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安価・お題で短編小説を書こう!8

378 :この名無しがすごい!:2020/06/21(日) 22:08:29 ID:fz34Sh5h.net
>>361

使用お題→『手抜き』『よさこい』『滑り台』『オリガミ』『原曲』

【よさこいとオリガミ】(1/2)

 学校中を隅から隅まで捜しても、彼女は見付からなかった。
 その彼女から呼ばれたような気がして、私は学校の近くの運動公園へと足を向けた。
 公園の敷地内にある小高い丘の、急な斜面に設けられた幅の広い滑り台。その下に立って見上げる。
 この辺では一番見晴らしのいい丘の上に、私は彼女の姿を認めた。
 滑り台の脇を駆け上がる。
「オーリャ!」
 私が呼び掛けると、静かに夕日を眺めていたらしい彼女は、さして驚いた様子も見せず、そのエキゾチックな目元を私に向けた。
「さよこー! やっほー!」
 ゴシック建築のガーゴイルのように固まっていた表情が、まるで生き返ったかのように笑顔になって、その場でぴょんぴょん跳ね回る。
「オーリャ! 探したんだよ。急にいなくなったら駄目だよ」
「うん、分かってる。ごめんね」
 そう言って申し訳なさそうにするものの、彼女がどこかへ行ってしまうのは、これが初めてではない。
「ねえ、オーリャ。別に誰も怒ったり、笑ったり、してなかったでしょ。いなくならなくても良かったんじゃないの」
「うん。それも分かってる」
 彼女は留学生で、けれども日本語がぺらぺらで、そのくせ結構な問題児だった。
「だったらさ、直していかないと」
「うん……」
 なぜだか理由は分からないが、彼女は私に懐いた。私も、彼女とは馬が合う感じがして、一緒にいるようになった。
 エキセントリックな言動には振り回されたし、お世話係だなぁ、と思うこともあった。
 だけど、彼女にはどこか憎めないところがあった。
「私と二人だけなら平気なんだよね。私以外にも信頼できる人を作った方がいいよ」
「うん……。さよこ、私のこと嫌いになった?」
 こういう面倒な言い方をするところ。
「嫌いじゃないよ。だけど、オーリャは困るでしょ」
 彼女は遠くを、学校の方角ではない、多分、テレビ塔か何かを見ていた。
「困らない」
「オーリャ」
「オーリャ困らない! 困らないよ!」
 彼女は怒ったように叫んだ。
「オーリャ!」
「おりゃ! おりゃ! おりゃー! よさこいじゃー!」
「ふざけないで! 真面目に話してるの!」
 私がそう言うと、何やら勝手な振り付けで変な動きをしていた彼女は、私が声を掛ける前の石像に戻ってしまった。
「オリガ・ミハイロヴナ」
「はい、サヨコ・イクラウマイナ! なんでしゅ……失礼、なんですか」
 だけど一瞬で人間に戻る。
「オーリャ……いっつもそうやって混ぜっ返すよね」
「かみました!」
「そこじゃないし」
「エータ、ルースカヤ、シュートカ、だよ」
「いや完全日本語だったし」
「いやいや。オーリャ、ロシア人だから。ニホンゴワッカリマセーン」
 これが彼女のペースなのだ。

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