
「君はそこでなにをしているの?」
「訊いたことに答えなさいよ。ちょっと。その犬咬まないでしょうね?」
 彼女はむっと鼻の頭にしわをつくって言い返した。カルがおしりを地面につけて一度だけ吠える。コミュニケーションが必要な局面だ。
「犬の散歩中。カルは咬んだりしない」
「嘘よ」
 彼女は、鏡が像を映しだすより早く言いきった。
「どっちのこと?」
「散歩のこと」 
「嘘なんて」
「あなたはわたしたちを邪魔しに来たんだわ」
「そんなわけない。『たち』って言ったね。仲間がいるの? ここで何をしてるんだい? 」
 彼女は戸惑ったような表情で、しばらく考えてから言った。
「目印をつくってるのよ。そこにもうひとつ」
 彼女は裸の上半身を浮かび上がらせ西の方を指す。
「そこにも。まっすぐな線をひくの」
 そう言って南を指す。
「なんのために? いつもの散歩道でこんなことされたら困るよ。落ちたら大変だし」
「目印。言ってるでしょ。あなたはここにあるものの光の反射を知覚しているのではなくて、あなたが見ているがために知覚可能になったものを見ているのよ。そんな人はめったにいないから、他の人には関係ないと言いきれるわ。これはあなたとわたしの問題」
「何を言ってるのかわからないけど」
「あなたが光だといってるんだわ。困ったわね。これからまっすぐな線をひかなきゃいけないのに。あなたがいたら空間が歪んじゃう。何も見なかったことにしてもう行って」
「じゃあ、行くよ。でもその前に言いたいんだけど」
「なに」
「僕は人間だ。光じゃない」
「わかったわ。でも同じものなのよ。悪く思わないで」
「さよなら」 
「さよなら」
 
 それから数日後、世界中のあちこちでこんな(・_・)顔文字が発見されはじめた。
 はじめ、その報告はごくわずかな数でしかなく真偽を疑う声も多かったが、とにかく「ある」ということが認識されると、爆発的な増加をみせた。
 無数に発見された顔文字(・_・) は、すぐに『フェイス』と名付けられ、なんやかやの専門家が集まってその原因と存在意義を調査・研究した(僕には口を挟む方法も資格もなかった)が、ついにその日が来るまで謎が解明されることはなかった。
 その日、と言うのはそれを目印に地球外知的生命体の宇宙船が飛来した最初の日、ということだが。
 ただ僕が出会ったあの娘、彼女が何だったのか、今も皆目わからないのだが、あの娘の作った『フェイス』だけはこんな感じで。

 :)

 薄っすらと笑みを浮かべていた。

864 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 17:04:58.42 ID:RK7ZyFwU0.net
>>861
ありがとねー

865 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 17:10:56.71 ID:/n9Nyu+n0.net
>>863
こういうの好きです。

866 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/05(金) 17:42:12.03 ID:k5GuZ5S10.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

>742
>743
>747
>758
>759
>760
>804
>808
>818
>821
>824
>831
>834
>840
>850
>863

只今、十六作品!(`・益・´)

867 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 18:46:05.83 ID:2eki4uq30.net
>(`・益・´)
どういう顔?
益々ご清栄のこととお慶び申し上げます的な?

868 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 19:27:51.56 ID:rYGzw2lfF.net
審査作品の数が増えると負担がすごくなるから武者震いの顔ですよ。

869 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 19:42:55.29 ID:SewqiuRZ0.net
>>868
ということは、この先たくさん作品がでれば、いろんな表情が見られるわけですね。
楽しみ。

870 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 21:00:08.28 ID:rXjLaZDoM.net
だって超高難度って言われたら、
みんな燃えちゃうよね( ´・∀・)(・∀・` )ネー

871 :美世だが :2021/03/05(金) 21:27:16.39 ID:2QUOGnTI0.net
はい、おっちゃん来ましたー
けど白熱しているようなので去りまーす

872 :『第五十六回ワイスレ杯参加作品』 :2021/03/05(金) 21:38:07.43 ID:XaNwgeTb0.net
 突然の出来事に立ち尽くす。

 トイレから出て目にしたのが乗客のこめかみに銃口を当てて喚き散らす男の姿だというのだから、思わず思考が停止しても仕方のないことだろう。

 あまりにもそれは非現実的な光景で、聞いたことのない言語で喚き散らす男はスクリーンの向こうの住人でしかなかったが、その視線がこちらへと向いたのは自然な流れだった。
 すぐさま彼は自分に座るように命令し、無言でそれに従うことになった。
 当たり前だ。
 自分はヒーローではなく、こんな状況でテロリストに立ち向かうようなハリウッドの映画の主役でも何でもないのだから。
 自分はたまたま修学旅行として海外に向かうことになっただけの学生であり、こんな事件に巻き込まれはしたものの、あくまでも脇役でしかない。
 だから仮にテロリストを止める人間がいるとすればそれは、座席に座る自分へと視線を向けていたテロリストにとっさに飛びついて銃を奪うとそのまま顔面に拳を叩き込んだ強面の男性のような人を指すのだろう。
 一部の乗客から歓声と悲鳴が沸き、そのまま男性が犯人を拘束しようとしたところ、にやりとテロリストは笑みを浮かべた。
 爆発音。
 ぐらぐら、と機体が揺れ、何度も上下運動を繰り返したことで内臓がかき混ぜられたかのような不快感と吐き気を催していた。
 落ち着くようにとのCAからの言葉など耳を切り裂くような悲鳴の中では雑音でしかなく、今自分が何をすべきかすら不明瞭な中、眼前に飛び出してきた酸素マスクを口に当てると紐を引っ張った。
 本当に酸素は供給されるのか、これは不良品じゃないのか、とネガティブな想像ばかりが頭の中に浮かび、それでも今自分に出来ることはこれしかないのだと信じて、それを行っていく。
 パニック。
 このような事態に遭遇することなど人生では初めてのことであり、それでも、だからこそ現実と受け止めきれない部分と、現実と切り離しているからこそ、淡々と画面の向こうの出来事のようにやるべきことをやれていたのかも知れない。
 もし、これを現実だと認識していたら自分も冷静に行動することなど出来ていなかっただろう。
 叫び声に窓の外を見てみれば黒煙があがっているのが見えた。
 右翼のエンジンに異常が生じたと言っていたが、これは本当にまずいことになっているのではなかろうか。
 現在の飛行機の位置は太平洋のど真ん中であり、着陸の出来る陸地などありはしない。
 振動とともに急速に高度が下がっていく感覚、だが、それは普段の着陸時のそれとは違い、安心など一切ない暴力的なそれで、自分でも無意識だったが、死の恐怖に悲鳴をあげながら凄まじい衝撃に身を任せることになった。
 青。
 意識を取り戻して最初の感想がそれだった。
 いや、それ以外に何を言えば良いのか、何しろ自分の目に飛び込んできたのはどこにでもあるような、それこそ日本で毎日のように見えていた真っ青な雲一つない青空であり、それはあまりにも日常のワンページでしかなかった。
 全ては胡蝶の夢だったと思えれば良かったが、残念なことにあれは夢ではなかった。
 起き上がってみるとどうやらどこかの砂浜に流れ着いたようだったが、周囲を見渡しても他に流れ着いた人間は見当たらなかった。
 或いはここは死後の世界であり、三途の川のような場所なのではないだろうか。
 本当は自分はあの事故で死んでしまったのではないだろうか、と不安になり自分の胸に手を当てた。
 触れた指先に伝わる濡れた布の感触。
 海水で冷えきった身体。
 だが、そこには確かに体温と、生命の鼓動があった。
 生きている。
 その事実を確認して、気づけば自分は笑みを浮かべていた。
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

873 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 21:46:15.20 ID:rXjLaZDoM.net
>>871
オフロスキーの「呼んだ? 呼んでない。じゃまたねー」思い出した

874 :『第五十六回ワイスレ杯参加作品』 :2021/03/05(金) 23:00:26.45 ID:U5vN78Uq0.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
 五月初めの、休日の午後。写真部員の私は、公園の池に遊ぶ鴨の親子をカメラで追っていた。
 そこに上空から舞い降りてきた鴉が、子鴨の一羽を攫って行ったのだ。
 私はその時、ファインダーを覗きながらちょうどシャッターを切っていたところだった。ショックのあまり指先を戻すのも忘れた私の手の中で、一眼レフはパシャパシャと連写を続け、悲劇の一部始終を記録した。
 私は急いで家に戻り、泣きながら母に報告した。
「お母さーん。鴨が、鴨の赤ちゃんがー」「どうしたの、頼子!」
 私が話すと、母は「とりあえずその写真を見てみましょう」と言った。そしてパソコンに映し出された十数枚の連続画像に、二人は息を飲み、私は声を上げて泣き叫んだ。
「ねえ、これ消していい?! こんなのいらない! もう見たくない!」
 それは、無垢な命が理不尽な暴力によって奪われる、その刹那の惨劇を刻々と見せ付けるあまりにも残酷な映像だった。すぐさま消去しようとする私に、だが母は告げた。
「ねえ、これ一度先生に見てもらった方が良くない?」
 翌日、部室に顔を出した私は、その画像を先生や部員達に見せた。
「うーん」
「すっげ」「正に衝撃映像」「可哀そう」
 先生は腕を組んで唸り、仲間達も動揺を隠せない。私は正視できず横目で覗き見ながら、でも逸らすことも出来ずにいた。
「ひとつ提案なんだが」暫くして先生がポツリと告げた。「この写真、コンテストに出してみないか?」
 十数枚の中から一枚を先生が選び、新聞社主催のコンテストに応募した。
 そしてその一枚が、大賞に選ばれた。
 写真は新聞の見開きに大きく掲載され、私は一躍有名人になった。雑誌やテレビ局が連日取材に訪れ、街では知らない人が声をかけて来る。自分でも何が起きているのか判らないような混乱の日々が続いた。
 でもそんなお祭り騒ぎもいつまでも続くわけじゃない。数ヶ月が経ち、騒動が収まり静かな日常が戻って来た頃。
 私は、カメラを持つことが出来なくなっていた。
 コンテストなんて本当は嫌だったのに、あんな写真は捨ててしまいたかったのに。皆に賞賛されればされるほど、それを言い出せなかった自分の弱さと、そのくせ受賞を喜んでいる姑息さに嫌気がさした。
 鴉を見れば石を投げた。母にも当たり散らした。自分をこんな風にした写真が、大嫌いになった。
 抜け殻のような日々が過ぎ、再び春が訪れる。
 私は写真部を辞め、休日を自室の窓から外を眺めるだけで過ごしていた。そんな五月の、とある晴れた日。
 隣の家の屋根に、奇妙な一羽の鳥が舞い降りてきた。いや、落ちてきたと言った方がいいかも。黒と灰色のまだらで、不格好で、一見産毛を残した雛鳥のようにも見えるけど、でも大きい。
 その鳥は屋根から滑り落ちそうになりながら必死に羽をバタつかせ、瓦の縁にしがみついていた。私がハラハラしながらその様子を見ていると、そこに別の鳥が降りてきた。
 鴉だ! あの子が危ない! 私は部屋にあったテニスボールを手に取り、鴉に投げつけようとした。
 だがその時、私は自分の眼を疑った。鴉が灰色の鳥に向かってカァと声をあげると、その子はヨタヨタと自分から鴉に寄って行ったのだ。
 そうか、あれは鴉の子。巣立ちなのか。
 親鴉は、子鴉が近づくと誘い出すように飛び立った。子鴉は慌てて後を追おうとするが、羽をバタつかせるだけで飛び立つには至らない。
 親鴉はすぐに戻って来て、また子鴉を誘った。子が追う、親が飛び立つ。そして子鴉は意を決し、屋根を蹴る。
 その瞬間、子鴉は脚を踏み外し屋根を滑り落ちて行った。
「あっ!」
 私は思わず窓から身を乗り出す。でも幸いなことに、雨樋の所で止まっていた。
 子鴉は再び屋根をよじ登り、頂上に立った。そして上空を旋回する親鴉を見上げながら、何度も羽を振る。
「頑張れ、頑張れ」
 私は小声で呟きながら、ポケットからスマホを取り出した。
 カメラを起動させ、子鴉に向ける。スクリーンの中で子鴉は大きく羽を広げ、力を溜め込むように腰を落とす。そして次の瞬間。
「行け」
 その呟きと同時に子鴉が飛び立ち、私はシャッターボタンを押した。

 二羽の鴉が飛び去って行く。
 息を吐き、スマホのスクリーンを閉じると、暗くなった画面に自分の顔が映り込んでいるのが見えた。
 でも、この顔って……。
 おかしいな、こんなの変だよ。だって、笑うことなんてもう忘れたはずなのに。
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

875 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/05(金) 23:17:03.66 ID:3bip0f+50.net
突然の出来事に立ち尽くす。
言葉から意味が剥がされる。
進むことも戻ることもできず、足がすくむ。いったいなぜこんなことに。
ゲシュタルト崩壊。
昔、講義で聞いた言葉だ。美学だったか心理学だったか。
私は掌編を書こうとしていた。例えばこんな書き出だし。

✳
 突然の出来事に立ち尽くす。
 いったいどうしてこんなことになってしまったのだろう。
 予感はあった。
 夫の性癖はわかっているつもりだった。
 初めてのセックスは義務的で、それは挿入と射精を目的とした生殖のためのセックスだった。
 しかし回数を重ねるにつれて、夫には秘密があるのだとまんこを突き上げる痛みが私にそう伝えた。
 隠してはいたが、例えば食事をするときの何気ない仕草にもそれが潜んでいた。
 私は、なぜこの男と結婚したのかとセックスするたびに云々。

そして物語はこんなふうに終わるはずだった。
夫の秘密に迫った私は裸にされ、見知らぬ男たちに囲まれる。

✳
 あまりに儀式じみていた。これではまるで生贄ではないか。
 そのとき「あんた、そこに愛はあるんか」と声がする。
 そんなバカな。
 振り返ると、そこに夫の顔があった。
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

これで勝つる。そう思った(笑
しかし、次第に主語の耐えられない軽さに物語のゲシュタルトが崩壊する。
笑みは失われ、薄っすらと改行が浮かぶ。
    m、
「あんた、そこに愛はあるんか」骨なしアイヴァーが叫ぶ。
太陽が私を優しく温めてくれる。私はようやく自分を取り戻したことを感じる。
かつてないことが私に起こっていた。
薄っすらと笑みを浮かべていた。
 
そして懐かしい顔がそこにあった。
「あんた、そこに愛はあるんか」剛勇のビヨルンが呟く。
薄っすらと笑みを浮かべていた。
 
「あんた、そこに愛はあるんか」穏やかな死顔で妻が言う。
薄っすらと笑みを浮かべていた。
 
これは本当に彼が仕組んだことなのだろうか。
二人で撮った写真の彼を見る。
「あんた、そこに愛はあるんか」と問いかける。
薄っすらと笑みを浮かべていた。

続けろと彼女は言った。
    e、
突然の出来事に立ち尽くす。
瞼の裏を幾つも作り物の場面が巡る。
文章は繋がりを求めて彷徨い、やがて意味が私を見捨てる。
離れていく主語と私。
「あんた、ソコにアイはある↑んか」
消えた主語の向こうに意味と置き去りにされる私。
薄っすらと笑みを浮かべていた。

876 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 23:32:02.22 ID:MDHLQ0X30.net
老婆心的お節介アドバイスもとい自己主張きいてもいい人いますか?

