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安価・お題で短編小説を書こう!8

238 :この名無しがすごい!:2020/05/24(日) 20:09:20 ID:jXpw1ELr.net
>>191
前回お題作品です

使用お題→『媚薬』『理科室の実験』『レモン』

【愛にあふれた令嬢ハチベーヌ・ヤギュー】(1/2)

 遠く学園ハーレムラブコメのナーロッパ世界に一人のヒロインがいた。
「これで……このレモンの香りで味をごまかすでございますよ……」
 ここは学園の理科室。制服の上に白衣をまとった少女が、何やら怪しげな液体を調合する真っ最中である。
「……ふぅ。疲れたでございます。ですが休んではいられません」
 彼女の他に人影はない。これは秘密の実験、内緒の薬である。
「これをタローテ様に飲ませて、そのご寵愛(ちょうあい)を独占するでございますよ……!」

 *

 ハチベーヌ・ヤギューは子爵令嬢である。彼女の家は子爵家の親戚で、彼女自身は庶民であった。
 子爵家には跡継ぎがなかった。このままでは爵位も財産も取り上げられてしまう。それで養子を取ることとなった。そうして選ばれたのがハチベーヌである。
 跡継ぎの地位に納まったハチベーヌは、色々あって、良家の子女が通う学園に潜り込んだ。そこで彼女は運命の出会いを果たす。その相手たる人物こそ、彼女の同級生、タローテ王子であった。
「ふっ、王位など下らん。俺は冒険者になるぞ! ハチベーヌ!!」
 尊大な物言いをする男。浮世離れしている。頭がおかしい。それが周囲の彼に対する評価だった。
 その評価自体は間違っていない。ハチベーヌ自身も、出会った当初は、身分が高いだけの不審者だと思っていた。
「ハチベーヌよ、今日は遺跡の探索だ! うおおおお! 冒険王に……いや、王ではない。冒険魔王……冒険勇者……神…………そう、冒険ゴッドに、俺はなる!!」
 彼が何を言っているのか、ハチベーヌには分からなかった。だが、引っ張られて一緒に行動する内に、ハチベーヌの考えは変わっていった。
「ここが遺跡の最奥部だ……。ハチベーヌよ、頭上に気を付け(頭をぶつける音)いってーっ!」
 この男は、将来本当に冒険ゴ……有名な冒険家になるのではないか。そして一杯お金を稼ぐのでは。もし違っても王子なので、生活に困ることはない。
 中身が庶民のハチベーヌは、子爵家の財産のことなどすっかり忘れている。
「……恐ろしいわなであった…………っ! あれは……なんだ?」
 ハチベーヌの将来が定まった。

 *

 王子の評判は相変わらずである。相変わらずであるはずなのだが、彼の周囲には、なぜだか女性が集まるようになった。
「今なんて?」
 王子とハチベーヌが遺跡で発見したのは、古代文明のホムンクルスだった。
 彼女、つまり女性型であるホムンクルスは、今やタローテ王子と同居している。こうなるとハチベーヌは気が気でない。
 頭が少し縦長であるものの、人間では有り得ない美貌である。十人並みの容姿を自覚しているハチベーヌには到底太刀打ちできない相手だ。
「今なんて?」
 少し耳が遠いようだが、そんなことは問題ではない。ハチベーヌに取っての脅威、第一号である。

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