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安価・お題で短編小説を書こう!8

180 :この名無しがすごい!:2020/05/10(日) 22:08:06.08 ID:yUDcsa2B.net
>>159

使用お題→ジャンル『ファンタジー』+『悪夢』『絶対領域』『円満破局』『釣り』

【機知に富んだ竜騎士ドン・タローテ】(1/3)

 遠く中世ヨーロッパ風ファンタジー世界に一人の竜騎士がいた。
 彼は三度の飯よりも仕事が好きで、起きている間は訓練を欠かさず、戦場に出れば多くの敵を討ち滅ぼした。そのために敵の魔法使いたちの呪いを受け、寝床に入れば悪夢にうなされ、食事は喉を通らず、最後にはすっかり体を壊してしまった。
 戦う力を失った彼は、多額の退職金を手に国を去ることとなった。乗っていたドラゴン『イマナンテ』の払い下げを受け。敬愛する主君『ハクア姫』のグッズを集められるだけ集め。かつての英雄は、今しも放浪の旅に出んとするところである。

 *

 ここは町外れ、早朝の街道だ。遮るもののない陽光に照らされて、二つの人影が揺れている。
「行ってしまわれるのでございますね」
「うむ。これが今生の別れである」
 そう告げる我らが竜騎士の前に立つのは、彼の従者であった『<赤い凶星>ハチベー・ヤギュー』である。
 幾多の戦場を共にした二人の、血湧き肉躍る冒険の日々。いつまでも続くと思われたそれは、今この時をもって幕を閉じるのだ。
「……いやその、ハチベーよ、もしお前が――」
「タローテ様、今までありがとうございました。おさらばでございます!」
 そう言ってにっこりとする彼女である。
 ドン・タローテは、続く言葉を飲み込んだ。腹に力を込めると、大音声で呼ばわる。
「ヘイ、イマナンテ! 出立だ!!」
 そう呼ばわったものの、何も起こらない。
 少しばかり間抜けな空気が漂うも、我らが竜騎士は動じない。
 やがて。
「…………イマ……ナンテー!」
 ドラゴンにしては珍しい叫び声。青空に出現したゴマ粒が、たちまちの内に大きな影となる。
 二つの小さな影を塗り潰し、あわや地面にぶつかるか、というところで、それは速度を落とすと、街道の真ん中に下り立った。
 ドン・タローテは、このドラゴン、イマナンテの背中に乗ると、努めて厳かな声色で、次のように言った。
「さらばだハチベー! 達者で暮らせ」

 *

 飛んでは休み、休んでは飛び、竜騎士とドラゴンは、とある海岸までやってきた。
 相変わらずの快晴であるが、ドン・タローテの目には、なぜだか周囲の景色がかすんで見えた。それと、心なしか気温が高いようにも感じられる。
「どれ、イマナンテの昼飯でも釣れるかな」
 細かいことは気にしない。ドン・タローテは岩場で釣り糸を垂れた。
 実に気持ちのいい天気である。イマナンテは大人しくしている。と言うか眠りこけている。
 かつて竜騎士と共に暴れ回った怪物は、今や年老いて、少し動いただけで疲れてしまう。
 ドン・タローテは、釣り糸の先を見詰める。
 ただ黙って見詰める。
 いつの間にか目を覚ましたイマナンテも、ドン・タローテと一緒に当たりを待つ。
「釣れんな……」
「イマ……ナンテ……」

 *

 突如。すさまじい力で釣りざおが引っ張られた。
「ああっ! 俺の釣りざおが……!」
「イマナンテー……!」
 釣りざおはドン・タローテの手を離れ、海中に引き込まれてしまった。
 立ち尽くす一人と一匹であったが、次の瞬間には、辺りの様子が一変する。
 海面がぶくぶくと沸騰するように泡立ち、立ち上る水蒸気で視界が白く染まる。
 その真っ白い中に、何やら強い光を放つものが現れる。
「ううむ、これは……これは△.□.フィールドか……!? イマナンテ、中和だ! 中和せよ!!」
「イマナンテー!!」
 ドン・タローテの指示で、イマナンテが鼻息を噴射した。
 視界を遮る水蒸気は吹き飛ばされ、光るものの正体が……。
「……あっ、あなた様はハクア……ではなく…………ア○ビ○様ですか?」

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