877 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 23:37:37.94 ID:suIUOcf30.net
お願いします

878 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 23:41:27.99 ID:7kDWAtTq0.net
お断りします

879 :この名無しがすごい! :2021/03/05(金) 23:58:26.43 ID:MDHLQ0X30.net
お願いとお断りw
ええと、ではぼかします。お題の理解が僅差の場合の結果に響きそうなんで。
書いてる人は頑張ってください。

880 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/06(土) 00:18:28.36 ID:kh0EYaqA0.net
突然の出来事に立ち尽くす。
衝動的な行動をしているのにもかかわらず、空はどこまでも青く、太陽は眩しく、頬に触れる風はすがすがしい。
ここに来るのは初めてだ。
生まれて初めて見る素晴らしい景色に俺は息を飲む。
そして、新しい一歩を踏み出す。
「君がまた俺を見つめてくれるように、頑張るよ」
そう独りごちながら――。

「なあ、一緒に遊ぼうぜ」
教室の端にぽつんと一人でいることが多かった俺に、君は語りかけてきてくれた。
「え? 俺?」
最初は自分に話しかけてきているのかどうかも分からず、思わず聞き返してしまう。
それくらい、誰かが話しかけてきてくれるのが珍しかったのだ。
「お前しかいないだろー!」
君は笑いながら言った。

君は俺とよく二人でつるみ、よく話をした。
休日にも会うようになり、共に遊ぶ機会が増えた。
つまらなかった学校の生活が次第に楽しくなっていく。
学校に行けば君と会える。
他のつまらないことはどうでも良くなるくらい、魅力的なことだった。

しかし、いつのころからか君には新たな友達が増え、俺と二人で話す機会は減っていった。
「なあ、今話せる?」
俺から話しかけることが増えていった。
次第に、
「ごめん。今忙しくって」
君が断ることが増えていく。
そして、俺は絶望を覚えた。

友人など、親友など。もともとどうでもよかったはずだ。
しかし、一度楽しみを覚え絶頂を迎えると失うのが惜しくなる。
一人の時間を物足りないと感じ、取り戻したいと思えてくる。
俺は次第に失ったもの――君の俺に対する関心を取り返そうと考え始める。

そして、ある日。突然思い立ち行動に移した。
【今日の昼休憩の12:30に、教室の一番右の窓から外を見て。良いものを見せるから】
俺はそうメッセージを君のスマホに送った。
「良いもの」の内容はシンプルだ。
また俺を見てくれ。ただそれだけ。

空はどこまでも青く、太陽は眩しく、頬に触れる風はすがすがしい。
校舎の屋上から見上げる景色は初めて見るものだ。
冷静なもう一人の自分が突然の出来事に立ち尽くす。

しかしすぐに、我に戻ると俺は新しい一歩を踏み出した。
足先を空中に差し出し、体重をかける。
すぐに景色が反転した。
視界が逆さまになり、俺の体は地面に向かって落ちていく。

最後のその瞬間、確信することがあった。
……再び視線をくれた君の記憶に、俺はずっと残り続けるだろう。
一瞬だが永遠にも感じられるその時に見えた君の表情。
絶望とも驚愕とも恐怖の入り交じった表情。
間違いない。
俺のことを、君は一生忘れないだろう。ずっと思い出すことだろう。夢に見ることだろう。
俺はそう思いつつ意識を手放して。

薄っすらと笑みを浮かべていた。

881 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 ダークネスオブザ暗黒シャドウソード :2021/03/06(土) 00:36:45.13 ID:Wa6noYv/0.net
突然の出来事に立ち尽くす。
 目の前には盗賊どもの屍の山が築かれ、己の右手には見知らぬ長剣が握られている。気付いた時には、そうなっていた。
 剣の刀身は常軌を逸した黒色ゆえに、宵闇の中でさえはっきりとした輪郭を浮かび上がらせている。蒼い刃紋が生きているかのように波打ち、移動し、ルーン文字を形成し、組み変わる。常に変化し続ける模様は一度たりとも過去と同じ形に留まることがない。
 剣は意思を持っていた。
『どうだ、兄弟。力が湧いてくるだろう』
 輝くルーン文字を目で追う内、頭の中に声が響いた。ひどく蠱惑的な抑揚で、とても落ち着いた声量で。
『お前がやったんだ。兄弟』
 十余人の盗賊殺しなど、病に蝕まれたこの身で出来る訳がない。
 僅かな余命を宣告されていたのだ。城の寝室に横たわり、あと一度だけ短い人生を嘆けば命尽きる。エル王子という名ばかりの弱者はそういう運命にあったはずだ。
『俺がいる限り、お前が死ぬことはない』
 剣はそう言うが、もはや視界の端々が色を無くし始めている。両目を開いているにも関わらず、見えるものが失われていく。地に立つ感覚はとうに無い。
『安心しろ。この世は糧で満ちている』
 窄まった視界で空を仰ぎ、思い至る。
 ああ。暗いと思えば、今宵は新月か――。

 気が付くと、屍の前ではなく質素なベッドの上いた。
「あっ、起きたね」
 若い女が心配そうに覗き込んでいる。
 硬質そうな髪を後ろで束ね、顔は泥で汚れている。あまり裕福とはいえない出で立ちだ。
「ここは私たちの村よ。あなた、行き倒れになってたんだから」
「そうか。ありがとう」
 倒れていたということは、あれは夢ではないらしい。
「体は大丈夫?」
「大丈夫だ。どこもおかしくはない……」
 ベッドから起き上がり、腰を回してみる。死の淵にいたとは思えないほど身体が軽い。
「そっか。無事でなにより。 私はライラだよ。よろしくね!」
 宝石のような瞳と、屈託のない笑顔。見知らぬ俺の無事を祝うライラは、装いこそ貧相だが美人だった。
「エドだ」
「あまり聞かない名前だね。あ、でもエル王子と少し似ているかも」
「……そうだな」
 本名を名乗る気は起きなかった。命の恩人がへりくだる姿など、見たくもない。
「ところで、その剣ってそんなに大事なの? 眠っている間もずっと抱えてたけど」
 言われて初めて気付いた。俺の右手には例の黒剣が握られたままになっている。鞘に収められているせいか、あの声は聞こえてこない。
「これで盗賊狩をしていた」
「と、盗賊を? 一人で?」
「ああ。最後の相手は十人を超えていた」
「へえ、バケモノみたいに強いのね!」
 ライラの驚いたり喜んだりする表情が見たくて、つい調子にのったことを口走ってしまう。返ってくる反応も歯に衣を着せないものばかりで新鮮だった。そうしたやり取りが夢のように楽しくて、あっという間に一日が終わり、三日目を迎え、一週間を通り過ぎていた。

 村に来て十五回目の朝。隣で眠るライラを見て、安らぎを感じていた。このまま村民となるか、王子であることを明かしてライラを側室に迎え入れるか、どちらかを悩む時間さえ愛おしくなっていた。

 その晩、村は盗賊団の襲撃にあった。
 火を放たれて半壊した村を背に、盗賊どもが詰め寄る。
「降伏か死か選べ」
「集落を滅ぼしてまわっているのはお主らか」
「身に覚えはないが、お前達が望むならそうしよう」
 盗賊の頭領が手を挙げると、村長の胸に矢が突き刺さる。崩れる村長を目にして、村人たちの戦意は失われていた。

 腕を掴むライラに一言「行ってくる」と言うと、小さく頷いてくれた。

 村人たちの前に躍り出て、盗賊団と対峙する。迫る矢を鞘で弾き黒剣を抜くと、ひどい耳鳴りがした。頭の中で嵐が吹きすさぶようだった。視界は灰色に支配され、吹き出す魂の色だけが鮮烈な赤となっていた。ひたすら赤色を求めて、手を伸ばす。灰色の世界に彩度を与える。くすんだ色にならぬよう、赤を吸い上げてこの身に馴染ませる。赤く。更に赤く──。
 最後の赤色を吸い込むと、ようやく嵐が収まった。
『満足したか。兄弟』
 目の前には盗賊どもの屍の山が築かれ、己の右手にはよく馴染んだ長剣が握られている。気付いた時にはそうなっていた。
『盗賊ども、か。今日はずいぶんと明るいはずだが』
 満月が屍体を照らす。真っ赤なドレスを着た骸があった。なぜだか、熱いものが込み上げてくる。
 己の頬を伝うこれは、なんだろうか。
 黒剣を掲げ、月光に映る顔を覗き込む。
『どうだ、兄弟。力が湧いてくるだろう』
薄っすらと笑みを浮かべていた。

882 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/06(土) 00:46:16.68 ID:v2rwVnoD0.net
突然の出来事に立ち尽くす。
突然の出来事に呆然とする。
突然の出来事に面を食らった。

これら三つの表現は、どれも「突然思いがけないことが起こって驚いているさま」である。
日本語というのは非常に面白く、同じ状況を表すのにたくさんの言葉がある。
日本語一筋で生きている私でさえ難解であったり、一生使うことのない表現もある。
だから、
「ニホンゴ、ムズガシイ。オトウサン、スゴイ」
 一人娘の夫となったブラジル出身のアルベルト・ディニス・ドゥモン・チャーリングトングァ・エヴィオンベエにはよく困った顔色で僕に質問してくる。
「オトウサン、タスケテ」
「どうした?」
「このニホンゴ、ワカラナイ、教エテ」
 鍛え抜かれた上腕二頭筋を白のTシャツでアピールしながら、アルベルトはスマホの画面を押し付けてくる。
「どれどれ」
 僕は老眼鏡をかけスマホの文字の羅列を眺めた。そして、
「これはまだアルベルトには早いんじゃないかな」
 と肩を窄め嘆息する。しかし義理の息子アルベルト・ディニス・ドゥモンは涙ながらに懇願している。スマホにはこう書かれていた。

生花(いけばな)を生き甲斐(いきがい)にした生え抜き(はえぬき)の生娘(きむすめ)。
生絹(すずし)を生業(なりわい)に生計(せいけい)を立てた。
生い立ち(おいたち)は生半可(なまはんか)ではない。
生憎(あいにく)生前(せいぜん)は生(う)まれてこのかた生涯(しょうがい)を通して生粋(きっすい)の生(うぶ)だった。
名前は羽生(はにゅう)とも羽生(はぶ)とも呼べ。
「いや日本人にも難しい!」
僕は怒った(いかった)。すごく怒った(おこった)。
 なぜこんなにも同じ漢字で違う意味を持つのだろうか。
 羽生と羽生に至ってはどちらも同じ感じではないか。
 「アルベルト君。君はまだ来日して一年も経っていないだろう?日本歴五十九年の大ベテランの僕でも難しいよこれは」
「でもワタシ、二ホンの国籍トッタ。ニホンジンにナッタ」
「分かるけども」
「そしてオトウサンのムスコにナッタ。オトウサン、とてもスキ。家族スキなオトウサン、ダイスキ」
「アルベルト・ディニス・ドゥモン・チャーリングトングァ・エヴィオンベエ君……!」
 僕は感極まった。
 なんとまぁ素敵な男が婿に来てくれたのだろう。彼は彼なりに、日本に触れ、日本を、そして家族を愛そうとしているのだ。
 最初、娘が彼を連れてきたときは、怒り狂いそうだった。
 百九十センチを超えた白Tシャツのブラジル人が、白い歯をひんむき玄関に立っている姿は今でも忘れない。
 もうおなかの中に子供がいると知ったときは、妻とともに玄関で泡を吹いたくらいだ。
「ワタシ、ガンバル。オトウサンにミトメテ、モライタイ」
「十分、もう十分だよ。君はもう立派な家族だ、アルベルト・ディニス・ドゥモン・チャーリングトングァ・エヴィオンベエ君!」
僕は息子と抱きしめ合う。もしかしたら僕がただ抱きしめてられるだけかもしれないが、そんなことは些細なことだ。
「アルベルト……よかったわね」
 二人の親子の愛を、娘である裕子・ディニス・ドゥモン・チャーリングトングァ・エヴィオンベエが涙を流しうっすらと笑っていた。
 息子との最高の一日を過ごしてから数か月がたち、ブラジル人息子は少しずつ日本語を勉強していった。
 ある日、息子はまた僕に話しかけてきた。
「ワタシネェ、最近創作にはまってマス。日本語の勉強に、なりマス」
「創作?」
「ハイ、創作デス。お題もらって、考エル」
 そういうとアルベルトはいつものようにスマホの画面を押し付けてきた。
「どれどれ」
 そこにはこう書かれていた。

第五十六回ワイスレ杯のルール!
設定を活かした内容で一レスに収める!(目安は二千文字程度、六十行以内!)
今回の超高難度の設定!
最初の一行と最後の一行を固定して書いて貰う! 二つが揃って初めて参加資格が得られる!一つでも無視すると即失格! 微妙に言葉を変える行為も等しく弾く! では、お題を発表する!
最初の一行
突然の出来事に立ち尽くす。
最後の一行
薄っすらと笑みを浮かべていた。

883 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/06(土) 00:47:53.58 ID:38FLQq1V0.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
 「こう……じ、宏治さんなの?」
 ホテルから若い女と出て来たのは確かに理緒の恋人、宏治だった。
 コロナ禍でマスク姿とはいえ間違いなかった。がっしりとした腕が女の肩を抱いている。
 宏治と女も、硬直したように固まっている。
 久々の街への買い物で、こんなことに出くわすとは。

 宏治が険しい顔で口にする。
 「すまない……真弓のこと、話そうと思っていたんだ」
 そのあとを聞くことはできなかった。すぐに逃げ帰った理緒だったが、一緒に暮らす部屋で結局は別れ話となった。
 同棲して七年。以前は、彼も籍を入れようと匂わせていたではないか。三十路となった古女房のような女はいらないというわけなのか。
 八歳上の宏治は元いた会社の上司だった。未来ある有望株の宏治のために、二人の付き合いは秘密だった。上司が部下に手を出すのはその会社のご法度だ。同棲を始めると、理緒は会社を辞め転職までした。
 そのうえ、見た目と反して生来は身体が弱く持病を持つ彼のために、食事や生活の管理など細かく心を配って尽くした。宏治が体調を崩すことなく昇進できたのは、理緒のお陰と言っても過言ではなかった。
 「真弓は俺がいないとダネなんだ。君はしっかりしているし一人でなんでも出来る」
 惚れ抜いた男が、自分との別れを望んでいる……。溢れそうな言葉を飲み込み、理緒は荷物をまとめると部屋を出た。宏治を愛し過ぎていた。

 借りたアパートの一室で、理緒は酒浸りとなった。
 昼間は辛うじてリモートワークをこなすが、夜になると呑んで回った。開いている店ならどこでもよかった。人の気配を感じたかった。
 男達がはべる店にも行った。なんでもいい。忘れさせてくれるなら。男達にしなだれかかり、ひどく酔っては介抱された。相当、散財もした。
 
 三週間が過ぎる頃には、理緒は心身ともにボロボロだった。
 浮腫んだ顔を触る。頭痛は激しく、眼は熱を持ち血走っている。
 派手なピンク色のホテルから、二人が出て来た場面が頭から離れない。
 ―――ここ二年くらい、彼は私に全く触れなかった。持病のせいだと思っていたけど、あの若い子とならそういうことが出来るんだ……。
 涙と鼻水でむせて咳き込む。苦し過ぎる。苦し過ぎる。
 
 ―――このままではダメだ。未練を断ち切らないと生きてはいけない。 
 力を振り絞る。やっと腰を上げると、シャワーを浴び入念に化粧をした。
 
 訪ねると、宏治はすんなりと部屋に入れてくれた。
 「お願いがあるの。せめて最後だけ……」
 彼女の言葉に、宏治は頷いた。
 まとめていた長い髪をほどく。
 理緒は彼の唇を自身の熱のこもった唇で塞いだ。彼女が舌を入れると、最初は力のなかった宏治の舌が固くなり、理緒の歯茎をなぞる。
 彼女は宏治を押し倒すと馬乗りになり、自分の服に手をかける。彼の腰の上で白く柔らかな肌を露わにしていった。

 翌朝、まだ眠る宏治を暫く見つめると、理緒は去っていった。
 
 ひと月くらい経ったろうか。生活もだいぶ落ち着きを取り戻していた。
 久しぶりに、たまに連絡をとる元の会社の同期に電話をかけてみる。
 相手は理緒の声を聞くや、話したくてたまらないというように興奮してしゃべり始めた。

