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安価・お題で短編小説を書こう!8
- 328 :この名無しがすごい!:2020/06/07(日) 23:59:00 ID:d4D3eHqm.net
- 【彼女たちと僕の一日】(3/3)
「分不相応に見えるんだよね」
「どういうことですか?」
うーん、なんて説明しよう。その時、ずっと黙っていたダリアが口を開く。
「若くて羽振りのいい探索者が、女を連れて遊んでいるように見える、ということです」
「そんな!」
カリンは、心外だ、とでも言いたそうな、いつもの彼女からは想像も付かないような、本当に嫌そうな表情を浮かべた。
「はっきりとした敵意までは感じませんでしたが、用心するに越したことはありません」
ダリアがそう続けると、カリンは一転して悲しそうな顔をした。
「それは……きっと私のせいです」
新人であるカリンが、僕たちと一緒にいる理由。それは迷宮ギルドからの紹介、もっと言うと、彼女の面倒を見るように頼まれたからだ。
「私、クビになっちゃいますか?」
彼女は最初、同じような新人同士で、男女混成のパーティーを組んでいたらしい。それで迷宮の第一層や第二層で戦っていた。
彼女には最初から問題があった。ドワーフなのに、武器の扱いが下手なのだ。
剣もハンマーも、長いのも短いのも。唯一まともに扱えたのが、両手で支える大型の盾だった。
「まさか。クビになんてしないよ」
「カリンさんがいなければ、第六層には進めません」
第五層から、特に第六層よりも先では、敵の攻撃を受け止める役が必須となる。だが、浅い階層では、いてもいなくても同じだ。
しばらくの間は、それでも必要とはされていたようだ。ただそれは戦力としてではなかったのだろう。
ある時、何かいざこざがあって、彼女は迷宮の中に置き去りにされた。
そのまま身動きが取れずにいたところを、ギルドの巡視員に保護されたのだった。
「でも、私のせいで、魔法使いさまが悪く見られるんですよ」
「そんなことないって。気を付けてれば大丈夫だから」
優しく言い聞かせるが、納得できない様子だ。
「でしたら」
ダリアが出し抜けに声を上げた。
「いえ、やっぱり駄目ですね」
そう言って僕の顔を見詰める。
「何かな?」
「なんでもありません」
そう言いつつ、なおも僕から目を離さない。こんな彼女は初めてだ。
「本当に、どうしたの?」
重ねて問い掛けるが、それでも彼女は口を閉じたままだ。僕が立ち止まって、彼女の瞳を見詰め返すと、それでようやく観念したらしく。
「……その、女装、なんていかがでしょう。ご主人様が女装をすれば、女三人で好き勝手しているように見えるかも知れません」
「わあ、それ素敵です!」
……しないよ? 女装。
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