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なろうエッセイ8

485 :この名無しがすごい!:2020/10/04(日) 21:44:52.26 ID:W+SypXwT.net
つづき


 冥王竜はうつろな目をしていた。
闇の霧を吸ってから暗黒こそが平安と安らぎと快感を覚えていた。
闇の王の体から暗黒の宝石が生じ・・・空に浮かびやがて冥王の手元にすっと落ちていった。
自我を失った冥王は暗黒の種を・・・甘美な誘惑で飲み込んだ。

飲み込んだとたん ―不意に冥界の風が突然ぴたりと止んだ。

 なんと突然冥王の躯に異変がおき・・・姿がみるみるかわっていく!・・・全身の痛みに耐えかね吼えると、どう!と前にのめる!
 その体が膨れ立ち、震え、みるみるうちに姿を変えていく!肉が流れ、脈打ちながら膨れていく。
骨が伸び、古き翼がもぎ取れ、さらに闇よりも黒き翼が血をからめながら新たに生えてくる。
鮮やかな輝きを持つ土色の鱗が漆黒との鱗へと変化し、角も古き角が取れ、新たに漆黒の禍々しきねじれた角が新たに植物のごとくにょきにょき生えてくる。
身体を流れる血液はより赤黒き液体へと変っていく・・・

闇に食われていく・・・

 しかし、冥王は闇に食われたいという衝動と歓喜と快感が伴っていた。
血肉が溶けて流れるたびに体と心が犯されていくようなおぞましき快感を味わう。
これは真に望んでいた姿であることを、すべての欲望の結晶を具現化していることを誰よりも知っていた。

 変化が終わると身を起こし、ゆらりと立ち上がった
そこにはまごうことなく暗黒の者へとかわっていった。
眼窩には血よりも濃き赤、躯は闇より深き黒。深き鍵爪、腹の部分は血に飢えた深き赤の色。
口腔には闇の毒霧を放つたびに快感をともなっていた。

闇と同化したのであった。闇こそが自分の一部。

やがて・・・躯が落ち着きを取り戻し冥王は聞く。
「そなたの名は? 」
「我に名などない。世を闇によって平安を与えるもの。今日からそなたはクルと名乗るのじゃ」

冥王は 例えようのない深い悲しみとともに深淵にたたずんでいた・・・

闇の王の使命・・・それは2つの眼で七つの大罪を見据え、
七つの大罪により闇に落ちた者への苦悶を解放し
闇と同一になることによって闇の者とし
暗闇の世界における沈黙と安らぎを与え、
希望により生まれ出る新しい絶望と嘆きから救い出しすべてを虚無にすることである。

彼の罪は憤怒であった。

それが闇による救いと赦し―


※ この作品古代シュメール神話「クル」の伝承と、羽田龍彦著『竜世界ガルキアーナ』の世界を参考にしたらんた独自の物語です。

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