 「上司だった太田宏治さん、覚えてる? 四日前コロナウイルスで亡くなったの」
 「それがね、感染ルートがわからないらしいの。職場のみんな検査したんだけど、秘書課の小山真弓って人だけ陽性だったのよ。濃厚接触はないはずなのにおかしいって専らの噂」
 「その子は無症状だったけど、同居のおばあさんが集中治療室……」
 まくし立てる元同僚の声が遠くなっていく。
 
 通話が終わっても、スマホを強く握りしめていた。
 宏治は肺をやられ、水に溺れるかのごとく苦しんで死んだようだ。
 それを思うと理緒の胸にぐっと込み上げるものがあり、身体を丸めた。

 どれくらい時間がたったのだろう。
 顔を上げた理緒は、紙袋から真新しい白いワンピースを出すとそれに着替えた。
 春の陽光が差す外へ出ようと玄関に向かう。
 ふと思い付き、バッグから名刺入れを取り出す。中には数十枚のホストクラブの名刺があり、それぞれ源氏名が書かれている。
 名刺をゴミ箱に放り投げると、理緒は呟いた。
 
 「死ぬまでいくとは想像以上だったけど」

 薄っすらと笑みを浮かべていた。

884 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/06(土) 01:43:27.82 ID:38FLQq1V0.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
 「こう……じ、宏治さんなの?」
 ホテルから若い女と出て来たのは確かに理緒の恋人、宏治だった。
 コロナ禍でマスク姿とはいえ間違いなかった。がっしりとした腕が女の肩を抱いている。
 宏治と女も、硬直したように固まっていた。
 久々の街への買い物で、こんなことに出くわすとは。

 宏治が険しい顔で口にする。
 「すまない……真弓のこと、話そうと思っていたんだ」
 そのあとを聞くことはできなかった。すぐに逃げ帰った理緒だったが、一緒に暮らす部屋で結局は別れ話となった。
 同棲して七年。以前は、彼も籍を入れようと匂わせていたではないか。三十路となった古女房のような女はいらないというわけなのか。
 八歳上の宏治は元いた会社の上司だった。未来ある有望株の宏治のために、二人の付き合いは秘密だった。上司が部下に手を出すのはその会社のご法度だ。同棲を始めると、理緒は会社を辞め転職までした。
 そのうえ、見た目と反して生来は身体が弱く持病を持つ彼のために、食事や生活の管理など細かく心を配って尽くした。宏治が体調を崩すことなく昇進できたのは、理緒のお陰と言っても過言ではなかった。
 「真弓は俺がいないと駄目なんだ。君はしっかりしているし一人でなんでも出来る」
 惚れ抜いた男が、自分との別れを望んでいる……。溢れそうな言葉を飲み込み、理緒は荷物をまとめると部屋を出た。宏治を愛し過ぎていた。

 借りたアパートの一室で、理緒は酒浸りとなった。
 昼間は辛うじてリモートワークをこなすが、夜になると呑んで回った。開いている店ならどこでもよかった。人の気配を感じたかった。
 男達がはべる店にも行った。なんでもいい。忘れさせてくれるなら。男達にしなだれかかり、ひどく酔っては介抱された。相当、散財もした。
 
 三週間が過ぎる頃には、理緒は心身ともにボロボロだった。
 浮腫んだ顔を触る。頭痛は激しく、眼は熱を持ち血走っている。
 派手なピンク色のホテルから、二人が出て来た場面が頭から離れない。
 ―――ここ二年くらい、彼は私に全く触れなかった。持病のせいだと思っていたけど、あの若い子とならそういうことが出来るんだ……。
 涙と鼻水でむせて咳き込む。苦し過ぎる。苦し過ぎる。
 
 ―――このままではダメだ。未練を断ち切らないと生きてはいけない。 
 力を振り絞る。やっと腰を上げると、シャワーを浴び入念に化粧をした。
 
 訪ねると、宏治はすんなりと部屋に入れてくれた。
 「お願いがあるの。せめて最後だけ……」
 彼女の言葉に、宏治は頷いた。
 まとめていた長い髪をほどく。
 理緒は彼の唇を自身の熱のこもった唇で塞いだ。彼女が舌を入れると、最初は力のなかった宏治の舌が固くなり、理緒の歯茎をなぞる。
 彼女は宏治を押し倒すと馬乗りになり、自分の服に手をかける。彼の腰の上で白く柔らかな肌を露わにしていった。

 翌朝、まだ眠る宏治を暫く見つめると、理緒は去っていった。
 
 ひと月くらい経ったろうか。生活もだいぶ落ち着きを取り戻していた。
 久しぶりに、たまに連絡をとる元の会社の同期に電話をかけてみる。
 相手は理緒の声を聞くや、話したくてたまらないというように興奮してしゃべり始めた。

 「上司だった太田宏治さん、覚えてる? 四日前コロナウイルスで亡くなったの」
 「それがね、感染ルートがわからないらしいの。職場のみんな検査したんだけど、秘書課の小山真弓って人だけ陽性だったのよ。濃厚接触はないはずなのにおかしいって専らの噂」
 「その子は無症状だったけど、同居のおばあさんが集中治療室に……」
 まくし立てる元同僚の声が遠くなっていく。
 
 通話が終わっても、スマホを強く握りしめていた。
 宏治は肺をやられ、水に溺れるかのごとく苦しんで死んだようだ。
 それを思うと理緒の胸にぐっと込み上げるものがあり、身体を丸めた。

 どれくらい時間がたったのだろう。
 顔を上げた理緒は、紙袋から真新しい白いワンピースを出すとそれに着替えた。
 春の陽光が差す外へ出ようと玄関に向かう。
 ふと思い付き、バッグから名刺入れを取り出す。中には数十枚のホストクラブの名刺があり、それぞれ源氏名が書かれている。
 名刺をゴミ箱に放り投げると、理緒は呟いた。
 
 「死ぬまでいくとは想像以上だったけど」

 薄っすらと笑みを浮かべていた。

885 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 01:50:45.98 ID:38FLQq1V0.net
>>883>>884に訂正

886 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/06(土) 02:55:14.81 ID:AgC7eApJ0.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
「ここ……どこ?」
 凛は見知らぬ通路にぽつんと立っていた。暗くて、ごつごつとした岩壁に覆われている。洞窟の中のようであった。
 古びた燭台が壁に設置されており、薄っすらと周囲を確認することができた。
 岩壁には大きな顔が等間隔にいくつも刻まれている。目、鼻、口のみの簡素なものだったが、どの顔も苦痛と絶望に満ちた表情を浮かべていた。
 凛は小学校に上がったばかりの幼い少女である。この空間の異質な恐怖を前に、すっかりと動けなくなってしまっていた。
 凛はいつも通り小学校から帰ってきて、ベッドに潜って眠ったはずであった。それが気が付いたらこんなところにいたのだ。
 これは夢だ。悪い夢だ。目を瞑って開ければ、こんな暗くて冷たい洞窟ではなく、いつもの暖かい我が家にいるはずだ。凛はぎゅっと目を閉じて、必死にそう念じる。
 しかし、肌に染みる寒気が、身体の奥から滲み出るような悪寒が、そうではないのだと彼女へ訴えかけてきていた。
「カワイソ、カワイソ、アア、アア」
 人間のものとは思えない、か細い金切り声が聞こえてきた。その声はだんだんと近づいてきている。凛は恐怖で頭がどうにかなってしまいそうだった。
「凛、いたんだな」
 見知った声と共に凛の手が握られた。顔を上げれば、彼女の二つ上の兄である翔太の姿があった。
「ショウ兄ちゃん……しょ、ショウ兄ちゃん……! ここ、どこ……? ねぇ、どうして……!」
 凛は自身の兄へと抱き着いた。翔太は彼女を抱き、背中を摩る。
「ごめんな、兄ちゃんにも何もわからない。でも、大丈夫。絶対兄ちゃんが凛を助けてやるからな」
 そのとき大きな物音と共に、奇妙な声が止んだ。かと思えば、ヒタヒタ、ヒタヒタヒタと、何かが通路を走る音が聞こえてくる。
「走るぞ、凛!」
 翔太は叫び、凛の手を引いて、足音とは反対の方へと駆け出した。
 謎の叫び声の主は明らかに兄妹を追い掛けてきている。
 走れど走れど通路が続いており、そして一面に絶望に歪んだ人の顔が並んでいた。
「ショウ兄ちゃん……駄目だよ、もう……足、動かない……」
「諦めるな、頑張れ凛!」
 翔太もまだ小学生低学年の男児である。謎の場所に、奇妙な追跡者。怖くないはずがない。ただ、それでも必死にずっと凛を鼓舞し続けていた。
 通路を曲がった先から光が見えてきた。兄妹は顔を輝かせたが、光の許へと近づいてすぐに、大きな段差があることに気が付いた。この高さは凜では乗り越えることができない。
 奇妙な声は後ろすぐに迫ってきている。じきに姿を現すだろう。
 翔太は覚悟を決めたようにきゅっと口を結ぶと、凛を担ぎ、力いっぱい段差の上へと押し上げた。半ば投げ出される形で、凜は段差の上を転がった。
「ショウお兄ちゃん……!」
「走れっ! 凛!」
 直後、凛は兄の背後に何かが立ったのが見えた気がした。一瞬であったため、その形はわからない。凛は兄の言葉のままに、光の許へと駆け出した。
 
 ――あのときの悪夢を、凛は二十歳になった今でも明瞭に思い出すことができる。
 不気味な絶望の顔が並ぶ洞窟から兄妹で逃げ出す夢。その最後で、兄の翔太は凛の身代わりになる形で洞窟の中に取り残されてしまう。
 そして目を覚ましたとき、大好きだった兄はベッドで冷たくなっていた。原因不明の心臓麻痺による突然死だった。
 凛は今、スーダンのハライブという地にいた。日本語を話せるガイドを伴い、近くの街から百五十キロメートル以上離れた目的地へと、一面の砂に覆われた道を車で移動して訪れた。
 あるマイナーな観光名所があるのだ。
「足許、気ヲ付ケテ。ドウデスカ、リンサン。不思議ナ場所デショ?」
 ガイドが片言の日本語で話す。凛は大きな段差を降り、洞窟の内部を見回す。
 絶望しきった、苦悶の表情の壁画が並んでいる。幼き日に夢で見たあの場所にそっくりであった。偶然この地の存在を知って、居ても立っても居られずに単身でこの遠い異国の地を訪れたのだ。
 現地の人は『イヤ・ハーフ』と呼んでるらしい。いつの時代に誰が何のために作ったのか、その詳細は一切わかっていなのだそうだ。
 ふと、入口近くに、絶望以外の顔が彫られていることに気が付いた。凜は思わず、その顔の凹凸を確かめるように手を触れる。
「兄さん……?」
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

887 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/06(土) 06:15:49.21 ID:bpbzwN2r0.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

>742
>743
>747
>758
>759
>760
>804
>808
>818
>821
>824
>831
>834
>840
>850
>863
>872
>874
>875

只今、十九作品!(`・ω・´)おはよう、諸君!

888 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/06(土) 06:20:38.04 ID:bpbzwN2r0.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

>742
>743
>747
>758
>759
>760
>804
>808
>818
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>875
>880
>881
>882
>884
>886

只今、二十四作品!(`・ω・´)

889 :『第五十六回ワイスレ杯参加作品』 :2021/03/06(土) 08:35:19.10 ID:VnyWRaWx0.net
 突然の出来事に立ち尽くす。

 「廃刀令、でござるか?」

 その通りだ、と上司は淡々とした様子で頷いたが、そこに納得の色は薄い。
 武士の魂とも呼べるそれを奪われると聞いて、男自身も茫然自失とした様子で、うめき声をあげることとなった。
 上司曰く、これもまた遠い強国であるアメリカとの国交をする上で必要なことだという。
 武士という地位は残るが、刀を持つことは禁じられ、護身用に銃を持つことが正式に政府から通達されたという。
 先祖代々受け継がれてきた、言ってみれば家の象徴でもあるこの刀は最早振るうものではなく床の間に飾っておくものになるらしく、そんな馬鹿な話があるものか、と男は断固抗議したが、お上の決定がたかが一人の男の陳情で覆る訳もなく、あっさりと日本から帯刀という文化は消えることとなった。
 男も新しく割り振られた職場で働くことになったが、仕事といっても男がやるべきことなど殆どありはしない。
 というか、武士に与えられたのはお飾りの天下り先で、殆どの武士は刀のことなど忘れて何もせずとも入ってくる金に一喜一憂しながら日々を過ごしているという。
 何と無様なことか、何と滑稽なことか、これが日本男子の行く末だとでも言うのか、とギリギリと歯を食いしばる。
 解っている。
 異物は自分であり、このようなこだわりなど捨ててしまえば良いことなどとっくに頭では理解しているのだ。
 理解しているのだが、それでも武士として生まれ育った血が、魂が、それを受け入れることは出来ないと自身に訴えかけているのだ。

 「刀なくして何が武士かよ」

 若い頃は武士として人を数え切れぬほど斬ってきたし、それが武士としての正しい在り方だと感じてもいた。
 斬りたい、と疼く右腕をどうにか抑えるのに苦労しながら空虚な日々を送っている自分の何と無様なことか。
 だが、幾ら斬りたいと思っても、それはもう出来ないのだ。
 世がそのように変わってしまった。
 大人なのだから、清濁を併せ呑むべきなのだろう、そう思ったところで気は晴れず、だが、それでもどうにか日々を生きていたのだが、ふと、何やら人が集まって騒がしい区画があることに気づき、興味を惹かれた男は夢遊病のようにふらりふらりとそこに近づいた。

 「さあさ、皆さん。この包丁、あのアメリカから直輸入された超合金!一切研がずとも十年は使える最高の切れ味!どんな野菜だってほれこの通り!スパスパ切れちゃう優れもの!!」

 包丁の実演販売か、と厨房に立つことは一切なく、料理とは女がするものだと言われて育った男にとっては興味のないもので、そこを立ち去るつもりだったのだが、実演販売の売り子の切り方を見て、非常に不愉快な気持ちになった。

 「おい、そこの売り子よ。物の切り方がなっておらん!ちょいと貸してみろ!」

 「は?ちょ、ちょっと!邪魔をされては困ります!」

 「うるさい!男でありながらなんだその腰をくねくねさせた気持ちの悪い斬り方は!武士ならば!日本男児ならば!背筋を伸ばして、魂を込めて刀を振るえ!!」

 唐突に乱入した男に周囲が沸き上がり、すぐにその見事な包丁の腕前にさらに大きな歓声があがった。
 実演販売として用意していたキャベツは瞬く間に糸より細く、だがシャッキリとした食感が残る見事な千切りになり、大根はといえば向こう側が透けてみるような見事な桂剥きを披露されることになり、他の野菜もまたたくまに菖蒲や菊といった見事な飾り切りになっていく。
 最初は止めようとしていた実演販売員もこれは売れる!と男の周囲で何やら騒いでいたが、男はそれどころではなかった。
 長らく抱えていた胸の中の淀みが野菜を切る度になくなっていく。
 気づけば、久しく浮かべていなかった表情を男は浮かべていた。

 「こんなに近くにあったというのに中々気づかぬものだな」

 この日の夕方、仕事から帰ってきた男が厨房に立つと言い出して、とうとう刀恋しさに気でも狂ったのかと心配になった妻に泣かれることになったが、懇切丁寧に新しい武士の在り方を語り、新しい武士としての戦場に翌日の朝から立つことになった。
 まだ朝早い時間から、トントントンと豆腐と長ネギをリズムよく切っていく。
 出汁と味噌の良い香りが鍋から漂い始めた辺りで、慌てた様子で妻が厨房に飛び込んできた。
 どうやら、毎日の習慣で朝餉を作りに来たようだが、厨房に立つ男の姿を見て、その光景が未だに現実に受け入れることが出来ないのか茫然としていたが、男が浮かべている表情に廃刀令以前の夫が戻ってきたことを悟ったのだろう。

 「おはよう」

 薄っすらと笑みを浮かべていた。

890 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 09:18:41.95 ID:pnKyNymX0.net
>>889
良い

