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安価・お題で短編小説を書こう!8
- 175 :この名無しがすごい!:2020/05/10(日) 22:02:33.23 ID:S5GsawUB.net
- >>159
お題:ジャンル『ファンタジー』+『悪夢』『絶対領域』『円満破局』『釣り』
【宮廷闘争の間違った治め方】(1/3)
「さて、クライマックスだ」
俺、クライクン・フォン・ベネガルドはそう呟きながら襟元を正す。ここ数か月余り奔走して来たのは今日この日の為だ。
俺の隣にはベネティクト・フォン・シェザール。シェザール公爵家令嬢で、俺の共犯者の女性でもある。
艶やかな赤毛とやや吊り目がちながら整った顔。そしておみ足が素敵な御令嬢だ。前方から見ると太ももまでしかないデザインのスカートに合わせた、膝上までのストッキング。白い絶対領域が眩しいぜ! ありがとうございます。
「……クライクン?」
「っと、悪りぃ、でも、ちょっとばっかし足癖が悪うございませんかね? お嬢様」
つい、しゃがみ込んでガン見してしまったらしい。ベネティクトの膝蹴りを躱しながら俺は謝る。
彼女がこう言った変則的なドレスを好むのは、蹴り技が得意だからと言うもっぱらの噂だが、それは真実だったらしい。
再び、横並びとなり、彼女の手を取る。こう言ったパーティーでエスコートして入って来る女性は、家族か恋人に限定される。
だからこそ噂を流したし、その為の偽装工作もして来た。
パーティー会場までもう少し。そんな俺達の前に、立ち塞がる者が居た。
******
親父に呼び出された俺は、酷く面倒臭そうな顔をしていただろう。
苦笑した親父は「まぁ、座れ」と、席を勧めた。
「クライクン、お前に頼みがある」
「断って良い?」
「ダメだ。お前が適任だからな」
なら頼みとか言わないで欲しい。それ、命令だから。
「お前にはシェザール公爵家のご息女と婚約をして貰いたい」
「シェザール公爵……ベネティクト様と!?」
「もちろん、欺瞞工作だが」
「何だウソかよ」
うん知ってた、知ってた。兄貴ならともかく、俺だと釣り合いが取れない才女だ。
さて、何故そんな話に成っているかと言えば、まぁ、宮廷に良く有る派閥抗争の為だ。親父、ベネガルド侯爵は、第一王子派な訳だが、昨今のお国のパワーバランス的な事も有り、軍部に支持基盤を持つ第二王子派の連中が幅を利かせている。
俺なんかは、平和主義者の第一王子がトップに立ってくれた方が良いと思うんだが、戦争で手柄を立てたい人達は、隣国との戦争がご希望らしい。
その派閥のトップがグレゴリー辺境伯。隣国との戦争が起きて最も利するからってのも当然だが、小競り合いを続けている辺境伯としては、感情的にも戦争肯定な訳だ。
シェザール公爵は第二王子派ではあるが、今は積極的戦争を避けたいと思っている。中央付近の飢饉の影響で、国力が弱まっているからだ。
このタイミングで戦争を強行すれば、例え勝ったとしても土地の意地が難しいと言う判断らしい。
それ故に、グレゴリー辺境伯の発言力を少しばかりそぎ落としておこうって訳だ。
その為の偽装婚約。つまりは本当には婚約などしないが、そう、匂わせる事で相手にアクションを行わせようって事だ。
何せ、第一王子派トップの子息と第二王子派トップの御息女の婚約だ、上手く行ってしまえば、第一王子派、第二王子派の和解なんて事にもなりかねない。
それも、こっちは次男坊。実質的に第一王子派に下るって言う宣言に等しい訳だ。
「……なぁ、親父」
「ベネガルド候と呼べ」
「ベネガルド候、それって、俺が狙われる事に成りませんかねぇ」
「そうだな」
「おい」
「大丈夫、お前ならやれる!!」
「黙れ!! クソ親父!!」
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