891 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 09:39:59.96 ID:z2GEEW8J0.net
お題がなくても読めるね
むしろセンスのないお題が邪魔
字面からして最悪

892 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/06(土) 09:49:28.28 ID:bpbzwN2r0.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

>742
>743
>747
>758
>759
>760
>804
>808
>818
>821
>824
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>834
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>850
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>872
>874
>875
>880
>881
>882
>884
>886
>889

只今、二十五作品!(`・ω・´)

893 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 10:08:58.80 ID:CnudHJLXd.net
これは30作超えますね

894 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/06(土) 11:45:32.69 ID:Oqqu0BB90.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
 良く晴れた秋の朝、静かな書斎。養父の机の引き出しを勝手に開けたことに意味はなかった。
しかしいきなりこんなものが見つかるとは。古びた便箋には養父の手書き文字が並ぶ。『宝の場所』なるタイトルと三つのメモ。
 思わず口角が持ち上がった。
「何してんの」いつの間にか背後に葵さんが立っていた。
「別になにも」
「嘘おっしゃい、ニヤニヤしちゃって。おじさんの遺産でもあった?」
「ま、まさか」
「ふーん、まぁいいけど。それより午後から弔問で大勢来るから純也も挨拶しなさいね」
 言い残して葵さんは出て行った。
 昨日、養父が倒れたと連絡を受けた。僕は大学の講義を飛び出して隣県から駆け付けたが残念ながら間に合わなかった。
僕にとっては唯一の家族、知人やら葬儀社やらの連絡は僕がしなければならないのに涙が溢れて手につかない、そこを助けてくれたのが近所の葵さんだった。
僕を慰め、今も一切の雑事を引き受けてくれている。普段は鬱陶しい世話焼きなのに今はとても頼もしい。あとでちゃんとお礼をしなければならないだろう。
しかし『宝』はまた別の話。どれほどの物かは分からないがその価値によっては不要にたかられるかもしれない。気づかれる前に回収してしまわなければ。
 僕は足を潜めて書斎を出た。

 一つ目のメモは『自転車置き場』となっていた。とりあえず来たものの特におかしな所はない。僕が実家を離れる前から何も変わってないようだった。
父の自転車、僕の自転車、そしてもう一つ小さな自転車があるだけだ。
 小さなヤツは僕が小学生の頃の物であり、錆だらけだが思い出のたくさん詰まった大事な物だ。もちろん亡き養父との思い出もある。
この自転車を支えてもらって何度も一緒に練習しようやく乗れるようになった。養父は根っからの仕事人間であまり遊んでもらえなかった分、あのひと時は楽しかった。
 かぶりを振って宝探しを再開する。次は『柿の木のある方角』だ。柿の木とは庭に生えているものだろうか。指示通り向かう。
 木を見上げると柿がいくつか生っていた。しかしそれだけ、何の変哲もありはしない。登ってみようか、と思ったがやめた。
昔柿を取ろうとして木から落ち、二度と登るなと養父からキツく言われたからだ。あの時は骨が折れるわ叱られるわで散々だった。涙を浮かべて怒る養父が今も目に焼き付いている。
 ココでもまた収穫は無し。仕方なく最後のメモへ。『純也の好物』。はてな、と思い辺りを見渡す。僕の好物は蜜柑だが蜜柑の木など庭には無い。
軒下や池の中を覗きこんだりしてみたが当然蜜柑などは見つからない。ひょっとして『宝の場所』など嘘なのか、と思いかけたその時、庭の隅の物置が目についた。
自転車置き場から見れば確かにアレも柿の木の方角にある。ダメもとで中を確認してみると、果たして蜜柑の段ボール箱を発見した。
 僕は思わず歓声を上げた。
「どしたの? こんなとこで」振り向けばまた葵さんが立っていた。

 現場を抑えられてはごまかしようがあるはずもなく、僕は全てを白状した。
「ばか。私が遺産をたかるわけないでしょ」
「本当かな」
「分けてくれるならやぶさかじゃないけどね。少しでいいわよ、ほんの少しで」
 冗談なのか本気なのか。しぶしぶ蜜柑の箱を開けた。
 中にはワインが一本入っていた。有名だが高価ではない、今でもスーパーで目にする銘柄だった。埃を被ってはいるがそこまで古くもなさそうだ。
「なぁんだ」とつまらなそうに葵さんは言った。僕は言葉を失っていた。
 これは僕が買ってあげた物だった。

 僕が養子に来たばかりの頃のこと。まだ低学年だった当時の僕は養父に嫌われたら追い出されるのではと要らぬことを心配しワインをプレゼントしたことがある。
それがまさかこんな形で出てくるなんて。栓も開けられてないようだった。
「きっと純也と一緒に飲むためにずっと封印してたのね。でないとこんな回りくどい保管なんてしないもの」葵さんは一人でそう納得していた。
 仏間にワインを持って行く。養父は安置されたままじっと眠り続けている。その顔は死んでもなお屹然としていた。男手一つで子供を大学まで送り出した、立派な大人の顔だった。
 葵さんが三つのグラスにワインを注いだ。
「僕、まだ十九ですけど」
「じゃあ私が全部飲んじゃおっと。ごちそうさまっ」
「勘弁して下さいよ」
 僕はちょっとだけワインを舐めた。甘口と書いてあるのに渋くてとても飲めやしない。美味しく飲むには僕はまだまだ子供のようだ。葵さんがケラケラと笑っている。
 養父を見た。気のせいだろうか。
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

895 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/06(土) 11:50:02.42 ID:bpbzwN2r0.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

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只今、二十六作品!(`・ω・´)

896 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 13:03:51.58 ID:bu51C+3D0.net
力作が続々と! 面白い!
30作いきそうですね。

897 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/06(土) 14:28:24.88 ID:Tg4wsWEP0.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
 写真館にあるようなカメラを急に構えられた上に、慌てて逃げようとするのを『動かないで』と制されたからだ。
 顔が引き攣る。まだ涼しい春先なのに、汗が浮かび上がってくる。
「せ、先生、お止しになって。カメラで撮られたら魂が抜かれると、婆やが言っていたわ」
「ふん。今時、そんな迷信を信じているやつが本当にいたのか」
 応えたのは先生ではなかった。涼やかな声は、私の後ろから。振り向くと、環さんが小馬鹿にしたようなお顔で立っていた。
 環さんは私の横を通り過ぎると、カメラを下ろした先生に話しかける。
「先生、そいつは独逸の新型かい? 大量に作られ、日本にも五百台ほど入って来たと聞いたけど」
「詳しいね。そう、独逸で作られたものでライカという」
「やっぱりそうか! うんと小型化したんだねえ」
「うん。こうやって手に持っても苦にならん。操作もずっと簡単になった。大量生産は、素人にも広く使ってもらおうという考えだろう」
「でも、高かったんだろう?」
 環さんの指摘に、先生は苦笑いを浮かべる。
「……私の二か月分の給金と同じくらいだ」
「へえ! よく細君が許したね」
 先生は、ふいっと視線を逸らされた。奇妙な間が開く。
 私は『こほん!』と咳払いすると、二人にすすっと近づく。カメラ談議に置いてけぼりにされていたので、丁度良い間であった。
「環さんは、カメラの事にも詳しいのね?」
「うん? この前、新聞に載っていたじゃないか」
 新聞なぞ読んだ試しがない。あれは、どこのお家でもお父さまだけが読むものではなかろうか?
「新聞なんて読んだことがないわ」
 環さんはしかめっ面になる。
「婦女子は世間のことを知らなくていい。そんな事を考えていないだろうね? 時代遅れだ。これからは、そんなことではいけない。良子、君も教養の一つでもだな……」
 環さんが滔々と語り出す。
 人によっては憎まれ口に聞こえるかもしれないが、これが環さんの親切心の発露だった。
 環さんはいつも仏頂面で、直截な発言ばかりが目立つ。そのせいで、彼女を敬遠する学友も多い。
 環さんの男の子のような口調も、それに拍車をかけていた。
 でも、本当は彼女が優しい人であることを私は知っている。不器用なだけなのだ。
 私が机の上に忘れ物をして帰ると『また忘れたぞ』と追いかけてくれるし。裁縫の授業で云々と唸っていると『どれ貸してみろ。こうするんだ』と手本を示してくれるし。私が学校でうたた寝していると起こしてくれる。
 ……普段からどこか抜け過ぎかもしれない。いや、偶になんだけど。偶に。
 んん! つまり、私のような少し抜けた所のある娘だけしか、環さんの優しさに気付けないのだとしたら、それはとても不憫なことだ。
 ならばせめて、私だけでも環さんの学友としてお傍にいて上げよう!
 そう決意を新たにすると『分かったのかい?』と、環さんが聞いてくる。
「ええ、勿論! そうだ環さん! 今日は一緒に帰りましょう。さあさ! ……あっ! 先生、無断で私を撮るのは本当にお止しになってね!」
 去り際、先生に釘を刺しておいた。

 決意を新たにした私は、今まで以上に環さんに話し掛けるようになった。
 先日起きたお父さまの情けない失敗談を語って聞かせる。にこりともしない。
 必死に頭を捻って機知(ウィット)に富んだ話題を振る。何故か呆れられる。
 お母さまと見た落語を再演してみせる。記憶の不備を指摘される。……上手くいかない。

「先生、環さんのように賢い人は、あれもこれも馬鹿馬鹿しくって、詰まらないとお思いなのかしら?」
 教員室で偶々先生と二人っきりになったので、そう尋ねてみる。
「そんな事はないと思うけどね」
「本当に? それなら、私が嫌われているのかしら?」
 先生はびっくりした顔になる。
「どうしてまた?」
「だって、私と話していても、ちらっとも笑わないんですもの。私に付き纏われて、迷惑に思っているんじゃ……」
 うう、と泣き言を漏らす。
 ふむ、と先生は少し頷かれると、机の引き出しを開ける。
「良子君、先に謝っておこう。絶好の被写体だったから、つい、ね」
 そう言われて、一葉の写真を取り出すと、私に手渡してくる。
 そこには、机ではしたなくうたた寝する私と、それを見下ろす環さんのお顔が映っている。
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

898 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/06(土) 14:44:49.29 ID:UVgjw8vj0.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
「って、もー難しいわねー、今回のお題!」
 夕食を用意している俺が振り返ると、スマホ片手に立ち尽くしている美穂が見えた。
「突然の出来事に立ち尽くすなんて、ヒトの生き死にとか、スマホを落とした時くらしか思いつかないわよ。どう思う?」と、突然に俺への問いかけ。
「へ?」夕食用の魚をさばいているのに、こちらこそ突然の出来事に立ち尽くすだよ。「いや、なんのこと?」
「えーとね、この一行から始まる物語を書かなくちゃいけないのよ、5ちゃんで」
「あー、美穂がいつもの見てるスレのやつ?」
「そ」
「立ち尽くすような出来事が、人の生き死にかスマホって美穂の振り幅ヒドくない?」
「だってそれぐらいしか思いつかないもん、……殺人とかの話じゃあ、ゼッタイ他の人とカブるわよねー」
「かぶっちゃ悪いの?」
「当たり前だよー、ショートストーリーは驚きがキモなんだから。人とカブちゃ驚きも半減だよ」
 ふ〜んと包丁を動かしながら俺は気のない返事をした。
 美穂はブツブツ言いながら、リビングに行きソファーにドカッと座り込んだ。

 さて料理に集中しよう。アラは煮つけにして、身は刺身かカルパッチョにしようか。そういえば初めてカルパッチョを食べたのは、美穂にプロポーズしたその時のディナーメニューだったな。
 あの日は大変だった。稼ぎの少ない俺はやっと金を貯め、婚約指輪を買ってマリーンルージュのクルージングディナーを予約したんだっけ。美穂もいっぱい喜んでくれてたな、指輪を出した時の顔は今でも忘れられない。

 そしてあの出来事……。クルーズも終わりウキウキ気分で下船しようとした美穂が、船と桟橋を繋ぐステップでつまずきコケそうになり、かろうじて手すりに手をついて持ちこたえた。
「大丈夫か?」後ろから俺が聞くと。
「……とした」と美穂は立ち止まった動かない。
「え? ほら後ろがつかえてるから進んで」
「アイホン落としちゃった……」
「どこに?」
 黙って海を指差す美浦。とりあえず立ち尽くす彼女を後ろから押し船から降ろした。
 桟橋からのぞき込むと、船と岸壁の間に黒い海面が見えるだけ。
「あーこりゃダメだ」
「あーん! 2人の思い出がーっ」
「でもほら昨日バックアップとったばかりじゃん」
 そう美穂が写真をたくさん撮ると思って、容量確保のためアイホンの中の写真をパソコンに移させたのだ。
「あーん! 今日の思い出がーっ」
「うーん……、じゃあもう一回乗るか?」
「え……」
「今日のことをやり直すんだよ、もう一度この船に乗るんだ。いつになるか分からないけど、待っててくれる?」
「うん……」
「じゃあやり直すんだから、とりあえず指輪返して」
「えーそこまでやるのー」
 半べその美穂がニッコリと笑った。

 そんな思い出に浸りながら料理していると突然。
「ア"ーーーーーーーーッ!」
 美穂が大声を出した。
 何だ!どした?と見るとさっきまで難しい顔をしていたのに、マァーリンルージュで愛されてぇ〜と、ご機嫌で歌を口ずさんでいる。
「思いついちゃった」
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

899 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/06(土) 14:49:17.29 ID:UVgjw8vj0.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
今日は彼とのクルージングデートだったのに、最後にやってしまった……。

 マリーンルージュのナイトクルーズで豪華なディナーを食べて、デッキで彼にプロポーズされて、最高の指輪も貰って。私は幸せの絶頂だったの。
でも船から降りる時につまずいちゃって、その拍子にアイホンを落としちゃったの、……海に。

 あー今日の思い出がーって相当落ち込んだわ。でも昨日、彼が写真をバックアップしてくれてたおかげで過去の思い出は無事だったのが救い。

 それでも諦めきれずに入場口のデッキのベンチに彼とずっと座ってて、もう辺りには誰もいなくなって……。隣の彼もいつの間にか静かに寝息をたてて、眠っちゃったみたい。

 あー私も眠くなっちゃったなと思った時、海の方が明るくなったから立ち上がって見ると、海面の下の方から光が。その光の中からひとりのビショビショのおっさんが(失礼、老人)出てきたの。
長い白髪が白いひげの顔にまとわりついている。格好と言えば、濡れて身体に張り付いた白いローブ、アクセントみたいに海藻がところどころ付いている。

 その老人は光る海面の上に立ち、両手に何か持っている。
「お前が落としたのはこのアイホンか?」と左手を掲げその老人が言う。
「それともこのアイホンか?」と遅れて右手を掲げて聞いてきた。
 すぐに分かった、スポンジボブのカバーが付いてる右手のやつが私のだ。でも左手に持ってるのをよく見るとカメラのレンズが3つ見えるし大きい、あれはiPhoen 12 Pro Maxだ。ああ私が欲しいやつだ。
「そっち……」と私は自分のiPhone8の方を指さしたが「あのー12の方にデータとか入ってないですよね、私のとか?」と尋ねた。
「うむ、新品じゃ」
「そうですか……、じゃあ8の方で」
 すると老人は無言でデッキの端にiPhone8を置き、海の中に消えて行った。あれれ?正直に言ったと12もくれる流れじゃないんだ……。

 私は急いでアイホンを取りに行って、彼を起こした。
「ねえねえ、今変なおっさんが私のアイホン拾ってくれた」
「ん〜何?」ボーッとしちゃって彼。
「アイホン見つかったの!」
「え!よかったじゃん。でもどいうこと?」
「変なおっさんが海から出て来て―」私は説明するの面倒臭くなって、彼の手を引っ張り。
「いいからいいから、さ、帰りましょ」
「う、うん」

 濡れたアイホンは大丈夫かしらとボタンを押してみる、一応ホームは表示されるわね。写真はと立ち上げてみると……、一番上にあのおっさんの自撮り写真が。
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

900 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/06(土) 15:12:43.72 ID:bpbzwN2r0.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

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只今、二十九作品!(`・ω・´)

901 :美世だが :2021/03/06(土) 15:21:06.44 ID:80qIaGm60.net
うわ、もう30越えるやん
スレ跨ぎ確実やん

902 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 15:36:35.27 ID:kd+wenxOp.net
>>898
>>899
上手いうえにおもろい
ちょっとこれは凄いねぇ

903 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 16:00:09.41 ID:CnudHJLXd.net
>>897
いいな、これ好き

904 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/06(土) 16:22:17.50 ID:TvRF+huDa.net
>>902
もうちょい上手く自演しろよw

905 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 16:26:17.18 ID:bcuz7nFKa.net
みんな面白いもの書くなぁ

906 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 16:27:57.08 ID:v2rwVnoD0.net
すごいね

907 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 16:35:25.36 ID:aW7ZBeCrH.net
あげ

908 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 16:35:41.47 ID:aW7ZBeCrH.net
あげ

909 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 16:36:13.52 ID:aW7ZBeCrH.net
あげ

910 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 16:47:33.76 ID:kd+wenxOp.net
>>906
いやいや、あんたの作品も好きだぜ

911 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 17:12:42.41 ID:ANvQFnD+H.net
あげ

912 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 17:13:05.13 ID:ANvQFnD+H.net
あげ

913 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 17:13:20.08 ID:ANvQFnD+H.net
あげ

914 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 17:16:24.65 ID:gpbe+nKi0.net
なんで無駄にageてんの?
スレがもったいないだろ

915 :美世だが :2021/03/06(土) 17:32:21.12 ID:80qIaGm60.net
読もうと思ったが、読み切れんわ

916 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 17:39:02.12 ID:cXQMKxmXF.net
あー。これは次スレ必要なパターンだ。
そんで転載できなくて詰む人が出る。

917 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 17:43:50.15 ID:pnKyNymX0.net
転載なんかしなくていいよ
レス番が滅茶苦茶になるし、下手すりゃ規制に引っかかる

918 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 17:50:41.52 ID:cXQMKxmXF.net
そうだね。とりあえず後6時間か。面白いのが沢山あって嬉しい。
高い難易度と身構えたけど、蓋をあけてみれば良作が豊富な良いお題だった。

919 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/06(土) 18:00:09.32 ID:bpbzwN2r0.net
ワイが書き込みを控えていてもスレを跨ぐのか!
移動は時間が掛かる上に規制に引っ掛かり易い!
そこで作品の移動は諦めて以下のような表記にする!

前スレ
>899

よろしく!(`・ω・´)ノシ もう少し書いて精米を始める!

920 :不浄場に鎮座三郎DOPNESS :2021/03/06(土) 19:37:31.01 ID:hpFvMZ9h0.net
第五十六回ワイスレ参加作品「身勝手」

 突然の出来事に立ち尽くす。
 彼女と彼女の荷物を乗せて、山へとドライブした帰り道だった。
 スコップやらなにやらを積んで走らせていた車が壊れてしまったのだ。
 行きでは快適に進んでいたのに、急にぷすりと、止まってしまい、しまいにはエンジンすらかからなくなってしまった。愛車ならこうなっても、何が原因かとか調べられていたかもしれないが、あいにく今日はいつもの車とは違う。修理業者を呼ぼうとスマホを確認するも、圏外。周りを確認しても山ばかりで、電波塔が一本も見当たらない。どうやら、辺鄙な場所に来すぎてしまったらしい。なす術もないとはこのことである。
 彼女の鞄を開けて、魔法瓶を取り出す。コップに熱いままの紅茶を注いで、口をつけた。そして助手席に置いた彼女の顔を見る。月夜に照らされたその横顔は美しく、私はそっと口づけをした。
 冬のせいか少し冷えてしまったその肌はとても滑らかで、私は自身の腕の確かさに惚れ惚れする。キスをするシチュエーションが車のシートでなければ、なお盛り上がっただろうことだけが不満だった。
 そのためには早く家に帰って彼女を飾ってあげなければならない。それに、他の二人にだって紹介してあげなくては……。
 とにかく時間が惜しかった。こんなところで立ち往生している場合ではない。
 それに、もしこの場面を誰かに見られてしまっては大変だ。

 そんな時だった。シャラン、と何か鈴のようなものが鳴った。街灯もなく、先ほどまで照らしてくれていた月も雲に隠れていた。だと言うのに、音の鳴った方にいたそれだけははっきりと見えた。
 それはゆらゆらと揺れていた。初めはただ木か何かが風に揺れているだけだと思っていたが、すぐにそれは誤ちであることに気づいた。
 女だった。
 着物を身につけた女が踊りを舞っていたのだ。
 滑らかに、穏やかに、一分の迷いもなく、ゆったりと、しかし隅々まで神経を通わせて、舞っていたのだ。
 この世ならざるその光景に、私はすぐに目を離さねばならないとそう思った。しかし、すでに手遅れなのだ。
 舞いながら少しずつ、女は近づいてくる。私はその場から一歩たりとも動けないまま、それを眺めていた。あまりにも美しい光景を、目に焼き付けようと必死だったのだ。

 そして、今何が起こっているのかが理解できた。女は彼女だった。彼女達だった。
 なぜなら、女には目も、鼻も、口も、何もない。まるで無くしてしまったようにのっぺらぼうだったのだ。だから気づいた。
 あぁ、取り戻しに来たのだ。彼女達の顔を、私が奪ってしまったから。
 しかし、それでも、女は顔があった時よりも美しく見えた。私が必要ないと切り捨てた顔以外の存在であるのに、生前よりも、魅力的に思えたのだ。
 だから私は混乱する。
 そして同時に悟った。

 私に近づいてきている女は完成しているのだ。顔がないということが、そこにもし顔があればという想像心を生み出す。未完であり、しかし、これ以上を超えることはない。ある種の、ミロのヴィーナスなのだ。
 私は即座に車に飛び返り、助手席に乗せた顔皮にライターで火をつけた。タンパク質の燃える独特の匂いが鼻につく。

 いつのまにか、顔のない女は私の後ろへと回り込んでいた。そして、私の首に手を触れる。取り戻しに来た顔を燃やされて、怒っているのか?いや、それは違う。
 私には、今、彼女がどのような顔を浮かべているのか見なくてもわかる。たとえ、顔がなくてもわかる。
 顔を取り戻すことで今の美しさを損なわれなくなったのだ。これで女は完全に完成したのだ。だから、嬉しいに決まっている。
 女が私に迫り、首を絞める力が強くなる。
 何もない顔が私を覗き込んでいた。
 そこには思い描いた最上の顔があった。
 酸欠で苦しくなる中、ミラーに映る私の顔が見えた。
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

921 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/06(土) 19:48:04.36 ID:bpbzwN2r0.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

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>899
>920

只今、三十作品!(`・ω・´)

922 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 19:51:49.76 ID:AC4nY0P20.net
https://itest.5ch.net/mevius/test/read.cgi/bookall/1615027844

ワイスレ杯ヲチスレ

923 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/06(土) 20:44:45.46 ID:bpbzwN2r0.net
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1615030985

本スレの移転先!
現行のスレが埋まった場合、
こちらで作品を受け付けている!(`・ω・´)

924 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 21:00:18.33 ID:0Pkj34N40.net
ワイさん、第五十六回ワイスレ杯の優勝賞金百万円は、小切手ですか?それともアマゾンギフト券ですか?

925 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 21:03:14.10 ID:Tg4wsWEP0.net
>>924
百万円分の米と野菜が送られてきますよ

926 :56回参加作品 :2021/03/06(土) 21:52:49.44 ID:4wQOZ3Aup.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
 数秒。
 そして駆け出す。
 視線の先、埃っぽい大気の中をひらひらと舞い落ちてくるものが多数。
 その落下域に人だかりが出来ている。ゴミの転がる通りで、万歳するように両手を空に掲げる人、ダンクシュートよろしく跳び上がる人。地面に這いつくばる人。道を塞がれた車がクラクションを鳴らしている。
 金だ。まちがいない。頭上を走る高速道路の側壁が壊れ、横倒しになった自動車のライトが見える。
 何があったのかは知る由もないが、おおかた現金輸送車が事故を起こしたとか、そんなとこだろうと見当をつける。
 僥倖だ。


 夏の陽射しの下で、人だかりはさらに温度が高い。
 僕はそのただ中に飛び込むと、脇から押され、後ろから蹴られ、前から倒れ込んでくる人を押し返しながら、やっとのことで跳び上がって空中を舞っていたものをつかみとった。
 跳び上がった瞬間、それが自分の思っていたものと違うことには気がついていた。
 握った手を開く。
 それは金ではなかった。
 羽だ。
 柔らかな、白い羽。 


 僥倖どころじゃない。それは奇跡だった。神性の顕現。 
 僕は隣にいたみすぼらしい身なりの男の腕をつかむと、なにがあったのかと訊いた。
「天使が逃げたんだ。ほら、あそこ」
 男は横たわった車を指さす。僕の思ったとおりだ。運んでいたものが現金ではなかったというだけで。
「襲撃されたのかもしれない」
「それで、天使はどうしたんだ」
「そこらにいるんだろ。非実体化して。パニクってるのかな。羽だけ落ちてくる」
 男は上空を見たまま、横顔に笑みを浮かべて言った。天使の羽以外は相手にする価値がないといわんばかりに。
 喚くようなサイレンがいくつも近づいてくる。警察の到着だ。
「おい、逃げたほうがいいぜ」
 人だかりが入浴剤のように外周から崩壊していく。男も走り去る。


 警官たちが逃げた人々を追いかけていく。もう一枚、と思っている間に逃げ遅れた。まるっとした警官が僕に目をつけたのがわかった。
 警官は無表情に不審と怒りをこめて羽を渡すように僕に命じた。羽を手渡すと今度は所持品検査だ。僕は抗わない。警官に逆らうのは愚の骨頂だ。もし仮に人生を終わらせたいとしても、もっといい方法はいくらでもある。
 もう行っていい、と警官は来た方向に踵を返しながら、吐き捨てるように言った。
 僕は夢から覚めてふたたび歩きだす。


 超富裕層の間で天使が飼われるようになって長い。上級天使なら小都市がひとつ買えるほどの値段がする。ひどい扱いを受けているという話も聞くが、さもありなんだ。ちなみに両性具有の天使は単性の天使より高い値がつく。
 あの羽を換金できたら、それなりの額になったはずなのに。そう思うと悔やんでも悔やみきれない。最近はろくな仕事がないのだ。喰いつめ者はそこら中にあふれている。羽は極上の向精神薬の材料になるし、ちょっとしたノウハウと機材があれば出来るから、逃げおおせた人たちは自分で使うのかもしれないが。


 背後から爆発音が聞こえて振り返った。高架の向こうにそびえるビルの高層階から煙が上がっている。上空に点滅しながら窓に取りつこうとする天使の姿があった。けたたましいサイレン音が通り過ぎていく。
 いつのまにか周囲の薄汚れた建物の入り口に、窓に、人々が顔を出して状況を見ている。誰かが「蜂起だ!」と叫ぶと、歓声が上がった。
 通りに人がなだれこみ、あっという間に祭りのような騒ぎになった。西5番街でも36丁目でも天使の蜂起が始まったと声がする。


 軽い破裂音がして、悲鳴が上がる。人々の表情が変わる。まるでリバーシブルの仮面のようだ。直ちに解散して帰宅せよと、拡声器を通して割れた声がする。どこかから石が投げ返され、うねるような怒号が起こった。
 僕は後ろから押されて歩き出した。人々が群衆となって動き出したのだ。何を考えているのだろうか。僕は必死で人並みに抵抗するが、簡単に押し流されてしまう。 
 雷鳴のような銃声がして、阿鼻叫喚が始まった。背の高い装甲車の屋根から機銃を水平に撃ちまくっている男がいる。
 銃声とともにまさに雷に打たれたような衝撃が胸に走る。僕の左隣を歩いていた女が、短いうめき声を上げて倒れた。世界が回り、崩れ落ちる。倒れた女の顔が目の前に合った。
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

927 :第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/06(土) 22:04:54.52 ID:UPd9cGsHp.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
 状況を素早く理解しなければ。
 いや、それより一刻も早くここを立ち去るべきだ。
 三月の澄んだ夜空。立ちのぼる湯けむり。全裸の俺。
 そして、脱衣所の方から聞こえてくる……女の声。
 誤って女の露天風呂に入るなんて、俺はとんだ間抜け者だ。
 もっとちゃんと入り口で確認していれば、こんな事にはならなかった。
 先客がいなくて貸し切り同然だ、とつい浮かれてしまった事が油断に繋がったのだ。
 頭を抱えてうなだれる。手には心許ない手ぬぐい一枚だけ。
 目の前にあるのは、広々とした露天風呂。
 前にも後ろにも逃げ場はない。
 俺は露天風呂の真ん中で膝から下、湯に浸かったまま動けないでいる。
 くそ、どうすれば。
 と無駄に考えている間に、二人の女が湯船に近づいてくる。
 隠れるスペースなんてある訳なかった。
 相手が気づいて、こっちを見る。もろに目があった。
「きゃー、男がいるわっ」
「ち、違うんだ。待ってくれ、訳を……」
「やだ……気持ち悪いっ、近寄らないで!」
「頼む……!」
 誤解だ、と言う前に俺は、女から顔面を拳で殴打されていた。
 ザッパーン!!
 思い切り後ろに吹っ飛ばされ、俺はそのまま沈み、挙句に湯船の底で後頭部を強打し、意識が途絶えた。
 気づいた時には、脱衣所だった。
 そばには風呂屋の店主がいて、仰向けの俺を険しい顔つきで見下ろしている。
 気絶した俺を湯船から抱え出し、パンツを履かせたのは店主のようだ。
「女の露天風呂に入るなんて変態野郎が」
「勘違いだっ、話を聞いてくれ!」
「五月蝿いっ」
「そんな……本当に悪意はなかったんだよ」
 決して意図した事ではなかったのに、まるで犯罪者扱い。
 ひどい仕打ちだ。
 いくら独身でハゲで中年太りしてるからって、見た目で判断するのは如何なものか。
 折角の一人旅だと言うのに、これじゃあ思い出もクソもない。
 別に若い女の体を見ようとした訳ではなかった。ただ少しだけ視界に入っただけだ。
 俺は三次元の女よりも、二次元の女を愛すると決めた。もう随分と前に。
 いや、そんな事を考えている場合じゃない。
 そうこうしてる間に、耳を塞ぎたくなるようなサイレンの音が響いてくる。
 数分後、正義感溢れる若い警察官が脱衣所にやってきた。
 さしずめ店主が通報したのだろう。
 警察官は挙動不審の俺の姿を見つけるや否や、見下した表情で言った。
「事情は詳しく聞いた。あんた良い歳して恥ずかしいと思わないのか?」
「だから、そういう気はさらさらなくてですね」
「被害者の話を聞いたら、そういう気満々としか思えん。取り敢えず詳しい話は署で」
「そんな勘弁して下さい。俺は悪くないんです!」
 そうだ。俺は悪くない。ただ本当に間違って女湯に入った。
 そして、後から入ってきた若い女と鉢合わせてしまっただけで。
 なんでそれだけで変態扱いされるんだ。おかしい。何故だ。何処に落ち度がある。よく考えろ。
 ……あぁ、そう言えば。
 裸の女が近づいてきて、向こうがこっちに気づく前、俺は相手の顔を見て、ふと思ったな。
 俺の愛する魔法少女センチメンタルの霧崎ライムちゃんにちょっと似てるって。
 そしたら、ライムちゃんの限定フィギュアを一昨日ゲットした事を思い出して、再び喜びが込み上げてきて、帰ったら存分に愛でてやろうと思って……。
 それだけのはず。
 帰る楽しみが出来たってだけの事。
 女と目が合った時も、ライムちゃんの事しか考えていなかった。女に手を出そうとしたり、何か卑猥な事を言ったりもしてない。ただ純粋にライムちゃんの事で頭の中がいっぱいだっただけで。
 いや、待てよ。あぁ、違う。大事な事を忘れていた。
 ……なるほど。確かに。それなら合点がいく。ふむふむそうか。
 間違いない。ライムちゃんに想いを馳せていた俺は多分、女と目が合ったあの時。
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

928 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/06(土) 22:04:58.68 ID:bpbzwN2r0.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

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只今、三十一作品!(`・ω・´)

929 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 22:05:17.16 ID:0Pkj34N40.net
ああ、あの過疎の村でひそかに人気という「ワイさんこだわり農薬野菜セット」なら変更してください。なんならスタバカードでもいいです。

930 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/06(土) 22:06:21.67 ID:bpbzwN2r0.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

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只今、三十二作品!(`・ω・´)ちょっと寝る!

931 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 22:12:56.35 ID:lTXkhK2G0.net
これってワイ君からのお題の解説あるの?
無かったらモヤモヤするから、あると嬉しい

932 :美世だが :2021/03/06(土) 22:43:29.90 ID:i1Y5Uy/j0.net
お題の解説って何言ってんだ
投げられたら拾うだけの構造に気がついてないなら終わってる

933 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 22:52:11.68 ID:UPd9cGsHp.net
818を投稿した者ですが、バグを起こして同じのを投稿しました。927がそれです。すみません。

934 :美世だが :2021/03/06(土) 22:59:58.65 ID:i1Y5Uy/j0.net
あ、つい舌がすべっちゃった
もう何も言わん

935 :美世だが :2021/03/06(土) 23:02:02.64 ID:i1Y5Uy/j0.net
今は11時だけど
ここから秀作が10作品は滑り込んでくるから怖いよね

936 :不浄場に鎮座三郎DOPNESS/第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/06(土) 23:02:52.66 ID:kY9Peerma.net
ワイ
 突然の出来事に立ち尽くす。
 玄関を開けると殺したはずの女がそこに立っていた。
 外では雨が降っていて、彼女はまるでその中を歩いてきて、雨宿りをしにきたみたいに、そこに立っていた。髪からは水滴が溢れ、濡れたワイシャツから肌が透けていた。なんとも言えない存在感がそこにはあった。生前の彼女から考えられないほどのリアリティが目の前の女にはあったのだ。
 頭の中は疑問符でいっぱいだ。殺し損ねたはずもない。首を絞めた感触はまだ僕の掌に残っている。動いていない心臓の音は鼓膜に焼き付いている。死体は重たく、雨の日を選んで埋めた。証拠もなく、彼女は行方不明として扱われた。だから、こうやって目の前にいるはずがなかった。
 双子の姉妹もいない。彼女は天涯孤独の身だった。つまり、彼女は生前から死んでいたも同然だった。違いがあるとすれば、生きているか、死んでいるか、それだけだった。
 僕は気を取り直して彼女に微笑み、部屋へと歓迎する。
「まぁ中に入れよ、ずっと待ってたんだ」
 彼女はにっこりと笑って、玄関へと足を踏み入れた。
「何か飲むだろ? 簡単なカクテルでもいいかな?」
 僕がそう聞くと、彼女は「いいわよ」と、一言だけ返した。

 僕らは机を囲み、グラスを手に取って乾杯する。適当に作った名もないカクテル、それを飲んで、注いで、二杯目を飲み、また注ぐ。
 話しているうちに僕らの距離は近づいていって、ついにはゼロへと至る。彼女の青白い肌は血が通っていないかのように冷たく、綺麗だった。
 肌に触れて、軽くくすぐると、彼女はまるで生きてるかのように声を上げる。首筋には赤くなった絞殺痕があり、それがタトゥーのように美しくて、そっと口付けをする。
 それからはいつもの流れだった。
 しれっとビデオカメラを設置して、僕は彼女へと覆い被さる。幽霊とは思えない生々しさが僕をさらに加速させる。
 裸になった彼女は僕に尋ねた。
「ねぇ、私は死にたかったんだと思う?」
「毎日言ってたよ、死にたいって」
「本当に死にたかったのかな」
「君はなんの抵抗もしなかった。あの時の表情を今でも覚えているよ」
「これだけははっきりわかるわ。あなたが殺してくれたから私は生きているの」
 僕が彼女に内没したまま、ゆっくりと首へと手を伸ばす。アルコールが入ってることもあり、体は熱く、興奮は覚めない。
「ほら、こんな風に……」
 細い首の、赤い跡の上に手を重ねる。ゆっくりと力を込めていく。彼女は静かに僕を眺めていて、あの時の繰り返しだと僕は思っていた。雨の音と、とても近くで鳴る水音だけが部屋に響いていた。
 いつのまにか行為は終わっていて、僕は彼女の中に欲を吐き出していて、彼女は事切れていた。僕の部屋の布団の上には、幽霊の死体が横たわっていて、そして、その中と上には生が撒き散らされている。相反する二つがこの部屋では共存していた。
 彼女は安らかに目を閉じていて、まるで寝ているように死んでいた。僕は二度死んだ彼女を横目に、グラスに残っていたカクテルを飲み干す。やはり、先ほどまでと同じ味がしていた。
 いつの間にか僕は寝ていて、朝が来ていた。布団に彼女の姿はなかったが、確かにそこにいたと言う痕跡だけがあった。机の上にグラスは二つあったし、残していった飲みかけは氷が溶けて、色が薄くなっていた。
 試しに回していたビデオを確認するも、暗闇しか映っていなく、うまく撮れていなかった。
 殺したはずの彼女が現れた。
 そのことについて疑問はたくさん残る。しかし、それは消えてしまった彼女の幽霊だけが知り得ることだ。だから、深く考えずに、窓を開けてタバコを吸う。雨が上がりの青い空に煙を吐いていると、灰が床に落ちた。
 一週間が経った。昨日から曇り空で、どうやら今日は雨が降るらしい。僕は帰りにスーパーに立ち寄ってお酒を買った。
 簡単なカクテルを作ろう。カクテルの名前はきっとこうだ。
「人殺しのカクテル」
 僕がそんなことを呟きながら、グラスを用意していると、チャイムがなった。外では雨が降っていた。玄関の扉を開けると、殺したはずの彼女が立っていた。
「まぁ、中に入れよ。ずっと待ってたんだ」
 そう言うと、彼女はうなづき、中へ入ってくる。
「何か飲むだろ? 簡単なカクテルでも良いかな?」
「いいわよ、私も飲みたくなったの。人殺しのカクテルを」
 僕しか知らない名前を彼女は何故か知っていた。僕は驚し、背筋を冷やす。だけれども、振り返ったりはしなかった。用意していたグラスにお酒を注いで、それに映った彼女の表情を覗き見る。
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

937 :美世だが :2021/03/06(土) 23:13:39.09 ID:Vigmjxxua.net
今から小屋に行くわ

938 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 23:15:13.19 ID:lTXkhK2G0.net
終わってるも何も、まだ始まってもない人間としては勉強の機会が欲しいだけなんだけど……

939 :美世だが :2021/03/06(土) 23:19:37.23 ID:Vigmjxxua.net
>>938
ああごめん
本当にワイスレ杯知らないんだな
お題の解説はない
出されたお題で自由に書くだけ
正解は無い
ワイが面白いと思った人が優勝

940 :美世だが :2021/03/06(土) 23:21:13.09 ID:Vigmjxxua.net
これでわかるかな

941 :美世だが :2021/03/06(土) 23:21:50.35 ID:Vigmjxxua.net
小屋に着いた

942 :美世だが :2021/03/06(土) 23:24:13.00 ID:Vigmjxxua.net
薪とりにいく

943 :不浄場に鎮座三郎DOPNESS/第五十六回ワイスレ杯参加作品 :2021/03/06(土) 23:30:59.50 ID:kY9Peerma.net
>>936
文頭にメモが紛れ込んでいたので修正いたします。
『人殺しのカクテル』
 突然の出来事に立ち尽くす。
 玄関を開けると殺したはずの女がそこに立っていた。
 外では雨が降っていて、彼女はまるでその中を歩いてきて、雨宿りをしにきたみたいに、そこに立っていた。髪からは水滴が溢れ、濡れたワイシャツから肌が透けていた。なんとも言えない存在感がそこにはあった。生前の彼女から考えられないほどのリアリティが目の前の女にはあったのだ。
 頭の中は疑問符でいっぱいだ。殺し損ねたはずもない。首を絞めた感触はまだ僕の掌に残っている。動いていない心臓の音は鼓膜に焼き付いている。死体は重たく、雨の日を選んで埋めた。証拠もなく、彼女は行方不明として扱われた。だから、こうやって目の前にいるはずがなかった。
 双子の姉妹もいない。彼女は天涯孤独の身だった。つまり、彼女は生前から死んでいたも同然だった。違いがあるとすれば、生きているか、死んでいるか、それだけだった。
 僕は気を取り直して彼女に微笑み、部屋へと歓迎する。
「まぁ中に入れよ、ずっと待ってたんだ」
 彼女はにっこりと笑って、玄関へと足を踏み入れた。
「何か飲むだろ? 簡単なカクテルでもいいかな?」
 僕がそう聞くと、彼女は「いいわよ」と、一言だけ返した。

 僕らは机を囲み、グラスを手に取って乾杯する。適当に作った名もないカクテル、それを飲んで、注いで、二杯目を飲み、また注ぐ。
 話しているうちに僕らの距離は近づいていって、ついにはゼロへと至る。彼女の青白い肌は血が通っていないかのように冷たく、綺麗だった。
 肌に触れて、軽くくすぐると、彼女はまるで生きてるかのように声を上げる。首筋には赤くなった絞殺痕があり、それがタトゥーのように美しくて、そっと口付けをする。
 それからはいつもの流れだった。
 しれっとビデオカメラを設置して、僕は彼女へと覆い被さる。幽霊とは思えない生々しさが僕をさらに加速させる。
 裸になった彼女は僕に尋ねた。
「ねぇ、私は死にたかったんだと思う?」
「毎日言ってたよ、死にたいって」
「本当に死にたかったのかな」
「君はなんの抵抗もしなかった。あの時の表情を今でも覚えているよ」
「これだけははっきりわかるわ。あなたが殺してくれたから私は生きているの」
 僕が彼女に内没したまま、ゆっくりと首へと手を伸ばす。アルコールが入ってることもあり、体は熱く、興奮は覚めない。
「ほら、こんな風に……」
 細い首の、赤い跡の上に手を重ねる。ゆっくりと力を込めていく。彼女は静かに僕を眺めていて、あの時の繰り返しだと僕は思っていた。雨の音と、とても近くで鳴る水音だけが部屋に響いていた。
 いつのまにか行為は終わっていて、僕は彼女の中に欲を吐き出していて、彼女は事切れていた。僕の部屋の布団の上には、幽霊の死体が横たわっていて、そして、その中と上には生が撒き散らされている。相反する二つがこの部屋では共存していた。
 彼女は安らかに目を閉じていて、まるで寝ているように死んでいた。僕は二度死んだ彼女を横目に、グラスに残っていたカクテルを飲み干す。やはり、先ほどまでと同じ味がしていた。
 いつの間にか僕は寝ていて、朝が来ていた。布団に彼女の姿はなかったが、確かにそこにいたと言う痕跡だけがあった。机の上にグラスは二つあったし、残していった飲みかけは氷が溶けて、色が薄くなっていた。
 試しに回していたビデオを確認するも、暗闇しか映っていなく、うまく撮れていなかった。
 殺したはずの彼女が現れた。
 そのことについて疑問はたくさん残る。しかし、それは消えてしまった彼女の幽霊だけが知り得ることだ。だから、深く考えずに、窓を開けてタバコを吸う。雨が上がりの青い空に煙を吐いていると、灰が床に落ちた。
 一週間が経った。昨日から曇り空で、どうやら今日は雨が降るらしい。僕は帰りにスーパーに立ち寄ってお酒を買った。
 簡単なカクテルを作ろう。カクテルの名前はきっとこうだ。
「人殺しのカクテル」
 僕がそんなことを呟きながら、グラスを用意していると、チャイムがなった。外では雨が降っていた。玄関の扉を開けると、殺したはずの彼女が立っていた。
「まぁ、中に入れよ。ずっと待ってたんだ」
 そう言うと、彼女はうなづき、中へ入ってくる。
「何か飲むだろ? 簡単なカクテルでも良いかな?」
「いいわよ、私も飲みたくなったの。人殺しのカクテルを」
 僕しか知らない名前を彼女は何故か知っていた。僕は驚し、背筋を冷やす。だけれども、振り返ったりはしなかった。用意していたグラスにお酒を注いで、それに映った彼女の表情を覗き見る。
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

944 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/06(土) 23:34:33.82 ID:bpbzwN2r0.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

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只今、三十二作品!(`・ω・´)

945 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/06(土) 23:35:58.46 ID:bpbzwN2r0.net
>>938
全ての順位が確定したあとに明かす予定!(`・ω・´)

946 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 23:37:27.62 ID:lTXkhK2G0.net
>>939
あ、マジで無いのね
来たばっかだから知らなんだわ

とはいえワイ君自身が高難易度と言うぐらいだから、せめてどういう意図でこのお題を投げたのかぐらいはワイ君から聞きたいのが本心……

947 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 23:38:24.92 ID:lTXkhK2G0.net
>>945
おっとマジか
待ってるよ!

948 :美世だが :2021/03/06(土) 23:44:12.78 ID:Vigmjxxua.net
ワイと常連の付き合いを四捨五入したら10年以上のやつばっかし
その中で出たり入ったり
君は入って来たん
よく沼に片足突っ込んだね

949 :美世だが :2021/03/06(土) 23:45:31.22 ID:Vigmjxxua.net
15分切った

950 :美世だが :2021/03/06(土) 23:45:49.03 ID:Vigmjxxua.net
ゴングはもうすぐ

951 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 23:50:24.91 ID:elTsT7SL0.net
突然の出来事に立ち尽くす。
「まじかよ……」
なんと気の迷いで買った宝くじが当たってしまったのだ。

事の発端は5分前に遡る。
休日の昼下がり、食材の買い足しのためにスーパーに来ていたのだが、
入口付近に新設された宝くじ売り場の赤文字に視線が吸い寄せられた。
魅入られたと言っても過言ではないだろう。なんともいえない魅力が俺を捉えて離さないのだ。
それにしても宝くじか、懐かしい。
ちっちゃい頃やりたいやりたいと喚いてよく親を困らせたものだ。

現在の俺は金欠でギリギリなのに、何を思ったのか、「すみません、1枚下さい」とつい口にしてしまった。
「はい、この中からお選びください」
と店員さんが返答をする。どうやらスクラッチ形式のようだ。

ふと、我に返るも今更このタイミングでやっぱもういいですとは言い出せない。たかが200円、されど200円。
だが恥と200円なら俺は200円を捨てる。
このスーパーを利用する度に白い目で見られるのは耐えられない。まあ我ながら自意識過剰とは思うが。

スクラッチを受け取ると、財布から硬貨を1枚取り出し、カリカリと削って行く。
マス目は全て25マス。俺がここでスクラッチを楽しむ人種ならば1マス1マス削り、一喜一憂していたことだろう。だが、俺には使命がある。
使命というとさぞ大層なことをするようにでも聞こえるが、実の所ただのタイムセールで他のおばちゃんと戦うことである。
そういうわけで、どうせ当たるはずもない、当たっても数百円のスクラッチに時間を掛ける訳にはいかず、大雑把に削っていく。
削る度に、変なタヌキやよく分からない鹿のキャラが現れてきた。
全て削り終わったあと、どうすればいいのか店員さんに尋ねるとどうやら横にある機械の挿入口に入れればいいとの事。

どうせ当たっていないだろうと、ぶっきらぼうに機械のチェックにかける。
ウィーンという機械音と共に1枚の明細書と入れたスクラッチが出てきた。
そこに書かれていたのは……【高額当選 】との文字が。
「え?」
「どうされました?」
「え、いや当選って書いてあったので……」
「おめでとうございます」
問題はそれがいくらなのかだ。宝くじの高額当選はなるべく伏せといた方が良いとよく聞く。
スクラッチをもう一度確認し、貼り付けられていた当選金額が書いてある紙と見比べてみる。
「まじかよ……」
端的に言うと1億円だった。
100万円でも、1000万でもなく1億だった。
まあ100万でも1000万でも現実味がないのは変わらないが。
「は……はは」

思わず高笑いでもしそうになってしまった俺はその場を逃げるように、タイムセールが行われるコーナーへと向かうことにした。とりあえず、暫くしないとこの混乱は収まらないだろうと思い、元々の目的を遂行することを優先したのだ。

しかし、少し時間を掛けすぎてしまったのか、値引きのシールが貼られた商品をおばさんたちが丁度取り合っていた。
間に合わなかったのだ。
だが、特に後悔という気持ちにはならなかった。
そりゃ1億円も当たったのだ。今の俺にとっては簡単に買えるものを取り合っているのだと思うと滑稽にも思えてくる。
ふと視界に入った金属のプレートに男の顔が反射していた。
それはもう気味悪く。
薄らと笑みを浮かべていた。

952 :この名無しがすごい! :2021/03/06(土) 23:52:36.37 ID:elTsT7SL0.net
すみません、951は第56回ワイスレ杯参加作品です

953 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/06(土) 23:54:58.28 ID:bpbzwN2r0.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品

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只今、三十三作品!(`・ω・´)これで打ち止めか!

954 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/07(日) 00:03:28.06 ID:pF9HuaYa0.net
第五十六回ワイスレ杯参加作品は三十三作!

上位は十作!
今日の夕方に全作品の寸評を書いてスレッドで公開する!
晩の八時に選ばれた十作を発表!
その後で今回のお題の意味を少し語る!

おやすみ!(`・ω・´)ノシ

955 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 00:06:23.18 ID:AbJ1O5NK0.net
皆様、お疲れ様でした

956 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 00:31:25.82 ID:Jmvk5p5K0.net
(・ω・`)乙

957 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 00:50:52.44 ID:MdR9KKe30.net
ありゃ、しばらく来なかったらワイスレ杯やってたのか
んで今回はシャム猫は参加したん?

958 :丁寧に全部は無理だから上からやっていく :2021/03/07(日) 09:38:54.06 ID:5XVWXc09a.net
 突然の出来事に立ち尽くす。
「どうして、なんで……?」
 私は震える声で、辛うじてそう口にした。
 残業疲れで自室のアパートに帰れば、既に時刻は深夜零時近く。
 冷蔵庫に入れていた野菜炒めを食べていたら背後から物音が聞こえてきて、振り返った先には青白い顔をした男が立っていたのだ。
 驚きのあまり言葉が出ない。心臓の鼓動が痛いほどに激しい。
「お、俺にもわからない。気が付いたら、ここにいた。それに、何も思い出せないんだ。信じてくれ」
 男は泣きそうな顔で、必死に弁解を始める。
 私は彼の顔を見る。普通の人間とは思えないほどに青白い。いや、顔だけではなく、全身が青白かった。そして何より、彼の足許はぼやけていて見えなかった。
「幽霊……? いや、そんなの有り得ない。夢、幻覚……?」
「幻でもなんでもない。本当に、気が付くとここにいたんだ。信じてくれ」
 私はとにかく彼に部屋の隅へと離れてもらい、落ち着いて考える時間を取った。
 今日一日を思い返せば夢ではないことは明らかだ。幻覚の方は否定できない。ある日突然幽霊がでてきたなんてことより、私の頭がおかしくなったと考えた方がずっと筋が通っている。
 時間を取って話し合うことで状況を整理することができた。どうやら彼は自身が幽霊であることに気が付いているらしい。いつの間にかここにいて、何も覚えてはいないのだという。
 彼の方がずっと慌てて申し訳なさそうにしていて、不思議と超常現象への恐怖も薄れてしまった。
 そして彼は、なぜかここの部屋から出ることができないらしい。強迫観念のようなものがあり、どうしてもここにいるべきだと考えてしまうようだ。
「……はぁ、ここ事故物件だったの。前の入居者の人が自殺したんですって。あなた、地縛霊なのよ、きっと」
 私は頭を押さえながら、彼へとそう説明した。
「君は冷静だな。俺なんて、まだ混乱している。それに女性の部屋に居座っていることへの罪悪感でいっぱいだ」
「昔から、動物の生き死にへの忌避や嫌悪があまりなかったの。占いや幽霊なんて信じたこともなかったし、お墓参りに意味を感じたこともなかった。さすがに突然幽霊が立っていたのには驚いたけど、別にあなた、怖くないもの」
 そんな私が幽霊騒動に直面するとは皮肉なものである。或いは、そんな私だからこそなのか。
「随分と変わった人の許に出てしまったものだ」
「で、どうしたいの?」
「どうしたい、とは?」
「何かあるでしょう? 未練や自分ことを思い出したい、だとか」
「突然そんなことを言われてもな……。君に迷惑を掛けないよう、早く成仏したいとは思っている」
 大真面目な顔でそんなことを言うものだから、つい吹き出しそうになってしまう。
「別に気にしなくて結構よ。何かしたいことがあるなら協力してあげる。とにかく今日は遅いから、私はシャワーを浴びてくるわ」
「君は強いんだな」
 私は晩飯の食器を片付けると浴室へと向かった。彼は私の手にした下着を目にしたことへのバツの悪さからか、気まずげに目を伏せていた。
 私は服を脱ぎながら、深く息を吐き出した。
 まさか、殺した相手が自室に化けて出るとは思わなかった。
 私は仕事のストレスから、定期的にホストクラブに通っていた。
 彼はそこで勤めていた三流ホストで、よく私の愚痴を真摯に聞いてくれていた。
 彼は今の職は向いていないため一般企業へ転職したいと考えており、それから落ち着けば私と結婚を前提に付き合いたいとまで言ってくれていた。
 だが、それは嘘だった。彼には別の婚約者がいたのだ。近い内に辞めようと考えていたことだけは事実であった。
 私は彼を殺した。彼を恨んでいたわけではない。婚約者のものではなく、私だけのものにしたかったのだ。
 だから私は、こうして彼が私のアパートに出てくることなんて、別に不快でもなんでもない。いつまでも居座ってもらって結構だ。
 事故物件なんて彼が真相に気づかないように咄嗟についた嘘っぱちである。
 私のアパートに出たのは復讐のためなのだろうか? 或いは、彼が復讐に来ると思い込む私の見せた幻覚か。婚約者への未練より私への恨みが大きかったということならば、それほど嬉しいことはない。
 私は浴室で鏡を覗き込む。
 薄っすらと笑みを浮かべていた。

959 :丁寧に全部は無理だから上からやっていく :2021/03/07(日) 09:39:38.88 ID:5XVWXc09a.net
間違えた

960 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 13:59:42.95 ID:K59bjtRB0.net
気になったやつだけ寸評。読めてない言う奴は読まんでいい。

>742 突然の出来事といえば幽霊。ご都合主義でありきたりな展開をみせたあと、こじつけがましく着地。着地してない。1/5

>743〜760 ぜったいウ○チ漏らすネタが出てくるだろう。そしてそれをやるならこの人だろう、と思わせておいてやらなかった。読者を失望させた罪は重い。 0/5

>804 テーマに新鮮味はないけど、文章がわりといい。スタイリッシュ。月の光に透けそうな黒い長髪は意味わからない。二重人格設定をうまく織り込んでいると思う。 3/5

>818 人は過ちを犯すもの。痛恨のミスに気づいた序盤は切迫感が出ててよかった。てめえのクソ裸なんてどうでもいいんだよ、くそ女とかタンカ切ってぶっちぎってよ、ファンタジーなんだから。 3/5

>821 純愛ものか。完成度でいえばこれが一番かも。ただネタに飽きた感。4/5

>831 昭和風味の終末SFを5ch脳が語るとこうなるという。SFじゃないかもだけど 3/5

続く、かな

961 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/07(日) 17:34:17.56 ID:pF9HuaYa0.net
第五十六回ワイスレ杯全作品の寸評

>742
主人公は突然に現れた男の幽霊を見て驚いた! 震える声を漏らす! 鼓動が激しくなる! その恐怖にも似た言葉は上手く隠され、
最後の真相に自然に繋げる! 全身が青白い男は主人公が殺したホストであった! 婚約者がいながら主人公に結婚の話をちらつかせた!
食い物にしていたのだろう! 最後の一行は鏡を使って見事に収めた! ただし本文に痛恨のミスが潜んでいた!
「〜不思議と超常現象への恐怖も薄れてしまった。」と書いてしまった! 「〜それほど嬉しいことはない。」と内容が食い違う! 実に惜しい!

>743
主人公が部屋に一人でいるとする! 最初の一行目の言葉を云いたくなった経緯が書かれていない! なんとなくであっても、
何か切っ掛けになる内容があるのでは! 無理矢理、お題を消化しているように感じられた! 最後の一行にしても不自然に思える!
今日も風俗に行くと書かれていた! 連日、風俗に行くものなのだろうか! 動機となることが書かれていないので強引な展開と云える!
最初の一行と最後の一行を乱暴に嵌め込んで作った少し歪な掌編に見えた!

>747
この短い文章の中で矛盾がある! 「ああ、俺がニートをやめる日も近い。」と書かれていた! 支援団体が強制的に入所させることができるとは思えないが!
観念したような言葉のあとに「だが俺は絶対に働かない。」とある! やめる日は近くないのでは! 主人公は錯乱しているのだろうか!
最後の一行の笑みは信念を貫いて勝ち誇る意味があるのだろうか! 狂人が浮かべる笑みなのか! かなり雑な作りと云える!

>758
この話にも矛盾が潜んでいる! 主人公は自身の異常な食欲に気付いていない! ふだん通りの食事量なのだろう!
そうなると最初の一行目がしっくりこない! 血糖値が二百四十は当たり前! 暴飲暴食に慣れているので、突然に数値が撥ね上がるとは考え難い!
更に何故、鏡を見るのだろうか! 表情よりも頬の肉や首周りの肉のだぶつきを気にする方が自然に思える!
もう少し内容にも考えを巡らして貰いたい! まずは矛盾のない文章を心掛けた方がよい! 

>759
この話にも矛盾がある! 主人公は暴食によって重度の糖尿病で失明した!
では、最後の一行はどのようにしてわかったのだろうか!
自分の姿を鏡で見ることはできない! 人称の選択を誤った感がある!

>760
何をしてそのような事態になったのか! 何も書かれていない! 連作短編になっているのだろうか!
施設だけではわからない! どのようなところなのか! 何をする場所なのか!
作者がやけくそになってなっているように思えた!

>804
どこか現実離れした話であった! 自室で寝ていた主人公がいつの間にか教室にいた! 夢遊病なのだろうか!
ここからの描写がかなり甘い! 教室内は暗いが月光が僅かに射し込んでいる! 薄暗い程度に思える!
故に倒れている少女の姿が見えた! ただし自分が握り締めていたナイフは目を凝らしてもはっきりしない!
暗闇に目が慣れてようやく理解した! 見える距離が曖昧で夢の中の話に思えた! そうなると整合性が関係なくなり、笑みの意味もどこかぼやけた!

962 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/07(日) 17:35:31.44 ID:pF9HuaYa0.net
>808
この話は意味が理解し難い! 主人公のプリンが誰かによって食べられた! 犯人探しが始まる! その結果、妹のところに向かう!
口元の汚れを指摘! 妹はプリンの名を出して自ら自白した! そこに母親が騒々しく現れて買ってきたプリンを勧める! 口元のプリンの食べかすが犯人と仄めかす!
そうなると妹の口からプリンが出たことに疑問が生じる! 母親はプリンを買える状態にいて、何故、娘のプリンを食べたのか! 嫌がらせに思える!
食べられたプリンの個数が気になる! 二個であれば母親と妹が食べたことにできる! ワイには微妙な内容であった!

>818
女湯に間違えて入ることがあるのだろうか! 焦っていながらも心の声は冷静であった! 入ってきた女が声では嫌がりながらも女傑で主人公の顔面に拳を叩き込む!
若い女が逃げずに全裸で向かっていくだろうか! その後、警察が到着! 主人公の容姿が明かされた! ハゲの中年太り! 二次元をこよなく愛するオタクでもある!
ライムちゃんを想った時の自身の笑みについて考察! 成り行きを納得した! 現実と非現実が混ざり合った、ありそうでいてなさそうな話であった!

>821
鮮烈な出会いが脳裏に焼き付き、主人公は一目惚れした! 丁寧な言葉で心情を綴り、彼女を求めて探して回る!
二度目も同じ! 風でスカートが捲れ上がった! 水色のショーツを二回も見たことで主人公の口が滑る!
女性は口汚く罵る! 主人公は歓喜に包まれる! サドとマゾの運命的な出会いを最後の一行で示した!
「そして」の多用が気になるが、お題の消化と内容は存外悪くなかった!

>824
大人のファンタジー作品であった! 主人公は一方的に婚約を破棄された! 用意したものが全て無駄になった!
傷心の状態でタワーマンションに帰ると人の気配が! 泥棒相手に鬱憤を晴らそうとしたが相手は少女であった!
タイムスリップをして未来にきたと考えられる! 主人公もまた、リザとの出会いで元婚約者と同じような状況となる!
最後の一行から想像を膨らませてモナリザの微笑みに辿り着いたように思える! 説明に多くの文字数を割いている為、読み物としての面白さは程々!

>831
あまりにも内容がストレート! 住んでいるところに弾道ミサイルが着弾すれば被害は甚大! 身の危険を感じている様子はよくわかる!
場所はよくわからない! 家でテレビを観ていたのだろうか! 立ち尽くすは路上を思わせる! スマートフォンで観ていたのか!
ニュースには続きがあり、東京ではなくて大阪と修正された! 主人公はへたり込む! まだ混乱の中にいて最後の一行に繋げる!
その部分だけは冷静で自身の僅かな表情を感じ取った! 感情の起伏を考えると少し引っ掛かる!

>834
一目でわかる! 相当に書き慣れている! 後宮物らしい名称や衣装が内容に華を添える! それでいて堅苦しいと思わせない軽妙な書き方がされていて、
読者の目を意識して作られていた! 主人公の目から見た騒動を描く! 真の主役は月英で最後の笑みは陛下の暗殺を仄めかす!
異国から連れ去られた恨みを忘れなかった! 陛下の寵愛を一身に受けながら機会を窺っていたと思われる!
一レスながら中身の濃い話を読んだような気分になった! 若干、後半の主人公の口調が砕けすぎているような気がしないでもない!

>840
緊張感を維持した状態で男女がぎこちない遣り取りをする! 交わす言葉で徐々に二人の関係が見えてくる!
元恋人で女は先輩に強姦された! 男は現場を目撃したが恐怖から声を上げることができなかった!
十年の時を費やしてようやく真相を明かして謝った! その過程で女は笑うと云う行為には屈服の意味があると伝える!
女が人前で笑わない理由にもなっていた! 男が帰ると過去を思い出す! 男達に云いようにされた時、女は笑った! 最後の一行が際立つ!
修正に修正を重ねた労作ではあるが「女が相冷たい言葉を放つ」は変換ミスに思える! あと感嘆符のあとに文章が続く場合は全角の空白を入れた方がよい!

963 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/07(日) 17:38:35.04 ID:pF9HuaYa0.net
>850
目にした者に死が訪れる、あのドッペルゲンガーなのだろうか! 家に帰ると自分とよく似た人物がうつ伏せの姿で倒れていた!
息はあり、会話が可能であった! 妖怪の覚のように心の声を読み取る! 逆撫でするような言葉に主人公の怒りが頂点に達した!
自死を嫌い、もう一人の自分の絞殺を強行する! またしても目の中に最後の一行が! この話では最初と最後の一行は無くても問題なく読める! 
お題が機能していないことを示している! 話の内容としても理由がわからない! 何の為に現れたのか! 主人公に腹を蹴られた時、蹴った本人が痛がる様子はなかった!
その為、もう一人の自分を殺害すると、どうなるのか! 読者の想像の余地がない! もう少し最後に繋がる何かが欲しいところ! 

>863
読み易いが意味はわからない! 詰まらなそうな顔文字が宇宙人とどのような関係があるのか!
穴のようなところから顔を出した人物は顔文字の目に当たるところにいた! 真っすぐな線は口の部分! 相棒は別の目にいると思われる!
主人公がいると線が真っすぐにならないと主張! 光と同じと云うが意味はわからない! 犬の登場は必要だったのか! これもよくわからない!
最後の顔文字はやはり主人公の影響でスマイルマークのようになっていた! この話は理屈抜きで感覚に頼って読んだ方がいいのかもしれない!

>872
最初の一行は機能してハイジャックの様子が克明に描かれていた! その後、機体は海に不時着! 主人公は砂浜に流れ着いた!
何故なのか! 急に描写が不明瞭となる! 胡蝶の夢を出しているので敢えてぼんやりさせているのだろうか!
最後の一行は打ちミスに思えた! 手前に「笑みを浮かべていた」と書かれていた! 取って付けたような歪な状態なのでコピペの失敗に思える!
あと太平洋のど真ん中に落ちてどこかに流れ着くことがあるのだろうか! 書き過ぎた弊害と云える!

>874
主人公は残酷なシーンをカメラに収めた! 顧問の勧めもあってその一枚をコンテストに出した! 見事、大賞を射止めた!
それが切っ掛けで取材攻勢を受ける! ちょっとした有名人となった! その熱が収まる頃、主人公はカメラから遠ざかる!
切っ掛けとなった鴉を憎み、無気力な生活を続けていた! ある日、屋根にいる大きな雛鳥を目にする! 鴉の子供で巣立ちの瞬間に立ち会う!
危なっかしい様子に思わず声援を送り、スマートフォンのカメラ機能でアップして飛び立つ瞬間を収めた! 暗くなった画像には相応しい笑みが映っていた!
最後から二行目で「笑う」と書かれていた! 最後も笑みなので「そんな感情はもう忘れたはずなのに」くらいにとどめた方がいいだろう! それと姑息に卑怯の意味はない!

>875
アスタリスクの文字化けが意図的に行われ、ゲシュタルト崩壊に凄みを与えていると頭に過ったがそうではないのだろう!
ワイスレ杯のお題をそのままに作品へ反映させたメタフィクションの一面を併せ持つ! 執拗に繰り返されるお題の一行!
不安定な文章と内容がよく合っていた! 常習性のある安価なスナック菓子のように頭を無にして読める!
メインにはならないが箸休めにちょうどよい! ただし人を選ぶ! 今回はそういうことで!

>880
孤独に馴染んでいた主人公に君と云う人物が声を掛ける! 一緒にいることが多くなり、孤独ではなくなった!
その君にたくさんの友人ができて主人公と疎遠になる! 振り向かせたい一心で主人公は決意する!
屋上からの飛び降り自殺! その死にざまを君に見せることで忘れられない存在になる! そこまでするのか、と思わなくもない!
君の性別が気になる! 少し乱暴な言葉遣いをする女子であれば、ただの親友ではなくなる! 恋愛感情まで発展して死を願う気持ちに重みが加わるのでは!

>881
王子が生きた剣を手に入れた状態で物語が始まる! 過程がない為、ここまでの王子の考えがよくわからない!
剣を所持していれば不死! そのはずなのだが行き倒れとなって少女に助けられる! 倒れていた理由がはっきりしない!
剣は手放さずに持っていた! 剣で人を斬ることで魂を吸い取り、主人公の命に変換しているのだろうか!
生きた剣は王子に人を斬らせて何を得るのだろうか! 王子は永遠の命を求めて今の姿になったのか! 戦闘に特化した話でもないので内容がぼんやりした!

964 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/07(日) 17:39:55.37 ID:pF9HuaYa0.net
>882
寿限無を思い出す名前ネタ! くすりとした笑いを引き起こす! 次に日本に馴染もうとする息子の漢字ネタ! 読者を飽きさせない工夫が盛り込まれていた!
徐々に息子の日本語も上手くなる! 取って置きの内輪ネタに突入! なるほど、確かに最後の一行は合っている! ただの内輪ネタではない!
今回の参加者、全てが理解できる内容となっていた! 文章は少し粗いが読み物としては面白い!
最高のテンションを維持するのではなく、程々の緩急がよい! 考えられた構成と云える!

>884
コロナで復讐する話! 別れても恋人を愛していた! 未練を断ち切る意味が酷い後ろ向きの発想であった!
コロナに感染したことを自覚した主人公は元彼との濃厚接触を試みる! 想像以上の効果を発揮して元彼は命を落とした!
新しい彼女も陽性となり、身内にまで感染が広がった! 最後の一行は復讐を果たした者の心情を表している!
少し引っ掛かるのは行き当たりばったりでコロナに感染! その結果、行動に起こした! 計画性がないので少し落ちが弱いように思う!
コロナに感染する目的で男達と肉体関係を持ち、具合が悪くなってきたところで行動を起こせば怖さが引き立つのではないだろうか!

>886
原因がわからない不思議な話! 兄妹は幼い頃に同じ悪夢の中に迷い込む! 奇妙な顔が浮き出た壁に囲まれた通路は不気味で、
恐怖を募らせる! 兄妹は手を繋ぎ、一緒に逃げる! 妹を逃がす為に兄は身を捨てて逃がす! 朝になると逃げ遅れた兄は突然死に見舞われた!
その後、成人した妹は不気味な洞窟に向かう! 苦悶の顔が浮き出ていて夢の記憶と重なる! その中に兄の顔があった! 妹を助けることができて、
薄っすらと笑みを浮かべていた! スーダンの洞窟と兄妹の関連性はわからない! 何か関連付ける設定があればと思わなくもない!

>889
ネタとしては面白い! ちょっと緩い時代物! 主人公は最後までござるを通して貰いたかった! 戦場が炊事場に変わっただけで、
男の心は武士である! 包丁を刀に見立てて左腰に差して構える! 抜刀して根菜類に挑み掛かり、見事な包丁捌きを見せる!
仕事で実演販売をしてもよい! 二刀流でミンチを作ってハンバーグに活かす! それでいて心は武士のまま!
そのギャップを際立たせることで立派なコメディに仕立てることができるように思った!

>894
亡くなった養父の書斎で宝物の在処を示した便箋が出てくる! 書かれた内容の通り、移動をするが宝物は出て来ない!
最後の物置では喜びの声を上げた! 主人公が好きな蜜柑の段ボール箱に期待が高まる! 世話焼きの葵と共に中を確認する!
高価ではないワインが出てきた! それらの全ては主人公に纏わる物で養父にとっては宝物に等しい!
この手の話はベタでよくあるが、王道でもあって悪くない! あと主人公が実年齢よりも幼く思えた!

>897
ライカの廉価版が出てくるので昭和の時代! 微妙な年代もあってあまり古いような気がしない!
カメラで写真を撮ると魂が抜かれる! 迷信ではあるが少し古さを感じる! ただ舞台を現代にしても内容はあまり変わらないように思う!
スマートフォンで写した一枚を主人公に見せても最後の一行に繋げられる! 服装や当時に流行った物を出してそれらしい雰囲気を作ってもよい!
写真を一枚と書かずに一葉としたところには好感が持てた! 全体的に微笑ましい話であった!

965 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/07(日) 17:41:01.08 ID:pF9HuaYa0.net
>898
ワイスレ杯のネタ! 二作目である! ネタが被ったのだが、いいのだろうか!
微笑ましい夫婦の遣り取りをつらつらと読んでいくと、話が途中で終わっていた!
最後の一行はあるがすっきりとしない! どうなっているのだろうか!

>899
ワイスレ杯のネタ! 三作目で連作掌編! 上の続きがこちらであった!
泉の女神ネタを海で行う! 若さは微塵もない老人! 両手にiPhoneを握り、落とした方を訊いてくる!
主人公は正直に答えた! もう一つのiPhoneは貰えなかった! 早速、中を見るとちゃんと画像は保存されていた!
そこに老人の自撮りが残されていた! 最後の一行に上手く繋げていた! 連作ではあるが一作でもちゃんと読めた!

>920
人の顔の皮を剥ぐ! そのようなシリアルキラーは色々な話で書かれている! 定番とは云えないがあまり珍しいネタではない!
ただし亡くなった女達が踊りながら主人公の元に現れる展開は見たことがない! 斬新と云える!
女達の全てがのっぺらぼう! 剥がされた皮を取り返しにきたのだろうか! 主人公は奪われる前に焼き払った!
女の一人が主人公の首を絞めるとミラーに顔が映る! 最後の一行! 復讐をしたいのであれば男の顔の皮を剥いだ方がいいのでは!

>926
この世界は何なのだろう! VRなのだろうか! 現代に似た異世界なのか! 遠い未来の話なのか!
まず土台がわからない! 説明しないで物語を進める! 天使とはどのような存在なのだろうか!
ただの愛玩動物なのか! どのようにして仕入れるのか! 悪魔の存在はどうなっているのか!
全てが不明で物語は進む! 日常の一場面を切り取ったような作りなので深みはなく、読後の余韻が希薄!

>943
彼女を殺しても雨の日になると蘇って家を訪ねる! 主人公の驚きは束の間で部屋に上げる! カクテルを飲み、語らって過ごす!
死体の痕跡を残した彼女を抱き、また縊り殺す! 酒と安堵が綯い交ぜになった状態で眠ると、彼女は姿を消していた!
その場にいたと云う証拠を残して! また雨の日に彼女は淡々と訪れる! 彼は迎え入れてオリジナルブレンド、人殺しのカクテルを差し出す!
不思議系ではあるが、味がある! 書き方の妙! 双方の心の籠っていない会話が想像力を掻き立てられる! 雰囲気のある掌編に仕上がっていた!

>951
読み終わった瞬間、え、と声が出そうになった!
宝くじは買わなければ当たらない! 一枚でも買えば当たる可能性はゼロではない!
主人公は何を血迷ったのかスクラッチに挑戦した! その場で確認すると一億円が当たっていた!
落ちや捻りもなくタイムセールス目当てにスーパーへと入った! そんなことをしている場合ではない!
現実を舞台にしていながらどこか浮世離れした話になっていた! キャラ設定を間違えているのでは!

966 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 18:09:24.57 ID:foJLA4C3a.net
乙です

967 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 18:58:11.96 ID:Jmvk5p5K0.net
寸評ありがとうございました
精進しようと思います

968 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 19:37:09.60 ID:wBQKuZCTF.net
>>962
面白さはほどほどって(泣)
そりゃあ、9割省いてりゃ、そりゃねって感じ。
てのは負け惜しみっすね。
楽しんでもらいたかったけど、残念。
でも月英様の濃厚さを見ちゃったら何も言えないw
哀しみ。でも久しぶりに作品を書けて良かったです。

969 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/07(日) 20:03:03.03 ID:pF9HuaYa0.net
ふむ、時間になったが!

人が少なそうなので先に熱燗を取ってくる!(`・ω・´)

970 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:04:15.78 ID:YoOrOBsBd.net
こら!

971 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:06:25.79 ID:foJLA4C3a.net
おかのした

972 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:08:04.94 ID:saL+cIcW0.net
いってらっさい。俺はウォーキングに出てます。

973 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/07(日) 20:08:42.97 ID:pF9HuaYa0.net
爽やかな合の手をありがとう!
では、時間になったので発表する!

今回の第十位は出だしからは想像できない展開を迎える!
何故、そこまで思い詰めた行動に出たのか!
君の性別がとても気になる! 作中で女性を匂わせても良かったかもしれない!

第十位は>>880である! おめでとう!(`・ω・´)

974 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:10:43.80 ID:foJLA4C3a.net
おめでとうございますー!

975 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:11:17.06 ID:AbJ1O5NK0.net
おめ!

976 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:11:37.32 ID:uMll42WLp.net
おお、おめでとうございます!

977 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:11:44.86 ID:HVBBZRIK0.net
おめでとう!
ショッキングなラストで印象に残っています

978 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/07(日) 20:14:46.55 ID:pF9HuaYa0.net
次の作品はかなり惜しい!
自暴自棄と思わせて虎視眈々と機会を窺う!
自身がボロボロになったところで相手を罠に掛ける!
と云う秘めた計画性を匂わせていれば順位はゴホゴホになっていた!

第九位は>>884である! おめでとう!(`・ω・´)

979 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:15:43.78 ID:AbJ1O5NK0.net
>>884
おめ!

980 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:15:59.63 ID:foJLA4C3a.net
おめでとうございます!

981 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:16:45.39 ID:wk8viFoAd.net
>>973
880です
初参加でした
ありがとうございます!

982 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/07(日) 20:16:47.89 ID:pF9HuaYa0.net
ちょっと鯨の尾の身を取ってくる!(`・ω・´)

983 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:17:25.44 ID:AbJ1O5NK0.net
>>982
こらおっさん!

984 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:18:56.91 ID:HVBBZRIK0.net
>>884
おめでとう!
>>978
この字数制限でそれはあまりにも酷!

985 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:18:59.93 ID:uMll42WLp.net
>>981
おめでとうございますっ!

986 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:19:18.63 ID:gb+MLZbfd.net
>>880
おめでとー

>>884
おめでとー

987 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:21:09.43 ID:gb+MLZbfd.net
>>981
初参加で入賞ですか
すげー

988 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/07(日) 20:21:37.09 ID:pF9HuaYa0.net
ぴえええん!
発表を続ける!

この位置に内輪ネタの登場!
しかも前振りで一レスを使っている異色作!
過去のワイスレ杯を振り返っても思い出せない!
斬新なアイデアの勝利と云える! もちろん自撮りは少し笑った!

第八位は>>899である! おめでとう!(`・ω・´)

989 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:22:30.62 ID:AbJ1O5NK0.net
>>899
おめ!

990 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:24:13.67 ID:YoOrOBsBd.net
皆さん、続きの会場はこちらになります。
https://itest.5ch.net/mevius/test/read.cgi/bookall/1615030985

991 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:25:56.49 ID:foJLA4C3a.net
おめでとうございます!

992 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/07(日) 20:27:44.69 ID:pF9HuaYa0.net
セブンーセブンーセブンーセブンーマイルドセブン!

勢いがついたところで第七位を発表!
接続詞の多様を指摘したが内容を阻害する程のものではない!
むしろ隠れ蓑として使わせて貰った!

偶然が二度! 見られた相手は怒る! 自然な流れ!
ただし怒り方が徐々に激しさを増し、何かおかしいことに気付く!
最後はお似合いのカップルを想像して見事に締める!

第七位は>>821である! おめでとう!(`・ω・´)

993 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/07(日) 20:28:47.89 ID:pF9HuaYa0.net
多用であった!(`・ω・´)リアルで書いているので目にきたのかも!

994 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:29:22.04 ID:AbJ1O5NK0.net
>>821
おめでとうございます!

995 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:30:03.69 ID:Jmvk5p5K0.net
おめ!
上質な豚ミーツ女王様でした

996 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:30:07.80 ID:uLOvJXBy0.net
>>978
ありがとうございます

997 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:32:06.54 ID:x04Xxc8JF.net
おめでとうございます!
怒涛の発表!

998 :ぷぅぎゃああああああ :2021/03/07(日) 20:33:22.04 ID:pF9HuaYa0.net
この作品は読み物として楽しめた!
おそらく読者を選ばない! 誰が読んでも一定の面白さを秘めている!
古典を参考にしたのか! 作者の発想から生まれたのか!
嫌味でない程度に知識をひけらかし、読み易い文章で駆け抜けた!

第六位は>>882である! おめでとう!(`・ω・´)

999 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:33:57.89 ID:YzcA8gZv0.net
>>821
おめでとう!
二人とも幸せそうでなにより

1000 :この名無しがすごい! :2021/03/07(日) 20:34:56.95 ID:x04Xxc8JF.net
おめでとうございます!

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